説明

画像形成装置

【課題】 像形成動作の安定化が図られた画像形成装置を提供する。
【解決手段】 記録媒体を所定の搬送経路に沿って搬送する、該記録媒体が該搬送経路を進むにつれて該記録媒体に掛かる搬送力が増加する搬送部と、前記搬送経路上を搬送中の記録媒体上に像を形成する像形成部と、前記記録媒体を挟み持って前記搬送部へと送り込む、該記録媒体が前記搬送経路を進むのに応じて、該記録媒体を挟み持つ力を低減させる送込部とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上に像を形成する像形成部を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、記録媒体を所定の搬送経路に沿って搬送する搬送部と、搬送経路上を搬送中の記録媒体上に像を形成する像形成部と、記録媒体上に形成された像を記録媒体に定着する定着部とを有する画像形成装置が知られている。
【0003】
この様な画像形成装置には、記録媒体を1枚ずつ搬送部へ送り込む送込部を有するタイプのものがある。
【0004】
この様なタイプの画像形成装置には、搬送部として、表面に記録媒体を吸着しながら搬送経路に沿って記録媒体を搬送する搬送ベルトを備え、送込部として、周面で互いに接触する一対の回転ロールのその接触部分で記録媒体を挟み込み、搬送ベルト上に記録媒体を載せる回転ロール対を備えるものがある。
【0005】
ところで、近年、装置の小型化がますます進んでいることに伴い、上述の回転ロール対により記録媒体が搬送ベルトに載せられてから像形成部による像形成を受けるまでの距離も短くなってきている。また、回転ロール対が記録媒体を搬送ベルト上に載せた後しばらくは、記録媒体と搬送ベルトとの接触面積が少ないために搬送ベルトによる媒体搬送力は弱く、記録媒体の搬送はこの回転ロール対に頼るところが大きい。
【0006】
ところが、記録媒体と搬送ベルトとの接触面積が次第に増加して搬送ベルトによる媒体搬送力が大きくなり記録媒体の搬送自体に問題が無くなった後も回転ロール対が相変わらずその搬送力を維持していると、回転ロール対による搬送力で搬送ベルトによる搬送に乱れが生じて像形成に悪影響を及ぼしかねない。
【0007】
そこで、記録媒体がトナー像の転写を受けるタイミングで回転ロール対による媒体搬送を解除する提案がなされている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−25989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したようなコンパクト化が進んだ装置では、記録媒体がトナー像の転写を受けるタイミングの段階では、記録媒体と移動ベルト表面との接触面積がまだ少なく、搬送ベルトによる媒体搬送力は弱いと考えられ、この段階で回転ロール対による媒体搬送を解除してしまうと、記録媒体の搬送自体が不安定になるのと、また、搬送ベルトによる単独搬送に移る際のショックとにより、像形成に悪影響を及ぼしかねない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、像形成動作の安定化が図られた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の画像形成装置は、
記録媒体を所定の搬送経路に沿って搬送する、この記録媒体がこの搬送経路を進むにつれてこの記録媒体に掛かる搬送力が増加する搬送部と、
上記搬送経路上を搬送中の記録媒体上に像を形成する像形成部と、
上記記録媒体を挟み持って上記搬送部へと送り込む、この記録媒体が上記搬送経路を進むのに応じて、この記録媒体を挟み持つ力を低減させる送込部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の画像形成装置では、搬送部による媒体搬送力が増加するに従って、送込部による媒体搬送力が低減されていくことから、記録媒体の搬送を、安定的、かつ滑らかに行うことができる。したがって、本発明の画像形成装置によれば、像形成の安定化を図ることができる。
【0012】
ここで、上記搬送部が、上記記録媒体を下から上へと搬送するものであることが好ましい。
【0013】
記録媒体を下から上へと搬送する態様では、搬送部に記録媒体が送りこまれた当初は送込部による充分は補助が必要であるため、送込部による媒体搬送の解除による悪影響も大きいことから、本発明が特に有効となる。
【0014】
また、上記像形成部が、上記搬送経路に沿った複数の形成箇所それぞれで各色の像を、上記記録媒体上で互いに重なるように形成するものであり、
上記送込部が、上記記録媒体を挟み持つ力を、この記録媒体の先端が各形成箇所に達するタイミング毎に低減させるものであることも好ましい態様である。
【0015】
好ましい態様によれば、上記タイミングで送込部の力が低減されるので各画像形成部における像形成時に媒体に無用な力が掛かることが回避されて像形成の安定化に寄与する。
【0016】
ここで、上記送込部が、挟み持っている記録媒体を、この記録媒体の先端が上記搬送経路上の、上記像形成部を脱ける位置に達するタイミングで放すものであることが好ましい。
【0017】
この様にすることで、無意味に記録媒体にストレスを与えずに済ますことができる。
【0018】
また、上記搬送部が、上記搬送経路に沿って移動する移動ベルトを備え、この移動ベルトの表面に上記記録媒体を吸着して搬送するものであってもよい。
【0019】
ここで、上記送込部が上記記録媒体を挟み持つ力によるこの記録媒体に対する仕事量が、上記移動ベルトの表面に対するこの記録媒体の吸着性が高いほど少なくなるようにこの力を調整する調整部を備えたことが好ましい。
【0020】
移動ベルトの表面に対する記録媒体の吸着性が高いと、搬送部の媒体搬送力の立ち上がりは速くなる。このような場合、送込部による記録媒体に対する仕事量としては少なくて済む。そこで、この仕事量の減少分の調整を、搬送経路に沿って送込部が記録媒体を搬送する搬送距離ではなく、送込部が記録媒体を挟み持つ圧の低減により行うことができると、像形成を一層安定させることができる。
【0021】
また、本発明の画像形成装置が、上記記録媒体の種類を検出する媒体種類検出部を備え、
上記調整部は、上記媒体種類検出部で検出された、上記送込部が挟み持つ記録媒体の種類に基づいて、上記力を調整するものであることも好ましい態様である。
【0022】
記録媒体の種類によって、移動ベルトの表面に対する記録媒体の吸着性は異なることから、記録媒体の種類に基づいて記録媒体を挟み持つ力を調整することで高精度な調整が可能となる。
【0023】
ここで、上記媒体種類検出部が、記録媒体の厚さを検出するものであって、
上記調整部が、検出した厚さに応じて、この厚さが薄いほど上記仕事量が少なくなるように上記力を調整するものであることが好ましい。
【0024】
記録媒体の厚みが薄いほど記録媒体の剛性は低くなり、移動ベルトの表面に対する追随性が上がることから、厚みが薄い記録媒体ほど移動ベルトの表面に対する吸着性は高まる。したがって、送込部が記録媒体の厚みに基づいて記録媒体を挟み持つ力を調整するものであると高精度な調整が可能となる。
【0025】
また、本発明の画像形成装置が、この画像形成装置内の湿度を検出する湿度検出部を備え、
上記調整部が、上記湿度検出部によって検出された湿度が低いほど上記仕事量が少なくなるように上記力を調整するものであることが好ましく、
この画像形成装置内の温度を検出する温度検出部を備え、
上記調整部が、上記温度検出部によって検出された温度が低いほど、上記仕事量が少なくなるように上記力を調整するものであることも好ましい態様である。
【0026】
画像形成装置内の湿度が低いほど放電は抑えられ、また、画像形成装置内の温度が高いほど記録媒体および移動ベルトの抵抗が上昇することから、画像形成装置内の湿度又は温度が低いほど、これら記録媒体と移動ベルトとの間の静電的な吸着力が上昇する。したがって、画像形成装置内の湿度又は温度が低いほど送込部の仕事量は少なくて済む。これにより、送込部が画像形成装置内の湿度又は温度に基づいて記録媒体を挟み持つ力を調整するものであると高精度な調整が可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の画像形成装置によれば、像形成動作の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0029】
図1は、プリンタの内部構成図である。
【0030】
図1に示すプリンタ1は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、およびK(黒)色用の4つの画像形成部を有し、各色用の感光体ロールのそれぞれの表面に形成したトナー像を、用紙収容カセットから引き出され搬送ベルト上に載せられた用紙上の同じ位置に順次重ねて転写した後、定着部により用紙上にカラートナー像を定着させるコンパクトタイプのものである。このプリンタ1が、本発明の画像形成装置の第1実施形態である。
【0031】
このプリンタ1の4つの画像形成部10Y、10M、10C、10Kには、それぞれ、感光体ロール11Y、11M、11C、11K、帯電器12Y、12M、12C、12K現像器14Y、14M、14C、14K、一次転写ロール15Y、15M、15C、15K、および、クリーナ16Y、16M、16C、16Kが備えられている
また、このプリンタ1には、外部からの画像形成指示を受信し、各部を制御する制御部10、4つの画像形成部10Y、10M、10C、10Kの感光体ロール11Y、11M、11C、11Kをそれぞれ露光する露光器13、搬送ベルト21の表面に用紙300を載せて搬送経路に沿って搬送する搬送部20、用紙300を収容する用紙収容カセット50、用紙収容カセット50から用紙を引き出すピックアップロール40によって矢印C方向に引き出された用紙300を搬送部20に送りこむ送込部30、用紙上に転写されたトナー像を加熱および加圧することで用紙上に定着する定着部60、および、定着部60でトナー像が定着された用紙を排出する排出ロール70が備えられている。
【0032】
搬送部20は、搬送ベルト21の他に、詳しくは後述する、搬送ベルト21に接触してこの搬送ベルト21に電荷を付与する電荷付与ロール22と、搬送ベルト21が掛け回されたテンションロール23および駆動ロール24とを備えている。
【0033】
送込部30は、周面で接触した回転ロール対31を有しており、詳しくは後述するが、この回転ロール対31の回転およびこの回転ロール対31の間隔は制御部10に制御されている。
【0034】
定着部60は、加熱ロール61と加圧ロール62とを備えている。
【0035】
尚、図1には、下方の用紙収容カセット50から上方の排出ロール70にかけての、用紙300が搬送される搬送経路上の最初と最後のそれぞれに、搬送中の用紙300が示されている。
【0036】
このプリンタ1の基本的な画像形成動作について説明する。
【0037】
このプリンタ1では、制御部10が外部からの画像形成指示を受けると、先ず、ピックアップロール40による用紙収容カセット50からの用紙300の引き出しと、4つの画像形成部10Y、10M、10C、10Kのうちの最下段に示されるイエロー用の画像形成部10Yによるトナー像の形成とが開始される。
【0038】
ピックアップロール40により用紙収容カセット50から引き出された用紙300は、停止中の回転ロール対31の接触部分に押し当てられる。その後もしばらくはピックアップロール40は駆動し、引き出された用紙300はループを形成する。このループ形成により、用紙300の先端は、回転ロール対31に正対し、用紙の姿勢は整えられる。
【0039】
一方、イエロー用の画像形成部10Yでは、矢印A方向に回転する感光体11Yの表面に帯電器12Yにより所定の電荷が付与され、露光器13により生成された、イエロー画像に相当する露光光が感光体11Yの表面に照射されて静電潜像が形成される。その静電潜像は、イエローのトナーを収容する現像器14Yにより現像され、感光体11Y上には、イエローのトナー像が形成される。
【0040】
制御部10は、イエロー用の画像形成部10Yにおいて形成されたトナー像の、一次転写ロール15Yによる転写タイミングに合わせて、用紙300が搬送経路上の所定の位置に到達するように、回転ロール対31に所定の間隔での回転開始を指示する。これにより、回転ロール対31によって姿勢が整えられていた用紙300は、回転ロール対31に挟み込まれ、搬送ベルト21に載せられて搬送経路を進み、上記所定位置において一次転写ロール15Yによりイエローのトナー像の転写を受ける。
【0041】
次の色であるマゼンタの画像形成部10Mでは、用紙300に転写されたイエローのトナー像がマゼンタの画像形成部10Mの一次転写ロール15M付近に差し掛かるタイミングに合わせてマゼンタのトナー像が一次転写ロール15Mに到達するようにトナー像の形成が行なわれ、形成されたマゼンタのトナー像は、一次転写ロール15Mにより用紙300上のイエローのトナー像の上に重ねて転写される。
【0042】
続いて、シアンおよび黒の画像形成部10C、10Kによるトナー像形成が上記と同様のタイミングで行なわれ、形成されたシアンおよび黒のトナー像は、一次転写ロール15C、15Kによって、用紙300のイエローおよびマゼンタのトナー像の上に順次重ねて転写される。
【0043】
こうして、搬送ベルト20に載せられた用紙300に転写された多色トナー像は、駆動ロール24付近で慣性力により搬送ベルト21から離れ、定着部60の加熱ロール61と加圧ロール62との間を通過中に用紙300に定着され、排出ロール70によりプリンタ上面に排出される。
【0044】
このプリンタ1では、感光体ロール11Y、11M、11C、11Kは、帯電器12Y、12M、12C、12Kにより表面にマイナス極性の電荷が付与され、マイナス極性に帯電された表面のうち、露光器13からの露光光が照射された部分からはマイナス極性の電荷が除去されて静電潜像が形成される。
【0045】
また、現像器14Y、14M、14C、14Kには、トナーと、このトナーとの摩擦によりトナーを摩擦帯電させる電荷付与粒子であり磁性粒子でもある磁性キャリアとを含む現像剤が収容されており、この現像器14Y、14M、14C、14Kでは、収容したこの現像剤を攪拌し、この攪拌によりトナーと磁性キャリアとを摩擦させている。この摩擦により、トナーはマイナス極性に帯電し、磁性キャリアはプラス極性に帯電する。このため、現像剤中では、トナーは磁性キャリアに静電的に付着してこれらは渾然一体となっている。
【0046】
また、現像器14Y、14M、14C、14Kの現像ロール141Y、141M、141C、141Kは、図示は省略するがマイナス極性のバイアスが印加された、円柱状のマグネットロールとその外周を回転可能に覆う円筒状のスリーブとからなるものであり、マグネットロールの磁力によりスリーブ表面に磁性キャリアを吸着することで現像剤が現像ロール141Y、141M、141C、141Kに保持され、感光体ロール11Y、11M、11C、11Kとの間に形成された現像領域に運ばれる。現像領域に運ばれた現像剤中のトナーは、感光体ロール11Y、11M、11C、11Kの表面に形成された静電潜像と現像ロール141Y、141M、141C、141Kとの間に発生した電界により磁性キャリアから離れて静電潜像に付着することでトナー像が現像される。
【0047】
静電潜像に付着したマイナス極性の各色トナー像は、トナー像を形成するトナーの極性とは逆極性であるプラス極性の電圧が印加された一次転写ロール15Y、15M、15C、15Kにより、搬送ベルト21に載せられた用紙300に転写される。
【0048】
電気補助ロール22は、一次転写ロール15Y、15M、15C、15Kとの接触によりプラス側に帯電している搬送ベルト21を、より安定した帯電状態に保つためのものである。これにより、用紙300は、搬送ベルト上に単に載せられているだけでなく、搬送ベルト21に静電的に吸着されて搬送される。
【0049】
図2は、送込部および搬送部の一部の拡大図である。
【0050】
図2には、送込部30が、回転ロール対31の他に、アーム32、コイルバネ33、およびカム34を備えている様子が示されている。
【0051】
回転ロール対31は、制御部10により駆動が制御される駆動ロール311と、この駆動ロール311に接触することで従動回転する従動ロール312とで構成されている。従動ロール312は、中心軸312aを中心として回転自在になっており、この中心軸312aには、この軸312aを駆動ロール311側に押し付ける付勢力を発生するコイルバネ33が取り付けられている。また、この中心軸312aは、支点321を有するアーム32の端部32aを貫通している。このアーム32の、従動ロール312の中心軸312aが取り付けられている端部32aとは反対側の端部32bには、カム34が係合している。カム34の中心軸34aは、不図示のステッピングモータの回転軸と結合されており、ステッピングモータの回転角に応じてカム34が回転し、カム34の中心軸34aから、カム34のアーム32との接触部分までの距離が変化することで、アーム34の姿勢は変化する。
【0052】
ここで、図2には、カム34の周縁部に番号‘1’から番号‘6’までが付されている様子が示されているが、これは、説明の便宜のために示されているものであり、実際に付されているわけではない。
【0053】
カム34の中心軸34aから、カム34のアーム32との接触部分までの距離は、カム34の周縁部に付されている番号‘1’の部分がアーム32に接触している場合が一番短く、番号が進むほどその距離は長くなる。したがって、カム34の番号‘1’が付された部分がアーム32と接触している場合は、アームの端部32bは支点321に対して最も高くなるために駆動ロール311と従動ロール312との間隔は最も狭くなる。一方、かむ34の番号‘5’が付された部分がアーム32と接触している場合は、アームの端部32bは支点321に対して最も広くなるために駆動ロール311と従動ロール312との間隔は最も低くなる。この様に、このプリンタ1では、回転ロール対31の回転ロール間の間隔が変更自在となっている。
【0054】
また、図2には、用紙300が、回転ロール対31に挟み込まれて搬送ベルト21の上に載せられ、その先端が、M色用の感光体ロール11Mと一次転写ロール15Mとの間を通過した様子が示されている。
【0055】
このプリンタ1は、高さが抑えられたコンパクトタイプのものであり、このため、用紙300の搬送は、回転ロール対31による用紙搬送力と搬送ベルト21による用紙搬送力との協働により主に行われる。
【0056】
搬送ベルト21の用紙搬送力は、用紙300の、搬送ベルト21に吸着される面積が大きくなるにつれて、すなわち、用紙300が搬送経路を進むにつれて大きくなる。
【0057】
そこで、このプリンタ1では、送込部30から搬送部20へ送り込まれた用紙300の、搬送ベルト21に吸着される面積が増えるにつれて、回転ロール対31の間隔を当初の間隔から徐々に広げて行く。すなわち、このプリンタ1では、搬送ベルト21による用紙搬送力が上昇するにつれて、回転ロール対31による用紙搬送力を徐々に低下させている。これは、回転ロール対31による当初の用紙搬送力は、用紙300がC色用の感光体11Cと一次転写ロール15Cとの間を通過した頃の搬送ベルト21による用紙搬送力と同等なほど強力であり、搬送ベルト21による用紙搬送力が上昇して行くのに対しこの様に強力な用紙搬送力が維持されると、用紙搬送が却って不安定になり、用紙にシワなどが発生してトナー像の転写に悪影響を及ぼすからである。
【0058】
回転ロール対31の用紙搬送は、回転ロール対31の間隔と、挟み込む用紙の厚さとにかかわる挟込圧に依存する。また、搬送ベルト21による用紙搬送力は、用紙300と搬送ベルト21との間の静電的な吸着力だけでなく、用紙300の搬送ベルト21への密着性にも左右される。用紙300の厚さは、用紙300の搬送ベルト21への密着性を左右する追随性に関わり、用紙300の厚さが厚いほど剛性は高くなって、搬送ベルトの表面への追随性は低下する。したがって、搬送する用紙300が薄い場合には、搬送ベルト21による用紙搬送力の立ち上がりが速いことから、回転ロール対31による用紙搬送に係る仕事量としては、用紙が薄い場合の方が厚い場合に比べて少なくて済む。これにより、回転ロール対31の挟込圧も当初から低くて良い。
【0059】
そこで、このプリンタ1では、用紙300の厚さによって、回転ロール対31の間隔の拡大態様を異ならせている。
【0060】
図3は、回転ロール対の挟込圧の変化を示す図である。
【0061】
図3には、横軸を、搬送経路上を進む用紙300の先端の到達位置、縦軸を、回転ロール対31の挟込圧とした場合の、用紙300が搬送経路を進む毎に回転ロール対31の挟込圧が低減されて行く様子が2種類の厚さの用紙それぞれについて示されており、一点鎖線に対応する用紙の厚さは、実線に対応する用紙の厚さよりも薄い。
【0062】
図3に示される番号1から6は、図2に示すカム34の周縁部に付した番号を表しており、実線で示される、厚さが厚い方の用紙については、用紙の先端がY色用の感光体11Yと一次転写ロール15Yとの間を通過するまでは、カム34の番号‘1’の部分がアーム32と接触していることで形成された間隔で回転ロール対31は用紙を挟み込む。その後、用紙の先端がM色、C色、K色用の感光体11M、11C、11Kとそれらに対応する一次転写ロール15M、15C、15Kとの間を経る毎に、カム34の、アーム32との接触部分は番号‘3’が付された部分から番号‘5’が付された部分へと変化し、これに伴いこの回転ロール対31の間隔は次第に開いて行く。
【0063】
一方、一点鎖線で示される薄い方の用紙については、用紙の先端がY色用の感光体11Yと一次転写ロール15Yとの間を通過するまでは、カム34の番号‘2’の部分がアーム32と接触することで形成された間隔で回転ロール対31が用紙を挟み込む。その後、M色、C色、K色用の感光体11M、11C、11Kとそれらに対応する一次転写ロール15M、15C、15Kとの間を経る毎に、カム34の、アーム32との接触部位は、番号‘23が付された部分から番号‘6’が付された部分へと変化し、番号‘6’が付された部分がアーム32に接触する時には用紙が開放されて挟込圧がゼロになる。
【0064】
また、図3には、厚さの厚い用紙と薄い用紙とでは、回転ロール対31の間隔が例え同じであっても、挟込圧は異なる子とも示されている。例えば、カム34とアーム32との接触部位がいずれも‘4’であるときの挟込圧は、一点鎖線で示される薄い方の用紙で低くなっている。
【0065】
図4は、回転ロール対による用紙搬送力と、搬送ベルトによる用紙搬送力との関係を示す図である。尚、図4に示す‘レジ’は回転ロール対31を表し、‘Fuser’は定着部60を表す。また、左側の縦軸を、回転ロール対31による用紙搬送力(N)、右側の縦軸を、搬送ベルト21による用紙搬送力(N)、横軸を、搬送される用紙の先端の到達位置としている。
【0066】
図4(a)には、図3において実線で表される、厚さが厚い方の用紙の先端の到達位置毎の、回転ロール対31の用紙搬送力(斜線)と搬送ベルト21による用紙搬送力(白抜き)とが示されている。
【0067】
図4(b)には、図3において一点鎖線で表される、厚さが薄い方の用紙の先端の到達位置毎の、回転ロール対31の用紙搬送力(斜線)と搬送ベルト21による用紙搬送力(白抜き)とが示されている。
【0068】
図4には、搬送ベルト21における用紙搬送力については、厚い用紙に比べて薄い用紙の方が立ち上がりが速い様子が示されている。この様に薄い用紙の方が搬送ベルト21の搬送力は大きいため、回転ロール対31による用紙搬送については、厚い用紙に比べて薄い用紙の方では搬送力を低下させ、仕事量についても厚い用紙に比べて薄い用紙の方では減少させることが、安定的な用紙搬送のためには必要となる。その様に用紙の厚さに応じて搬送力が異なっている様子もこの図4に示されている。
【0069】
厚さの厚い用紙と薄い用紙とでは、回転ロール対31の間隔が同じであっても、挟込圧としては、薄い用紙の方が厚い用紙よりも低下することは上述した通りであるが、用紙の厚さが薄くなることに伴う回転ロール対31の仕事量の低減は、搬送ベルト21における搬送力の増大に比べてかなり少ないので、用紙の搬送を、安定的、かつ滑らかに行うには不十分である。そこで、このプリンタ1では、図3に示すように、厚さの薄い用紙の場合には、厚い用紙の場合よりも当初から回転ロール対31の間隔を大きく開いた拡大態様を採用することで回転ロール対31の間隔を制御することで、回転ロール対31による用紙の挟込圧および搬送力を積極的に制御している。これにより、プリンタ1では、用紙の搬送が、安定的、かつ滑らかに行われる。
【0070】
また、1枚の用紙に対し、各画像形成部によるトナー像の転写が行われる毎に、搬送ベルト21への用紙の接触面積は増加し搬送ベルトによる用紙搬送力は強力になって行くことから、このプリンタ1では、この用紙の先端が、画像形成部の像形成箇所である、感光体と転写ロールとの間を通過するタイミングで用紙の挟込圧を低減させている。
【0071】
次に、本発明の画像形成装置の第2実施形態について説明する。
【0072】
本実施形態のプリンタは、構成的には、第1実施形態であるプリンタ1に、温度と湿度とを検出する環境センサを加えたものであるので、構成の図示やその説明は省略する。
【0073】
また、第1実施形態のプリンタ1では、用紙の厚さに基づいて回転ロール対31の間隔の拡大態様を異ならせているが、本実施形態のプリンタでは、環境センサにより検出された温度と湿度に基づいて回転ロール対31の間隔の拡大態様を異ならせている。
【0074】
これは、搬送ベルト21による用紙搬送力が、前述したように、用紙300と搬送ベルト21との間の静電的な吸着力に左右されることに着目したものであり、プリンタ内が低湿であると用紙300および搬送ベルト21からの放電が抑えられることから、静電的な関係は維持し易く、搬送ベルト21に対する用紙300の吸着力も維持できるからであり、また、プリンタ内が低温であると、用紙300の体積抵抗と搬送ベルト21の表面抵抗が上昇することで放電が抑えられることから、プリンタ内が低温である場合にも静電的関係は維持し易いからである。
【0075】
図5は、環境区分を示す図である。
【0076】
図5には、プリンタ内の環境を、低温低湿である環境C、中温中湿である環境B、および、高温高湿である環境Aに区分している様子が示されている。
【0077】
図6は、回転ロール対による用紙搬送力と、搬送ベルトによる用紙搬送力との関係を示す図である。
【0078】
図6には、左側の縦軸を回転ロール対31による用紙搬送力(N)とし、横軸を用紙300の先端の到達位置として、回転ロール対31による用紙搬送力の変化が環境(A、B、C)毎にヒストグラムによって表されている。環境A(高温高湿)における回転ロール対31による用紙搬送力の変化は、3つのヒストグラムのうち用紙搬送力が最も大きいヒストグラム‘A’で表されており、環境C(低温低湿)における回転ロール対31による用紙搬送力の変化は、3つのヒストグラムのうち用紙搬送力が最も小さいヒストグラム‘C’で表わされている。また、環境B(中温中湿)における回転ロール対31による用紙搬送力の変化は、ヒストグラム‘B’で表されている。尚、回転ロール対31による用紙搬送力の変更は、図示は省略するが、第1実施形態のプリンタ1におけるのと同様に、カム34を偏心回転させることで行われている。
【0079】
また、図6には、右側の縦軸を搬送ベルト21による用紙搬送力として、搬送ベルト21による用紙搬送力の変化が環境(A、B、C)毎に折れ線グラフによって表されている。環境C(低温低湿)におけるベルト用紙搬送力の変化は、3つの折れ線のうち用紙搬送力が最も大きい‘△’記号の折れ線で表わされており、環境A(高温高湿)におけるベルト用紙搬送力の変化は、3つの折れ線のうち用紙搬送力が最も小さい‘○’記号で表わされている。また、環境B(中温中湿)におけるベルト用紙搬送力の変化は、‘□’記号で表わされている。
【0080】
図6からは、本実施形態のプリンタでは、プリンタ内の環境が低温低湿となり、用紙300と搬送ベルト21との間の静電的な吸着力が大きくなると、回転ロール対31の用紙搬送力、すなわち挟込圧が最初から低くて良く、その結果、高温高湿の場合と比べ、回転ロール対31による仕事量が少なくて済むことが読みとれる。
【0081】
この様に、第2実施形態のプリンタでも、プリンタ内が低温低湿になるほど少なくて済む、回転ロール対31の仕事量を、回転ロール対31の挟込圧を全体的に低下させることで調整している。これにより、用紙の搬送を、安定的、かつ滑らかに行うことができる。
【0082】
最後に、本発明の画像形成装置の第3実施形態について説明する。
【0083】
本実施形態のプリンタは、構成的には、第1実施形態であるプリンタ1に、搬送する用紙300の表面平滑性を光学的に検出する光学センサを加えただけであるので、構成の図示やその説明は省略する。
【0084】
また、第1実施形態のプリンタ1では、用紙の厚さに基づいて回転ロール対31の間隔の拡大態様を異ならせているが、本実施形態のプリンタでは、搬送する用紙300の表面平滑性に基づいて回転ロール対31の間隔の拡大態様を異ならせている。
【0085】
これは、搬送ベルト21による用紙搬送力が、用紙300の搬送ベルト21への密着性に左右され、用紙300の表面平滑性が、用紙300の搬送ベルト21への密着性を左右する追随性に関わることに着目したものであり、表面平滑性が高いと搬送ベルトへの密着性は高まる。したがって、搬送する用紙300の表面平滑性が高いほど吸着性は高まり、搬送ベルト21による用紙搬送力の上昇が素早くなることから、回転ロール対31による用紙搬送に係る仕事量は、用紙300の表面平滑性が高いほど少なくて済む。
【0086】
図7は、回転ロール対による用紙搬送力と、搬送ベルトによる用紙搬送力との関係を示す図である。
【0087】
図7には、左側の縦軸を、回転ロール対31による用紙搬送力とし、横軸を、用紙300の先端の到達位置とした場合の、回転ロール対31による用紙搬送力の変化が、表面平滑性が異なる2種類の用紙(α、β)毎にヒストグラムによって表されている。尚、回転ロール対31による用紙搬送力の変更は、図示は省略するが、第1実施形態のプリンタ1におけるのと同様に、カム34を偏心回転させることで行われている。
【0088】
また、図7には、右側の縦軸を、搬送ベルト21による用紙搬送力とした場合の、搬送ベルト21による用紙搬送力の変化が、表面平滑性が異なる2種類の用紙(α、β)毎に折れ線グラフによって表されており、表面平滑性が高い用紙300についての搬送ベルト21による用紙搬送力の変化は、最初から搬送ベルトによる用紙搬送力が高い‘▽’記号の折れ線で表され、表面平滑性の低い用紙300についての搬送ベルト21による用紙搬送力の変化は、最初から搬送ベルト21による用紙搬送力が低い‘◇’記号の折れ線で表されている。
【0089】
本実施形態のプリンタでも、搬送する用紙300の表面平滑性が高いほど、回転ロール対31の用紙搬送力、すなわち挟込圧が最初から低くて良く、回転ロール対31による仕事量が少なくて済むこととなる。
【0090】
この様に、第3実施形態のプリンタでも、搬送する用紙300の表面平滑性が高いほど少なくて済む、回転ロール対31の仕事量について、回転ロール対31の挟込圧を全体的に低下させることで調整している。これにより、用紙の搬送を、安定的、かつ滑らかに行うことができる。
【0091】
尚、以上に説明した実施形態では、プリンタ内の温度と湿度、および、搬送する用紙の厚さと表面平滑性のそれぞれに基づいて、回転ロール対31の間隔をそれぞれ調整する例を挙げて説明したが、これらプリンタ内の温度と湿度および搬送する用紙の厚さと表面平滑性を総合的に判断して、回転ロール対31の間隔を調整してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】プリンタの内部構成図である。
【図2】送込部および搬送部の一部の拡大図である。
【図3】回転ロール対の挟込圧の変化を示す図である。
【図4】回転ロール対による用紙搬送力と、搬送ベルトによる用紙搬送力との関係を示す図である。
【図5】環境区分を示す図である。
【図6】回転ロール対による用紙搬送力と、搬送ベルトによる用紙搬送力との関係を示す図である。
【図7】回転ロール対による用紙搬送力と、搬送ベルトによる用紙搬送力との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
1 プリンタ
10Y、10M、10C、10K 画像形成部
20 搬送部
21 搬送ベルト
30 送込部
31 回転ロール対
32 アーム
33 コイルバネ
34 カム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を所定の搬送経路に沿って搬送する、該記録媒体が該搬送経路を進むにつれて該記録媒体に掛かる搬送力が増加する搬送部と、
前記搬送経路上を搬送中の記録媒体上に像を形成する像形成部と、
前記記録媒体を挟み持って前記搬送部へと送り込む、該記録媒体が前記搬送経路を進むのに応じて、該記録媒体を挟み持つ力を低減させる送込部とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記搬送部が、前記記録媒体を下から上へと搬送するものであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像形成部が、前記搬送経路に沿った複数の形成箇所それぞれで各色の像を、前記記録媒体上で互いに重なるように形成するものであり、
前記送込部が、前記記録媒体を挟み持つ力を、該記録媒体の先端が各形成箇所に達するタイミング毎に低減させるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記送込部が、挟み持っている記録媒体を、該記録媒体の先端が前記搬送経路上の、前記像形成部を脱ける位置に達するタイミングで放すものであることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記搬送部が、前記搬送経路に沿って移動する移動ベルトを備え、該移動ベルトの表面に前記記録媒体を吸着して搬送するものであることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記送込部が前記記録媒体を挟み持つ力によって生じる、該記録媒体の送り込みにおける仕事量が、前記移動ベルトの表面に対する該記録媒体の吸着性が高いほど少なくなるように該力を調整する調整部を備えたことを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記記録媒体の種類を検出する媒体種類検出部を備え、
前記調整部は、前記媒体種類検出部で検出された、前記送込部が挟み持つ記録媒体の種類に基づいて、前記力を調整するものであることを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記媒体種類検出部が、記録媒体の厚さを検出するものであって、
前記調整部が、検出した厚さに応じて、該厚さが薄いほど前記仕事量が少なくなるように前記力を調整するものであることを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
該画像形成装置内の湿度を検出する湿度検出部を備え、
前記調整部が、前記湿度検出部によって検出された湿度が低いほど前記仕事量が少なくなるように前記力を調整するものであることを特徴とする請求項6から8のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項10】
該画像形成装置内の温度を検出する温度検出部を備え、
前記調整部が、前記温度検出部によって検出された温度が低いほど前記仕事量が少なくなるように前記力を調整するものであることを特徴とする請求項6から9のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−157243(P2009−157243A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337634(P2007−337634)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】