説明

画像形成装置

【課題】装置が複雑とならずにシンプルな構成で部品交換、メンテナンスが不要な磁性キャリアのキャリア回収部を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】キャリア回収部8は、回収ローラ81から剥離したキャリアを案内する剥離板82と、回収ローラ81から剥離されたキャリアを搬送する搬送手段83と、を備え、
回収ロー81ラは回転可能なスリーブ81Aと、スリーブ81A内に配置され複数の磁極を有する固定磁極81Bとを備え、前記複数の磁極には像担持体1から磁性キャリアを回収する主極と回収した磁性キャリアを剥離する剥離極を含み、
剥離板82は、剥離極に対向する位置にスリーブ81Aに近接する端部が該スリーブの回転方向上流側を向いているカウンター方向で、スリーブ81Aと所定の間隙をとって非接触で配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーと磁性キャリアからなる2成分現像剤を用いた電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2成分現像剤を用いた電子写真プロセスでは、感光体等の像担持体上に形成された静電潜像をトナーで現像し、現像により形成されたトナー像を記録材に転写することにより画像が形成される。
【0003】
2成分現像方式においては、磁性キャリアが像担持体に付着するという問題がある。像担持体に付着した磁性キャリアはクリーニング装置のクリーニング性能を低下させるなど、画質低下の原因となる。特に、キャリア付着が発生すると、トナー像を転写する転写部において、磁性キャリアが像担持体に押しつけられることにより、像担持体の表面に押しつけられた部分を中心とするクレータ状の盛り上がりを形成する。この盛り上がりがクリーニング装置を通過する際に、クリーニング装置を構成するクリーニングブレードを損傷し、クリーニング性能を損ねる。即ち、クリーニングブレードをトナーがすり抜けて筋状のトナーが像担持体上に残留し、次の画像形成サイクルにおいて形成される画像に筋状のムラを発生させる。
【0004】
キャリア付着の問題に対する対策として、現像工程において、キャリアを像担持体に付着させない手段と、像担持体に付着したキャリアを回収する手段とがある。前者の手段は、画像形成速度が上がると適用が困難になる。このために、後者の手段が有力である。
【0005】
磁性キャリアを回収する手段としては、特許文献1〜3に開示されている装置では、像担持体に対向して磁石を配置させ、その磁力により像担持体上に意図せずに付着した磁性キャリアを吸着し、回収している。特許文献1〜3では回転するローラ状の磁石を用い、像担持体に対向する面で磁性キャリアを吸着させている。そして吸着した磁性キャリアの回収は、当該ローラを回転させて対向面以外の位置で表面から磁性キャリアを剥離することにより行っている。
【0006】
ローラに吸着した磁性キャリアの剥離は、特許文献1では磁石は円周方向に分割された複数の電磁石部により構成されている。そして感光体と対向しない少なくとも1個の電磁石部が動作しないようにし、それ以外の電磁石部が動作するように構成することにより、動作しない電磁石から磁性キャリアを剥離させている。特許文献2、3、4では、ローラ表面の磁性キャリアをスクレーパで掻き取ることにより、磁性キャリアを剥離させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−66678号公報
【特許文献2】特開平6−130820号公報
【特許文献3】特開平11−237788号公報
【特許文献4】特許第4010338号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、複数の電磁石を用いた構成であり、制御及び装置が複雑でコストが増大するという問題があり。特許文献2から4ではローラ表面にスクレーパを当接させるために、接触箇所での摩擦によりローラ表面に傷が発生する。また磁性キャリアに付着している絶縁性のトナーがローラ表面に固着した場合には、ローラ表面に絶縁性のトナー膜が形成されることになる。ローラと像担持体との間に電界を形成して磁性キャリアを回収する構成であれば、その電界がトナー膜により変化してしまう。これらの影響によりキャリア回収性能が低下するために、定期的な部品交換、メンテナンスが必要となる。
【0009】
本願発明は上記問題に鑑み装置が複雑とならずにシンプルな構成で部品交換、メンテナンスが不要な磁性キャリアのキャリア回収部を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、下記に記載する発明により達成される。
【0011】
1.像担持体と、
固定磁極を内部に配置した現像ローラを備え、前記現像ローラに担持したトナーと磁性キャリアからなる2成分現像剤により前記像担持体の静電潜像を現像する現像装置と、
前記像担持体に形成されたトナー像を被転写材に転写する転写部と、
前記像担持体の回転方向で、前記現像装置よりも下流側であって前記転写部よりも上流側において該像担持体に非接触で対向して配置された回収ローラを備えたキャリア回収部と、
を有し、
前記キャリア回収部は、前記回収ローラから剥離したキャリアを案内する剥離板と、前記回収ローラから剥離されたキャリアを搬送する搬送手段と、を備え、
前記回収ローラは回転可能なスリーブと、前記スリーブ内に配置され複数の磁極を有する固定磁極とを備え、前記複数の磁極には前記像担持体から磁性キャリアを回収する主極と回収した磁性キャリアを剥離する剥離極を含み、
前記剥離板は、前記剥離極に対向する位置に前記スリーブに近接する端部が該スリーブの回転方向上流側を向いているカウンター方向で、前記スリーブと所定の間隙をとって非接触で配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【0012】
2.前記剥離板の前記端部は、前記剥離極によって形成される磁場中であって剥離極の極位置よりも前記スリーブ回転方向の下流側領域に配置されていることを特徴とする前記1に記載の画像形成装置。
【0013】
3.前記キャリア回収部は、前記回収ローラの回転軸に沿って伸びる磁性部材を有し、
前記磁性部材は、前記現像ローラと前記回収ローラとの間に配置されていることを特徴とする前記1又は2に記載の画像形成装置。
【0014】
4.前記搬送手段は、回転軸方向に磁性キャリアを搬送する搬送スクリューを備え、
前記キャリア回収部は、前記現像ローラと前記回収ローラとの間に配置された前記搬送スクリューに隣接する貯留空間を備えており、前記貯留空間には前記搬送スクリューにより回転軸方向に搬送された磁性キャリアの一部が滞留されることを特徴とする前記1から3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【0015】
5.前記剥離板は、前記端部を上方として下方に広がる傾斜面を備えており、前記傾斜面は前記剥離極の極位置における前記スリーブの接線方向と略平行となっていることを特徴とする前記1から4の何れか一項に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0016】
本願発明によれば、回収ローラで回収したキャリアを非接触の剥離板により剥離させることにより装置が複雑とならずにシンプルな構成で部品交換、メンテナンスが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態に係る画像形成装置の要部の断面図である。
【図2】キャリア回収部8周辺の断面図である。
【図3】キャリア回収部8の断面図である。
【図4】図3の拡大図である。
【図5】回収ローラ81表面における法線方向の磁束密度Brの分布を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係るキャリア回収部8の断面図である。
【図7】第3の実施形態に係るキャリア回収部8の断面図である。
【図8】第4の実施形態に係るキャリア回収部8の断面図である。
【図9】比較例におけるキャリア回収部8の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。
【0019】
図1は、第1の実施形態に係る画像形成装置の要部の断面図である。図2はキャリア回収部8の周辺拡大図である。画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、中間転写ベルト6と給紙装置20及び定着装置30等から構成されている。
【0020】
画像形成装置100の上部には、スキャナー110が設置されている。原稿台上に載置された原稿はスキャナー110の原稿画像走査露光装置の光学系により画像が走査露光され、ラインイメージセンサに読み込まれる。ラインイメージセンサにより光電変換されたアナログ信号は、制御手段において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、露光部3Y、3M、3C、3Kに入力される。
【0021】
50は制御部でありCPUとメモリを備えており、メモリに記憶しているプログラムをCPUが実行することにより各種制御を実行する。
【0022】
イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部10Y、マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成部10M、シアン(C)色の画像を形成する画像形成部10C、及びブラック(K)色の画像を形成する画像形成部10Kは、それぞれ像担持体としてのドラム状の感光体1の周囲に配置された帯電極2、露光部3、現像装置4、クリーニング部5及びキャリア回収部8を有する(M、C、Kについては参照符号を省略)。以下これらを総称する場合には単に画像形成部10と称する。
【0023】
現像装置4はそれぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒(K)の異なる色の小粒径のトナーと磁性キャリアからなる2成分現像剤を内包する。2成分現像剤として、フェライトをコアとしてその周りに絶縁性樹脂をコーティングした磁性キャリアと、ポリエステルを主材料として顔料あるいはカーボンブラック等の着色剤、荷電制御剤、シリカ、酸化チタン等を加えたトナーとからなる。磁性キャリアは粒径10〜50μm、トナーは粒径4〜10μm、トナーの帯電特性は負帯電特性であり平均電荷量としては−20〜−60μC/gである。2成分現像剤としてはこれらの磁性キャリアとトナーとを、トナー濃度4〜10質量%になるよう混合したものを用いている。
【0024】
感光体1に対向して配置されている現像装置4の現像ローラ41は、外周面が回転可能な現像スリーブ41Aとその内部の固定磁極41Bとから構成されている。固定磁極41Bには、現像極N1とその他の磁極S1、N2、N3、S2、N4、S3が配置されている。現像スリーブ41Aの表面には、穂規制板42により層厚を一定に規制した現像剤層が保持され、現像剤層は回転にともなって感光体1との対向面に搬送され(不図示の)電源により形成された感光体1との現像電界により、感光体1に形成された潜像が現像される。
【0025】
6は、中間転写ベルトであり、複数のローラにより、回転可能に支持されている。中間転写ベルト6は、体積抵抗率10〜1012Ω・cmの無端ベルトであり、例えば変性ポリイミド、熱硬化ポリイミド、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ナイロンアロイ等のエンジニアリングプラスチックに導電材料を分散した、厚さ0.04〜0.10mmの半導電性シームレスベルトである。
【0026】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kより感光体1上に形成された各色のトナー像は、回転する中間転写ベルト6上に一次転写ローラ7により逐次転写されて(一次転写)、重ね合わせトナー像(以下、カラー画像ともいう)が形成される。一方、転写後の感光体1(Y、M、C、K)はそれぞれのクリーニング部5によりにより残留トナーが除去される。
【0027】
給紙装置20の用紙収納部(トレイ)21内に収容された用紙Pは、第1給紙部22により給紙され、給紙ローラ23、24、25A、25B、レジストローラ(第2給紙部)26等を経て、二次転写ローラ9に搬送され、用紙P上にカラー画像が転写される(二次転写)。
【0028】
なお、画像形成装置100の下部に鉛直方向に縦列配置された3段の用紙収納部21は、ほぼ同一の構成をなすから、同符号を付した。また、3段の給紙手段22も、ほぼ同一の構成をなすから、同符号を付してある。用紙収納部21、給紙手段22を含めて給紙装置20と称す。
【0029】
カラー画像が転写された用紙Pは、定着装置30において用紙Pが挟持され、熱と圧力とを加えることにより用紙P上のカラートナー画像(あるいはトナー画像)が定着されて用紙P上に固定され、搬送ローラ対37に挟持されて搬送され、排紙搬送路に設けられた排紙ローラ27から排出され、機外の排紙トレイ40上に載置される。
【0030】
一方、二次転写ローラ9により用紙Pにカラー画像を転写した後、用紙Pを曲率分離した中間転写ベルト6は、クリーニング部61により残留トナーが除去される。
【0031】
用紙Pの両面に複写する場合には、用紙Pの第1面に形成した画像を定着処理した後、用紙Pを分岐板29により排紙搬送路から分岐させ、両面搬送路28に導入して表裏反転してから再び給紙ローラ25Bから搬送する。用紙Pは画像形成部10Y、10M、10C、10Kによって第2面に各色の画像が両面に形成され、定着装置30により加熱定着処理され、排紙ローラ27によって装置外に排出される。
【0032】
本実施形態においては感光体1が「像担持体」として機能する。また感光体1に対しては一次転写ローラ7が「転写部」として機能し被転写材である中間転写ベルト6にトナー像を転写する。
【0033】
[キャリア回収部8]
図2から図4に基づいてキャリア回収部8の構成について説明する。図2はキャリア回収部8周辺の断面図である。図3、図4はキャリア回収部8の断面図である。同図に示すようにキャリア回収部8は、回収ローラ81、剥離板82、搬送スクリュー83、及び筐体84を備えている。現像装置4で現像されたトナー像Tとともに意図せずに付着したキャリアcaは、キャリア回収部8により回収される。回収ローラ81は、感光体1に対して所定距離離間して配置されており、外周の回転可能なスリーブ81Aとその内部の固定磁極81Bから構成される。スリーブ81Aの回転方向(以下、「回収ローラ81の回転方向」ともいう)は図示の時計回りである。回収ローラ81の回転軸と搬送スクリュー83の回転軸とは平行(以下、「回転軸方向」という)であり、剥離板82はこれに沿って伸びている。スリーブ81Aは、接地してもよいが、本実施形態においては磁性キャリアが帯びる電荷と逆極性のDC電圧を印加している。またこれにAC電圧を重畳して印加してもよい。
【0034】
本実施形態においては、固定磁極41Bには複数の磁極(N1、S1、N2、S2、N3)が配置されている。同図に示す例では、感光体1に対向する磁極は主極S1であり、主極S1により感光体1から磁性キャリアcaを回収する。主極S1の回転方向の下流側には磁極S2、剥離極N3があり、回収ローラ81の剥離極N3に対向する位置に剥離板82が所定の間隙をとって非接触で配置されている。所定の間隙とは例えば0.1mm〜0.3mmである。
【0035】
主極S1で回収された磁性キャリアcaは剥離極N3で剥離して、剥離板82と剥離極N3の間に形成される磁界中に滞留する。滞留した磁性キャリアcaの一部は、下方に落下して、搬送スクリュー83により回転軸方向に搬送され、キャリア回収部8から外部の廃棄ボックス(不図示)へと排出される。
【0036】
剥離板82は、スリーブ81Aと所定の間隙をとって非接触でその端部edが剥離極N3の磁場中になるように配置されている。剥離極N3では、隣接する同極性の磁極N1との位置関係で法線方向の磁力Frが小さくなるので回収ローラ81による磁性キャリアcaの拘束力は小さくなるので、磁性キャリアcaは剥離し易くなる。また剥離板82は非磁性体の材料で形成してもよいが、磁性体の材料で形成した場合には次の点で有利である。剥離極N3と磁性の剥離板82の間に磁力線の壁が形成され、その壁に滞留した磁性キャリアcaにより磁気ブラシが形成される。磁気ブラシで磁力の影響を受けなくなった磁性キャリアcaは磁気ブラシから分離して回収ローラ81から剥離されることになる。また剥離板82の回収ローラ81に向いていない側の表面は、端部edを上方として下方に広がっている傾斜面SSであり、傾斜面SSに沿って剥離された磁性キャリアcaは自由落下する。
【0037】
また、剥離板82は、同図に示すように回収ローラ81(スリーブ81A)に近接する端部edが回転方向上流側を向くようにカウンター方向で配置させている。このようにすることによりスリーブ81Aの表面を搬送される磁性キャリアcaの慣性力に逆らわずに磁性キャリアcaを回収ローラ81から剥離させることができる。また、剥離板82の傾斜面SSを、剥離極N3の位置におけるスリーブ81Aの接線方向に略平行とすることにより、剥離極N3で剥離させる場合に、スリーブ81Aの回転に伴う磁性キャリアcaが受けている遠心力を利用して磁性キャリアcaを剥離させることができる。
【0038】
また、剥離板82の回収ローラ81に近接する方の端部edは剥離極N3の対向する位置に配置しているが、より好ましくは、この端部edを剥離極N3の磁場中であってスリーブ81A表面における剥離極N3の法線方向磁束密度Brの極位置PN3よりも回転方向下流側の領域X1の中に配置させた方がよい。磁性キャリアcaはスリーブ81Aの表面をその回転方向に沿って搬送されるが、スリーブ81Aの表面を移動する磁性キャリアcaは各磁極位置には溜まり易く磁性キャリアcaの密度は高く、磁極間では密度は低くなる傾向となる。これはスリーブ81A表面における法線方向の磁力Frと接線方向(回転方向)の磁力Fθとの分布によるものである。領域X1の中に剥離板82の端部edを配置させることにより剥離極N3の位置に溜まる磁性キャリアcaを効率よく剥離し易くなる。
【0039】
図5は、回収ローラ81表面における法線方向の磁束密度Brの分布を示す図である。横軸は角度(°)、縦軸は磁束密度Br[mT]を示している。図5(a)は回収ローラ81全周の磁束密度の分布を示しており、図5(b)は剥離極N3の周辺を拡大して示している。図5(b)において極位置PN3、角度θ1、θ2、領域X1は図4と対応するものである。極位置PN3の定義としては、例えば剥離極N3の磁束密度Brのピーク値の半値幅中心位置あるいは80%値幅中心位置を用いることができる。
【0040】
領域X1とは、剥離板82の端部edは剥離極N3によって形成される磁場中であって剥離極N3の位置よりもスリーブ81A回転方向の下流側領域である。領域X1は上流側端部の角度θ1と下流側端部は角度θ2とで囲まれる領域である。角度θ1は極位置PN3を含まず、これよりも下流側の角度である。θ1は、例えば極位置PN3よりも0.1°〜1.0°下流側である。θ2は下流側での境界位置であり、本実施形態においては極位置PN3よりも下流側30°に設定している。本願においては「剥離極N3によって形成される磁場中」とは、スリーブ81Aの回転方向において、剥離極N3の磁場が影響する領域であり概ね法線方向の磁束密度Brの絶対値がゼロよりも大きい領域である。半径方向rにおいては概ねスリーブ81Aの表面からの距離は数mm以内である。この領域ではスリーブ81A表面における法線方向の磁力Frが小さくなっているので、磁性キャリアcaをスリーブ81A表面から剥離し易くなる。
【0041】
剥離板82を回収ローラ81と接触で配置した場合には、接触箇所での摩擦により回収ローラ表面に傷が発生し易くなる。また磁性キャリアに付着している絶縁性のトナーがローラ表面での摩擦により固着した場合には、ローラ表面に絶縁性のトナー膜が形成されることになる。回収ローラと像担持体との間に電界を形成して磁性キャリアcaを回収する構成であれば、その電界がトナー膜により変化してしまう。これらの影響によりキャリア回収性能が低下するために、定期的な部品交換、メンテナンスが必要となる。本実施形態においては、剥離板82を回収ローラ81と非接触で配置しているので装置が複雑とならずにシンプルな構成で部品交換、メンテナンスが不要となる。
【0042】
[他の実施形態]
図6から図8は、それぞれ第2、第3、第4の実施形態に係るキャリア回収部8の断面図である。同図に示す構成以外は、第1の実施形態と同一である。また図6から図8において第1の実施形態と同一の構成部材に関しては同一符号を付すことにより説明を省略する。
【0043】
第2の実施形態は、図6に示すように磁性部材として磁性板85を、現像ローラ1と回収ローラ81との間に配置している。磁性板85は、配置のしやすさから回収部8に設けることが好ましいがこれに限定されるものではない。同図においては、磁性板85は筐体84に接着剤等で貼り付けている。磁性板85は板状の部材であり、回転軸方向に沿って伸びておりその長さは現像ローラ41と同等かこれよりも長い。また回転軸方向の両端部は、現像ローラ41の両端部と同じ位置かこれよりも外側になっている。第2の実施形態においては回収ローラ81の固定磁極81Bは3つの磁極(S1、N1、S2)を備えている。感光体1に対向しており磁性キャリアcaを回収する主極はN1であり、回収ローラ81から磁性キャリアcaを剥離させる剥離極はS1である。またスリーブ81Aは図示の時計方向に回転する。
【0044】
画像形成装置は小型化の要望は常にあり、特に図1に示すようにタンデム型カラーの画像形成装置100では複数の画像形成部10を備えていることから個々の画像形成部10を小型化にすることが好ましい。
【0045】
感光体1への磁性キャリアcaの付着を少なくするためには、現像ローラ41は高磁化の磁石を使用するのでその磁石の影響は広い範囲に及ぶことになる。現像ローラ41の磁石の影響により固定磁極81Bの主極や剥離極の磁場が影響を受けると、回収性能に悪影響を及ぼす。また逆に、回収ローラ81の磁石により現像ローラ41の磁場に影響を及ぼすことも考えられる。本願発明の第2の課題は、キャリア回収部8の配置を自由に設計可能となり、画像形成装置全体として小スペース化を図ることである。
【0046】
現像ローラ41と回収ローラ81との距離により、その影響の大きさは変化するので両者をなるべく離すことによりその影響は小さくすることができる。しかし、小型化を達成するためには、限界があり、設計の自由度を考えるとその制約はない方が好ましい。図6に示す第2の実施形態においては磁性板85を設けているので、現像ローラ41からの磁場は磁性板85で短絡するので回収ローラ81にはその影響を及ぼさないようにすることができる。また逆に、回収ローラ81からの磁場も磁性板85で短絡するので現像ローラ41への影響を及ぼさないようにすることができる。
【0047】
本実施形態においては、磁性板85を現像ローラ41と回収ローラ81との間に配置することにより現像ローラ41及び回収ローラ81を相互に距離の制約を受けずにキャリア回収部8の配置を自由に設計可能となり、画像形成装置全体として小スペース化を図ることが可能となる。
【0048】
次に図7、図8に基づいて第3、第4の実施形態について説明する。キャリア回収部8の筐体84には、回収した磁性キャリアcaを滞留させるように貯留空間a1が設けられている。第3、第4の実施形態においては、貯留空間a1に滞留させた磁性キャリアに、第2の実施形態における磁性板85と同様の機能を担わせるものである。図7に示す第3の実施形態においては、図3と同様に回収ローラ81は時計方向に回転するが、図8に示す第4の実施形態においては、回収ローラ81は反時計方向に回転させている。また剥離板82の向きはそれぞれカウンター方向になるように配置しており、磁極数も異なる。それ以外の構成に関して両者は同一である。
【0049】
搬送スクリュー83とこれに隣接する貯留空間a1は共に、現像ローラ41回収ローラ81との間に配置されている。磁性板85と同様に、貯留空間a1は、回転軸方向に沿って伸びておりその長さは現像ローラ41と同等かこれよりも長くしている。貯留空間a1は筐体の内面の角に設けられており、現像ローラに近い側の壁面には現像ローラ41の磁場により引きつけられた磁性キャリアcaが滞留する。
【0050】
更に、搬送スクリュー83に隣接されていることにより、回転軸方向において磁性キャリアcaの滞留する量を均すことができる。具体的には、貯留空間a1から溢れた磁性キャリアcaは、反時計方向に回転する搬送スクリュー83により(回転軸方向)搬送方向下流側に搬送され、貯留空間a1における磁性キャリアcaが滞留していない部分に搬送されることになる。
【0051】
なお図7、図8のそれぞれの実施形態において貯留空間a1は筐体84の内面の角に設けられているが、これに限られず、搬送スクリュー83の脇に側溝を設け、これを貯留空間として用いてもよい。また貯留空間a1を設けた位置は、同図においては、搬送スクリュー83に対して回収ローラ81に遠い側(右側)に設けているが、これに限られず近い側(左側)に設けてもよい。なお、左側に設けた場合には、搬送スクリュー83下側において磁性キャリアcaの搬送を左斜め方向とするために、搬送スクリュー83は時計方向に回転することが好ましい。
【0052】
滞留空間a1には、回収ローラ81により回収された磁性キャリアcaが蓄積する。蓄積した磁性キャリアcaにより、前述の磁性板85と同様に、現像ローラ41からの磁場は磁性板85で短絡するので回収ローラ81にはその影響を及ぼさないようにすることができる。また逆に、回収ローラ81からの磁場も磁性板85で短絡するので現像ローラ41への影響を及ぼさないようにすることができる。
【実施例】
【0053】
実施例1から実施例3、比較例についての性能評価試験を行った。実施例1から3は前述の図6から図8に示す構成であり、比較例は以下説明する図9に示す構成であり、磁性キャリアcaの回収ローラ81からの剥離を、カウンター方向で当接するゴムブレードにより行っている。
【0054】
[共通条件]
(回収ローラ81)
外径:φ18mm
表面:材質AL、表面荒さRz 10μm
スリーブ81A表面での磁束密度Br:120mT(主極)、50mT(剥離極)
感光体1とスリーブ81Aとの距離:隙間0.3mm
スリーブ81Aへの印加電圧:Vdc−700V、Vac1100V、周波数2.5kHz、Duty60%
(剥離板82(実施例1から3))
寸法:厚み1.0mm、長さ330mm、幅10mm(実施例2のみ5mm)
スリーブ81Aと剥離板82との距離:0.2mm
(搬送スクリュー83)
材料:非磁性SUS
寸法:外径φ10mm、軸径φ6mm、スクリューピッチ10mm
回転方向:図6〜図9参照
(感光体1)
回転速度(表面線速):500mm/sec
外径:φ80mm
背景部電位V0:−500V
露光部電位Vi(ベタ部):−50V
(現像ローラ41)
回転速度:900mm/sec
寸法:外径φ30mm
スリーブ41Bへの印加電圧::Vdc−300V、Vac1000V、周波数9.0kHz、Duty50%
現像ローラ41の中心位置(角度):45度
(上記角度は、現像ローラ41の中心と感光体1の中心を結ぶ線と、水平線とがなす角度、以下同様)
(現像剤)
トナー平均粒径:6.5μm
磁性キャリア平均粒径:30μm
磁性キャリアca比透磁率:3.5
トナー濃度(質量比):7%
現像剤量:1000g
(その他)
上記及び、下記に述べる条件以外は、図1及び図2で説明した実施形態と同一である。
【0055】
以降に個別条件を示す。
[実施例1(図6)]
(剥離板82)
材料:磁性SUS
(磁性板85)
材料:磁性SUS
寸法:長さ330mm、幅4mm
位置:筐体84の側面に垂直に貼付、下端の位置は感光体1に対して80度
(その他)
回収ローラ81の回転速度(表面):450mm/sec
回収ローラ81の回転方向:時計方向
固定磁極81B:3極、主極N1、剥離極S1
回収ローラ81の中心位置(角度):95度
剥離板82の配置位置:端部edが剥離極S1より回転方向下流側25度の位置
[実施例2(図7)]
(剥離板82)
材料:磁性SUS
(その他)
回収ローラ81の回転速度(表面):450mm/sec
回収ローラ81の回転方向:時計方向
固定磁極81B:5極、主極S1、剥離極N3
回収ローラ81の中心位置(角度):115度
剥離板82の配置位置:端部edが剥離極N3より回転方向下流側10度の位置
[実施例3(図8)]
(剥離板82)
材料:非磁性SUS
(その他)
回収ローラ81の回転速度(表面):500mm/sec
回収ローラ81の回転方向:反時計方向
固定磁極81B:3極、主極N1、剥離極S2
回収ローラ81の中心位置(角度):115度
剥離板82の配置位置:端部edが剥離極S1より回転方向下流側28度の位置
[比較例1(図9)]
回転速度(表面):450mm/sec
(ゴムブレード890)
材料:ウレタンゴム
寸法:厚み1mm、長さ330mm、幅5mm
回収ローラ81への当接:カウンター方向で当接角度20度
[比較例2(回収ローラ部8機能させず)]
回収部8から、回収ローラ81を取り除き、機能しないようにした。
【0056】
[共通実験条件及び評価指標]
A4版サイズの用紙を印字率5%で連続プリント。前述のとおりカブリマージンは200V(=|V0−Vdc|)に設定している。
【0057】
感光体1の磁性キャリアcaの付着数を評価した。付着数のサンプリングは、画像形成装置を画像形成中に即断停止させ、感光体1において、回収ローラ81の下流側で一次転写ローラ7よりも上流側の位置で、長さ297mm、幅18mmの粘着テープにより表面に付着している磁性キャリアcaを採集し、その個数をカウントした。採集は複数回行いその平均値を用いた。評価指標として5個以下であれば良好と判断できる。
【0058】
【表1】

【0059】
表1が実験結果である。比較例2に比べて、実施例1から3においてはキャリア付着のレベルは良好であることがわかる。
【0060】
また比較例1では初期的には良好な性能を発揮しているが、プリント数が増加するにつれてキャリア付着のレベルは悪化している。これに対して実施例1から3においては、このような悪化は生じていない。
【0061】
比較例1で、プリント枚数が増加するにつれ、キャリア付着のレベルが劣化したのは、回収ローラ81の表面にトナーの固着による絶縁膜が形成され、これにより回収ローラ81と感光体1との間で形成する電界が変化して回収性能が低下したためである。回収ローラ81の表面にトナーの固着が発生したのは、ゴムブレード890と回収ローラ81との当接部での摺動による発熱、圧力により磁性キャリアに付着していたトナーが溶解したためと考えられる。
【符号の説明】
【0062】
1 感光体
4 現像装置
41 現像ローラ
6 中間転写ベルト
7 一次転写ローラ
8 キャリア回収部
81 回収ローラ
81A スリーブ
81B 固定磁極
S1、N1 主極
N3 剥離極
82 剥離板
83 搬送スクリュー
84 筐体
85 磁性板(磁性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
固定磁極を内部に配置した現像ローラを備え、前記現像ローラに担持したトナーと磁性キャリアからなる2成分現像剤により前記像担持体の静電潜像を現像する現像装置と、
前記像担持体に形成されたトナー像を被転写材に転写する転写部と、
前記像担持体の回転方向で、前記現像装置よりも下流側であって前記転写部よりも上流側において該像担持体に非接触で対向して配置された回収ローラを備えたキャリア回収部と、
を有し、
前記キャリア回収部は、前記回収ローラから剥離したキャリアを案内する剥離板と、前記回収ローラから剥離されたキャリアを搬送する搬送手段と、を備え、
前記回収ローラは回転可能なスリーブと、前記スリーブ内に配置され複数の磁極を有する固定磁極とを備え、前記複数の磁極には前記像担持体から磁性キャリアを回収する主極と回収した磁性キャリアを剥離する剥離極を含み、
前記剥離板は、前記剥離極に対向する位置に前記スリーブに近接する端部が該スリーブの回転方向上流側を向いているカウンター方向で、前記スリーブと所定の間隙をとって非接触で配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記剥離板の前記端部は、前記剥離極によって形成される磁場中であって剥離極の極位置よりも前記スリーブ回転方向の下流側領域に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記キャリア回収部は、前記回収ローラの回転軸に沿って伸びる磁性部材を有し、
前記磁性部材は、前記現像ローラと前記回収ローラとの間に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記搬送手段は、回転軸方向に磁性キャリアを搬送する搬送スクリューを備え、
前記キャリア回収部は、前記現像ローラと前記回収ローラとの間に配置された前記搬送スクリューに隣接する貯留空間を備えており、前記貯留空間には前記搬送スクリューにより回転軸方向に搬送された磁性キャリアの一部が滞留されることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記剥離板は、前記端部を上方として下方に広がる傾斜面を備えており、前記傾斜面は前記剥離極の極位置における前記スリーブの接線方向と略平行となっていることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−191374(P2011−191374A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55577(P2010−55577)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】