説明

画像形成装置

【課題】コストをかけることなく、高湿環境下において転写不良が発生するのを抑制すること。
【解決手段】像担持体の表面に形成されたトナー像を転写材に転写するように構成された画像形成装置1であって、像担持体に対して圧接状態となることによって像担持体の表面に形成されたトナー像を転写材に転写する転写部材45と、 転写部材45にバイアス電圧VBを印加する二次転写高圧電源73と、二次転写高圧電源73によるバイアス電圧VBの下限値を規制するように制御し、且つバイアス電圧VBが下限値より高い電圧の場合にはバイアス電圧VBの印加によって流れる電流が定電流となるように制御する転写バイアス制御手段92とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体や中間転写体などの像担持体の表面に形成されたトナー像を記録紙などの転写材に転写するように構成された画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真プロセスを有した複写機、プリンタ、ファクシミリ、複合機またはMFP(Multi Function Peripherals)と呼称される多機能機などの画像形成装置が用いられる。画像形成装置では、感光体ドラム上に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成し、そのトナー像を中間転写ベルトに一次転写し、それをさらに記録紙に二次転写し、これを定着することにより画像形成を行う。トナー像を中間転写ベルトから記録紙へ二次転写するために、像担持体である中間転写ベルトに対して圧接状態となる転写ローラが設けられている。
【0003】
従来、このような画像形成装置において、像担持体上に形成されたトナー像を用紙に転写するために、転写ローラに高電圧を印加するとともに、定電流制御を行って適当な電流を転写ローラに供給している。しかし、用紙の抵抗値が予定された範囲内であれば、画像性能を維持することができるが、用紙が高湿環境にさらされていた場合には、用紙の抵抗が低下するので、用紙を伝って電流が漏れることによって本来の転写電流が減少するおそれがある。
【0004】
例えば、通常、用紙の搬送路には用紙を案内する金属製のガイド部材が設けられている。ガイド部材は、通常、画像形成装置の本体フレームに対して電気的に接続され、接地電位となっている。そのため、転写部を通過した用紙がガイド部材に接触することによって、転写ローラ、用紙、およびガイド部材を経由する電流路が形成され、ここに漏れ電流が流れる。
【0005】
そうした場合に、転写ローラから中間転写ベルトに至る本来の転写電流が減少するため、転写材不良が生じ、用紙上に形成された画像にかすれなどが発生することがある。
【0006】
従来において、このような高湿環境下での転写電流の漏洩による転写不良を防ぐため、用紙が接触する可能性のあるガイド部材を本体フレームから電気的に浮かして取り付けたり、ガイド部材の表面にコーティングを行って絶縁性を与えたり、また、導電性のない合成樹脂で製作することが行われている。
【0007】
一方、安定した転写を行うために感光体上のトナー像を定電圧制御で転写する際に、感光体と転写手段との間に流れる転写電流を所定の値以下に制限する電流制御方法が提案されている(特許文献1)。
【0008】
また、像担持体上のトナー像をATVC制御後に転写電圧と上限電流を制御し、転写材のサイズ情報に基づいて上限電流を制御することによってトナーの飛び散りを防止する方法が提案されている(特許文献2)。
【0009】
また、定電流制御において高抵抗紙を使用した場合には、電圧が極めて高くなるため、通紙中に転写手段が感光体に直接接触する部分において過剰の電流が流れ、地カブリが発生する。この地カブリを防止するための方法として、定電流制御の際に転写電圧の上限値を規制する方法が提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平11−272095
【特許文献2】特開平11−174871
【特許文献3】特開2002−23527
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、用紙の搬送を案内するガイド板を合成樹脂で形成したり、絶縁性の高いコーティングを行ったり、ガイド部材を電気的に浮かして取り付ける構成は、高湿環境にさらされた記録紙(調湿紙)のみに対応するための対策としてコスト高となってしまう。特に、ガイド部材を電気的に浮かして取り付けた場合には、さらに高抵抗を介して接地することとなり、大きなコストを要する。
【0011】
また、ガイド板を合成樹脂で形成した場合には寸法精度を出すのが容易ではなく、またガイド部材が熱で反ってしまうという問題もある。
【0012】
本発明は、上に述べた問題に鑑みなされたもので、コストをかけることなく、高湿環境下において転写不良が発生するのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る画像形成装置は、像担持体の表面に形成されたトナー像を転写材に転写するように構成された画像形成装置であって、前記像担持体に対して圧接状態となることによって前記像担持体の表面に形成された前記トナー像を前記転写材に転写する転写部材と、 前記転写部材にバイアス電圧を印加する転写バイアス印加手段と、前記転写バイアス印加手段によるバイアス電圧の下限値を規制するように制御し、且つバイアス電圧が前記下限値より高い電圧の場合にはバイアス電圧の印加によって流れる電流が定電流となるように制御する転写バイアス制御手段と、を有する。
【0014】
また、像担持体の表面に形成されたトナー像を転写材に転写するように構成された画像形成装置であって、前記像担持体に対して圧接状態となることによって前記像担持体の表面に形成された前記トナー像を前記転写材に転写する転写部材と、 前記転写部材にバイアス電圧を印加する転写バイアス印加手段と、前記転写バイアス印加手段によるバイアス電圧が定電圧となるように制御する定電圧制御手段と、前記転写バイアス印加手段によるバイアス電圧の印加によって流れる電流が定電流となるように制御する定電流制御手段と、前記転写部材に印加されるバイアス電圧の値を検出する検出手段と、前記転写バイアス印加手段によるバイアス電圧の下限値を規制するように制御し、且つ前記検出手段によって検出されたバイアス電圧の値が前記下限値に低下した場合に、前記転写バイアス印加手段におけるバイアス電圧を前記定電流制御手段による制御から前記定電圧制御手段による制御に切り換えるように制御する転写バイアス制御手段と、を有する。
【0015】
好ましくは、前記転写バイアス制御手段は、前記下限値を、前記転写材のサイズまたは種類によって定められた値に変更する。
【0016】
好ましくは、前記転写バイアス制御手段は、前記下限値を、周囲の温度および湿度の少なくとも一方の環境に応じて値に変更する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、コストをかけることなく、高湿環境下において転写不良が発生するのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
〔画像形成装置の全体の説明〕
図1は本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の概略の内部構成を示す図、図2は画像形成装置1の主要な制御系を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、画像形成装置1は、タンデム型のプリントエンジンを内蔵した電子写真方式のフルカラー複写機である。このような画像形成装置1は、複合機またはMFP(Multi Function Peripherals)と呼称されることもある。
【0020】
図1において、画像形成装置1は、画像読取部10、画像形成部20、用紙供給部60、および制御部100などを有する。
【0021】
画像読取部10は、原稿ガラス台の上に載置された原稿の画像を、スキャナを移動させて読取る。すなわち、スキャナに設置された露光ランプで原稿を照射し、その反射光による像を、レッド(R) 、グリーン(G) 、ブルー(B)の3原色に対応したCCDイメージセンサで読み取る。これにより、原稿画像に対応したR、G、Bの各画像データが得られる。
【0022】
画像読取部10で得られた画像データは、制御部100において各種の処理が施され、さらにイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各再現色の画像データに変換される。変換された画像データは、制御部100に設けられた画像メモリに各再現色ごとに格納される。格納された画像データは、位置ずれ補正のために必要な画像補正が施される。その後、用紙供給部60から供給される用紙YSの搬送状態に同期して、画像メモリから画像データが1走査ラインごとに読み出され、感光体ドラムを露光するレーザダイオード27の駆動信号として出力される。
【0023】
なお、用紙YSとして、紙、プラスチックシート、その他の記録媒体を用いることが可能である。つまり、用紙YSは、記録紙、記録材、転写材、記録媒体、または転写媒体などと言い換えることができる。
【0024】
画像形成部20は、電子写真方式によって用紙YS上に画像を形成するものであって、イメージングユニットU、中間転写部40、および定着部50などが設けられている。
【0025】
イメージングユニットUとして、Y、M、C、Kの4色のイメージングユニットUY、UM、UC、UKが設けられ、この順で中間転写ベルト41に沿って配置されている。各イメージングユニットUは、画像プロセス部GPと露光走査部RSとから構成されている。各画像プロセス部GPには、感光体ドラム21、帯電チャージャ22、静電潜像を各色のトナーで現像してトナー像を形成する現像部24、トナー像を中間転写ベルト41に転写(一次転写)するための転写ローラ25、および感光体ドラム21の表面をクリーニングするクリーナ26などが設けられる。各露光走査部RSには、感光体ドラム21の表面を露光して静電潜像を形成する露光部23が設けられる。露光部23には、感光体ドラム21の表面を露光走査するためのレーザダイオード27が設けられる。
【0026】
各感光体ドラム21は、露光される前にクリーナ26で残留したトナーが除去され、図示しないイレーサランプに照射されて除電される。除電された感光体ドラム21は、帯電チャージャ22によって一様に帯電される。このように一様に帯電した感光体ドラム21は、レーザダイオード27の光による露光により、静電潜像が形成される。
【0027】
各静電潜像は、それぞれ各色の現像器24により現像される。これにより、感光体ドラム21の表面にY、M、C、Kのトナー像が形成される。
【0028】
これらのイメージングユニットUで形成された各色のトナー像(トナー画像)は、転写ローラ25に電圧が印加されることにより、走行する中間転写ベルト41上の同じ位置に重ね合わされて転写され、合成される。イメージングユニットUの配置は適時変更してもよい。
【0029】
中間転写部40には、中間転写ベルト41を走行可能に支持する駆動ローラ42、従動ローラ43が設けられる。中間転写ベルト41の張りは、従動ローラ43に設けられたテンションばね44の張力によって調整することができる。駆動ローラ42に対向する位置に、転写ローラ45が設けられる。転写ローラ45は、中間転写ベルト41に対して接離可能に設けられており、中間転写ベルト41に圧接することによって転写ニップ部を形成する。また、転写ローラ45には、転写のためのバイアス電圧VBが印加される。
【0030】
転写ニップ部には、中間転写ベルト41の走行と同期して用紙YSが給送されてきており、転写ニップ部において、中間転写ベルト41上に形成されたトナー像が用紙YS上に転写(二次転写)される。二次転写された後に中間転写ベルト41上に残留したトナーは、クリーニング部30によって除去される。
【0031】
クリーニング部30には、クリーナ31、スクリュー32、ジョイント33、廃トナーボックス34などが設けられる。クリーナ31で掻き落とされたトナーは、スクリュー32によって搬送され、ジョイント33を介して廃トナーボックス34内に回収される。
【0032】
定着部50には、定着ローラ51、加熱ローラ52、および用紙搬送ガイド82などが設けられる。二次転写によってトナー像が形成された用紙YSは、用紙搬送ガイド82に案内されて搬送路HR上を搬送され、定着ローラ51と加熱ローラ52との間を通過することによって定着される。定着された用紙YSは、搬送路HR上を搬送されてトレイ65上に排出される。
【0033】
定着部50には、定着された用紙YS上に形成された画像の濃度を検知するための図示しない濃度センサ(IDCセンサ)が設けられている。濃度センサとして、光学式反射型センサがしばしば用いられる。濃度センサによって、画像安定化制御(IDC)のために用紙YS上に形成されたパッチの濃度が検知される。例えば、Y、M、C、Kそれぞれ4色のべた付着量が測定される。
【0034】
用紙給紙部60には、用紙YSを収納しておくための給紙カセット61、および給紙カセット61から用紙YSを送り出すための給紙ローラ62などが設けられている。給紙カセット61には、種々のサイズの用紙YSが収容されており、給紙ローラ62などからなる給紙搬送手段によって所定のタイミングで搬送路HRに送り出される。搬送路HRの途中には、中間ローラ63およびレジストローラ64などが設けられ、これらによって用紙YSは二次転写位置に搬送される。また、レジストローラ64の手前には、用紙YSの先端部分を検出するための用紙検出センサSEが設けられている。用紙YSが検出されると、制御部100は、二次転写位置に送り出すタイミンを取ってレジストローラ64の駆動部に駆動信号を送る。
【0035】
図2において、制御部100は、CPU、半導体メモリおよび磁気記憶装置などからなる記憶部、制御用回路、種々のインタフェースなどからなる通信部などから構成されている。画像読取部10で読み取った画像データ、または図示しないパーソナルコンピュータなどから出力された画像データに対して画像処理を行い、また、画像形成装置1の各部の動作を制御する。
【0036】
図2に示すように、画像形成装置1には、帯電チャージャ22に帯電バイアス電圧Vgを印加する帯電グリッド高圧電源71、現像部24の現像ローラに現像バイアス電圧Vdcを印加する現像バイアス高圧電源72、および、転写ローラ45にバイアス電圧VBを印加する二次転写高圧電源73が設けられている。また、上に述べた濃度センサ54の他に、温湿度センサ55およびPH温度センサ56などが設けられている。
【0037】
制御部100は、これら、帯電グリッド高圧電源71、現像バイアス高圧電源72、二次転写高圧電源73に対し、それぞれ適切な電圧または電流を出力するように制御する。つまり、制御部100は、後述する転写バイアス制御部92を含む。また、露光部23のレーザダイオード27に対し、駆動信号を出力する。この駆動信号は、レーザダイオード27の発光強度を調整するために種々の方式によって変調されている。
【0038】
制御部100は、ユーザによる操作部11からの入力信号を受け付け、また操作部11に種々の信号を出力する。なお、操作部11には、画像形成装置1の動作の切り替えのための押しボタンなどからなる切替部、画像やメッセージを表示するための表示パネルまたはタッチパネルなどが設けられている。
【0039】
また、制御部100は、上に述べた濃度センサ54、温湿度センサ55、およびPH温度センサ56などからの検知信号を入力し、種々の制御のために用いる。
〔画像安定化処理〕
一般に、画像形成装置においては、環境の変化、使用による経時変化などによって画質が変動する。このような変動に対して、常に適切な画質の画像が形成されるよう、画像安定化制御(画像安定化処理)が行われる。画像安定化制御においては、テスト用の画像のパッチを形成し、その画像の濃度を濃度センサによって検知する(測定する)。濃度センサにより検知された検知信号に基づいて、画像が狙いの画質範囲内にあるかどうかを判断する。画像が狙いの画質範囲内にない場合には、その検知信号に基づいて、各画像形成条件を補正しまたは調整する。
【0040】
画像安定化制御は、例えば、画像形成装置1の電源オン時、省エネルギーモードからの復帰時、前回の画像安定化処理を実施してからの装置内の温度変化や湿度変化が各閾値を超えたとき、または、累計印刷枚数が閾値を超えたときに行われる。
〔二次転写部の詳しい説明〕
図3は画像形成装置1の二次転写部を拡大して示す図である。
【0041】
図3において、中間転写ベルト41の表面に形成されたフルカラーのトナー像は、中間転写ベルト41の回転(走行)によって二次転写部まで搬送される。二次転写部において、用紙YSに二次転写が行われる。トナー像が二次転写された用紙YSは、用紙搬送ガイド82および定着突入ガイド81に案内されて定着部50に送られる。
【0042】
定着突入ガイド81は、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム合金板などの金属板からなり、画像形成装置1の本体フレームに対し電気的に接続された状態つまり接地状態で取り付けられている。
【0043】
用紙搬送ガイド82は、絶縁性の合成樹脂からなっているが、しかし、導電性の合成樹脂または金属板などを用いて構成し、かつ接地電位となるように接続されたものでもよい。
【0044】
中間転写ベルト41は、例えばポリカーボネイト、PPS、またはフッ素樹脂を含有した樹脂を用いて製作される。
【0045】
転写ローラ45は、金属製のシャフトの表面に電子導電性のエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM発砲ゴム)などを被覆して形成される。また、転写ローラ45の表面の材質として、カーボン分散タイプの電子導電性や環境依存性の大きいイオン導電性のニトリル−ブタジエンゴム(NBR)などでもよい。なお、イオン導電性を有する転写ローラ45の表面の材料として、NBRに限定されず、ウレタンゴム、ヒドリンゴムなどでもよい。
【0046】
二次転写高圧電源73は、転写ローラ45にバイアス電圧VBを印加するものであり、本発明における転写バイアス印加手段に相当する。
【0047】
二次転写高圧電源73には、定電圧回路96および定電流回路97が設けられる。定電圧回路96は、転写ローラ45に対して印加されるバイアス電圧VBの下限値が維持されるように動作する。定電流回路97は、転写ローラ45へのバイアス電圧の印加によって流れる電流が定電流となるように動作する。
【0048】
二次転写高圧電源73は、定電圧回路96および定電流回路97の動作によって、転写ローラ45に印加するバイアス電圧VBが、バイアス電圧VBにより流れる電流が定電流となるように、かつバイアス電圧VBの下限値が規制されるように、機能する。なお、バイアス電圧VBが下限値となった場合には、定電流制御は行われず、転写ローラ45の回路の抵抗値に応じた電流が流れることとなる。
【0049】
なお、バイアス電圧VBの下限値、定電流の値は、転写バイアス制御部92からの設定によって変更することが可能である。定電圧回路96および定電流回路97は、互いに独立した回路として設けてもよく、また独立した回路ではなく共通の回路の一部分として設けてもよい。
【0050】
転写バイアス制御部92は、二次転写高圧電源73によるバイアス電圧VBの下限値を規制するように制御し、且つバイアス電圧VBが下限値より高い電圧の場合にはバイアス電圧VBの印加によって流れる電流が定電流となるように制御する。
【0051】
転写バイアス制御部92には、定電圧制御部93、定電流制御部94、検出部95などが設けられる。
【0052】
定電圧制御部93は、二次転写高圧電源73の出力するバイアス電圧VBが定電圧となるように制御する。
【0053】
定電流制御部94は、二次転写高圧電源73の出力するバイアス電圧VBの印加によって流れる電流が定電流となるように制御する。
【0054】
検出部95は、転写ローラ45に印加されるバイアス電圧VBの値を検出する。
【0055】
したがって、例えば、転写バイアス制御部92は、二次転写高圧電源73によるバイアス電圧VBの下限値を規制するように制御し、且つ検出部95によって検出されたバイアス電圧VBの値が下限値に低下した場合に、二次転写高圧電源73の出力するバイアス電圧VBが定電流制御部94による制御から定電圧制御部93による制御に切り替わるように、または定電流回路97の動作から定電圧回路96の動作に切り替わるように制御する。
【0056】
なお、これら定電流制御部94、定電圧制御部93、定電流回路97、定電圧回路96の構成、機能、動作、またはそれらの分担については、上に述べた例に限ることなく、種々変更して実施することができる。
〔二次転写部の動作の説明〕
次に、二次転写高圧電源73および転写バイアス制御部92の動作について説明する。
【0057】
図4はHH環境における開封紙の転写V−I特性を示す図、図5はHH環境における調湿紙の転写V−I特性を示す図、図6は本実施形態におけるHH環境における調湿紙の転写V−I特性を示す図、図7は転写の際の電流値を比較して示す図である。
【0058】
なお、以下において、HH環境とは、高温高湿の環境状態(例えば30℃、湿度85%)をいう。また、HN環境、NH環境、NN環境とは、それぞれ、30℃,65%、23℃,85%、23℃,65%の環境をいう。
【0059】
図4において、HH環境の開封紙とは、HH環境において包装袋から開封されたばかりの用紙YSのことである。
【0060】
図4に示すように、普通紙を転写するためのバイアス電圧VBは、20μA程度の定電流を流すように制御される。このときのバイアス電圧VBの値は、図4から約1500Vである。HH環境の開封紙は、用紙YSの抵抗が高いため、用紙YSが定着突入ガイド81に接触した後でも転写電流の漏れは極めて少なく、V−I特性のカーブは、定着突入ガイド81に接触する前後においてほとんど変化がない。
【0061】
図5において、HH環境の調湿紙とは、高温高湿の環境にさらされた用紙YSのことである。
【0062】
図5に示すように、HH環境の調湿紙の場合には、用紙YSが定着突入ガイド81に接触する前のバイアス電圧VBの値が約1500Vであるのに対し、接触した後は約300Vまで低下してしまう。これは、HH環境の調湿紙では、湿気のために用紙YSの抵抗が大きく低下しており、そのため、用紙YSが定着突入ガイド81に接触することにより二次転写高圧電源73の負荷の抵抗値(インピーダンス)が大幅に低下し、漏れ電流が生じるためである。
【0063】
さて、本実施形態の二次転写高圧電源73および転写バイアス制御部92による場合には、次のような制御が行われる。
【0064】
すなわち、図6に示すように、転写バイアス制御部92は、普通紙を転写するための電流値として、バイアス電圧VBの印加によって流れる電流値が20μAとなるよう制御する。また、バイアス電圧VBが下限値である750V以下とならないように制御する。検出部95は、転写バイアス印加部91によるバイアス電圧VBの値を常時監視している。
【0065】
したがって、二次転写中の用紙YSの先端が定着突入ガイド81に接触すると、その瞬間に、バイアス電圧VBは1500Vから下限値である750Vに低下する。そこで、それまでの定電流制御から定電圧制御に切り替えられる。
【0066】
つまり、図6に示すように、転写時において20μAの転写電流が流れるように定電流制御されているときに、用紙YSが定着突入ガイド81に突入すると、バイアス電圧VBが下限値である750Vに低下し、これによってバイアス電圧VBが750Vの定電圧制御に切り替えられ、これにより転写電流が50μAに増大することとなる。
【0067】
そのため、転写ローラ45から用紙YSおよび定着突入ガイド81を介して流れる漏れ電流が発生しても、転写電流の増大によって、転写ローラ45から中間転写ベルト41に至る本来の転写電流が減少することが防止または軽減される。
【0068】
これによって、転写に必要な電流値が確保され、高湿環境下において転写不良が発生することが抑制される。しかも、定電流制御と定電圧制御とを切り替えるのみであるので、コストをかけることがなく、低コストで実施することができる。
【0069】
図7に示すように、定電流制御のみの場合には、HH環境の開封紙は抵抗が高いため漏れ電流はなく、実際の転写電流は20μAとなる。また、HH環境の調湿紙の場合には、定着突入ガイド81に接触することにより15μAの漏れ電流が流れるので、実際の転写電流は5μAに低下してしまい、定着不良が発生してしまう。
【0070】
しかし、本実施形態の制御(電圧下限値制限定電流制御)を行うことによって、HH環境の調湿紙が定着突入ガイド81に接触することにより35μAの漏れ電流が流れても、二次転写高圧電源73から供給される電流は50μAであるので、実際の転写電流は15μAが確保され、画像のかすれなどの転写不良を抑制することができる。このように、漏れ電流が生じても、実際の転写電流が確保される。
〔他の実施形態〕
次に、本発明に係る他の実施形態について説明する。
【0071】
図8はバイアス電圧VBの下限値および定電流値を変更したHH環境における調湿紙の転写V−I特性を示す図である。
【0072】
図8に示す例では、転写バイアス制御部92は、普通紙を転写するための電流値として、バイアス電圧VBの印加によって流れる電流値が25μAとなるように制御し、かつ、バイアス電圧VBの下限値が850Vとなるように制御する。
【0073】
このように、バイアス電圧VBの下限値および定電流制御の電流値を変更することが可能である。このような変更および変更後の値は、用紙YSのサイズ、種類、用紙YSに転写された画像のBW比、環境温度、環境湿度などに応じて決めることができる。
【0074】
例えば、用紙YSのサイズとして、A4、A3、B4、B5、またはハガキなど様々なサイズによって変更することが可能である。また、用紙YSの種類として、紙、ラベル紙、またはOHPなど様々な種類によって変更することが可能である。
【0075】
したがって、用紙YSのサイズや種類、画像のBW比と、バイアス電圧VBの下限値および電流値との対応関係を示した制御テーブルを転写バイアス制御部92に予め格納しておき、用紙YSのサイズや種類などによってバイアス電圧VBの下限値、および定電流制御の電流値を設定するようにしてもよい。
【0076】
例えば、用紙YSのサイズがA4の場合には、バイアス電圧VBの下限値を600Vに設定する。また、用紙YSのサイズがA3の場合には、バイアス電圧VBの下限値を800Vに設定する。つまり、用紙YSのサイズが大きくなると転写に必要な電流が増えるので、バイアス電圧VBの下限値を大きくすればよい。
【0077】
さらに、画像形成装置1が設置されている周囲の温度および湿度などの環境に応じて、バイアス電圧VBの下限値を変更してもよい。例えば、制御部100で監視している温湿度センサ55によって検出される温度および湿度に基づいてバイアス電圧VBの下限値を変更してもよい。
【0078】
また、例えば、HH環境ではバイアス電圧VBの下限値を1200Vに設定する。NH環境とHN環境ではバイアス電圧VBの下限値を1000Vに設定する。NN環境ではバイアス電圧VBの下限値を750Vに設定する。このように、環境条件に応じてバイアス電圧VBの下限値を変更することも可能である。また、バイアス電圧VBの下限値の範囲は、例えば500〜1000Vの間で変更するようにしてもよい。
【0079】
さらに、その他の例として、用紙YSの抵抗値が想定の範囲内に収まる場合には、定電圧制御によって、画像パターン(印字率)による影響を抑制し、良好な転写性能を維持することが可能である。また、用紙YSの抵抗が想定範囲より低い場合には、定電圧制御と電流の上限値を規制する電流上限値制限制御によって、過剰な転写電流を抑えてトナーの飛び散りやにじみを抑えることができる。また、用紙YSの抵抗が想定範囲より高い場合には、本実施形態のバイアス電圧VBの下限値を規制する定電圧制御と、低電流制御における電流の上限値と下限値との両方を規制する上下限電流制御とによって、転写電流の漏れによる画像のかすれを抑制することができる。
【0080】
本実施形態では、中間転写ベルト41の表面に形成されたトナー像を用紙YSに転写するように構成された二次転写部を例に説明したが、中間転写ベルト41ではなくその他の像担持体から転写材に転写するように構成された転写部に適用することも可能である。
【0081】
その他、中間転写ベルト41、駆動ローラ42、転写ローラ45、定着部40、二次転写高圧電源73、定着突入ガイド81、用紙搬送ガイド82、転写バイアス制御部92、および画像形成装置1の全体または各部の構成、構造、回路、形状、寸法、個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略の内部構成を示す図である。
【図2】画像形成装置の主要な制御系を示すブロック図である。
【図3】画像形成装置の二次転写部を拡大して示す図である。
【図4】HH環境における開封紙の転写V−I特性を示す図である。
【図5】HH環境における調湿紙の転写V−I特性を示す図である。
【図6】本実施形態におけるHH環境における調湿紙の転写V−I特性を示す図である。
【図7】転写の際の電流値を比較して示す図である。
【図8】バイアス電圧の下限値および定電流値を変更したHH環境における調湿紙の転写V−I特性を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1 画像形成装置
10 画像読取部
20 画像形成部
21 感光体ドラム(像担持体)
40 中間転写部
41 中間転写ベルト(像担持体)
42 駆動ローラ
45 転写ローラ(転写部材)
50 定着部
51 定着ローラ
52 加熱ローラ
60 用紙供給部
73 二次転写高圧電源(転写バイアス印加手段)
81 定着突入ガイド
82 用紙搬送ガイド
92 転写バイアス制御部(転写バイアス制御手段)
93 定電圧制御部(定電圧制御手段)
94 定電流制御部(定電流制御手段)
95 検出部(検出手段)
100 制御部(転写バイアス制御手段)
HR 搬送路
VB バイアス電圧
YS 用紙(転写材、記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体の表面に形成されたトナー像を転写材に転写するように構成された画像形成装置であって、
前記像担持体に対して圧接状態となることによって前記像担持体の表面に形成された前記トナー像を前記転写材に転写する転写部材と、
前記転写部材にバイアス電圧を印加する転写バイアス印加手段と、
前記転写バイアス印加手段によるバイアス電圧の下限値を規制するように制御し、且つバイアス電圧が前記下限値より高い電圧の場合にはバイアス電圧の印加によって流れる電流が定電流となるように制御する転写バイアス制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
像担持体の表面に形成されたトナー像を転写材に転写するように構成された画像形成装置であって、
前記像担持体に対して圧接状態となることによって前記像担持体の表面に形成された前記トナー像を前記転写材に転写する転写部材と、
前記転写部材にバイアス電圧を印加する転写バイアス印加手段と、
前記転写バイアス印加手段によるバイアス電圧が定電圧となるように制御する定電圧制御手段と、
前記転写バイアス印加手段によるバイアス電圧の印加によって流れる電流が定電流となるように制御する定電流制御手段と、
前記転写部材に印加されるバイアス電圧の値を検出する検出手段と、
前記転写バイアス印加手段によるバイアス電圧の下限値を規制するように制御し、且つ前記検出手段によって検出されたバイアス電圧の値が前記下限値に低下した場合に、前記転写バイアス印加手段におけるバイアス電圧を前記定電流制御手段による制御から前記定電圧制御手段による制御に切り換えるように制御する転写バイアス制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記転写バイアス制御手段は、前記下限値を、前記転写材のサイズまたは種類によって定められた値に変更する、
請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写バイアス制御手段は、前記下限値を、周囲の温度および湿度の少なくとも一方の環境に応じた値に変更する、
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記転写材の搬送を案内するガイド部材が設けられており、
前記ガイド部材は、接地電位に接続されている、
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−134184(P2010−134184A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309863(P2008−309863)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】