説明

画像形成装置用の無端ベルト、その製造方法、及び画像形成装置

【課題】主鎖にエーテル基を持たないフッ素化ポリイミド樹脂から構成される場合に比べ
て、長期間に渡り離型性を有する画像形成装置用の無端ベルトを提供する。
【解決手段】表面層を有するように構成し、さらに、その表面層の少なくとも外表面が主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂からなるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置用の無端ベルト、その製造方法、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、電子写真機器等の画像形成装置においては、記録用紙等の被記録部材上にトナー像等の未定着画像又は未転写画像を、例えば、加熱や静電力等によって定着又は転写させる、金属製、プラスチック製又はゴム製等の回転体からなる定着ベルト又は中間転写ベルトが用いられている。近年の画像形成装置の小型化及び高性能化に伴い、上述の回転体は変形可能であることが好ましい場合があり、このような回転体として肉厚が薄いプラスチック製のフィルムからなる継ぎ目のない無端ベルトが用いられている。このような無端ベルトに用いられる材料としては、強度、寸法安定性、耐熱性等の面でポリイミド樹脂が好適に用いられている(以下、ポリイミドを「PI」と略称することがある)。
【0003】
無端ベルトを用いる定着装置としては、例えば、ベルトニップ方式のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この定着装置は、回転可能な定着ロールと、定着ロールに接触し、定着ロールに従って回転するように配置された無端ベルトとから主に構成されている。このような構成を有する定着装置を用いた定着操作は、表面が加熱された定着ロールと無端ベルトとの接触部を、トナー像を形成した記録紙を通過させることにより、トナー像を記録紙表面に加熱定着することにより行われる。その際、接触部(ニップ)において、無端ベルトを定着ロールに圧接させるために、無端ベルトの内周面に圧力パッド及び摺動シート等の支持体が設けられている。
【0004】
PI樹脂製の無端ベルトの製造方法としては、例えば、特許文献2、3に記載されているように、芯体(基材層)の表面に、浸漬塗布法によってPI前駆体溶液を塗布し、熱風乾燥炉等で乾燥した後、更に所定の温度まで加熱焼成することにより、芯体外面上にPI樹脂皮膜を形成する方法がある。
【0005】
一方、無端ベルトを電子写真機器において利用する場合、離型層(表面層)を表面に形成した複数層からなるPI樹脂製の無端ベルトが利用されている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
この場合に、離型層としては、PFA樹脂(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)が主に用いられ、用途によっては、カーボンを分散させて導電性を向上させた樹脂や、SiOやBaSO等の無機物のフィラーを混合して耐久性を向上させた樹脂等が用いられている。
【0007】
一方、無端ベルトを電子写真機器において利用する場合、無端ベルトが利用される用途によっては、無端ベルト内周面と接触するように配置された摺動シート(支持体)との摺動抵抗を下げることや、無端ベルトが回転した際に発生する摺動音を抑制することが要求される場合がある。また、画質の点からは外周面が平滑面であり、かつベルト走行性の点からは内周面が粗面であるというような、外周面と内周面との表面粗さが異なる無端ベルトが必要とされることもある。
【0008】
離型層としてPFA樹脂を使わない方法としては、例えば、主鎖にエーテル基を持たないフッ素化ポリイミドを使う方法が、特許文献5、6、7に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−262903号公報
【特許文献2】特開昭61−273919号公報
【特許文献3】特開2002−091027号公報
【特許文献4】特開2000−351466号公報
【特許文献5】特許公報第3069041号
【特許文献6】特開2000−137396号公報
【特許文献7】特許公報第4215492号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、主鎖にエーテル基を持たないフッ素化ポリイミド樹脂から構成される場合に比べて、長期間に渡り離型性を有する画像形成装置用の無端ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下の画像形成装置用の無端ベルト、その製造方法、及び画像形成装置が提供される。
【0012】
[1]表面層を有してなり、その表面層の少なくとも外表面が主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂から構成されてなる画像形成装置用の無端ベルト。
【0013】
[2]前記主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂は、少なくともその一部がフッ素化された酸無水物と少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類とから合成されるフッ素化ポリアミック酸から調製された樹脂である前記[1]に記載の画像形成装置用無端ベルト。
【0014】
[3]前記少なくともその一部がフッ素化された酸無水物及び前記少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類は、フッ素基(−F)及び/又はパーフルオロアルキル基(−C2n+1:nは1以上の整数)を有する前記[2]に記載の画像形成装置用の無端ベルト。
【0015】
[4]前記少なくともその一部がフッ素化された酸無水物は、下記化学式(1)〜(3):
【0016】
【化1】

【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
で表されるものであり、かつ前記少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類は、下記化学式(4):
【0020】
【化4】

【0021】
で表されるものである前記[3]に記載の画像形成装置用の無端ベルト。
【0022】
[5]前記少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類は、下記化学式(5)〜(15)で表されるもののいずれかである前記[4]に記載の画像形成装置用の無端ベルト。
【0023】
【化5】

【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
【化8】

【0027】
【化9】

【0028】
【化10】

【0029】
【化11】

【0030】
【化12】

【0031】
【化13】

【0032】
【化14】

【0033】
【化15】

【0034】
[6]前記表面層の裏面側に積層された筒状の基材層をさらに有する前記[1]〜[5]のいずれかに記載の画像形成装置用無端ベルト。
【0035】
[7]前記基材層の少なくとも内表面は、ポリイミド又はポリアミドから構成されてなる前記[1]〜[6]のいずれかに記載の画像形成装置用無端ベルト。
【0036】
[8]前記表面層と前記基材層との間に、中間層として弾性層をさらに有する前記[6]又は[7]に記載の画像形成装置用無端ベルト。
【0037】
[9]前記[1]〜[8]のいずれかに記載の画像形成装置用無端ベルトを用いた画像形成装置。
【0038】
[10]少なくともその一部がフッ素化された酸無水物と少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類とから合成されるフッ素化ポリアミック酸(フッ素化ポリイミド前駆体溶液)を調製し、調製したフッ素化ポリアミック酸(フッ素化ポリイミド前駆体溶液)を基材又は支持体に塗布することにより表面層となる塗膜を形成し、及び形成された前記塗膜を加熱して、表面層を形成することを含む画像形成装置用の無端ベルトの製造方法。
【0039】
[11]前記少なくともその一部がフッ素化された酸無水物は、下記化学式(1)〜(3):
【0040】
【化16】

【0041】
【化17】

【0042】
【化18】

【0043】
で表されるものであり、かつ前記少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類は、下記化学式(4):
【0044】
【化19】

【0045】
で表されるものである前記[10]に記載の画像形成装置用の無端ベルトの製造方法。
【0046】
[12]前記少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類は、下記化学式(5)〜(15)で表されるもののいずれかである前記[11]に記載の画像形成装置用の無端ベルトの製造方法。
【0047】
【化20】

【0048】
【化21】

【0049】
【化22】

【0050】
【化23】

【0051】
【化24】

【0052】
【化25】

【0053】
【化26】

【0054】
【化27】

【0055】
【化28】

【0056】
【化29】

【0057】
【化30】

【発明の効果】
【0058】
請求項1〜5に係る発明によれば、主鎖にエーテル基を持たないフッ素化ポリイミド樹脂から構成される場合に比べて、長期間に渡り離型性を有する画像形成装置用の無端ベルトを提供することができる。
【0059】
請求項6〜7に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、耐久性に優れた画像形成装置用の無端ベルトを提供することができる。
【0060】
請求項8に係る発明によれば、中間層として弾性層を有しない場合に比べて、耐久性にさらに優れた画像形成装置用の無端ベルトを提供することができる。
【0061】
請求項9に係る発明によれば、本構成の画像形成装置用の無端ベルトを用いない場合に比べて、長期間に渡り画像の汚れが抑制された画像形成装置を提供することができる。
【0062】
請求項10〜12に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、長期間に渡り離型性を有する画像形成装置用の無端ベルトを効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1A】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルト(表面層の単層からなる場合)を示す斜視図である。
【図1B】図1Aに示す画像形成装置用の無端ベルトの縦断面図である。
【図1C】図1Aに示す画像形成装置用の無端ベルトの横断面図である。
【図2A】本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルト(表面層及び基材層の複層からなる場合)を示す斜視図である。
【図2B】図2Aに示す画像形成装置用の無端ベルトの縦断面図である。
【図2C】図2Aに示す画像形成装置用の無端ベルトの横断面図である。
【図3A】本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルト(表面層、基材層及び弾性層の複層からなる場合)を示す斜視図である。
【図3B】図3Aに示す画像形成装置用の無端ベルトの縦断面図である。
【図3C】図3Aに示す画像形成装置用の無端ベルトの横断面図である。
【図4】図1Aに示す画像形成装置用の無端ベルトが支持体で支持された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
[第1の実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルト]
図1Aは、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルト(表面層の単層からなる場合)を示す斜視図である。図1Bは、図1Aに示す画像形成装置用の無端ベルトの縦断面図である。また、図1Cは、図1Aに示す画像形成装置用の無端ベルトの横断面図である。
【0065】
図1A〜1Cに示すように、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルト10は、被記録部材(図示せず)上に画像を形成する画像形成装置(図示せず)において被記録部材上に未定着画像又は未転写画像を定着又は転写させる定着ベルト又は中間転写ベルトとして用いられる画像形成装置用の無端ベルト10であって、定着又は転写時に被記録部材に接触する筒状の表面層11を有し、その表面層11の少なくとも外表面は、主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂から構成されてなるものである。
【0066】
図1A〜1Cにおいては、上述のように、表面層11として、円筒状のものを用いた場合を示したが、例えば、角筒、楕円筒等の筒状又は円柱等の柱状であってもよい。また、上述のように単層のものを用いた場合を示したが、例えば、表面層11自体が複数層からなるものであっても、単層からなり内側から外側に向かって主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂の含有量が段階的又は傾斜的に増加するものであってもよい。これらの場合、その外表面は、主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂から構成されることが必要である。
【0067】
なお、第1の実施の形態における画像形成装置用の無端ベルト10は、表面層11自体が複数層からなるものであっても、表面層11以外の層、例えば、後述する基材層12(図2A参照)等を有しないので、「表面層11の単層からなる場合」(すなわち、無端ベルト10として、他の層、例えば、基材層等を有しない場合)に含まれる。
【0068】
第1の実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルト10の表面層11の少なくとも外表面は、上述のように主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂から構成される。このような主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂としては、例えば、少なくともその一部がフッ素化された酸無水物と少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類とから合成されるフッ素化ポリアミック酸から調製された樹脂を挙げることができる。
【0069】
ここで、上述の少なくともその一部がフッ素化された酸無水物及び少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類としては、フッ素基(−F)及び/又はパーフルオロアルキル基(−C2n+1:nは1以上の整数)を有するものを挙げることができる。パーフルオロアルキル基(−C2n+1)におけるnは、1〜9であることが好ましく、具体的には、−CF,−C,−C等を挙げることができる。
【0070】
具体的には、少なくともその一部がフッ素化された酸無水物としては、例えば、上記化学式(1)〜(3)で表されるものを挙げることができる。
【0071】
また、少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類としては、一般的に、上記化学式(4)で表され、具体的に、例えば、上記化学式(5)〜(15)で表されるものを挙げることができる。
【0072】
上述のように、本発明に用いられる少なくともその一部がフッ素化された酸無水物及び少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類としては、完全フッ素化されたものだけではなく、一部がフッ素化されることなく(フッ素基(−F)及び/又はパーフルオロアルキル基(−C2n+1:nは1以上の整数)で置換されることなく)、水素基(−H)のままであるものをも用いることができる。
【0073】
表面層11(複数層からなる場合は少なくとも最外層)は、半導電性を有していてもよく、その表面抵抗率が、10Ω/□〜1012Ω/□であることが好ましく、定着ベルトとしては、10Ω/□〜10Ω/□であることが、転写ベルトとしては、10Ω/□〜1012Ω/□であることがさらに好ましい。なお、表面層11の表面抵抗率の測定は、円形電極(例えば、三菱油化社製、ハイレスターIPの「URプローブ」)を用い、JISK6911に従って測定される。
【0074】
本実施の形態の無端ベルトを転写ベルト(転写体、転写(接触帯電)フィルム)のような静電力を利用した帯電体として用いる場合には、無端ベルト10の表面層11中に導電性粒子を分散させることができ、後述するようなPI前駆体溶液やフッ素化PI前駆体溶液(フッ素化ポリイミドワニス)を用いて本実施の形態の無端ベルトを製造する場合には、PI前駆体溶液やフッ素化PI前駆体溶液に、これらの導電性粒子を添加することが好ましい。
【0075】
導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、カーボンブラックを造粒したカーボンビーズ、カーボンファイバー、グラファイト等の炭素系物質、銅、銀、アルミニウム等の金属又は合金、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、SnO−In複合酸化物等の導電性金属酸化物、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー等を挙げることができる。中でも、カーボンブラック粒子が少ない添加量で所定の導電性を得られることから好ましい。
【0076】
また、本実施の形態の無端ベルトを定着ベルト(定着体、定着フィルム)として用いる場合には、無端ベルト10の外周面に付着するトナー画像の剥離性を向上させるため、PI前駆体溶液やフッ素化PI前駆体溶液に、離型性を有する樹脂被膜材料の微粒子を添加することも有効である。
【0077】
このような離型性を有する樹脂被膜材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂が好ましい。また、静電オフセットの向上のためにカーボン粉末が分散含有されていてもよい。
【0078】
本実施の形態においては、表面層11の最内層の内周面(内表面)軸方向における表面粗さRaは、0.5μm〜3.0μmの範囲内にあることが好ましく、0.8μm〜2.5μmの範囲内にあることがさらに好ましく、かつ、内周面周方向における表面粗さRaは、0.01μm〜0.5μmの範囲内にあることが好ましく、0.01μm〜0.3μmの範囲内にあることがさらに好ましい
【0079】
また、本実施の形態においては、表面層11の最外層の外周面(外表面)における表面粗さRaは、最内層の内周面(内表面)における表面粗さRaより小さいことが、摺動音を抑制する点で好ましい。
【0080】
[第2の実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルト]
図2Aは、本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルト(表面層及び基材層の複層からなる場合)を示す斜視図である。図2Bは、図2Aに示す画像形成装置用の無端ベルトの縦断面図である。図2Cは、図2Aに示す画像形成装置用の無端ベルトの横断面図である。
【0081】
図2A〜2Cに示すように、第2の実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルト20は、第1の実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルト10が単層であった場合と比べて、表面層及び基材層の複層からなる点が異なるが、その他の点では基本的に第1の実施の形態の場合と同様である。具体的には、第2の実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルト20は、被記録部材(図示せず)上に画像を形成する画像形成装置(図示せず)において被記録部材上に未定着画像又は未転写画像を定着又は転写させる定着ベルト又は中間転写ベルトとして用いられる画像形成装置用の無端ベルト20であって、円筒状の基材層22を有し、この基材層22上に、定着又は転写時に被記録部材に接触する筒状の表面層21を有し(換言すれば基材層22は表面層21の裏面側に設けられる)、表面層21の少なくとも外表面は、主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂から構成されてなるものである。以下、第1の実施の形態の場合と異なる点について主に説明する。
【0082】
第2の実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルト20に用いられる基材層22は、離型性を必要とする表面層21と機能を分けることで、一定の強度を維持した上で材料の使用量を減らすことができるため、高価なフッ素化ポリイミド樹脂を用いた場合にコストの上昇を抑制するために用いられる。図2A〜2Cにおいては、上述のように、基材層22として、円筒状のものを用いた場合を示したが、例えば、角筒、楕円筒等の筒状又は円柱等の柱状であってもよい。また、表面層21の場合と同様に、基材層22自体が複数層であってもよい。基材層22の厚さは、10μm〜100μmが好ましく、20μm〜80μmがさらに好ましい。10μm未満であると、強度不足となることがあり、100μmを超えると、屈曲性が不十分になることがある。
【0083】
基材層22の少なくとも内表面(表面層21における外表面と同様の意味である)は、ポリイミド又はポリアミドから構成されてなるものであることが、接着性の点から好ましい。
【0084】
また、上述のように、本実施の形態の無端ベルトを転写ベルト(転写体、転写(接触帯電)フィルム)のような静電力を利用した帯電体として用いる場合には、無端ベルト20の表面層21及び基材層22中に導電性粒子を分散させることができ、後述するようなPI前駆体溶液やフッ素化PI前駆対溶液を用いて本実施の形態の無端ベルトを製造する場合には、PI前駆体溶液やフッ素化PI前駆体溶液に、これらの導電性粒子を添加することが好ましい。すなわち、上述の基材層22を構成するポリイミド又はポリアミドには、導電性粒子が分散されてなることが好ましい。
【0085】
導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、カーボンブラックを造粒したカーボンビーズ、カーボンファイバー、グラファイト等の炭素系物質、銅、銀、アルミニウム等の金属又は合金、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、SnO2−In2O3複合酸化物等の導電性金属酸化物、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー等を挙げることができる。中でも、カーボンブラック粒子が所定の導電性を少ない添加量で得られる点から好ましい。
【0086】
第2の実施の形態においては、基材層22の内表面軸方向における表面粗さRaは、0.5μm〜3.0μmの範囲内にあることが好ましく、0.8μm〜2.5μmの範囲内にあることがさらに好ましく、かつ、内表面周方向における表面粗さRaは、0.01μm〜0.5μmの範囲内にあることが好ましく、0.01μm〜0.3μmの範囲内にあることがさらに好ましい。
【0087】
また、本実施の形態においては、表面層21の外表面における表面粗さRaは、基材層22の内表面における表面粗さRaより小さいことが、摺動音を抑制する点から好ましい。
【0088】
[第3の実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルト]
図3Aは、本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルト(表面層、基材層及び弾性層の複層からなる場合)を示す斜視図である。図3Bは、図3Aに示す画像形成装置用の無端ベルトの縦断面図である。図3Cは、図3Aに示す画像形成装置用の無端ベルトの横断面図である。
【0089】
図3A〜3Cに示すように、第3の実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルト30は、第1の実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルト20が単層であった場合と比べて、表面層、基材層及び弾性層の複層からなる点が異なるが、その他の点では基本的に第1及び第2の実施の形態の場合と同様である。具体的には、第3の実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルト30は、被記録部材(図示せず)上に画像を形成する画像形成装置(図示せず)において被記録部材上に未定着画像又は未転写画像を定着又は転写させる定着ベルト又は中間転写ベルトとして用いられる画像形成装置用の無端ベルト30であって、円筒状の基材層32を有し、この基材層32上に、定着又は転写時に被記録部材に接触する筒状の表面層31を有し(換言すれば、基材層32は表面層31の裏面側に設けられる)、さらに、表面層31と基材層32との間に、中間層として弾性層33をさらに有し、表面層31の少なくとも外表面は、主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂から構成されてなるものである。以下、第1及び第2の実施の形態の場合と異なる点について主に説明する。
【0090】
第3の実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルト30に用いられる弾性層33は、厚紙等への定着性を向上させるために用いられる。図3A〜3Cにおいては、上述のように、弾性層33として、円筒状のものを用いた場合を示したが、例えば、角筒、楕円筒等の筒状又は円柱等の柱状であってもよい。また、表面層31の場合と同様に、弾性層33自体が複数層等であってもよい。
【0091】
弾性層33は、例えば、シリコーンゴムやフッ素ゴムが、耐熱性、コスト等の点から好ましい。
【0092】
[支持体]
図4は、図1Aに示す第1の実施の形態の画像形成装置用の無端ベルトを支持体で支持した状態を示す斜視図である。
【0093】
支持体50は、本実施の形態の画像形成装置用の無端ベルトを製造する場合や使用する場合等において、無端ベルトを支持するために用いられる。
【0094】
支持体50の形状としては、円柱状等の柱状又は円筒状等の筒状を挙げることができる。その断面は、一般的に上述のように円形状のものが好適に用いられるが、楕円状等のその他の断面形状を有するものであってもよい。支持体50の厚さとしては、特に制限はないが、例えば、0.3mm〜3mmが好ましく、0.3mm〜1mmがさらに好ましい。なお、本実施の形態において、「支持体50表面」とは、特に説明がない場合は、支持体50が筒状である場合に、支持体50の外表面を意味し、支持体50が、柱状である場合には、柱の軸方向と平行な面を意味する。
【0095】
支持体50の材質は、アルミニウム、銅、ステンレス等の金属が好ましい。この場合、支持体50表面の剥離性を向上させるため、支持体50表面をクロムやニッケルでメッキしたり、フッ素樹脂やシリコーン樹脂で支持体50表面を被覆したり、又は支持体50表面に離型剤を塗布してもよい。
【0096】
一方、後述する本実施の形態の画像形成装置用の無端ベルトを製造する場合、支持体50表面に塗膜を形成し、形成された塗膜を加熱するが、この場合に、塗膜中に残留する溶剤等が気化して発生するガスによって、PI樹脂皮膜に膨れや欠陥が発生する場合があった。このことから、加熱処理した際に、塗膜中に発生するガスを効果的に放出することができるようにするため、支持体50表面にブラスト加工を施すことにより、支持体50表面に、表面粗さRaが、0.8〜1.0μm程度の粗面を形成したり、支持体50表面の周方向に切削加工を施してもよい。
【0097】
支持体50表面の周方向に切削加工を施すことにより、上記したようなガス抜き性能を確保するととともに、この無端ベルトの、内表面周方向の表面粗さRaを、内表面軸方向の表面粗さRaよりも小さくすることができる。
【0098】
なお、「周方向に切削加工が施され」とは、切削加工により支持体50表面に形成される加工目の方向が、支持体50の周方向に対してほぼ平行に形成された状態のみを意味するのみならず、周方向に対してやや斜めに形成された状態も含むことを意味する。また、支持体50表面に形成される加工目は、周方向に対して、実質的に一定の角度を成すもののみであってもよく、複数の角度を成すものが混在していてもよい。
【0099】
ガス抜き性能を確保し、かつ製造される無端ベルトの内表面周方向の表面粗さRaが、無端ベルトの内表面軸方向よりも小さくなるようにするためには、支持体50表面の軸方向の表面粗さRaが、0.5μm〜2.5μmの範囲内にあり、支持体50表面の周方向の表面粗さRaが、支持体50表面の軸方向の表面粗さRaよりも小さくなるように、支持体50表面の周方向に切削加工が施されることが好ましい。
【0100】
支持体50表面の周方向の表面粗さRaは、支持体50表面の軸方向の表面粗さRaよりも小さければ特に限定されないが、0.5μm以下であることが、電子写真機器内において利用した場合には、無端ベルト回転時の負荷(トルク)を小さくする点から好ましい。なお、表面粗さRaとは、粗さの尺度の一つである算術平均粗さであり、公知の触針式表面粗さRa測定機(例えば、サーフコム1400A、東京精密社製等)を使用して測定することができる。
【0101】
[画像形成装置用の無端ベルトの製造方法]
本実施の形態の画像形成装置用の無端ベルトの製造方法は、少なくともその一部がフッ素化された酸無水物と少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類とから合成されるフッ素化ポリアミック酸(フッ素化ポリイミド前駆体溶液)を調製し、調製したフッ素化ポリアミック酸(フッ素化ポリイミド前駆体溶液)を基材に塗布することにより塗膜を形成し(以下、「フッ素化PI前駆体塗膜形成工程」と略称することがある)、及び形成された塗膜を加熱すること(以下、「フッ素化PI樹脂皮膜(表面層)形成工程」と略称することがある)を含む。なお、必要に応じて、上記工程のほかに、フッ素化PI前駆体塗膜の乾燥工程等の他の工程を含んでもよい。
【0102】
本実施の形態に係る画像形成装置用の無端ベルトの製造方法としては、大別して、第1の実施の形態の場合のように、無端ベルトがフッ素化ポリイミド樹脂の単層からなる表面層だけを有する場合(金属製の支持体50上に、主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂の単体の膜(表面層)を直接形成する場合)と、第2又は第3の実施の形態の場合のように、無端ベルトがフッ素化ポリイミドの単層からなる表面層及び基材層等を有する複数層からなる場合(既存のポリイミドから構成された無端ベルトに主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂コーティングして複数の層を持つ無端ベルトを形成する場合)とに分けて説明する。
【0103】
<無端ベルトがフッ素化ポリイミド樹脂の単層からなる表面層だけを有する場合>
(フッ素化PI前駆体塗膜形成工程)
フッ素化PI前駆体塗膜形成工程では、支持体50表面に塗膜を形成するためにフッ素化ポリイミド前駆体溶液を用いる。フッ素化ポリイミド前駆体としては、上述の化学式(1)〜(3)で表される、少なくともその一部がフッ素化された酸無水物と、上述の化学式(4)、具体的には上述の化学式(5)〜(15)で表される少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類が用いられる。なお、ジアミン類は、フッ素化率が高いほど好ましい。また、フッ素化PI前駆体を溶解させる溶剤としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等、公知の非プロトン系の極性溶剤を用いることができる。なお、フッ素化PI前駆体溶液の濃度、粘度等は、適宜選択することができ、また、フッ素化PI前駆体溶液には、必要に応じて、上述の導電性粒子等の他の材料や添加剤等を加えてもよい。
【0104】
支持体50表面への、フッ素化PI前駆体溶液の塗布方法としては、支持体50の形状にもよるが、支持体50をフッ素化PI前駆体溶液に浸漬して引き上げる浸漬塗布法、軸方向が水平方向にほぼ平行となるように設置し、周方向に回転している支持体50の表面に、支持体50のほぼ真上に設置したノズル等からフッ素化PI前駆体溶液を吐出しながら、支持体50又はノズルを軸方向に平行移動させるフローコート法、このフローコート法において、支持体50表面に形成された塗膜をブレードでメタリングするブレード塗布法等、公知の方法を利用することができる。なお、上記フローコート法やブレード塗布法では、支持体50表面に形成される塗膜は支持体50の軸方向にらせん状に形成されるため、継ぎ目ができるものの、フッ素化PI前駆体溶液に含まれる溶剤は常温での乾燥が遅いために継ぎ目は自然に平滑化される。
【0105】
(フッ素化PI前駆体乾燥工程)
フッ素化PI前駆体乾燥工程では、支持体50表面に形成された塗膜中に含まれる溶媒を加熱・乾燥することで除去することが好ましい。加熱温度は使用する溶剤の沸点以下が好ましく、例えば溶媒がN−メチルピロリドン(NMP、沸点202℃)の場合には、70〜201℃の範囲が好ましく、溶媒がジメチルアセトアミド(DMAC、沸点165℃)の場合には、60℃〜164℃の範囲が好ましい。さらに好ましくは、イミド化が始まる125℃以下の60℃〜125℃で一度加熱し、溶媒に溶けているフッ素化に悪影響を及ぼす水を除去した後、溶媒の沸点以下の温度で加熱する、2段階加熱で溶媒を除去するのが好ましい。2段階目の温度としては、例えば、溶媒がN−メチルピロリドン(NMP、沸点202℃)の場合には、125℃〜201℃の範囲が好ましく、溶媒がジメチルアセトアミド(DMAC、沸点165℃)の場合には、125℃〜164℃の範囲が好ましい。加熱時間は塗布した塗膜の濃度と膜厚とによって変わるが、各段階の加熱時間は10〜120分程度が好ましい。乾燥中に重力の影響により、支持体50表面に形成された塗膜が垂れる場合には、支持体50を、軸方向を水平にして、10〜60rpm程度で回転させながら加熱・乾燥させることも好ましい。
【0106】
(フッ素化PI樹脂皮膜(表面層)形成工程)
上記フッ素化PI前駆体乾燥工程を経て乾燥された塗膜の加熱によるフッ素化PI膜の形成は、溶媒の沸点以上で400℃程度までの温度範囲で、20〜120分間程度で実施することが好ましい。その際、上述の温度に達するまでに、段階的な上昇や、ゆっくりと一定速度で上昇させるのが好ましく、さらに好ましくは、2段階や3段階の温度で加熱・成膜する。なお、最終温度は高い方が強固な膜が形成されるため、340℃以上で加熱することが好ましい。次に、上記した加熱処理を経て支持体50表面に形成されたPI樹脂皮膜(表面層11)を、支持体50から剥離することにより無端ベルト10を得る。このようにして得られた無端ベルト10には、さらに必要に応じて、端部のスリット加工、パンチング穴あけ加工、テープ巻き付け加工等を施してもよい。
【0107】
<無端ベルトが表面層及び基材層の複数層からなる場合>
(PI前駆体塗膜形成工程)
PI前駆体塗膜形成工程では、支持体50表面に塗膜を形成するためにポリイミド前駆体溶液を用いる。このポリイミド前駆体溶液に含まれるPI前駆体としては、公知のものを用いることができる。また、PI前駆体を溶解させる溶媒としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等、公知の非プロトン系極性溶剤を用いることができる。なお、PI前駆体溶液の濃度、粘度等は、適宜選択することができ、また、PI前駆体溶液には、必要に応じて、導電性粒子等の他の材料や添加剤等を加えてもよい。
【0108】
支持体50表面への、PI前駆体溶液の塗布方法としては、支持体50の形状にもよるが、支持体50をPI前駆体溶液に浸漬して引き上げる浸漬塗布法、軸方向が水平方向にほぼ平行となるように設置し、周方向に回転している支持体50の表面に、支持体50のほぼ真上に設置されたノズル等からPI前駆体溶液を吐出しながら、支持体50又はノズルを軸方向に平行移動させるフローコート法、このフローコート法において、支持体50表面に形成された塗膜をブレードでメタリングするブレード塗布法等、公知の方法を利用することができる。なお、上記フローコート法やブレード塗布法では、支持体50表面に形成される塗膜は支持体50の軸方向にらせん状に形成されるため、継ぎ目ができるものの、PI前駆体溶液に含まれる溶剤は常温での乾燥が遅いために継ぎ目は自然に平滑化される。
【0109】
(PI前駆体乾燥工程)
PI前駆体乾燥工程では、上述のように支持体50表面に形成された塗膜中に含まれる溶媒を加熱・乾燥することで除去することが好ましい。加熱温度は使用する溶剤の沸点以下が好ましく、例えば、溶媒がN−メチルピロリドン(NMP、沸点202℃)の場合には、70〜201℃の範囲が好ましく、溶媒がジメチルアセトアミド(DMAC、沸点165℃)の場合には、60℃〜164℃の範囲が好ましい。より好ましくは、イミド化が始まる125℃以下の60℃〜125℃で一度加熱し、溶媒に溶けているフッ素化に悪影響を及ぼす水を除去した後、溶媒の沸点以下の温度で加熱する、2段階加熱で溶媒を除去するのが好ましい。2段階目の温度としては、例えば、溶媒がN−メチルピロリドン(NMP、沸点202℃)の場合には、125℃〜201℃の範囲が好ましく、溶媒がジメチルアセトアミド(DMAC、沸点165℃)の場合には、125℃〜164℃の範囲が好ましい。加熱時間は塗布した塗膜の濃度と膜厚によって変わるが、各段階の加熱時間は10〜120分程度が好ましい。乾燥中に重力の影響により、支持体50表面に形成された塗膜が垂れる場合には、支持体50を、軸方向を水平にして、10〜60rpm程度で回転させながら加熱・乾燥させることも好ましい。
【0110】
(PI樹脂皮膜(基材層)形成工程)
上記PI前駆体乾燥工程を経て乾燥された塗膜の加熱によるPI樹脂膜(基材層22)の形成は、溶媒の沸点以上で400℃程度までの温度範囲で、20〜120分間程度で実施することが好ましい。その際、上述の温度に達するまでに、段階的な上昇や、ゆっくりと一定速度で上昇させるのが好ましく、さらに好ましくは、2段階や3段階の温度で加熱・成膜する。なお、最終温度は高い方が強固な膜が形成されるため、340℃以上で加熱することが好ましい。
【0111】
(フッ素化PI前駆体塗膜形成工程)
次に、PI樹脂皮膜(基材層22)表面にフッ素化PI前駆体塗膜を形成する。フッ素化ポリイミド前駆体としては、上述の化学式(1)〜(3)で表される少なくともその一部がフッ素化された酸無水物と、上述の化学式(5)〜(15)で表される少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類が用いられる。なお、ジアミン類は、フッ素化率が高いほど好ましい。また、フッ素化PI前駆体を溶解させる溶剤としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等、公知の非プロトン系極性溶剤を用いることができる。なお、フッ素化PI前駆体溶液の濃度、粘度等は、適宜選択することができ、また、フッ素化PI前駆体溶液には、必要に応じて、導電性粒子等の他の材料や添加剤等を加えてもよい。
【0112】
PI膜(基材層22)表面への、フッ素化PI前駆体溶液の塗布方法としては、軸方向が水平方向にほぼ平行となるように設置し、周方向に回転している支持体50の表面に、支持体50のほぼ真上に設置されたノズル等からフッ素化PI前駆体溶液を吐出しながら、支持体50又は前記ノズルを軸方向に平行移動させるフローコート法、このフローコート法において、支持体50表面に形成された塗膜をブレードでメタリングするブレード塗布法等、公知の方法を利用することができる。
【0113】
(フッ素化PI前駆体乾燥工程)
フッ素化PI前駆体乾燥工程では、上述のようにPI膜表面に形成された塗膜中に含まれる溶媒を加熱・乾燥することで除去することが好ましい。加熱温度は使用する溶剤の沸点以下が好ましく、例えば、溶媒がN−メチルピロリドン(NMP、沸点202℃)の場合には、70〜201℃の範囲が好ましく、溶媒がジメチルアセトアミド(DMAC、沸点165℃)の場合には、60℃〜164℃の範囲が好ましい。さらに好ましくは、イミド化が始まる125℃以下の60℃〜125℃で一度加熱し、溶媒に溶けているフッ素化に悪影響を及ぼす水を除去した後、溶媒の沸点以下の温度で加熱する、2段階加熱で溶媒を除去するのが好ましい。2段階目の温度としては、例えば、溶媒がN−メチルピロリドン(NMP、沸点202℃)の場合には、125℃〜201℃の範囲が好ましく、溶媒がジメチルアセトアミド(DMAC、沸点165℃)の場合には、125℃〜164℃の範囲が好ましい。加熱時間は塗布した塗膜の濃度と膜厚によって変わるが、各段階の加熱時間は10〜120分程度が好ましい。乾燥中に重力の影響により、支持体50表面に形成された塗膜が垂れる場合には、支持体50を、軸方向を水平にして、10〜60rpm程度で回転させながら加熱・乾燥させることも好ましい。
【0114】
(フッ素化PI樹脂皮膜(表面層)形成工程)
上述のフッ素化PI前駆体乾燥工程を経て乾燥された塗膜の加熱によるフッ素化PI膜(表面層21)の形成は、溶媒の沸点以上で400℃程度までの温度範囲で、20〜120分間程度で実施することが好ましい。その際、上述の温度に達するまでに、段階的な上昇や、ゆっくりと一定速度で上昇させるのが好ましく、さらに好ましくは、2段階や3段階の温度で加熱・成膜する。なお、最終温度は高い方が強固な膜が形成されるため、340℃以上で加熱することが好ましい。次に、上述の加熱処理を経て支持体50表面に形成されたPI樹脂皮膜(基材層22)及びフッ素化PI膜(表面層21)を、支持体50から剥離することにより無端ベルト20を得る。このようにして得られた無端ベルト20には、さらに必要に応じて、端部のスリット加工、パンチング穴あけ加工、テープ巻き付け加工等を施してもよい。
【0115】
<無端ベルトが表面層、基材層及び弾性層の複数層からなる場合>
後述する「弾性層33の形成工程」が加わること以外は、基本的に、「無端ベルトが表面層及び基材層の複数層からなる場合」と同様である。すなわち、「無端ベルトが表面層及び基材層の複数層からなる場合」における「PI樹脂皮膜(基材層)形成工程」と「フッ素化PI前駆体塗膜形成工程」との間に以下の「弾性層の形成工程」が実施される。
【0116】
(弾性層の形成工程)
PI樹脂皮膜(基材層)の表面に、接着性を持たせるための接着層を塗布した後、フッ素ゴム溶液を塗布・風乾した後、230℃、4時間、加硫を行い、合計180μmのフッ素ゴム層を積層する。
【0117】
[画像形成装置]
次に、本実施の形態の無端ベルトを用いた画像形成装置について説明する。本実施の形態の画像形成装置は、本実施の形態の無端ベルトを利用することが可能な公知の画像形成装置であればいかなる画像形成装置であってもよい。具体的には、一例として、以下のような構成を有する画像定着装置について、以下説明する。すなわち、本実施の形態の画像形成装置(画像定着装置)は、1つ以上の駆動部材と、1つ以上の駆動部材により従動回転可能な無端ベルトと、押圧部材とを少なくとも備え、1つ以上の駆動部材のいずれか1つの駆動部材表面と、無端ベルト外周面とが、無端ベルト内周面に接して配置され、無端ベルト外周面を駆動部材表面へと押圧する押圧部材により圧接部(ニップ部)を形成し、未定着トナー像をその表面に保持する記録シートを加熱しながらニップ部を通過させることにより、未定着トナー像を記録シート表面に定着させる画像定着装置において、無端ベルトとして本実施の形態の無端ベルトを用いた構成を有している。
【0118】
本実施の形態の画像定着装置は、本実施の形態の無端ベルトを用いているため、駆動部材の負荷トルクが低く抑えられ、高速回転に対する耐久性が向上するとともに、騒音が減少される。なお、本発明の画像定着装置は、上述のような構成・機能の他にも必要に応じて他の構成・機能を有していてもよい。例えば、無端ベルトの内周面に潤滑剤を塗布して用いてもよい。潤滑剤としては、公知の液体状の潤滑剤(例えば、シリコーンオイル等)を用いることができる。また、潤滑剤は、無端ベルト内周面と接して設けられたフェルト等を介して連続的に供給することができる。
【0119】
また、本実施の形態の画像定着装置は、押圧部材により、ニップ部の無端ベルト軸方向の圧力分布が調整できることが好ましい。例えば、潤滑剤を用いる場合には、圧力分布を調整することにより、潤滑剤を無端ベルトの一端に寄せたり、中央部に集めたり等、内周面に塗布された潤滑剤の存在状態を任意に制御することができる。このため、例えば、無端ベルトの一端に余分な潤滑剤を集めて回収したり、無端ベルトの中央部に潤滑剤を移動させるようにしたりすることができ、無端ベルト端部からの潤滑剤の漏れによる装置内の汚染を防ぐことができる。
【0120】
なお、このような圧力分布の調整は、潤滑剤を用いるとともに、さらに用いる無端ベルトの内周面に上述したような筋状凹凸粗さが付与されている場合に特に有用である。この場合、筋状凹凸粗さの筋の方向も考慮してニップ部の圧力分布を調整することにより、内周面に塗布された潤滑剤の存在状態の制御がより容易となる。
【実施例】
【0121】
以下に、本発明の画像形成装置用の無端ベルト及びその製造方法を、実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって、いかなる制限を受けるものではない。
【0122】
ここで、実施例1〜7は、単層で構成された無端ベルトの場合、実施例8〜10は、2層で構成された無端ベルトの場合、実施例11〜13は、2層で構成されるとともに導電性制御された無端ベルトの場合、比較例1〜2は、フッ素化ポリイミド樹脂として主鎖にエーテル基を持たない樹脂を用いた場合をそれぞれ示す。
【0123】
(実施例1)
支持体50表面へのフッ素化PI前駆体を含む溶液の塗布は、フローコート装置を用いて以下のように実施した。フッ素化PI前駆体溶液としては、上述の化学式(2)で表される酸無水物(10FEDA:1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物)と上述の化学式(10)で表される芳香族ジアミン(4FMPD:テトラフルオロ−1,3フェニレンジアミン)からなる完全フッ素化ポリアミック酸のN−メチルピロリドン溶液を利用した。また、支持体50としては、外径30mm、長さ500mmのアルミ製円筒を用い、この表面を、周方向に切削加工することにより、支持体50表面の表面粗さRaが、軸方向で、2.0μm、周方向で、0.3μmとしたものを用意した。さらに支持体50表面にはシリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学社製)を塗布して、300℃で1時間、焼き付け処理した。次いで支持体50表面に、フローコート装置を用いて、前述の完全フッ素化ポリアミック酸のN−メチルピロリドン溶液を塗布した。次に、窒素置換した加熱炉(イナートオーブン)を使って加熱成膜を行った。加熱は、120℃で30分加熱した後、200℃で30分、250℃で30分、300℃で30分加熱し、最後に380℃で30分加熱するという方法で、支持体50表面にフッ素化PI樹脂皮膜を形成した。室温に冷えてからフッ素化PI樹脂皮膜を剥離、ベルト膜厚が50μmと均一であり、欠陥のない完全フッ素化ポリイミドの単層からなる無端ベルトを得た。また、支持体50表面には予め離型剤が塗布されているため、剥離に際して、無端ベルトの内周面が支持体50と接着することはなかった。
【0124】
(実施例2)
フッ素化PI前駆体が、上述の化学式(2)で表される酸無水物(10FEDA:1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物)と上述の化学式(5)で表される芳香族ジアミン(8FODA:2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル)とからなること以外は、実施例1と全く同じようにして欠陥のない完全フッ素化ポリイミドの単層からなる無端ベルトを得た。
【0125】
(実施例3)
フッ素化PI前駆体が、上述の化学式(2)で表される酸無水物(10FEDA:1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物)と上述の化学式(6)で表される芳香族ジアミン(6FMDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジアニリン)とからなること以外は、実施例1と全く同じようにして欠陥のない部分フッ素化ポリイミドの単層からなる無端ベルトを得た。
【0126】
(実施例4)
フッ素化PI前駆体が、上述の化学式(2)で表される酸無水物(10FEDA:1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物)と上述の化学式(9)で表される芳香族ジアミン(13FPD:1,4−ジアミノ−2−トリデカフルオロ−n−ヘキシルベンゼン)とからなること以外は、実施例1と全く同じようにして欠陥のない部分フッ素化ポリイミドの単層からなる無端ベルトを得た。
【0127】
(実施例5)
フッ素化PI前駆体が、上述の化学式(1)で表される酸無水物(P6FDA:3,6−ビス(トリフルオロメチル)−1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボキシリック二無水物)と上述の化学式(5)で表される芳香族ジアミン(8FODA:2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル)とからなること以外は、実施例1と全く同じようにして欠陥のない完全フッ素化ポリイミドの単層からなる無端ベルトを得た。
【0128】
(実施例6)
フッ素化PI前駆体が、上述の化学式(2)で表される酸無水物(10FEDA:1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物)と上述の化学式(15)で表される芳香族ジアミン(6FBAPP:2,2−ビス(p−(p−アミノフェノキシ)フェニル−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン)とからなること以外は、実施例1と全く同じようにして欠陥のない部分フッ素化ポリイミドの単層からなる無端ベルトを得た。
【0129】
(実施例7)
フッ素化PI前駆体が、上述の化学式(3)で表される酸無水物(6FDA:2,2−ビス(3,4−アンヒドロジカルボキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン)と上述の化学式(15)で表される芳香族ジアミン(6FBAPP:2,2−ビス(p−(p−アミノフェノキシ)フェニル−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン)とからなること以外は、実施例1と全く同じようにして欠陥のない部分フッ素化ポリイミドの単層からなる無端ベルトを得た。
【0130】
(実施例8)
支持体50表面へのPI前駆体を含む溶液をフローコート装置を用いて行った後、加熱成膜し通常のPI無端ベルトを形成した後、表面に更にフローコート装置を用いてフッ素化ポリイミドを塗布し加熱することで、2層で構成した無端ベルトを以下のようにして得た。PI前駆体溶液としては、PI前駆体のN−メチルピロリドン溶液(商品名:Uワニス、宇部興産社製、固形分濃度:18%、粘度:約5Pa・s)を利用した。また、支持体50としては、外径30mm、長さ500mmのアルミ製円筒を用い、この表面を、周方向に切削加工することにより、支持体50表面の表面粗さRaが、軸方向で、2.0μm、周方向で、0.3μmとしたものを用意した。さらに支持体50表面にはシリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学社製)を塗布して、300℃で1時間、焼き付け処理した。次いで支持体50表面に、フローコート装置を用いて、前述のPI前駆体のN−メチルピロリドン溶液を塗布した。次に、窒素置換した加熱炉(イナートオーブン)を使って加熱成膜を行った。加熱は、120℃で30分加熱した後、200℃で30分、250℃で30分、300℃で30分加熱し、最後に380℃で30分加熱するという方法で、支持体50表面にフッ素化PI樹脂皮膜を形成した。室温に冷えてからPI樹脂皮膜を剥離、ベルト膜厚が50μmと均一であり、欠陥のないポリイミドの単層からなる無端ベルトを得た。次に、このポリイミドの単層からなる表面に、同じフローコート装置を用いてフッ素化ポリイミド膜を形成した。フッ素化PI前駆体溶液としては、上述の化学式(2)で表される酸無水物(10FEDA:1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物)と上述の化学式(10)で表される芳香族ジアミン(4FMPD:テトラフルオロ−1,3フェニレンジアミン)からなる光導波路用の完全フッ素化ポリアミック酸のN−メチルピロリドン溶液を利用した。次に、窒素置換した加熱炉(イナートオーブン)を使って加熱成膜を行った。加熱は、120℃で30分加熱した後、200℃で30分、250℃で30分、300℃で30分加熱し、最後に380℃で30分加熱するという方法で、支持体50表面にフッ素化PI樹脂皮膜を形成した。室温に冷えてからPI樹脂とフッ素化PI樹脂皮膜の2層からなる樹脂を支持体50から剥離し、ベルト層膜厚が70μmの欠陥のない完全フッ素化ポリイミドで被覆された2層からなる無端ベルトを得た。各層のPI間の接着性は強固で剥がれることはなく、支持体50表面には予め離型剤が塗布されているため、支持体50との無端ベルトの剥離は容易であった。
【0131】
(実施例9)
フッ素化PI前駆体溶液として、上述の化学式(2)で表される酸無水物(10FEDA:1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物)と上述の化学式(15)で表される芳香族ジアミン(6FBAPP:2,2−ビス(p−(p−アミノフェノキシ)フェニル−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン)からなるフッ素化ポリアミック酸のN−メチルピロリドン溶液を利用したこと以外は、実施例8と全く同じようにして、欠陥のない部分フッ素化ポリイミドで被覆された2層からなる無端ベルトを得た。
【0132】
(実施例10)
フッ素化PI前駆体溶液として、上述の化学式(3)で表される酸無水物(6FDA:2,2−ビス(3,4−アンヒドロジカルボキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン)と上述の化学式(15)で表される芳香族ジアミン(6FBAPP:2,2−ビス(p−(p−アミノフェノキシ)フェニル−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン)からなるフッ素化ポリアミック酸のN−メチルピロリドン溶液を利用したこと以外は、実施例8と全く同じようにして、欠陥のない部分フッ素化ポリイミドで被覆された2層からなる無端ベルトを得た。
【0133】
(実施例11)
実施例6で用いたPI前駆体溶液の代わりに、予めカーボン(ケッチェンブラックEC600JD:ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製)を10質量%分散させたものを用いたこと以外は、実地例6と同じようにして、内表面が半導電性で外表面が撥水性の2層からなる無端ベルトを得た。
【0134】
(実施例12)
実施例6で用いたフッ素化PI前駆体溶液の代わりに、予めカーボン(ケッチェンブラックEC600JD:ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製)を10質量%分散させたものを用いたこと以外は、実地例6と同じようにして、内表面が絶縁性で外表面は半導電性と撥水性を併せ持つ2層からなる無端ベルトを得た。
【0135】
(実施例13)
実施例6で用いたフッ素化PI前駆体溶液の代わりに、予めカーボン(ケッチェンブラックEC600JD:ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製)を10質量%と分散させたものと、N−メチルピロリドンに分散させたフッ素樹脂分散溶液(KD1000AS、フッ素樹脂固形分濃度40質量%:喜多村社製)の混合液を用いたこと以外は、実地例6と同じようにして、内表面が絶縁性で外表面は半導電性と撥水性を併せ持つ2層からなる無端ベルトを得た。
【0136】
(比較例1)
半導電性フッ素化PI前駆体が、上述の化学式(3)で表される酸無水物(6FDA:2,2−ビス(3,4−アンヒドロジカルボキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン)と上述の化学式(5)で表される芳香族ジアミン(TFDB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)とからなる部分フッ素化ポリアミック酸のN−メチルピロリドン溶液(固形分濃度18質量%)にカーボンブラック(ケッチェンブラックEC600JD:ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製)を3質量%分散させたものを用いたこと以外は、実施例1と全く同じようにして欠陥のない半導電性含フッ素化ポリイミドの単層からなる半導電性無端ベルトを得た。しかしながら、この部分フッ素化ポリイミド膜は、エーテル結合を持たないことから剛直で、柔軟性に欠けていた。
【0137】
(比較例2)
半導電性フッ素化PI前駆体が、下記化学式(16):
【0138】
【化31】

【0139】
で表される酸無水物(NTCDA:ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボキシリック二無水化物)と上述の化学式(4)で表される芳香族ジアミン(6FMDA:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)とからなる部分フッ素化ポリアミック酸のN−メチルピロリドン溶液(固形分濃度18質量%)にカーボンブラック(ケッチェンブラックEC600JD:ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製)を3質量%分散させたものを用いたこと以外は、実施例1と全く同じようにして欠陥のない半導電性含フッ素化ポリイミドの単層からなる半導電性無端ベルトを得た。しかしながら、この部分フッ素化ポリイミド膜は、エーテル結合を持たないことから剛直で、柔軟性に欠けていた。
【0140】
(評価試験)
実施例1〜13及び比較例1、2において得られた、各フッ素化ポリイミド樹脂を用いた無端ベルトを、それぞれ定着用の圧力ベルトとしてカラー複合機(商品名:DocuCentre C7600:富士ゼロックス社製)の定着装置に組み込み、20万枚連続通紙による耐久試験及び画質評価を行った。実施例1〜13の半導電性無端ベルトを組み込んだ定着装置では、20万枚連続通紙後でも良好な耐久性と画質が得られた。一方、比較例1、2の半導電性無端ベルトを組み込んだ定着装置では、20万枚連続通紙後でも良好な耐久性が得られたが、トナーの離型性が悪いため、無端ベルトに付着したトナーが記録媒体の表面へと付着し、初期から10枚目には画像に汚れが発生しており、長期間に渡り良好な画質を得ることができなかった。
【符号の説明】
【0141】
10 画像形成装置用の無端ベルト
11 表面層
20 画像形成装置用の無端ベルト
21 表面層
22 基材層
30 画像形成装置用の無端ベルト
31 表面層
32 基材層
33 弾性層
50 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層を有してなり、その表面層の少なくとも外表面が主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂から構成されてなる画像形成装置用の無端ベルト。
【請求項2】
前記主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂は、少なくともその一部がフッ素化された酸無水物と少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類とから合成されるフッ素化ポリアミック酸から調製された樹脂である請求項1に記載の画像形成装置用の無端ベルト。
【請求項3】
前記少なくともその一部がフッ素化された酸無水物及び前記少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類は、フッ素基(−F)及び/又はパーフルオロアルキル基(−C2n+1:nは1以上の整数)を有する請求項2に記載の画像形成装置用の無端ベルト。
【請求項4】
前記少なくともその一部がフッ素化された酸無水物は、下記化学式(1)〜(3):
【化1】

【化2】

【化3】

で表されるものであり、かつ前記少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類は、下記化学式(4):
【化4】

で表されるものである請求項3に記載の画像形成装置用の無端ベルト。
【請求項5】
前記少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類は、下記化学式(5)〜(15)で表されるもののいずれかである請求項4に記載の画像形成装置用の無端ベルト。
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【請求項6】
前記表面層の裏面側に積層された筒状の基材層をさらに有する請求項1〜5のいずれかに記載の画像形成装置用の無端ベルト。
【請求項7】
前記基材層の少なくとも内表面は、ポリイミド又はポリアミドから構成されてなる請求項1〜6いずれかに記載の画像形成装置用の無端ベルト。
【請求項8】
前記表面層と前記基材層との間に、中間層として弾性層をさらに有する請求項6又は7に記載の画像形成装置用の無端ベルト。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の画像形成装置用の無端ベルトを用いた画像形成装置。
【請求項10】
少なくともその一部がフッ素化された酸無水物と少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類とから合成されるフッ素化ポリアミック酸(フッ素化ポリイミド前駆体溶液)を調製し、調製したフッ素化ポリアミック酸(フッ素化ポリイミド前駆体溶液)を基材又は支持体に塗布することにより表面層となる塗膜を形成し、及び
形成された前記塗膜を加熱して、表面層を形成することを含む画像形成装置用の無端ベルトの製造方法。
【請求項11】
前記少なくともその一部がフッ素化された酸無水物は、下記化学式(1)〜(3):
【化16】

【化17】

【化18】

で表されるものであり、かつ前記少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類は、下記化学式(4):
【化19】

で表されるものである請求項10に記載の画像形成装置用の無端ベルトの製造方法。
【請求項12】
前記少なくともその一部がフッ素化されたジアミン類は、下記化学式(5)〜(15)で表されるもののいずれかである請求項11に記載の画像形成装置用の無端ベルトの製造方法。
【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】


【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−28205(P2011−28205A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253108(P2009−253108)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】