説明

画像形成装置および動力伝達機構

【課題】動力の伝達および非伝達を長期にわたって安定的に行うことができる。
【解決手段】切り換えレバー54が、開閉扉26に取り付けられた係合突起26aにより、コイルバネ55の付勢力に抗して回動されると、切り換えレバー54の正面側当接部54Yによってスライドギア53が動力伝達軸52に沿ってスライドし、減速ギア43に対して動力伝達状態になる。スライドギア53は、切り換えレバー54の正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zとの間に遊びを有する状態で設けられている。係合突起26aによる切り換えレバー54の回動の規制が解除されると、係合突起26aがコイルバネ55の付勢力によって回動し、背面側当接部54Zによって、スライドギア53が減速ギア43との動力伝達状態を解消するようにスライドする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像形成装置に好適に使用される動力伝達機構に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複合機等の画像形成装置では、通常、画像データに対応したトナー画像を、給紙部から搬送経路に沿って搬送される記録シート上に転写した後に、定着ユニットによって記録シートに定着させる構成になっている。
記録シートは、通常、ローラ、ベルト等の一対の回転体を用いたシート搬送装置によって搬送経路内を搬送される。シート搬送装置は、例えば、一対のローラが相互に圧接されることによってニップ部を形成しており、一方のローラが、動力伝達系を介して駆動源であるモータに連結されている。モータからの動力によって一方のローラが回転されると、他方のローラは、回転するローラに追従して回転する。
【0003】
ニップ部内に進入した記録シートは、それぞれが回転状態になった両ローラによって挟持された状態で搬送されて、ニップ部内を通過する。
このようなシート搬送装置では、ニップ部内を搬送される記録シートが、ジャム(紙詰まり)状態になると、記録シートを引き抜いてニップ部から取り除く必要がある。この場合、一方のローラは、駆動源であるモータと連結された状態になっているために、記録シートをニップ部から引き抜く場合には、このローラのトルクよりも大きな力が必要になる。
【0004】
しかしながら、記録シートを引っ張る力が記録シートの強度よりも大きくなると、記録シートをニップ部から引き抜くことができず、記録シートが破断するおそれがある。破断した記録シートの破片は、ニップ部に挟まれた状態で残ることになる。ニップ部に挟まれた記録シートの破片が小さい場合には、その破片をニップ部から取り除くことは容易でない。
【0005】
また、定着ユニットでは、一対の回転体によって形成される定着ニップ部内を記録シートが通過する間に、記録シート上のトナー画像を加熱しつつ加圧することによってトナー画像を記録シート上に定着させるようになっている。このような定着ユニットでは、トナー画像を記録シート上に定着させるために、定着ニップ部において記録シートに高圧力を加える必要がある。このために、定着ニップ部において記録シートが挟まれた状態で紙詰まりになると、定着ニップ部から記録シートを引き抜く際に大きな引っ張り力が必要になり、記録シートが破断する可能性が大きくなる。
【0006】
特許文献1には、記録シート(用紙)を搬送するローラに駆動力を伝達する駆動伝達系(動力伝達機構)に設けられたカップリングを、連結解除部材(連結解除レバー)によって動力非伝達状態とする構成が開示されている。カップリングは駆動軸にスライド可能に設けられており、コイルスプリングによる付勢力によって、アイドルギアと係合して動力伝達状態になる。連結解除レバーは、シートの搬送経路の内部を露出状態に開放する開閉ドアの開閉に連動しており、開閉ドアが開放されると、コイルスプリングの付勢力に抗してカップリングをスライドさせ、アイドルギアとの係合状態を解消して動力非伝達状態にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−214567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の構成では、コイルスプリングによる付勢力により、カップリングとアイドルギアとを係合させることにより動力伝達状態としている。このために、カップリングとアイドルギアとの間に大きな摩擦力が作用し、経時的にカップリングまたはアイドルギアが摩耗するおそれがある。
また、特許文献1の構成では、カップリングとアイドルギアとの係合を解消する場合には、比較的小さな力で連結解除レバーを操作できる構成になっている。しかしながら、このような構成でも、カップリングとアイドルギアとの係合を解消する場合には、カップリングに、コイルスプリングの付勢力と、連結解除レバーによる圧力との両方が加わるために、スライド可能になったカップリングが駆動軸に対して傾斜した状態、あるいは捩じれた状態になるおそれがある。
【0009】
このような状態になると、カップリングは、駆動軸に対して円滑にスライドできなくなる。また、カップリングに大きな圧力が加わることによってカップリングが変形するおそれもある。この場合には、カップリングがアイドルギアと円滑に係合できなくなる可能性があり、動力伝達機構において、動力の伝達および非伝達の切り替えを、長期にわたって安定的に行うことができないおそれがある。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するものであり、その目的は、シートの搬送に使用される回転体に対する動力の伝達および非伝達を長期にわたって安定的に行うことができるシート搬送装置を備えた画像形成装置を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、そのような画像形成装置に好適に使用することができる動力伝達機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、押圧部材との間でニップ部を形成する駆動部材に動力伝達機構を介して回転力を付与することによりシートを搬送するシート搬送装置を備えた画像形成装置であって、前記動力伝達機構は、前記駆動部材に連結された第1の回転軸と、駆動源に連結された第2の回転軸との間の動力の伝達および非伝達を、前記第1および第2の回転軸のいずれかに設けられた第1の回転伝達部材に対向して前記第1および第2の回転軸の他方に設けられた第2の回転伝達部材を移動させることにより切り換えるように構成されており、第1の当接部材と第2の当接部材を有し、当該第1および第2の当接部材が前記第2の回転伝達部材をその軸方向両側から遊びを有して挟んだ状態で、保持する保持部材と、前記保持部材を所定方向に回転移動させる回転移動手段とを備え、前記回転移動手段により前記保持部材を移動させることにより、前記第1もしくは第2の当接部材を前記第2の回転伝達部材に当接させ、当該第2の回転伝達部材を前記当接させた当接部材と反対側の方向に向けて移動させて、第1回転軸と第2の回転軸の間の動力の伝達および非伝達を切り換え、前記回転移動手段は、装置筺体の開閉部材の開動作に連動して、前記保持部材を、前記第1回転軸と第2回転軸との間の動力が非伝達状態となる第1の位置に移動させると共に、前記開閉部材の閉動作に連動して、前記保持部材を、前記第1回転軸と第2回転軸との間の動力が伝達状態となる第2の位置に移動させることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明に係る動力伝達機構は、第1の回転軸と、駆動源に連結された第2の回転軸との間の動力の伝達および非伝達を、前記第1および第2の回転軸のいずれかに設けられた第1の回転伝達部材に対向して前記第1および第2の回転軸の他方に設けられた第2の回転伝達部材を移動させることにより切り換えるように構成された動力伝達機構であって、第1の当接部材と第2の当接部材を有し、当該第1および第2の当接部材が前記第2の回転伝達部材をその軸方向両側から遊びを有して挟んだ状態で、保持する保持部材と、前記保持部材を所定方向に回転移動させる回転移動手段とを備え、前記回転移動手段により前記保持部材を移動させることにより、前記第1もしくは第2の当接部材を前記第2の回転伝達部材に当接させ、当該第2の回転伝達部材を前記当接させた当接部材と反対側の方向に向けて移動させて、第1回転軸と第2の回転軸の間の動力の伝達および非伝達を切り換えるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像形成装置では、保持部材に保持された第1当接部および第2当接部が、第2回転伝達部材に対して遊びを有した状態になっているために、第2回転伝達部材が動力伝達状態になった場合に第2回転伝達部材から大きな圧力が加わるおそれがなく、第1当接部および第2当接部のそれぞれの圧力による第2回転伝達部材の摩耗、変形等を防止することができる。これにより、動力の伝達および非伝達の切り替えを、長期にわたって安定的に行うことができる。
【0014】
また、動力の伝達および非伝達の切り換え時には、第2回転伝達部材に大きな圧力が加わるおそれがなく、第2回転伝達部材を第1回転軸に対して安定的に移動させることがでる。従って、動力の伝達および非伝達の切り換え時の第2回転体の摩耗、変形等を抑制することができ、これによっても、動力の伝達および非伝達の切り替えを、長期にわたって安定的に行うことができる。
【0015】
好ましくは、前記第2の回転伝達部材は、当該第2の回転伝達部材が設けられた第1もしくは第2の回転軸に沿ってスライド可能であると共に、前記保持部材は、前記第2の回転伝達部材が設けられた回転軸に平行な平面内で回転可能になっており、前記回転移動手段は、前記保持部材を支軸回りに回転させて前記第1と第2の当接部材を回転移動させることにより、前記第1の回転軸と第2の回転軸との間の動力の伝達および非伝達を切り換えるように構成されていることを特徴とする。
【0016】
好ましくは、前記第1と第2の当接部材のそれぞれの外側面は、少なくとも、前記保持部材の回動に伴って動力伝達の切り換え開始から切り換え終了までの間に前記第2の回転伝達部材に当接する範囲において、前記保持部材の支軸と平行な中心軸を有する円筒形の側面形状になっていることを特徴とする。
好ましくは、前記保持部材の支軸方向から見たときにおいて、前記第1および第2の当接部の前記第2の回転伝達部材との当接点が動力伝達の切り換え開始から切り換え終了までに描く軌跡と、前記第2の回転伝達部材が設けられた回転軸の軸心との距離が、所定の範囲内となるように、前記第1と第2の当接部材の位置と前記保持部材の支軸の位置が決定されていることを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記保持部材の支軸方向から見たときにおいて、前記当接点が描く軌跡が、前記第2の回転伝達部材が設けられた回転軸の軸心と交差していることを特徴とする。
好ましくは、前記保持部材の支軸方向から見たときにおいて、前記第1又は第2の当接部の前記第2の回転伝達部材との当接点の、切り換え開始時と切り換え終了時における位置が、前記第2の回転伝達部材が設けられた回転軸の軸心と重なっていることを特徴とする。
【0018】
好ましくは、前記回転移動手段は、前記保持部材を前記第1の位置に向けて付勢する付勢手段と、前記開閉部材に設けられ、当該開閉部材の開動作に伴って、前記保持部材と係合し、前記付勢手段の付勢力に抗して前記保持部材を第2の位置に移動させる係合突起と、を備えることを特徴とする。
好ましくは、前記動力伝達機構は、2以上のギアを介して前記第1と第2の回転軸間の動力伝達がなされるように構成されており、前記第2の回転伝達部材は、一方の回転軸に設けられたギアであることを特徴とする。
【0019】
好ましくは、前記駆動部材は、定着部における加熱回転体もしくは加圧回転体であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るシート搬送装置が設けられたプリンタの全体の概略構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すプリンタに備えられたシート搬送装置における開閉扉(開閉部材)と定着ユニットとの関係を説明するための主要部の斜視図である。
【図3】図2において、開閉扉が開けられた状態での内部構成を説明するための斜視図である。
【図4】プリンタに備えられたシート搬送装置における主要部の構成を示す平面図である。
【図5】図4に示すシート搬送装置の動作説明図である。
【図6】図4に示すシート搬送装置の右側面図である。
【図7】図6に示すシート搬送装置の動作説明図である。
【図8】図4に示すシート搬送装置の主要部の構成を、開閉扉が閉じられた状態で示す斜視図である。
【図9】図8に示すシート搬送装置の動作説明図であり、開閉扉が開けられた状態(動力伝達機構が動力非伝達状態)を示している。
【図10】図4に示すシート搬送装置の動力伝達機構を減速ギアとともに示す斜視図である。
【図11】図4に示すシート搬送装置の動力伝達機構に設けられた切り換えレバーの正面側から見た斜視図である。
【図12】図11に示す切り換えレバーを下側から見た斜視図である。
【図13】(a)は図11に示す切り換えレバーの平面図、(b)は、その側面図、(c)は、その縦断面図である。
【図14】(a)および(b)は、それぞれ、スライドギアと切り換えレバーとの関係を説明するための模式図であり、(a)は、スライドギアが減速ギアと動力伝達状態になった場合を示し、(b)は、スライドギアが減速ギアと動力非伝達状態になった場合を示している。
【図15】(a)は、切り換えレバーに設けられた背面側当接部とスライドギアとの好適な関係を説明するための模式図、(b)は、比較例における背面側当接部とスライドギアとの関係を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施の形態について説明する。
<画像形成装置の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例であるプリンタの構成を説明するための正面側からの模式図である。このプリンタは、記録用紙、OHPシート等の記録シート上にモノクロのトナー画像を形成する。
【0022】
図1に示す画像形成装置は、矢印Aで示す方向に回転駆動される感光体ドラム11を有しており、感光体ドラム11の周囲には、電子写真方式によってトナー画像を記録シートS上に形成するための帯電装置12、露光装置13、現像装置14、転写ローラ15が、感光体ドラム11の周回移動方向に沿って、その順番で設けられている。感光体ドラム11は、画像形成装置の正面側から背面側に沿って水平状態に配置されている。
【0023】
なお、以下においては、正面側から背面側に向って右側および左側をそれぞれ、単に右側および左側と称する。
このプリンタでは、図示しない制御部において、外部機器から入力される画像データがレーザダイオードの駆動信号に変換され、その駆動信号によって、露光装置13に設けられたレーザダイオードが駆動される。これにより、露光装置13からは画像データに応じたレーザ光Lが感光体ドラム11の表面に照射される。感光体ドラム11の表面は、予め帯電装置12によって所定電位に帯電されており、露光装置13から照射されるレーザ光Lにて露光されることよって、感光体ドラム11の表面上に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置14においてトナーによって現像されてトナー画像として可視化される。
【0024】
感光体ドラム11の下方には、記録用紙、OHPシート等の記録シートSを複数枚収容可能になった記録シートカセット21が設けられており、給紙ローラ22によって記録シートカセット21内の記録シートSが1枚ずつ繰り出される。記録シートカセット21から繰り出された記録シートSは、タイミングローラ対23を介して感光体ドラム11へ搬送される。
【0025】
感光体ドラム11の側方には矢印B方向に回転する転写ローラ15が、感光体ドラム11に圧接した状態で設けられており、記録シートSは、転写ローラ15と感光体ドラム11との圧接によって形成された転写ニップ部を通過する。転写ニップ部を記録シートSが通過する際には、転写ローラ15に印加された転写電圧によって発生する転写電界の作用により、感光体ドラム11上に形成されたトナー画像が記録シートS上に転写される。トナー画像が転写された記録シートSは、剥離爪16によって感光体ドラム11から剥離されて搬送経路25を通って、定着ユニット30へ搬送される。
【0026】
定着ユニット30は、それぞれが水平な状態で並んで配置された加熱ローラ31および定着ローラ32と、加熱ローラ31および定着ローラ32に巻き掛けられて周回移動する定着ベルト33と、定着ベルト33を挟んで定着ローラ32に対向するように水平方向に並んで配置された加圧ローラ34とを有している。加熱ローラ31の内部にはヒータランプ(図示せず)が設けられており、加熱ローラ31に巻き掛けられた定着ベルト33がヒータランプによって加熱される。
【0027】
定着ベルト33および加圧ローラ34は、ハウジング35の内部に、正面側および背面側に沿った状態で収容されており、相互に圧接された状態になっている。定着ベルト33および加圧ローラ34の圧接部分は、トナー画像が転写された記録シートSが通過する定着ニップ部になっており、定着ベルト33が押圧された加圧ローラ34の回転により記録シートSが搬送される。
【0028】
トナー画像が転写された記録シートSが定着ニップ部へ搬送されると、定着ユニット30を有するシート搬送装置によって、定着ニップ部を通過するように搬送される。定着ニップ部内に進入した記録シートSは、回転駆動される加圧ローラ(駆動部材)34と、加圧ローラ34の回転に追従して周回移動する定着ベルト33とによって挟持された状態で搬送されて、定着ニップ部を通過する間に、加熱ベルト33によって所定の定着温度に加熱されて、加熱ベルト33および加圧ローラ34によって加圧される。これにより、記録シートS上のトナー画像が記録シートS上に定着される。
【0029】
画像形成装置の背面側部分には、駆動ユニット40(図7参照)が設けられており、定着ユニット30は、駆動ユニット40と、動力伝達機構50(図7参照)を介して動力伝達状態になると、加圧ローラ34が回転駆動される。これにより、加圧ローラ34に圧接された加熱ベルト33が加圧ローラ34の回転に追従して周回移動して、定着ニップ部内に進入した記録シートを搬送する。
【0030】
このように、定着ユニット30と駆動ユニット40と動力伝達機構50とは、記録シートSを搬送するシート搬送装置を構成している。
定着ニップ部を通過した記録シートSは、加熱ベルト33および加圧ローラ34によって排紙ローラ24へ搬送されて、排紙ローラ24によって排紙トレイ19上に排出される。
【0031】
画像形成装置の装置筐体における右側の側面(定着ユニット30に近接した側面)には、開閉扉(開閉部材)26が設けられている。開閉扉26は、正面側部分が図1の左右方向に回動されることによって、画像形成装置の右側の側面を開放状態および閉鎖状態とする。開閉扉26は、装置筐体における右側の側面を閉鎖した状態では、定着ユニット30、定着ユニット30へ記録シートSを搬送する搬送経路25等を覆っており、装置筐体における右側の側面が開放された状態では、定着ユニット30、搬送経路25の内部等が外部に露出した状態になる。
【0032】
<シート搬送装置の構成>
図2は、シート搬送装置における開閉扉26と定着ユニット30との関係を説明するための主要部の斜視図であり、開閉扉26が閉じた状態から30°程度だけ回動した状態を示している。また、図3は、内部構成を説明するために、図2の斜視図において、開閉扉26の上部を取り除いた状態を示している。
【0033】
図2に示すように、画像形成装置の背面側上部には、背面側フレーム28が設けられており、この背面側フレーム28に、定着ユニット30の駆動部である駆動ユニット40(図7参照)が取り付けられている。
背面側フレーム28は、正面側に位置するフレーム前面28aと、背面側に位置するフレーム後面28bと、左右の両側にそれぞれ位置するフレーム右側面28cおよびフレーム左側面28dとによって中空の直方体形状に形成されている。フレーム前面28aの下部には、定着ユニット30における背面側部分が対向した状態になっている。
【0034】
背面側フレーム28のフレーム右側面28cには、上下一対のブラケット28xおよび28yが設けられている。各ブラケット28xおよび28yには、開閉扉26の上部および上下方向の中程をそれぞれ回転可能に支持する扉支持軸27a(図2にのみ示されている)および27b(図3にのみ示されている)が同軸状態でそれぞれ垂直に取り付けられている。開閉扉26は、垂直状態になった扉支持軸27aおよび27bを中心として回動するようになっている。
【0035】
開閉扉26は、定着ユニット30へ搬送される記録シートSが定着ユニット30において紙詰まり(ジャム)状態になった場合に、扉支持軸27aおよび27bを中心として回動される。これにより、画像形成装置の装置筐体における右側の側面が開放されて、ジャム状態の記録シートSを定着ユニット30から取り除くことができる。
図4および図5は、それぞれ、シート搬送装置の主要部の構成を示す平面図である。背面側フレーム28には、定着ユニット30の駆動源である駆動ユニット40が取り付けられている。駆動ユニット40の動力を定着ユニット30の加圧ローラ34に伝達する動力伝達機構50は、開閉扉26に取り付けられた係合突起26aにより、開閉扉26の開閉に連動して動力の非伝達状態と伝達状態とに切り替えられる。
【0036】
なお、図4は、開閉扉26が閉じられた状態を示しており、動力伝達機構50は、駆動ユニット40の動力を定着ユニット30に伝達する動力伝達状態になっている。また、図5は、開閉扉26が開けられた状態を示しており、動力伝達機構50は、駆動ユニット40の動力を定着ユニット30に伝達しない動力非伝達状態になっている。
さらに、図6は、シート搬送装置における主要部の構成を示す右側面図、図7は、図6に示すシート搬送装置の動作説明図であり、図6は開閉扉26が閉じられた状態(動力伝達機構50は動力伝達状態)、図7は、開閉扉26が開けられた状態(動力伝達機構50は動力非伝達状態)を示している。
【0037】
また、図8および図9は、シート搬送装置の主要部の構成を示す斜視図であり、図8は、開閉扉26が閉じられた状態(動力伝達機構50は動力伝達状態)、図9は、開閉扉26が開けられた状態(動力伝達機構50は動力非伝達状態)を示している。なお、図8および図9のそれぞれにおいては、定着ユニット30のハウジング35および背面側フレーム28を取り除いた状態で示している。
【0038】
図4および図6に示すように、駆動ユニット40は、画像形成装置の背面側フレーム28におけるフレーム後面28bに取り付けられている。背面側フレーム28におけるフレーム後面28bの下端部には、水平状態で正面側に延出したフレーム支持部28eが設けられており、このフレーム支持部28e上に動力伝達機構50が設けられている。動力伝達機構50は、駆動ユニット40の下側に配置されている。
【0039】
図4、図6、図8に示すように、定着ユニット30の加圧ローラ34は、定着ベルト33に圧接されて定着ニップ部を形成するローラ本体部34aと、ローラ本体部34aの軸心部を通過するように配置された回転軸34bとを備えている。ローラ本体部34aと回転軸34bとは一体となって回転するようになっている。
図4および図6に示すように、回転軸34bにおける背面側に位置する端部は、定着ユニット30におけるハウジング35の背面側側面35aを貫通して、ハウジング35の背面側側面35aと、背面側フレーム28のフレーム前面28aとの間に位置しており、その端部に、定着入力ギア36が取り付けられている。定着入力ギア36は、回転軸34bと一体となって回転するようになっており、従って、ローラ本体部34aとも一体となって回転する。
【0040】
定着入力ギア36には、定着側中間ギア37が噛み合っている。図4および図6に示すように、定着側中間ギア37は、ハウジング31の背面側側面35aに水平状態で支持された中間支持軸38に回転可能に取り付けられている。中間支持軸38は、回転軸34bに対して開閉扉26から離れた下側の位置に、回転軸34bに平行な状態で設けられている。
【0041】
駆動ユニット40は、背面側フレーム28におけるフレーム後面28bの背面側に取り付けられた駆動モータ41を有している。駆動モータ41の駆動軸は、水平状態でフレーム後面28bを貫通して正面側に突出している。フレーム後面28bの正面側に突出した駆動モータ41の駆動軸には、駆動ギア42が同軸状態で取り付けられている。駆動ギア42は、駆動モータ41の駆動軸と一体となって回転する。なお、駆動ギア42としては、はす歯を有するウォームギアが使用されている。
【0042】
駆動ギア42には、背面側フレーム28内に配置された減速ギア43(第1回転伝達部材)が噛み合っている。減速ギア43は、背面側フレーム28のフレーム前面28aに、駆動モータ41の駆動軸に平行な水平状態で支持された減速支持軸44に、同軸状態で回転可能に取り付けられている。
図10は、シート搬送装置の動力伝達機構50を減速ギア43とともに示す斜視図である。減速ギア43は、駆動モータ41に取り付けられた駆動ギア42に噛み合った入力ギア部43aと、入力ギア部43aよりも正面側に同軸状態で設けられた出力ギア部43bとを有している。入力ギア部43aは、駆動ギア42よりも大径になっており、ウォームギアである駆動ギア42に噛み合ったはす歯を有している。出力ギア部43bは、駆動ギア42よりも大径であって入力ギア部43aよりも小径になっており、平歯を有している。
【0043】
動力伝達機構50は、開閉扉26の開閉動作に連動して、上方の駆動ユニット40における出力ギア部43bとは動力伝達状態および動力非伝達状態になる。動力伝達機構50の正面側部分は、図4および図6に示すように、定着ユニット30における加圧ローラ34の背面側部分の下方に位置しており、定着ユニット30に設けられた定着側中間ギア37とは動力伝達状態になっている。
【0044】
動力伝達機構50は、背面側フレーム28のフレーム前面28aとフレーム後面28bとに回転可能な状態で水平に架設された動力伝達軸52を有している。動力伝達軸52は、駆動ユニット40の減速ギア43が取り付けられた減速支持軸44の下側において開閉扉26から離れた位置に設けられている。動力伝達軸52の正面側端部は、フレーム前面28aから正面側に突出している。
【0045】
フレーム前面28aから正面側に突出した動力伝達軸52の正面側端部には、定着側中間ギア37に噛み合ったドッキングギア51が取り付けられている。ドッキングギア51は、定着側中間ギア37よりも小径であり、動力伝達軸52とは一体となって回転するようになっている。
動力伝達軸52における背面側フレーム28のフレーム前面28aとフレーム後面28bとの間にはスライドギア(第2回転伝達部材)53が取り付けられている。スライドギア53には、例えば、動力伝達軸52に設けられたキー溝に対してスライド可能に嵌合されるピンが取り付けられており、ピンがキー溝に対してスライド可能に装着されることによって、スライドギア53は、動力伝達軸52に対して、軸方向にスライド可能な状態で動力伝達軸52と一体となって回転可能になっている。
【0046】
図10に示すように、スライドギア53は、動力伝達軸52に対して背面側にスライドすることによって、駆動ユニット40に設けられた減速ギア42の出力ギア部43bに噛み合った動力伝達状態になる。これに対して、図5、図7、図9に示すように、スライドギア53が正面側にスライドすることにより、出力ギア部43bとの噛み合い状態を解消して、出力ギア部43bからの動力を伝達されない動力非伝達状態になる。
【0047】
図4および図6に示すように、動力伝達軸52の下方には、スライドギア53を動力伝達軸52に沿ってスライドさせる切り換えレバー54が設けられている。切り換えレバー54は、背面側フレーム28におけるフレーム後面28bの下端部に設けられたフレーム支持部28e上に、水平面に沿って回動可能に取り付けられており、開閉扉26の開閉動作に連動して水平面内に沿って回動されるようになっている。
【0048】
図11は、正面側から見た切り換えレバー54の斜視図、図12は、下側から見た切り換えレバー54の斜視図である。切り換えレバー54は、フレーム支持部28e上に載置される保持部材54Xと、スライドギア53を挟み込むように保持部材54X上に保持された正面側当接部(当接部材)54Yおよび背面側当接部(当接部材)54Zとを有している。正面側当接部54Yはスライドギア53の正面側に配置され、背面側当接部54Zはスライドギア53の背面側に配置されており、それぞれが、保持部材54Xから上方に突出している。保持部材54Xと正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zとは、合成樹脂による一体成形品である。
【0049】
また、図12に示すように、切り換えレバー54の保持部材54Xには、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zとは反対側にコイルバネ55が取り付けられている。
図13(a)は切り換えレバー54の平面図、図13(b)は、その側面図、図13(c)は、その縦断面図である。なお、図13(a)〜(c)においては、コイルバネ55は省略している。
【0050】
保持部材54Xには、図10に示すように、保持部材54Xにおける開閉扉26に近接した部分に、画像形成装置の正面側に向って突出した突出部54aが設けられている。また、開閉扉26から離れて位置する部分が、スライドギア53の下方において、スライドギア53のスライド領域に対向している。保持部材54Xの上面54bは、スライドギア53とは適当な間隔をあけた状態で水平状態になっている。
【0051】
図10〜図13に示すように、保持部材54Xの上面54bにおける開閉扉26に近接した側縁には、上面54bから垂下した状態のガイド側板54cが設けられている。このガイド側板54cには、開閉扉26が閉じられた状態になった場合(図6参照)に、開閉扉26に取り付けられた係合突起26aの先端部が圧接されるようになっており、係合突起26aの先端部が圧接されることにより、切り換えレバー54は、背面側に回動した状態になる。このような状態になると、係合突起26aによって切り換えレバー54の回動が規制される。
【0052】
なお、係合突起26aは、図4〜図9に示すように、帯板状であって、開閉扉26の回動支点である扉支持軸27bの近傍において、厚さ方向が垂直になった水平な状態で、開閉扉26から離れる方向に延出するように取り付けられている。係合突起26aの先端部は、水平面内において円弧状に湾曲した状態で開閉扉26から離れる方向に突出しており、その先端部が、保持部材54Xのガイド側板54cに当接するようになっている。
【0053】
図10〜図13に示すように、保持部材54Xのガイド側板54cの外側面は、背面側に位置する圧接面54mと、正面側に位置するガイド面54nとを有している。圧接面54mは、切り換えレバー54が背面側に回動した状態では、画像形成装置の正面側から背面側に沿った状態(閉じられた状態の開閉扉26に平行な状態)になっている。ガイド面54nは、突出部54aにおける開閉扉26側の外側面に設けられており、正面側になるにつれて、閉じられた状態の開閉扉26から離れるように傾斜している。突出部54aにおける正面側に位置する先端部は、画像形成装置の左右方向に沿った状態(閉じられた状態の開閉扉26とは直交状態)になっている。
【0054】
開閉扉26に設けられた係合突起26aの円弧状の先端部は、開閉扉26が閉じられると、ガイド側板54cにおけるガイド面54nに近接した圧接面54m上に圧接される。開閉扉26が開けられた状態に回動されると、係合突起26aの先端部も開閉扉26と一体となって移動する。係合突起26aは、開閉扉26と一体に構成されているために、開閉扉26の回動によって、係合突起26aの先端部は、圧接面54mからガイド面54nへスライドする。
【0055】
図12〜図13に示すように、保持部材54Xにおける上面54bの裏側には、下方に向って突出する円筒状のボス部54dが設けられている。このボス部54dの下側に位置する先端部は、フレーム支持部28eに設けられた貫通孔(図示せず)に回動可能に挿入されており、ボス部54dの軸心(支軸)を中心として、保持部材54Xが水平方向に回動(回転移動)するようになっている。ボス部54dは、圧接面54mの正面側および背面側方向のほぼ中央部であって、突出部54aの正面側および背面側方向とは直交する方向のほぼ中央部に設けられている。
【0056】
保持部材54Xは、ボス部54dの支軸を中心として水平面に沿って回動することにより、スライドギア53のスライド領域に対向した部分は、スライドギア53のスライド方向にほぼ沿った状態で、正面側および背面側に回動する。なお、保持部材54Xの回動中心である支軸(ボス部54dの軸心)の位置は、開閉扉26の回動中心である扉支持軸27bの軸心位置よりも、若干、背面側に位置している。
【0057】
図12に示すように、コイルバネ55は金属製の線材をコイル状に巻回したものであり、ボス部54dに嵌合状態で取り付けられている。コイルバネ55を構成する線材の一方の端部55aは、保持部材54Xの突出部54a側に向って延出しており、その先端部がフレーム支持部28eの側縁に係合されている。コイルバネ55を構成する線材の他方の端部55bは、保持部材54Xの上面54bに設けられた貫通孔54eを通って、上面54bの上方に引き出されている。貫通孔54e内を貫通する線材の端部55bは、貫通孔54e内において保持部材54Xの上面54bに係合している。
【0058】
コイルバネ55は、ボス部54dを中心として、切り換えレバー54の突出部54aが開閉扉26に接近する方向(図10の矢印D方向)に切り換えレバー54を付勢しており、開閉扉26が閉じた状態では、開閉扉26に設けられた係合突起26aの先端部がガイド側板54cにおける圧接面54mに圧接されている。これにより、圧接面54mが閉じた状態の開閉扉26に平行な状態で、切り換えレバー54の回動が規制される。
【0059】
これに対して、開閉扉26が開けられた状態になると、係合突起26aの先端部がガイド側板54cにおける圧接面54mから正面側のガイド面54nへと移動し、ガイド側板54cとの圧接状態を解除する。これにより、切り換えレバー54は、コイルバネ55の付勢力によって、保持部材54Xにおける支軸を中心として、切り換えレバー54の突出部54aが開閉扉26に接近する方向に回動される。
【0060】
図6、図7、図10に示すように、保持部材54Xにおけるスライドギア53のスライド領域に対向した部分に設けられた正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zは、図13(a)に示すように、切り換えレバー54における保持部材54Xの上面54b(水平面)において、ボス部54dの支軸の位置である切り換えレバー54の回動中心Ocを通って動力伝達軸52の軸心線CLとは直交状態になった直線HL(以下、基準線とする)を挟んだ状態で、動力伝達軸52の軸心線CLに沿って所定の間隔をあけて配置されている。
【0061】
図11に示すように、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zは、それぞれ、半円筒(ハーフパイプ)形状をしており、それぞれの中心軸が保持部材54Xの支軸に平行になっている。図10に示すように、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zの間に、スライドギア53の一部(動力伝達軸52の下側を周回移動する部分)が、適当な遊びを有した状態で嵌合されている。正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zは、半円筒形状の外周面が、背面側および正面側(それぞれスライドギア53側)のそれぞれに向って突出するように配置されている。
【0062】
図14(a)および(b)は、切り換えレバー54における保持部材54Xの支軸方向(平面方向)から見たときの模式図であり、図14(a)は、スライドギア53が減速ギア43と動力伝達状態になった場合、図14(b)は、スライドギア53が減速ギア43と動力非伝達状態になった場合を示している。
図14(a)に示すように、正面側当接部54Yの外周面は、周方向の両側にそれぞれ位置する側縁部(垂直方向にほぼ沿った両側の側縁部)を除いて一定の半径rの円周面になっているが、周方向の両側の側縁部においては、それぞれ、半径rの円周面の接線方向に沿った平板形状になっている。正面側当接部54Yにおける半円筒形状の外周面は、少なくとも、保持部材54Xの回動に伴って動力伝達の切り換え開始から切り換え終了までの間にスライドギア53に当接する範囲において形成されている。
【0063】
また、背面側当接部54Zも、周方向の両側にそれぞれ位置する側縁部(垂直方向に沿った両側の側縁部)を除いて、一定の半径r(正面側当接部54Yの円周面の半径rと同一)の円周面になっているが、周方向の両側の側縁部においては、それぞれ、半径rの円周面の接線方向に沿った平板形状になっている。背面側当接部54Zにおける半円筒形状の外周面も、少なくとも、保持部材54Xの回動に伴って動力伝達の切り換え開始から切り換え終了までの間にスライドギア53に当接する範囲において形成されている。
【0064】
正面側当接部54Yにおける半径rの円周面の中心軸位置Ob(以下、正面側中心軸位置Obとする)は、背面側当接部54Zにおける半径rの円周面の中心軸位置Oa(以下、背面側中心軸位置Oaとする)よりも、保持部材54Xの回動中心Ocから離れて配置されており、正面側中心軸位置Obと背面側中心軸位置Oaとの間に、動力伝達軸52の軸心線CLを含む垂直面が位置している。
【0065】
なお、正面側当接部54Yは、切り換えレバー54の突出部54aが開閉扉26から離れる方向に回動されると、画像形成装置の背面側へ回動してスライドギア53の正面側の側面に当接する。このような状態で、切り換えレバー54がさらに同じ方向に回動されると、スライドギア53は正面側当接部54Yにより動力伝達軸52に沿って背面側にスライドされて、スライドギア53は、駆動ユニット40における減速ギア43の出力ギア部43bに噛み合った状態(動力伝達状態)になる。
【0066】
スライドギア53と減速ギア43の出力ギア部43bとが噛み合った動力伝達状態では、正面側当接部54Yにおける半径rの円周面が、スライドギア53における正面側の側面に対向した状態になっており、また、背面側当接部54Zにおける半径rの円周面が、スライドギア53における背面側の側面に対向した状態になっている。この場合、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zの間隔がスライドギア53の厚さよりも広くなっており、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zとスライドギア53との間に遊びがある。
【0067】
本実施形態では、スライドギア53と減速ギア43の出力ギア部43bとが噛み合った動力伝達状態では、背面側当接部54Zの当接位置は、動力伝達軸52の軸心線CLを含む垂直面に対して回動中心Oc側に若干ずれており、正面側当接部54Yの当接位置は、動力伝達軸52の軸心線CLを含む垂直面に対して回動中心Oc側とは反対側に若干ずれている。
【0068】
<シート搬送装置の動作>
このような構成のシート搬送装置では、開閉扉26が閉じた状態では、開閉扉26に設けられた係合突起26aの先端部が、切り換えレバー54におけるガイド側板54cの圧接面54mに圧接した状態になっている(図6、図8参照)。開閉扉26が閉じられる際には、係合突起26aの先端部は、まず、ガイド側板54cのガイド面54nに当接した状態になり、切り換えレバー54の突出部54aを、開閉扉26から離れる方向に押圧する。
【0069】
これにより、切り換えレバー54は、コイルバネ55の付勢力に抗して、ボス部54dの軸心(支軸)を中心として、切り換えレバー54の突出部54aが開閉扉26から離れる方向に水平面に沿って回動される。切り換えレバー54の回動により、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zは、画像形成装置の背面側へと回動し、両者の間に位置するスライドギア53が、正面側当接部54Yによって動力伝達軸52に沿って画像形成装置の背面側へスライドされる。
【0070】
スライドギア53が画像形成装置の背面側へスライドすると、スライドギア53は、駆動ユニット40における減速ギア43の出力ギア部43bに噛み合った状態になり、スライドギア53と減速ギア43とは動力伝達状態になる。このような状態になると、係合突起26aの先端部が、切り換えレバー54におけるガイド側板54cの圧接面54mに圧接した状態になる。
【0071】
開閉扉26が閉じられた状態になると、開閉扉26は、磁力等によって閉じられた状態を保持する。これにより、係合突起26aは、水平方向に沿って背面側に回動された切り換えレバー54を、コイルバネ55の付勢力が加わった状態で、回動しない状態に規制する。
係合突起26aによって切り換えレバー54の回動が規制されると、切り換えレバー54に設けられた正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zの間に位置するスライドギア53は、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zとは圧力が加わらない状態になっている。
【0072】
このような状態で、画像形成動作が実行されることによって、駆動ユニット40の駆動モータ41が回転駆動されると、駆動モータ41の動力は、駆動ギア42を介して減速ギア43に伝達され、減速ギア43から、動力伝達状態になったスライドギア53に伝達される。
スライドギア53は、動力伝達軸52と一体となって回転することから、スライドギア53の回転によって動力伝達軸52が回転し、動力伝達軸52に取り付けられたドッキングギア51が回転する。ドッキングギア51は、定着ユニット30の定着側中間ギア37と噛み合った状態になっていることから、ドッキングギア51の回転は、定着側中間ギア37に伝達されて、定着側中間ギア37に噛み合った定着入力ギア36が回転する。
【0073】
これにより、定着入力ギア36が取り付けられた加圧ローラ34の回転軸34bが回転し、回転軸34bと一体となったローラ本体部34aが回転する。加圧ローラ34のローラ本体部34aが回転すると、ローラ本体部34aに圧接された定着ベルト33が周回移動し、定着ニップ部に搬送される記録シートSが、相互に圧接されたローラ本体部34aと定着ベルト33とによって搬送される。記録シートSが定着ニップ部を通過すると、記録シート上の未定着のトナー画像が記録シートSに定着される。
【0074】
この場合、前述したように、回転状態になったスライドギア53は、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zとは遊びを有した状態になっていることから、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zからの圧力が作用せず、スライドギア53は、駆動モータ41の回転を、加圧ローラ34に安定的に伝達することができる。
なお、スライドギア53は、動力伝達軸52に対してスライド可能になっているために、回転状態になったスライドギア53が正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zのいずれか一方と接触状態になるおそれがある。しかし、この場合には、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zとスライドギア43との間に遊びが形成されているために、スライドギア53は、正面側当接部54Yまたは背面側当接部54Zと接触しても、接触時における正面側当接部54Yまたは背面側当接部54Zからの反力によって、正面側当接部54Yまたは背面側当接部54Zから離れる方向にスライドする。
【0075】
このように、スライドギア53は、動力伝達軸52の軸方向に圧力が加わっていないために、正面側当接部54Yまたは背面側当接部54Zと接触しても、大きな圧力が加わるおそれがない。しかも、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zがスライドギア53に接触しても、その接触状態が維持されないために、スライドギア53の摩耗が抑制される。また、この場合には、スライドギア53の回転速度が大きく変動するおそれがなく、駆動モータ41の回転を加圧ローラ34に安定的に伝達することができる。
【0076】
このような画像形成動作中に、定着ニップ部において記録シートSの紙詰まり(ジャム)が発生すると、その詰まった記録シートSを取り除く作業が実行される。この場合には、まず、画像形成装置(装置筐体)の右側の側面が開放されるように、開閉扉26が扉支持軸27aおよび27bを中心として回動される(図2、3、5、7、9参照)。これにより、開閉扉26に設けられた係合突起26aの先端部が、切り換えレバー54におけるガイド側板54cの圧接面54mからガイド面54nへとスライドし、圧接面54mとの圧接を解除する(図5、7、9参照)。
【0077】
このような状態で、開閉扉26がさらに同方向に回動されると、開閉扉26と一体となった係合突起26aの先端部は、切り換えレバー54の突出部54aから離れる方向に移動する。これにより、切り換えレバー54は、コイルバネ55の付勢力によって、突出部54aが開閉扉26に接近する方向へ、ボス部54dの支軸を中心として回動し、係合突起26aが取り付けられた開閉扉26は、コイルバネ55の付勢力によって、画像形成装置の右側の側面の閉鎖状態を解消する。なお、切り換えレバー54は、コイルバネ55の付勢力による回動方向には、特に回動が規制されていないために、コイルバネ55の付勢力が完全に解放された状態になるまで回動される。
【0078】
切り換えレバー54が回動されると、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zの間に位置するスライドギア53が、背面側当接部54Zによって押圧されて、動力伝達軸52に沿って画像形成装置の正面側へスライドする。これにより、スライドギア53は、駆動ユニット40の減速ギア43における出力ギア部43bとの噛み合いを解消し、スライドギア53と減速ギア43とは動力非伝達状態になる。
【0079】
この場合、動力伝達軸52に対してスライド可能になったスライドギア53は、背面側当接部54Zの当接による押圧力を受けるだけであるために、スライドギア53は、スライド時に加わる抵抗力が小さく、円滑かつ迅速にスライドする。しかも、スライドギア53には大きな負荷が加わらないことから、スライドギア53の破損、変形等を抑制することができ、スライドギア53を長期にわたって安定的に使用することができる。
【0080】
スライドギア53が減速ギア43と動力非伝達状態になると、開閉扉26が画像形成装置の右側の側面を開放しており、定着ユニット30における背面側部分およびシートの搬送経路25の内部が露出した状態になっている。このために、定着ユニット30における定着ニップ部に挟まれた状態になった記録シートSを下方に引き抜くことができる。
この場合、スライドギア53が減速ギア43との噛み合いを解消した動力非伝達状態になっていることから、スライドギア53が取り付けられた動力伝達軸52は、減速ギア43によって回転が規制されることがなく、自由に回転できる状態になっている。このために、動力伝達軸52に取り付けられたドッキングギア51、ドッキングギア51と噛み合った定着側中間ギア37、定着側中間ギア37に噛み合った定着入力ギア36も自由に回転できる状態になっており、定着ローラ34の回転軸34bおよびローラ本体部34aも自由に回転できる状態になっている。
【0081】
このような状態で、定着ニップ部に挟まれた状態の記録シートSを下方に引き抜くと、定着ニップ部から引き抜かれる記録シートSに追従して、ローラ本体部34aが自由に回転する。これにより、記録シートSは、定着ニップ部からの抵抗力をほとんど受けることなく、円滑に引き抜かれる。
この場合、動力伝達軸52に取り付けられたスライドギア53は、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zのそれぞれとは遊びを有した状態になっていることから、記録シートSを引き抜く際に、スライドギア53に対して、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zのそれぞれにより、加圧ローラ34の回転に対して負荷になるような力が作用するおそれがない。これにより、定着ニップ部からの抵抗力をさらに低減することができ、引き抜かれる記録シートSが破断することを防止することができる。従って、記録シートSの破片が定着ニップ部に残留するおそれがない。
【0082】
なお、回転状態になったスライドギア53における正面側の側面および背面側の側面は、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zにおけるそれぞれの半円筒形状の外周面に接触する。従って、スライドギア53と、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zとの接触面積が小さく、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zのそれぞれからスライドギア53に加わる摩擦力も小さくなる。これにより、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zとの当接によるスライドギア53の摩耗を抑制することができる。
【0083】
次に、図14(a)および(b)に基づいて、スライドギア53と切り換えレバー54との関係を説明する。スライドギア53が減速ギア43と噛み合った動力伝達状態を示す図14(a)において、スライドギア53における正面側当接部54Yと背面側当接部54Zとの間を通過する部分の厚さ(動力伝達軸52に沿った長さ)をLtとする。
また、切り換えレバー54の回動中心Ocから、背面側当接部54Zにおける半径rの外周面の中心軸位置である背面側中心軸位置Oaまでの距離をLa、回動中心Ocから正面側当接部54Yにおける半径rの外周面の中心軸位置である正面側中心軸位置Obまでの距離をLbとする。さらに、回動中心Ocと、背面側中心軸位置Oaおよび背面側中心軸位置Oaのそれぞれとを結ぶ直線とによって形成される角度(鋭角)をαとする。
【0084】
さらに、図14(a)に示すように、スライドギア53が減速ギア43と動力伝達状態であって、背面側当接部54Zがスライドギア53の背面側の側面に当接した場合に、回動中心Ocと背面側中心軸位置Oaとを結ぶ直線と、切り換えレバー54の回動中心Ocを通る上面54b(水平面)上の基準線HLとによって形成される角度をωとする。また、このような動力伝達状態において、正面側当接部54Yと背面側当接部54Zとの間隔(最短距離)をLc、相互に対向するスライドギア53と正面側当接部54Yとの間隔(最短距離)をLdとする。
【0085】
また、切り換えレバー54が回動してスライドギア53が減速ギア43との噛み合いを解消した動力非伝達状態を示す図14(b)において、背面側当接部54Zの図14(a)に示す状態からの回動角度(切り換えレバー54の回動角度)をθ、図14(a)に示す状態からのスライドギア53のスライド量をLX、スライドギア53が減速ギア43と動力非伝達状態となった場合における正面側当接部54Yと背面側当接部54Zとの間隔(最短距離)をLe、相互に対向するスライドギア53と正面側当接部54Yとの間隔(最短距離)をLfとする。なお、背面側当接部54Zは、スライドギア53を動力非伝達状態とする場合には、切り換えレバー54の回動によって基準線HLよりも正面側にまで回動するようになっている(θ−ω>0)。
【0086】
この場合、スライドギア53のスライド量LX、動力伝達状態での正面側当接部54Yと背面側当接部54Zとの間隔(最短距離)Lc、動力非伝達状態でのスライドギア53と正面側当接部54Yとの間隔(最短距離)Lfは、以下の式(1)、(2)、(3)によって表わされる。
LX=La・sinω+La・sin(θ−ω)−2r・・・(1)
Lc=La・sinω+Lb・sin(α−ω)−2r・・・(2)
Le=Lb・sin(α+θ−ω)−La・sin(θ−ω)−2r・・・(3)
なお、Lc=Lt+Ld、Le=Lt+Lfであることと、Ld>0、Lf>0であることから、Lc−Lt>0、Le−Lt>0となり、以下の式(4)および(5)が成立する。
【0087】
Lc−Lt=La・sinω+Lb・sin(α−ω)−2r−Lt>0・・・(4)
Le−Lt=Lb・sin(α+θ−ω)−La・sin(θ−ω)−2r−Lt>0・・・(5)
従って、(4)式および(5)が成立するように、正面側当接部54Yと背面側当接部54Zとの間に位置するスライドギア53の厚さLt、動中心Ocから背面側中心軸位置Oaおよび正面側中心軸位置Obまでのそれぞれ距離LaおよびLb、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zにおける円周面の半径r、切り換えレバー54の回動角度α等が設定される。
【0088】
なお、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zのそれぞれがスライドギア53に当接してスライドギア53をスライドさせる場合には、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zのそれぞれからスライドギア53に圧力が加わる。このような圧力によって、スライドギア53と動力伝達軸52との間の摩擦による抵抗力をできるだけ小さくするためには、保持部材54Xの支軸方向から見て、切り換えレバー54の回動時における正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zのそれぞれとスライドギア53との当接点が、動力伝達の切り換え開始から切り換え終了までに描く軌跡TL(図14(b)に背面側当接部54Zの軌跡のみを示す)と、動力伝達軸52の軸心線CLが重なること、すなわち、軌跡TLが動力伝達軸52の軸心線CLを含む垂直面と傾斜しており、しかも、その傾斜角度が小さく、さらには、それぞれの軌跡TLと動力伝達軸52の軸心線CLとの距離が小さくて軸心線CLに近接していることが好ましい。
【0089】
このことから、それぞれの軌跡TLと動力伝達軸52の軸心線CLとの距離は、所定の範囲内になっていることが好ましい。それぞれの軌跡TLと動力伝達軸52の軸心線CLとの距離が所定の範囲になるように、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zのそれぞれの位置と保持部材54Xの支軸との位置が決定される。
このような構成とすることによって、スライドギア53のスライド時に正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zから作用する圧力における動力伝達軸52の軸心線CLと直交する方向に沿って作用する分力が小さく、動力伝達軸52の軸心線CLに沿った分力が大きくなる。
【0090】
これにより、スライドギア53が動力伝達軸52に対して大きく傾斜することを抑制することができるために、スライドギア53のスライド時に動力伝達軸52との間に大きな摩擦力が加わることを抑制することができ、スライドギア53を円滑にスライドさせることができる。しかも、スライドギア53がスライドする際に、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zのそれぞれとスライドギア53との当接位置のスライド量も少なくなり、スライドギア53の摩耗、変形、破損等を抑制することができる。
【0091】
図15(a)は、切り換えレバー54に設けられた背面側当接部54Zとスライドギア53との好適な関係を説明するための保持部材54Xの支軸方向(平面方向)から見た模式図、図15(b)は、比較例における背面側当接部とスライドギアとの関係を説明するための保持部材54Xの支軸方向(平面方向)から見た模式図である。
切り換えレバー54の回動によってスライドギア53がスライドする際に、背面側当接部54Zからスライドギア43に、動力伝達軸52の軸心線CLとは直交する方向に沿って作用する圧力を小さくするためには、図15(a)に示すように、保持部材54Xの支軸方向から見て、スライドギア53に対する背面側当接部54Zとスライドギア53との当接点の位置が、動力伝達の切り換え開始時および切り換え終了時のそれぞれにおいて、動力伝達軸52の軸心線CLと重なっていること、すなわち、軸心線CLを含む垂直面上にあることが好ましい。
【0092】
このような構成では、切り換えレバー54の回動時に、背面側当接部54Zからスライドギア53に加わる圧力によって、動力伝達軸52の軸心線CLを中心としたモーメントが加わるが、当該モーメントを比較的小さくすることが可能になる。これにより、スライドギア53と動力伝達軸52との間に生じる摩擦力を低減することができる。
図15(b)は、スライドギア53が減速ギア43と動力伝達状態および動力非伝達状態のそれぞれの場合に、スライドギア53に対する背面側当接部54Zの当接位置が、動力伝達軸52の軸心線CLを含む垂直面に対して、切り換えレバー54の回動中心Ocとは反対側に離れている場合を示している。
【0093】
この場合には、切り換えレバー54の回動時に、背面側当接部54Zからスライドギア53に加わるモーメント(動力伝達軸52の軸心線CLを中心としたモーメント)は、図15(a)に示す場合よりも大きくなり、これにより、スライドギア53が動力伝達軸52に対して傾斜した状態になって、動力伝達軸52との間に生じる摩擦力が大きくなるおそれがある。
【0094】
また、この場合には、スライドギア53に加わる圧力の位置が、切り換えレバー54の回動中心Ocから離れているために、切り換えレバー54の回動中心Ocを中心としたモーメントも、図15(a)に示す場合よりも大きくなる。
なお、スライドギア53が減速ギア43と動力伝達状態および動力非伝達状態のそれぞれの場合に、スライドギア53に対する背面側当接部54Zの当接位置が、動力伝達軸52の軸心線CLを含む垂直面に対して、切り換えレバー54の回動中心Oc側に離れている場合も、同様に、背面側当接部54Zからスライドギア53に加わるモーメント(動力伝達軸52の軸心線CLを中心としたモーメント)が、図15(a)に示す場合よりも、大きくなるために、動力伝達軸52との間に生じる摩擦力が大きくなる。正面側当接部54Yについても同様である。
【0095】
<変形例>
なお、上記の実施形態では、動力伝達軸52が定着ユニット30に対して動力伝達状態になっており、駆動ユニット40との間で動力を伝達状態および非伝達状態とする構成であったが、このような構成に限らず、動力伝達軸52が駆動ユニット40に対して動力伝達状態になっており、定着ユニット30との間で動力を伝達状態および非伝達状態とする構成であってもよい。この場合には、中間支持軸38にスライドギア53がスライド可能に取り付けられて、動力伝達軸52に減速ギア43に噛み合ったギアを設けられる。
【0096】
また、上記の実施形態では、切り換えレバー54の回動によってスライドギア53を動力伝達状態と動力非伝達状態に切り換える構成であったが、切り換えレバー54を動力伝達軸52に沿ってスライドさせることによってスライドギア53を動力伝達状態と動力非伝達状態に切り換える構成としてもよい。
さらに、上記の実施形態では、係合突起26aによる切り換えレバー54の回動規制が解除された場合に、コイルバネ55の付勢力が作用しなくなるまで切り換えレバー54が回動される構成であったが、ストッパー等によって切り換えレバー54の回動を所定の位置で規制するようにしてもよい。あるいは、スライドギア53のスライドを停止させるストッパー等を設けることによって、切り換えレバー54の回動を規制してもよい。スライドギア53のスライドをストッパー等によって停止させる構成では、スライドギア53は回転しないために、ストッパー等によってスライドギア53に加わる負荷が小さく、特に問題はない。
【0097】
さらに、切り換えレバー54が水平面に沿って回動する場合について説明したが、このような構成に限定されるものではなく、切り換えレバー54は、動力伝達軸52に平行な平面に沿って回動する構成であればよい。また、切り換えレバー54は、回動する構成に限らず、スライド軸に沿ってスライドする構成であってもよい。
切り換えレバー54の形状も、上記実施の形態に限定されるものではなく、係合突起26aの当接によって移動される構成であればよい。
【0098】
また、スライドギア53の側面における外周側の側縁部が面取りされた構成としてもよい。この場合には、正面側当接部54Yおよび背面側当接部54Zがスライドギア53の歯部に接触することを防止することができる。
さらに、上記の実施形態では、定着ユニット30の加圧ローラ34と、定着ベルト33との圧接によって形成された定着ニップ部に進入する記録シートを搬送するシート搬送装置について説明したが、本発明は、このような構成に限らない。例えば、定着ユニット30の定着ベルト33に代えて、加熱ローラによって定着ニップ部を形成する構成であってもよい。
【0099】
また、感光体ドラム11と転写ローラ15とによって形成されるニップ部によってシートを搬送する構成、タイミングローラ対23によって形成されるニップ部によってシートを搬送する構成等であっても、本発明は適用することができる。さらに、シートを搬送するニップ部を、ローラ等の回転体に対して、回転されずに圧接された押圧部材によって形成してもよい。
【0100】
また、上記の実施形態では、動力伝達機構50において、スライドギア53によって回転動力を伝達する構成であったが、このような構成に限らず、タイミングベルト、スプロケット等の回転動力を伝達する回転体によって回転動力を伝達する構成であってもよい。
本発明に係る画像形成装置は、1つの現像装置しか設けられていないモノクロの画像形成装置に限らず、周回移動する中間転写ベルトに沿って4つの画像形成ユニットを配置してフルカラー画像を形成するタンデム型カラーデジタルプリンタ、あるいは、回転軸の周囲に4つの現像装置を配置し、これら4つの現像装置を、順次、静電潜像担持体に対向させてフルカラー画像を形成する、いわゆる4サイクル方式の画像形成装置であってもよい。また、本発明の構成は、プリンタに限らず、複写機、FAX、MFP(Multiple Function Peripheral)等にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、シート搬送装置を備えた画像形成装置において、動力伝達機構を長期にわたって安定的に使用する技術として有用である。
【符号の説明】
【0102】
11 感光体ドラム
15 転写ローラ
23 タイミングローラ対
25 搬送経路
26 開閉扉(開閉部材)
27a 扉支持軸
27b 扉支持軸
26a 係合突起
30 定着ユニット
31 加熱ローラ
32 定着ローラ
33 定着ベルト
34 加圧ローラ(駆動部材)
34a ローラ本体部
34b 回転軸
36 定着入力ギア
37 定着側中間ギア
40 駆動ユニット
41 駆動モータ
42 駆動ギア
43 減速ギア(第1回転伝達部材)
50 動力伝達機構
51 ドッキングギア
52 動力伝達軸
53 スライドギア(第2回転伝達部材)
54 切り換えレバー
54X 保持部材
54Y 正面側当接部(当接部材)
54Z 背面側当接部(当接部材)
54a 突出部
54b 上面
54c ガイド側板
54d ボス部
54m 圧接面
54n ガイド面
55 コイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧部材との間でニップ部を形成する駆動部材に動力伝達機構を介して回転力を付与することによりシートを搬送するシート搬送装置を備えた画像形成装置であって、
前記動力伝達機構は、前記駆動部材に連結された第1の回転軸と、駆動源に連結された第2の回転軸との間の動力の伝達および非伝達を、前記第1および第2の回転軸のいずれかに設けられた第1の回転伝達部材に対向して前記第1および第2の回転軸の他方に設けられた第2の回転伝達部材を移動させることにより切り換えるように構成されており、
第1の当接部材と第2の当接部材を有し、当該第1および第2の当接部材が前記第2の回転伝達部材をその軸方向両側から遊びを有して挟んだ状態で、保持する保持部材と、
前記保持部材を所定方向に回転移動させる回転移動手段と
を備え、
前記回転移動手段により前記保持部材を移動させることにより、前記第1もしくは第2の当接部材を前記第2の回転伝達部材に当接させ、当該第2の回転伝達部材を前記当接させた当接部材と反対側の方向に向けて移動させて、第1回転軸と第2の回転軸の間の動力の伝達および非伝達を切り換え、
前記回転移動手段は、装置筺体の開閉部材の開動作に連動して、前記保持部材を、前記第1回転軸と第2回転軸との間の動力が非伝達状態となる第1の位置に移動させると共に、前記開閉部材の閉動作に連動して、前記保持部材を、前記第1回転軸と第2回転軸との間の動力が伝達状態となる第2の位置に移動させること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第2の回転伝達部材は、当該第2の回転伝達部材が設けられた第1もしくは第2の回転軸に沿ってスライド可能であると共に、
前記保持部材は、前記第2の回転伝達部材が設けられた回転軸に平行な平面内で回転可能になっており、
前記回転移動手段は、前記保持部材を支軸回りに回転させて前記第1と第2の当接部材を回転移動させることにより、前記第1の回転軸と第2の回転軸との間の動力の伝達および非伝達を切り換えるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1と第2の当接部材のそれぞれの外側面は、少なくとも、前記保持部材の回動に伴って動力伝達の切り換え開始から切り換え終了までの間に前記第2の回転伝達部材に当接する範囲において、前記保持部材の支軸と平行な中心軸を有する円筒形の側面形状になっている
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記保持部材の支軸方向から見たときにおいて、
前記第1および第2の当接部の前記第2の回転伝達部材との当接点が動力伝達の切り換え開始から切り換え終了までに描く軌跡と、前記第2の回転伝達部材が設けられた回転軸の軸心との距離が、所定の範囲内となるように、前記第1と第2の当接部材の位置と前記保持部材の支軸の位置が決定されている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記保持部材の支軸方向から見たときにおいて、
前記当接点が描く軌跡が、前記第2の回転伝達部材が設けられた回転軸の軸心と交差している
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記保持部材の支軸方向から見たときにおいて、
前記第1又は第2の当接部の前記第2の回転伝達部材との当接点の、切り換え開始時と切り換え終了時における位置が、前記第2の回転伝達部材が設けられた回転軸の軸心と重なっている
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記回転移動手段は、
前記保持部材を前記第1の位置に向けて付勢する付勢手段と、
前記開閉部材に設けられ、当該開閉部材の開動作に伴って、前記保持部材と係合し、前記付勢手段の付勢力に抗して前記保持部材を第2の位置に移動させる係合突起と、
を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記動力伝達機構は、2以上のギアを介して前記第1と第2の回転軸間の動力伝達がなされるように構成されており、前記第2の回転伝達部材は、一方の回転軸に設けられたギアであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記駆動部材は、定着部における加熱回転体もしくは加圧回転体である
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
第1の回転軸と、駆動源に連結された第2の回転軸との間の動力の伝達および非伝達を、前記第1および第2の回転軸のいずれかに設けられた第1の回転伝達部材に対向して前記第1および第2の回転軸の他方に設けられた第2の回転伝達部材を移動させることにより切り換えるように構成された動力伝達機構であって、
第1の当接部材と第2の当接部材を有し、当該第1および第2の当接部材が前記第2の回転伝達部材をその軸方向両側から遊びを有して挟んだ状態で、保持する保持部材と、
前記保持部材を所定方向に回転移動させる回転移動手段と
を備え、
前記回転移動手段により前記保持部材を移動させることにより、前記第1もしくは第2の当接部材を前記第2の回転伝達部材に当接させ、当該第2の回転伝達部材を前記当接させた当接部材と反対側の方向に向けて移動させて、第1回転軸と第2の回転軸の間の動力の伝達および非伝達を切り換えるようにしたこと
を特徴とする動力伝達機構。
【請求項11】
前記第2の回転伝達部材は、当該第2の回転伝達部材が設けられた第1もしくは第2の回転軸に沿ってスライド可能であると共に、
前記保持部材は、前記第2の回転伝達部材が設けられた回転軸に平行な平面内で回転可能になっており、
前記回転移動手段は、前記保持部材を支軸回りに回転させて前記第1と第2の当接部材を回転移動させることにより、前記第1の回転軸と第2の回転軸との間の動力の伝達および非伝達を切り換えるように構成されている
ことを特徴とする請求項10に記載の動力伝達機構。
【請求項12】
前記第1と第2の当接部材のそれぞれの外側面は、少なくとも、前記保持部材の回動に伴って動力伝達の切り換え開始から切り換え終了までの間に前記第2の回転伝達部材に当接する範囲において、前記保持部材の支軸と平行な中心軸を有する円筒形の側面形状になっている
ことを特徴とする請求項11に記載の動力伝達機構。
【請求項13】
前記保持部材の支軸方向から見たときにおいて、
前記第1および第2の当接部の前記第2の回転伝達部材との当接点が動力伝達の切り換え開始から切り換え終了までに描く軌跡と、前記第2の回転伝達部材が設けられた回転軸の軸心との距離が、所定の範囲内となるように、前記第1と第2の当接部材の位置と前記保持部材の支軸の位置が決定されている
ことを特徴とする請求項11又は12に記載の動力伝達機構。
【請求項14】
前記保持部材の支軸方向から見たときにおいて、
前記当接点が描く軌跡が、前記第2の回転伝達部材が設けられた回転軸の軸心と交差している
ことを特徴とする請求項13に記載の動力伝達機構。
【請求項15】
前記保持部材の支軸方向から見たときにおいて、
前記第1又は第2の当接部の前記第2の回転伝達部材との当接点の、切り換え開始時と切り換え終了時における位置が、前記第2の回転伝達部材が設けられた回転軸の軸心と重なっている
ことを特徴とする請求項13に記載の動力伝達機構。
【請求項16】
前記回転移動手段は、開閉部材の開動作に連動して、前記保持部材を、前記第1回転軸と第2回転軸との間の動力が非伝達状態となる第1の位置に移動させると共に、前記開閉部材の閉動作に連動して前記保持部材を、前記第1回転軸と第2回転軸間の動力が伝達状態となる第2の位置に移動させること
を特徴とする請求項10〜15のいずれか一項に記載の動力伝達機構。
【請求項17】
前記回転移動手段は、
前記保持部材を前記第1の位置に向けて付勢する付勢手段と、
前記開閉部材に設けられ、当該開閉部材の開動作に伴って、前記保持部材と係合し、前記付勢手段の付勢力に抗して前記保持部材を第2の位置に移動させる係合突起と、
を備えることを特徴とする請求項16に記載の動力伝達機構。
【請求項18】
前記動力伝達機構は、2以上のギアを介して前記第1と第2の回転軸間の動力伝達がなされるように構成されており、前記第2の回転伝達部材は、一方の回転軸に設けられたギアであることを特徴とする請求項10〜17のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−24905(P2013−24905A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156525(P2011−156525)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】