説明

画像形成装置

【課題】シートの搬送がより良好になされ、より良好な画質の画像が形成される画像形成装置を提供する
【解決手段】画像形成装置10は、重力方向下向きの搬送面22でシートを搬送するベルト20と、ベルト20からシートが分離する位置の裏側に配置され、ベルト20を張架する下流側張架ロール26と、搬送面22で搬送中のシートに現像剤像を形成する現像剤像形成部30と、現像剤像形成部30で形成された現像剤像をシートに定着する定着装置48とを有している。下流側張架ロール26はベルト20に従動する従動ロールとして用いられ、定着装置48は、ニップ部Nが搬送面22よりも重力方向下方に位置するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置あって、重力方向下向きの成分を有する搬送面でシートを搬送するベルトと、このベルトで搬送中のシートに現像剤像を形成する現像剤像形成部と、この現像剤形成部で形成された現像剤像をシートに定着する定着装置とを有する技術が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特許第3398064号
【特許文献2】特開2004−61724
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、ベルトから分離したシートの定着装置への搬送が良好になされなかったり、シートの搬送が良好になされないために形成される画像の画質が低下したり、現像剤形成部が定着装置から発せられる熱の影響を受けて形成される画像の画質が低下したりすることがあるとの問題点があった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決しようとしてなされたものであり、シートの搬送がより良好になされ、より良好な画質の画像が形成される画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴とするところは、重力方向下向きの成分を有する搬送面でシートを搬送するベルトと、このベルトのシートが分離する位置の裏側に設けられ、前記ベルトを張架する張架ロールと、前記搬送面で搬送中のシートに現像剤像を形成する現像剤像形成部と、この現像剤像形成部で形成された現像剤像をニップ部をもってシートに定着する定着装置と、を有し前記張架ロールは、前記ベルトに従動する従動ロールとして用いられている画像形成装置にある。
【0007】
好適には、前記定着装置は、少なくともニップ部が前記搬送面よりも重力方向下側に設けられている。
【0008】
また、好適には、前記張架ロールは、外径が30mm以上である。
【0009】
また、好適には、前記現像剤像形成部は、前記現像剤像形成部を構成する部材の少なくとも一部が、画像形成装置本体内に着脱可能なカートリッジとして一体化されている。
【0010】
また、好適には、前記ベルトは、シートの搬送時に配置される第1の位置と、搬送不良が生じたシートの除去時に配置される第2の位置との間で移動可能であって、前記カートリッジは、前記ベルトが第2の位置に移動した際に形成される開放部を介して前記画像形成装置本体内に着脱される。
【0011】
また、好適には、前記ベルトを支持し、前記画像形成装置本体に重力方向下方から支持され、前記画像形成装置本体に開閉可能に装着されている開閉部材をさらに有する。
【0012】
また、好適には、原稿を読み取る原稿読取装置をさらに有し、前記ベルトは、少なくとも前記搬送面が略水平となるように配置され、前記原稿読取装置は、原稿読取面が略水平となるように、前記ベルトよりも上方に配置される。
【0013】
また、好適には、画像形成装置本体の上部に設けられ、シートが排出される排出部と、この排出部に排出されるシートが一時的に載置される載置部と、前記定着装置で現像剤像の定着がなされたシートの一部分を前記載置部へと搬送した後に逆転を開始し、シートを前記排出部へと搬送する逆転ロールとを有する。
【0014】
また、好適には、前記定着装置で現像剤像の定着がなされたシートを反転させながら、シートを前記ベルトの上流側に再搬送する再搬送路を有する。
【0015】
また、好適には、前記ベルトと前記定着装置との間の位置に設けられ、シートの搬送を重力方向上方からガイドするガイド部材を有する。
【0016】
また、好適には、前記現像剤像形成部を複数有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シートの搬送がより良好になされ、より良好な画質の画像が形成される画像形成装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1乃至3には、本発明の実施形態に係る画像形成装置10が示されている。画像形成装置10は、画像形成装置本体12を有し、画像形成装置本体12の上部には、例えば普通紙等のシートが排出され、第1の排出部として用いられる上部排出部14が形成されている。また、画像形成装置本体12の図1における左側の側面には、シートが排出され、第2の排出部として用いられる排出トレー15が設けられている。画像形成装置本体12の上部は開閉カバー16として構成され、この開閉カバー16は図1に示される閉じられた位置と、図3に示される開かれた位置との間で開閉可能となっている。また、開閉カバー16の上部には、例えばフラットヘットスキャナ等からなる原稿読取装置90が設けられている。
【0019】
原稿読取装置90は、画像形成装置本体12とは別の筺体として構成されていて、支持手段として用いられる例えば2本の支持脚92、92により重力方向下側から支持されている。支持脚92、92には、ぞれぞれ図示を省略するキャスタが設けられていて、このキャスタを用いて原稿読取装置90を簡単に移動させることができるように構成されている。原稿読取装置90は、例えばプラテンガラス等からなる原稿読取部94を有し、原稿読取部94の上側の面が原稿読取面96として用いられる。原稿読取装置90は、原稿読取面96が略水平となり、後述するベルト20よりも重力方向上方に位置するように設けられている。
【0020】
画像形成装置本体12内には、シートを搬送するベルト20が配設されている。ベルト20は、重力方向下向きの搬送面22でシートを吸着して搬送する。ベルト20は、搬送面22と、搬送面22の上側に位置する上側部分23とが略水平となるように配置されている。このため、ベルト20が上下方向に広がった状態で張架されることが回避され、画像形成装置10を上下方向に小型化することできる。よって、ベルト20よりも上方に位置する原稿読取装置90が原稿読み取り操作が行いにくい高い位置に配置されることがなくなり、原稿読取装置90を操作が行いやすい低い位置に配置することが可能となる。この実施形態では、搬送面22は重力方向下向きの面であるが、搬送面22は重力方向下向きの成分を有すればよく、縦方向の成分を有する斜めの面であっても良い。
【0021】
ベルト20は、シート搬送方向上流側に設けられた上流側張架ロール24と、シート搬送方向下流に設けられた下流側張架ロール26とによって張架される。ベルト20における上流側張架ロール24の下端部及び下流側張架ロール26の下端部の間に、先述の搬送面22が形成される。上流側張架ロール24は、供給されたシートがベルト20に吸着される位置P1の裏側に位置し、下流側張架ロール26は、ベルト20からシートが分離する位置P3の裏側に位置している。この実施形態では、ベルト20は、上流側張架ロール24及び下流側張架ロール26の2個の張架ロールにより張架されているが、3個以上の張架ロールでベルト20を張架しても良い。
【0022】
上流側張架ロール24及び下流側張架ロール26は、開閉部材として用いられる開閉カバー16に装着されている。開閉カバー16は、上流側張架ロール24と下流側張架ロール26とを用いてベルト20を回動可能に支持していて、例えばヒンジ等の支持部材17を用いて画像形成装置本体12に開閉可能に支持されている。開閉カバー16は、閉じられた状態において画像形成装置本体12に重力方向下側から支持される。このため、開閉カバーを縦方向に取り付けた場合と比較して支持部材17に加わる開閉カバー16の荷重が小さくなるので、開閉カバー16の開閉のための構成を簡略化することが可能となる。
【0023】
開閉カバー16の開閉と共に、ベルト20は図1に示されるシートの搬送に用いられる第1の位置と、図3に示される第2の位置との間で移動する。そして、ベルト20が第2の位置に移動することにより形成される開口部を介して、例えば、搬送面22でシートの搬送不良が生じた際に、そのシートの除去することができる。開閉カバー16を開閉するに先立ち、原稿読取装置90は、開閉カバー16が開閉する軌跡と干渉しない位置へと操作者により移動がなされる。図3においては、開閉カバー16が開閉する軌跡と干渉しない位置へと移動した原稿読取装置90の図示を省略している。
【0024】
この実施例では、ベルト20は、開閉カバー16に取り付けられた上流側張架ロール24及び下流側張架ロール26に張架され、開閉カバー16の開閉に伴って第1の位置と第2の位置との間で移動するように構成されているが、開閉カバー16と独立して第1の位置と第2の位置との間で移動するようにベルト20を構成しても良い。
【0025】
画像形成装置本体12内のベルト20の下方には、ベルト20で搬送中のシートに現像剤像を形成する現像剤像形成部30a、30b、30c、及び30dの4個の現像剤像形成部が設けられている。このように、画像形成装置10は複数の現像剤像形成部を有している。現像剤像形成部30aはシートにイエローの現像剤を形成し、現像剤像形成部30bはシートにマゼンダの現像剤を形成し、現像剤像形成部30cはシートにシアンの現像剤を形成し、現像剤像形成部30dはシートにブラックの現像剤を形成する。そして、これらの現像剤像がベルト20により搬送されているシートの上で重ねあわされて、シートにフルカラーの現像剤像が形成される。
【0026】
現像剤像形成部30a、30b、30c、30dは、それぞれ像担持体として用いられる感光体32を有する。そして、図2に示すように、この感光体32の周辺に、感光体32を帯電させる帯電装置34と、帯電装置34により帯電された感光体32の表面にレーザー光を照射して潜像を形成する潜像形成装置36と、潜像形成装置36により形成された潜像を現像剤により現像する現像装置38と、現像装置38により感光体32の表面に形成された現像剤像をシートへと転写する転写装置40と、転写装置40により現像剤像の転写がなされた後の感光体32の表面に残留する現像剤を除去するクリーニング装置42とが配置されている。この実施形態では、現像剤像形成部30a、30b、30c、30dのそれぞれが有する潜像形成装置36は一体として構成されているが、潜像形成装置36を現像剤像形成部30a、30b、30c、30dごとに別体として構成しても良い。
【0027】
現像剤像形成部30a、30b、30c、30dをそれぞれ構成する部材のうち、感光体32、帯電装置34、現像装置38、及びクリーニング装置42は、画像形成装置本体12内に着脱可能なカートリッジ44として一体化されている。これらのカートリッジ44は、図3に示されるように、ベルト20が第2の位置に移動した際に形成される開放部を介して、画像形成装置本体12内に着脱することができる。このように、この実施形態では、ベルト20を第2の位置に移動させることで、搬送不良が生じたシートの除去と、各カートリッジ44の画像形成装置本体12内への着脱との両方が可能になるため画像形成装置10の保守が行いやすい。
【0028】
この実施形態では、感光体32、帯電装置34、現像装置38、及びクリーニング装置42がカートリッジ44として一体化されているが、現像剤像形成部30a、30b、30c、30dをそれぞれ構成する部材の少なくとも一部分がカートリッジ44として一体化されれば良い。例えば、感光体32、帯電装置34、現像装置38、及びクリーニング装置42に、潜像形成装置36を加えてカートリッジ44として一体化しても良い。この場合、潜像形成装置36は、例えばLEDアレイ等を用いて、現像剤像形成部30a、30b、30c、30dごとに別体として構成される。
【0029】
画像形成装置本体12内には、現像剤像形成部30a、30b、30c、30dで形成された現像剤像をシートに定着する定着装置48が設けられている。定着装置48は加熱ロール48aと、加熱ロール48aに圧接される加圧ロール48bとを有し、加熱ロール48aと加圧ロール48bとが接触する部分に形成されるニップ部Nで現像剤像を加熱し、加熱された現像剤像をシートへと加圧することで、シートに現像剤像を定着する。
【0030】
画像形成装置本体12内の底部近傍には、シートを収納するシート供給カセット54を備えた第1のシート供給部56が配置されている。シート供給カセット54には、シート供給カセット54に収納されたシートをシート搬送方向に向けて供給する供給ロール58と、シートを捌いてシートの重送を防止する裁きロール60とが設けられている。
【0031】
画像形成装置本体12の図1における右側には、第2のシート供給部62が設けられている。第2のシート供給部62は、画像形成装置本体12から突出する状態で画像形成装置本体12に設けられ、シートが手差しされる手差しトレー64と、手差しトレー64からシートを供給する供給ロール66とを有する。
【0032】
第1のシート供給部56又は第2のシート供給部62の一方が選択され、選択されたシート供給部からレジストロール68へとシートが供給される。レジストロール68に供給されたシートは、レジストロール68が所定のタイミングで回転を開始することにより先述のベルト20に供給される。
【0033】
第1のシート供給部56の上側には、定着装置48により現像剤像の定着がなされたシートが、上部排出部14に排出される前に一時的に載置される載置部70が設けられている。そして、載置部70と定着装置48とのシート搬送方向における間の位置には、逆転ロール72が設けられている。逆転ロール72は、定着装置48で現像剤像の定着がなされたシートの一部分を載置部70へと搬送した後に逆回転を開始し、シートを上部排出部14へと搬送する。また、逆転ロール72は、正回転をすることで、定着装置48で現像剤像の定着がなされたシートを排出トレー15へ搬送する。
【0034】
逆転ロール72のシート搬送方向における定着装置48の逆側には、切替え手段として用いられる切替え部材74が設けられている。切替え部材74は、例えばソレノイド等により駆動して、定着装置48で現像剤像の定着がなされ、逆転ロール72を通過したシートを排出トレー15に排出するか、載置部70に一時的に載置するかの切替えを行う。
【0035】
ベルト20の上側には、再搬送路76が設けられている。再搬送路76は、定着装置48で表側の面に現像剤像の定着がなされたシートを、反転させながらベルト20のシート搬送方向上流側に再搬送する。再搬送路76により搬送されたシートは、レジストロール68により所定のタイミングでベルト20へと供給され、ベルト20で搬送がなされている間に裏側の面に現像剤像の形成がなされる。
【0036】
逆転ロール72のシート搬送方向における再搬送路76側には、ガイド部材78が設けられている。ガイド手段は、例えばソレノイド等により駆動し、載置部70に載置されたシートが定着装置48方向に誤搬送されることを防止し、シートが上部排出部14へ搬送されるようにガイドする。
【0037】
逆転ロール72と再搬送路76とのシート搬送方向における間の位置には、切替え手段として用いられる切替え部材80が設けられている。切替え部材80は、例えばソレノイド等により駆動して、載置部70から搬送されてきたシートを再搬送路76へと供給するのか、上部排出部14に排出するのかを切り替える。切替え部材80と上部排出部14との間には排出ロール82が設けられていて、排出ロール82によりシートが上部排出部14に排出される。
【0038】
以上のように構成された画像形成装置10において、画像形成動作が開始されると、第1のシート供給部56又は第2のシート供給部62のいずれかからシートの供給がなされ、このシートがレジストロール68により所定のタイミングでベルト20に供給される。ベルト20に供給されたシートには、ベルト20で搬送がなされている間に現像剤像形成部30a、30b、30c、30dにより現像剤像が形成され、この現像剤像が定着装置48によりシートに定着される。そして、現像剤像の定着がなれたシートは、逆転ロール72に搬送される。
【0039】
逆転ロール72に搬送されたシートは、切替え部材74により排出トレー15か載置部70のいずれかにガイドされる。すなわち、排出トレー15に排出するモードが選択されている場合は、シートは切替え部材74により排出トレー15へとガイドされ、排出トレー15へと排出される。一方、上部排出部14に排出するモードが選択されている場合は、シートは切替え部材74により載置部70へとガイドされ、シートの一部が載置部70に載置された状態となった時点で逆転ロール72が逆転を開始することで排出ロール82方向に搬送され、排出ロール82により上部排出部14に排出される。
【0040】
シート両面に画像形成を行うモードが選択されている場合、表面に現像剤像の定着がなされたシートは、切替え部材74により載置部70へとガイドされ、逆転ロール72が逆転をすることで、切替え部材80方向へと搬送される。そして、切替え部材80により再搬送路76へとガイドされ、再搬送路76を通過してレジストロール68へと供給される。そして、レジストロール68により所定のタイミングでベルト20に供給され、ベルト20で搬送中に裏側の面に現像剤像の形成がなされる。この現像剤像は、定着装置48によりシートの裏側に定着され、現像剤像が裏側に定着されたシートは、排出トレー15か上部排出部14かのいずれかに排出される。
【0041】
以上のように構成された画像形成装置10においては、ベルト20から分離されたシートを、このシートを重力方向下側からガイドするガイド板等のガイド手段を用いて定着装置48へとガイドとしようとすると、シートに形成された現像剤に乱れが生じてしまう。現像剤像は、未だにシートに定着されていない状態にあり、この現像剤像がガイド手段に接触してシート表面で移動してしまうためである。しかも、現像剤像は重力方向下向きの面に形成されているため落下しやすく、重力方向上向きの面に形成された未定着の現像剤像よりも乱れが生じやすい。よって、良好な画像形成を行うためには、シートを重力方向下側に設けられたガイド手段でガイドすることができず、ベルト20と定着装置48との間でシート搬送不良が発生しやすい。そこで、この実施形態では、装置のレイアウトを工夫することによりベルト20と定着装置48との間におけるシートの搬送不良を生じにくくしている。
【0042】
図4(a)には下流側張架ロール26が示されている。この実施形態においては、下流側張架ロール26として外径Dが35mmのロールが用いられている。図4(a)に示されるように、ベルト20により搬送されてきたシートは、多くの場合、曲率分離によって下流側張架ロール26の最下点P2近傍でベルト20から分離する。そして、ベルト20から分離したシートの先端部は、重力を受けて最下点P2よりも下方向へと移動する。このようにベルトから分離したシートの先端部が下方に移動することが多いにもかかわらず、従来の技術においては、定着装置48のニップ部Nがベルトの搬送面22と略同じ高さになるように定着装置が配置されていた。このため、ベルトから分離したシートの先端部が定着装置のニップ部Nに良好にくわえ込まれずにシート搬送不良が生じることがあった。
【0043】
そこで、この実施形態においては、少なくともニップ部Nがベルト20の搬送面22の延長面よりも重力方向下側に位置するように定着装置48を配置して、ベルト20から分離されたシートの先端部が良好に定着装置48のニップ部Nにくわえ込まれるようにして、ベルト20と定着装置48との間でのシート搬送不良を生じにくくしている。
【0044】
以上のように、定着装置48のニップ部Nがベルト20の搬送面22よりも重力方向下側に位置するように定着装置48を配置することにより、シート搬送不良が生じにくくなる。しかしながら、このように定着装置48を配置することによって、定着装置48と現像剤形成部30dの現像装置38とが近接した状態で配置されることになる。このため、現像装置38に収納された現像剤が加熱ロール48aの発する熱の影響を受けることを原因として、形成される画像の品質が低下する虞があるとの新たな問題点が発生してしまうことがある。加熱ロール48aから発せられる熱は、上方により伝わりやすいため、現像装置38が加熱ロール48aから発せられる熱の悪影響を受けにくくするためには、定着装置48を画像形成装置本体12内において少しでも重力方向上方に配置することが望ましい。そこで、この実施形態では、良好なシート搬送を可能としつつ、定着装置48をできる限り重力方向上方に配置することができるように工夫をしている。
【0045】
下流側張架ロール26からシートが分離する位置は、厳密には下流側張架ロール26の最下点P2ではなく、図4(a)に示されるように最下点P2よりもシート搬送方向下流であって、最下点P2よりも重力方向上方に位置する下流側張架ロール26表面上の位置P3であることが多い。すなわち、シートの先端部は、下流側張架ロール26の最下点P2での曲率分離がなされずに、ベルト20に吸着された状態のまま位置P3まで搬送された後に、位置P3でベルト20から分離する。
【0046】
図4(b)には比較例に係る下流側張架ロール26が示されている。実施形態に係る画像形成装置10においては、シートは位置P3までシートに吸着された状態のまま搬送されて、位置P3でベルト20から分離した。これに対して、比較例においては、シートは曲率分離によって下流側張架ロール26の最下点近傍でベルト20から分離している。
【0047】
このような、シートの挙動の差異は、ベルト20のシートが分離する位置の裏側に設けられた下流側張架ロール26の外径の違いにより生じる。すなわち、図4(b)に示されるように下流側張架ロール26の外径Dが十分に小さい場合は、シート先端部は下流側張架ロール26の最下点P2近傍でベルト20から分離するのに対して、下流側張架ロール26の外径Dが十分に大きい場合は、図4(a)に示されるように、シート先端部は最下点P2での曲率分離がなされずに、ベルト20に吸着された状態のまま搬送された後に、位置P3においてベルト20から分離する。
【0048】
発明者らは、複数種類のシートを複数種類の材料からなるベルト20を用いて、温度、湿度の異なる画像形成装置10内でシートを搬送する実験を行った。その結果、他の条件によらず、下流側張架ロール26の外径Dを30mm以上とすれば、シート先端部は概ね最下点P2を通過し、ベルト20に吸着された状態のまま搬送され、最下点P2よりも重力方向上方に位置する位置P3でベルト20から分離することを見出した。そこで、この実施形態における画像形成装置10では、下流側張架ロール26の外径を30mm以上である35mmとして、シート先端部が、最下点P2を通過し、ベルトに吸着されて搬送された後に位置P3でベルト20から分離されるようにしている。このため、最下点P2でシート先端部が分離される場合と比較して定着装置48を重力方向上方に配置することが可能となる。よって、現像装置38と定着装置48との距離を比較的に大きくすることができ、加熱ロール48aから発せられる熱の影響を現像剤が受けることを原因とする画像不良の発生を抑制することができる。
【0049】
このように、定着装置48のニップ部Nが搬送面22よりも重力方向下方に位置するように定着装置48を配置することと併せて、下流側張架ロール26の外径Dを、下流側張架ロール26の最下点P2よりも上方でシート先端部が分離するような値とすることで、ベルト20と定着装置48との間の位置におけるシート搬送不良をより発生しにくくしつつ、定着装置48から発せられる熱を原因とする画像不良の発生を抑制している。
【0050】
ベルト20と定着装置48と間には、例えばガイド板からなるガイド部材84が設けられている。ガイド部材84は、シートの搬送を重力方向上方からガイドする。このため、シートの重力方向下向きの面に形成された未定着の現像剤像Tに接触することがなく、現像剤像Tに乱れが生じない。ガイド部材84を設けることにより、シート先端部が図4(a)に示される位置P3で分離せずに、ベルト20に吸着された状態のまま、さらに搬送され、位置P3よりも重力方向上方でベルト20から分離する場合であっても、シートがガイド部材84にガイドされることで、シート先端部が定着装置48のニップ部Nに良好に導かれる。
【0051】
図5には、図4(a)と同様に下流側張架ロール26が示されている。この実施形態においては、下流側張架ロール26は従動ロールとして用いられ、ベルト20に従動して回転する。下流側張架ロール26と共にベルト20を張架する上流側張架ロール24は駆動ロールとして用いられ、上流側張架ロール24には、例えばモータ等の駆動源88が接続されていて、この駆動源88からの駆動を受けて回転してベルト20を回転駆動させる。
【0052】
下流側張架ロール26を従動ロールとして用い、上流側張架ロール24を駆動ロールとして用いた場合、ベルト20の下流側張架ロール26よりも上側に位置する上側部分23は、上流側張架ロール24によって引かれることで移動する。このため、上側部分23は、いわゆる張り側となり、上流側張架ロール24と下流側張架ロール26との間でシートは弛みなく張架される。一方、ベルト20の上流側張架ロール24よりも下側に位置する搬送面22側は、上流側張架ロール24によって図5中における左側に押し出されることで移動する。このため搬送面22側は、いわゆる緩み側となり、下流側張架ロール26と上流側張架ロール24との間に、ある程度の緩みをもって張架される状態となる。
【0053】
このように、シートが搬送される搬送面22側が緩み側となるようにベルト20を駆動することで、画像形成装置10が大型化することを回避しつつ、先述のように下流側張架ロール26の外径Dを比較的大きく定めることが可能となる。これに対して、本実施形態とは逆に、図5において2点鎖線で示すように駆動源88を下流側張架ロール26に接続して、下流側張架ロール26を駆動ロールとして用い、上流側張架ロール24を従動ロールとして用いる場合、良好な画像形成を行うために下流側張架ロール26の外径Dに制約が課せられる。下流側張架ロール26を駆動ロールとして用いる場合は、下流側張架ロール26の外周の長さと、各感光体32の間隔Lとを同じ長さにするか、少なくとも間隔Lと近い値にしたほうが良好な画像形成を行ない易い。その場合、下流側張架ロール26の外径Dと、互いに隣り合う感光体32がシートに現像剤像を転写する位置の間隔Lとの間に下式の関係が成り立つように下流側張架ロール26の外径Dを定め、感光体32を、それぞれ画像形成装置内でレイアウトすることとなる。
【0054】
L=π・D 若しくは L≒π・D
【0055】
上式の関係が成り立たない場合、例えば下流側張架ロール26の偏心を原因として下流側張架ロール26に周速の脈動が生じて、この周速の脈動を原因としてベルト20のシート搬送速度に周期的な変動が生じ、この速度変動の変動を原因とするシートに転写される現像剤の伸縮が各感光体32で一致しなくなって色ずれが生じてしまうためである。このため、色ずれの発生を抑制しつつシートの搬送を良好に行うために張架ロールの外径Dを大きくしようとすると、これに伴い各感光体32間の間隔Lを大きくしなければならず、画像形成装置10がシートの搬送方向に大型化してしまう。そこで、画像形成装置10では、先述のように下流側張架ロール26を従動ロールとして用いることで、下流側張架ロール26の外径Dを定める際の制約をなくし、下流側張架ロール26の外径Dを大きくしてシート搬送が良好になされるようにしつつ、各感光体32間の間隔Lが長くなることを回避して画像形成装置10を小型化することを可能としている。
【0056】
以上のように、画像形成装置10においては、定着装置48のニップ部Nがベルト20の搬送面22よりも重力方向下側に位置する状態となるように定着装置48が配置されている。このため、ベルト20から定着装置48のニップ部Nへシートは下向きに搬送される。よって、ニップ部Nを通過したシートを上部排出部14に直接排出しようとすると、下向きに搬送されていたシートを、シート搬送路内で大きく湾曲させて上向きに搬送しなければならず、シート搬送不良が生じやすい。そこで、画像形成装置10においては、先述のように、現像剤像の定着がなされたシートを一時的に載置部70に載置し、このシートを逆転ロール72の逆回転により上部排出部14へと搬送するようにして、シート搬送不良を生じにくくしている。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上述べたように、本発明は、例えば普通紙等のシートを搬送するベルトを有する複写機、ファクシミリ装置、プリンタ等の画像形成装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に用いられる画像形成装置に用いられるカートリッジを示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に用いられる開閉部材が開閉される状態と、本発明に用いられる画像形成装置本体内にカートリッジが着脱される状態を示す説明図である。
【図4】図4(a)は本発明の実施形態に用いられる張架ロールを示す第1の説明図であり、図4(b)は比較例に用いられる張架ロールを示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態に用いられる張架ロールを示す第2の説明図である。
【符号の説明】
【0059】
10 画像形成装置
12 画像形成装置本体
16 開閉カバー
17 支持部材
20 ベルト
22 搬送面
24 上流側張架ロール
26 下流側張架ロール
30a、30b、30c、30d 現像剤形成部
36 潜像形成装置
38 現像装置
48 定着装置
48a 加熱ロール
70 載置部
72 逆転ロール
76 再搬送路
82 排出ロール
84 ガイド部材
88 駆動源
90 原稿読取装置
96 原稿読取面
N ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重力方向下向きの成分を有する搬送面でシートを搬送するベルトと、
このベルトのシートが分離する位置の裏側に設けられ、前記ベルトを張架する張架ロールと、
前記搬送面で搬送中のシートに現像剤像を形成する現像剤像形成部と、
この現像剤像形成部で形成された現像剤像をニップ部をもってシートに定着する定着装置と、
を有し
前記張架ロールは、前記ベルトに従動する従動ロールとして用いられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記定着装置は、少なくともニップ部が前記搬送面よりも重力方向下側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記張架ロールは、外径が30mm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像剤像形成部は、前記現像剤像形成部を構成する部材の少なくとも一部が、画像形成装置本体内に着脱可能なカートリッジとして一体化されていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ベルトは、シートの搬送時に配置される第1の位置と、搬送不良が生じたシートの除去時に配置される第2の位置との間で移動可能であって、
前記カートリッジは、前記ベルトが第2の位置に移動した際に形成される開放部を介して前記画像形成装置本体内に着脱されることを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ベルトを支持し、前記画像形成装置本体に重力方向下方から支持され、前記画像形成装置本体に開閉可能に装着されている開閉部材をさらに有することを特徴とする1乃至5いずれか記載の画像形成装置。
【請求項7】
原稿を読み取る原稿読取装置をさらに有し、
前記ベルトは、少なくとも前記搬送面が略水平となるように配置され、
前記原稿読取装置は、原稿読取面が略水平となるように、前記ベルトよりも上方に配置されることを特徴とする請求項1乃至6いずれか記載の画像形成装置。
【請求項8】
画像形成装置本体の上部に設けられ、シートが排出される排出部と、
この排出部に排出されるシートが一時的に載置される載置部と、
前記定着装置で現像剤像の定着がなされたシートの一部分を前記載置部へと搬送した後に逆転を開始し、シートを前記排出部へと搬送する逆転ロールと、
を有することを特徴とする請求項1乃至7いずれか記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記定着装置で現像剤像の定着がなされたシートを反転させながら、シートを前記ベルトの上流側に再搬送する再搬送路を有することを特徴とする請求項1乃至8いずれか記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記ベルトと前記定着装置との間の位置に設けられ、シートの搬送を重力方向上方からガイドするガイド部材を有することを特徴とする請求項1乃至9いずれか記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記現像剤像形成部を複数有することを特徴とする請求項1乃至10いずれか記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−46325(P2008−46325A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221400(P2006−221400)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】