説明

画像形成装置、画像形成装置を搭載した車両

【課題】高輝度化や大画面化を犠牲にすることなく小型化を実現できる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本画像形成装置は、光源素子から出射される光束を光偏向器で2次元的に偏向し、透過性を有する被走査面に2次元像を形成する光走査装置と、前記2次元像を被投射面に拡大投射する投射光学系と、を有し、前記被投射面は、外部に設けられた、可視光の一部を透過し一部を反射する半透過鏡の反射面であり、前記投射光学系は、凸面ミラーを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源素子から出射される光束を走査して2次元像を形成する光走査装置を備えた画像形成装置、前記画像形成装置を搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、2次元走査するミラーに多色の光束を入射させ、カラー2次元像を得る光走査装置が広く提案されている。特に、光源として半導体レーザを用いた光走査装置では、半導体レーザの放出する光束の高い指向性により、高い光利用効率が得られる。又、半導体レーザを用いた光走査装置では、キセノンランプのような巨大な放熱器を設けることなく、機器内で強い光を発することができ、かつ、指向性の高さから小型な光学系においても明るい画像を形成できる。
【0003】
半導体レーザを用いた光走査装置を用いて、ヘッドアップディスプレイ等の画像形成装置を実現できる。このような画像形成装置は例えば乗用車等に組み込まれるため、小型化が必然的に求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、画像形成装置の小型化を追求すると、高輝度化や大画面化が犠牲になるという問題が発生する。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、高輝度化や大画面化を犠牲にすることなく小型化を実現できる画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本画像形成装置は、光源素子から出射される光束を光偏向器で2次元的に偏向し、透過性を有する被走査面に2次元像を形成する光走査装置と、前記2次元像を被投射面に拡大投射する投射光学系と、を有し、前記被投射面は、外部に設けられた、可視光の一部を透過し一部を反射する半透過鏡の反射面であり、前記投射光学系は、凸面ミラーを含んでいることを要件とする。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、高輝度化や大画面化を犠牲にすることなく小型化を実現できる画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態に係る画像形成装置を例示する図である。
【図2】第1の実施の形態に係る光走査装置の光路を例示する図(その1)である。
【図3】第1の実施の形態に係る光走査装置の光路を例示する図(その2)である。
【図4】レンズ15について説明するための図である。
【図5】光偏向器及び凹面ミラーの配置について説明するための図である。
【図6】被走査面及び半透過鏡の位置関係を説明するための図である。
【図7】被走査面を透過した各光束の断面形状を説明するための図である。
【図8】第1の実施の形態の変形例1に係る光走査装置の光路を例示する図である。
【図9】実施例1に係る光学系を例示する図である。
【図10】実施例2に係る光学系を例示する図である。
【図11】実施例2に係る半透過鏡を例示する図である。
【図12】実施例3に係る光学系を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態に係る画像形成装置を例示する図である。図1を参照するに、画像形成装置20は、大略すると、光走査装置10と、第1ミラー21と、第2ミラー22と、半透過鏡23とを有する。但し、後述するように、半透過鏡23は、画像形成装置20の必須の構成要素ではない。なお、図1において、24は観測者の眼球(以降、眼球24とする)を、25は虚像(以降、虚像25とする)を示している。
【0011】
まず、光走査装置10について説明する。図2は、第1の実施の形態に係る光走査装置の光路を例示する図(その1)である。図3は、第1の実施の形態に係る光走査装置の光路を例示する図(その2)である。図2及び図3は、それぞれ光走査装置10を異なる方向から視た図である。但し、図3では図2に示す光偏向器16、凹面ミラー17、及び被走査面18は図示が省略されている。
【0012】
図2及び図3を参照するに、光走査装置10は、大略すると、光源素子11R、11G、及び11Bと、カップリングレンズ12R、12G、及び12Bと、アパーチャ13R、13G、及び13Bと、合成素子14と、レンズ15と、光偏向器16と、凹面ミラー17と、被走査面18とを有する。
【0013】
なお、光源素子11R、11G、及び11Bと、カップリングレンズ12R、12G、及び12Bと、アパーチャ13R、13G、及び13Bと、合成素子14と、レンズ15とを含めて入射光学系と称する場合がある。又、光偏向器16と、凹面ミラー17と、被走査面18とを含めて走査光学系と称する場合がある。
【0014】
光走査装置10において、光源素子11R、11G、及び11Bは、それぞれ、互いに異なる波長λR、λG、及びλBの光束を出射することができる。波長λR、λG、及びλBは、例えば、それぞれ、640nm、530nm、及び445nmとすることができる。光源素子11R、11G、及び11Bとしては、例えば、レーザ、LED(Light Emitting Diode)、SHG(Second Harmonic Generation)素子等を用いることができる。
【0015】
明るさや高画質を確保しながら小型化を実現する観点からすると、光源素子11R、11G、及び11Bとして、それぞれ半導体レーザを用いると好適である。光源素子11R、11G、及び11Bは、制御手段(図示せず)により、出射パワーや出射タイミング等を制御される。なお、制御手段(図示せず)は、光走査装置10の内部に設けてもよいし、外部に設けてもよい。
【0016】
光源素子11R、11G、及び11Bから画像信号の内容に応じて出射された各光束(発散光)は、それぞれカップリングレンズ12R、12G、及び12Bで略平行光又は収束光に変換されてアパーチャ13R、13G、及び13Bに入射する。カップリングレンズ12R、12G、及び12Bとしては、例えば、凸状のガラスレンズやプラスティックレンズ等を用いることができる。
【0017】
アパーチャ13R、13G、及び13Bは、それぞれに入射される光束を整形する機能を有する。アパーチャ13R、13G、及び13Bは、それぞれに入射される光束の発散角等に応じて円形、楕円形、長方形、正方形等の様々な形状とすることができる。
【0018】
なお、光源素子11R、11G、及び11Bに対して、共通の1つのカップリングレンズ、及び共通の1つのアパーチャを設ける構成としてもよい。但し、光源素子11R、11G、及び11Bに対して、それぞれカップリングレンズ12R、12G、及び12B、並びに、アパーチャ13R、13G、及び13Bを設けることにより、光源素子11R、11G、及び11Bのそれぞれの発散角の差異に関わらず、光利用効率を確保しながら、被走査面18上のビームスポット径を所望の値に調整できるメリットがある。
【0019】
アパーチャ13R、13G、及び13Bで整形された各光束は、合成素子14に入射し光路合成される。合成素子14は、例えば、プレート状或いはプリズム状のダイクロイックミラーであり、波長に応じて各光束を反射又は透過し、1つの光路に合成する機能を有する。
【0020】
合成素子14で光路合成された各光束は、レンズ15により光偏向器16の反射面に向かって導かれる。レンズ15としては、例えば、凹面側を光偏向器16に向けて配置された単一のメニスカスレンズ等を用いることができる。ここで、図4を参照しながら、レンズ15について更に詳しく説明する。
【0021】
図4は、レンズ15について説明するための図である。図4において、15R及び15Bは、レンズ15に入射する互いに波長の異なる2つの光束を示している。レンズ15の第2面15bから出射される光束15R及び15Bは、光偏向器16の反射面に納まる大きさで出射されることが好ましい。レンズ15は、アパーチャ13R及び13Bで取り込んだ光束15R及び15Bをできるだけ小さくして光偏向器16に送り込む必要があるため、レンズ15の第1面15aは光束15R及び15Bのそれぞれの光束径を集束させるために凸面であることが好ましい。
【0022】
ここで、光束15Rを長波長、光束15Bを短波長の光束とすると、第1面15aでの集光状態は図4に示したように光束15Rと光束15Bとの間で異なる(分散する)。レンズ15がメニスカスレンズでない他の形態(両凸レンズや平凸レンズ等)であると、出射する光束15R及び15Bの発散角は波長に応じてばらついてしまう。
【0023】
レンズ15として、第2面15bを凹面としたメニスカスレンズを用いることにより、第1面15aで分散した光束15R及び15Bは、第2面15bで発散度合いが再び戻される方向に屈折する。その結果、異なる波長の光束15R及び15Bが入射するレンズ15において、出射する光束15R及び15Bの発散度合いのばらつきを収束して光偏向器16に送ることができるため、特定の波長の光束の光量が損失されることなく、画像の輝度を向上することが可能となる。
【0024】
図2及び図3に戻り、入射光学系から出射され光偏向器16の反射面に導かれた光束は、光偏向器16により2次元的に偏向される。光偏向器16としては、例えば、直交する2軸に対して揺動する1つの微小なミラーや、1軸に揺動又は回動する2つの微小なミラー等を用いることができる。光偏向器16は、例えば、半導体プロセス等で作製されたMEMSとすることができる。光偏向器16は、例えば、圧電素子の変形力を駆動力とするアクチュエータにより駆動することができる。
【0025】
光偏向器16により2次元的に偏向された光束は、凹面ミラー17に入射し、凹面ミラー17により折り返されて被走査面18に2次元像を描画する。被走査面18に入射する光束は、光偏向器16に入射する光束の進行方向と成す角が近いことが好ましい。このような配置により、被走査面18上での2次元像の歪を低減できる。又、光束が被走査面18に垂直に近い状態で入射するため、2次元像内の広域にわたって透過効率を高くできる。
【0026】
光走査装置10において、凹面ミラー17を用いることにより、以下のような効果を奏する。第1に、凹面ミラー17は波長分散を有さないため、被走査面18上の画像の色ずれを低減できる。第2に、凹面ミラー17は光束の走査角を縮減させるため、被走査面18上の画像の色ずれを低減できる。第3に、被走査面18の入射角を全走査角において低減することができ、被走査面18の輝度を増大することができる。ここで、色ずれとは、波長の異なる光源素子11R、11G、及び11Bにより被走査面18に形成される複数のスポットの位置ずれを指す。第4に、凹面ミラー17で光路を折り返すことにより、光走査装置10を小型化できる。
【0027】
又、凹面ミラー17は、少なくとも1の方向において非円弧面形状を有することにより、被走査面18上の速度特性を補正できる。つまり、光偏向器16により偏向された光束に等速性を与え、被走査面18上の画素ピッチを均一化できる。
【0028】
なお、凹面ミラー17に代えて被走査面18の直前にフレネルレンズや屈折レンズを設けることもできるが、フレネルレンズを設けた場合にはフレネルレンズの鋸歯形状のバックカット部に影が生じ、光量損失が生じる点で好ましくない。又、屈折レンズを設けた場合には複数の光束に分散が生じ、複数の光束が波長に応じてずれてしまい、色ずれが生じる点で好ましくない。
【0029】
被走査面18は、凹面ミラー17で反射された光束が入射して2次元像が形成される透過性を有する面である。被走査面18としては、例えば、拡散板を用いることができる。拡散板は、入射光をその進行方向側に拡散させる機能を有する。拡散板に代えてマイクロレンズアレイを用いることもできるが、マイクロレンズアレイは各レンズ間で影が生じるため光量損失が大きく、光利用効率が低下する点で好ましくない。
【0030】
一方、拡散板は表面形状の設計によって透過光の拡散角を選択できるので、後続の光学系に送り込む光束の光量損失を少なくできる点で好ましい。例えば、拡散板の表面に使用波長或いはそれ以下のランダムな微少凹凸を形成したり、ライン状の凹凸を形成したりすることにより、高い透過率を維持しながら必要な範囲だけに光を拡散することが可能となり、後続の光学系に送り込む光束の光量損失を少なくできる。
【0031】
ここで、図5を参照しながら、光偏向器16及び凹面ミラー17の配置について更に詳しく説明する。図5は、光偏向器及び凹面ミラーの配置について説明するための図である。図5を参照するに、光偏向器16と凹面ミラー17とは、全光束について、互いにその偏角(入射光束と出射光束とがなす角)の符号が反対になるように配置されている。光偏向器16と凹面ミラー17をYZ平面に垂直な方向(X方向)から見ると、光偏向器16に入射し光偏向器16で偏向されて凹面ミラー17で反射する光束の光路は"Z"の文字を描く。
【0032】
図5のYZ平面において、入射光束の進行方向から数えて左回り角度を正の偏角と定義すると、光偏向器16においては偏角16dは負であり、凹面ミラー17においては偏角17dは正である。このように、光偏向器16と凹面ミラー17とは、互いにその偏角の符号が反対になるように配置されている。このような配置を採用することにより、被走査面18の上端及び下端に達する光束の光路差が減少するため、被走査面18上の画像の台形歪や曲がりを低減できる。
【0033】
なお、このような配置を採用せずに画像に台形歪や曲がりが発生した場合に、電気的に補正することも可能であるが、無効な画素が生じるため、画像が暗くなる問題がある。本実施の形態では、電気的に補正しなくても画像の台形歪や曲がりを低減できるため、明るさや高画質を確保できる。
【0034】
このように、光走査装置10では、光源素子11R、11G、及び11Bから出射された互いに波長の異なる光束を2次元的に走査し被走査面18上に多色画像を形成する光走査装置10において、光路中に光偏向器16と凹面ミラー17とを互いにその偏角の符号が反対になるように配置している。これにより、以下の効果を奏する。
【0035】
すなわち、凹面ミラー17を用いることにより、被走査面18上の画像の色ずれを低減できる。又、凹面ミラー17を用いることにより、被走査面18の入射角を全走査角において低減することができ、被走査面18の輝度を増大することができる。又、光偏向器16と凹面ミラー17とを互いにその偏角の符号が反対になるように配置することにより、被走査面18の上端及び下端に達する光束の光路差が減少するため、被走査面18上の画像の台形歪、曲がりを低減できる。又、凹面ミラー17を用いることにより、光走査装置10を小型化できる。つまり、画像の明るさや画質を確保しながら光走査装置10の小型化を実現できる。
【0036】
次に、図1に戻り、第1ミラー21、第2ミラー22、半透過鏡23について説明する。第1の実施の形態では、第1ミラー21として凸面ミラー、第2ミラー22として凹面ミラー、半透過鏡23として反射面が平面の半透過鏡を用いる例を示す。但し、後述の実施例で示すように、第1ミラー21と第2ミラー22の少なくとも一方が凸面ミラーであればよい。なお、第1ミラー21と第2ミラー22とを含めて投射光学系と称する場合がある。
【0037】
画像形成装置20において、光走査装置10の被走査面18を透過した各光束は、第1ミラー21により折り返されて(反射されて)、第2ミラー22に入射する。第2ミラー22に入射した各光束は、第2ミラー22により折り返されて(反射されて)、半透過鏡23に入射する。
【0038】
画像形成装置20では、凸面ミラーである第1ミラー21を被走査面18の直後に配置しているため、画像形成装置20の光学系に入り込む太陽光が凸面ミラーである第1ミラー21で放散される。そのため、画像形成装置20の光学系に入り込む太陽光が被走査面18に集中することを防止できる。又、凸面ミラーは、有限な発散角を有する中間像を更に広画角にし、光路長を短くすることができ、小型化に適している。又、凸面ミラーは、レンズに対して色収差が発生しないというメリットも有する。
【0039】
半透過鏡23は、可視域の透過率が10〜70%である鏡であり、第2ミラー22により折り返された光束が入射する側に、例えば、誘電体多層膜或いはワイヤーグリッド等が形成された反射面を有する。半透過鏡23の反射面は、光源素子が出射する光束の波長帯を選択的に反射するものとすることができる。すなわち、波長λR,λG,及びλBを包含する反射ピークや反射バンドを有するものや、特定の偏向方向に対して反射率を強めるように形成されたものとすることができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、前述のように、半透過鏡23の反射面は平面であるが、反射面の反対側の面は反射面と略平行である。つまり、半透過鏡23の厚さは略一定である。
【0041】
つまり、半透過鏡23は、光走査装置10の光源素子11R、11G、及び11Bが放出する光束の波長帯を選択的に反射する。そのため、光走査装置10から放出される特定波長の複数の画像光による明るさを増大することができる。
【0042】
なお、第1ミラー21の反射面は、アナモフィックとすることができる。つまり、第1ミラー21の反射面は、所定方向の曲率と、それに直交する方向の曲率とが異なる反射面とすることができる。第1ミラー21の反射面をアナモフィックとすることにより、反射面の曲面形状を調整可能となり、収差補正性能を向上できる。
【0043】
図6は、被走査面及び半透過鏡の位置関係を説明するための図である。図6に示すように、画像形成装置20において、被走査面18と半透過鏡23とは、被走査面18の法線18hが半透過鏡23と交差しないように配置されている。このように配置することにより、被走査面18から放射される迷光が半透過鏡23に映りこまないため、ゴースト像の発生を防止できる。
【0044】
なお、図6では、法線18hとして3本のみを示しているが、被走査面18と半透過鏡23とは、被走査面18の全ての法線(図6に示した3本の法線18hも含む)が半透過鏡23と交差しないように配置されている。
【0045】
ここで、光走査装置10の被走査面18を透過した各光束の断面形状(光の進行方向と垂直な方向の形状)について説明する。図7は、被走査面を透過した各光束の断面形状を説明するための図である。但し、図7では、便宜上、光偏向器16から虚像25まで光路を一直線で示している。
【0046】
図7に示すように、光走査装置10の被走査面18を透過した各光束の断面形状18dを楕円とすることができる。つまり、被走査面18として拡散板を用い、拡散板で拡散された各光束の断面形状を楕円とすることができる。例えば、虚像25のアスペクト比(縦(Y方向):横(X方向))が1:4である場合、各光束の断面形状18dを縦横比がおおよそ1:4である楕円とすると好適である。
【0047】
このように、被走査面18として拡散板を用い、拡散板で拡散された各光束の断面形状18dを楕円とし、楕円の長軸方向を虚像25の長手方向と一致させることにより、被走査面18から出射される光線のほぼ全てが結像に寄与する光学系を実現できる。
【0048】
X方向に長い被走査面18を同じくX方向に長い虚像25に結像させる場合、例えば、各光束の断面形状18dを円形とすると、Y方向での光利用効率が低下し、高輝度な像を得ることができない。一方、光走査装置10では、光束の断面形状18dを、縦横比が虚像25のアスペクト比に対応する楕円としているため、Y方向での光利用効率が向上し、高輝度な像を得ることができる。
【0049】
画像形成装置20は、乗用車等の車両に搭載することができる。その際、半透過鏡23は、車両のフロントウィンドウ等と一体化されてもよい。画像形成装置20を乗用車等の車両において運転者の前方に配置することにより、半透過鏡23の反射面(フロントウィンドウ等と一体化されている場合もある)で反射された光束は、運転席にいる運転者の眼球24へ入射し、被走査面18の2次元像が、半透過鏡23の反射面(フロントウィンドウ等と一体化されている場合もある)よりも前方の所定の位置に拡大された虚像25として視認される。
【0050】
つまり、画像形成装置20により、所謂ヘッドアップディスプレイを実現できる。この場合、被走査面18の2次元像としては、例えば、車両の計器情報や地図情報等を挙げることができる。虚像25は半透過鏡23の反射面(フロントウィンドウ等と一体化されている場合もある)よりも前方の所定の位置にあるため、運転者は運転中に前景を見ている状態で焦点を大きく移動することなく、車両の計器情報や地図情報等を視認できる。
【0051】
このように、画像形成装置20では、第1ミラー21、第2ミラー22、及び半透過鏡23により、光走査装置10の被走査面18上に形成された2次元像の拡大された虚像25を得ることが可能となり、所謂ヘッドアップディスプレイを実現できる。
【0052】
なお、以上の説明から明らかなように、画像形成装置20の構成要素として、半透過鏡23を含む場合と、半透過鏡23を含まない場合がある。画像形成装置20の構成要素として半透過鏡23を含まない場合には、半透過鏡23の機能を車両のフロントウィンドウ等に持たせることができる。
【0053】
このように、第1の実施の形態に係る画像形成装置は、光源素子から出射される光束を光偏向器で2次元的に偏向し透過性を有する被走査面に2次元像を形成する光走査装置と、凸面ミラーを含む投射光学系とを有する。
【0054】
光走査装置を備えていることにより、中間像以降の発散角設定が可能(中間像の発散角を制御するのが容易)となり、光偏向器以降の光学系において光量ロスの少ない高効率な光学系を実現できる。高効率な光学系を実現できる結果、大型の光源素子を使うことなく高輝度画像を得ることができる。つまり、被走査面の発散角を適切な値に設定することにより、光量ロスの低減が可能となり、高輝度画像を得ることができる。
【0055】
又、凸面ミラーを含む投射光学系を備えていることにより、例えば、光源素子として半導体レーザを用いた場合のレーザ走査による狭い発散角の中間像を、凸面ミラーにより広画角にすることが可能となるため、画像形成装置の大画面化及び小型化を実現できる。
【0056】
すなわち、光走査装置と凸面ミラーを含む投射光学系とを備えていることにより、画像形成装置の高輝度化、大画面化、及び小型化を同時に実現できる。
【0057】
なお、高輝度化、大画面化、及び小型化を同時に実現することは、光走査を行わないパネル型(液晶パネルやデジタル・ライト・プロセッシング等の非走査型)の画像形成装置では困難である。光量ロスが発生しないように中間像からの光発散角を制御することが難しいからである。又、パネル型の画像形成装置を高輝度化するためには、1画面を包括して照明する強力な光源が必要となり、実用上ヒートシンク等の放熱手段が大掛かりになり、小型化の妨げとなる。
【0058】
〈第1の実施の形態の変形例1〉
第1の実施の形態の変形例1では、第1の実施の形態とは光学素子の配置が異なる光走査装置の例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する。
【0059】
図8は、第1の実施の形態の変形例1に係る光走査装置の光路を例示する図である。図8は、光走査装置10Aを図3と同様の方向から視た図である。但し、図8では図3と同様に光偏向器16、凹面ミラー17、及び被走査面18は図示が省略されている。なお、光走査装置10Aにおいて、光偏向器16、凹面ミラー17、及び被走査面18の配置は、光走査装置10と同様である。
【0060】
図8を参照するに、光走査装置10Aでは、光源素子11R、カップリングレンズ12R、及びアパーチャ13Rと、光源素子11G、カップリングレンズ12G、及びアパーチャ13Gと、光源素子11B、カップリングレンズ12B、及びアパーチャ13Bとが、それぞれの光束の進行方向が略平行となるように並設されている。
【0061】
アパーチャ13R、13G、及び13Bで整形された各光束が合成素子14に入射して光路合成される点、及び合成素子14以降の光学系に関しては、光走査装置10と同様である。
【0062】
このように、光源素子、カップリングレンズ、アパーチャ、合成素子等の配置は、適宜決定することができる。画像形成装置20において、光走査装置10に代えて光走査装置10Aを用いることができる。
【0063】
以下、実施例について説明する。各実施例は、第1ミラー21、第2ミラー22、及び半透過鏡23の設計例である。
【0064】
〈実施例1〉
図9は、実施例1に係る光学系を例示する図である。図9に示すように、実施例1は、第1ミラー21として凸面ミラー、第2ミラー22として凹面ミラー、半透過鏡23として反射面が平面の半透過鏡を用いる例である。
【0065】
実施例1において、被走査面18を出射する光束は凸面ミラーである第1ミラー21に入射するが、凸面ミラーである第1ミラー21は、放射角を拡大し、画像形成装置20の全体の光路長を短縮する効果を有する。
【0066】
拡大された虚像25を運転者に観察させるには、最終のパワー面は光束を集束させるパワーを持たなければならない。実施例1では半透過23が平面であるため、第2ミラー22を凹面ミラーとし、投射光学系全体として正のパワーを持たせている。実施例1の構成によれば、投射光学系の深さ(図9中横方向)を半透過鏡23の有効径に近い大きさとすることができる。
【0067】
以下の表1〜3に実施例1の光学データを示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

なお、虚像25の像面位置は、運転者の眼球24から2m先とした。又、虚像25の像面画角は、12×3degとした。
【0071】
〈実施例2〉
図10は、実施例2に係る光学系を例示する図である。図10に示すように、実施例2は、第1ミラー21として凸面ミラー、第2ミラー22として平面ミラー、半透過鏡23として反射面が凹面の半透過鏡を用いる例である。なお、本実施例では、半透過鏡23の反射面は凹面であるが、反射面の反対側の面は反射面と略平行である。つまり、半透過鏡23の厚さは略一定である。
【0072】
実施例2において、第1ミラー21の凸面は、所定方向の曲率と、それに直交する方向の曲率とが異なるアナモフィック面である。第1ミラー21の凸面をアナモフィック面とすることにより、凸面の曲面形状を調整可能となり、収差補正性能を向上できる。
【0073】
図11は、実施例2に係る半透過鏡を例示する図である。図11に示すように、半透過鏡23において、凹面の最深点23cの位置は凹面の光学中心23bの位置に対して投射光学系側に約数10mmずれている。ここで、光学中心23bとは、半透過鏡23のうち観察者の視界に入る全領域23aの重心である。又、最深点23cとは、半透過鏡23のうち観察者の視界に入る全領域23aの中で最も凹んだ部分である。
【0074】
このように、実施例2では、半透過鏡23の観測者側の面は偏心面となっている。半透過鏡23の観測者側の面を偏心面とすることにより、第2ミラー22から半透過鏡23の第2ミラー22に近い側に入射する光線と、第2ミラー22から半透過鏡23の第2ミラー22から遠い側に入射する光線との光路バランスをとることができる。その結果、画像形成装置20で発生する歪みを低減できる。
【0075】
なお、実施例2では、第1ミラー21、第2ミラー22、及び半透過23全体として正のパワーを持たせている。
【0076】
以下の表4〜6に実施例2の光学データを示す。
【0077】
【表4】

【0078】
【表5】

【0079】
【表6】

なお、虚像25の像面位置は、運転者の眼球24から2m先とした。又、虚像25の像面画角は、6×2degとした。
【0080】
〈実施例3〉
図12は、実施例3に係る光学系を例示する図である。図12に示すように、実施例3は、第1ミラー21として凹面ミラー、第2ミラー22として凸面ミラー、半透過鏡23として反射面が凹面の半透過鏡を用いる例である。なお、本実施例では、半透過鏡23の反射面は凹面であるが、反射面の反対側の面は反射面と略平行である。つまり、半透過鏡23の厚さは略一定である。
【0081】
実施例3において、被走査面18の放射角はX方向が10.5度、Y方向が3.5度であり、それに一致するように走査光学系が設計されている。第1ミラー21の凹面は、所定方向の曲率と、それに直交する方向の曲率とが異なるアナモフィック面である。第1ミラー21の凹面をアナモフィック面とすることにより、凹面の曲面形状を調整可能となり、収差補正性能を向上できる。
【0082】
実施例3では、実施例1及び2と比較して、被走査面18の放射角を広く設計している。これにより、被走査面18から半透過鏡23までの光路長が短縮され、高さ(図12中縦方向)及び深さ(図12中横方向)において、被走査面18から半透過鏡23を、半透過鏡23の大きさ以下に収納することができる。
【0083】
なお、実施例3では、第1ミラー21、第2ミラー22、及び半透過23全体として正のパワーを持たせている。
【0084】
以下の表7〜9に実施例3の光学データを示す。
【0085】
【表7】

【0086】
【表8】

【0087】
【表9】

なお、虚像25の像面位置は、運転者の眼球24から2m先とした。又、虚像25の像面画角は、6×2degとした。
【0088】
以上、好ましい実施の形態及びその変形例並びに実施例について詳説したが、上述した実施の形態及びその変形例並びに実施例に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態及びその変形例並びに実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0089】
例えば、各実施の形態及びその変形例では、光走査装置10において、3つの光源素子11R、11G、及び11Bを用いる例を示したが、単一の光源素子を用いて単色の画像を形成する構成としてもよい。この場合には、合成素子14は省略できる。
【0090】
又、車両の一例として乗用車を挙げたが、航空機や電車等の他の車両にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0091】
10、10A 光走査装置
11R、11G、11B 光源素子
12R、12G、12B カップリングレンズ
13R、13G、13B アパーチャ
14 合成素子
15 レンズ
15a レンズ15の第1面
15b レンズ15の第2面
15B、15R 光束
16 光偏向器
16d、17d 偏角
17 凹面ミラー
18 被走査面
18d 光束の断面形状
18h 被走査面の法線
20 画像形成装置
21 第1ミラー
22 第2ミラー
23 半透過鏡
23a 領域
23b 光学中心
23c 最深点
24 運転者の眼球
25 虚像
【先行技術文献】
【特許文献】
【0092】
【特許文献1】特開2010−145745号公報
【特許文献2】特開2010−145746号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源素子から出射される光束を光偏向器で2次元的に偏向し、透過性を有する被走査面に2次元像を形成する光走査装置と、
前記2次元像を被投射面に拡大投射する投射光学系と、を有し、
前記被投射面は、外部に設けられた、可視光の一部を透過し一部を反射する半透過鏡の反射面であり、
前記投射光学系は、凸面ミラーを含んでいる画像形成装置。
【請求項2】
光源素子から出射される光束を光偏向器で2次元的に偏向し、透過性を有する被走査面に2次元像を形成する光走査装置と、
可視光の一部を透過し一部を反射する半透過鏡と、
前記2次元像を前記半透過鏡の反射面に拡大投射する投射光学系と、を有し、
前記投射光学系は、凸面ミラーを含んでいる画像形成装置。
【請求項3】
前記半透過鏡の反射面は凹面であり、前記凹面の最深点の位置は、前記凹面の光学中心の位置に対して、前記投射光学系側にある請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記被走査面は、入射光をその進行方向側に拡散させる拡散板である請求項1乃至3の何れか一項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記拡散板で拡散された光の断面形状が楕円である請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記半透過鏡の反射面の反対面側の所定の位置に前記2次元像の拡大された虚像が形成され、
前記拡散板で拡散された光の楕円の長軸方向は、前記虚像の長手方向と一致している請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記凸面ミラーは前記被走査面の直後に配置されている請求項1乃至6の何れか一項記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記被走査面は、前記被走査面の法線が前記半透過鏡と交差しない位置に配されている請求項1乃至7の何れか一項記載の画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項記載の画像形成装置を搭載し、
前記半透過鏡をフロントウィンドウと一体化し、
運転者が前記半透過鏡の反射面よりも前方の所定の位置に前記2次元像の拡大された虚像を視認可能な車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−61554(P2013−61554A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200839(P2011−200839)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】