説明

画像形成装置および電源モジュール

【課題】直流電圧に交流電圧を重畳する交流直流重畳バイアスを用いることで、凹凸が豊富な記録媒体に対しても良好な画像を入手することが可能な画像形成装置を、非常にコンパクトに構成することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】トナー像が形成される像担持体と、前記像担持体と対向又は当接する転写部材と、を備え、前記像担持体と前記転写部材との間に、直流電圧と交流電圧とが重畳された交流直流重畳バイアスを印加することで転写電界を形成し、当該転写電界の作用で、記録媒体に前記像担持体上のトナー像を転写することが可能な画像形成装置において、前記交流直流重畳バイアスを出力する電源を有する電源モジュールが、画像形成装置本体に対して着脱可能であること、及び、前記電源モジュールが転写ユニット内に配設されていること、で解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、ファクシミリ、複写機あるいはこれらの少なくとも2つの機能を有する複合機などの画像形成装置に関するものであり、より詳しくは、直流電圧に交流電圧を重畳することにより形成される転写電界の作用で像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する画像形成装置および電源モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写機あるいはこれらの少なくとも2つの機能を有する所謂複合機などの画像形成装置では、従来から電子写真方式を採用する画像形成装置が知られている。この種の画像形成装置では、例えば、感光体や中間転写ベルトなどの像担持体の表面に所望のトナー像を形成した後で、当該像担持体上のトナー像を、直流電圧を用いた転写電界の作用で記録紙などの記録媒体に転写・担持させ、最終的には、定着装置で、このトナー像を担持している記録媒体に熱と圧力とを加えることで、半永久的な画像を記録媒体上に形成する構成が一般的である。
【0003】
ここで、近年では、様々な記録媒体種に対しても一つの画像形成装置で画像を形成させたいとの要望が高くなってきており、そのため、普通紙などに加え、和紙やエンボス紙などの、表面が凹凸に富んだ記録媒体に対しても一つの画像形成装置で画像形成を行いたいとの要望が高くなっている。ところが、このような凹凸に富んだ記録媒体にトナー像を転写させる場合に、直流電圧を用いた転写電界の作用で記録媒体にトナー像を転写させるという従来からの一般的な構成では、表面の凹凸にならった濃淡パターンが記録媒体上で発生しやすいという問題があることがわかっている。この濃淡パターンは、記録媒体上の凹部に対して十分量のトナー像が転写されずに、その結果、凹部の画像濃度が凸部よりも薄くなることで発生してしまうものである。
【0004】
そこで、このような濃淡パターンの発生を防止乃至抑制して、凹凸に富んだ記録媒体に対しても良好な画像が得られるようにするべく、特許文献1に開示されるような、直流電圧に交流電圧を重畳する交流直流重畳バイアスを用いて転写電界を形成する画像形成装置が提案されるようになってきた。この特許文献1では、直流電圧に加えて、比較的大きな第一のピーク・ツー・ピーク電圧と、比較的小さな第二のピーク・ツー・ピーク電圧とを交互に繰り返す交番電圧とで構成される交流直流重畳バイアスを二次転写ローラに印加して、この重畳バイアスによる転写電界の作用で、像担持体である中間転写ベルトからトナー像を記録媒体に転写させることにより、濃度ムラなどが低減された画像を得ることができる画像形成装置が開示されている。
【0005】
なお、この交流直流重畳バイアスによる転写電界を作用させることで、凹凸に富んだ記録媒体に対しても良好にトナー像を転写させることが可能になる原理について説明をしておく。まず、交流直流重畳バイアスからなる転写バイアスの印加を開始すると、始めに、例えば中間転写ベルトなどの像担持体上に存在しているトナー層の表面のごく僅かなトナー粒子だけがトナー層から離脱して、記録媒体表面の凹部に向かうことになるが、トナー層中の殆どの粒子は、トナー層中に留まったままである。トナー層から離脱したごく僅かなトナー粒子は、記録媒体の凹部に進入した後、交流電圧により転写電界の向きが逆になることで、当該凹部からトナー層に逆戻りすることになる。このとき、逆戻りしたトナー粒子は、トナー層中に留まっていたトナー粒子に衝突して、そのトナー粒子の付着力を弱める。すると、次に転写電界が記録媒体に向かう方向に反転したときには、最初よりも多くのトナー粒子がトナー層中から離脱して、記録媒体の凹部に向かうようになる。このような一連の交流電圧を重畳することによるトナー粒子挙動を繰り返していくことで、トナー層中から離脱して記録媒体の凹部内に進入するトナー粒子数を増やすことが可能になるので、記録媒体の凹部にも十分量のトナーを転移させることが可能になるというものである。
【0006】
このように、直流電圧に交流電圧を重畳する交流直流重畳バイアスを用いることで、凹凸に富んだ記録媒体に対しても良好な画像形成が可能になるが、このような交流直流重畳バイアスを印加するためには、当然ながら、交流電圧用の交流電源手段や、信号線を含めた交流電源手段などを制御するための構成部材に加えて、当該電源手段から転写部材などに接続されるハーネスなどが必要になる。さらに、例えば、エンボス紙などの凹凸に富んだ記録媒体に対しては交流直流重畳バイアスを使用するが、普通紙などに画像形成を行うために、従来と同じ直流電圧(乃至直流バイアス)のみで転写電界を形成することを意図する場合、これら相違する転写電界を形成するためのバイアス切換動作が必要になり、この切換動作用のリレーなども必要となる場合もある。
【0007】
ところが、例えば特許文献1などの交流直流重畳バイアスを印加する画像形成装置の構成を開示している従来文献では、より良好な画像を得るための交流直流重畳バイアスの印加方法や実験結果などの記載は豊富であっても、これら交流電圧用の電源手段、制御用構成部材、ハーネス、信号線、さらには、リレーなどの交流直流重畳バイアスを作り出すための構成部材をどのように画像形成装置内に配置させるかは何ら考慮されていないのが実情である。これら構成部材を画像形成装置内でどのように配置させるかは、フットプリントの低減が求められる昨今の技術動向からすれば、非常に重要である。すなわち、交流直流重畳バイアスを印加可能な画像形成装置を提供しようとしために、画像形成装置が必要以上に大型化してしまえば、現在の市場動向に反する結果になってしまう。
【0008】
また、画像形成装置の生産者に対する客先である使用者が、画像形成装置の購入当初は交流直流重畳バイアスを印加させる画像形成を行うことを意図していないが、後に、交流直流重畳バイアスを印加させる可能性があるため、オプション対応として、交流直流重畳バイアスを印加する構成部材を取付けできるように構成された画像形成装置を購入する場合がある。この場合、使用者が接触したり、取り外したりすることを元来は想定していない電源などの構成部材は、画像形成装置の背面側に設置されているのが通常であるため、サービスマンが、交流直流重畳バイアス用の構成部材を取り付ける際には、従来の画像形成装置では、この画像形成装置の背面側にアクセスする必要があった。
【0009】
そのため、オプション対応で交流直流重畳バイアスを印加可能に改造する場合、例えば、背面側をオフィスの壁面に向けて配置されている画像形成装置を壁面側から一端引き出して、サービスマンが背面側にまわり、交流直流重畳バイアス印加用の構成部材を取付けることになる。しかしながら、これら構成部材は複数種類からなるため、取付けに時間がかかると、使用者が画像形成装置を使用できない時間が長くなり不利益となるだけでなく、ある程度まで画像形成装置を分解しなければ、これら構成部材を取り付けることができないとなれば、使用者のオフィスなどで作業用スペースを大きく取る必要があり、使用者に不快感を与えることにもなりかねない。この観点からも、交流直流重畳バイアスを印加するための構成部材をコンパクトに構成して、取付改造時に、必要以上に使用者のオフィスなどを占有しないようにすることは重要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑み、直流電圧に交流電圧を重畳する交流直流重畳バイアスを用いることで、凹凸が豊富な記録媒体に対しても良好な画像を入手することが可能な画像形成装置を、非常にコンパクトに構成することが可能な画像形成装置および電源モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は、トナー像が形成される像担持体と、前記像担持体と対向又は当接する転写部材と、を備え、前記像担持体と前記転写部材との間に、直流電圧と交流電圧とが重畳された交流直流重畳バイアスを印加することで転写電界を形成し、当該転写電界の作用で、記録媒体に前記像担持体上のトナー像を転写することが可能な画像形成装置において、前記交流電圧を前記直流電圧に重畳するために必要とされる構成部材が、画像形成装置に対して一体的に着脱可能なサブモジュールとして構成されること、及び前記サブモジュールが転写ユニット内に配設されていること、を特徴とする画像形成装置を提案する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トナー像が形成される像担持体と、前記像担持体と対向又は当接する転写部材と、を備え、前記像担持体と前記転写部材との間に、直流電圧と交流電圧とが重畳された交流直流重畳バイアスを印加することで転写電界を形成し、当該転写電界の作用で、記録媒体に前記像担持体上のトナー像を転写することが可能な画像形成装置において、前記交流電圧を前記直流電圧に重畳するために必要とされる構成部材が、画像形成装置に対して一体的に着脱可能なサブモジュールとして構成されるので、これら構成部材をコンパクトにまとめることが可能になる。
【0013】
さらに、本発明では、このコンパクトに構成されたサブモジュールを転写ユニット内に配設させるので、このような交流直流重畳バイアスを印加可能に構成される画像形成装置が必要以上に大型化することがない。さらにまた、当該サブモジュールを転写ユニット内に配設すれば、オプション対応で、サブモジュールを追加する改造を客先で実施する場合に、画像形成装置の背面側にまわるなどして、必要以上に分解する必要がなくなるので、作業スペースを極力小さくすることが可能になり、使用者に不快感を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した画像形成装置の一例であるフルカラー画像形成装置の概略を示す概略断面図である。
【図2】画像形成ユニットの概略を示す概略断面図である。
【図3】交流電圧に直流電圧を重畳した重畳バイアスを印加した際の電流値の一例を示したグラフである。
【図4】定電流制御によって形成された転写電界の作用で、像担持体上のトナー像を記録媒体に転写する画像形成装置の、主として転写ユニット部分だけを抜き出して描いた概略構成図である。
【図5】図4に対応する転写ユニット部分だけを抜き出して描いた概略構成図であって、転写部材として転写チャージャーを用いた例を示した概略構成図である。
【図6】交流直流重畳バイアスを生成する電源ユニットの構成の一例を示すブロック図である。
【図7】交流直流重畳バイアスを生成する電源ユニットの構成の別例を示すブロック図である。
【図8】交流直流重畳バイアスを生成する電源ユニットの構成のさらに別の例を示すブロック図である。
【図9】電源ユニットの具体的な構成を示す簡略回路図である。
【図10】交流直流重畳バイアスを印加するためのサブモジュールの一例を示した概略斜視図である。
【図11】画像形成装置本体から、転写ユニットが引き出された状態を示した概要図である。
【図12】サブモジュールを配置するために開けられた設置スペースを説明するための、転写ユニットの一部分を画像形成装置の上方から眺めた概略部分平面図である。
【図13】サブモジュール用に開けられた設置スペースにサブモジュールが配置された状態を説明するための概略部分平面図である。
【図14】サブモジュールを装着した状態を装置前面側から見た断面図である。
【図15】サブモジュールを転写ユニット内に取り付ける際の、好適な結線方法を説明するための概略構成平面図である。
【図16】図15の一部を拡大して各接続部の結線方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
図1は、本発明を適用した画像形成装置の一例であるフルカラー画像形成装置(以下、単にプリンタと呼ぶ)の概略を示す断面構成図である。なお、本実施形態のプリンタでは、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色の色成分画像を重ね合わせることにより、フルカラー画像を得ることができるフルカラー画像形成装置の例を示している。また、本プリンタでは、図1に図示されるように、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色にそれぞれ対応する画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kが画像形成装置内の略中央よりやや上部に配置されている。
【0016】
各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kに設けられた感光体ドラム11(11Y,11M,11C,11K)上に形成される各色トナー像は、これらの感光体ドラムに当接して配置されている、像担持体としてのベルト状の中間転写体(中間転写ベルト50)へ順次転写される。中間転写ベルト50へ転写されたトナー像は、用紙カセット101から給紙ローラ100を経て給紙された記録紙などの記録媒体上に転写される。具体的には、用紙カセットから給紙された記録媒体は中間転写ベルト50と転写部材である二次転写ローラ80の間に矢印Fの方向から所定のタイミングで搬送され、この時、中間転写ベルト50上に形成されたフルカラートナー像は、中間転写ベルト50を挟んで、二次転写ローラ80と二次転写部対向ローラ73との間に形成された二次転写ニップで、後述する転写電界の作用を受けて記録媒体上に一括転写される。フルカラートナー像が転写された記録媒体は定着装置91へ搬送され、定着装置91において加熱・加圧され、機外へと排出される。
【0017】
次に、画像形成ユニットについて説明するが、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、トナー色が異なる他は全て同じ構成であるため、図2を参照して、1Yについてのみ代表して説明する。画像形成ユニット1Yは、感光体ドラム11と、感光体ドラム11の表面を帯電ローラによって帯電する帯電装置21と、感光体ドラム11上の潜像にトナーを付与して、当該潜像をトナー像化する像形成手段としての現像装置31と、感光体ドラム11上に担持されたトナー像を中間転写ベルト50上に転写するための一次転写ローラ61と、感光体ドラム11の表面に残存したトナーをクリーニングする感光体クリーニング装置41とを備えている。
【0018】
上述の帯電装置21として図示した例では、ローラ形状の導電性弾性体から構成される帯電ローラに対して直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加する構成となっている。この帯電ローラと感光体ドラム11との間で直接放電を起こす事で感光体ドラム11を所定の極性、例えば、マイナス極性に帯電させている。なお、帯電ローラ等の帯電部材に代えて、感光体ドラム11とは非接触の帯電チャージャーによる方式を採用することもできる。
【0019】
次いで、各感光体ドラム11の帯電面に、図示していない画像書き込み手段から出射する光変調されたレーザ光L(図1参照)を照射する。これによって、各感光体ドラム11の表面に潜像を形成する。即ち、レーザ光Lが照射され感光体表面部分の電位の絶対値が低下した部分が潜像となる。
【0020】
現像装置31は、Yトナーとキャリアとを有する2成分現像剤が収容された収容容器31cと、この収容容器31c内に配置され収容容器31cの開口部を介して感光体ドラム11と対向するように配置された現像剤担持体としての現像スリーブ31aと、収容容器31c内に配置され、現像剤を攪拌しながら現像スリーブ31aに搬送する攪拌・搬送部材としてのスクリュー部材31b、31bとを備えている。なお、これらスクリュー部材31b、31bは、現像スリーブ31a側となる現像剤の供給側と、図示しない補給トナー装置の供給を受ける側にそれぞれ配置され、収容容器31cに図示しない軸受け部材によって回転自在に支持されている。そして、スクリュー部材31bによって攪拌されながら、現像スリーブ31a上に搬送されたトナーが、感光体ドラム11上の潜像に静電的に付与されることで、当該潜像がトナー像化される。
【0021】
一次転写ローラ61は、例えば、導電性弾性ローラであり、中間転写ベルト50の裏面から感光体ドラム11に対して押し当てられるように配置されている。この弾性ローラである一次転写ローラ61には、一次転写バイアスとして定電流制御された一次転写バイアスが印加される。そして、この一次転写バイアスによって、感光体ドラム11上のトナー像が中間転写ベルト50に一次転写されるようになっている。
【0022】
感光体クリーニング装置41は、クリーニングブレード41aと、クリーニングブラシ41bとを備えている。クリーニングブレード41aは、感光体ドラム11の回転方向に対してカウンタ方向から感光体ドラム11と当接している状態で、クリーニングブラシ41bは、感光体ドラム11と逆方向に回転しながら接触している状態で、中間転写ベルト50に転写されずに感光体ドラム11表面に残った一次転写残トナーをクリーニングする。
【0023】
ここで、上記4組の画像形成ユニットの感光体ドラム11は、不図示の感光体ドラム駆動装置によって図中時計回り方向に回転駆動される。また、ブラック用の感光体ドラム11Kと、カラー用の感光体ドラム11Y,11M,11Cとを独立に回転駆動できるようにしても良い。これにより、例えば、モノクロ画像を形成する時には、ブラック用の感光体ドラム11Kのみを回転駆動し、またカラー画像を形成する時には4つの感光体ドラム11Y,11M,11C,11Kを同時に回転駆動させる事ができる。ここで、モノクロ画像を形成する時は、カラー用の感光体ドラム11Y,11M,11Cから離間するように中間転写ベルト50を有する中間転写ユニットが部分的に揺動させられるように構成することもできる。
【0024】
像担持体たる中間転写ベルト50は、例えば中抵抗の無端上のベルト材で構成され、二次転写部対向ローラ73及び支持ローラ71,72といった複数の支持ローラに掛け回されている。この支持ローラの一つを回転駆動する事により、中間転写ベルト50を図1において反時計回り方向に無端移動させることが出来る。
【0025】
また、支持ローラ72は接地されており、その支持ローラ72に対向する形で表面電位計75が配置されている。この表面電位計75は、中間転写ベルト50上に転写されたトナー像が支持ローラ72上を通過した時、表面電位を計測する。
【0026】
次に、像担持体たる中間転写ベルト50と、転写部材たる二次転写ローラ80との間に印加される、直流電圧と交流電圧とが重畳された交流直流重畳バイアスについて説明する。
図1に示した例では、直流電圧と、交流電圧とが重畳された交流直流重畳バイアスを印加するために、対向部材である二次転写部対向ローラ73に接続される電源ユニット110と、転写部材である二次転写ローラ80に接続される電源ユニット111とが設けられている。そして、トナー像を記録媒体に転写させるために、これら電源ユニット110及び/又は111によって、像担持体である中間転写ベルト50上のトナーが記録媒体Pへ転写される方向に直流電圧成分による電圧が印加されると共に、この直流電圧成分に加えて、さらに、交流電圧成分、又は、交流直流重畳成分が印加されるように、電源ユニット110及び/又は電源ユニット111は構成される。そして、この交流直流重畳バイアスによる転写電界の作用を受けて、中間転写ベルト50上のトナー像は、記録媒体Pが像担持体50と転写部材80との間に、矢印Fの方向から所定のタイミングで搬送された際に、記録材である記録媒体Pの所定位置上に静電的に転写されるようになっている。
【0027】
なお、交流直流重畳バイアスを印加するための、この電源ユニット110及び/又は電源ユニット111の構成は、図1に図示したもの他にも種々様々なものが考えられる。例えば、図1に図示した例とは相違するが、電源ユニット110又は電源ユニット111のいずれか一方だけを配設して、当該配設された電源ユニット110又は電源ユニット111からのみ交流直流重畳電圧を印加してもよいし、図1に示したように、電源ユニット110、電源ユニット111を両者ともに配設して、これら電源ユニット110及び電源ユニット111で交流電圧と直流電圧とを分離して印加してもよい。さらに、電源ユニット110、電源ユニット111のいずれか一方から交流直流重畳電圧を印加し、かつもう一方から直流電圧を印加してもよい。また、出力電圧を直流電圧成分のみの場合と交流直流重畳電圧成分を印加する場合とに選択可能にすることもできる。このように構成しておけば、記録媒体種に応じて、直流電圧成分だけによる転写電界の作用による転写と、交流直流電圧の重畳バイアスによる転写電界の作用による転写とを切り替えることができる。そして、このように切換可能に構成すれば、例えば、記録媒体Pがエンボス紙や和紙などの凹凸に富んだ記録媒体ではなく、普通紙などの凹凸のない記録媒体である場合には、直流電圧成分のみを印加するように切り替えることができる。
【0028】
これにより、交流電圧を必要としない使用用途の場合には、従来の転写装置のように直流電圧成分のみで使用することができ、省エネルギーで使用できるため好適である。この場合の電源ユニットの構成としては、交流直流重畳電圧を印加することが可能な一体の電源ユニットにおいて交流電圧成分を印加しないことで直流電圧成分のみを印加する方法でもよいし、直流電圧印加用の電源回路と、交流電圧印加用の、又は、交流直流重畳電圧印加用の電源回路とを別々に持ち、これら電源回路を切り替えることにより、直流電圧と交流直流電圧との切り替えを行う方法でもよい。
【0029】
ここで、この電源ユニット110及び/又は電源ユニット111によって、交流電圧に直流電圧を重畳した重畳バイアスを印加した際の電流値の一例を、図3に示しておく。図3は、電源ユニット110から交流直流重畳バイアスを対向部材である二次転写部対向ローラ73へ印加した際に、当該二次転写部対向ローラ73に流れ込む方向の電流を測定した場合の一例を示すグラフである。すなわち、図3では、図4に示すように、交流直流重畳バイアスを電源ユニット110から二次転写部対向ローラ73に印加することで、像担持体50からトナー像を記録媒体に転写する際の、交流直流重畳バイアス電流値の例を示している。なお、図4は、交流電圧に直流電圧を重畳して印加する電圧印加方法において、出力電流の直流成分(オフセット電流)Ioff、または交流成分のピーク間の大きさIppが任意の電流値になるように出力電圧を制御する定電流制御によって形成された転写電界の作用で、像担持体上のトナー像を記録媒体に転写する画像形成装置の、主として転写ユニット200部分だけを抜き出して描いた概略構成図である。したがって、図3に示した例では、電源ユニット110から出力される電圧は、直流成分の電流値Ioff、又は、当該Ioff及び交流成分のピーク間電流値Ippが、設定した電流値になるように制御されている。なお、図4は概略構成図であることから、Y,M、C,Kトナー用の一次転写ローラ61は一つを除いて省略して描かれている。
【0030】
ところで、先に記述した定電流制御に対して、出力電圧の直流成分Voff、又は、交流成分のピーク間電圧の大きさVppが任意の値となるように出力電圧を制御する定電圧制御によっても、交流直流重畳バイアスを印加することで、記録媒体にトナー像を転写させることができる。しかしながら、出力電圧を定電圧制御する場合、湿度による部材の抵抗変化や記録材の違いにより、印加する電圧を大きく変更しなければ良好な転写性を得られないため、定電流制御する方が、前記変化に対する転写性の変動が小さく好適である。
【0031】
図3に例示されるような電流が電源ユニット110により印加される図4に示した画像形成装置の例では、転写部材である二次転写対向ローラ80は接地されており、対向部材である二次転写部対向ローラ73に電源110から電圧を印加する構成となっている。該電源ユニット110は制御回路300により制御される。
【0032】
このような構成において、Ioffは電源ユニット110に内蔵された電流計により検出され、制御回路300へ入力される。次に制御回路300から電源ユニット110へ制御信号が入力される。制御回路300は設定電流値に応じて制御信号を出力し、電源ユニット110からは出力Ioffが設定値となるように出力電圧が調整される。Ippを定電流制御する場合も、同様にして制御することができる。本願発明者らの検討によると、Ioffはトナーによる電荷の移動や放電による電荷の移動を示している。このため、Ioffはトナー移動による電流量を目安に設定することができる。トナー移動による電流量Itonerは次の式(1)に示す関係で表すことができる。
【0033】
Itoner=v*W*Q/M*M/A*10・・・(1)
ここで、v:被転写体Pの速度[m/s],W:画像のローラ軸方向の幅[m],Q/M:トナー帯電量[μC/g],M/A:トナー付着量[mg/cm]である。
【0034】
画像幅とトナー付着量には、全トナーが転写できるように、記録材にベタ画像を転写する場合に想定される最大値を用いる。例えば、v=0.3[m/s],W=0.3[m],Q/M=−30[μC/g],M/A=0.5[mg/cm]であれば、Itoner=−13.50[μA]となる。このとき、Ioffの絶対値は|Itoner|以上の値、例えばIoff=−20[μA]の様に設定することが好ましい。記録媒体Pの速度vを変更する場合のIoffの設定値は、上記の(1)式からItonerを算出すればよく、例えばv=0.15[m/s]の場合はIoff=−6.75[μA]となるため、Ioff=−10[μA]の様に設定する。
【0035】
記録媒体種に応じて速度(線速)を変更する場合は、各速度に対応したIoffに自動的に切り替わるモードを設けることで、記録媒体速度に対しても安定した画像を得ることができる。さらに、M/Aがモノクロ画像よりも多くなるカラー画像の場合のIoffの設定値も、(1)式から見積もることができ、例えばカラー画像のM/Aをモノクロ画像の2倍の1.0[mg/cm ]と仮定した場合、Ioffも2倍の−40[μA]のように設定すればよい。また、出力画像情報に応じて設定Ioffが自動的に切り替わるカラー印刷モードを設けることで、カラー画像、モノクロ画像のいずれに対しても安定した画像を得ることができる。
【0036】
なお、Ippは少なくとも記録媒体の凹部にトナーを転写するための電界を付与できるだけの大きさが必要となり、小さすぎると凹部にトナーが転写されない。その大きさは転写部材の抵抗や転写ニップの幅などによっても異なるが、ここでは、例えばIpp=3.0[mA]のように設定する。Ippを適切な値に設定することにより、記録媒体Pが変わっても凹部への良好な転写性を保つことができ、このようなIppは、実験室や実機での実験を繰り返すなどで予め得ておくことが可能である。
【0037】
上記に例示したように、像担持体と転写部材との間に、交流直流重畳バイアスを印加することにより、像担持体上のトナー像を、記録媒体に転写することが可能になる。なお、重畳バイアスを2次転写部対向ローラ73に印加しつつ、転写部材80を接地する代わりに、重畳バイアスを転写部材80に印加しつつ、2次転写部対向ローラ73を接地してもよい。この場合には、直流電圧の極性を異ならせることで対応する。具体的には、図示のように、マイナス極性のトナーを用い且つ転写部材80を接地した条件で、2次転写部対向ローラ73に重畳バイアスを印加する場合には、直流電圧としてトナーと同じマイナス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーと同じマイナス極性にする。これに対し、2次転写部対向ローラ73を接地し、且つ重畳バイアスを転写部材80に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーとは逆のプラス極性にする。重畳バイアスを2次転写部対向ローラ73や転写部材80に印加する代わりに、直流電圧を何れか一方のローラに印加するとともに、交流電圧を他方のローラに印加してもよい。
【0038】
なお、本明細書では、転写部材80として、像担持体である中間転写ベルト50に当接するローラ形状の転写ローラであって、例えば、円柱状に形成された導電性の芯金と、芯金の外周面に積層された樹脂やゴムなどの表層からなる転写ローラが採用された例が説明されるが、本願発明はこれに限定されない。転写部に交流直流重畳バイアスによる転写電界を印加可能であれば、例えば、図5に示されるように、中間転写ベルト50とは非接触で、この中間転写ベルト50に対向する転写チャージャーなどを転写部材として採用することができる。ここで、図5は、図4に対応する転写ユニット部分だけを抜き出して描いた概略構成図であって、転写部材として転写チャージャーを用いた例を示した概略構成図である。図4とは、転写部材が転写チャージャー80’に変更されているほか、電源ユニット110が当該転写チャージャー80’に接続される一方で、二次転写部対向ローラ73が接地されていることだけが異なる。さらにまた、記録材である記録媒体Pは紙、樹脂、金属など様々な物質を用いることができる。さらに加えて、本実施例において交番電圧の波形は正弦波を用いているが、矩形波等他の波形を用いても問題は無い。
【0039】
次に、電源ユニット110、111の電源回路についてより詳細に説明する。
図6は、交流直流重畳バイアスを生成する電源ユニットの構成の一例を示すブロック図である。なお、以下で説明される図6〜8のブロック図と、図9の簡略回路図では、像担持体である中間転写ベルト50は図示を省略されている。この図6に示す例では、交流電圧を印加する電源ユニット111が転写部材である二次転写ローラ80に接続され、直流電圧を印加する電源ユニット110が対向部材である二次転写部対向ローラ73に接続されている。そして、この図6の電源ユニット111において、交流駆動121、交流高圧トランス122、交流出力検出123、交流制御124の各手段により交流電圧発生手段112が構成される。また、電源ユニット110において、直流駆動125、直流高圧トランス126、直流出力検出127、直流制御128の各手段により直流電圧発生手段113が構成されている。なお、電源ユニット110及び電源ユニット111を動作させるための制御回路300からの24V入力とGNDは、図示を省略している。また、これら電源ユニット110、111の出力異常を検知するための異常検知手段を各電源ユニット110及び111に設けることも可能であり、その際には、当該異常検知手段からの異常検知信号を伝える信号線が制御回路300に接続される。
【0040】
このような構成において、交流電圧印加用の電源ユニット111には、制御回路300から、重畳される交流電圧の周波数を設定する信号が信号線CLKを介して供給され、さらに、交流出力の電流または電圧を設定する信号が信号線AC_PWMを介して供給され、交流出力をモニターする信号が信号線AC_FB_Iを介して制御回路300にもたらされる。直流電源用の電源ユニット110にも、直流出力の電流または電圧を設定する信号が信号線DC_PWMを介して供給され、直流出力をモニターする信号が信号線DC_FB_Iを介してもたらされる。交流及び直流の制御(電流/電圧)ブロックでは、制御回路300からの指令に基づき、それぞれの出力検出手段123,127からの検出信号が所定値となるように、交流駆動121または直流駆動125を介して各高圧トランス122,126の駆動を制御する信号を出力している。
【0041】
交流制御では交流出力の電流及び電圧を制御しており、所謂、定電流制御または定電圧制御のどちらも可能なように交流出力検出123で出力電流及び出力電圧の両方を検出している。これは直流制御でも同様である。この実施例では、交流及び直流とも通常は定電流制御を行うように電流検出値を優先して制御するようにしている。出力電圧の検出値は上限電圧の抑制のために使っており、無負荷状態などでの最高電圧を制御する構成としている。また、制御回路300では交流及び直流の各出力検出手段123,127からのモニター信号を、負荷状態の監視のための情報として入力している。また、交流電圧の周波数を制御回路300からの信号線CLKを介して設定しているが、交流電圧発生手段の内部で固定の周波数を生成することもできる。
【0042】
なお、図6に示されるブロック図では、電源ユニット110に直流電圧用の構成部材を搭載させ、電源ユニット111に交流電圧用の構成部材を搭載させているが、これらの直流電圧用の構成部材と交流電圧用の構成部材をまとめて一つの電源ユニットとして構成することもできる。
【0043】
図7は、交流直流重畳バイアスを生成する電源ユニットの構成の別例を示すブロック図である。この図7に示される例では、二次転写部対向ローラ73に対して、直流成分のみの電圧を印加可能な電源ユニット110と、交流直流重畳電圧成分を印加可能な電源ユニット111とが並列に接続されている。そして、ここに図示した例では、二次転写対向ローラ73に直流電圧成分のみを印加する場合と、交流直流重畳バイアスを印加する場合とを選択可能とした構成例が示されている。これを達成するために、二次転写部対向ローラ73に接続される電源ユニットは、切替手段である第一リレー510及び第二リレー511を用いて、電源ユニット110と電源ユニット111とを切り替えることができるように構成されている。すなわち、第一リレー510の接点を閉じ、且つ、第二リレー511の接点を開くと、二次転写対向ローラ73には、交流直流重畳バイアスが印加される一方で、第一リレー510の接点が開き、且つ、第二リレー511の接点を閉じると、二次転写対向ローラ73には、直流電圧バイアスだけが印加されることになる。リレーを使った転写装置への電圧の印加制御は、制御回路300での各電源110と111への制御信号の授受とともにリレー駆動手段129を設け、信号線RY_DRIVを介した制御信号にて切り替え制御を行える構成としている。
【0044】
図8は、交流直流重畳バイアスを生成する電源ユニットの構成のさらに別の例を示すブロック図であり、当該図8に示される構成では、前述の図7の構成と同様に、直流成分のみよる二次転写と、交流直流重畳電圧の印加による二次転写とを選択可能とする場合の更に他の構成例が図7に比べて簡略して示されている。本構成例では電源ユニット111の出力にだけ切替手段の第一リレー510を設けている点が図7に示した例とは相違する。また、第一リレー510の出力側が他方の電源ユニット110に接続されている。したがって、第一リレー510の接点を閉じて電源ユニット111から交流直流重畳バイアスを出力する場合に、並列に接続された電源ユニット110にも電圧が印加される。これにより、電源ユニット111が電源ユニット110の負荷となりえるが、電源ユニット110への電流供給による転写装置への影響が無い場合は、本方式を採用することで回路の簡素化が計られるので、同様の機能を簡単な構成で安価に実現することができる。
【0045】
図9は、前述の図6に示したような電源ユニットの具体的な構成を示す簡略回路図である。なお、図6に示した例では、交流電圧を印加する電源ユニットと、直流電圧を印加する電源ユニットとが別の電源ユニットとして記載されていたが、この図8に示される簡略回路図では、同一の電源ユニット110に搭載されている点が相違する。
【0046】
図9に示される簡略回路図において、上半部の交流電圧発生手段112と下半部の直流電圧発生手段113とは、ともに定電流制御を行っている。交流電圧は、高圧トランスの出力に近似した低電圧を巻線N3_ACで取出し、電圧制御コンパレータで基準信号Vref_AC_Vと比較している。交流電流は、直流電圧発生手段の出力と並列に接続した交流成分をバイアスするコンデンサC_AC_BPと接地間に設けた交流電流検出器で取出し、電流制御コンパレータで基準信号Vref_AC_Iと比較している。この基準信号Vref_AC_Iのレベルは、信号線AC_PMWを介して供給される交流出力電流の設定信号に応じて設定される。
【0047】
上記電圧制御コンパレータの出力は、出力電圧が所定以上に上がった時(例えば無負荷など)に有効になるように基準信号Vref_AC_Vのレベルを設定してある。一方、電流制御コンパレータの出力は、通常の負荷で有効になるように基準信号Vref_AC_Iのレベルが設定してあり、負荷の状態(二次転写部対向ローラ73や転写部材80及びローラ間の部材など)に応じて高圧出力電流を切り替えられる構成としている。これら電圧制御コンパレータ及び電流制御コンパレータの出力は交流駆動部に入力し、そのレベルに応じて交流高圧トランスを駆動する。
【0048】
直流電圧発生手段でも、同様に出力電圧/電流の両方を検出している。電圧は、高圧トランスの出力巻線N2_DCに設けた整流平滑回路と並列接続した直流電圧検出器で取出している。電流は、出力巻線と接地間に直流電流検出器を接続して取出している。電圧/電流の各検出信号は、交流の場合と同じく、重み付けされた基準信号Vref_DC_VとVref_DC_Iと比較され、高圧出力の直流成分を制御している。
【0049】
さて、これまで交流直流重畳バイアスを印加することで、転写電界を形成し、当該転写電界の作用で、像担持体である中間転写ベルト上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する構成を説明してきたが、このような直流電圧成分に交流電圧成分を重畳させようとすると、これまでの説明から明らかなように、種々様々な構成部材が必要となることが分る。例えば、直流電圧だけを印加するための構成部材は、従来と同様に当初から画像形成装置に組み付けられているとしても、交流電圧をさらに重畳させるためには、図6〜8のブロック図や図9の簡略回路図に記載されているように、交流駆動121、交流高圧トランス122、交流出力検出123、交流制御124の各手段に加えて、交流電流検出器や、電圧制御コンパレーター及び電流制御コンパレーターなどが必要になる。また、制御部300と接続される各種信号線も配線されている必要もある。
【0050】
これら種々様々の構成部材を画像形成装置に組み込んで、直流電圧に交流電圧が重畳される交流直流重畳バイアスが印加可能なように画像形成装置を構築しようとする場合、構成部材が多種にわたることから、これら構成部材のそれぞれの配置場所を任意に決めていくと、画像形成装置が必要以上に大きくなってしまう可能性がある。また、これら構成部材がバラバラに存在している状態から、画像形成装置に一つずつ組み付けようとすれば、作業者には非常に負担となる。また、これら構成部材を誤って組み付けてしまうことにもなりかねない。
【0051】
さらにまた、画像形成装置購入当初は、交流直流重畳バイアスを印加させる画像形成を行うことを意図していないが、後に、交流直流重畳バイアスを印加させる可能性があるため、オプション対応として、交流直流重畳バイアスを印加する構成部材を取付けできるように構成された画像形成装置を、使用者が購入する場合がある。このような場合は、予め交流直流重畳バイアス印加用の構成部材を配置するための設置場所を画像形成装置内に設けておかなければならない。
【0052】
ところが、使用者が通常触れたり、取り外したりすることを想定していない高圧電源などの構成部材は、使用者が極力触れることのないように、画像形成装置の背面側に設置するようにしている。このため、交流直流重畳バイアス印加用の構成部材も画像形成装置の背面側に設置するようにしていた場合には、オプション対応などで、サービスマンが重畳バイアス印加用の構成部材を取り付ける際には、画像形成装置の背面側にアクセスするために、例えば、背面側をオフィスの壁面に向けて配置されている画像形成装置を壁面側から一端引き出して、サービスマンがその背面側にまわり、重畳バイアス印加用の構成部材を取付けることになる。
【0053】
しかしながら、これら構成部材は複数種類からなるため、取付けに時間がかかると、使用者が画像形成装置を使用できない時間が長くなり不利益となるだけでなく、さらには、既述のように画像形成装置の背面側にまわって、ある程度まで画像形成装置を分解しなければ、これら構成部材を取り付けることができないとなれば、使用者のオフィスなどで作業用スペースを大きく取る必要があり、使用者に不快感を与えることにもなりかねない。
【0054】
そこで、本発明では、これら構成部材を、画像形成装置に一体的に着脱可能なサブモジュール(電源モジュール)500として構成することをまずは考え出した。サブモジュール500としては、例えば、1枚の交流直流重畳バイアス印加用基板上にこれら構成部材が適切に配線・接続された状態で配設させる構成が考えられる。複数の基板を用いながらも一体のサブモジュール500を構成することも当然ながら可能であるが、1枚の交流直流重畳バイアス印加用基板上に構成部材全てを配置する場合、サブモジュール500の小型化に貢献できる可能性が高まり、設置場所を小さくできることに加えて、複数の基板を用いる場合と比べれば、基板枚数だけでなく、配線などを少なくすることが可能になるためコストメリットも生じる。
【0055】
この交流直流重畳バイアスを印加するためのサブモジュール500の一例が、図10に概略斜視図として示される。図10に示される概略斜視図は、先に記述したブロック図で言えば、図7に記載した構成に対応するものを例示したものであり、図7において点線で囲まれた電源ユニット111がサブモジュール500として構成されている。したがって、図10に示した例では、第一リレー510及び第二リレー511もサブモジュール500に搭載される。また、図10は、概略斜視図として記載したため、交流直流重畳バイアスを印加するための構成部材としては、交流直流重畳バイアス印加用基板501と、交流高圧トランス122と、直流電圧印加用の電源ユニット110及び交流直流重畳バイアス印加用の電源ユニット111(すなわち、サブモジュール500)を切換えるための第一リレー510及び第二リレー511と、当該第一リレー510及び第二リレー511を介して電源ユニット及びサブモジュール500を二次転写部対向ローラ73に接続するために設けられた端子台502とを代表して描いている。
【0056】
ここで、図10に例示したサブモジュールの例とは相違して、図6に示されるような、交流電圧印加用の電源ユニット111だけをサブモジュール500とすることもできるし、図8に示されるような、第二リレー511は含まないが第一リレー510を含んだ電源ユニット111をサブモジュール500とすることもできる。あるいは、図9に示されるように、交流電圧を印加するための電源ユニットと、直流電圧を印加するための電源ユニットとが一体的に構成される電源ユニット110をサブモジュール500とすることも可能である。この場合には、画像形成装置には、当初から交流直流重畳バイアスを印加することが可能な構成が配設されていることになる。
【0057】
このようなサブモジュール500では、交流直流重畳バイアス印加用基板501上に、交流高圧トランス122や、端子部502などの交流直流重畳バイアスを印加するための構成部材を配置しており、さらに、図10に示した例では、直流バイアスと交流直流重畳バイアスとを切り替えるための第一リレー510及び第二リレー511をもサブモジュール500内に配設させて、これら構成部材がサブモジュールとして一体的に構成されているのが見て取れる。なお、第一リレー510及び第二リレー511は、交流直流重畳バイアス印加用基板501上に配設してもよいし、交流直流重畳バイアス印加用基板501とは、別体としてサブモジュール500内に配設することもできる。また、図10に示されるように、第一リレー510及び第二リレー511をもサブモジュール500に一体的に搭載するように構成した場合、交流電圧を必要としない使用用途の場合には、従来の転写装置のように直流電圧成分のみで使用することができる省エネルギーな画像形成装置を、非常に簡易に構成することができるようになるため好適である。
【0058】
このように画像形成装置に着脱可能なサブモジュール500として、交流直流重畳バイアス印加用の構成部材を一体的に構成しておけば、非常にコンパクトに交流直流重畳バイアスを印加可能するための構成部材をまとめておくことが可能になる。したがって、このように交流直流重畳バイアス印加用の構成部材をサブモジュール500としてコンパクトに構成しておけば、そもそも、画像形成装置に取り付ける設置場所を確保する際に、画像形成装置を必要以上に大きくすることがない。また、画像形成装置の初期組み付け時などに、作業者は当該サブモジュール500を画像形成装置の所定位置に取り付けて、ハーネスや信号線などの所定の配線を繋ぎ合わせるという簡易な作業だけで、容易に交流直流重畳バイアスを印加可能な画像形成装置を構成することが可能になる。
【0059】
ここで、このようなサブモジュール500は、画像形成装置本体内の何れの位置にでも設置可能なものであるが、本発明では、更に進んで、転写ユニット200の内部に、言い換えれば、転写ユニット200における中間転写ベルト50が掛けまわされている範囲内に収めるようにした。このように構成することにより、従来の画像形成装置の大きさを変更することなく、交流直流重畳バイアスを印加可能な画像形成装置を提供できるようになる。これは、交流直流重畳バイアス印加用の構成部材をサブモジュール500としてコンパクトに構成した結果、転写ユニット200内に配置できるようになったものであり、この両者の特徴を具備することで、交流直流重畳バイアスを印加可能な画像形成装置を必要最小限の大きさで構成することができるようになるものである。なお、オプション対応で交流直流重畳バイアスを印加可能なように画像形成装置を改造する場合には、特に有利になる。
【0060】
すなわち、オプション対応で、交流直流重畳バイアス用の構成部材を取り付ける際には、これら交流直流重畳バイアス印加用の構成部材をサブモジュール500として構成しておけば、サービスマンは、当該コンパクトなサブモジュール500だけを客先に持って行くだけでよい。そして、通常、転写ユニット200は、メンテナンスなどのために画像形成装置前面側に引き出し可能に構成されているので、当該転写ユニット200を画像形成装置から引き出して、この転写ユニット200内に、例えばネジ留めなどすることで、サブモジュール500を取り付け、さらに簡易な配線作業を実施するだけで、容易にオプション対応にかかる改造乃至増設を完了することができる。したがって、サービスマンが画像形成装置の背面側にアクセスする必要がないだけでなく、客先で画像形成装置を大きく分解する必要が減り、また、取り付け時間の大幅な短縮が見込めるようになるため好適である。また、オプション対応の際に、図10に示されるような、直流バイアスと交流直流重畳バイアスとを切り替えるための第一リレー510及び第二リレー511が搭載されたサブモジュール500を用いれば、交流電圧を必要としない使用用途の場合には、従来の転写装置のように直流電圧成分のみで使用することができ、省エネルギーに画像形成装置を使用することができるという機能を、交流直流重畳バイアスを印加可能にするというオプション対応の、更なる追加機能として提供できるようになるため好適である。
【0061】
次に、このようなサブモジュール500を転写ユニット200内部に配置した構成例を、図11〜図14を用いて説明する。図11は、画像形成装置本体から、転写ユニット200が引き出された状態を示した概要図である。図10の上方に示されているように画像形成装置本体内に収容されている転写ユニット200は、転写ユニット200のメンテナンスなどを施すために、図10の下方に示されているように、図示しないレール部などを介して、画像形成装置本体から当該本体正面側の外部まで引き出し可能に構成されているのが通常である。そのため、本発明のように、転写ユニット200内にサブモジュール500を配置できるようにしておけば、例えば、未だ画像形成装置を出荷する前の工場などにおいて、交流直流重畳バイアスを印加しない画像形成装置を組み立てた後で、交流直流重畳バイアス印加用の画像形成装置の注文があっても、画像形成装置を大きく分解する必要がなく、容易に且つ素早く既存の画像形成装置を改造することが可能であるし、また、先に既述のように、客先でのオプション対応の際には、画像形成装置正面側からアクセスするだけで、交流直流重畳バイアスを印加可能な画像形成装置に改造することができる。
【0062】
なお、当初から転写ユニット200内に、サブモジュール500を設置するスペースがある場合には問題ないが、コンパクトに構成されているとはいえ、別モジュールとして構成されたサブモジュール500が設置可能なスペースを、転写ユニット200内で確保することが難しい場合も考えられる。そのため、ここに図示した例では、まず、転写ユニット200内に配置されている直流電圧印加用の電源ユニット110(例えば、図7のブロック図における電源ユニット110)を、図12に示されるように、転写ユニット200用の制御基板の上方に配置させた。ここで、図12は、サブモジュール500を配置するために開けられた設置スペースAを説明するための、転写ユニットの一部分を画像形成装置の上方から眺めた概略部分平面図であり、この図12は、転写ユニット200が引き出された後に、転写ユニット200に掛けまわされていた中間転写ベルト50を外した上で、さらに、直流電圧印加用の電源ユニット110の上方を覆っている天板を取り外した状態を、転写ユニット200の上方から眺めている。
【0063】
この図12に示される構成について説明すると、従来の画像形成装置では、転写ユニット200内において、図12の紙面垂直方向に凹んだ凹部を設けて、この凹部内で、直流電圧印加用の電源ユニット110と、この電源ユニット110の制御を含めた転写ユニット200用の制御基板とを、図12の左右方向に対応する水平方向に並列させて配置させている。したがって、直流電圧印加用の電源ユニット110を、転写ユニット200の制御基板の上方に配置して、これらを凹部内で上下二段に配置させれば、直流電圧印加用の電源ユニット110が配置されていた部分を、サブモジュール500の設置スペースとして用いることができるというものである。なお、直流電圧印加用の電源ユニット110を、転写ユニット200の制御基板の下方に配置して、これらを凹部内で上下二段に配置させてもよい。
【0064】
この設置スペースが、図12において、参照符号Aで示されている。すなわち、元来直流電圧印加用の電源ユニット110と転写ユニット用制御基板とが並列配置されていた、転写ユニット200内の凹部において、直流電圧印加用の電源ユニット110が画像形成装置の上下方向で見て制御基板の上方に位置するように配置して、電源ユニット110が元来配置されていた設置スペースを、サブモジュール500の設置スペースAとして設けたものである。したがって、図14で後述するように、電源ユニット110の下方には、転写ユニット200を制御するための転写ユニット用制御基板(制御回路300)が配置されている。そして、この開けられた接地スペースAに、サブモジュール500が配置されるので、当初から存在していた転写ユニット200内の凹部において、サブモジュール500と直流電圧印加用の電源ユニット110と転写ユニット200用の制御基板300を配置することができるようになる。
【0065】
なお、この図12では、サブモジュール500の設置スペースAの他に、直流電圧を印加するための電源ユニット110における直流高圧トランス126と、この直流高圧トランス126に設けられるコネクタ端子190と、対向部材である二次転写部対向ローラ73あるいは転写部材である二次転写ローラ80に接続されている転写電界用ハーネス180と、この転写電界用ハーネス180の端部に設けられ上記直流高圧トランス126のコネクタ端子190に接続されるコネクタ端子191とが代表して描かれている。サブモジュール500が設置されていない状態では、コネクタ端子191をコネクタ端子190に接続させることにより、直流高圧トランス126からの直流出力が、転写電界用ハーネス180を介して、二次転写部対向ローラ73あるいは二次転写ローラ80に出力されるようになっている。なお、中間転写ユニットフレーム201の上面にはクランプ192が装着されており、ハーネス180をクランプ192にクランプさせることで、サブモジュール非搭載時にハーネス180をユニットフレーム201に固定している。
【0066】
そして、この設置スペースAにサブモジュール500を配置した例が、図13に示される。図13は、転写ユニット200内でサブモジュール用に開けられた設置スペースAにサブモジュール500が配置された状態を説明するための概略平面図であり、図11と同様に、中間転写ユニット200が引き出された後に、中間転写ユニット200に掛けまわされていた中間転写ベルト50を外した上で、さらに、サブモジュール500や直流電圧印加用の電源ユニット110の上方を覆っている天板を取り外した状態を、中間転写ユニット200の上方から眺めた概略部分平面図である。図13に示されているように、直流電圧印加用の電源ユニット110と、転写ユニット200用の制御基板とが2段構成で配置されている側方(図13では左方)に、サブモジュール500を配置させている。このように配置すれば、転写ユニット200の寸法、引いては画像形成装置の元来の寸法を変更することなく、サブモジュール500を取付けられるので好適である。
【0067】
図14は、サブモジュール500を装着した状態を装置前面側から見た断面図である。なお、図14は、装置前面側から見た図であるため、左右の位置関係が図13とは逆になっている。図13では、図の上側が装置前面、図の下側が装置背面となっている。
【0068】
図14において、中間転写ユニットフレーム201は、転写ユニット200の中で中間転写ベルト50のループ内に配置され、直流電源ユニット110、制御基板300及びサブモジュール500を支持している。サブモジュール500を装着した状態の図14では、直流電源ユニット110が制御基板300の上下方向に重ねて配置されている。そして、ユニットフレーム201内の凹部に配置された直流電源ユニット110、制御基板300及びサブモジュール500を上方から覆うように、遮蔽板金151が設けられる。その遮蔽板金151の、サブモジュール500に対応する部分の板金下面には、絶縁性シート152が貼り付けられている。また、遮蔽板金151は、転写ユニット200から着脱可能に設けられ、サブモジュール500の装着作業や、その他メンテナンス作業を容易に行なえるようになっている。
【0069】
直流電源ユニット110のDC印加用基板115には、高圧トランス126が搭載されている。そのDC印加用基板115は板金153によって支持されている。転写ユニット200を制御するための転写ユニット用制御基板300は、板金154に支持されている。また、サブモジュール500の基板501には交流高圧トランス122が搭載されており、その基板501は板金155により支持される。
【0070】
さらに、一次転写ローラ61間に配置される上部板金156は、遮蔽板金151の下部に配置される上記直流電源ユニット110、制御基板300及びサブモジュール500等の構成要素を上部から覆うように設けられている。この上部板金156も、転写ユニット200から着脱可能に設けられている。
【0071】
ここで、このようにサブモジュール500を転写ユニット200内に配置させた場合に、サブモジュール500からは、比較的高圧の交流電圧(約5〜20kV)が出力される。この場合、サブモジュール500内に配置されている高圧交流電源(例えば、交流高圧トランス122)や、当該高圧交流電源からの交流電圧が印加されるハーネスなどからは、電流方向が切り替わることによる電波が発生してしまうことが考えられる。このような電波は、画像形成装置内に配線されている制御用の信号線などを介して伝達される各種信号の電位や、制御用基板などの設置電位を乱して、これら各種信号などに対して悪影響を与えてしまうことがあり、そのため、高圧交流電圧を印加したことで発生する電波が、出来るだけサブモジュール500から漏れでないことが好ましい。
【0072】
そこで、本発明では、電波の遮蔽性能を見込める金属製部材(例えば、ステンレスなどの金属からなる板金部材)で、サブモジュール500の上下及び側面四方を取り囲むことにした。このようにサブモジュール500の上下及び側面四方を金属製部材で取り囲んでおけば、高圧交流電圧が印加されたことで発生してしまう電波がサブモジュール500から漏れでないようになる。なお、本発明における「取り囲む」との概念は、完全にサブモジュールを金属製部材で密閉してしまうことを意味しているのではない。本発明では、電波の漏れ量を極力少なくしたいとの考えで、サブモジュール500を金属製部材で取り囲むことを意図しているものであり、例えば、サブモジュール500からその外部に接続される信号線やハーネスなどが出て行く開口部用の隙間や切欠きが設けられていてもよいし、特に後述するノイズが発生して当該金属製部材に伝播した場合に、サブモジュール500を取り囲んでいるその他の金属製部材に更に伝播していかないように、若干の間隙(例えば、数mm程度)を金属製部材間で設けることもできる。
【0073】
ここで、サブモジュール500の上下及び側面四方を金属製部材で取り囲む際に、サブモジュール500の設置空間に既存の金属製部材を利用することが可能である。例えば、図13及び図14に示されている例では、転写ユニット200内に設けられた凹部にサブモジュール500を配置しているが、当該凹部の壁面が金属であれば、この凹部の壁面をサブモジュール500の底面及び側面を取り囲む金属製部材として利用することができる。なお、図13に示した例では、サブモジュール500と直流電圧印加用の電源ユニット110とは、隣接して配置されているため、当該隣接するサブモジュール500と電源ユニット110との間を間仕切るための、金属製間仕切り503をサブモジュール500側に設けている(図10参照)。このような金属製間仕切り503(図14における板金155に相当)を設けることで、電源ユニット110とサブモジュール500とが隣接して配置されているとしても、これら両者間から互いに漏れ出てくる電波量を効果的に低減することが可能になる。
【0074】
また、先に記述した転写ユニット200に配置されている天板であって、中間転写ベルト50を外した際に、直流電圧印加用の電源ユニット110やサブモジュール500の上方を覆っている天板が金属製部材であれば、これを利用することもできる。このような天板は、画像形成装置から引き出すことを当初から想定している転写ユニット200の軽量化のために、樹脂などの比較的比重の軽い部材で構成される場合があるが、天板が樹脂で構成されている場合には、当然ながらサブモジュール500の上方を囲む金属製部材としては採用できないので、この場合には、専用の金属製部材を準備する必要がある。但し、この天板とは別に、サブモジュール500の上方を囲う金属製部材を専用に用意する場合には、この専用金属製部材を配置するための高さ寸法が要求される場合がある。また、この専用金属製部材を用意すれば、部品点数が増えて、コスト的な不利益が生じてしまう。したがって、金属製の天板を、サブモジュール500の上方を囲む金属製部材として利用するほうが好ましい(図14における遮蔽板金151に相当)。
【0075】
ところで、このようにサブモジュール500を金属製部材で取り囲んだ場合において、高圧交流電圧が印加される部材、例えば、ハーネスやリレーに加えて、交流高圧バイアスを通電する経路のうちで絶縁被覆されていない部分である高圧トランス122のコネクタ端子(B)などが、これら金属製部材に近接していると、これら構成部材は、高圧交流電圧が印加されているために、今度は金属製部材に電流がリークしてしまうことが考えられる。このようなリークが発生すると、転写ユニットや画像形成装置に対して悪影響を与えたりトナー像の転写に必要な交流高圧バイアスが確保できない問題が生じる。そこでリークを発生させないように、上記コネクタ端子(B)など交流高圧バイアスを通電する経路のうちで絶縁被覆されていない部分を、金属製部材から離して当該サブモジュール内で配置させるのが好ましい。特に、電流のリークを防止するためには、印加電圧の最大値1kVあたり1mmの距離だけ上記部分を金属製部材から離すことが好ましく、約5〜20mm離すのが望ましい。
【0076】
なお、本実施形態においては、電源(直流電源ユニット110及びサブモジュール500)に電流の異常検知機能が備えられ、リークが発生すると異常検知してすぐにマシンが止まるようになっている。
【0077】
また、高圧交流電源の電源出力側から出て、サブモジュール500内に配線されている高圧交流ハーネスは、例えば、絶縁性のガイド部材などの上に保持されることによって、サブモジュール500を取り囲む金属製部材とは例え一部分であっても接触しないように配線されている。
【0078】
なお、先に記述した直流電源ユニット110でも、直流電圧ではあるが高圧の電圧が印加される。また、画像形成処理の条件によっては、直流電圧印加時に、当該直流電圧のバイアス値を変更する場合がある。したがって、直流電源ユニット110に対しても、電波及びノイズ対策として、サブモジュール500に対して施したのと同様の対策、すなわち、直流電源ユニット110の上下及び側方を金属製部材で取り囲み、さらには、直流電圧が印加される構成部材、特に直流電源電圧が流れるハーネスが当該金属製部材に接触しないように構成されていると好適である。
【0079】
また、図12及び図14に示されるように、直流電源ユニット110と転写ユニット用制御基板300とが2段構成で配置されている場合には、直流電源ユニット110から転写ユニット用制御基板300の方へ電波が漏れ出す可能性がある。したがって、直流電源ユニット110と転写ユニット用制御基板300とを2段構成に配置した場合には、直流電源ユニット110からの電波漏れ対策として、これら直流電源ユニットと転写ユニット制御用基板300との間に、金属製部材を配置して、直流電源ユニットからの転写ユニット制御用基板への電波漏れを低減するのが好ましい(図14における板金153および遮蔽板金151等に相当)。
【0080】
次に、本願発明の更なる実施例について、以下に説明する。
図15は、転写ユニット200内に配置されたサブモジュール500の好適な配線方法を説明するための説明図である。図15に示される配線状態になる手順を、図15に加えて図11〜図13を用いて説明すると、まず、図11の下方に示されるように、転写ユニット200を画像形成装置の正面側に引き出す。そして、中間転写ベルト50を転写ユニット200から取り外し、さらに、サブモジュール500を配置すべき箇所の天板を取り除く。この状態を示しているのが、図12に示される概略部分平面図である。図12に示される状態になった後で、次に、コネクタ端子191をコネクタ端子190から取り外し、さらに、クランプ192からハーネス180を取り外す。この状態で、サブモジュール500を設置場所Aに配置することになる。なお、サブモジュール500は、例えばネジなどの固定手段を用いて、設置場所Aに固定される。
【0081】
次いで、サブモジュール500と電源ユニット110とが、図7のブロック図に示されるような結線状態になるように、各種ハーネスを繋ぎ合わせることになる。各接続部の結線方法を図16を用いて説明する。
【0082】
図16は、図15の一部を拡大して各接続部の結線方法を説明するための模式図である。図16に示すように、直流電源ユニット110の高圧トランス126には接続部(a)が有る(コネクタ端子190に相当)。また、サブモジュール500の端子台502には接続部(b)〜(e)が設けられている。同様に、サブモジュール500の第一リレー510及び第二リレー511には、接続部(h),(i),(f),(g)がそれぞれ設けられている。そして、二次転写部対向ローラ73からのハーネス180には接続部(j)が有る(コネクタ端子191に相当)。
【0083】
サブモジュール500の非搭載時には、接続部(a)と(j)を結ぶ1経路のみが結線される。そして、サブモジュール500搭載時には、接続部(j)と(e),接続部(h)と(d),接続部(f)と(c),接続部(i)と(a),接続部(g)と(b)を結ぶ5経路が結線される。なお、接続部(b)は、サブモジュール500の交流高圧トランス122(図15)へ至る接続部である。
【0084】
サブモジュール500を搭載する際のハーネス付け替え作業は、図12に示すクランプ192からハーネス180を外し、直流電源ユニットの高圧トランス126に設けられるコネクタ端子190(接続部(a))からハーネス端部のコネクタ端子191(接続部(j))を取り外す。そして、ハーネス180端部の接続部(j)を端子台502の接続部(e)に接続する。また、第一リレー510の接続部(i)と高圧トランス126コネクタ端子190(接続部(a))とをハーネス160(図15)を用いて接続する。それ以外の経路はサブモジュール500内で予め結線済みとなっている。
【0085】
したがって、上記したように、コネクタ端子190(接続部(a))からハーネス端部のコネクタ端子191(接続部(j))を取り外して端子台502の接続部(e)に接続するとともに、接続部(i)と接続部(a)とをハーネス160で接続するという、たった2つの結線動作だけで、図7のブロック図に示されるような交流直流重畳バイアスを印加可能なハーネス構成を作り出すことが可能になる。
【0086】
ここで、先に記述したように、本発明では、高圧交流電源の電源出力側から出て、サブモジュール500内に配線されている高圧交流ハーネスは、絶縁性のガイド部材などの上に保持されることで、サブモジュール500を取り囲む金属製部材に接触しないように、配線されている。したがって、交流直流重畳バイアスを印加可能に画像形成装置を構成するためにサブモジュール500を取り付ける際に、作業者が接触して、配線位置を変える可能性のあるハーネスであって、交流電圧が印加されるハーネスには、専用の絶縁性ガイドが設けられているのが好ましい。具体的には、図15に示した例では、端子台502に結線される、対向部材である二次転写部対向ローラ73あるいは転写部材である二次転写ローラ80まで接続されている転写電界用ハーネス180が該当する。また、直流電圧を印加するための電源ユニット110は、直流電圧であっても、高圧の電圧を出力するので、この電源ユニット110から高圧直流電圧が印加されるハーネスも、サブモジュール500を取り囲む金属製部材に接触しないように、配線するのが好ましい。このハーネスは、具体的には、図15に示した例では、端子台502に結線されるハーネス160であって、直流電圧を印加するための電源ユニット110の電源出力用第一ハーネス160が該当する。
【0087】
したがって、図15に示した例では、転写電界用ハーネス180は、これが端子台502まで案内される際に、サブモジュール500を取り囲む金属製部材に接触しないように、当該転写電界用ハーネス180を保持するための第二絶縁性ガイド600に保持されており、また、電源出力用第一ハーネス160もまた、これが端子台502まで案内される際に、サブモジュール500を取り囲む金属製部材に接触しないように、当該第一ハーネス160を保持するための第一絶縁性ガイド601に保持されている。当該第一及び第二絶縁性ガイド600及び601は、例えば樹脂などの絶縁性の高い材料から構成されており、また、第一及び第二絶縁性ガイド600及び601では、これらに保持されるハーネスを、爪部などに引掛けることで、所定位置にとどまらせ、これらハーネスが金属製部材に接触しないようにしている。
【0088】
なお、サブモジュール500から出て、第一リレーの電源入力側に接続されるハーネスは、サブモジュール500構成時に、樹脂などからなる絶縁性ガイド部材上に保持させることで、金属製部材に接触させないようにしており、同様に、第一リレー510と第二リレー511の電源出力側を並列に接続するためのハーネスも、サブモジュール500構成時に、樹脂などからなる絶縁性ガイド上に保持させて、サブモジュール500を取り囲む金属製部材に接触しないように、配線している。
【0089】
ここで、転写電界用ハーネス180は、サブモジュール500を取り付ける際に、作業者が接触して、配線位置を変える可能性のあるハーネスであって、高圧の交流電圧がまさに印加されるハーネスである。したがって、サブモジュール500を取り付ける際に、作業者が誤って、転写電界用ハーネス180を弛ませて配線してしまったりすると、当該転写電界用ハーネス180がサブモジュール500を取り囲む金属製部材に接触してしまう可能性がある。そこで、これを防止するために、この転写電界用ハーネス180を保持して案内する第二絶縁性ガイド600は、これに保持される転写電界用ハーネス180が直線状に案内されるように、当該転写電界用ハーネス180を保持するとよい。すなわち、第二絶縁性ガイド600が転写電界用ハーネス180を直線状に案内するように保持していれば、転写電界用ハーネス180を不必要に長い状態で配線しておく必要がなくなるのと同時に、当該転写電界用ハーネス180が弛むのを極力防止することが可能になる。なお、図14に示した第二絶縁性ガイド600では、その他の構成部材との配置位置との関係で、図中上下方向に延在しているガイド自体に、図中左右方向の屈曲部が一箇所存在しているが、この第二絶縁性ガイド600に設けられた転写電界用ハーネス180を保持する爪部などの配置を工夫することで、完全な直線状ではないものの、略直線状に転写電界用ハーネス180を保持している。
【0090】
なお、サブモジュール500の上下及び側面を取り囲む金属製部材に高圧交流電圧が印加される構成部材が接触することを絶対的に防止するために、当該金属製部材におけるサブモジュール500を向く面全てに、絶縁性シートを貼り付けることも可能である。但し、当該絶縁性シートを金属製部材の全面に貼り付ける場合には、コストがかさむことから、高圧交流電圧が印加される構成部材が接触する可能性のある箇所、例えば、転写電界用ハーネス180が配線されている箇所に対応する金属製部材の少なくとも一部にだけ、絶縁性シートを貼り付けてもよい。
【0091】
また、これまで、高圧交流電圧が印加される構成部材がサブモジュール500の上下及び側面を取り囲む金属製部材に接触することを防止する構成を説明してきたが、このような構成は、高圧交流電圧が印加される構成部材がサブモジュール500の上下及び側面を取り囲む金属製部材に接触すると、ノイズが発生し、当該ノイズが信号線を伝っている制御信号などを乱すことを防止することを目的としている。したがって、サブモジュール500内に配線される信号線(例えば、制御回路300にサブモジュール500から接続される信号線)は、サブモジュール500の上下及び側面を取り囲む金属製部材に加えて、その他の構成部材にも接触しないように絶縁性のガイドなどを用いて案内されていると好適である。このように案内されていれば、仮に、高圧交流電圧が印加される構成部材が金属製部材に接触してノイズが発生しても、当該ノイズに起因する信号への悪影響を極力低減することが可能になる。また、このサブモジュール500と制御回路300とを結ぶ信号線は、サブモジュール構成時に予め一つの信号線用集合コネクタにまとめておけば、制御部300に予め設けておいた、当該信号線用集合コネクタと着脱可能な相手側コネクタと、この信号線用集合コネクタを結線するだけで、信号の授受が可能になることに加えて、信号線用の絶縁ガイドを最小限にすることが可能になるので好適である。
【0092】
これまで、本発明の好適な実施形態の例を図面に基いて説明してきたが、本発明は、図示した例に限られない。例えば、図10や図15に示した例では、第一リレー510と第二リレー511とがサブモジュール500に一体的に配設される例を示しているが、この第一リレー510と第二リレー511とが配設されていないサブモジュール500を転写ユニット200に組み込むことも可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 画像形成ユニット
11 感光体ドラム
50 像担持体(中間転写ベルト)
73 二次転写部対向部材
80 転写部材
110,111 電源ユニット
112 交流電圧発生手段
113 直流電圧発生手段
123 交流出力検出手段
127 直流出力検出手段
160 電源出力用第一ハーネス
180 転写電界用ハーネス
200 転写ユニット
300 制御回路
500 サブモジュール
501 交流直流重畳バイアス印加用基板
502 端子台
510 第一リレー
511 第二リレー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0094】
【特許文献1】特開2010−281907号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が形成される像担持体と、
前記像担持体と対向又は当接する転写部材と、を備え、
前記像担持体と前記転写部材との間に、直流電圧と交流電圧とが重畳された交流直流重畳バイアスを印加することで転写電界を形成し、当該転写電界の作用で、記録媒体に前記像担持体上のトナー像を転写することが可能な画像形成装置において、
前記交流直流重畳バイアスを出力する電源を有する電源モジュールが、画像形成装置本体に対して着脱可能であること、及び
前記電源モジュールが転写ユニット内に配設されていること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記電源モジュールが金属製部材で上下及び側面を取り囲まれていると共に、
少なくとも交流電圧電源からの高圧交流電圧が印加されるハーネスがこれら金属製部材に接触しないように、絶縁性部材により前記電源モジュール内で配線されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記電源モジュールが、直流電圧を印加するための電源ユニットに隣接して配置され、さらに、当該直流電圧電源ユニットとサブモジュールとの間には、金属製間仕切りが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記直流電圧を印加するための電源ユニットが前記転写ユニットを制御するための制御基板の上下方向に重ねて配置され、当該電源ユニットと制御基板との間に、金属製部材を配置することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記電源モジュールには、前記直流電圧を印加するための電源ユニットの電源出力用第一ハーネスの端部に設けられた第一コネクタ端子が接続される端子台が設けられ、
前記電源出力用第一ハーネスを前記端子台まで案内する際に、前記電源出力用第一ハーネスが前記金属製部材に接触しないように、当該電源出力用第一ハーネスを保持するための第一絶縁性ガイドが設けられることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記電源モジュールの前記端子台には、前記転写部材又はこれに対向する対向部材と接続される転写電界用ハーネスの端部に設けられた第二コネクタ端子が接続可能であり、
前記転写電界用ハーネスを前記端子台まで案内する際に、前記転写電界用ハーネスが前記金属製部材に接触しないように、当該転写電界用ハーネスを保持する第二絶縁性ガイドが設けられることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第二絶縁性ガイドは、前記転写電界用ハーネスが直線状に案内されるように、当該転写電界用ハーネスを保持することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記電源モジュールの上下及び側面を取り囲む金属製部材の少なくとも一部に絶縁性シートが貼り付けられていることを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
画像形成装置の転写ユニット内に配設され、該転写ユニットに対して着脱可能に設けられた電源モジュールであって、
当該電源モジュールが、画像形成装置の転写部材に印加する交流直流重畳バイアスを出力する電源を含むことを特徴とする電源モジュール。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2013−24909(P2013−24909A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156565(P2011−156565)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】