説明

画像形成装置

【課題】 大量の画像処理関連データを高速記憶装置に全て格納するのはむずかしく、一部分のデータを格納するしかない場合もある。このような場合、高速記憶装置に格納したデータを参照する確率の高い場合には効果を発揮するが、そうでない場合はほとんど効果を発揮しない。
【解決手段】 該画像処理手段に該部分ビットマップイメージの画像処理を要求する画像処理要求手段と、該部分出力形式イメージを結合して該印刷イメージを生成するイメージ生成手段を有する画像形成装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチプロセッサを使用した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタの高解像化に伴い、プリンタの印刷処理を制御するコントローラで、処理するデータの容量が増大する傾向がある。
【0003】
このような大容量のデータを高速に処理するために、コントローラボードに複数のプロセッサを搭載し、データを並列に処理してスループットを向上させるものがみられる。コントローラでは、メモリの使用量を抑えるために1ページ分のデータを複数のデータに分割して処理するのが一般的である。
【0004】
1ページ分のデータを複数のデータに分割して並列化処理する方法は、多数考案されている。例えば、特許文献1は、描画処理時間を予測して最も時間のかかるデータから順番に描画処理部分に割り当てていき、全体の描画処理時間を最小にするという方法である。
【0005】
また、アクセス回数の多い画像処理関連データを高速に参照するために、DRAM(低速記憶装置)に比べて高速なSRAM(高速記憶装置)を搭載しているプロセッサを用いる場合もある。
【0006】
図6はその例を示しており、3つのPE(プロセッサエレメント)、PE1 600・PE2 601・PE3 603に付随して高速記憶装置1 603・高速記憶装置2 604・高速記憶装置3 605が搭載されており、また共有の低速記憶装置606を搭載されている。
【特許文献1】特開2001-287412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、SRAMなどの高速記憶装置は比較的高価なため、コストパフォーマンスの観点から少容量にならざるを得ない。したがって、大量の画像処理関連データを高速記憶装置に全て格納するには不十分で、このような場合部分的なデータしか格納できない。このような場合、高速記憶装置に格納したデータを参照する確率の高い場合には効果を発揮するが、そうでない場合はほとんど効果を発揮しない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、
容量の少ない高速記憶媒体を複数搭載し、また容量の多い低速記憶媒体を搭載したマルチプロセッサ上で、印刷データから印刷イメージを生成する画像形成装置において、
印刷データを解釈して部分データに分割するデータ分割手段と、
該部分データを部分ビットマップイメージに描画する描画手段と、
該部分ビットマップイメージを部分出力形式イメージに変換する画像処理手段と、
該描画手段に該部分データの描画処理を要求する描画要求手段と、
該描画手段で描画する際に該部分ビットマップイメージの各画素が持つオブジェクトタイプの個数を加算していくオブジェクト出現回数加算手段と、
該オブジェクト出現回数加算手段で得られた該オブジェクト出現回数と各プロセッサに属する高速記憶媒体に記憶した内容とにより、該画像処理手段で画像処理にかかる時間を予測する画像処理時間予測手段と、
該画像処理時間予測手段で予測した結果と該画像処理手段の状態とによって、画像処理手段と部分ビットマップイメージとを選択し、該画像処理手段に該部分ビットマップイメージの画像処理を要求する画像処理要求手段と、
該部分出力形式イメージを結合して該印刷イメージを生成するイメージ生成手段
を有する。
【発明の効果】
【0009】
マルチプロセッサ上で、印刷データから印刷イメージを生成する画像形成装置において、部分イメージを処理するのに適したCPUを選択することができるため、画像形成時間を短縮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<構成>
図1に、本発明の実施例の構成を示す。
【0011】
入力手段100は、入力手段100が、イーサネット(登録商標)などの通信手段を介して取得した印刷データをデータ分割手段101に供給する。
【0012】
データ分割手段101は、所定の基準に従い印刷データを部分データに分割する。本実施例においては、1ページ分の印刷データを短冊状の領域に分割したバンド領域に分割する。
【0013】
描画要求手段102は、データ分割手段101で分割された部分データの描画処理を、それぞれ異なるPE上で動作する描画手段1 106・描画手段2 107・描画手段3 108のいずれかに要求する。どの描画手段に描画処理を要求するかの判定方法については後述する。
【0014】
描画手段1 103・描画手段2 104・描画手段3 105は、それぞれ別のPEに配置され、描画要求手段102からの要求に応じて部分データを描画処理して、部分ビットマップイメージを生成する。
【0015】
オブジェクト出現回数加算手段1 106・オブジェクト出現回数加算手段2 107・オブジェクト出現回数加算手段3 108は、それぞれ該描画手段1 103・該描画手段2 104・該描画手段3 105に付随してそれぞれ別のPEに配置され、該描画手段が部分データを描画処理する際に、該部分ビットマップイメージの各画素が持つオブジェクトタイプの個数(オブジェクト出現回数)を加算する。
【0016】
画像処理時間予測手段1 109・画像処理時間予測手段2 110・画像処理時間予測手段3 111は、それぞれ別のPEに配置され(本実施例ではそれぞれ別のPEに配置しているが、同一プロセッサに配置してもかまわない)、該オブジェクト出現回数加算手段1 106・該オブジェクト出現回数加算手段2 107・該オブジェクト出現回数加算手段3 108で得られた該オブジェクト出現回数と各PEに属する高速記憶媒体に記憶した内容とにより、該画像処理手段で画像処理にかかる時間を予測する。各PEに属する高速記憶媒体に記憶した内容については後述する。
【0017】
画像処理要求手段112は、該画像処理時間予測手段1 109・該画像処理時間予測手段2 110・該画像処理時間予測手段3で予測した結果と画像処理手段1 113・画像処理手段2 114・画像処理手段3 115の状態とによって、該画像処理手段に該部分ビットマップイメージの画像処理を要求する。
該画像処理手段1 113・該画像処理手段2 114・該画像処理手段3 115は、それぞれ別のPEに配置され、画像処理要求手段112からの要求に応じて、該部分ビットマップイメージを部分出力形式イメージに変換する。
【0018】
イメージ生成手段116は、該画像処理手段1 113・該画像処理手段2 114・該画像処理手段3 115が生成した部分出力形式イメージを収集して、1ページ分の出力形式イメージを生成する。
【0019】
出力手段110は、イメージ生成手段116が生成した1ページ分の出力形式イメージを、プリンタエンジンからの印刷要求に応じてプリンタエンジンに転送する。
【0020】
<動作>
以下、図1を参照して本発明の印刷制御装置の動作を説明する。
【0021】
図示していないホストPC等からネットワーク等を介して送られた印刷データは、入力手段100を介してデータ分割手段101に送られる。
【0022】
データ分割手段101は、入力手段100から送られた印刷データを解析し、所定サイズのバンドを構成するディスプレイリストを生成する。生成される各バンドのディスプレイリストは、任意の部分データ処理手段で処理可能なように、互いに依存しないように構成される。データ分割手段101は、生成したディスプレイリストに、ヘッダ情報として該バンドが属するページの番号と、該バンドのバンド番号を付加してバンドデータを生成する。データ分割手段101は、生成したバンドデータのバンド番号を描画要求手段102の描画処理待ち行列に追加する。
【0023】
描画要求手段102が、処理を要求する描画手段を決定する方法に関しては種々の手法が提案されているが、本実施例では簡単のためラウンドロビンで要求先を決める。すなわち、描画要求手段102は、最後に描画処理を要求した描画処理手段の番号を保持し、その番号を順番に変更して要求していく。
【0024】
描画手段1 103・描画手段2 104・描画手段3 105は、描画要求手段102からの要求に応じて部分データを描画処理して、部分ビットマップイメージを生成する。
【0025】
オブジェクト出現回数加算手段1 106・オブジェクト出現回数加算手段2 107・オブジェクト出現回数加算手段3 108は、上記描画手段が描画処理を行う際に、該描画処理がビットマップイメージを出力するのと同時に、オブジェクト出現回数を加算する。図2に該オブジェクト出現回数加算手段の出力例を示す。
【0026】
図2は、部分ビットマップイメージ中に、Rasterオブジェクトに属する画素が100000個、Vectorオブジェクトに属する画素が700000個、Fontオブジェクトに属する画素が200000個出現したことを表す。
【0027】
画像処理時間予測手段1 109・画像処理時間予測手段2 110・画像処理時間予測手段3 111は、該オブジェクト出現回数加算手段で得られた該オブジェクト出現回数と各PEに属する高速記憶媒体に記憶した内容とにより、該画像処理手段で画像処理にかかる時間を予測する。図3に各PEに属する高速記憶媒体に記憶した内容例を示す。また、画像処理時間予測方法を図4に示す。
【0028】
図3において、300・301・302はそれぞれPE1・PE2・PE3を示し、303・304・305はそれぞれPE1・PE2・PE3に付随する高速記憶媒体を示す。306は各PE共有の低速記憶媒体を示す。低速記憶媒体306には、全てのオブジェクトタイプに対応した参照用テーブル(LUT)が格納されている。
【0029】
高速記憶媒体303・304・305は容量が小さいために上記LUTを全て格納することができないため、LUTのうちそれぞれRaster用LUT・Vector用LUT・Font用LUTのみを格納している。
【0030】
図4は、画像処理時間予測に用いる評価関数を示す。TxはPExにおける画像処理予測時間、Cyはオブジェクトyに属する画素の個数、WyxはPEx・オブジェクトyの組に対する重み、αxはその他の要因を示す。例えば、(WR1, WV1, WF1, WR2, WV2, WF3, WR3, WV3, WF3,) = (8, 8, 2, 16, 4, 2, 16, 8, 1)のとき、図2の出現回数加算結果が得られたとすると、画像処理予測時間Txは以下のようになる。
【0031】
T1 = 8 * 100000 + 8 * 700000 + 2 * 200000 = 6800000
T2 = 16 * 100000 + 4 * 700000 + 2 * 200000 = 4800000
T3 = 16 * 100000 + 8 * 700000 + 1 * 200000 = 7600000
この場合、画像処理時間は長い順にPE3、PE1、PE2の順になり、PE2で実行するのが最も効率的だといえる。(注:画像処理予測時間は相対的な数値であればよい。)
画像処理要求手段112は、該画像処理時間予測手段で予測した結果と該画像処理手段の状態とによって、該画像処理手段に該部分ビットマップイメージの画像処理を要求する。
【0032】
画像処理要求手段112の処理フローを図5に示す。
【0033】
画像形成装置の起動時にSTEP501で、画像処理要求手段112の処理が開始される。
【0034】
STEP502で、画像処理要求手段112の画像処理待ち行列が空か否かを判定し、待ち行列が空の場合は、部分ビットマップイメージのバンド番号が追加されるまで待つ。待ち行列が空でなければSTEP503に進む。
【0035】
STEP503で、実行可能な画像処理手段があるか否かを判定し、実行可能な画像処理手段があれば、画像処理要求手段112の部分ビットマップイメージ待ち行列に画像処理手段の識別番号を追加してSTEP404に進む。
【0036】
STEP504で、画像処理待ち行列に存在する部分ビットマップイメージと、部分ビットマップイメージ待ち行列に存在する画像処理手段の中で最も画像処理時間予測値のよい組を選択する。画像処理時間予測値は、画像処理時間予測手段1 109・画像処理時間予測手段2 110・画像処理時間予測手段3 111に問い合わせて取得する。
【0037】
STEP505で、選択した画像処理手段に、選択した部分ビットマップイメージの画像処理要求を出す。
【0038】
STEP506で、STEP501に進む。
【0039】
図1において、該画像処理手段1 113・該画像処理手段2 114・該画像処理手段3 115は、画像処理要求手段112からの要求に応じて、該部分ビットマップイメージを部分出力形式イメージに変換する。
【0040】
イメージ生成手段116は、該画像処理手段1 113・該画像処理手段2 114・該画像処理手段3 115が生成した部分出力形式イメージを収集して、1ページ分の出力形式イメージを生成する。
【0041】
出力手段110は、イメージ生成手段116が生成した1ページ分の出力形式イメージを、プリンタエンジンからの印刷要求に応じてプリンタエンジンに転送する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の該略図である。
【図2】オブジェクト出現回数の加算結果の例
【図3】各PEに属する高速記憶媒体に記憶した内容例
【図4】画像処理時間予測方法の例
【図5】本発明を構成する画像処理要求手段の処理フローである。
【図6】本発明の一実施形態に係るマルチプロセッサのブロック図である。
【符号の説明】
【0043】
100 入力手段
101 データ分割手段
102 描画要求手段
103 描画手段1
104 描画手段2
105 描画手段3
106 オブジェクト出現回数加算手段1
107 オブジェクト出現回数加算手段2
108 オブジェクト出現回数加算手段3
109 画像処理時間予測手段1
110 画像処理時間予測手段2
111 画像処理時間予測手段3
112 画像処理要求手段
113 画像処理手段1
114 画像処理手段2
115 画像処理手段3
116 イメージ生成手段
117 出力手段
300 PE1
301 PE2
302 PE3
303 高速記憶媒体1
304 高速記憶媒体2
305 高速記憶媒体3
306 低速記憶媒体
600 PE1
601 PE2
602 PE3
603 高速記憶媒体1
604 高速記憶媒体2
605 高速記憶媒体3
606 低速記憶媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量の少ない高速記憶媒体を複数搭載し、また容量の多い低速記憶媒体を搭載したマルチプロセッサ上で、印刷データから印刷イメージを生成する画像形成装置において、
印刷データを解釈して部分データに分割するデータ分割手段と、
該部分データを部分ビットマップイメージに描画する描画手段と、
該部分ビットマップイメージを部分出力形式イメージに変換する画像処理手段と、
該描画手段に該部分データの描画処理を要求する描画要求手段と、
該描画手段で描画する際に該部分ビットマップイメージの各画素が持つオブジェクトタイプの個数を加算していくオブジェクト出現回数加算手段と、
該オブジェクト出現回数加算手段で得られた該オブジェクト出現回数と各プロセッサに属する高速記憶媒体に記憶した内容とにより、該画像処理手段で画像処理にかかる時間を予測する画像処理時間予測手段と、
該画像処理時間予測手段で予測した結果と該画像処理手段の状態とによって、画像処理手段と部分ビットマップイメージとを選択し、該画像処理手段に該部分ビットマップイメージの画像処理を要求する画像処理要求手段と、
該部分出力形式イメージを結合して該印刷イメージを生成するイメージ生成手段
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
容量の少ない高速記憶媒体を複数搭載し、また容量の多い低速記憶媒体を搭載したマルチプロセッサ上で、印刷データから印刷イメージを生成する画像形成方法において、
印刷データを解釈して部分データに分割するデータ分割手段と、
該部分データを部分ビットマップイメージに描画する描画手段と、
該部分ビットマップイメージを部分出力形式イメージに変換する画像処理手段と、
該描画手段に該部分データの描画処理を要求する描画要求手段と、
該描画手段で描画する際に該部分ビットマップイメージの各画素が持つオブジェクトタイプの個数を加算していくオブジェクト出現回数加算手段と、
該オブジェクト出現回数加算手段で得られた該オブジェクト出現回数と各プロセッサに属する高速記憶媒体に記憶した内容とにより、該画像処理手段で画像処理にかかる時間を予測する画像処理時間予測手段と、
該画像処理時間予測手段で予測した結果と該画像処理手段の状態とによって、画像処理手段と部分ビットマップイメージとを選択し、該画像処理手段に該部分ビットマップイメージの画像処理を要求する画像処理要求手段と、
該部分出力形式イメージを結合して該印刷イメージを生成するイメージ生成手段
を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項3】
容量の少ない高速記憶媒体を複数搭載し、また容量の多い低速記憶媒体を搭載したマルチプロセッサ上で、印刷データから印刷イメージを生成するプログラムが格納された記憶媒体であって、
印刷データを解釈して部分データに分割するデータ分割手段と、
該部分データを部分ビットマップイメージに描画する描画手段と、
該部分ビットマップイメージを部分出力形式イメージに変換する画像処理手段と、
該描画手段に該部分データの描画処理を要求する描画要求手段と、
該描画手段で描画する際に該部分ビットマップイメージの各画素が持つオブジェクトタイプの個数を加算していくオブジェクト出現回数加算手段と、
該オブジェクト出現回数加算手段で得られた該オブジェクト出現回数と各プロセッサに属する高速記憶媒体に記憶した内容とにより、該画像処理手段で画像処理にかかる時間を予測する画像処理時間予測手段と、
該画像処理時間予測手段で予測した結果と該画像処理手段の状態とによって、画像処理手段と部分ビットマップイメージとを選択し、該画像処理手段に該部分ビットマップイメージの画像処理を要求する画像処理要求手段と、
該部分出力形式イメージを結合して該印刷イメージを生成するイメージ生成手段
を有することを特徴とするコンピュータ読み取り可能なプログラムを格納した記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−147439(P2009−147439A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319880(P2007−319880)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】