説明

画像形成装置

【課題】入力したプライベートプリントデータを記憶部に確実に記憶することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】ネットワーク4に接続された外部機器3から入力されたプライベートプリントデータを格納する記憶部21と、所定の入力操作がされたときに前記プライベートプリントデータを記憶部21から読み出して印刷するプライベートプリント部22を備えている画像形成装置2であって、要求されたプライベートプリントのデータ容量が記憶部21の残容量より多いときに、記憶部21に格納された特定のプライベートプリントデータを退避させた後に要求されたプライベートプリントデータを格納する記憶容量確保部23を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ネットワークに接続された外部機器から入力されたプライベートプリントデータを格納する記憶部と、所定の入力操作がされたときに前記プライベートプリントデータを前記記憶部から読み出して印刷するプライベートプリント部を備えている画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィス等には、複写機、プリンタ、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置が設置され、クライアントであるコンピュータとネットワーク接続されていることが多い。この場合、通常、各コンピュータは、印刷された用紙を出力する画像形成装置と離れて設置されている。
【0003】
このようなシステムで、各コンピュータから秘密性の高い文書や画像等を印刷すると、印刷を要求した本人が用紙出力時に画像形成装置の前にいない場合、画像形成装置から出力された当該文書や画像等を第三者に知得される虞がある。
【0004】
そこで、このようなシステムでは、印刷の要求者が画像形成装置の近傍に存在している場合を条件に印刷するプライベートプリント機能を備えた画像形成装置を採用し、各コンピュータにもプライベートプリント機能に対応したプリンタドライバがインストールされている。
【0005】
以下、プライベートプリント機能の一例について詳述する。プライベートプリント機能を使用して秘密性の高い文書や画像等のデータの印刷を行なう場合、例えば、ユーザは、コンピュータ上で当該データを作成し、パスワード及び印刷のジョブ名をコンピュータに入力する。
【0006】
コンピュータは、当該データ、パスワード、及びジョブ名を画像形成装置に送信する。画像形成装置は、送信されてきた当該データ、パスワード、及びジョブ名をハードディスク等の記憶部に格納する。その後、ユーザは、画像形成装置の前まで行き、画像形成装置を操作してパスワード及びジョブ名を入力する。パスワードが正しく入力されると、パスワードに対応したジョブ、つまり当該データの印刷が実行される。
【0007】
しかし、コンピュータから画像形成装置に送信された後に、印刷が実行されないまま放置されるデータが増えた場合、画像形成装置の記憶部の残容量が不足してしまう。
【0008】
このような問題を解決するため、特許文献1には、プリンタサーバが、ジョブデータの格納されている格納部の空き容量が残り少ないか周期的に判断し、少ない場合は、ジョブデータのサイズ、保持時間、ユーザ名等に基づいてプリントジョブを選出し、ジョブデータの削除、圧縮、外部への移動等を行なうネットワークプリントシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−276314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載されたネットワークプリントシステムは、所定のタイミングで格納部の空き容量が残り少ないか否かを判断し、少ないと判断した場合に、ジョブデータを選出して削除等を行ない格納部の空き容量を多くする。空き容量を多くすることによって、次に格納部の空き容量が残り少ないか否かを判断するタイミングまでに、できるだけ多くの容量のジョブデータを、格納部に格納できるようにしている。
【0011】
しかし、直近に空き容量を判断したタイミングから次回に空き容量を判断するタイミングまでの間に、新たにプリンタサーバに入力した単一または複数のジョブデータのデータ容量が格納部の空き容量より多くなった場合、プリンタサーバは、次回に空き容量を判断するタイミングまで、ジョブデータの選出及び削除等を行なうことはできないため、ジョブデータを適正に格納部に格納できなくなる虞がある。
【0012】
つまり、当該ネットワークプリントシステムは、ジョブデータがプリンタサーバに入力するタイミングに関係なく、当該ジョブデータを格納部に確実に格納するために、更なる改良の余地があった。
【0013】
本発明は、上述の問題点に鑑み、入力したプライベートプリントデータを記憶部に確実に記憶することのできる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、本発明による画像形成装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、ネットワークに接続された外部機器から入力されたプライベートプリントデータを格納する記憶部と、所定の入力操作がされたときに前記プライベートプリントデータを前記記憶部から読み出して印刷するプライベートプリント部を備えている画像形成装置であって、要求されたプライベートプリントのデータ容量が前記記憶部の残容量より多いときに、前記記憶部に格納された特定のプライベートプリントデータを退避させた後に要求されたプライベートプリントデータを格納する記憶容量確保部を備えている点にある。
【0015】
上述の構成によれば、記憶容量確保部は、要求されたプライベートプリントのデータ容量が記憶部の残容量より多いときに、記憶部に格納された特定のプライベートプリントデータを退避させた後に要求されたプライベートプリントデータを格納するため、プライベートプリントの要求されるタイミングに関係なく、プライベートプリントデータを記憶部に確実に格納することができる。
【0016】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記記憶容量確保部は、要求されたプライベートプリントのデータ容量より容量が多くなるように、単一または複数の特定のプライベートプリントデータを選択する点にある。
【0017】
上述の構成によれば、記憶容量確保部は、要求されたプライベートプリントのデータ容量より容量が多くなるように、単一または複数の特定のプライベートプリントデータを選択するため、要求されたプライベートプリントデータの格納後の記憶部の残容量は当該プライベートプリントデータの格納前の記憶部の残容量よりも大きくなる。つまり、上述の構成によれば、要求されたプライベートプリントデータが記憶部に格納される度に記憶部の残容量を多くすることができる。
【0018】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記記憶容量確保部は、前記特定のプライベートプリントデータの送信元の外部機器に退避させた旨を報知する報知部を備えている点にある。
【0019】
上述の構成によれば、報知部が、送信元の外部機器に、当該外部機器から送信されたプライベートプリントデータを退避させた旨を報知するため、当該外部機器から当該プライベートプリントデータを送信したユーザに、当該プライベートプリントデータが記憶部から退避されたことを確実に知らせることができる。また、当該外部機器から当該プライベートプリントデータを送信したユーザに対して、未印刷のプライベートプリントデータが存在することの注意を喚起することができる。
【0020】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記記憶容量確保部は、特定のプライベートプリントデータとして、前記記憶部に格納後の経過時間の長いプライベートプリントデータを優先して選択する点にある。
【0021】
上述の構成によれば、記憶容量確保部は、特定のプライベートプリントデータとして、記憶部に格納後の経過時間の長いプライベートプリントデータを優先して選択するため、出力する必要がなくなって放置されている可能性の高いプライベートプリントデータ、つまり記憶部に残している必要性の低いプライベートプリントデータを優先して退避することができる。
【0022】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記記憶容量確保部は、特定のプライベートプリントデータとして、容量の大きいプライベートプリントデータを優先して選択する点にある。
【0023】
上述の構成によれば、記憶容量確保部は、特定のプライベートプリントデータとして、容量の大きいプライベートプリントデータを優先して選択するため、同じ合計データ容量のプライベートプリントデータを退避する場合であっても、退避するプライベートプリントデータの数を少なくすることができ、退避の影響を受けるユーザの数を少なくすることができる。
【0024】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記特定のプライベートプリントデータを、送信元の外部機器、前記ネットワーク上のファイルサーバ、前記ネットワーク上のプリントサーバ、または前記画像形成装置に前記記憶部とは別に設けた予備記憶部へ退避するデータ退避部を備えた点にある。
【0025】
上述の構成によれば、特定のプライベートプリントデータの退避先を複数種類設けているため、一つの退避先の記憶部に容量不足や損傷等が生じた場合であっても、他の退避先に特定のプライベートプリントデータを退避することができる。
【0026】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第六特徴構成に加えて、前記データ退避部は、前記特定のプライベートプリントデータの退避先を選択する退避先選択部を備えている点にある。
【0027】
上述の構成によれば、退避先選択部によって特定のプライベートプリントデータの退避先の選択が可能であるため、特定のプライベートプリントデータの退避先を、残容量に余裕のある退避先や、ユーザが希望する退避先とすることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明した通り、本発明によれば、入力したプライベートプリントデータを記憶部に確実に記憶することのできる画像形成装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】画像形成装置のブロック構成図
【図2】プリントシステムのブロック構成図
【図3】複合機(画像形成装置)の外観図
【図4】プライベートプリント機能を説明するためのフローチャート
【図5】画像形成装置に登録されたユーザ名、ディレクトリパス、及びメールアドレスの説明図
【図6】記憶容量確保部の処理を説明するためのフローチャート
【図7】(a)は記憶部の残容量が所定値より大きい場合の記憶部の残容量の説明図、(b)は記憶部の残容量が所定値より小さい場合の記憶部の残容量の説明図
【図8】経過時間と容量に対する優先度で構成されるマップデータの説明図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明による画像形成装置を、画像形成装置と複数の外部機器がネットワーク接続されたプリントシステムに適用した場合について説明する。
【0031】
プリントシステム1は、図2に示すように、画像形成装置2と複数の外部機器3がネットワーク4を介して接続されている。画像形成装置2と外部機器3は夫々、ネットワーク4に一台または複数台が接続されており、ネットワーク4は、例えば、イーサネット(ゼロックス社の登録商標)等によって構築されている。
【0032】
外部機器3は、例えば、パーソナルコンピュータであり、CPU、メモリ、周辺回路等を備え所定のオペレーティングシステムの下で動作するアプリケーションプログラムがメモリにインストールされた本体部と、データやコマンドを入力するキーボードやマウス等の操作部と、作成する文書や画像等を表示する液晶ディスプレイ等の表示部等で構成されている。
【0033】
画像形成装置2は、複合機、複写機、プリンタ、ファクシミリ等で構成されている。本実施形態では、画像形成装置2として複合機がネットワーク4に接続されている場合について説明を行なう。
【0034】
画像形成装置2としての複合機は、図3に示すように、電子写真方式にて画像形成を行なう装置であり、各種メニューを設定する複数のメニュー設定キーや設定されたメニューでプリント、複写、ファクシミリ動作等を起動するスタートキー等が配置された操作部201と、原稿給紙台202aに載置された原稿を順次給紙して原稿画像を光電変換してデジタル画像データとして読み取る画像読取部202と、画像読取部202で読み取られたデジタル画像データ、外部FAXから送信される画像データ、外部機器3から送信される文書や画像データ等でなるプリントデータを多値のビットマップデータでなる出力画像データに変換する画像処理部203と、出力画像データに基づいて駆動される露光部204と、露光部204により露光される感光体を備えており感光体に形成された静電潜像をトナーにより可視画像に現像する現像部等を備えた画像形成部205と、用紙上に出力されたトナー像を加熱して用紙上に定着させる定着部206と、感光体に形成されたトナー像を転写する記録紙を収容した給紙部207と、記録紙が排出される排紙部208と、これらの機能ブロックを制御して画像形成装置1としての処理を実行させるための制御部とを備えて構成される。
【0035】
尚、操作部201は、各種メニュー画面や各種キーが表示され、表示された各種キーに対する操作を検出するタッチパネル式の表示部201aを備えている。
【0036】
また、図1に示すように、画像形成装置2は記憶部21を備えている。記憶部23は、ハードディスクや光ディスク等の以下で述べるROMやRAMに比べて大容量のデータを格納可能な装置で構成されており、ネットワーク4に接続された外部機器3から入力されたプリントデータ等を格納する。
【0037】
記憶部21は、プリントデータを格納する領域として、プライベートプリントデータを格納する領域と、通常のプリントデータを格納する領域とを備えている。
【0038】
ここで、プライベートプリントデータとは、後述するプライベートプリント機能によって、外部機器3のユーザ名、パスワード、ジョブ名、用紙種類、印刷部数等の印刷設定情報をプリントデータに付加して、外部機器3から画像形成装置2に送信されるデータである。
【0039】
また、通常のプリントデータとは、プライベートプリント機能によらず、外部機器3から画像形成装置2に送信されるデータであって、付加される印刷設定情報に外部機器3のユーザ名、パスワード、ジョブ名は含まれないデータである。
【0040】
そして、後述する制御部は、例えば、画像形成装置2に入力したプリントデータの印刷設定情報を参照して、当該プリントデータがプライベートプリントデータであるか通常のプリントデータであるかを判断し、当該判断に基づいて記憶部21の所定領域に格納する。
【0041】
尚、以下では、プライベートプリントデータをプリントデータと記し、記憶部21と記した場合、特に記載のない限り、記憶部21のプライベートプリントデータを格納する領域を指すものとして説明を行なう。
【0042】
画像形成装置2の制御部は、CPUと、CPUにより実行される制御プログラム等が格納されたROMと、制御データを格納するRAMと、周辺回路等とを備えて構成されており、CPUにより実行される制御プログラム及び関連するハードウェアにより、上述した画像形成装置2としての所定の機能が実現される。
【0043】
そして、所定の機能にはプライベートプリント機能が含まれる。つまり、図1に示すように、画像形成装置2の制御部20は、所定の入力操作がされたときにプリントデータを記憶部21から読み出して印刷するプライベートプリント部を備えている。
【0044】
また、所定の機能には本発明による機能も含まれる。つまり、図1に示すように、画像形成装置2の制御部20は、要求されたプライベートプリントのデータ容量が記憶部21の残容量より多いときに、記憶部21に格納された特定のプリントデータを退避させた後に要求されたプリントデータを格納する記憶容量確保部23を備えている。
【0045】
以下、本発明による画像形成装置2のプライベートプリント機能について、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0046】
各外部機器3には、画像形成装置2と協働してプライベートプリント機能を使用した印刷を実行するために、アプリケーションプログラムとしてのプリンタドライバがインストールされている。
【0047】
また、プライベートプリント機能を使用するに当たり、ユーザは画像形成装置2の操作部201を操作して、外部機器3のユーザ名、ディレクトリ(フォルダ)パス、及びメールアドレス等を画像形成装置2に登録しておく。尚、後述するように、記憶容量確保部23によって、送信元の外部機器3へ返信されるデータが、FTP(File Transfer Protocol)等によってファイル転送される場合にはメールアドレスの登録を不要としてもよいし、電子メールに添付されて送信される場合にはディレクトリパスの登録を不要としてもよい。
【0048】
ここで、ユーザ名は、プリントシステム1において、当該ユーザが使用している外部機器3を識別するための番号や符号(例えばIPアドレス)、または、当該番号や符号に対応付けられている名称であり、ディレクトリパスは、例えば当該ユーザが使用している外部機器3のデータ格納用のディレクトリのルートディレクトリからのパス名であり、メールアドレスは、例えば当該ユーザのメールアドレスである。登録されたユーザ名、ディレクトリパス、及びメールアドレスの例を、図5に示す。
【0049】
ユーザは、外部機器3を操作して、文書作成用のアプリケーション等でプリントデータを作成し、外部機器3のハードディスク等に保存しておく(SA1)。
【0050】
次に、ユーザは、外部機器3にインストールされているプリンタドライバを起動し、当該プリンタドライバの操作画面上で、プライベートプリントを実行する旨を要求し(SA2)、パスワード及びジョブ名を入力する(SA3)。尚、プリンタドライバは、文書作成用のアプリケーション等と連動して起動してもよいし、文書作成用のアプリケーション等とは独立して起動してもよい。
【0051】
次に、ユーザは、当該プリンタドライバの操作画面上で、用紙種類や印刷部数等を指定した上で、ステップSA1で保存しておいたプリントデータの印刷を要求する(SA4)。
【0052】
外部機器3は、印刷の要求を受けると、当該外部機器3のユーザ名、パスワード、ジョブ名、用紙種類、印刷部数等の印刷設定情報をプリントデータに付加して、画像形成装置2に送信する(SA5)。
【0053】
画像形成装置2のプライベートプリント部22は、送信されてきたプリントデータを記憶部21に格納する(SA6)。ここで、印刷設定情報は、プリントデータとリンクされた上で、記憶部21の所定領域またはRAMに格納される。
【0054】
ユーザは、画像形成装置2の前まで行き、操作部201を操作して表示部201aに表示されたメニュー画面より「プライベートプリント」を選択してプライベートプリント画面を表示させ、プライベートプリント画面上で予め登録しておいたユーザ名を入力する(SA7)。
【0055】
すると、プライベートプリント部22は、表示部201aに、入力したユーザ名に対応するプライベートプリントのジョブであって、外部機器3によって画像形成装置2に送信されたが未だ印刷が実行されていないジョブの一覧を、ジョブ名で表示する(SA8)。
【0056】
ユーザは、表示された一覧よりジョブ名を選択する(SA9)。本例の場合、ユーザは、ステップSA3で入力したジョブ名を選択する。
【0057】
その後、ユーザは、プライベートプリント画面上でパスワードを入力する(SA10)。プライベートプリント部22は、ステップSA11で入力したパスワードがステップSA3で入力したパスワードと一致していれば(SA11)、ステップSA9で選択したジョブ名に対応するプリントデータの印刷を実行する(SA12)。
【0058】
以下、記憶容量確保部23の処理について、図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0059】
尚、以下の説明では、記憶部21に格納されているプリントデータの容量及び記憶部21の残容量(空き容量)が、図7(a)または図7(b)に示した状態であるとして説明を行なう。図7では、説明を簡単にするため、記憶部21の容量やプリントデータの容量、及び、プリントデータが記憶部21に格納されてからの経過時間は、バイトや秒等の単位を用いることなく単なる数値で表わす。また、図7はあくまでも容量を示す説明図であって、描かれている各プリントデータの位置は記憶部21における記憶位置(アドレス)を示すものではない。
【0060】
図4のステップSA5で外部機器3から送信されたプリントデータXが画像形成装置2に入力されると(SB1)、当該入力をトリガとして、記憶容量確保部23は残容量を算出する(SB2)。
【0061】
尚、記憶容量確保部23が当該入力を検知する方法は、例えば、画像形成装置2に備えられている入力インタフェース回路に外部からデータが入力したときに、当該入力インタフェース回路から記憶容量確保部23にデータが入力したことを示す信号を出力する方法がある。
【0062】
例えば、図7(a)では、残容量は「5」と算出され、図7(b)では、残容量は「2」と算出される。
【0063】
記憶容量確保部23は、図7(a)に示すように、プリントデータXの容量(つまり要求されたプライベートプリントのデータ容量)が、ステップSB2で算出した残容量以下の場合(SB3)、プリントデータXを記憶部21に格納する(SB4)。ここで、本実施形態の場合、記憶容量確保部23は、プリントデータXの容量を、プリントデータXのヘッダデータ(例えば印刷設定情報等)に格納されたデータ容量情報を読み出すことで得ている。
【0064】
尚、ステップSB4の処理は、図4のステップSA6の処理に該当する。つまり、記憶容量確保部23は、プライベートプリント部22がステップSA6の処理を実行する前に、図6に示す処理を実行するのである。
【0065】
一方、記憶容量確保部23は、図7(b)に示すように、プリントデータXの容量が、ステップSB2で算出した残容量より多い場合(SB3)、特定のプリントデータを選択する(SB5)。
【0066】
この場合、記憶容量確保部23は、例えば、要求されたプリントのデータ容量より容量が多くなるように、単一または複数の特定のプリントデータを選択する。つまり、図7(b)において、プリントデータXの容量「3」よりも大きくなるように特定のプリントデータを選択する。
【0067】
記憶容量確保部23は、特定のプリントデータとして、記憶部21に格納後の経過時間の長いプリントデータを優先して選択する。
【0068】
例えば、図7(b)では、記憶容量確保部23は、先ず、経過時間の最も長いプリントデータFを選択する。しかし、プリントデータFの容量は「3」であり、プリントデータXの容量「3」よりも大きくないため、記憶容量確保部23は、次に経過時間の長いプリントデータDを選択する。その結果、プリントデータF,Dの合計容量は「4」となり、プリントデータXの容量「3」よりも大きくなる。つまり、この場合、記憶容量確保部23は、特定のプリントデータとして、プリントデータD,Fを選択する。即ち、特定のプリントデータは一つのプリントデータであっても複数のプリントデータであってもよい。
【0069】
また、記憶容量確保部23は、特定のプリントデータとして、容量の大きいプリントデータを優先して選択してもよい。
【0070】
例えば、図7(b)では、記憶容量確保部23は、先ず、容量の最も大きいプリントデータEを選択する。プリントデータEの容量は「5」であり、プリントデータXの容量「3」よりも大きい。つまり、この場合、記憶容量確保部23は、特定のプリントデータとして、プリントデータEを選択する。
【0071】
また、記憶容量確保部23は、経過時間と容量の両方に基づいて特定のプリントデータを選択してもよい。
【0072】
例えば、記憶容量確保部23は、経過時間の長いものを優先して特定のプリントデータを選択する場合に、同じ経過時間または所定時間範囲(例えば1日)内のプリントデータが複数あるとき、当該複数のプリントデータのうち容量の最も大きいプリントデータを選択してもよい。
【0073】
また、記憶容量確保部23は、容量の大きいものを優先して特定のプリントデータを選択する場合に、同じ容量または所定容量範囲(例えば1メガバイト(MB))内のプリントデータが複数あるとき、当該複数のプリントデータのうち経過時間の最も長いプリントデータを選択してもよい。
【0074】
更に、経過時間と容量に対する優先度で構成される図8に示すようなマップデータを制御部20のROMに格納しておき、記憶容量確保部23は、記憶部21に記憶されている各プリントデータの容量と経過時間に基づいて当該マップデータを参照して、優先度の高いプリントデータ(図8では数値が大きい程優先度が高い。)を優先してプリントデータを選択してもよい。
【0075】
記憶容量確保部23は、特定のプリントデータを選択すると、特定のプリントデータの送信元の外部機器3に報知してもよい(SB6)。当該報知を行なうため、記憶容量確保部23は、特定のプリントデータの送信元の外部機器3に退避させた旨を報知する報知部231を備えていてもよい。
【0076】
報知部231は、例えば、特定のプリントデータの送信元の外部機器3の表示部に、所定のメッセージ(例えば「あなたが複合機に送信したプリントデータを送り返します。」や、「あなたが複合機に送信したプリントデータをプリントサーバに転送します。」等のメッセージ)よりなる専用のウィンドウを表示させるように構成されていてもよいし、特定のプリントデータの送信元の外部機器3に、電子メールで上記所定のメッセージを送信するように構成されていてもよい。尚、特定のプリントデータの送信元の判断は、特定のプリントデータとリンクされて記憶部21またはRAMに格納されているユーザ名に基づいて行われる。
【0077】
次に、記憶容量確保部23のデータ退避部24は、選択した特定のプリントデータを記憶部21から退避させる(SB7)。退避先は、例えば、図1に示すように、送信元の外部機器3、ネットワーク4上のファイルサーバ5、ネットワーク4上のプリントサーバ6、または画像形成装置2に記憶部21とは別に設けた予備記憶部25である。
【0078】
ここで、ファイルサーバ5はネットワーク4上の複数の外部機器3や画像形成装置2等でファイルを共有するために用いられる制御用の外部機器3であり、プリントサーバ6は画像形成装置2を複数の外部機器3から利用する際に用いられる制御用の外部機器3であるが、これらの機能を画像形成装置2が果してもよく、この場合、データ退避部24による特定のプリントデータの退避先にファイルサーバ5やプリントサーバ6は含まれない。
【0079】
また、予備記憶部25は、例えば画像形成装置2にデータバックアップ等を目的として搭載される2台目のハードディスクや光ディスクであるが、画像形成装置2は、予備記憶部25を備えていない構成であってもよく、この場合、データ退避部24による特定のプリントデータの退避先に予備記憶部25は含まれない。
【0080】
データ退避部24は、特定のプリントデータを、FTP(File Transfer Protocol)等によって、上記退避先の何れかにファイル転送してもよいし、特定のプリントデータを電子メールの添付ファイルとして上記退避先の何れかに電子メールによって送信してもよい。
【0081】
データ退避部24は、ファイル転送の場合、特定のプリントデータとリンクして記憶部21またはRAMに格納されているユーザ名と、予め登録しておいたユーザ名及びディレクトリパスとに基づいて転送先を決定し、電子メールによる送信の場合、特定のプリントデータとリンクして記憶部21またはRAMに格納されているユーザ名と、予め登録しておいたユーザ名及び電子メールアドレスとに基づいて送信先を決定する。
【0082】
データ退避部24による特定のプリントデータの退避方法の決定は、予め上記退避方法の何れかに固定させてもよいし、ユーザが画像形成装置2の操作部201を操作して設定した退避方法、または、外部機器3を操作して設定した後で画像形成装置2に送信することで画像形成装置2に設定した退避方法に決定してもよい。
【0083】
また、データ退避部24による退避先の決定は、予め上記退避先の何れかに固定させてもよいし、ユーザが画像形成装置2の操作部201を操作して設定した退避先、または、外部機器3を操作して設定した後で画像形成装置2に送信することで画像形成装置2に設定した退避先に決定してもよいが、データ退避部24は、図1に示すように、特定のプリントデータの退避先を選択する退避先選択部241を備えていてもよい。
【0084】
退避先選択部241は、所定条件に基づいて退避先を決定する。ここで、所定条件は、各退避先が備えているハードディスク等の記憶部の容量(例えば、容量の大きな記憶部を搭載している退避先に優先的に特定のプリントデータを退避する。)、前記記憶部の現在の空き容量(例えば、搭載している記憶部の現在の空き容量の大きい退避先に優先的に特定のプリントデータを退避する。現在の空き容量は、例えば、各外部機器3等から画像形成装置2に定期的に送信される。)、ユーザが画像形成装置2の操作部201を操作して設定した退避先の優先順位、及びユーザが外部機器3を操作して設定し画像形成装置2に送信した退避先の優先順位等である。
【0085】
尚、特定のプリントデータがデータ退避部24によって送信元の外部機器3に退避された場合、ユーザは、プリンタドライバの操作画面上で、用紙種類や印刷部数等を指定した上で、退避されたプリントデータを指定(例えば当該プリントデータの存在するディレクトリパスを指定)して「ファイル送信」を指示することで、当該プリントデータの印刷を再度要求できる。
【0086】
特定のプリントデータの退避後に、記憶容量確保部23は、プリントデータXを記憶部21に格納する(SB4)。
【0087】
以下、別実施形態について説明する。上述の実施形態では、記憶容量確保部23は、プリントデータの容量を、当該プリントデータのヘッダデータに格納されたデータ容量情報を読み出すことで得ている場合について説明したが、プリントデータがデータ容量情報を含んでいない構成であってもよい。
【0088】
この場合、例えば、記憶容量確保部23は、プリントデータが全て画像形成装置2に入力されるまで、当該プリントデータの容量を知り得ないため、図6のステップSB3において、逐次入力するプリントデータの現時点までのデータ容量を逐次算出しておき、当該データ容量がステップSB2で算出した残容量を超えた場合、ステップSB5以降の処理を実行する。一方、図6のステップSB3において、プリントデータが全て入力されてもなお、ステップSB2で算出した残容量を超えない場合には、ステップSB5からSB7の処理を実行することなく、ステップSB4の処理を実行する。
【0089】
上述の実施形態では、プライベートプリント機能を使用するに当たり、ユーザは画像形成装置2の操作部201を操作して、ユーザ名、ディレクトリパス、及びメールアドレス等を登録しておく場合について説明したが、このような登録は、ユーザが、プリンタドライバがインストールされている各外部機器3で行なう構成であってもよい。この場合、例えば、ユーザが、外部機器3でユーザ名、ディレクトリパス、及びメールアドレス等を入力し終えた後に表示部に表示された「決定」ボタンをマウスでクリックすると、入力したユーザ名等が画像形成装置2に送信されて登録される。
【0090】
また、このような登録は、プリントデータのヘッダデータとして画像形成装置2に送信される構成であってもよい。例えば、ユーザが、プリントデータの作成並びにユーザ名、ディレクトリパス、及びメールアドレス等よりなる登録情報の入力を終えた後に、図4のステップSA4と同様にプリントデータの印刷を要求すると、外部機器3は、印刷設定情報に加えて登録情報をプリントデータに付加して、画像形成装置2に送信し、画像形成装置2は、送信されてきた登録情報に基づいて登録を実行する。この場合、画像形成装置2や各外部機器3での、ユーザ名、ディレクトリパス、及びメールアドレス等の事前登録が不要となる。
【0091】
上述の実施形態は何れも本発明の一実施例に過ぎず、当該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0092】
2:画像形成装置
3:外部機器
4:ネットワーク
21:記憶部
22:プライベートプリント部
23:記憶容量確保部
231:報知部
24:データ退避部
241:退避先選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続された外部機器から入力されたプライベートプリントデータを格納する記憶部と、所定の入力操作がされたときに前記プライベートプリントデータを前記記憶部から読み出して印刷するプライベートプリント部を備えている画像形成装置であって、
要求されたプライベートプリントのデータ容量が前記記憶部の残容量より多いときに、前記記憶部に格納された特定のプライベートプリントデータを退避させた後に要求されたプライベートプリントデータを格納する記憶容量確保部を備えている画像形成装置。
【請求項2】
前記記憶容量確保部は、要求されたプライベートプリントのデータ容量より容量が多くなるように、単一または複数の特定のプライベートプリントデータを選択する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記記憶容量確保部は、前記特定のプライベートプリントデータの送信元の外部機器に退避させた旨を報知する報知部を備えている請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記憶容量確保部は、特定のプライベートプリントデータとして、前記記憶部に格納後の経過時間の長いプライベートプリントデータを優先して選択する請求項1から3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記憶容量確保部は、特定のプライベートプリントデータとして、容量の大きいプライベートプリントデータを優先して選択する請求項1から4の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記特定のプライベートプリントデータを、送信元の外部機器、前記ネットワーク上のファイルサーバ、前記ネットワーク上のプリントサーバ、または前記画像形成装置に前記記憶部とは別に設けた予備記憶部へ退避するデータ退避部を備えた請求項1から5の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記データ退避部は、前記特定のプライベートプリントデータの退避先を選択する退避先選択部を備えている請求項6記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−179635(P2010−179635A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27569(P2009−27569)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】