説明

画像形成装置

【課題】画像形成時間、画像形成停止時間、雰囲気環境の温度、雰囲気環境の絶対湿度、に基づいてVLの変動を補正することで、適切な画像形成条件制御を行い、常に安定した濃度の画像を得ることが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置において、感光ドラム1が回転を開始してから経過した画像形成時間t1、及び回転を停止してから経過した画像形成停止時間t2を計測するタイマー24と、感光ドラム1の雰囲気環境の温度Tc及び湿度を検知する温湿度検知センサ18と、を備え、絶対湿度が低い場合は、タイマー24の計測結果、及び温湿度検知センサ18の検知結果に基づいて、帯電電圧を制御する。絶対湿度が高い場合は、湿度情報は使わず、タイマー24の計測結果、及び温湿度検知センサ18の温度の検知結果に基づいて、帯電電圧を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファックスなどの電子写真方式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を利用した画像形成装置に備えられる感光体は、一般的に電荷発生層及び電荷輸送層で構成された感光層を有する。
【0003】
プリント開始の信号が入力されると、感光体は一定方向に駆動されて回転を開始する。そして感光体の表面に対して帯電装置にバイアスを印加されることにより、感光体の表面は一定の電位に帯電される(以下、帯電工程と呼ぶ)。
【0004】
このときの感光体の表面電位を暗部電位VDとする。表面がVDに帯電された感光体の表面に対して、コントローラからの信号に基づいてオン/オフ制御されたレーザー光或いはLED光が照射される(以下、露光工程と呼ぶ)。
【0005】
感光体の表面における露光が行われた部分は露光工程によって電位が変動し、感光体の表面には周囲とは電位の異なる静電潜像が形成される。露光が行われて静電潜像が形成された部分の電位を明部電位VLとして説明を行う。
【0006】
表面に静電潜像が形成された感光体に対して、感光体に対して対向配置された現像装置に現像電圧が印加され、現像装置から帯電したトナーが静電潜像に供給される。それにより、感光体の表面において静電潜像がトナー像として現像される(以下、現像工程と呼ぶ)。なお、現像工程において現像装置に印加される現像電圧をVdevとして説明を行う。
【0007】
そして感光体の表面に現像されたトナー像は、感光体の回転とともに転写材に当接して転写材に転写される(以下、転写工程と呼ぶ)。転写工程においては、感光体に隣接して配置され、感光体と略同速度で順方向に回転する転写ローラ等の転写部材と感光体との間に転写材を通過させることによって、転写材にトナー像が転写される。具体的には転写部材に対してトナーと逆極性のバイアスが印加され、その状態で感光体と転写部材との間に転写材を通過させることにより、感光体上から転写材上にトナー像を転写する構成である。
【0008】
ところで、帯電工程における帯電装置に印加されるバイアスを一定とし、露光工程において露光条件を一定にしていたとしても、画像形成を繰り返すことによりVLが変動する場合がある。この原因として、露光によって感光体中に残留電荷が発生し、画像形成中にVLが変動することが考えられる。また、感光体が接触する帯電部材、クリーニング部材との摺擦や、露光部材、定着器等からの放熱等に起因して、感光体が回転中に昇温することでVLが変動することも原因として考えられる。
【0009】
このように、感光体の露光工程、及び感光体の昇温によってVLが変動すると、VdevとVLの差である現像コントラストが変化してしまう。現像コントラストが変化すると、感光体上のトナー乗り量の変化につながり、結果的に転写材上の画像濃度変動を招く。なお、現像コントラストをVcontとして以下説明を行う。
【0010】
これに対し、従来では画像濃度を安定させるために、感光体のVLをセンサによって予
め検知して、その結果に応じてトナーの供給量を制御する等の画像形成条件制御を行う画像形成装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0011】
しかしながら、この構成においては、感光体のVLを検知するためのセンサを新たに設置するため、装置本体のコストアップや大型化を招くといった問題を生じる。
【0012】
また、感光体表面の除電及び帯電を目的として露光工程の前に行われる感光体の回転の回転数を、感光体周囲の温湿度に基づいて選択することで、同一画像を多数形成する際の画像濃度変動を抑える画像形成装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0013】
しかし、感光体周囲の温湿度に基づいて作像前の感光体の回転数を増加させる場合は、印刷スピードを落とし、画像形成装置の生産性を低下させるといった問題を生じる。
【0014】
これに対して、上記従来の問題を鑑みて、感光体周辺の温度と画像形成時間と画像形成停止時間から感光体のVLを予測し、それに応じて画像形成条件制御を行う画像形成装置が提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2000−181158号公報
【特許文献2】特開2005−300745号公報
【特許文献3】特開2002−258550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、VLの変動は感光体の温度のみならず、感光体の雰囲気環境の絶対湿度、及び画像形成時間(装置本体が駆動する時間)にも依存することが確認されている。また、VLの変動はVLの絶対値の上昇だけではなくVLの絶対値が減少する挙動も有することが確認されている。
【0016】
これに対して特許文献3に開示される従来技術では、感光体の雰囲気環境の絶対湿度、及び画像形成時間を考慮しておらず、VLの変動はVLの上昇とVLの低下が両方起こりうることを想定していないため、VLの変動を精度よく予測することが出来ない。
【0017】
すなわち上記従来例に係る画像形成装置においては、VLの変動を精度よく予測して安定した濃度の画像を得ることが出来ない。なお、帯電工程、露光工程における条件を同じにしておいても、画像形成時間とともにVLの絶対値が上昇する現象をVLアップと称する。また、画像形成時間とともにVLの絶対値が低下する現象をVLダウンと称する。
【0018】
ここで図2、図3を参照して、画像形成時間とともにVLアップとVLダウンが生じる過程について説明する。図2は感光体の表面電位の概念図であり、図3は画像形成時間または画像停止時間(図3(d))の経過にともなうVLの変動を表す図である。
【0019】
図2に示すようにVdevとVLの差であるVdev−VLがVcontとなる。このVcontが大きいほど、感光体上に現像されるトナー量が多くなるため画像濃度が高くなる。
【0020】
VLアップは、図2の矢印Aの方向(絶対値が高くなる方向)にVLが変動するため、Vcontが小さくなり画像濃度が低下してしまう現象である。一方、VLダウンは、図2の矢印Bの方向(絶対値が低くなる方向)にVLが変動するため、Vcontが大きくなり画像濃度が上昇してしまう現象である。
【0021】
まず、VLアップが生じる現象について説明を行う。L/L環境(低温低湿環境)、例
えば15℃/10%RHの環境においては、数枚の連続画像形成であっても、図3(a)に示すように画像形成時間の経過とともにVLアップの現象が起こる。
【0022】
また、感光体の雰囲気の絶対湿度が低い環境であるほど、単位時間あたりのVLの上昇率が大きいことが確認されている。すなわち感光体の雰囲気の絶対湿度が低ければ低いほど、VLアップの現象が顕著に現れることになる。
【0023】
更に、VLアップは画像形成が行われる前に感光体が停止していた時間(画像形成停止時間)による影響を受け、この画像形成停止時間が長いほどVLの上昇量は大きくなる。
【0024】
例えば、画像形成停止時間が長い場合には図3(a)に示すようにVLはV1まで上昇するが、画像形成停止時間が短い場合には図3(b)に示すようにVLはV1より少ないV2までしか上昇しない。
【0025】
このようなVLアップの現象は、画像形成の際の感光体に対する露光により感光層内の残留電荷数が増加したことが主原因であると考えられる。つまり、雰囲気環境の絶対湿度が低い環境においては、感光層中のいずれかの層の抵抗が高くなることで、感光層内において電荷の移動や注入がスムーズに行われにくく、感光層内の残留電荷数が増加する。その結果、VLアップが生じるものと考えられる。
【0026】
画像形成によって発生した残留電荷は、画像形成が終了することにより徐々に感光層からアースへと抜けていく。画像形成停止時間が長いほど、前の画像形成時に発生した残留電荷が少なくなるので、次に画像形成を行う際には、残留電荷が溜まりやすい状態となっている。従って、画像形成停止時間が長いほど、次の画像形成を行った時に、VLアップの影響が顕著に現れ、VLの上昇量が大きくなる。
【0027】
次に、VLダウンが生じる現象について説明を行う。低温低湿でない環境、例えば23℃/50%RHの環境においては、連続画像形成がなされた場合に、図3(c)に示すように画像形成時間の経過とともにVLダウンの現象が起こる。一方でVLダウンによって低下したVLは、画像形成後に画像形成をしない時間、すなわち画像形成停止時間が長いほど元のVLへと回復する傾向を示す。
【0028】
例えば、図3(c)において、直前の画像形成によるVLダウンによって直前の画像形成時のVLがV4まで低下した場合、次の画像形成時の初期のVLは、図3(d)に示すように画像形成停止時間が長いほど、元のVLであるV3に近い値を示した。
【0029】
このようなVLダウンの現象は、感光層内の残留電荷数が減少したことが主原因であると考えられる。つまり、画像形成を行うと感光体の昇温が起き、感光層の抵抗が低下するため、感光層中にトラップされていた残留電荷が感光体の外に移動することがVLダウンの原因と考えられる。
【0030】
なお、画像形成時間の経過とともに感光体が昇温する原因としては、感光体との接触部材である現像部材、帯電部材、クリーニング部材等との摩擦や、露光部材、定着器等からの放熱が主原因であると考えられる。
【0031】
さらに、これらの実験結果に基づいて、感光体の昇温の原因となる感光体の雰囲気環境の温度と、画像形成時間と、画像形成停止時間と、から感光体の温度が精度よく予測できることが確認されている。
【0032】
なお、上記で説明したVLアップとVLダウンの現象は、感光体の雰囲気環境の温度、
及び雰囲気環境の絶対湿度に応じて、どちらか一方のみが起こることもあれば、同時に起こることもある。
【0033】
例えば、絶対湿度が低い環境であればVLアップによるVLの上昇量が非常に大きくなるため、VLダウンの影響が見られず、VLアップの影響のみが顕著に見られる場合がある。一方、絶対湿度が高い環境であればVLアップは起こりにくいので、VLダウンの影響が顕著に見られる場合がある。
【0034】
また、ある環境においてはVLアップとVLダウンが同時に起き、図3(e)に示すようにVLが一旦上昇してから、その後低下していく現象が起きることがある。また別の環境においては、図3(f)に示すように、VLが一旦減少してからその後上昇していく現象が起きることもある。
【0035】
以上より、VLアップは、絶対湿度、温度、感光体の停止時間、感光体の回転時間に応じて予測することが可能であることがわかった。また、VLダウンは、絶対湿度は使わず、温度、感光体の停止時間、感光体の回転時間に応じて予測することが可能であることがわかった。そして、絶対湿度の値が高い場合、VLアップが発生しないため、VLダウンのみを考慮することで精度よくVLを予測することができることがわかった。これらVLアップ、及びVLダウンの予測については後述する。
【0036】
本発明は、絶対湿度が低い場合と、絶対湿度が高い場合とで画像形成条件を変更する適切な制御を行なうことで、安定した濃度の画像を得る画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記目的を達成するために本発明は、回転可能な感光体と、帯電電圧を印加されて前記感光体の表面を帯電させる帯電装置と、帯電の後の前記感光体の表面を露光して静電潜像を形成する露光装置と、現像電圧を印加され、前記静電潜像に現像剤を付着させて現像剤像として現像する現像装置と、前記感光体が回転をしている時間である感光体回転時間に関する情報と、前記感光体が停止している時間である感光体停止時間に関する情報とを計測する時間計測装置と、前記画像形成装置の環境の温度に関する情報及び絶対湿度に関する情報を計測する環境計測装置と、絶対湿度が低い範囲を第1の範囲、絶対湿度が高い範囲を第2の範囲とした時、絶対湿度が第1の範囲の場合は、前記環境計測装置により計測された温度に関する情報及び絶対湿度に関する情報と、前記時間計測装置により計測された感光体回転時間に関する情報及び感光体停止時間に関する情報と、に応じて画像形成条件を制御し、絶対湿度が第2の範囲の場合は、前記環境計測装置により計測された絶対湿度に関する情報を用いずに、前記環境計測装置により計測された温度に関する情報と、前記時間計測装置により計測された感光体回転時間に関する情報及び感光体停止時間に関する情報に応じて画像形成条件を制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、絶対湿度が低い場合と、絶対湿度が高い場合とで画像形成条件を変更する適切な制御を行なうことで、安定した濃度の画像を得る画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施の形態に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0040】
[画像形成装置の全体構成]
図4に本実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示す。画像形成装置100は、電子写真画像形成プロセスによって記録媒体(転写材)、例えば、記録用紙、OHPシート或いは布などに画像形成するレーザービームプリンタとする。
【0041】
本実施の形態に係る画像形成装置100は、像担持体として設けられる円筒状の回転可能な感光ドラム1(感光体)を備える。感光ドラム1は、対応するトナー(現像剤)の種類ごとに4つ設けられ、それぞれの感光ドラム1は、不図示の回転軸を中心に図4の矢印Aの方向に回転駆動する。
【0042】
画像形成動作開始の信号が入力されると、感光ドラム1が回転し始めるとともに、感光ドラム1の表面が、帯電ローラ2(帯電装置)によって均一に負電荷に帯電される。
【0043】
感光ドラム1の表面が負電荷に帯電すると、露光装置3が画像情報に基づいてレーザー光4を射出して感光ドラム1の表面を走査露光し、該表面に静電潜像を形成する。なお、上記で説明したように帯電工程における感光ドラム1の表面電位をVDとし、露光が行われた部分の表面電位をVLとする。
【0044】
そして現像装置5は、感光ドラム1上に形成された静電潜像に対してトナーを付着させることで、静電潜像をトナー像(現像剤像)として現像させる。なお、現像工程において現像装置5に印加される現像電圧をVdevとし、VdevとVLの差である現像コントラストをVcontとする。
【0045】
感光ドラム1上に形成されたトナー像は、感光ドラム1と転写部材として設けられる転写ローラ7の間で転写ベルト9上に担持された転写材Pに転写される。この際、転写ローラ7に転写バイアスを印加することで、トナー像を感光ドラム1から転写材P上に転写する。なお、転写材Pは装置本体下方に配置される給紙トレイ11に複数積載され、給送ローラ12、搬送ローラ13を経て転写ベルト9に搬送されるものである。
【0046】
一方で転写材Pに転写されずに感光ドラム1の表面上に残ったトナーは、感光ドラム1の表面に接触して設けられるクリーニングブレード16によって除去された後、廃トナー収容部8によって収容される。
【0047】
なお、転写ベルト9は4本のローラ10a、10b、10c、10dに掛け渡されており、図4の矢印Bの方向に回転し、担持する転写材Pを画像形成ステーションSY〜SBkに順次搬送するものである。そして各色のステーションSY、SM、SC、SBkで感光ドラム1から転写材Pへの転写を行うことにより、転写材P上には各色のトナー像が重ね合わされ、所望の画像が形成される。
【0048】
転写材Pに画像が転写されると、転写材Pが定着装置14に搬送され、転写材Pの表面に転写されたトナー像が溶融固着されて転写材P上に定着される。そして定着が行われた転写材Pはカラー画像形成装置100の外部に配置されたトレイ15に排出される。
【0049】
また、上記構成に加えて画像形成装置100には環境計測装置として温湿度センサ18が設けられており、温湿度センサ18によって感光ドラム1の雰囲気環境の温湿度が検知される。なお、本実施の形態では環境測定装置として温湿度センサを用いたが、温度と湿度をそれぞれ別のセンサとして設けても良い。
【0050】
検知された温度と湿度は、CPU22に出力され、CPU22は入力された温湿度の検
知結果に基づいて雰囲気環境の絶対湿度を算出し、算出した雰囲気環境の絶対湿度と温度の情報をそれぞれ0.1℃と0.1g/mの単位で記憶手段20に保存する。なお、記憶手段20、CPU22はともに装置本体下方に設けられるエンジン制御部17内に配置される。
【0051】
また、絶対湿度とは、雰囲気環境の単位体積あたりに含まれる水蒸気量(g)を表すものであり、単位はg/mである。本実施の形態においては、温湿度センサ18の検知結果に基づいてCPU22において絶対湿度が算出される。なお、温湿度センサ18が設けられる場所はこれに限定されるものではなく、感光ドラム1の周辺に設けてもよいし、それ以外の場所であっても構わない。
【0052】
また、本実施の形態においては、雰囲気環境の温度と絶対湿度の情報をそれぞれ0.1℃と0.1g/mの単位で記憶手段20に保存するとしたが、これらの単位は特に限定されるものではなく、これら以外の単位であってもよい。
【0053】
なお、本実施の形態では、一成分現像方式を用いているが、これに限らず二成分現像方式を用いたものであってもよい。
【0054】
また、本実施の形態に用いられるトナーは、電子写真法に用いられる公知のものを用いることができ、現像工程に合わせて適宜最適なものが選択される。なお、本実施の形態においては、現像剤として非磁性現像剤が用いられるが、磁性現像剤を用いる構成であってもよい。
【0055】
[感光ドラムの構成]
次に、図5を参照して本実施の形態に用いられる感光ドラム1の構成にについて説明する。本実施の形態における感光ドラム1の感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、に機能分離された積層型である。さらに、この積層型の感光層の上層に表面保護層を形成している。以下、感光ドラム1を形成する各々の層ごとに説明を行う。
【0056】
(基体層1a)
感光層の支持体には導電性を有するものが用いられる。例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス、バナジウム、モリブデン、クロム、チタン、ニッケル及びインジウム等の金属をドラム状またはシート状に成形したものが挙げられる。
【0057】
また、アルミニウムや銅等の金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム及び酸化スズ等をプラスチックフィルムに蒸着したもの、を用いることも可能である。
【0058】
また、導電性物質を単独または結着樹脂と共に塗布して導電層を設けた金属、プラスチックフィルム及び紙等を用いてもよい。
【0059】
本実施の形態においては、図5に示すように、基体層にAl基体1aを設ける構成とした。
【0060】
(下引き層1b)
図5に示すように、Al基体1aの上層にはバリアー機能と接着機能を有する下引き層1bが設けられる。
【0061】
本実施の形態で用いられる下引き層1bの材料としては、ポリビニルアルコール、ポリ
エチレンオキシド、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸コポリマー等が挙げられる。また、アルコール可溶アミド、ポリアミド、ポリウレタン、カゼイン、ニカワ及びゼラチン等を用いることも可能である。
【0062】
下引き層1bは、これらの材料を適当な溶剤に溶解した溶液をAl基体1a上に塗布して乾燥することによって形成される。
【0063】
(正電荷注入防止層1c)
また、下引き層1bの上層には、アルミ基体1aから注入された正電荷が感光ドラム1の表面に帯電された負電荷を打ち消すのを防止する役割を果たす、中抵抗の正電荷注入防止層1cが設けられる。
【0064】
(電荷発生層1d)
さらに正電荷注入防止層1cの上層には、電荷発生物質を含有する電荷発生層1dが設けられる。
【0065】
電荷発生層1dに用いられる電荷発生物質としては、モノアゾ、ジスアゾ、トリスアゾなどのアゾ顔料や、金属フタロシアニン、非金属フタロシアニンなどのフタロシアニン顔料や、インジゴ、チオインジゴなどのインジゴ顔料が挙げられる。
【0066】
また、ペリレン酸無水物、ペリレン酸イミドなどのペリレン顔料や、アンスラキノン、ピレンキノンなどの多環キノン顔料や、スクワリリウム色素や、ピリリウム塩およびチアピリリウム塩や、トリフェニルメタン色素を用いることも可能である。
【0067】
さらに、セレン、セレン−テルル、アモルファスシリコンなどの無機物質や、キナクリドン顔料や、アズレニウム塩顔料や、シアニン染料や、キサンテン色素や、キノンイミン色素や、スチリル色素や、硫化カドミウムや、酸化亜鉛などを用いてもよい。
【0068】
しかしながらこれらの中でも、特にオキシチタニウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニンなどの金属フタロシアニンを用いることが好ましい。
【0069】
電荷発生層1dは、電荷発生物質を結着樹脂および溶剤と共に分散して得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。
【0070】
なお、電荷発生物質の分散方法としては、ホモジナイザー、超音波、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルなどを用いた方法が挙げられる。電荷発生物質と結着樹脂との割合は、10:1〜1:10(質量比)の範囲が好ましく、特には3:1〜1:1(質量比)の範囲がより好ましい。
【0071】
電荷発生層用塗布液に用いる溶剤は、使用する結着樹脂や電荷発生物質の溶解性や分散安定性から選択されるが、有機溶剤としてはアルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物などが挙げられる。
【0072】
電荷発生層用塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法などの塗布方法を用いることができる。
【0073】
(電荷輸送層1e)
また、電荷発生層1dの上層には電荷発生物質を含有する電荷輸送層1eが設けられる。電荷輸送層1eは適当な電荷輸送物質から形成され、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物、トリアリルメタン化合物などが挙げられる。
【0074】
電荷輸送層1eに用いられる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂等が挙げられる。また、ポリフェニレンオキシド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、不飽和樹脂等を用いることも可能である。
【0075】
しかしながら、特にはポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂などが好ましい。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
【0076】
電荷輸送層1eは、電荷輸送物質と結着樹脂を溶剤に溶解して得られる電荷輸送層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。電荷輸送物質と結着樹脂との割合は、2:1〜1:2(質量比)の範囲が好ましい。
【0077】
電荷輸送層用塗布液に用いる溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル等、が挙げられる。また、ジメトキシメタン、ジメトキシエタンなどのエーテル、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、クロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン原子で置換された炭化水素などを用いることも可能である。
【0078】
電荷輸送層用塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法などの塗布方法を用いることができる。
【0079】
(表面保護層1f)
また、電荷輸送層1eの上層には表面層として表面保護層1fが設けられる。表面保護層1fは、硬化性フェノール樹脂を溶剤等で溶解又は希釈して得た塗工液を感光層上に塗工して成形し、これによって塗工後に重合反応が起きて硬化層が形成される。
【0080】
[画像形成条件制御の制御構成]
図1を参照して、本実施の形態における画像形成装置100の画像形成条件制御の制御構成について説明する。図1は、本実施の形態における画像形成条件制御のシステムブロック図である。
【0081】
画像形成条件制御の一部は、各色の最大濃度を一定に保つ事(以下Dmax制御と称す)と、ハーフトーンの階調特性を画像信号に対してリニアに保つこと(以下Dhalf制御と称す)によって行われる。
【0082】
Dmax制御は、各色の最大濃度が感光ドラム1の膜厚や雰囲気環境に影響されるため、所望の最大濃度が得られるように環境検知の結果及びCRGタグ情報から帯電電圧や現像電圧などの画像形成条件を設定するものである。
【0083】
一方、Dhalf制御は、電子写真特有の非線形的な入出力特性(γ特性)によって、入力画像信号に対して出力濃度がずれて自然な画像が形成できない事を防止するため、γ
特性を打ち消して入出力特性をリニアに保つような画像処理を行うものである。
【0084】
具体的には、入力画像信号が異なる複数のトナーパッチを光学センサで検知して、入力画像信号と濃度の関係を得る。その関係から入力画像信号に対して所望の濃度が出るよう、画像形成装置に入力する画像信号を変換する。このDhalf制御はDmax制御により帯電電圧や現像電圧などの画像形成条件を決定した後に行う。
【0085】
VLの変動によって出力画像の濃度が画像形成時間とともに変化する場合、Dmax制御とDhalf制御を頻繁に、例えば5枚の印刷枚数ごとに行うことで、色味変動を抑制することは可能である。
【0086】
しかし、Dmax制御とDhalf制御を頻繁に行うことは印刷スピードを大幅に落とし、画像形成装置の生産性を著しく低下させるため現実的ではない。
【0087】
そのため、本実施の形態では、Dmax制御とDhalf制御は1000枚の印刷枚数につき1度しか行っていない。なお、本実施の形態におけるDmax制御とDhalf制御は1000枚の印刷枚数につき1度のタイミングとしたが、これに限定されるものではない。
【0088】
すなわち、別のタイミングであっても構わないし、Dhalf制御を全く行わない構成であってもよい。また、印刷枚数ではなくトナー消費量などを基準としてDmax制御とDhalf制御を行うタイミングを決めてもよい。
【0089】
そして本実施の形態では、Dmax制御とDhalf制御は1000枚の印刷枚数につき1度しか行っていないため、その間にVLが大幅に変動してしまう。そのため、画像形成条件制御をDmax制御とDhalf制御のみで行うと、安定した画像濃度が得られない。
【0090】
そこで本実施の形態では、Dmax制御やDhalf制御以外の画像形成条件制御方法として、VLの変動を補正することで現像コントラスト(Vcont)が一定になるようにする画像形成条件制御を行う。
【0091】
具体的には、VLの変動予測を基に、Dmax制御によって決められた帯電電圧、現像電圧Vdevの少なくとも一方を制御することで、現像コントラスト(Vcont)が一定になるようにする。
【0092】
このような画像形成条件制御は、図1に示す制御構成によって行われる。図1に示すように、本実施の形態における画像形成条件制御は、記憶手段20と、読み取り手段21と、書き込み手段26と、CPU22と、を備える。
【0093】
これら記憶手段20、読み取り手段21、書き込み手段26、CPU22は、図4に示す画像形成装置100のエンジン制御部17に設けられている。また、記憶手段20には、周知の電子的なメモリを好適に用いることができるが、これに限定されるものではない。本実施の形態では、記憶手段20として不揮発性のEEPROMを用いる構成とした。
【0094】
さらにCPU22は、VLの変動を補正する計算手段25、計算手段25で算出されたVLの補正量に基づいて画像形成条件の制御を行う制御手段23、画像形成時間や画像形成停止時間の計測が可能な時間計測手段であるタイマー24を備えている。
【0095】
タイマー24は、感光ドラム1が駆動している間は画像形成時間のカウントを1秒単位で行う。そして、タイマー24は、感光ドラム1の駆動が停止している間は画像形成停止時間のカウントを1秒単位で行う。
【0096】
なお、本実施の形態においてはタイマー24のカウントを1秒単位としたが、特に限定されるものではなく、1秒以外の単位であってもよい。タイマー24によって計測した画像形成時間と画像形成停止時間は書き込み手段26を介して記憶手段20に記憶される。
【0097】
なお、本実施の形態においては、画像形成時間と画像形成停止時間の計測をどちらもタイマー24によって行ったが、画像形成時間と画像形成停止時間の計測を2つのタイマーがそれぞれ独立して行う構成であってもよい。
【0098】
また、本実施の形態における画像形成条件の制御構成には、記憶手段20に記憶された情報を読み取るための読み取り手段21が設けられている。読み取り手段21は、記憶手段20から読み取った情報をCPU22へ送るものである。
【0099】
CPU22内にある計算手段25は、記憶手段20に記憶された情報に基づいて、後述する方法でVLの変動の補正量を算出する。そして制御手段23は、計算手段25で算出されたVLの補正量に基づき、画像形成条件を制御するための情報を画像形成手段に送る。
【0100】
[画像形成条件制御の制御方法]
上記で説明した画像形成条件制御の制御構成に基づいて、(VLアップの補正量の計算方法)、(VLダウンの補正量の計算方法)を説明するとともに、画像形成条件制御の制御方法について説明する。
【0101】
VLアップやVLダウンのVLの変動が生じる場合において画像濃度を安定させるためには、VLの変動を補正する補正量を求め、画像形成条件制御を行うことが必要である。
【0102】
また画像形成条件制御として、現像電圧Vdevの制御、帯電電圧の制御を行うことが挙げられる。特に本実施の形態では帯電装置2の帯電電圧(画像形成条件)を制御する制御方法を説明する。
【0103】
具体的には、VLダウン及びVLアップに起因するVLの変動量を求めた上で、それらの変動を打ち消す補正量(VLダウンの補正量、VLアップの補正量)を基準となる帯電電圧に加えることで画像形成条件制御を行うものとした。 なお、本実施の形態では、基
準となる帯電電圧は、Dmax制御によって決められた帯電電圧とする。
【0104】
また、本実施の形態では、感光ドラム1の特性としてY、M、C、Kのステーション間の差がなかったため、以下に説明する帯電電圧の制御方法は、これら全てのステーションにおいて適用されるものとする。
【0105】
図6は本実施の形態における画像形成条件制御の概念図を示すものであり、計算手段25で算出されるVLの変動に基づいて制御手段23が帯電装置2における帯電電圧の制御を行う過程を示すものである。
【0106】
なお、本実施の形態においては、画像形成時間(以下、t1と称する)とは、停止状態の感光ドラム1が駆動し始めてから経過した時間を表す。また、画像形成停止時間(以下
、t2と称する)とは、感光ドラム1の駆動が停止してから経過した時間を表す。後述するが本実施の形態では、1つの画像形成(画像形成ジョブの一単位)の開始時にt1=0が入力されるようにして、情報を一旦リセットしている。
【0107】
したがって、画像形成時間t1は、画像形成開始から制御装置による画像形成条件の制御実行までの感光体回転時間に該当する。また、1つの画像形成(画像形成ジョブの一単位)の終了時には、t2=0として情報をリセットする。よって、画像形成停止時間t2は、前の画像形成終了の時から次の画像形成開始までの感光体回転停止時間に該当する。なお、画像形成時間t1、画像形成停止時間t2について、画像形成装置の電源投入時からの積算値を記憶し、当該積算値を用いてVLの変動を求める方法を用いてもよい。
【0108】
また、雰囲気環境の絶対湿度をW、雰囲気環境の温度をTc、VLアップによる変動量をΔU、VLダウンによる変動量をΔDと表す。雰囲気環境の絶対湿度をW及び、雰囲気環境の温度をTcは、Dmax制御実行時の雰囲気環境の絶対湿度、及び温度としている。
【0109】
本実施の形態における画像形成装置は、電源をオンにした後に、画像形成の準備動作のため感光ドラム1を回転させる前多回転動作を行なってスタンバイ状態になる。この画像形成装置の電源オンの後からスタンバイ状態になるまでの間の期間にDmax制御及び絶対湿度、温度の測定を行ない、記憶手段に記憶させている。
【0110】
また、本実施の形態では、負帯電の感光ドラム1を使用している。例えば、基準となるVLが−100Vであった場合、VLアップが起こると−120Vのようになり、VLダウンが起こると−80Vのようになる。したがって、ΔUは0若しくは負の値となり、ΔDは0若しくは正の値となる。
【0111】
計算手段25はVLの変動から第1の補正量、第2の補正量を算出し、制御手段23はこの予測結果に基づいて、Vcontが一定になるように帯電装置2に印加する帯電電圧を制御する。
【0112】
まずVLの変動を求めるためには、VLアップによる変動とVLダウンによる変動を両方求める必要がある。
【0113】
計算手段25は、VLアップによる変動量とVLダウンによる変動量をそれぞれ計算することによりVLの変動を求めている。また、計算手段25は、VLアップによる変動量であるΔUをt1、t2、Wの3つのパラメータより計算し、VLダウンによる変動量であるΔDをt1、t2、Tcの3つのパラメータより計算する。
【0114】
また、VLの変動に関する特性は記憶手段20の中に保存されているテーブルに与えられており、計算手段25はこのテーブルを参照することによってVLの変動を計算する。以下、VLダウンとVLアップに起因するVL変動に対する補正量(第1の補正量、第2の補正量)の算出方法について説明する。
【0115】
(VLダウンによるVL変動の補正量(第1の補正量)の算出方法)
まず、VLダウンによるVL変動ΔDの補正量(第1の補正量)の算出方法について述べる。VLダウンによる変動は、図1に示すように、記憶手段20の中に保存されているVLダウンテーブル28を参照することで行われる。
【0116】
VLダウンテーブルは図8に示すように、テーブルC、テーブルD、テーブルEから成り、これらのテーブルに基づいて画像形成時間に対するVLダウンによる変動量ΔDの計
算を行う。
【0117】
本実施の形態では、前述したように、VLダウンによる変動量ΔDと感光ドラム1の温度には相関があるため、感光ドラム1の温度を予測することでVLダウンによる変動量ΔDを計算している。
【0118】
具体的には、テーブルCを参照することで画像形成時の感光ドラム1の温度を、テーブルDを参照することで画像形成停止時の感光ドラム1の温度を計算している。
【0119】
また、計算した感光ドラム1の温度とテーブルEを参照することでVLダウンによる変動量を計算している。
【0120】
以下、感光ドラム1の予測温度を一般的にTと表し、画像形成開始時のTをTi、画像形成停止時のTをTkと表すこととし、VLダウンテーブル28について説明する。
【0121】
まず、テーブルCについて説明する。テーブルCは、昇温テーブル00〜昇温テーブル20の21個のテーブルから構成される。昇温テーブル00〜昇温テーブル20は画像形成時間に対する感光ドラム1の温度を示したテーブルである。
【0122】
ただし、図8(a)では、紙面の都合上3つの昇温テーブル(昇温テーブル00、昇温テーブル03、昇温テーブル08)しか示していない。なお、図8(a)はテーブルの形にはなっていないが、実際には、このグラフがテーブルの形としてテーブルCには記載されている。
【0123】
本実施の形態においては、画像形成開始時における感光ドラム1の予測温度Tiと環境温度Tcの差、すなわちTi−Tcによって、感光ドラム1の昇温のプロファイルは異なる。すなわち、Ti−Tcが小さいほど画像形成時間に対する感光ドラム1の昇温量は大きくなるという特性を示す。
【0124】
そのため、画像形成開始時のTi−Tcによって用いられるテーブルは異なり、例えば図8(a)で説明すると、Ti−Tcが0℃でTiとTcが等しい場合には昇温テーブル00が用いられるし、Ti−Tcが8℃である場合には昇温テーブル08が用いられる。
【0125】
このように、画像形成開始時のTi−Tcの値に応じて、テーブルCの21個のテーブルの中から最適な昇温テーブルを選択することにより、精度よく感光ドラム1の温度を予測することができる。
【0126】
なお、本実施の形態においてはテーブルCとして21個の昇温テーブルしか用意していないが、これに限定されるものではなく、感光ドラム1の温度を精度よく予測するのに必要な数の昇温テーブルを用意すればよい。
【0127】
本実施の形態においては、感光ドラム1の温度を1℃単位で予測できれば精度として充分であること、感光ドラム1の温度は環境温度に対して最大でも20℃までしか上昇しないことから、テーブルCを21個のテーブルとして構成した。
【0128】
次に、テーブルDについて説明する。テーブルDは降温テーブル00〜降温テーブル20の21個のテーブルから成る。降温テーブル00〜降温テーブル20は画像形成停止時間に対する感光ドラム1の温度を示したテーブルである。
【0129】
ただし、図8(b)では紙面の都合上3つの降温テーブル(降温テーブル02、降温テ
ーブル09、降温テーブル14)しか示していない。なお、図8(b)はテーブルの形にはなっていないが、実際には、このグラフがテーブルの形としてテーブルDには記載されている。
【0130】
本実施の形態においては、画像形成停止時における感光ドラム1の予測温度Tkと環境温度Tcの差、すなわちTk−Tcによって感光ドラム1の降温のプロファイルは異なり、画像形成停止時間とともに環境温度Tcに向かって飽和するプロファイルとなる。
【0131】
そのため、Tk−Tcが大きいほど画像形成時間に対する感光ドラム1の降温量は大きくなるという特性を示す。すなわち画像形成停止時のTk−Tcによって用いられるテーブルは異なり、例えば図8(b)で説明すると、Tk−Tcが14℃である場合には降温テーブル14が用いられ、Tk−Tcが2℃である場合には降温テーブル02が用いられる。
【0132】
このように、画像形成停止時のTk−Tcの値に応じて、テーブルDの21個のテーブルの中から最適な降温テーブルを選択することにより、精度よく感光ドラム1の温度を予測することができる。
【0133】
なお、本実施の形態においてはテーブルDとして21個の降温テーブルしか用意していないが、これに限定されるものではなく、感光ドラム1の温度を精度よく予測するのに必要な数の降温テーブルを用意すればよい。
【0134】
また、本実施の形態においては、感光ドラム1の温度を1℃単位で予測できれば精度として充分であること、及び感光ドラム1の温度は環境温度に対して最大でも20℃までしか上昇しないことから、テーブルDは21個のテーブルとして構成した。
【0135】
以上で説明した、テーブルCとテーブルDを用いることにより、画像形成時、画像形成停止時のいずれの場合においても感光ドラム1の温度を精度よく予測することができる。
なお、感光ドラム1の温度を温湿度センサで直接測定しない理由としては、温湿度セン
サを感光ドラム1の温度の近傍に持ってきたとしても、実際の感光体温度と温湿度センサの測定温度とで誤差が出てしまうからである。
【0136】
誤差が出る理由としては、感光体の昇温は感光体近傍の温度だけでなく、感光体が接触する帯電部材、クリーニング部材との摺擦による昇温も影響するためと思われる。したがって、本実施の形態では、感光ドラム1の温度を感光体回転時間、感光体停止時間により精度よく予測するようにしている。
【0137】
そして本実施の形態においては、VLダウンによる変動量ΔDは、感光ドラム1の予測温度Tと雰囲気環境の温度Tcの差、T−Tcに比例する。なお、ここでいう雰囲気環境の温度Tcは、Dmax制御を行なって基準の帯電電圧を決定した時の画像形成装置の環境温度である。この関係を示したのが図8(c)に示すテーブルEである。
【0138】
すなわち、本実施の形態においては、感光ドラム1の温度Tを予測することで、VLダウンによる変動量ΔDを計算し、その変動量を打ち消すように第1の補正量を算出することが可能である。すなわち、VLダウンによる変動量ΔDを補正する第1の補正量は、感光ドラム1の温度、及び感光ドラム1の雰囲気環境の温度、に基づく。
【0139】
例えば、T−Tcが4℃の場合には、テーブルEよりVLダウンによる変動量ΔDは+5Vとなるので、これを打ち消すように第1の補正量を定めればよい。ΔDが+5Vになった場合は、帯電電圧をそのままの値にすると、VLが絶対値で5V小さくなることにな
ってしまうので、を帯電電圧を絶対値で5V上げるような補正を行なう。なお、図8(c)はテーブルの形にはなっていないが、実際には、このグラフがテーブルの形としてテーブルEには記載されている。
【0140】
すなわち、VLダウンによるVLの変動量ΔDは、図8中テーブルEより感光ドラム1の雰囲気環境の温度Tcが低いほど増加する。また、画像形成時間t1が増加するほど感光体1の温度Tは上昇するので(図8中テーブルC)、VLダウンによるVLの変動量ΔDは増加する。また、画像形成停止時間が増加するほど感光体1の温度は低下するので(図8中テーブルD)、VLダウンによるVLの変動量ΔDは減少する(ただしΔD<0になることはない)。
【0141】
そして図2に示すように、VLダウンによるVLの変動量ΔDが増加すれば(図2中B方向)、それを打ち消すようにVDの絶対値を増加させるような第1の補正量を画像形成条件に加えてやればよい。
【0142】
また、VLダウンによるVLの変動量ΔDが減少すれば、それに伴ってVDの絶対値を減少させるような第1の補正量を画像形成条件に加えてやればよい。ここで、VDの値は、帯電装置に印加される帯電電圧の値の大きさと正の相関をもち、帯電電圧が大きくなればVDも大きくなる。
【0143】
すなわち、感光ドラム1の温度が同じであるならば感光ドラム1の雰囲気環境の温度Tcが低いほどVDの絶対値を増加させるように帯電電圧を補正する。また、画像形成時間t1が増加するほどVDの絶対値を増加させるように帯電電圧を補正する。また、画像形成停止時間t2が増加するほどVDの絶対値を減少させるように帯電電圧を補正する。
【0144】
なお、本実施の形態においては、VLダウンによる変動量ΔDを計算するためのテーブルとしてVLダウンテーブル28を用いたが、これに限定されるものではない。テーブルCに関しては、画像形成時間に対する感光ドラム1の温度を他の値にしてもよい。テーブルDに関しては、画像形成停止時間に対する感光ドラム1の温度を他の値にしてもよい。テーブルEに関しては、感光ドラム1の温度とVLダウンの関係性を表す限り、他の値にしてもよい。
【0145】
また、テーブルC、テーブルD、テーブルEをテーブルの形として記載するのではなく、感光ドラム1の温度やVLダウンの特性を表現できる限りは式の形として記載してもよい。また、本実施の形態では、感光体1の予測温度を、環境温度、画像形成時間、画像形成停止時間から求めた。しかしながら、感光体1の温度を精度よく直接測定できるようであるならば、感光体1の温度と、環境温度に応じて画像形成条件を変更するようにしてもよい。
【0146】
(VLアップによるVL変動の補正量(第2の補正量)の算出方法)
次にVLアップによるVL変動の補正量(第2の補正量)の算出方法について述べる。VLアップによるVL変動ΔUは、図1に示すように、記憶手段20の中に保存されているVLアップテーブル27を参照することで行われる。
【0147】
VLアップテーブル27は図7に示すように、テーブルAとテーブルBから成り、これらのテーブルに基づいて画像形成時間に対するVLアップによるVLの変動量ΔUの計算を行う。
【0148】
テーブルAは図7(a)に示すように、画像形成時間に対するVLの変動量を示したもので、テーブルBは図7(b)に示すように、画像形成開始時の条件(絶対湿度と画像形
成停止時間)に基づいて選択される係数が、3×3のマトリクスとして示されている。
【0149】
画像形成時間に対するVLアップによる変動量の計算は、テーブルAに、テーブルBから選択された係数を乗じることによって行われる。なお、図7(a)はテーブルの形にはなっていないが、実際には、このグラフがテーブルの形としてテーブルAには記載されている。
【0150】
テーブルAにテーブルBから選択された係数を乗じる理由は、VLの変動量が絶対湿度と画像形成停止時間に依存するためである。本実施の形態においては、絶対湿度が大きくなるほどVLの上昇量は小さくなり、絶対湿度がW≧2.5g/mの環境ではVLアップは全く起こらない。
【0151】
また、本実施の形態においては、先の画像形成が終了してから次の画像形成が開始されるまでの画像形成停止時間が短いほど画像形成中のVLの変動量ΔUは小さくなる。
【0152】
以上で説明したように、テーブルBには、絶対湿度の影響と画像形成停止時間の影響を反映する係数が与えられている。すなわち、テーブルBから選択された係数をテーブルAに乗じることによって、いかなる条件においても精度良くVLアップによる変動量を計算することができる。
【0153】
そして、このVLアップによるVLの変動量ΔUを打ち消すように、第2の補正量を算出すればよい。
【0154】
すなわち、VLアップによるVLの変動量ΔUは、テーブルBより雰囲気環境の絶対湿度Wが低いほど増加する。また、画像形成停止時間t2が増加するほど増加する。また、テーブルAより画像形成時間t1が増加するほどVLアップによるVLの変動量ΔUは増加する。そして図2に示すようにVLアップによるVLの変動量ΔUが増加すると(図2
中A方向)、Vcontが小さくなってしまう。
【0155】
以上より第2の補正量は、VLアップによるVLの変動量ΔUの増加を打ち消すような補正を行えばよい。すなわちΔUが増加した場合、VDの絶対値が減少するように帯電電圧の絶対値を減少させる補正を行えばよい。そうすることで、Vcontを元の大きさにすることができる(図2参照)。
【0156】
具体的には感光ドラム1の雰囲気環境の絶対湿度Wが低いほど帯電電圧の絶対値を減少させ、画像形成時間t1が増加するほど帯電電圧の絶対値を減少させ、画像形成停止時間t2が増加するほど帯電電圧の絶対値を減少させればよい。
【0157】
なお、本実施の形態においては、VLアップによる変動量ΔUを計算するためのテーブルとしてVLアップテーブル27を用いたが、これに限定されるものではない。テーブルAに関しては、画像形成時間に対するVLアップの変動量ΔUを他の値にしてもよい。
【0158】
同様に、テーブルBに関してテーブルの値を変えてもよいし、3×3のマトリクスではなくて別の大きさのマトリクスとして設けてもよい。また、テーブルA、テーブルBをテーブルの形として記載するのではなく、VLアップの特性を表現できる限りは数式として記載してもよい。
【0159】
以上の方法により、計算手段25は、VLアップテーブルを用いてVLアップ27による変動量を計算し、VLダウンテーブル28を用いてVLダウンによる変動量を計算することで第1、第2の補正量を算出することが可能である。そして、それらの補正量に基づ
いて帯電電圧VDの制御を行う。第1の補正量は、温度、画像形成時間(感光体1の回転時間)、画像形成停止時間(感光体1の回転停止時間)に応じて計算される。
【0160】
そして、第2の補正量は、絶対湿度、画像形成時間(感光体1の回転時間)、画像形成停止時間(感光体1の回転停止時間)に応じて計算される。したがって、第1の補正量と第2の補正量により画像形成条件を制御する場合、即ち、絶対湿度が低い範囲(第1の範囲)では、温度、絶対湿度、画像形成時間(感光体1の回転時間)、画像形成停止時間(感光体1の回転停止時間)により画像形成条件を制御する。
【0161】
なお、先に説明したように、絶対湿度が高い範囲(第2の範囲。本実施の形態ではW≧2.5g/m)では、VLアップの現象が起こらない。そのため、第2の補正量を計算する必要はない。したがって、絶対湿度が高い範囲では、温度、画像形成時間(感光体1の回転時間)、画像形成停止時間(感光体1の回転停止時間)により画像形成条件を制御する。
【0162】
また、絶対湿度が高い範囲では、VLアップの現象が起こらない。よって、絶対湿度以外の条件(温度、画像形成時間、画像形成停止時間)が同じであるならば、絶対湿度が高い場合の方が絶対湿度が低い場合の方よりも、帯電電圧又は現像電圧の絶対値が小さくなる。
【0163】
そして制御手段23は、これらの計算結果の情報に基づき現像装置5に帯電電圧制御のための情報を画像形成手段に送る。本実施の形態においては、現像コントラスト(Vcont)が一定になるように帯電電圧VDを制御している。
【0164】
(画像形成条件制御の具体的な流れ)
次に、図9のフローチャートを参照して、本実施の形態の画像形成条件制御の流れを説明する。
【0165】
画像形成開始が指示されると、画像形成時間t1が0として記憶手段20に保存され(S1)、タイマー24は1秒単位で時間をカウントし始める(S2)。その後、読み取り手段21によって記憶手段20より、環境温度、絶対湿度、画像形成停止時間が読み取られる(S3)。
【0166】
計算手段25は、上記で説明した方法により、画像形成時間、画像形成停止時間、絶対湿度からVLアップによる変動量ΔUを計算する(S4)。
【0167】
さらに計算手段25は、上記で説明した方法により、画像形成時間、画像形成停止時間、環境温度からVLアップによる変動量を計算するVLダウンによる変動量ΔDを計算する(S5)。
【0168】
計算手段25は、S4とS5において計算したVLアップによる変動量ΔUとVLダウンによる変動量ΔDから、VLの変動量をΔU+ΔDとして計算する。制御手段23はこの計算結果を基に、Vcontが一定になるように帯電装置2に印加する帯電電圧を制御する(S6)。
【0169】
CPU22は画像形成が終了するか否かを判断する。画像形成が続行される場合は(S7、No)、画像形成時間t1のカウントを1秒増やし(S8)、S4からS7のステップを画像形成が終了されるまで繰り返す。画像形成が終了される場合は(S7、Yes)、画像形成停止時の計算へと移行する。
【0170】
CPU22は画像形成終了時に、温湿度センサ18より入力された環境温度と絶対湿度を記憶手段20に保存する(S9)。
【0171】
そして画像形成時間t2が0として記憶手段20に保存され(S10)、タイマー24は1秒単位で時間をカウントし始める(S11)。その後、読み取り手段21によって記憶手段20より、環境温度が読み取られる(S12)。
【0172】
計算手段25は、上記で説明した方法により、画像形成停止時における感光ドラム1の温度を計算する(S13)。
【0173】
CPU22は画像形成が開始するか否かを判断する。画像形成が停止のままである場合は(S14、No)、画像形成時間t2のカウントを1秒増やし(S15)、S13からS14のステップを画像形成が開始されるまで繰り返し、画像形成停止中の感光ドラム1の温度の計算を続ける。画像形成が開始される場合は(S14、Yes)、S1からの画像形成時の計算へと移行する(S16)。
【0174】
なお、本実施の形態においては画像形成条件制御として帯電電圧を制御する構成としたが、現像電圧Vdevを補正して制御する構成であってもよい。現像電圧Vdevを制御する場合は、VLがアップする場合は、現像電圧の絶対値を増加させVcontを一定にするようにする。
【0175】
また、VLがダウンする場合は、現像電圧の絶対値を現象させVcontを一定にする様にする。さらには帯電電圧と現像電圧Vdevの両方を制御する構成であってもよい。
【0176】
次に本実施の形態によって得られる効果について、本実施の形態の画像形成条件制御を行った場合と、行わなかった場合(比較例)を比較して説明する。ここでは、現像電圧Vdevを制御する制御方法を採用するものとする。なお、従来例の画像形成装置は、上述の画像形成条件制御を行わない以外は、本実施の形態の画像形成装置100と同一構成であるものとする。
【0177】
図10(a)には、N/N(23℃/15%RH、絶対湿度8.87g/m)のもと、比較例、本実施の形態ともに、Dmax制御とDhalf制御を行った後、1000枚までの連続画像形成を行った場合の、現像電圧(Vdev)とVLの推移を示す。また、画像形成開始前の画像形成停止時間(t2)は5000秒であった。
【0178】
図10(b)にはそのときのハーフトーン濃度の推移を示している。図10(b)においてプリント物の色度を測定する方法は、転写材(製品名:カラーレーザーコピアペーパー81.4g/m キヤノン株式会社製)上に、トナーパッチを各色10段階の階調によって形成したものを測定した。
【0179】
具体的には、定着後の各トナーパッチを、GRETAGSpectrolino(グレタグマクベス社製)により測色することによって行った。図10(b)には、その一例として、マゼンタのハーフトーン(印字率50%)パッチの濃度推移の結果を示す。
【0180】
図10(a)より、本実施の形態における画像形成装置100は、N/N環境においては、1000枚通紙につきVLが28V低下している。このようにN/N環境では、VLアップによる変動は全く起こらずに、VLダウンによる変動のみが起きるために、画像形成枚数とともにVLが低下し続け、やがて飽和する特性を示したものと考えられる。
【0181】
比較例では、常にDmax制御によって決められた現像電圧(−250V)で印刷する
ために、画像形成枚数とともにVcontが上昇してしまい、その上昇量は1000枚通紙につき28Vとなっている。そのため比較例では図10(b)のように、画像濃度が画像形成枚数とともに上昇し、その上昇量は1000枚通紙につき0.154となっている。
【0182】
一方、本実施の形態を行った場合では、Dmax制御によって決められた現像電圧(−250V)から、VLの変動を計算して現像電圧を逐次変更して印刷するために、画像形成枚数に関わらずVcontを一定にすることができる。
【0183】
図10(a)に示すように、1000枚通紙につきVcontの変動は3Vに抑えられる。そのため本実施の形態では図10(b)のように、画像濃度が画像形成枚数に関わらず安定し、その濃度は0.410〜0.430までと、0.020の濃度変動となり、安定した濃度が得られることが確認された。
【0184】
なお、図10(b)ではマゼンタのハーフトーン(印字率50%)パッチの結果のみを示したが、本実施の形態を用いた場合には、マゼンタの他の階調のパッチ濃度や他色のパッチ濃度も安定することが確認された。また、連続印刷のみではなく、断続的に印刷がなされる場合においても、本実施の形態を用いた場合には濃度が安定することが確認された。
【0185】
図11(a)には、L/L(15℃/10%RH、絶対湿度1.06g/m)のもと、比較例、本実施の形態ともに、Dmax制御とDhalf制御を行った後、1000枚までの連続画像形成を行った場合の、現像電圧(Vdev)とVLの推移を示す。
【0186】
図11(b)には、そのときのハーフトーン濃度の推移を示している。プリント物の色度を測定する方法はN/N環境の図10(b)と同様である。図11(b)では、一例として、マゼンタのハーフトーン(印字率50%)パッチの濃度推移の結果を示している。
【0187】
図11(a)より、本実施の形態における画像形成装置100は、L/L環境においては、1000枚通紙につきVLが38V上昇している。このようにL/L環境では、感光ドラム1の昇温が起こるのでVLダウンも起きているはずではあるが、絶対湿度が低いためにVLアップによる変動量が非常に大きく、画像形成枚数とともにVLが上昇し続け、やがて飽和する特性を示したものと考えられる。
【0188】
比較例では、常にDmax制御によって決められた現像電圧(−250V)で印刷するために、画像形成枚数とともにVcontが低下してしまい、その低下量は1000枚通紙につき38Vとなっている。
【0189】
そのため比較例では、図11(b)のように、画像濃度が画像形成枚数とともに低下し、その低下量は1000枚通紙につき0.159となっている。
【0190】
一方、本実施の形態を行った場合では、Dmax制御によって決められた現像電圧(−250V)から、VLの変動を計算して現像電圧を逐次変更して印刷するために、画像形成枚数に関らずVcontを一定にすることができる。
【0191】
図11(a)に示すように、1000枚通紙につきVcontの変動は2Vに抑えられる。そのため本実施の形態では図11(b)のように、画像濃度が画像形成枚数に関らず安定し、その濃度は0.387〜0.420までと、0.033の濃度変動となり、安定した濃度が得られることが確認された。
【0192】
なお、図11(b)ではマゼンタのハーフトーン(印字率50%)パッチの結果のみを示したが、本実施の形態を用いた場合には、マゼンタの他の階調のパッチ濃度や他色のパッチ濃度も安定することが確認された。また、連続印刷のみではなく、断続的に印刷がなされる場合においても、本実施の形態を用いた場合には濃度が安定することが確認された。
【0193】
以上、本実施の形態の構成によれば、連続的または断続的に印刷される場合においても、感光ドラム1のVLの変動を求めて、その結果に基づいた補正量を加えることで、常に安定した濃度の画像が得られ高品質な画像を提供することができる。
【0194】
また、雰囲気環境(温度、絶対湿度)に依存するVLの変動の特性を精度よく予測することができるため、雰囲気環境の変動に応じて安定した濃度の画像を得ることができる。
【0195】
なお、本実施の形態においては、感光ドラム1の特性としてY、M、C、Kのステーション間の差がなかったため、全てのステーションにおいて同様に帯電電圧制御を行った。しかしながら、ステーション間において帯電電圧の制御方法を変えてもよい。
【0196】
また、本実施の形態においては、感光ドラム1の表面電位としてVLの変動結果に基づいて帯電電圧の制御を行ったが、ハーフトーン画像部の電位変動を予測した結果に基づいて帯電電圧の制御を行ってもよい。
【0197】
また、本実施の形態においては、1秒単位で帯電電圧の制御を行ったが、別の単位で帯電電圧の制御を行ってもよい。例えば、0.5秒単位で帯電電圧の制御を行ってもよいし、1ページ単位で帯電電圧の制御を行ってもよい。
【0198】
また、本実施の形態では、Vcontを一定にするための画像形成条件として帯電電圧の制御を行ったが、現像電圧Vdevの制御を行う構成であってもよい。
【0199】
つまり、帯電電圧VDを一定にしたまま、VLの変動を求め、現像電圧Vdevに補正量(第3、第4の補正量)を加えることによってVcontを一定にする構成であってもよい。
【0200】
具体的には、VLダウン及びVLアップに起因するVLの変動量を求めた上で、それらの変動を打ち消す補正量(VLダウンの補正量:第3の補正量、VLアップの補正量:第4の補正量とする)を現像電圧に加えることで画像形成条件制御を行うものとした。
【0201】
そのためには、現像電圧と予測されたVLの関係を示したテーブルを記憶手段20に保存しておき、VLが常に一定になるように現像電圧を制御すればよい。
【0202】
なお、第3の補正量の算出方法は上記で説明した第1の補正量の算出方法と何ら異なるものではないので、第1の補正量の算出方法の説明を以って第3の補正量の算出方法の説明は省略する。
【0203】
また、第4の補正量の算出方法は上記で説明した第2の補正量の算出方法と何ら異なるものではないので、第2の補正量の算出方法の説明を以って第4の補正量の算出方法の説明は省略する。
【0204】
また、VLの変動を予測した結果に基づいて、帯電電圧と現像電圧Vdevの両方の制御を行う構成であってもよい。また、VLの変動を予測した結果に基づいて、露光量を変えることによりVLの変動を補正するようにしてもよい。
【0205】
以上より、感光ドラム1の雰囲気環境の温度、絶対湿度、画像形成時間、画像形成停止時間に基づいてVLの変動を補正することで、適切な画像形成条件制御を行い、常に安定した濃度の画像を得ることが可能な画像形成装置を提供することが可能になる。
【0206】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態は、画像形成装置の置かれている温湿度環境が大きく変わった場合において画像形成条件を変更する制御を中止することを特徴とする。それ以外の点は上記第1の実施の形態と同じであるので、同一の部分に関しては説明を省略し、第1の実施の形態と異なる部分についてのみ説明を行う。
【0207】
第1の実施の形態では、環境温度Tc及び絶対湿度Wの測定を画像形成装置の電源投入時から画像形成を行なえるスタンバイ状態になるまでの間に測定し、記憶手段に記憶させている。そして、この温度、絶対湿度に応じて補正量を計算している。しかしながら、温度、絶対湿度を測定してから、次に温度、絶対湿度を測定するまでの間に画像形成装置が置かれている環境が急激に変化した場合、補正量の計算が適当でなくなる可能性がある。
【0208】
そこで、本実施の形態に係る画像形成装置では、温湿度センサ18によって測定される環境温度、絶対湿度の値が大きく変化した場合は、VLの変動による画像形成条件の補正の制御を中止している。
【0209】
このようにすることで、温湿度環境の急激な変化による画像形成条件が不適当になってしまうことを防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】本実施の形態における画像形成条件制御の制御構成を示すブロック図
【図2】感光体の表面電位の概念を示す図
【図3】画像形成時間と感光ドラムの表面電位の関係を示す図
【図4】本実施の形態に係る画像形成装置の概略構成図
【図5】本発明における感光ドラムの概略構成図
【図6】本発明における画像形成条件制御の概念図
【図7】本発明におけるVLアップテーブルの内容を示す図
【図8】本発明におけるVLダウンテーブルの内容を示す図
【図9】本発明に係る画像形成条件制御を表すフローチャート図
【図10】N/N環境における、画像形成枚数に対する感光ドラムの表面電位と、画像形成枚数に対する画像濃度を示す図
【図11】L/L環境における、画像形成枚数に対する感光ドラムの表面電位と、画像形成枚数に対する画像濃度を示す図
【符号の説明】
【0211】
20 記憶手段
21 読み取り手段
22 CPU
23 制御手段
24 タイマー
25 計算手段
26 書き込み手段
27 VLアップテーブル
28 VLダウンテーブル
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な感光体と、
帯電電圧を印加されて前記感光体の表面を帯電させる帯電装置と、
帯電の後の前記感光体の表面を露光して静電潜像を形成する露光装置と、
現像電圧を印加され、前記静電潜像に現像剤を付着させて現像剤像として現像する現像装置と、
前記感光体が回転をしている時間である感光体回転時間に関する情報と、前記感光体が停止している時間である感光体停止時間に関する情報とを計測する時間計測装置と、
温度に関する情報及び絶対湿度に関する情報を計測する環境計測装置と、
絶対湿度が低い範囲を第1の範囲、絶対湿度が高い範囲を第2の範囲とした時、
絶対湿度が第1の範囲の場合は、前記環境計測装置により計測された温度に関する情報及び絶対湿度に関する情報と、前記時間計測装置により計測された感光体回転時間に関する情報及び感光体停止時間に関する情報と、に応じて画像形成条件を制御し、
絶対湿度が第2の範囲の場合は、前記環境計測装置により計測された絶対湿度に関する情報を用いずに、前記環境計測装置により計測された温度に関する情報と、前記時間計測装置により計測された感光体回転時間に関する情報及び感光体停止時間に関する情報に応じて画像形成条件を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記環境計測装置により計測された温度に関する情報は、前記画像形成装置の電源が投入されてからスタンバイ状態になるまでの温度であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記環境計測装置により計測された絶対湿度に関する情報は、前記画像形成装置の電源が投入されてからスタンバイ状態になるまでの絶対湿度であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記時間計測装置により計測された前記感光体回転時間に関する情報は、画像形成開始から前記制御装置による画像形成条件の制御実行までの感光体回転時間であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記時間計測装置により計測された前記感光体停止時間に関する情報は、前の画像形成終了の時から次の画像形成開始までの感光体停止時間であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成条件は、
前記帯電電圧、前記現像電圧の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
絶対湿度が前記第1の範囲の時よりも前記第2の範囲の時の方が、前記制御装置により帯電電圧の絶対値又は現像電圧の絶対値が、小さくなるように制御されることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
感光体と、
帯電電圧を印加されて前記感光体の表面を帯電させる帯電装置と、
前記帯電の後の前記感光体の表面を露光して静電潜像を形成する露光装置と、
現像電圧を印加され、前記静電潜像に現像剤を付着させて現像剤像として現像する現像装置と、
温度に関する情報を計測する環境計測装置と、
前記感光体の温度に関する情報と、環境の温度に関する情報とに応じて画像形成条件を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記画像形成条件は、
前記帯電電圧、前記現像電圧の少なくとも一方であることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−9095(P2009−9095A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95957(P2008−95957)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】