説明

画像形成装置、画像形成方法

【課題】潜像担持体の角速度変動および潜像担持体の偏心によらず、発光素子の露光位置を高精度に制御して、良好な露光動作を実現可能とする技術を提供する。
【解決手段】潜像を担持する潜像担持体と、発光素子からの光により潜像担持体を露光する露光ヘッドと、潜像担持体を回転駆動する駆動部と、発光素子の発光タイミングを制御する発光制御部と、潜像担持体の回転角度を検出する回転角度検出部と、潜像担持体の偏心に応じて発光タイミングを補正する第1の発光タイミング補正情報を記憶する記憶部と、を備え、発光制御部は、回転角度検出部の検出結果および第1の発光タイミング補正情報に基づいて補正した発光タイミングで、発光素子を発光させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子の光により潜像担持体を露光する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、感光体ドラムを回転駆動しながら、感光体ドラム周面の移動に応じたタイミングで発光素子を発光させて、感光体ドラム周面を露光する画像形成装置が知られている。このような画像形成装置では、感光体ドラムを回転駆動するための駆動系が設けられる。しかしながら、特許文献1で指摘されているとおり、駆動系の駆動速度は変動する場合があり、これにより、感光体ドラムの角速度も変動してしまうことがある。ところで、感光体ドラム周面の速度は、回転中心から周面までの距離と角速度との積で与えられる。したがって、上述のように角速度が変動すると、感光体ドラム周面の速度(感光体ドラムの周速度)も変動してしまう。その結果、感光体ドラム周面において発光素子の露光位置がずれてしまい、露光動作を良好に実行できないおそれがあった。
【0003】
【特許文献1】特開平9−182488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、感光体ドラム等の潜像担持体の周速度の変動は、潜像担持体の角速度変動のみならず、潜像担持体が偏心することによっても引き起こされる場合がある。つまり、潜像担持体が偏心すると、回転中心から潜像担持体周面までの距離が、潜像担持体周面における位置によって変わってしまう。その結果、潜像担持体周面において、回転中心からの距離が遠いところでは周速度が速くなり、回転中心からの距離が近いところでは周速度が遅くなる場合がある。そして、潜像担持体の偏心によって潜像担持体の周速度が変動することによって、潜像担持体周面において発光素子の露光位置がずれてしまい、露光動作を良好に実行できないおそれがあった。
【0005】
上述の説明から判るように、発光素子の露光位置を高精度に制御して良好な露光動作を実現するためには、潜像担持体の角速度変動および潜像担持体の偏心の両方が発光素子の露光位置に与える影響を抑制することが重要となる。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、潜像担持体の角速度変動および潜像担持体の偏心によらず、発光素子の露光位置を高精度に制御して、良好な露光動作を実現可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、潜像を担持する潜像担持体と、発光素子からの光により潜像担持体を露光する露光ヘッドと、潜像担持体を回転駆動する駆動部と、発光素子の発光タイミングを制御する発光制御部と、潜像担持体の回転角度を検出する回転角度検出部と、潜像担持体の偏心に応じて発光タイミングを補正する第1の発光タイミング補正情報を記憶する記憶部と、を備え、発光制御部は、回転角度検出部の検出結果および第1の発光タイミング補正情報に基づいて補正した発光タイミングで、発光素子を発光させることを特徴としている。
【0008】
また、この発明にかかる画像形成方法は、上記目的を達成するために、回転駆動される潜像担持体の回転角度を検出する回転角度検出工程と、発光素子からの光により潜像担持体を露光する露光工程と、を備え、露光工程は、潜像担持体の偏心に応じて発光タイミングを補正する第1の発光タイミング補正情報を記憶部から読み出し、回転角度検出工程での検出結果および第1の発光タイミング補正情報に基づいて補正した発光タイミングで、発光素子を発光させることを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明(画像形成装置、画像形成方法)は、潜像担持体の回転角度を検出する(回転角度検出部、回転角度検出工程)。したがって、この検出結果に基づいて発光タイミングを補正することで、潜像担持体の角速度変動による発光素子の露光位置ずれを抑制することができる。ただし、上述のとおり良好な露光動作を行なうためには、潜像担持体の偏心が発光素子の露光位置に与える影響も考慮する必要がある。そこで、本発明は、潜像担持体の偏心に応じて発光タイミングを補正するための第1の発光タイミング補正情報を記憶部に記憶している。そして、本発明は、回転角度の検出結果のみならずこの第1の発光タイミング補正情報にも基づいて発光タイミングを補正し、こうして補正された発光タイミングで発光素子を発光させている。これにより、潜像担持体の角速度変動および潜像担持体の偏心によらず、発光素子の露光位置を高精度に制御して、良好な露光動作を実現することが可能となっている。
【0010】
また、発光制御部は、潜像担持体の角速度変動に応じて発光タイミングを補正する第2の発光タイミング補正情報を回転角度検出部の検出結果から求め、第2の発光タイミング補正情報および第1の発光タイミング補正情報に基づいて発光タイミングを補正するように構成しても良い。このように構成した場合においても、潜像担持体の角速度変動および潜像担持体の偏心によらず、発光素子の露光位置を高精度に制御して、良好な露光動作を実現することができる。
【0011】
また、潜像担持体は回転軸を有する感光体ドラムであり、駆動部は回転軸を回転駆動する画像形成装置に対しては、本発明を適用することが好適である。なぜなら、このような画像形成装置では、駆動部の駆動速度が一定とならず潜像担持体の角速度が変動し、また感光体ドラムの回転軸が偏心することで、上述のような潜像担持体の周速度変動が引き起こされるおそれがあるからである。
【0012】
また、回転角度検出部は、感光体ドラムの回転軸に配設されたエンコーダーであっても良い。このように感光体ドラムの回転軸にエンコーダーを配設することで、このエンコーダーにより感光体ドラムの回転角度を検出することができる。
【0013】
ところで、感光体ドラムを画像形成装置に着脱自在なカートリッジにより保持するように構成することができる。このような構成では、画像形成装置の保守のため、必要に応じてカートリッジが交換される。そして、カートリッジの交換に伴い感光体ドラムが新しいものに変わった場合は、第1の発光タイミング補正情報を新たな感光体ドラムの偏心に応じたものとする必要がある。そこで、第1の発光タイミング補正情報を記憶する記憶部をカートリッジに配設しておくと良い。このように構成した場合、カートリッジの工場出荷等の際に感光体ドラムの偏心に応じた第1の発光タイミング補正情報を記憶部に記憶させておけば、カートリッジの交換による感光体ドラムの変更に伴って、第1の発光タイミング補正情報を変更後の感光体ドラムに応じた適切なものとすることができる。つまり、カートリッジ交換以外の特別な作業を行なわずとも、第1の発光タイミング補正情報を常に適切なものとしておくことができるため、このような構成は好適である。
【0014】
なお、カートリッジに記憶部を配設した構成においては、記憶部は不揮発性メモリーであることが好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本実施形態にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示す図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCがエンジンコントローラーECに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラーECがエンジン部ENGおよびヘッドコントローラーHCなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0016】
この実施形態にかかる画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラーMC、エンジンコントローラーECおよびヘッドコントローラーHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット2、転写ベルトユニット8および給紙ユニット7もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、二次転写ユニット12、定着ユニット13およびシート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット7は、ハウジング本体3に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット7および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0017】
画像形成ユニット2は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、図1においては、画像形成ユニット2の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0018】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21は、その回転軸AR21が主走査方向MD(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21の回転軸AR21はそれぞれ専用の駆動モーターDMに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより、感光体ドラム21表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに搬送される。また、感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作が実行される。カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時は、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
【0019】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラーを備えている。この帯電ローラーは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って従動回転する。また、この帯電ローラーは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を所定の表面電位に帯電させる。
【0020】
ラインヘッド29は、その長手方向LGDが主走査方向MDに平行もしくは略平行となるように、かつ、その幅方向LTDが副走査方向SDに平行もしくは略平行となるように配置されている。ラインヘッド29は、長手方向LGDに配列された複数の発光素子を備えており、感光体ドラム21に対向配置されている。そして、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に、発光素子からの光を結像して静電潜像を形成する。
【0021】
現像部25は、その表面にトナーを担持する現像ローラー251を有する。そして、現像ローラー251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラー251に印加される現像バイアスによって、現像ローラー251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラー251から感光体ドラム21に移動してその表面に形成された静電潜像が顕像化される。
【0022】
現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する一次転写位置TR1において転写ベルト81に一次転写される。
【0023】
また、感光体ドラム21の回転方向D21の一次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナ27が設けられている。この感光体クリーナ27は、感光体ドラムの表面に当接することで一次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0024】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラー82と、図1において駆動ローラー82の左側に配設される従動ローラー83(ブレード対向ローラ)と、これらのローラーに張架され駆動ローラー82の回転により図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、カートリッジ装着時において各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の一次転写ローラー85Y、85M、85Cおよび85Kを備えている。これらの一次転写ローラーは、それぞれ一次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。
【0025】
カラーモード実行時は、図1および図2に示すように全ての一次転写ローラー85Y、85M、85Cおよび85Kを画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に一次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラー85Y等に一次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する一次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写する。すなわち、カラーモードにおいては、各色の単色トナー像が転写ベルト81上において互いに重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0026】
さらに、転写ベルトユニット8は、ブラック用一次転写ローラー85Kの下流側で且つ駆動ローラー82の上流側に配設された下流ガイドローラ86を備える。この下流ガイドローラ86は、一次転写ローラー85Kが画像形成ステーション2Kの感光体ドラム21に当接して形成する一次転写位置TR1での一次転写ローラー85Kとブラック用感光体ドラム21(K)との共通接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0027】
また、下流ガイドローラ86に巻き掛けられた転写ベルト81の表面に対向してパッチセンサ89が設けられている。パッチセンサ89は例えば反射型フォトセンサーからなり、転写ベルト81表面の反射率の変化を光学的に検出することにより、必要に応じて転写ベルト81上に形成されるパッチ画像の位置やその濃度などを検出する。
【0028】
給紙ユニット7は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラ79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラ79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラ対80によって給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って、駆動ローラー82と二次転写ローラー121とが当接する二次転写位置TR2に給紙される。
【0029】
二次転写ローラー121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、二次転写ローラー駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラー131と、この加熱ローラー131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が二次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラー131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラー1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラー1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラー131の周面に押し付けることで、加熱ローラー131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0030】
前記した駆動ローラー82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、二次転写ローラー121のバックアップローラとしての機能も兼ねている。駆動ローラー82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する二次転写バイアス発生部から二次転写ローラー121を介して供給される二次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラー82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、二次転写位置TR2へシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達されることに起因する画質の劣化を防止することができる。
【0031】
また、この装置では、ブレード対向ローラー83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラー83に当接することで、二次転写後に転写ベルト81に残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナブレード711及び廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラー83と一体的に構成されている。
【0032】
なお、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kの感光体ドラム21、帯電部23、現像部25および感光体クリーナ27を一体的にカートリッジとしてユニット化している。そして、このカートリッジが装置本体に対し着脱可能に構成されている。また、各カートリッジには、該カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリーがそれぞれ設けられている。そして、エンジンコントローラーECと各カートリッジとの間で無線通信が行われる。こうすることで、各カートリッジに関する情報がエンジンコントローラーECに伝達されるとともに、各メモリー内の情報が更新記憶される。これらの情報に基づき各カートリッジの使用履歴や消耗品の寿命が管理される。
【0033】
また、メインコントローラーMC、ヘッドコントローラーHCおよび各ラインヘッド29がそれぞれ別ブロックとして構成され、これらは互いにシリアル通信線を介して接続されている。各ブロック間でのデータのやりとり動作について、図2を参照しながら説明する。外部装置からメインコントローラーMCに画像形成指令が与えられると、メインコントローラーMCは、エンジンコントローラーECにエンジン部ENGを起動させるための制御信号を送信する。また、メインコントローラーMCに設けられた画像処理部100が、画像形成指令に含まれる画像データに対して所定の信号処理を行い、各トナー色ごとのビデオデータVDを生成する。
【0034】
一方、制御信号を受けたエンジンコントローラーECは、エンジン部ENG各部の初期化およびウォームアップを開始する。これらが完了して画像形成動作を実行可能な状態になると、エンジンコントローラーECは、各ラインヘッド29を制御するヘッドコントローラーHCに対し画像形成動作の開始のきっかけとなる同期信号Vsyncを出力する。
【0035】
ヘッドコントローラーHCには、各ラインヘッドを制御するヘッド制御モジュール400と、メインコントローラーMCとのデータ通信を司るヘッド側通信モジュール300とが設けられている。一方、メインコントローラーMCにもメイン側通信モジュール200が設けられている。メイン側通信モジュール200は、ヘッド側通信モジュール300からの要求毎に1ライン分のビデオデータVDをヘッド側通信モジュール300に出力する。ヘッド側通信モジュール300は、このビデオデータVDをヘッド制御モジュール400に受け渡す。そして、ヘッド制御モジュール400は受け取ったビデオデータVDに基づいて各ラインヘッド29の発光素子を発光させる。なお、後述するように、発光素子の発光タイミングは水平リクエスト信号H−reqに基づいて制御される。つまり、この水平リクエスト信号H−reqは発光素子の発光タイミングを与える信号であり、発光素子は水平リクエスト信号H−reqに同期して発光する。
【0036】
図3はラインヘッドの構造を示す部分斜視図である。また、図4はラインヘッドの幅方向断面を示す部分断面図である。これらは部分図であるため、全てのパーツを表しているわけではない。ラインヘッド29が有するヘッド基板294の裏面294−tには、複数の発光素子Eが解像度に応じたピッチで長手方向LGDに並んでいる。各発光素子Eはヘッド基板裏面294−tに形成された有機EL素子であり、いわゆるボトムエミッション型の有機EL素子である。また、ヘッド基板294の表面294−hには、屈折率分布型ロッドレンズアレイ297が対向して配置されている。したがって、発光素子Eが射出した光ビームは、ヘッド基板294の裏面294−tから表面294−hへと透過した後、ロッドレンズアレイ297により正立等倍で結像される。こうして、感光体ドラム21表面にスポットが形成される。
【0037】
このような画像形成装置は、感光体ドラム21表面の副走査方向SDへの移動に応じた発光タイミングでラインヘッド29の各発光素子Eを発光させて、感光体ドラム21表面に所望の潜像を形成する。このとき、上述の通り、感光体ドラム21は、その回転軸AR21に取り付けられた駆動モーターDMの回転駆動力を受けて回転する。しかしながら、駆動モーターDMの駆動速度は変動する場合があり、これにより、感光体ドラム21の角速度も変動してしまうことがある。その結果、感光体ドラム21表面(周面)の速度(周速度)が変動する場合があった。さらには、次に詳しく示すように、感光体ドラム21の中心に対して回転軸AR21が偏心する場合があり、この偏心によっても感光体ドラム21表面の周速度が変動する場合があった。
【0038】
図5は、感光体ドラムの偏心が感光体ドラムの周速度に与える影響を示す図である。同図の「感光体ドラム側面図」の欄は長手方向LGDから感光体ドラム21の側面を見た場合に相当する。同欄が示すように、感光体ドラム21の中心CT21が、回転軸AR21の中心CTcyに対して同図右側にずれてしまっており、感光体ドラム21の偏心が発生している。このような偏心が発生すると、回転軸AR21の中心CTcy(回転中心)から感光体ドラム21表面までの距離が、当該表面における位置によって変わってしまう。その結果、感光体ドラム21表面において、回転中心CTcyからの距離が遠いところでは周速度が速くなり、回転中心CTcyからの距離が近いところでは周速度が遅くなる場合がある。
【0039】
この様子を示したものが、同図の「感光体ドラム周速度」の欄に示すグラフである。このグラフの横軸は感光体ドラムの回転角度θ(deg)を示し、縦軸は感光体ドラム21の周速度V[SP]を表している。感光体ドラム21の回転角度θは、感光体ドラム21に固定された原点θ0からスポットSPの形成位置までの角度であり、感光体ドラム21の回転に伴って変化する値である(「感光体ドラム側面図」)。なお、原点θ0のとり方は任意であり、図5で示す原点θ0のとり方は一例である。同グラフでは、スポットSPの形成位置での周速度が示されている。同グラフが示すように、感光体ドラム21の偏心のため、感光体ドラム21の周速度は平均周速度Vavを中心として周期360°(感光体ドラム21の1回転の周期)で周期変動している。そして、このような感光体ドラム21の周速度変動は、感光体ドラム21周面におけるラインヘッド29の露光位置のずれを引き起こす。
【0040】
このように、露光位置を高精度に制御して良好な露光動作を実現するためには、感光体ドラム21の角速度変動および感光体ドラム21の偏心の両方が露光位置に与える影響を抑制することが重要となる。そこで、本実施形態は、このような感光体ドラム21の角速度変動および感光体ドラム21の偏心によらず、露光位置を高精度に制御するために、発光素子の発光タイミングを制御している。
【0041】
図6は、発光素子の発光タイミング制御を行なうための構成を示す斜視図であり、図7は、発光素子の発光タイミング制御を行なうための構成を示す側面図である。これらの図に示すように、主走査方向MDに平行もしくは略平行な回転軸AR21の一端部に、エンコーダーECDが取り付けられている。エンコーダーECDは、円盤状のエンコーダーディスクEDと、透過型のフォトセンサーSCとを有している。エンコーダーディスクEDの中心部は感光体ドラム21の回転軸AR21に取り付けられており、エンコーダーディスクEDは感光体ドラム21の回転に伴って回転自在に構成されている。
【0042】
エンコーダーディスクEDには、回転軸AR21を中心として放射状に複数本(64本)のスリットSLが設けられている。そして、このスリットSLを検出したフォトセンサーSCが出力するスリット検出信号が、エンジンコントローラーECに出力される。また、64本のスリットSLの内の原点θ0(図5)に対応する位置にあるスリットSL1(基準スリットSL1)は、他のスリットSL(SL2〜SL64)と比べて長い。したがって、基準スリットSL1のスリット検出信号は、基準スリットSL1以外のスリットSL(SL2〜SL64)のスリット検出信号と異なる。そのため、エンジンコントローラーECは、フォトセンサーSCから受け取ったスリット検出信号が、基準スリットSL1のスリット検出信号から何回目のものであるかを判断して、感光体ドラム21の回転角度θを検出することができる。言わば、エンジンコントローラーECは、基準スリットSL1を基点に回転角度θを検出することができる。また、エンジンコントローラーECは、この回転角度θの時間変化から角速度を検出することもできる。
【0043】
そして、本実施形態では、上述のスリットSLの検出結果から感光体ドラム21の角速度変動量が求められるとともに、この角速度変動量から「角速度変動によるH−req補正値AJv」が算出される。この「角速度変動によるH−req補正値AJv」は、感光体ドラム21の角速度変動に応じて水平リクエスト信号H−reqを補正するための情報である。また、メモリーMMに記憶されている「偏心量によるH−req補正値AJd」が読み出される。この「偏心量によるH−req補正値AJd」は感光体ドラム21の偏心に応じて水平リクエスト信号H−reqを補正するための情報である。そして、これら「角速度変動によるH−req補正値AJv」および「偏心量によるH−req補正値AJd」に基づいて、水平リクエスト信号H−reqが補正される。こうして、発光素子Eの発光タイミングが補正される。この発光タイミング補正について次に詳述する。
【0044】
図8は、水平リクエスト信号の補正動作を示す図である。同図は、標準H−req間隔ΔHstが120(μs)で、感光体ドラム21の半径が20(mm)で、感光体ドラム21の偏心量が0.025(mm)である場合を示している。ここで、標準H−req間隔は、補正がされていない水平リクエスト信号H−reqが出力される時間間隔である。この標準H−req間隔は形成する画像の解像度に応じて決定される。感光体ドラム21の偏心量は、感光体ドラム21の中心CT21と回転中心CTcyとの距離である(図5)。同図に示す各欄(a)〜(d)の横軸は、いずれも感光体ドラム21の回転角度θを示す。
【0045】
「(a)角速度変動量」の欄に示すように、エンジンコントローラーECは、ラインヘッド29に露光動作(露光工程)を実行させながら、この露光動作中の角速度変動を逐次検出する(回転角度検出工程)。具体的には、この角速度変動量は、角速度平均値に対する角速度変動量の割合として求められる。さらに、エンジンコントローラーECは角速度変動量から「角速度変動によるH−req補正値AJv」を求める。この「角速度変動によるH−req補正値AJv」は、角速度変動量と標準H−req間隔ΔHstとを掛け算して求められる。
【0046】
また、エンジンコントローラーECは、メモリーMMから「偏心量によるH−req補正値AJd」を読み出す。「偏心量によるH−req補正値AJd」は、スポットSPの形成位置(露光位置)において発生する偏心起因の周速度変動量の平均周速度に対する割合と、標準H−req間隔とを掛け算したものに相当する。この「偏心量によるH−req補正値AJd」は露光動作以外のタイミングで予め求められて、メモリーMMに記憶される。そして、「角速度変動によるH−req補正値AJv」および「偏心量によるH−req補正値AJd」を、標準H−req間隔から引いたものが補正されたH−req間隔ΔHajとして求められる。そして、エンジンコントローラーECは、この補正済H−req間隔ΔHajで水平リクエスト信号H−reqを出力する。
【0047】
図9は、水平リクエスト信号の補正動作の一例を示すタイミングチャートである。同図では、時刻t[1]で出力された水平リクエスト信号H−reqに同期して、発光素子Eが回転角度θ[1]の位置にスポットSPを形成した場合に相当する。この場合、エンジンとローラーECは、回転角度θ[1]でのH−req補正値AJvおよびH−req補正値AJdの和を、標準H−req間隔ΔHstから引いて、補正済H−req間隔ΔHajを求める。そして、補正済H−req間隔ΔHajで、次の水平リクエスト信号H−reqが出力される。本実施形態は、こうして水平リクエスト信号H−reqを補正することで、発光素子Eの発光タイミングを補正している。そして、この補正済の発光タイミングで発光素子Eが発光して、感光体ドラム21表面を露光する(露光工程)。
【0048】
このように本実施形態に示した画像形成装置および画像形成方法は、感光体ドラム21の回転角度θを検出する。したがって、この検出結果に基づいて発光タイミングを補正することで、感光体ドラム21の角速度変動による発光素子Eの露光位置ずれを抑制することができる。ただし、上述のとおり良好な露光動作を行なうためには、感光体ドラム21の偏心が発光素子Eの露光位置に与える影響も考慮する必要がある。そこで、本実施形態は、感光体ドラム21の偏心に応じて発光タイミングを補正するための「偏心量によるH−req補正値AJd」をメモリーMMに記憶している。そして、本実施形態は、回転角度θの検出結果のみならず、この「偏心量によるH−req補正値AJd」にも基づいて発光タイミングを補正し、こうして補正された発光タイミングで発光素子Eを発光させている。これにより、感光体ドラム21の角速度変動および感光体ドラム21の偏心によらず、発光素子Eの露光位置を高精度に制御して、良好な露光動作を実現することが可能となっている。
【0049】
以上では、「角速度変動によるH−req補正値AJv」および「偏心量によるH−req補正値AJd」に基づいて、水平リクエスト信号H−reqを補正する方法について説明したが、「偏心量によるH−req補正値AJd」の具体的な求め方については、特に説明していない。そこで以下では、この「偏心量によるH−req補正値AJd」の具体的な求め方について説明する。なお、上述の通り、本実施形態では複数色に対応して複数の感光体ドラム21が設けられている。ただし、「偏心量によるH−req補正値AJd」を求め方は、いずれの感光体ドラム21に対しても同様である。したがって、以下では、「偏心量によるH−req補正値AJd」の求め方を、1個の感光体ドラム21で代表して説明する。
【0050】
「偏心量によるH−req補正値AJd」を求めるにあたっては、複数のラインパターントナー像LMが転写ベルト81表面に形成され、フォトディテクターPDが各ラインパターントナー像LMを検出する。そして、エンジンコントローラーECが、フォトディテクターPDの検出結果から求めた各ラインパターントナー像LMの位置から、感光体ドラム21の偏心量および位相を求める。そして、これら偏心量および位相から、「偏心量によるH−req補正値AJd」が求められる。図10および図11を用いて説明すると次のとおりである。
【0051】
図10は、「偏心量によるH−req補正値AJd」を求め方を示すフローチャートである。図11は、図10のフローチャートで実行される動作を示す斜視図である。図12は、図10のフローチャートで実行される動作で求められる各値の一例を示す図である。これらの図に示すフローチャートの動作はエンジンコントローラーECの制御により実行される。
【0052】
まず、副走査方向SDに移動する感光体ドラム21表面をラインヘッド29により露光することで、複数のラインパターン潜像LIを所定の時間間隔で形成する(ステップS101)。このラインパターン潜像LIは、主走査方向MDに長尺の略長方形状を有している。また、ステップS101での露光動作と同時に、エンジンコントローラーECはエンコーダーECD出力から感光体ドラム21の回転角度θを検出する(ステップS102)。具体的には、エンジンコントローラーECは、各ラインパターン潜像LIを形成したときの回転角度θと時刻とを一緒に検出して、これらを記録する。なお、ステップS101では、感光体ドラム21が1回転する周期以上の時間、ラインパターン潜像LIを形成する。
【0053】
このように所定の時間間隔を空けて形成された複数のラインパターン潜像LIがトナー現像されて、感光体ドラム21表面に複数のラインパターントナー像LMが距離間隔を空けて形成される。なお、図11では、トナー現像を行なう現像器の記載は省略されている。そして、各ラインパターントナー像LMは転写ベルト81表面に1次転写される(ステップS103)。これにより、転写ベルト81表面には、副走査方向SD(転写ベルト81の搬送方向D81)に距離間隔を空けて複数のラインパターントナー像LMが並んで形成され、転写ベルト81表面の移動に伴ってこれらラインパターントナー像LMが方向D81へと搬送される。そして、フォトディテクターPDが各ラインパターントナー像LMを検出する(ステップS104)。
【0054】
このようなラインパターントナー像LMの検出動作の一方、エンジンコントローラーECは、ステップS102で計測した回転角度θから、感光体ドラム21の角速度変動に起因する潜像の形成位置誤差を算出する(ステップS105)。具体的には、計測した回転角度θから理想の角度を除算して、回転角度θを計測した時刻tにおける感光体ドラム21の回転角度の誤差Δθを求める。なお、理想の角度は、平均角速度で角速度変動なく回転した感光体ドラム21の時刻tにおける回転角度であり、計算により求められる。さらに、回転角度誤差Δθに感光体ドラム21の平均半径Ravを乗算することで、回転角度誤差Δθを感光体ドラム21表面での長さの単位に換算する。こうして、感光体ドラム21の角速度変動に起因する潜像の形成位置誤差(Δθ×Rav)が求められる(図12の欄(a)を参照)。
【0055】
続いて、ステップS104でフォトディテクターPDがラインパターントナー像LMを検出した時刻に転写ベルト81の平均搬送速度を乗算して、ラインパターントナー像LMの絶対位置が算出される(ステップS106)。そして、このラインパターントナー像LMの絶対位置から、ラインパターントナー像LMの理想位置を除算して、転写ベルト81表面におけるラインパターントナー像LMの副走査方向SDへの形成位置誤差が求められる(図12の欄(b)を参照)。ここでラインパターントナー像LMの理想位置は、偏心および角速度変動に起因した周速度変動が全くない理想的な感光体ドラム21によって形成されたラインパターントナー像LMの位置であり、計算により求められる。そして、転写ベルト81表面における各ラインパターントナー像LMの副走査方向SDへの形成位置誤差から、感光体ドラム21表面における各ラインパターン潜像LIの形成位置誤差ΔLIが求められる。このとき、転写ベルト81表面の移動速度と、感光体ドラム21表面の移動速度に差がある場合は、この差を考慮して、各ラインパターン潜像LIの形成位置誤差ΔLIが求められる。そして、各ラインパターン潜像LIの形成位置誤差ΔLIから、感光体ドラム21の角速度変動に起因する潜像の形成位置誤差(Δθ×Rav)が除算される(図12の欄(c)を参照)。
【0056】
続くステップS107では、エンジンコントローラーECは、ステップS106での除算結果(=ΔLI−Δθ×Rav)から、感光体ドラム21の周期の成分をフーリエ解析により抽出して、感光体ドラム21の偏心に起因する潜像の形成位置誤差ΔLIdを求める。そして、この形成位置誤差ΔLIdから感光体ドラム21の偏心の量および位相が算出される。さらに、これら偏心量および位相から、スポットSPの形成位置(露光位置)において発生する偏心起因の周速度変動量が求められ、この周速度変動量の平均周速度に対する割合と標準H−req間隔とを掛け算して「偏心量によるH−req補正値AJd」が求められる。
【0057】
以上のように、本実施形態は、回転駆動される感光体ドラム21の表面に時間間隔を空けてラインパターン潜像LIを形成し(ステップS101)、形成した各ラインパターン潜像LIの形成位置誤差ΔLIを求める(ステップS104)。そして、このラインパターン潜像LIの形成位置誤差ΔLIに基づいて、感光体ドラム21の偏心起因の形成位置誤差ΔLIdを求める。ただし、ステップS101では、感光体ドラム21の偏心起因の形成位置誤差ΔLIdおよび感光体ドラム21の角速度変動起因の形成位置誤差Δθ×Ravの両方を含んだ形で、各ラインパターン潜像LIが形成される。したがって、ラインパターン潜像LIの形成位置誤差ΔLIは、感光体ドラム21の偏心起因の形成位置誤差ΔLIdのみならず、感光体ドラム21の角速度変動起因の形成位置誤差Δθ×Ravをも含む。そこで、本実施形態では、感光体ドラム21の回転角度θを検出しながら、感光体ドラム21表面に時間間隔を空けてラインパターン潜像LIを形成する(ステップS102)。そして、感光体ドラム21の回転角度θの検出結果から求まる感光体ドラム21の角速度変動に起因するラインパターン潜像LIの形成位置誤差ΔLIを、ステップS104で求めた各ラインパターン潜像LIの形成位置誤差ΔLIから除去する。こうして、感光体ドラム21の偏心に起因する潜像の形成位置誤差ΔLIdを求めることが可能となっている。
【0058】
また、上記実施形態では、ステップS106で求めた除去結果(ΔLI−Δθ×Rav)から、感光体ドラム21の周期成分を抽出することで、感光体ドラム21の偏心に起因する潜像の形成位置誤差ΔLIdを求めており、当該形成位置誤差ΔLIを高精度に求めることが可能となっている。
【0059】
なお、本実施形態の構成は、ラインパターン潜像LIそのものからラインパターン潜像LIの形成位置を直接に検出することが難しい場合に特に好適である。つまり、本実施形態では、ラインパターン潜像LIをトナー現像したラインパターントナー像LMの位置からラインパターン潜像LIの形成位置を検出している。より具体的には、感光体ドラム21から転写ベルトに転写したラインパターントナー像LMの位置からラインパターン潜像LIの形成位置を検出している。したがって、ラインパターン潜像LIの形成位置の検出を簡便に実行することが可能となっている。
【0060】
以上のように、本実施形態では、感光体ドラム21が本発明の「潜像担持体」に相当し、ラインヘッド29が本発明の「露光ヘッド」に相当し、駆動モーターDMが本発明の「駆動部」に相当し、エンジンコントローラーECが本発明の「発光制御部」に相当し、エンコーダーECDおよびエンジンコントローラーECが協働して本発明の「回転角度検出部」として機能し、「偏心量によるH−req補正値AJd」が本発明の「第1の発光タイミング補正情報」に相当し、メモリーMMが本発明の「記憶部」に相当している。また、「角速度変動によるH−req補正値AJv」が本発明の「第2の発光タイミング補正情報」に相当している。また、ドラム回転軸AR21が本発明の「回転軸」に相当している。
【0061】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、「偏心量によるH−req補正値AJd」は、感光体ドラムの回転角度θと関連付けてメモリーMMに記憶されていた。しかしながら、回転角度θの変わりにエンコーダーECDのスリットSLの番号と関連付けて、テーブル形式でメモリーMMに記憶しても良い(図13)。ここで、図13は、「偏心量によるH−req補正値AJd」の変形例を示すテーブルである。このテーブルに基づく発光タイミング制御は、次のとおりである。つまり、スリットSL1が検出されてからスリットSL2が検出されるまでの間は、スリット番号SL1に対応するH−req補正値AJd(=0.15μs)により水平リクエスト信号H−reqを補正すれば良い。また、他のスリットSLを検出しが場合も同様に、各スリット番号に対応するH−req補正値AJdで水平リクエスト信号H−reqを補正すれば良い。
【0062】
また、上記実施形態では、「偏心量によるH−req補正値AJd」をメモリーMMに記憶させていたが、「偏心量によるH−req補正値AJd」を別の記憶素子に記憶させても良く、例えば、上述した画像形成装置の本体に着脱自在なカートリッジに設けられた不揮発性メモリーに「偏心量によるH−req補正値AJd」を記憶させても良い。また、この場合、次のような効果が奏される。つまり、このような構成では、画像形成装置の保守のため、必要に応じてカートリッジが交換される。そして、カートリッジの交換に伴い感光体ドラム21が新しいものに変わった場合は、「偏心量によるH−req補正値AJd」を新たな感光体ドラム21の偏心に応じたものとする必要がある。そこで、カートリッジの工場出荷等の際に感光体ドラム21の偏心に応じた「偏心量によるH−req補正値AJd」をカートリッジの不揮発性メモリーに記憶させておけば、カートリッジの交換による感光体ドラム21の変更に伴って、「偏心量によるH−req補正値AJd」を変更後の感光体ドラム21に応じた適切なものとすることができる。つまり、カートリッジ交換以外の特別な作業を行なわずとも、「偏心量によるH−req補正値AJd」を常に適切なものとしておくことができるため、このような構成は好適である。
【0063】
また、図10で示したステップS101では、感光体ドラム21が1回転する周期以上の時間、ラインパターン潜像LIを形成する。しかしながら、ラインパターン潜像LIを形成する時間はこれに限られず、例えば、感光体ドラム21が1回転する周期の5倍以上の時間、ラインパターン潜像LIを形成するように構成しても良い。このように構成した場合、感光体ドラム21の偏心に起因するラインパターン潜像LIの形成位置誤差を高精度に求めることができる。
【0064】
また、上記実施形態では、複数の発光素子Eを長手方向LGDに直線状に並べているが、複数の発光素子Eを長手方向LGDに2列千鳥あるいは3列以上の千鳥で並べても良い。
【0065】
また、上記実施形態では、有機EL素子を発光素子Eとして用いたが、LED(Light-Emitting Diodes)を発光素子Eとして用いても良い。
【0066】
また、ラインヘッド29の構成も上述のものに限られず、例えば、特開2008−036937号公報、特開2008−36939号公報等に記載されているラインヘッド29を用いることもできる。ただし、これらの公報に記載のラインヘッド29では、複数の発光素子を千鳥状に配置して1個の発光素子グループが構成され、さらに複数の発光素子グループが2次元的に配置されている。したがって、副走査方向SDにおいて互いに異なる位置に複数の発光素子が配置されることとなる。したがって、例えば、特開2008−36937の図11に記載されているように、このようなラインヘッド29では副走査方向SDにおいて互いに異なる位置に配置された発光素子の発光を、異なる発光タイミングで制御している。そこで、このようなラインヘッド29に本発明を適用する場合は、副走査方向SDにおいて互いに異なる位置に配置された複数の発光素子それぞれに対して、水平リクエスト信号H−reqを設けると良い。そして、各水平リクエスト信号H−reqを、感光体ドラム21の角速度変動や偏心に応じて補正すれば良い。
【0067】
また、上記実施形態では、各感光体ドラム21の回転軸AR21はそれぞれ専用の駆動モーターDMにより直接回転駆動される。しかしながら、回転軸AR21と駆動モーターDMとの間にギア等の駆動力伝達系を備えても良い。
【実施例】
【0068】
次に本発明の実施例を示すが、本発明はもとより下記の実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の趣旨に適合しうる範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0069】
以下に説明する実施例では、「偏心量によるH−req補正値AJd」に基づいて、水平リクエスト信号H−reqを補正することの効果を示す。そのため、「角速度変動によるH−req補正値AJv」のみに基づいて水平リクエスト信号H−reqを補正した場合と、「角速度変動によるH−req補正値AJv」および「偏心量によるH−req補正値AJd」の両方に基づいて、水平リクエスト信号H−reqを補正した場合とを比較して説明する。
【0070】
図14は、本発明の実施例を示す図である。本実施例は、同図の欄(a)のグラフに示すような周速度変動が感光体ドラム21に生じた場合に相当する。なお、ここで示す周速度変動量は、感光体ドラム21表面の露光位置での周速度変動量である。同欄のグラフから判るように、周速度変動には、例えるなら針状に見える非常に短い周期の変動と、秒(s)オーダーの比較的長い周期の変動とがある。これらのうち短い周期の変動は主として、感光体ドラム21の角速度変動に起因するものであり、長い周期の変動は主として、感光体ドラム21の偏心に起因するものである。
【0071】
同図の欄(b)のグラフは、「角速度変動によるH−req補正値AJv」のみに基づいて水平リクエスト信号H−reqを補正した場合における、潜像の形成位置の誤差である。ここでは、「偏心量によるH−req補正値AJd」に基づく水平リクエスト信号H−reqの補正(偏心補正制御)を行っていないため、潜像の形成位置の誤差が正弦的に波打って発生している。
【0072】
同図の欄(c)のグラフは、「角速度変動によるH−req補正値AJv」および「偏心量によるH−req補正値AJd」の両方に基づいて補正された、水平リクエスト信号H−req周期を示している。そして、このように補正された水平リクエスト信号H−req周期に同期して発光素子を発光させた結果を示すのが、欄(d)のグラフである。欄(b)のグラフと比較して、欄(d)のグラフでは、潜像の形成位置の誤差が大幅に抑制されているのが判る。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本実施形態にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示す図。
【図3】ラインヘッドの構造を示す部分斜視図。
【図4】ラインヘッドの幅方向断面を示す部分断面図。
【図5】感光体ドラムの偏心が感光体ドラムの周速度に与える影響を示す図。
【図6】発光素子の発光タイミング制御を行なうための構成を示す斜視図。
【図7】発光素子の発光タイミング制御を行なうための構成を示す側面図。
【図8】水平リクエスト信号の補正動作を示す図。
【図9】水平リクエスト信号の補正動作の一例を示すタイミングチャート。
【図10】「偏心量によるH−req補正値AJd」を求め方を示すフローチャート。
【図11】図10のフローチャートで実行される動作を示す斜視図。
【図12】図10のフローチャートで求められる各値の一例を示す図。
【図13】「偏心量によるH−req補正値AJd」の変形例を示すテーブル。
【図14】本発明の実施例を示す図。
【符号の説明】
【0074】
21…感光体ドラム、 29…ラインヘッド、 81…転写ベルト、 AR21…ドラム回転軸、 DM…駆動モーター、 E…発光素子、 EC…エンジンコントローラー、 ECD…エンコーダー、 ED…エンコーダーディスク、 ENG…エンジン部、 H−req…水平リクエスト信号、 LI…ラインパターン潜像、 LM…ラインパターントナー像、 MM…メモリー、 PD…フォトディテクター、 SP…スポット、 θ…回転角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像を担持する潜像担持体と、
発光素子からの光により前記潜像担持体を露光する露光ヘッドと、
前記潜像担持体を回転駆動する駆動部と、
前記発光素子の発光タイミングを制御する発光制御部と、
前記潜像担持体の回転角度を検出する回転角度検出部と、
前記潜像担持体の偏心に応じて前記発光タイミングを補正する第1の発光タイミング補正情報を記憶する記憶部と、
を備え、
前記発光制御部は、前記回転角度検出部の検出結果および前記第1の発光タイミング補正情報に基づいて補正した前記発光タイミングで、前記発光素子を発光させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記発光制御部は、前記潜像担持体の角速度変動に応じて前記発光タイミングを補正する第2の発光タイミング補正情報を前記回転角度検出部の検出結果から求め、前記第2の発光タイミング補正情報および前記第1の発光タイミング補正情報に基づいて前記発光タイミングを補正する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記潜像担持体は回転軸を有する感光体ドラムであり、前記駆動部は前記回転軸を回転駆動する請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記回転角度検出部は、前記感光体ドラムの前記回転軸に配設されたエンコーダーである請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記憶部は、前記感光体ドラムを保持して画像形成装置に着脱自在なカートリッジに配設されている請求項3または4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記憶部は不揮発性メモリーである請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
回転駆動される潜像担持体の回転角度を検出する回転角度検出工程と、
発光素子からの光により前記潜像担持体を露光する露光工程と、
を備え、
前記露光工程は、前記潜像担持体の偏心に応じて発光タイミングを補正する第1の発光タイミング補正情報を記憶部から読み出し、前記回転角度検出工程での検出結果および前記第1の発光タイミング補正情報に基づいて補正した発光タイミングで、前記発光素子を発光させることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−149486(P2010−149486A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333115(P2008−333115)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】