説明

画像形成装置,画像形成装置のレジスト補正方法

【課題】例えば連続印字の実行中のように装置内の温度が徐々に上昇する場合におけるレジスト補正処理の実行頻度をできるだけ低くしつつ,通常動作時においてレジスト補正処理を適時に実行することのできる画像形成装置及びその方法を提供すること。
【解決手段】測定温度が基準温度に比べて設定温度以上高くなったことを条件に(S2のYes側),レジスト補正処理が実行された場合,該レジスト補正処理の実行終了時における測定温度を基準温度として記憶する(S5)。その後は,その基準温度と測定温度との温度差が前記設定温度以上に達したことを条件に,レジスト補正処理が実行される(S1)。なお,測定温度が基準温度に比べて設定温度以上低くなったことを条件に(S2のNo側),レジスト補正処理が実行された場合には,該レジスト補正処理の実行開始時における測定温度を基準温度として記憶する(S21)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,並設された複数の像担持体各々に形成された色の異なるトナー像を順次重ね合わせて移動中の被転写体に転写することによりカラー画像を形成するタンデム方式の画像形成装置に関し,特に,前記像担持体各々から前記被転写体へのトナー像の転写位置のずれを補正するレジスト補正機能に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆるタンデム方式の画像形成装置は,並設された複数の感光体ドラム(像担持体)各々に異なる色(一般に,ブラック,マゼンタ,シアン,イエロー)のトナー像を形成し,そのトナー像を走行中の中間転写ベルト(被転写体)に順次重ね合わせて転写する。これにより,中間転写ベルトの表面にカラートナー像が形成される。そして,中間転写ベルトのカラートナー像が二次転写装置によって記録紙に転写されることにより,その記録紙上にカラー画像が形成される。
このように構成されたタンデム方式の画像形成装置において,複数の感光体ドラムから中間転写ベルトに順に重ね合わせて転写されるトナー像の転写位置が,予め想定した位置からずれると,中間転写ベルト上に形成されるカラートナー像にいわゆる色ずれが生じ,画質が悪化することになる。
【0003】
そこで,従来から,タンデム方式の画像形成装置は,中間転写ベルトへの各色のトナー像の転写位置のずれ量を検出し,そのずれを修正(補正)するレジスト補正処理を実行する機能を備えるものが多い(例えば,特許文献1参照)。
例えば,前記レジスト補正処理では,まず,転写位置の主走査及び副走査のずれを検出するための斜線や横線などのパッチパターンのトナー像(以下,「パッチ画像」という)を複数の感光体ドラムに形成して,そのパッチ画像各々を走行中の中間転写ベルト上に並べて転写させる。そして,その中間転写ベルト上に並べられたパッチ画像各々が所定位置を通過するタイミングを検出し,その検出結果に基づいてパッチ画像各々の間隔を検出する。その後,検出された間隔に基づいて感光体ドラム各々から中間転写ベルトへの転写位置のずれ量を検出し,そのずれ量に基づいて感光体ドラム各々に対する露光タイミングや中間転写ベルトの移動速度(回転速度)の補正などを行うことにより,その転写位置のずれを補正する。
【0004】
ところで,従来から,前記色ずれが画像形成装置内の温度変化によって生じることが知られており,前回のレジスト補正処理を実行したときから予め設定された設定温度の変化があった場合に,再びレジスト補正処理を実行させることがある(例えば,特許文献2参照)。この手法を採用する場合には,レジスト補正処理を実行したときの装置内の温度を記憶しておく必要がある。
例えば,前記レジスト補正処理の実行開始時に,装置内に設けられた温度センサによる測定温度を記憶しておき,その温度を基準温度として,予め設定された設定温度の変化があった場合にレジスト補正処理を実行することが考えられる。以下,図5を用いて,具体的に説明する。ここでは,温度センサによって測定される装置内の温度をT3,前記基準温度の初期値をT30,前記設定温度をTd3とする。
【0005】
図5に示すように,例えば多数枚の印字処理を連続して実行している場合(以下「連続印字」という)には,装置内の温度T3が徐々に上昇することになる。
そして,装置内の温度T3が前記基準温度T30から前記設定温度Td3以上高い温度T31に達すると(図5の時間t31),印字処理が中断されてレジスト補正処理が実行される。このとき,前記レジスト補正処理の実行開始時の温度T31が新たな基準温度として記憶される。
その後,前記レジスト補正処理が終了して前記連続印字が再開され,次に,新たに基準温度となった前記温度T31から前記設定温度Td3以上高い温度T32に達すると(図5の時間t32),前記同様に印字処理が中断されてレジスト補正処理が実行され,その実行開始時の温度T32が新たな基準温度として記憶される。
このように,前記設定温度Td3の温度変化があるごとに前記レジスト補正処理を実行させることで,適時色ずれを補正することができ,画質の低下を防止することができる。
【特許文献1】特許第3079076号公報
【特許文献2】特開2001−162912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,前記レジスト補正処理の実行中においても印字処理と同様に装置内の温度は上昇することになるため,前記レジスト補正処理の実行終了時には,該レジスト補正処理の実行開始時に比べて,装置内の温度が上昇していることになる。そのため,前記した手法のように前記レジスト補正処理の実行開始時の温度を基準温度として用いている場合には,連続印字の実行中にレジスト補正処理が実行される間隔が短くなるため,該連続印字に要する時間が長くなるという問題が生じる。
一方,連続印字の実行中におけるレジスト補正処理の実行頻度を下げるために,前記設定温度Td3を十分に大きく設定しておくことが考えられるが,この場合には,連続印字が実行されていない通常動作時などに,レジスト補正処理が実行されにくいという問題が生じる。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,例えば連続印字の実行中のように装置内の温度が徐々に上昇する場合におけるレジスト補正処理の実行頻度をできるだけ低くしつつ,通常動作時においてレジスト補正処理を適時に実行することのできる画像形成装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は,並設された複数の像担持体各々に色の異なるトナー像を形成し,該トナー像各々を順次重ね合わせて被転写体に転写する複数の画像形成手段と,複数の前記画像形成手段による複数の前記被転写体への各色のトナー像の転写位置のずれを補正するレジスト補正処理を実行するレジスト補正手段と,当該画像形成装置内の温度を測定する温度測定手段と,前記レジスト補正手段による前記レジスト補正処理の実行時の前記温度測定手段による測定温度を基準温度として記憶する基準温度記憶手段と,前記基準温度記憶手段によって記憶された前記基準温度と前記温度測定手段による測定温度との温度差が,予め設定された設定温度以上に達したことを条件に,前記レジスト補正手段に前記レジスト補正処理を実行させる補正実行制御手段とを備えてなる画像形成装置に適用されるものである。そして,本発明に係る画像形成装置は,前記基準温度記憶手段が,前記温度測定手段による測定温度が前記基準温度に比べて前記設定温度以上高くなったことを条件に前記レジスト補正手段による前記レジスト補正処理が実行された場合,該レジスト補正処理の実行終了時における前記温度測定手段による測定温度を前記基準温度として記憶するものであることを特徴とする画像形成装置として構成される。
このように構成された前記画像形成装置では,例えば連続印字の実行中のように前記画像形成装置内の温度が徐々に上昇する場合は,前記レジスト補正処理の実行終了時の測定温度が前記基準温度となるため,次に前記レジスト補正手段により前記レジスト補正処理が実行されるまでの間隔が長くなって,該レジスト補正処理の実行頻度が低くなる。これにより,例えば連続印字の処理に要する時間を短縮することができる。
しかも,前記レジスト補正処理の実行開始時の測定温度を前記基準温度とする場合のように前記設定温度を大きく設定する必要がないため,連続印字が実行されていない通常動作時において前記レジスト補正処理を適時に実行することが可能である。
【0008】
一方,前記基準温度記憶手段が,前記温度測定手段による測定温度が前記基準温度に比べて前記設定温度以上高くなったことを条件に前記レジスト補正手段による前記レジスト補正処理が実行された場合,該レジスト補正処理の実行終了時における前記温度測定手段による測定温度を前記基準温度として記憶し,前記温度測定手段による測定温度が前記基準温度に比べて前記設定温度以上低くなったことを条件に前記レジスト補正手段による前記補正が実行された場合には,該レジスト補正処理の実行開始時における前記温度測定手段による測定温度を前記基準温度として記憶するものであることが考えられる。これにより,例えば印字処理が実行されていない待機時など,前記画像形成装置内の温度が徐々に低下している場合における前記レジスト補正処理の実行頻度を低下させることが可能である。
ここに,当該画像形成装置では,複数の前記像担持体に対して光を照射することにより該像担持体上に静電潜像を形成する露光装置内の温度変化により,該露光装置内に設けられた各種の光学機器の特性が変化することで,各色のトナー像の転写位置にずれが生じる可能性が高い。そのため,前記温度測定手段は,前記露光装置内或いは前記露光装置近傍の温度を測定するものであることが望ましい。
【0009】
また,本発明は,並設された複数の像担持体各々に色の異なるトナー像を形成し,該トナー像各々を順次重ね合わせて被転写体に転写する複数の画像形成手段と,複数の前記画像形成手段による複数の前記被転写体への各色のトナー像の転写位置のずれを補正するレジスト補正処理を実行するレジスト補正手段と,当該画像形成装置内の温度を測定する温度測定手段とを備えてなる画像形成装置において,前記レジスト補正手段による前記レジスト補正処理の実行開始時の前記温度測定手段による測定温度を基準温度として記憶し,その記憶された前記基準温度と前記温度測定手段による測定温度との温度差が,予め設定された設定温度以上に達したことを条件に,前記レジスト補正手段に前記レジスト補正処理を実行させる画像形成装置のレジスト補正方法として捉えてもよい。そして,本発明に係る画像形成装置のレジスト補正方法は,前記温度測定手段による測定温度が前記基準温度に比べて前記設定温度以上高くなったことを条件に前記レジスト補正手段によって前記レジスト補正処理が実行された場合,該レジスト補正処理の実行終了時における前記温度測定手段による測定温度を前記基準温度として記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば,例えば連続印字の実行中のように前記画像形成装置内の温度が徐々に上昇する場合は,前記レジスト補正処理の実行終了時の測定温度が前記基準温度となるため,次に前記レジスト補正手段により前記レジスト補正処理が実行されるまでの間隔が長くなって,該レジスト補正処理の実行頻度が低くなる。これにより,例えば連続印字の処理に要する時間を短縮することができる。しかも,前記レジスト補正処理の実行開始時の測定温度を前記基準温度とする場合のように前記設定温度を大きく設定する必要がないため,連続印字が実行されていない通常動作時において前記レジスト補正処理を適時に実行することが可能である。
他方,例えば印字処理が実行されていない待機時などのように前記画像形成装置内の温度が徐々に低下している場合には,前記レジスト補正処理の実行開始時の測定温度を前記基準温度とすることにより,前記レジスト補正処理の実行頻度を低下させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。なお,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施形態に係る画像形成装置Xの主要部の構成を模式的に表す図,図2は前記画像形成装置Xにおいて実行される補正実行制御処理の手順の一例を説明するためのフローチャート,図3及び図4は前記補正実行制御処理の実行結果を説明するための図である。
まず,図1を参照しつつ,本発明の実施形態に係る画像形成装置Xの構成について説明する。ここに,本発明の実施形態に係る画像形成装置Xは,例えばプリンタ装置や複写機,ファクシミリ装置,これらの複合機などである。
【0012】
図1に示すように,本発明の実施形態に係る画像形成装置Xは,いわゆるタンデム方式のカラー画像形成装置であり,並設された複数の画像形成部1〜4(画像形成手段の一例)と,レーザスキャナユニット(LSU,露光装置の一例)30と,中間転写ベルト5(被転写体の一例)と,レジスト検出センサ6と,ベルト支持ローラ7と,制御装置8とを備えている。なお,図1には示していないが,前記画像形成装置Xは,前記中間転写ベルト5に転写されたトナー像を記録紙に転写する二次転写装置,及び記録紙に転写されたトナー像を加熱定着させる定着装置,前記記録紙を収容する給紙カセット,各種の操作表示を行う操作表示部など,一般的な電子写真方式の画像形成装置が備えるその他の構成部品も備えている。
前記制御装置8は,MPUやRAM,ROMなどの制御機器を有しており,該MPUがROMに記憶された所定の制御プログラムを実行することにより,当該画像形成装置Xの各構成部品を統括的に制御するものである。
【0013】
前記画像形成部1〜4各々は,トナー像を担持する感光体ドラム11〜14,前記感光体ドラム11〜14の表面を帯電させる帯電装置21〜24,前記LSU30によって前記感光体ドラム11〜14上に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像装置41〜44,前記感光体ドラム11〜14上のトナー像を前記中間転写ベルト5に転写する一次転写装置51〜54,前記感光体ドラム11〜14上の残存トナー像を除去するクリーニング装置(不図示)等を備えている。
図1に示す例では,前記中間転写ベルト5の走行方向の下流側から順に,ブラック用の画像形成部1,イエロー用の画像形成部2,シアン用の画像形成部3及びマゼンタ用の画像形成部4が一列に配置されている。前記画像形成部1〜4は,並設された前記感光体ドラム11〜14各々に色の異なるトナー像を形成し,該トナー像各々を順次重ね合わせて前記中間転写ベルト5に転写する。
【0014】
前記LSU30は,レーザ光源やポリゴンミラー,fθレンズ,偏向ミラーなどの各種の光学系機器を有するものであって,前記感光体ドラム11〜14各々にレーザ光を照射することにより該感光体ドラム11〜14各々に静電潜像を形成する。
ここで,前記LSU30内の温度が変化すると,前記各種の光学系機器の特性が変化し,前記感光体ドラム11〜14に形成する静電潜像にずれが生じるおそれがある。そのため,前記LSU30には,該LSU30内の温度を測定するサーミスタなどの温度センサ31(温度測定手段の一例)が設けられている。前記温度センサ31による測定温度は,随時或いは所定時間ごとに前記制御装置8に入力される。
そして,前記制御装置8は,前記温度センサ31による測定温度に基づいて,前記画像形成部1〜4により前記中間転写ベルト5に形成されるカラートナー像の色ずれを補正するレジスト補正処理を実行する。具体的に,前記制御装置8は,後述の補正実行制御処理(図2のフローチャート参照)を実行することにより,前記温度センサ31による測定温度T1と,前に前記レジスト補正処理が実行されたときの温度(以下,「基準温度」という)との温度差が,予め設定された設定温度Td以上に達したと判断した場合に前記レジスト補正処理を実行する。ここに,前記設定温度Tdは,色ずれが発生するおそれのある前記LSU30内の温度変化量として予め設定されたものであって,例えば3〜5℃程度に設定される。
【0015】
具体的に,前記レジスト補正処理では,前記制御装置8は,前記画像形成部1〜4及び前記LSU30を制御することにより,前記中間転写ベルト5上に所定間隔でパッチ画像を形成させ,そのパッチ画像各々を前記中間転写ベルト5上の所定位置に設けられたレジスト検出センサ6によって検出する。なお,前記レジスト検出センサ6は,前記中間転写ベルト5上のトナー像の濃度を検出する濃度センサなどと兼用される。
そして,前記レジスト検出センサ6による前記パッチ画像各々の検出タイミング(時間差など)に基づいて,前記LSU30による前記感光体ドラム11〜14各々への光の照射タイミングや,前記中間転写ベルト5の走行速度などを補正することにより,前記画像形成部1〜4による前記中間転写ベルト5への各色のトナー像の転写位置のずれ(色ずれ)を補正する。
ここに,かかるレジスト補正処理を実行するときの制御装置8がレジスト補正手段の一例である。なお,ここで説明した前記レジスト補正処理は,単なる一例に過ぎず,従来周知の他の手法でレジスト補正を行ってもよい。
【0016】
以下,図2のフローチャートに従って,前記制御装置8によって実行される補正実行制御処理の手順の一例について説明する。また,図2中のS1,S2,…は処理手順(ステップ)の番号を表している。
ここに,当該補正実行制御処理を実行するときの前記制御装置8が補正実行制御手段に相当する。なお,本発明は,当該補正実行制御処理における各種の処理を実行する画像形成装置のレジスト補正方法として捉えてもよい。
(ステップS1)
まず,ステップS1では,前記制御装置8は,前記温度センサ31による測定温度T1と,前に前記レジスト補正処理が実行されたときの基準温度との温度差が,前記設定温度Td以上であるか否かを判断する。
ここで,前記基準温度は,前記制御装置8に設けられた不揮発性の記憶メモリに記憶されるものであって,前述したように,前に前記レジスト補正処理が実行されたときに前記温度センサ31によって測定された温度を示す。なお,前記基準温度の初期値は,例えば当該画像形成装置Xの製造時における色ずれ調整時などに設定される。その後,当該画像形成装置Xでは,前記基準温度が,前記制御装置8によって実行される後述のステップS5又はS21において更新・記憶される。
前記ステップS1において,前記測定温度T1と前記基準温度との温度差が前記設定温度Td以上であると判断された場合には(S1のYes側),処理はステップS2に移行する。なお,前記温度差が前記設定温度Td未満である間は(S1のNo側),処理は前記ステップS1で待機される。
【0017】
(ステップS2)
次に,ステップS2では,前記制御装置8は,前記測定温度T1が前記基準温度よりも高いか否かを判断することにより,前記測定温度T1が前記基準温度に比べて前記設定温度Td以上高くなったか,或いは,前記測定温度T1が前記基準温度に比べて前記設定温度Td以上低くなったかを判断する。
そして,前記ステップS2において,前記測定温度T1>前記基準温度であると判断された場合には(S2のYes側),前記測定温度T1が前記基準温度に比べて前記設定温度Td以上高くなったものと判断し,処理はステップS3に移行する。一方,前記測定温度T1>前記基準温度でないと判断された場合には(S2のNo側),前記測定温度T1が前記基準温度に比べて前記設定温度Td以上低くなったものと判断し,処理はステップS21に移行する。
【0018】
(ステップS3〜S5)
ステップS3では,前記制御装置8によって,前記レジスト補正処理が実行される。このとき,前記画像形成装置Xにおいて印字処理が実行されている場合には,その印字処理は中断される。
その後,前記制御装置8は,前記レジスト補正処理が終了したと判断すると(S4のYes側),続くステップS5において,前記温度センサ31による現在の測定温度T1を前記基準温度として前記記憶メモリ(不図示)に記憶する。これにより,前記基準温度は更新される。ここに,かかる記憶処理を実行するときの前記制御装置8が基準温度記憶手段に相当する。その後,当該補正実行制御処理は終了され,中断している印字処理があればその印字処理が再開される。
即ち,当該補正実行制御処理では,前記温度センサ31による測定温度T1が前記基準温度に比べて前記設定温度Td以上高くなったことを条件に前記レジスト補正処理が実行された場合には,該レジスト補正処理の実行終了時における前記温度センサ31による測定温度T1を前記基準温度として記憶している。
【0019】
(ステップS21〜S23)
一方,ステップS21では,前記制御装置8は,前記温度センサ31による現在の測定温度T1を前記基準温度として前記記憶メモリ(不図示)に記憶する。ここに,かかる記憶処理を実行するときの前記制御装置8が基準温度記憶手段に相当する。そして,前記制御装置8は,前記レジスト補正処理の実行を開始する(S22)。
即ち,当該補正実行制御処理では,前記温度センサ31による測定温度T1が前記基準温度に比べて前記設定温度Td以上低くなったことを条件に前記レジスト補正処理が実行された場合には,該レジスト補正処理の実行開始時における前記温度センサ31による測定温度T1を前記基準温度として記憶している。
【0020】
ここで,図3及び図4を用いて,前記補正実行制御処理(図2のフローチャート参照)の実行結果の一例について説明する。ここに,図3は前記画像形成装置Xにおいて連続印字が実行されている場合,図4は前記画像形成装置Xにおいて印字処理が実行されていない場合を説明するための図である。
まず,前記画像形成装置Xにおいて連続印字が実行されている場合には,図3に示すように,前記LSU30内で前記温度センサ31によって測定される測定温度T1が徐々に上昇することになる。ここでは,前記基準温度の初期値がT10であるとする。
そして,前記温度センサ31による測定温度T1が,前記基準温度T10に比べて前記設定温度Td以上高くなると(図3における時間t11),前記連続印字が中断されて,前記レジスト補正処理が実行される。
次に,前記レジスト補正処理が終了すると(図3における時間t12),前述したように前記レジスト補正処理の実行終了時の前記温度センサ31による測定温度T1である温度T11が前記基準温度として記憶される。
その後,さらに連続印字が継続され,再び前記温度センサ31による測定温度T1が前記基準温度T11に比べて前記設定温度Td以上高くなると(図3における時間t13),前記連続印字が中断されて,前記レジスト補正処理が実行される。この場合,前述同様に,前記レジスト補正処理の実行終了時の前記温度センサ31による測定温度T1である温度T12が前記基準温度として記憶される(図3における時間t14)。
このように,前記LSU30内の温度が徐々に上昇している場合には,前記レジスト補正の実行終了時の前記温度センサ31による測定温度T1が基準温度となるため,前記レジスト補正の実行開始時の前記温度センサ31による測定温度T1を基準温度とする場合に比べて,前記レジスト補正処理の実行頻度を低くすることができる。従って,例えば連続印字に要する時間を短縮することができる。
【0021】
一方,前記画像形成装置Xにおいて印字処理が実行されていない場合には,図4に示すように,前記LSU30内で前記温度センサ31によって測定される測定温度T1が徐々に低下することになる。ここでは,前記基準温度の初期値がT20であるとする。
そして,前記温度センサ31による測定温度T1が,前記基準温度T20に比べて前記設定温度Td以上低くなると(図4における時間t21),前記レジスト補正処理が実行されるが,この場合には,前記レジスト補正処理の実行開始時の前記温度センサ31による測定温度T1である温度T21が前記基準温度として記憶される。
次に,前記レジスト補正処理が終了すると(図4における時間t22),前記温度センサ31による測定温度T1は,前記レジスト補正処理の実行によって上昇した温度から,徐々に低下することになる。
その後,前記測定温度T1が前記基準温度T21に比べて前記設定温度Td以上低くなると(図4における時間t23),再度前記レジスト補正処理が実行される。このとき,前述同様に前記レジスト補正処理の実行開始時の前記温度センサ31による測定温度T1である温度T22が前記基準温度として記憶される。
このように,前記LSU30内の温度が徐々に低下している場合には,前記レジスト補正の実行開始時の前記温度センサ31による測定温度T1が基準温度となるため,前記レジスト補正の実行終了時の前記温度センサ31による測定温度T1を基準温度とする場合に比べて,前記レジスト補正の実行頻度を低くすることができる。
【0022】
なお,本実施の形態では,色ずれの発生に大きく影響する可能性のある前記LSU30内の温度変化を前記温度センサ31で測定し,その測定温度T1に基づいて,前記補正実行制御処理を行う場合を例に挙げて説明したが,前記画像形成装置X内の他の部位に設けられた温度センサによって測定される該画像形成装置X内の温度に基づいて該補正実行制御処理を行うことも他の実施例として考えられる。
また,前記補正実行制御処理は,前記画像形成装置Xにおいて,前記制御装置8が自動的に前記レジスト補正処理を実行する場合を説明したものであるが,該画像形成装置Xでは,これに加えユーザによる要求操作に応じて前記レジスト補正処理を実行する場合もある。この場合には,例えば,前記レジスト補正処理の実行開始時の測定温度と実行終了時の測定温度との平均値を前記基準温度として記憶しておくことが考えられる。これにより,その後に温度が上昇する場合と低下する場合とにおける次のレジスト補正処理の実行条件の均衡を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は,プリンタ装置や複写機,ファクシミリ装置,これらの複合機などの画像形成装置への利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の主要部の構成を模式的に表す図。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置において実行される補正実行制御処理の手順の一例を説明するためのフローチャート。
【図3】本発明の実施形態に係る画像形成装置において実行される補正実行制御処理の実行結果を説明するための図。
【図4】本発明の実施形態に係る画像形成装置において実行される補正実行制御処理の実行結果を説明するための図。
【図5】レジスト補正処理の実行タイミングの一例を説明するための図。
【符号の説明】
【0025】
1〜4:画像形成部(画像形成手段の一例)
5:中間転写ベルト(被転写体の一例)
6:レジスト検出センサ
7:ベルト支持ローラ
8:制御装置
11〜14:感光体ドラム(像担持体の一例)
21〜24:帯電装置
30:レーザスキャナユニット(露光装置の一例)
31:温度センサ(温度測定手段の一例)
41〜44:現像装置
51〜54:一次転写装置
S1,S2,…:処理手順(ステップ)番号
X:画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された複数の像担持体各々に色の異なるトナー像を形成し,該トナー像各々を順次重ね合わせて被転写体に転写する複数の画像形成手段と,複数の前記画像形成手段による複数の前記被転写体への各色のトナー像の転写位置のずれを補正するレジスト補正処理を実行するレジスト補正手段と,当該画像形成装置内の温度を測定する温度測定手段と,前記レジスト補正手段による前記レジスト補正処理の実行時の前記温度測定手段による測定温度を基準温度として記憶する基準温度記憶手段と,前記基準温度記憶手段によって記憶された前記基準温度と前記温度測定手段による測定温度との温度差が,予め設定された設定温度以上に達したことを条件に,前記レジスト補正手段に前記レジスト補正処理を実行させる補正実行制御手段と,
を備えてなる画像形成装置であって,
前記基準温度記憶手段が,前記温度測定手段による測定温度が前記基準温度に比べて前記設定温度以上高くなったことを条件に前記レジスト補正手段による前記レジスト補正処理が実行された場合,該レジスト補正処理の実行終了時における前記温度測定手段による測定温度を前記基準温度として記憶するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記基準温度記憶手段が,
前記温度測定手段による測定温度が前記基準温度に比べて前記設定温度以上高くなったことを条件に前記レジスト補正手段による前記レジスト補正処理が実行された場合,該レジスト補正処理の実行終了時における前記温度測定手段による測定温度を前記基準温度として記憶し,
前記温度測定手段による測定温度が前記基準温度に比べて前記設定温度以上低くなったことを条件に前記レジスト補正手段による前記補正が実行された場合,該レジスト補正処理の実行開始時における前記温度測定手段による測定温度を前記基準温度として記憶するものである請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記温度測定手段が,複数の前記像担持体に対して光を照射することにより該像担持体上に静電潜像を形成する露光装置内の温度或いは該露光装置近傍の温度を測定するものである請求項1又は2のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項4】
並設された複数の像担持体各々に色の異なるトナー像を形成し,該トナー像各々を順次重ね合わせて被転写体に転写する複数の画像形成手段と,複数の前記画像形成手段による複数の前記被転写体への各色のトナー像の転写位置のずれを補正するレジスト補正処理を実行するレジスト補正手段と,当該画像形成装置内の温度を測定する温度測定手段とを備えてなる画像形成装置において,前記レジスト補正手段による前記レジスト補正処理の実行開始時の前記温度測定手段による測定温度を基準温度として記憶し,その記憶された前記基準温度と前記温度測定手段による測定温度との温度差が,予め設定された設定温度以上に達したことを条件に,前記レジスト補正手段に前記レジスト補正処理を実行させる画像形成装置のレジスト補正方法であって,
前記温度測定手段による測定温度が前記基準温度に比べて前記設定温度以上高くなったことを条件に前記レジスト補正手段によって前記レジスト補正処理が実行された場合,該レジスト補正処理の実行終了時における前記温度測定手段による測定温度を前記基準温度として記憶するものであることを特徴とする画像形成装置のレジスト補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−115911(P2009−115911A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286358(P2007−286358)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】