説明

画像形成装置

【課題】供給ローラ34の磨耗によって引き起こされる、かすれ、残像等の印刷品質の劣化を抑制する。
【解決手段】本発明の画像形成装置10は、トナーを保持し、感光体ドラム31に接触して所定の周速度で回転し、所定の駆動電圧が印加されることにより、感光体ドラム31上にトナー像を形成する現像ローラ33と、現像ローラ33に接触して現像ローラ33とは逆方向に所定の周速度で回転し、所定の駆動電圧が印加されることにより、現像ローラ33にトナーを供給する供給ローラとを備えている。
転写ベルト17上に濃度測定用の濃度パッチパターンPPを転写し、濃度センサ25で複数個所の濃度を測定する。この測定結果に応じて、前記2種類の駆動電圧を調整してトナーの供給量を最適化するか、又は、この濃度の測定結果に応じて、前記2種類の周速度の比率を調整してトナーの供給量を最適化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式のプリンタや複写機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ等の画像形成装置は、感光体ドラム、現像ローラ、現像ブレード、トナー供給ローラ、帯電ローラ等を備えており、トナーの供給ローラから現像ローラ上に供給されたトナーを、現像ブレードで均一な薄層に整えた後、現像ローラと感光体ドラムとが接触しながら回転することにより、トナーが現像ローラから感光体ドラムの静電潜像に付着してトナー像として可視化される。このトナー像がローラや転写ベルト等の転写部材によって印刷用紙等の転写材に転写され、定着部材によって熱定着される。
【0003】
このような画像形成装置おいて、トナーの供給ローラは、現像ローラに対してカウンタ方向(即ち、現像ローラに対して逆方向)に回転しており印刷枚数が増えると磨耗してローラ径が小さくなり、トナー供給能力が減少していく。このことにより、かすれ、残像等の印字品質の劣化が引き起こされる。特に、これらの印刷不具合は現像ローラ1周後、あるいは、供給ローラ1周後に発生することが多い。これは印刷により使用された各ローラ上のトナーが十分補充されないため、現像ローラ上のトナーが供給不足になるからである。
【0004】
このような課題を解決するための技術として、現像ローラ表面にウレタンゴム主体の層を形成することで、供給ローラの磨耗を抑制する技術が下記の特許文献1に紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−31355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術を用いても、供給ローラは、現像ローラに接触してカウンタ方向に回転するように構成されているので、供給ローラの磨耗を避けることができない。更に、昨今、画像形成装置が長寿命化したことにより、印刷枚数が増加する傾向にあり、供給ローラの磨耗によって引き起こされる、かすれ、残像等の印刷品質の劣化を抑制することが課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像読取装置は、潜像を担持する回転自在の像担持体と、現像剤を供給する回転自在の現像剤供給部材と、供給された前記現像剤を担持する回転自在の現像剤担持体とを有し、所定の動作条件に従って動作し、担持された前記現像剤を前記像担持体に供給して現像剤像を形成する現像手段と、前記現像剤像を転写部材に転写する転写手段と、前記転写部材に転写された濃度測定用の前記現像剤像において、前記現像剤担持体が1周する間に形成された前記現像剤像の濃度と前記現像剤担持体が1周した以降の濃度を測定して濃度測定結果を出力する濃度検出手段と、前記濃度測定結果に基づき、前記現像手段における前記動作条件を制御する制御手段とを備えている。
【0008】
前記制御手段は、前記濃度検出手段によって測定された測定結果に基づき、前記現像剤担持体に印加する電圧と、前記現像剤供給部材に印加する電圧とを制御するように構成されている。
【0009】
本発明の他の画像形成装置は、前記現像剤供給部材の回転速度を制御する動力部を有し、前記制御手段は、記濃度検出手段によって測定された測定結果に基づき、前記現像剤供給部材の前記回転速度を制御するように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の画像形成装置によれば、濃度測定用の現像剤像の複数個所の濃度を測定し、その濃度測定結果に基づき、現像手段に印加する駆動電圧を最適化することにより、現像剤の供給量を制御するように構成したので、供給ローラの摩耗等によって引き起こされる、かすれ、残像等の印刷品位の劣化を抑制することができる。
【0011】
本発明の他の画像形成装置は、濃度測定用の現像剤像の複数個所の濃度を測定し、その濃度測定結果に基づき、現像剤担持体と現像剤供給部材との回転速度比(=周速度比)を動的に変化させ最適化することにより、現像剤の供給量を制御するように構成したので、供給ローラの摩耗等によって引き起こされる、かすれ、残像等の印刷品位の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の実施例1における図2の画像形成装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図2は本発明の実施例1における画像形成装置の概略を示す構成図である。
【図3】図3は図2の画像形成ユニットの概略を示す構成図である。
【図4】図4は本発明の実施例1における転写ベルト上に形成された濃度パッチパターンを示す説明図である。
【図5】図5は本発明の実施例1におけるバイアス制御テーブルを示す図である。
【図6】図6は本発明の実施例1における画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【図7−1】図7−1は図4の濃度パッチパターンの形成動作を示す説明図である。
【図7−2】図7−2は図4の濃度パッチパターンの形成動作を示す説明図である。
【図8】図8は本発明の実施例2における図2の画像形成装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図9】図9は本発明の実施例2における供給ローラ周速比変更テーブルを示す図である。
【図10】図10は本発明の実施例2における画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0014】
(実施例1の画像形成装置の構成)
図2は、本発明の実施例1における画像形成装置の概略を示す構成図である。
【0015】
画像形成装置10は、例えば、カラープリンタであって、装置の下部には、転写材(例えば、用紙)Pを収納する給紙カセット11を備えている。ホッピングローラ12は、給紙カセット11から用紙Pを、1枚ずつ繰出す機構である。繰り出された用紙Pは、用紙Pの斜行矯正機能を有するレジストローラ13,14,15によって、複数の画像形成ユニット30(=30K,30Y,30M,30C)まで搬送される。
【0016】
複数の画像形成ユニット30(=30K,30Y,30M,30C)は、用紙搬送方向の上流から、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼン夕(M)、シアン(C)の順に実装されて配置されている。画像形成ユニット30K,30Y,30M,30Cは、色の違いを除いては、同一の構成、機能を有しており、特に区別する必要がないときは、単に画像形成ユニット30と表記する。次に述べる転写ローラ16についても同様とする。
【0017】
用紙Pは転写ベルト17により搬送される。画像形成ユニット30の下部には、複数の転写部材(例えば、転写ローラ)16(=16K,16Y,16M,16C)が設けられており、画像形成ユニット30で形成された現像画像を用紙Pに転写する機能を有している。転写ベルト17は、搬送ローラ18,19によって駆動され、用紙Pを搬送するための装置である。この転写ベルト17及び搬送ローラ18,19により転写部材が構成されている。用紙Pは、用紙カセット11からホッピングローラ12やレジストローラ13,14,15により搬送され、転写ベルト17上を通過し、ヒートローラ20とバックアップローラ21とで構成される定着装置22において、現像剤(例えば、トナー)を定着させた後、排出ローラ23,24により画像形成装置10から外部へ排出される。
【0018】
転写ベルト17の下部には、濃度検出手段(例えば、濃度センサ)25と、シャッタ26とが設けられており、濃度測定や自動濃度補正等に用いられる。自動濃度補正とは、転写ベルト17上に転写された、濃度測定用の現像剤像(例えば、濃度パッチパターン)PPのカラー濃度を濃度センサ25によって測定し、この測定データに基づいて所定のトナー濃度になるように調整するプロセス制御をいう。
【0019】
図3は、図2の画像形成ユニットの概略を示す構成図である。
画像形成ユニット30は、静電潜像を担持する像担持体(例えば、感光体ドラム)31と、感光体ドラム31の表面を一様に帯電させるための帯電ローラ32と、感光体ドラム31の表面に潜像パターンを形成する発光ダイオード(以下「LED」という。)露光部36と、感光体ドラム31上に現像剤像(例えば、トナー像)を形成する現像手段とから構成されている。
【0020】
前記現像手段は、現像剤担持体(例えば、現像ローラ)33、現像剤供給部材(例えば、供給ローラ)34、現像ローラ33上のトナー量を規制する現像ブレード35、及びトナーを蓄積してトナーを供給ローラ34に補充する図示しないトナーカートリッジを有している。
【0021】
感光体ドラム31は、アルミなどの金属パイプと、その表面の光導電層と電荷輸送層とで形成されている。帯電ローラ32は、金属シャフトと半導電性ゴム層によって構成され、感光体ドラム31に接触するように配置されている。帯電ローラ32には、帯電バイアス電源38が接続され、電圧が制御されように構成されている。LED露光部36は、図示しないLED素子と、LED駆動素子と、レンズアレイとから構成されている。
【0022】
現像ローラ33は、潜像パターンをトナーにより現像するための装置であり、金属シャフトと半導電ウレタンゴム材等で構成されている。現像ローラ33は、感光体ドラム31と接触するように配置され、一定の回転速度(=周速度)で回転する機能を有している。現像ローラ33には、現像ローラバイアス電源39が接続され、所定の駆動電圧である現像ローラバイアス電圧が印加されるように構成されている。
【0023】
供給ローラ34は、トナーを現像ローラ33に供給するための装置であり、金属シャフトとシリコンゴム材等で構成されている。供給ローラ34は、現像ローラ33と接触するように配置されて現像ローラ33の回転方向とは、カウンタ方向に所定の周速度で回転する機能を有している。供給ローラ34には、供給ローラバイアス電源40が接続され、所定の駆動電圧である供給ローラバイアス電圧が印加されるよう構成されている。
【0024】
現像ブレード35は、現像ローラ33上のトナー層を規制するための装置であり、ステンレス等の板状部材であり、先端部が僅かに現像ローラ33に当接するように配置されている。現像ブレード35には、現像ブレード電源40が接続され、所定の電圧が印加されるよう構成されている。
【0025】
画像形成ユニット30の下部には、転写ローラ16が配置されている。この転写ローラ16は、トナー像を用紙Pに転写するための装置であり、発泡性の弾性体からなり、感光体ドラム31に接触する位置に配置されている。転写ローラ16には、転写ローラバイアス電源42が接続され、所定のバイアス電圧が印加されるように構成されている。クリーニング装置37は、感光体ドラム31上に残留したトナーを回収するための装置であり、ゴムブレードにより構成され、先端部が感光体ドラム31に接するように配置されている。
【0026】
図1は、本発明の実施例1における図2の画像形成装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0027】
プリンタ制御部51は、図示しないプロセッサを有しており、画像形成装置10全体を制御する。プリンタ制御部51には、上位装置60からの印刷データを受信するインタフェース部52と、カラー濃度等を検出する濃度センサ25と、検出した濃度値を記録するRAM(Random Access Memory)53とが接続されている。更に、プリンタ制御部51には、バイアス制御テーブル70a,70bが記録された記憶手段であるROM(Read Only Memory)54と、各種電源を制御する電源制御部55と、LED露光部36を制御する露光制御部56と、モータドライバ57とが接続されている。
【0028】
モータドライバ57は、メインモータ58を駆動して感光体ドラム31の回転を制御する。電源制御部55は、プリンタ制御部51の制御に基づいて、各バイアス電圧を設定及び変更する機能を有している。現像ローラ33は、現像ローラバイアス電源39に、供給ローラ34は、供給ローラバイアス電源40に、現像ブレード35は、現像ブレードバイアス電源41に、帯電ローラ32は、帯電ローラバイアス電源38に、転写ローラ16は、転写ローラバイアス電源42により、それぞれ所定のバイアス電圧が印加されるように構成されている。
【0029】
図4は、本発明の実施例1における転写ベルト上に形成された濃度パッチパターンを示す説明図である。
【0030】
供給ローラ34の磨耗により、どの程度のかすれ、又は残像が発生しているか測定するための濃度パッチパターンPPが転写ベルト17上に形成されている。濃度パッチパターンPPは、100%べたパターンの帯(全面パターンの帯)で構成されている。100%べたパターンにする理由は、次の(1)、(2)の通りである。
【0031】
(1) 濃度差を見分ける場合、供給ローラ34からのトナーの供給量と、現像ローラ33において印刷の1周目で使用されたトナーの量との差により形成される濃度差段差を測定して、かすれ等の発生を見分ける。このため、100%べたパターンでない中間調の帯にした場合は、濃度段差が測定できる程度に十分発生し難い状態となる。
【0032】
(2) 中間調にしたときに、濃度差の相対値が変わらないとしても、濃度の絶対値が小さくなるため濃度センサ25の読取誤差の影響が大きくなり、誤った濃度測定値となる確率が高くなる。
【0033】
以上の理由により濃度パッチパターンPPは、100%べたパターンが好ましいが、中間調のパターンであってもよい。
【0034】
図4において、領域K1は、画像先頭から現像ローラ33の回転の1周分に相当する長さL1を持った領域であって、ブラックのトナーによって100%べたパターンで形成されている。領域K2は、供給ローラ34の1周分に相当する長さを持った領域である。
【0035】
供給ローラ34から現像ローラ33へのトナー供給能力が低下すると領域K2の先頭部にかすれ、残像が発生する。領域K3は、現像ローラ33に1周分の長さL1と供給ローラ34の1周分の長さL2を加えたL1+L2より後ろの領域であり、供給ローラ34のトナー供給能力及びトナー回収能力が低下すると領域K3の先頭部にかすれ、残像が発生する。
【0036】
ここでトナー回収能力とは、現像ローラ33上の未使用トナーを掻きと取る能力と、周囲のトナーを収集する能力のことである。供給ローラ34は、通常、図示しないトナーカートリッジから供給されるトナーで満たされており、供給ローラ34は、回転しながら周囲のトナーを収集するように構成されている。
【0037】
供給ローラ34は、磨耗して外径が小さくなると現像ローラ33への圧力が弱くなり掻き取り能力が低下する。更に、外径が小さくなることにより、供給ローラ34の表面積も小さくなることから、周囲のトナーを収集する能力も低下する。
【0038】
本実施例1では、例えば、L1=39.7mm、L2=58.4mm、L3=30mmであり、先頭部は各領域先端から1mmの部分のことをいう。
【0039】
図5(a)、(b)は、本発明の実施例1におけるROM内のバイアス制御テーブルを示す図である。
【0040】
図5(a)に示すバイアス制御テーブル70aは、第1の濃度である領域K1の先頭部の濃度と第2の濃度である領域K2の先頭部の濃度との濃度差である第1の濃度差Δ1と、現像ローラ33及び供給ローラ34のバイアス電圧の補正値の対応を予め設定したテーブルであり、ROM54に記憶されている。バイアス制御テーブル70aにおいて、制御レベル71aは、濃度差Δ1の濃度範囲ごとのレベルを示し、濃度差72aは、濃度差Δ1の濃度範囲を示し、バイアス補正値73aは、濃度差Δ1に応じて現像ローラ33及び供給ローラ34のバイアス電圧を補正すべき値を示している。
【0041】
図5(b)に示すバイアス制御テーブル70bは、領域K1の先頭部の濃度と第3の濃度である領域K3の先頭部の濃度との濃度差である第2の濃度差Δ2と、現像ローラ33及び供給ローラ34のバイアス電圧の補正値の対応を予め設定したテーブルであり、ROM54に記憶されている。バイアス制御テーブル70bにおいて、制御レベル71bは、濃度差Δ2の濃度範囲ごとのレベルを示し、濃度差72bは、濃度差Δ2の濃度範囲を示し、バイアス補正値73bは、濃度差Δ2に応じて現像ローラ33及び供給ローラ34のバイアス電圧を補正すべき値を示している。
【0042】
(実施例1の画像形成装置の動作)
以下に本発明の画像形成装置10の動作を説明するが、本発明は本実施例1のパラメータ(電圧等)の値に何ら限定されるものではない。
【0043】
図1及び図3において、帯電ローラ32は、感光体ドラム31の表面を一様に、例えば−500Vに帯電する。プリンタ制御部51により出力された画像データは、LED露光部36に送られ、印刷パターンに応じた静電潜像を感光体ドラム31上に形成する。そして、供給ローラ34に、例えば、−300Vが印加され、現像ローラ33上にトナーを供給する。現像ローラ33上のトナーは、現像ブレード35との摩擦等により帯電し、薄層化される。
【0044】
更に、現像ローラ33に、例えば、−200Vを印加することにより、トナーを感光体ドラム31上の静電潜像に付着させる。その後、感光体ドラム31上に現像されたトナーは、転写ローラ16に電圧を印加することで、用紙P上に転写され、用紙P上のトナーが定着装置22により定着される。転写後に感光体ドラム31上に残留したトナーはクリーニング装置37によりクリーニングされる。
【0045】
図6は、本発明の実施例1における画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【0046】
図6において、現像ローラバイアス電圧及び供給ローラバイアス電圧の補正の処理が開始される。本処理の開始は、画像形成装置10のオペレータの指示によって開始してもよいし、例えば、現像ローラ33、又は供給ローラ34の印刷動作時の延べ回転数をプリンタ制御部51でカウントし、所定の回転数になったら開始するようにしてもよい。本処理は、プリンタ制御部51の制御によって実行される。
【0047】
ステップS1において、プリンタ制御部51は、供給ローラ34の磨耗により、どの程度のかすれ、又は残像が発生しているか測定するための濃度パッチパターンPPを転写ベルト17上に作成する。
【0048】
濃度パッチパターンPPが転写ベルト17上に作成されると、ステップS2において、濃度検出手段は、シャッタ26を開けて濃度センサ25により領域K1,K2,K3の各先頭部の濃度を測定し、RAM53へ記録する。
【0049】
ステップS3において、プリンタ制御部51内の濃度検出手段は、測定された濃度に基づき、領域K1の先頭部の濃度と領域K2の先頭部の濃度との濃度差Δ1を計算する。ステップS4において、プリンタ制御部51内の制御手段は、ROM54に記憶されたバイアス制御テーブル70aを参照して、濃度差Δ1から現像ローラバイアス電圧と供給ローラバイアス電圧との補正値73aを決定する。
【0050】
バイアス変更テーブル70aは、濃度差Δ1が大きくなるにつれて、制御レベル71aのレベルが高くなり、これに応じて、現像ローラバイアス電圧と供給ローラバイアス電圧の差を大きくすることでトナー供給能力を高めるように、バイアス補正値73aが設定されている。逆に、濃度差Δ1が小さくなるにつれて、制御レベル71aのレベルが低くなり、これに応じて、現像ローラバイアス電圧と供給ローラバイアス電圧の差を小さくすることで、現像効率を抑えて現像ローラ33の1周で使用されるトナー量を抑えるように、バイアス補正値73aが設定されている。
【0051】
ステップS5において、プリンタ制御部51内の濃度検出手段は、領域K1の先頭部と領域K3の先頭部の濃度差Δ2を計算する。ステップS6において、プリンタ制御部内の制御手段は、ROM54に記憶されたバイアス制御テーブル71bを参照して、濃度差Δ2から現像ローラバイアス電圧と供給ローラバイアス電圧の補正値73bを決定する。
【0052】
バイアス変更テーブル70bは、濃度差Δ2が大きくなるにつれて、制御レベル71bのレベルが高くなり、これに応じて、現像ローラバイアス電圧と供給ローラバイアス電圧との差を大きくすることでトナー供給能力を高め、現像効率を上げて領域K3以降の濃度を向上させるように、バイアス補正値73bが設定されている。
【0053】
ステップS7において、前記ステップS4及びステップS6で求めた2つの補正値を加算し、最終的な補正バイアス電圧を決定する。
【0054】
例えば、領域K1の先頭部の濃度が1.40、領域K2の先頭部の濃度が1.37、領域K3の先頭部の濃度が1.32と測定された場合、濃度Δ1=1.40−1.37=0.03、濃度Δ2=1.40−1.32=0.08となる。濃度Δ1については、バイアス制御テーブル70aを参照して、制御レベル71aは、2となり、現像ローラバイアス電圧が補正値−5により、現像ローラバイアス電圧が−200Vから−195Vに、供給ローラバイアス電圧が補正値15により-300Vが-315Vとなる。
【0055】
濃度Δ2については、バイアス制御テーブル70bを参照して、制御レベル71bは6となり、現像ローラバイアス電圧が補正値15により、現像ローラバイアス電圧が−195Vが−210に、供給ローラバイアス電圧が補正値45により-315Vが-360Vとなる。
【0056】
図7−1、及び図7−2は、図4の濃度パッチパターンの形成動作を示す説明図である。
【0057】
転写ベルト17上に形成された濃度パッチパターンPPの形成動作について図7−1及び図7−2とを用い、状態(a)〜(e)に分けて、より詳細に説明する。
【0058】
状態(a):印刷が開始される前の状態(初期状態)
印刷開始の準備のため、現像ローラ33及び供給ローラ34を空回しする。その結果、現像ローラ33及び供給ローラ34上には、トナーが十分充填される(現像ローラ33及び供給ローラ34上の●印で示す部分)。
【0059】
状態(b):印刷開始、領域K1の形成開始
印刷が開始され、現像ローラ33上のトナーが消費される。図7−1の状態(a)のトナーの状態S1では、現像ローラ33上のトナーが感光体ドラム31に供給され(感光体ドラム31上の●印で示す部分)、現像ローラ33上のトナーは、消費され薄くなる(現像ローラ33上の○印で示す部分)。感光体ドラム31上に領域K1が形成され始める。
【0060】
状態(c):領域K2の形成開始
図7−1の状態(c)のトナーの状態S2では、現像ローラ33上のトナーは、消費され薄くなる(現像ローラ33上の○印で示す部分)と共に、消費されて薄くなった現像ローラ33上の部分に供給ローラ34からトナーが新たに供給され(現像ローラ33上の△印で示す部分)、領域K2が形成され始める。
【0061】
状態(d):領域K3の形成開始
図7−2の状態(d)のトナーの状態S3では、供給ローラ34が1周し終え、薄くなったトナーが供給ローラ34から現像ローラ33に供給され(現像ローラ33及び供給ローラ34上の○印で示す部分)、領域K3が形成され始める。
【0062】
状態(e):領域K3の形成
現像ローラ33及び供給ローラ34共にトナーが薄くなった状態になり、転写ベルト17上には、領域K1が、転写ベルト17上と感光体ドラム31上には、領域K2が形成され、感光体ドラム31上には領域K2に続いて、領域K3が形成されつつある。
【0063】
このように状態(a)〜(e)を経て、領域K1,K2、K3が濃度パッチパターンPPとして転写ベルト17上に形成される。
【0064】
(実施例1の効果)
本実施例1の画像形成装置10によれば、供給ローラ34が磨耗し、トナー供給能力が低下したときにおいても、濃度パッチパターンPPを測定し、その測定された濃度に基づき、現像ローラバイアス電圧と供給ローラバイアス電圧とを動的に変更してトナー供給能力を最適化するので、かすれ、残像を抑えることができ、良好な印刷状態を長く保つことができる。このため、画像形成ユニット30の長寿命化を実現することができる。
【実施例2】
【0065】
(実施例2の構成)
図8は、本発明の実施例2における図2の画像形成装置の概略構成を示す機能ブロック図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0066】
実施例2の構成は、実施例1の構成に対し、モータドライバ57に対して、供給ローラ34を個別に駆動させる動力部(例えば、サブモータ)58Aが追加されている点が異なる。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0067】
図9(a)、(b)は、本発明の実施例2におけるROM内の供給ローラ周速比変更テーブルを示す図である。
【0068】
図9(a)に示す供給ローラ周速比変更テーブル80aは、領域K1の先頭部の濃度と領域K2の先頭部の濃度との濃度差Δ1と、現像ローラ33に対する供給ローラ34の周速比83aとの対応を予め設定したテーブルであり、ROM54に記憶されている。供給ローラ周速比変更テーブル80aにおいて、制御レベル81aは、濃度差Δ1の濃度範囲ごとのレベルを示し、濃度差82aは、濃度差Δ1の濃度範囲を示し、供給ローラ周速比83aは、濃度差Δ1に応じた現像ローラ33に対する供給ローラ34の周速比を示している。
【0069】
図9(b)に示す供給ローラ周速比変更テーブル80bは、領域K1の先頭部の濃度と領域K3の先頭部の濃度との濃度差Δ2と、現像ローラ33に対する供給ローラ34の周速比83bとの対応を予め設定したテーブルであり、ROM54に記憶されている。供給ローラ周速比変更テーブル80bにおいて、制御レベル81bは、濃度差Δ2の濃度範囲ごとのレベルを示し、濃度差82bは、濃度差Δ2の濃度範囲を示し、供給ローラ周速比83bは、濃度差Δ2に応じた現像ローラ33に対する供給ローラ34の周速比を示している。
【0070】
(実施例2の動作)
図10は、本発明の実施例2における画像形成装置の動作を示すフローチャートであり、実施例1を示す図6中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0071】
図10において、現像ローラ33に対する供給ローラ34の周速度比の決定処理が開始される。本処理の開始は、画像形成装置10のオペレータの指示によって開始してもよいし、例えば、現像ローラ33、又は供給ローラ34の印刷動作時の延べ回転数をプリンタ制御部51でカウントし、所定の回転数になったら開始するようにしてもよい。本処理は、プリンタ制御部51の制御によって実行される。
【0072】
実施例1と同様に、ステップS1の濃度パッチパターンPPの作成処理、ステップS2の領域K1,K2,K3の濃度測定処理、及びステップS3の濃度Δ1の計算処理が実行される。
【0073】
ステップS14において、プリンタ制御部51内の制御手段は、ROM54に記憶してある供給ローラ周速比変更テーブル80aを参照して、濃度差Δ1から現像ローラ33に対する供給ローラ34の周速比83aを決定し、供給ローラ34の回転速度を制御する。
【0074】
供給ローラ周速比変更テーブル80aは、濃度差Δ1が大きくなるにつれて、制御レベル81aのレベルが高くなり、これに応じて、周速比83aを大きくすることでトナー供給能力を高めるように周速比83aが設定されている。ステップS5において、実施例1と同様に、領域K1の先頭部と領域K3の先頭部の濃度差Δ2を計算する。
【0075】
ステップS16において、プリンタ制御部51内の制御手段は、ROM54に記憶してある供給ローラ周速比変更テーブル80bを参照して、濃度差Δ2から現像ローラ33に対する供給ローラ34の周速比83bを決定し、供給ローラ34の回転速度を制御する。
【0076】
現像ローラ33に対して、供給ローラ34の周速比を上げることでトナー供給能力を向上させることができる。その結果、かすれ、残像を抑制することができる。濃度差Δ2に対して濃度差Δ1の方が、周速比増加に対する効果が大きいため、供給ローラ周速比変更テーブル80aの供給ローラ周速比83aの方が、供給ローラ周速比変更テーブル80bの供給ローラ周速比83bよりも小さめの値に設定されている。得られた供給ローラ周速比83a及び83bに対して相加平均を計算し最終的な周速比を決定する。
【0077】
例えば、領域K1の濃度が1.40、領域K2の濃度が1.37、領域K3の濃度が1.32と測定された場合、濃度差Δ1=1.40−1.37=0.03であり、供給ローラ周速比変更テーブル80aを参照することにより、制御レベル81aは2となり、収束比83aは、0.69となる。濃度差Δ2=1.40−1.32=0.08で、供給ローラ周速比変更テーブル80bを参照することにより、制御レベル81aは6となり、収束比83bは、0.89となる。ここで、周速比83a及び83bの相加平均を取り最終的な周速比は、0.79となる。
【0078】
(実施例2の効果)
本発明の実施例2の画像形成装置10によれば、現像ローラ33に対する供給ローラ34の周速比を増加させて、供給ローラ34のトナー供給能力を向上させることにより、磨耗した供給ローラ34においても、残像、かすれを抑制し良好な印刷品質を保つことができる。更に、周速比を増加させることは、トナー供給能力を向上させるだけではなく、現像ローラ33のローラ上に留まっている未使用のトナーを掻き取る能力が向上する。このため、残像に対しても効果的であり、掻き取り不足で生じる現像ローラ33上へのトナー付着量の一時的な増大による汚れ現象にも効果がある。
【0079】
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(g)のようなものがある。
【0080】
(a) 実施例1、2では、画像形成装置10としてプリンタを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ファクシミリ装置、複写機やMFP(MultiFunction Printer/Product/Peripheral)等にも利用できる。
【0081】
(b) 実施例1におけるバイアス制御テーブル70a,70b及び実施例2における供給ローラ周速比変更テーブル80a,80bは、ROM54に記憶することで説明したが、フラッシュメモリやハードディスク等の不揮発性メモリに記憶してもよい。
【0082】
(c) 実施例1における現像ローラバイアス電圧及び供給ローラバイアス電圧の補正処理と、実施例2における現像ローラ33に対する供給ローラ34の周速比の決定処理は、それぞれ単独で実施してもよいし、実施例1と実施例2とを一連の処理として実行するようにしてもよい。
【0083】
(d) 実施例1における現像ローラバイアス電圧及び供給ローラバイアス電圧の補正処理において、ステップS5とステップS7とで求めた2つの補正値を加算して最終的な補正バイアス電圧を決定することで説明したが、必ずしもこれに限定されない。例えば、実験等の結果により相加平均や加重平均を用いてもよい。
【0084】
(e) 実施例2における現像ローラ33に対する供給ローラ34の周速比の決定処理は、ステップS14とステップS16とで求めた2つの周速比の相加平均を計算し最終的な周速比を決定することで説明したが、必ずしもこれに限定されない。例えば、実験等の結果により加重平均を用いてもよい。
【0085】
(f) 転写材は、用紙Pで説明したが、用紙Pに限定されず、例えば、フィルム等の他の転写材であってもよい。
【0086】
(g) 実施例1、2では、感光体ドラム31と現像ローラとは、接触して構成されていることで説明したが、接触させずに近接するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0087】
10 画像形成装置
16 転写ローラ
17 転写ベルト
25 濃度センサ
30 画像形成ユニット
31 感光ドラム
32 帯電ローラ
33 現像ローラ
34 供給ローラ
35 現像ブレード
39 現像ローラバイアス電源
40 供給ローラバイアス電源
51 プリンタ制御部
53 RAM
54 ROM
58 メインモータ
58A サブモータ
70a、70b バイアス制御テーブル
80a、80b 供給ローラ周速比変更テーブル
PP 濃度パッチパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像を担持する回転自在の像担持体と、
現像剤を供給する回転自在の現像剤供給部材と、供給された前記現像剤を担持する回転自在の現像剤担持体とを有し、所定の動作条件に従って動作し、担持された前記現像剤を前記像担持体に供給して現像剤像を形成する現像手段と、
前記現像剤像を転写部材に転写する転写手段と、
前記転写部材に転写された濃度測定用の前記現像剤像において、前記現像剤担持体が1周する間に形成された前記現像剤像の濃度と前記現像剤担持体が1周した以降の濃度を測定して濃度測定結果を出力する濃度検出手段と、
前記濃度測定結果に基づき、前記現像手段における前記動作条件を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記濃度検出手段は、
前記濃度測定用の前記現像剤像において、前記現像剤担持体が1周する間に形成された前記現像剤像の濃度である第1の濃度と、前記現像剤担持体が1周した直後後に形成された前記現像剤像の濃度である第2の濃度とを測定し、前記第1の濃度と前記第2の濃度の差分である第1の濃度差を算出して前記濃度測定結果として出力することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記濃度検出制御手段は、
前記濃度測定用の前記現像剤像において、前記現像剤担持体が1周する間に形成された前記現像剤像の濃度である前記第1の濃度と、前記現像剤担持体の1周の長さと前記現像剤供給部材の1周の長さとを加えた距離以降に形成された前記現像剤像の濃度である第3の濃度とを測定し、前記第1の濃度と前記第3の濃度の差分である第2の濃度差を算出して前記濃度測定結果として出力することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記濃度検出手段は、
前記濃度測定用の前記現像剤像において、
前記現像剤担持体が1周する間に形成された前記現像剤像の濃度である第1の濃度と、
前記現像剤担持体が1周した直後後に形成された前記現像剤像の濃度である第2の濃度と、
前記現像剤担持体の1周の長さと前記現像剤供給部材の1周の長さとを加えた距離以降に形成された前記現像剤像の濃度である第3の濃度とを測定し、
前記第1の濃度と前記第2の濃度の差分である第1の濃度差を算出し、
前記第1の濃度と前記第3の濃度の差分である第2の濃度差を算出して前記濃度測定結果として出力することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置は、
複数の濃度の値と前記濃度の値に対応する前記動作条件を規定する設定値とを記憶した記憶手段を有し、
前記制御手段は、前記濃度測定結果に基づき、前記設定値を選択することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記濃度測定結果に基づき前記設定値を選択することにより、
前記現像剤担持体に印加する駆動電圧と、
前記現像剤供給部材に印加する駆動電圧と、
を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置は、
前記現像剤供給部材の回転速度を制御する動力部を有し、
前記制御手段は、前記濃度測定結果に基づき前記設定値を選択することにより、
前記現像剤供給部材の前記回転速度を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記像担持体は、感光体ドラムであり、前記現像剤は、トナーであり、前記現像剤担持体は、現像ローラであり、前記現像剤供給部材は、供給ローラであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−197132(P2011−197132A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61374(P2010−61374)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】