説明

画像形成装置

【課題】トナーの劣化の程度に応じて適切な量のトナーの廃棄量を決定して廃棄する。
【解決手段】帯電部材電源制御部58により、帯電ローラ32に標準電圧Vsを印加して第1のトナー像Ta形成し、これを転写ベルト15に転写して濃度測定部52により光学的濃度α1を測定する。同様に、帯電部材電源制御部58により、帯電ローラ32に標準電圧より低い設定電圧Vfを印加して第2のトナー像Taを形成し、これを転写ベルトに転写して濃度測定部52により光学的濃度α2を測定する。測定された光学的濃度α1と測定された光学的濃度α2との光学的濃度差βを、濃度差演算部53で算出する。現像剤廃棄量決定部54は、光学的濃度差βと前記濃度差βの上限設定値Um及び下限設定値Lmとを比較して廃棄に必要なドット数決定し、トナー廃棄量を決定する。そのため、適正量のトナー廃棄が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式のプリンタや複写機等の画像形成装置に係り、特に、廃棄する現像剤の量の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置においては、帯電装置により均一に帯電された感光体ドラム上を露光装置により露光して静電潜像を形成するようになっている。この静電潜像を現像装置により現像して感光体ドラム上に現像剤像を形成し、この現像剤像を転写装置により記録媒体に転写する。更に、記録媒体上に転写された現像剤像を定着器により、熱と圧力を加えて定着するようになっている。このような、画像形成装置において、転写されずに感光体ドラム上に残留した現像剤は、現像剤像の転写後、感光体ドラムに当接して設けられたクリーニングブレードにより掻き取られ、回収されるようになっている。更に、劣化して現像されにくくなった現像装置中の劣化現像剤を定期的に廃棄することで画像品質を保つことが行われている。
【0003】
例えば、下記に示す特許文献1には、劣化して現像されにくくなった劣化現像剤を定期的に廃棄することで画像品質を保つクリーニング方法が記載されている。即ち、所定量の劣化現像剤を感光体ドラム上に現像剤像として形成し、現像剤像が感光体ドラムに付着した状態を保持するように転写装置の電圧を制御する。転写動作後に、感光体ドラム上に保持された現像剤像を、クリーニング装置により掻き落とすことで劣化現像剤を破棄する。
【0004】
更に、特許文献1には、感光体ドラムの回転数と印刷ドット数をカウントし、感光体ドラムの回転数が閾値に達したときには、そのときの印刷ドット数と規定ドット数とを比較し、印刷ドット数が規定ドット数に満たないときには、規定ドット数と印刷ドット数の差分のドット数分の現像剤を廃棄することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−45481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の画像形成装置では、現像剤の劣化の程度に拘らず、廃棄動作毎に所定の量の現像剤量が廃棄されていた。このため、劣化現像剤の割合が低い状態であっても所定の量の現像剤が廃棄されることになり、必要以上の現像剤を廃棄してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像形成装置は、静電潜像を担持するための像担持体と、前記像担持体を帯電させる帯電部材と、前記像担持体上を露光して前記像担持体上に前記静電潜像を形成する露光手段と、現像剤を担持し、前記現像剤を前記静電潜像に供給して前記像担持体上に現像剤像を形成させる現像剤担持体と、前記帯電部材に標準電圧又は前記標準電圧よりも低い設定電圧を印加させる帯電部材電源制御部と、転写部材と、濃度測定部と、濃度差演算部と、現像剤廃棄量決定部と、決定された前記現像剤廃棄量に基づき、前記現像剤廃棄量に対応した廃棄パターンの画像データを選択する現像剤廃棄部とを備えている。
【0008】
前記転写部材は、前記帯電部材に前記標準電圧が印加されて形成された第1の前記現像剤像と、前記帯電部材に前記設定電圧が印加されて形成された第2の前記現像剤像と、を転写電圧が印加されることにより被転写部材に転写するものである。前記濃度測定部は、前記被転写部材に転写された前記第1の現像剤像の第1の光学的濃度と、前記被転写部材に転写された前記第2の現像剤像の第2の光学的濃度と、を濃度検出手段により測定するものである。前記濃度差演算部は、測定された前記第1の光学的濃度と測定された前記第2の光学的濃度との濃度差を算出するものである。更に、前記現像剤廃棄量決定部は、算出された前記濃度差と前記濃度差の上限設定値及び下限設定値とを比較して前記現像剤の劣化の程度を推定し、現像剤廃棄量を決定するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像形成装置によれば、帯電電圧を変化させ、被転写部材上にそれぞれ形成した第1及び第2の現像剤像の光学的濃度差に基づいて、現像剤の廃棄量を決定するようにしたので、現像剤の劣化による印刷画像の品質劣化を防ぐことができると共に、適正量の現像剤の廃棄が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の実施例1における図2の画像形成装置の制御系回路部を示す機能ブロック図である。
【図2】図2は本発明の実施例1における画像形成装置を示す構成図である。
【図3】図3は図2中のイメージドラムユニット及び電源ユニットを示す構成図である。
【図4】図4は図2中の転写ベルト上に形成されたトナー像及び濃度センサを示す図である。
【図5】図5は劣化トナーにおける帯電電圧と光学的濃度との関係を示す図である。
【図6】図6はトナー廃棄ドット数閾値と条件S及び条件Tとの関係を示す図である。
【図7】図7は廃棄トナー量M6の算出条件を示す図である。
【図8】図8は廃棄トナー量M5の算出条件を示す図である。
【図9】図9は実施例1における画像形成装置の廃トナー廃棄動作を示すフローチャートである。
【図10】図10は本発明の実施例2における画像形成装置の制御系回路部を示す機能ブロック図である。
【図11】図11は図10中の記憶部に格納されている環境値テーブルを示す図である。
【図12】図12は環境値と光学的濃度差の上限設定値及び下限設定値との関係を示す図である。
【図13】図13は実施例2における画像形成装置の廃トナー廃棄動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0012】
(実施例1の構成)
図2は、本発明の実施例1における画像形成装置10を示す構成図である。
【0013】
この画像形成装置10は、例えば、電子写真方式のページプリンタであって、記録媒体(例えば、用紙)Pが積層される用紙トレイ11を有している。用紙トレイ11の繰出し側には、用紙Pを1枚ずつ繰出すホッピングローラ12が設けられている。ホッピングローラ12の用紙搬送方向下流には、搬送ローラ13,14が設けられている。
【0014】
搬送ローラ13,14の下流で、且つ画像形成装置10のほぼ中央には、用紙搬送方向Xの上流からブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の色別のイメージドラムユニット30(=30K,30Y,30M,30C)が設けられている。
【0015】
イメージドラムユニット30の下方には、被転写部材(例えば、転写ベルト)15を挟んで、複数の転写部材(例えば、転写ローラ)16(=16K,16Y,16M,16C)が設けられている。転写ローラ16は、イメージドラムユニット30において形成された現像剤像(例えば、トナー像)Taを用紙Pに転写する機能を有している。転写ベルト15は、ベルト搬送ローラ17,18よって駆動されて回転し、用紙Pを搬送する機能を有している。ベルト搬送ローラ18に対向する位置には、レジストローラ19が設けられている。転写ベルト15の下部には、転写ベルト上に残留した現像剤(例えば、トナー)Tを掻き落とす転写クリーニング装置20が設けられている。
【0016】
イメージドラムユニット30の下流には、用紙P上に転写されたトナー像Taを、熱と圧力を加えて定着する定着器21が設けられている。定着器21は、トナー像Taを加熱するヒートローラ21aと、このヒートローラ21aと共に用紙Pを挟持して加圧するバックアップローラ21bとを有している。
【0017】
定着器21の下流には、トナー像Taが定着された用紙Pを外部に排出する排出ローラ対22,23が設けられている。画像形成装置10の上部には、印刷された用紙Pを堆積するスタッカ24が設けられている。画像形成装置10の下部には、イメージドラムユニット30内の廃トナーTwを回収して保管する廃現像剤回収容器(例えば、廃トナー回収容器)25が設けられている。
【0018】
更に、画像形成装置10は、この画像形成装置10の各部材を制御する制御系回路部50と、イメージドラムユニット30に電圧を印加する電源ユニット30pとを有している。
【0019】
図3は、図2中のイメージドラムユニット30及び電源ユニット30pを示す構成図である。
【0020】
イメージドラムユニット30は、静電潜像を担持する像担持体(例えば、感光体ドラム)31と、この感光体ドラム31を帯電させる帯電部材(例えば、帯電ローラ)32と、感光体ドラム31に対向して配置された回転可能な現像剤担持体(例えば、現像ローラ)33と、現像ローラ33上へトナーTを供給し、現像ローラ33上の未使用トナーTを回収する供給部材(例えば、供給ローラ)34と、現像ローラ33上のトナーTを薄層形成するトナー規制部材(例えば、トナー規制ブレード)35と、感光体ドラム31上のかぶりトナーT及び転写残トナーTを回収するためのクリーニング装置(例えば、クリーニングブレード)36とを有している。
【0021】
イメージドラム30の上方には、感光体ドラム31の表面に静電潜像を形成する露光手段である発光ダイオード(以下「LED」という。)ヘッド27が設けられている。LEDヘッド27は、図示しないLED素子と、LED駆動素子と、レンズアレイとから構成されている。
【0022】
クリーニングブレード36で掻き落された廃トナーTwは、色別のイメージドラム30(=30K,30Y,30M,30C)毎に、図示しないトナー回収経路を通り、廃トナー回収容器25に格納されるようになっている。
【0023】
画像形成装置10は、イメージドラム30の各部に電圧を印加する電源ユニット30pを有している。電源ユニット30pは、帯電ローラ32に電圧を印加する帯電ローラ電源32pと、現像ローラ33に電圧を印加する現像ローラ電源33pと、供給ローラ34に電圧を印加する供給ローラ電源34pとを有している。
【0024】
感光体ドラム31は、有機系感光体であって導電性支持体とその表面の光導電層によって構成されている。導電性支持体は、アルミニウムの金属パイプであり、光導電層は、電荷発生層と電荷輸送層とを積層したものである。
【0025】
帯電ローラ32は、金属シャフトと半導電性ゴム層によって構成されており、感光体ドラム31と接触するように配置されている。現像ローラ33は、金属シャフトと半導電性ウレタンゴム材等で構成されており、感光体ドラム31と接触するように配置されている。供給ローラ34は、金属シャフトと発泡性のシリコンゴム材等で構成されており、現像ローラ33と接触するように配置されている。
【0026】
トナー規制ブレード35は、ステンレス等の板状部材で構成されており、先端部が僅かに現像ローラ33に当接するように配置されている。クリーニングブレード36は、ポリウレタンゴム等のゴム状弾性体であって、感光体ドラム31に対してカウンタで当接するように配置されている。転写ローラ16は、発泡性の半導電性弾性ゴム材で構成されている。
【0027】
感光体ドラム31の外径は30mm、現像ローラ33の外径は16mm、供給ローラ34の外径は15.5mmである。感光体ドラム31に対する現像ローラ33の周速比は1.35、現像ローラ33に対する供給ローラ34の周速比は0.67となっている。帯電ローラ電源32pは、トナーTと同極性のバイアスを出力する。現像ローラ電源33pは、トナーTと同極性のバイアス或いは逆極性のバイアスを出力する。供給ローラ電源34pは、トナーTと同極性のバイアス或いは逆極性のバイアスを出力する。
【0028】
図4は、図2中の転写ベルト15上に形成されたトナー像及び濃度センサを示す図である。
【0029】
転写ベルト15上にトナーTによる所定のトナー像Taが形成されている。転写ベルト15の近傍には、トナー像Taの光学的濃度を検出する濃度検出手段(例えば、濃度センサ)26が配置されている。
【0030】
図1は、本発明の実施例1における図2の画像形成装置10の制御系回路部50を示す機能ブロック図である。
【0031】
本実施例1の制御系回路部50は、全体を制御する制御部51を有している。制御部51には、濃度測定部52と、濃度差演算部53と、現像剤廃棄量決定部54と、現像剤廃棄部55と、各種カウンタや測定値を記憶する記憶部56と、感光体ドラム回転数計測部57と、帯電部材電源制御部58と、外部装置との通信を行うインターフェイス部(以下「I/F部」という。)59と、印刷ドット数計数部60とを有している。
【0032】
濃度測定部52は、濃度センサ26により、転写ベルト15上に形成されたトナー像Taの光学的濃度を測定して記憶部56に記憶させる機能を有している。濃度差演算部53は、記憶部56から複数の光学的濃度値α1,α2を読み出して光学的濃度差βを算出し、算出結果を現像剤廃棄量決定部54に送る機能を有している。現像剤廃棄量決定部54は、濃度演算部53の算出した光学的濃度差βに基づいて廃棄すべきトナーTの量を決定する機能を有している。
【0033】
感光体ドラム回転数計測部57は、感光体ドラム31の回転数L1,L2を計測し、計測された値を記憶部56に記憶する機能を有している。帯電部材電源制御部58は、帯電ローラ電源32pを制御して、帯電ローラ32に標準電圧Vs又は標準電圧Vsよりも低い設定電圧Vfを印加させる機能を有している。印刷ドット数計数部60は、画像形成の都度、印刷ドット数を計測し、計測した値の累計M1,M2を記憶部56に記憶する機能を有している。ここで、印刷ドット数とは、ビットマップデータに展開された画像データの各ビットに対応したドットのうち、トナーが載っているドットの数をいう。ビットマップデータは、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の色別に形成される。そのため、印刷ドット数計数部60は、色別の印刷ドット数を計測してこれらを合計して全体の印刷ドット数M1,M2を求めるようになっている。
【0034】
(実施例1における画像形成装置の全体動作)
図1、図2及び図3を用いて、画像形成装置10の全体の動作について説明する。
【0035】
画像形成装置10内の制御部51は、図示しない上位装置から印刷ジョブデータを受信し、これを画像データに展開して画像形成装置10の各部に対して画像形成動作を指示する。
【0036】
用紙トレイ11内の用紙Pが上昇してホッピングローラ12に圧接する。ホッピングローラ12の回転により、用紙トレイ11から用紙Pが繰り出される。ホッピングローラ12により繰出された用紙Pは、搬送ローラ13,14によりイメージドラムユニット30に送られる。
【0037】
イメージドラムユニット30内の感光体ドラム31は、トナーTと同極性の電圧が印加された帯電ローラ32により、表面を一様に帯電される。制御部51は、印刷ジョブデータに基づき、画像データを形成する。LEDヘッド27は、画像データに基づき、感光体ドラム31上に静電潜像を形成する。このとき、印刷ドット数計数部60は、静電潜像を形成するのに使用したドットのうち、トナーTが載っているドットの数をカウントする。
【0038】
供給ローラ電源34pから供給ローラ34にバイアス電圧が印加され、現像ローラ33上にトナーTが供給される。現像ローラ33上のトナーTは、規制ブレード35との摩擦等により帯電し、薄層化される。更に、現像ローラ33にバイアス電圧を印加することにより、トナーTが感光体ドラム31上の静電潜像に付着し、トナー像Taが形成される。
【0039】
感光体ドラム31上のトナー像Taは、転写ローラ16にトナーTと逆極性の電圧が印加されることで、クーロン力により、用紙P上に転写される。転写動作が完了すると、感光体ドラム31上に残留した廃トナーTwは、クリーニングブレード36により掻き落とされ、廃トナー回収容器25へと収集される。
【0040】
用紙P上に転写されたトナーTは、弱い静電気力だけで用紙P上に付着しているので、定着器21において、トナーTは、高温加熱、融解、圧接されて用紙Pに定着される。その後、用紙Pは、排出ローラ対22,23によりスタッカ24へと排出される。
【0041】
(実施例1における画像形成装置の廃トナー廃棄動作)
図5は、劣化トナーTwにおける帯電電圧と光学的濃度との関係を示す図である。
【0042】
図5において、横軸は、帯電ローラ電源32pから帯電ローラ32に印加される帯電電圧である。縦軸は、転写ベルト15上に転写されたトナー像Taの光学的濃度である。光学的濃度は、単位OD(Optical Density)値で表される。
【0043】
現像ローラ33上のトナーTは、現像ローラ33と感光体ドラム31或いは、現像ローラ33と供給ローラ34との摩擦により摩擦力を受ける。その結果、トナーTの表面に添加されていた帯電制御剤が剥離し、或いはトナーT内部に埋没することにより、一定期間使用されたトナーTは、使用初期レベルのトナーTに比べ、帯電特性が劣化する。トナーTが劣化すると、トナーTの帯電量が低下して現像効率が低下する。
【0044】
ここで、現像効率は、現像ローラ33上から感光体ドラム31上へ移動するトナー量の割合を示している。換言すれば、トナーTは、現像効率が大きい方が現像ローラ33から感光体ドラム31へ移動しやすい。現像効率が低下すると、現像ローラ33から感光体ドラム31上に形成された静電潜像に移動するトナーTの量が減少する。そのため、トナー像Taを転写ベルト15上に転写した場合、移動するトナー量も減少して転写されたトナー像Taの光学的濃度が低下する。
【0045】
帯電電圧を変化させて、初期レベルのトナーTのトナー像Taと、劣化したトナーTwのトナー像Taとを転写ベルト15上に転写する。濃度センサ26により、光学的濃度を測定すると、トナー像Taの光学的濃度と帯電電圧との関係は、図5のようになる。即ち、使用初期レベルのトナーTは、劣化したトナーTwよりも光学的濃度が高く、帯電電圧が変化しても光学的濃度がほとんど変化しない。これに対し、劣化したトナーTwは、使用初期レベルのトナーTよりも光学的濃度が低く、更に、帯電電圧が下がるに伴って、図5の破線のように光学的濃度が低下する。劣化したトナーTwの劣化の程度が大きくなると、破線の傾きが大きくなる。
【0046】
つまり、劣化トナーTwにおいては、帯電電圧の変化による光学的濃度の変化量は、現像効率にほぼ比例する。このことから、帯電電圧の変化による光学的濃度の変化量からトナーTの劣化の程度を推定することができる。
【0047】
例えば、劣化したトナーTwを使用し、帯電電圧が通常の画像形成時の帯電電圧である標準電圧Vs(例えば、−1300V)であったときに、転写ベルト15上に転写された第1のトナー像Taの光学的濃度α1(例えば、OD値=1.2)を測定する。同様に、劣化したトナーTwを使用し、帯電電圧が標準電圧Vsよりも低い設定電圧Vf(例えば、−1000V)であったときに、転写ベルト15上に転写された第2のトナー像Taの光学的濃度α2(例えば、OD値1.0)を測定する。そして、光学的濃度α1及びα2からその差分の光学的濃度差βを求めることにより、トナーTの劣化の程度を推定する。
【0048】
図6は、トナー廃棄ドット数閾値DTfと条件S及び条件Tとの関係を示す図である。
【0049】
図6において、縦軸は、印刷ドット数を表し、横軸は、感光体ドラム31が一定回数回転した間の印刷ドット数が、トナー廃棄ドット数閾値DTfを越えた場合(条件S)と、前記印刷ドット数が、トナー廃棄ドット数閾値DTfより小さい場合(条件T)とを示している。トナー廃棄ドット数閾値DTfは、感光体ドラム31が一定回数回転した間に放出すべきトナーTの量をドット数で表している。
【0050】
条件Sのように、感光体ドラム31が一定回数回転した間の印刷ドット数がトナー廃棄ドット数関値DTfを上回った場合には、トナーTが劣化する前に現像されて排出されるか、或いは、劣化していても他の正常なトナーTと共に現像されて排出されるので、トナー廃棄は行われない。一方、条件Tのように、印刷ドット数cがトナー廃棄ドット数闘値DTfを下回った場合には、トナー廃棄ドット数閾値DTfと印刷ドット数cとの差分difのドット数のトナーTが未排出になっている。この場合には、図5で説明したようにトナー像Taの光学的濃度を測定して劣化の程度を推定して所定量の劣化トナーTwを廃棄する。
【0051】
図7は、廃棄トナー量M6の算出条件を示す図である。
感光体ドラム31が印刷を開始してから回転を停止する間の印刷ドット数をM3とし、図5で説明した光学的濃度差βの下限設定値をLm、上限設定値をUmとする。光学的濃度差βが下限設定値Lmを下回ったときには、現像剤廃棄量決定部54は、劣化トナーTwがイメージドラムユニット30内において、画像形成に影響を与えない程度に減少したと判断し、図7に示す条件に応じてトナー廃棄量M6を決定する。図7に示す条件及び計算式は、トナー廃棄効果の検証実験から得られたものである。
【0052】
図8は、廃棄トナー量M5の算出条件を示す図である。
図7と同様に、光学的濃度差βが上限設定値Umを上回ったときには、現像剤廃棄量決定部54は、劣化トナーTwがイメージドラムユニット30内において、増加したと判断し、図8に示す条件に応じてトナー廃棄量M6を決定する。図8に示す条件及び計算式は、トナー廃棄効果の検証実験から得られたものである。
【0053】
図9は、実施例1における画像形成装置の廃トナー廃棄動作を示すフローチャートである。
【0054】
画像形成装置10が図示しない外部装置から印刷ジョブデータを受信し、本処理が開始される。ステップS1において、感光体ドラム回転数計測部57は、LEDヘッド27による露光開始時の感光体ドラム回転数L1を読み取り、記憶部56のメモリDC1に記憶する。同時に、ステップS2において、印刷ドット数計数部60は、印刷ドット数M1を読み取り、記憶部56のメモリDT1に記憶する。
【0055】
ステップS3において、制御部51は、感光体ドラム31の回転停止を検出して(YES)、ステップS4に進む。ステップS4において、感光体ドラム回転数計測部57は、感光体ドラム31が回転停止した時点の感光体ドラム31の回転数L2を読み取り、記憶部56のメモリDC2に記憶する。
【0056】
ステップS5において、制御部51は、メモリDC1の値L1とメモリDC2の値L2の差分を取り、閾値DCf(例えば、1000回転)と比較する。ここで、差分L2−L1は、感光体ドラム31が印刷のための回転、即ち、LEDヘッド27による露光を開始してから回転停止するまでの感光体ドラム31の回転数を表しており、差分L2−L1により、LEDヘッド27の露光開始前の空回転の回転数を除外している。差分L2−L1が閾値DCfを越えているときには(YES)、ステップS6へ移行する。差分L2−L1が閾値DCfを越えていないときには(NO)、ステップS3に戻る。
【0057】
ステップS6において、印刷ドット数計数部60は、感光体ドラム31の停止時点までの印刷ドット数M2を計数して記憶部56のメモリDT2に記憶する。この印刷ドット数M2は、感光体ドラム31が印刷のための回転を開始してから回転を停止するまでの間に印刷された印刷ドット数を表している。ステップS7において、制御部51は、メモリDT2に記憶した印刷ドット数M2とメモリDT1に記憶した印刷ドット数M1との差分M2−M1を取って差分M3とし、メモリDT3に記憶する。この差分M3は、感光体ドラム31が印刷のための回転を開始してから回転停止するまでの間に印刷された印刷ドット数を表している。
【0058】
ステップS8において、制御部51は、予め記憶部56に記憶されているトナー廃棄ドット数の闘値DTfとメモリDT3に記憶した印刷ドット数の差分M3とを比較する。印刷ドット数の差分M3が閾値DTfに満たないときには(YES)、ステップS9へ進む。印刷ドット数の差分M3が閾値DTfを越えたときには(NO)、ステップS1に戻る。
【0059】
ステップS9において、制御部51は、標準帯電電圧Vsのままで転写ベルト15上に、100%デューティの第1のトナー像Taを転写する。ステップS10において、濃度測定部52は、濃度センサ26により、第1のトナー像Taの光学的濃度α1を測定し、記憶部56のメモリX1に記憶する。
【0060】
ステップS11において、帯電部材電源制御部58は、帯電ローラ電源32pを制御し、帯電電圧を標準帯電電圧Vsよりも低い設定電圧Vfに変更する。ステップS12において、制御部51は、転写ベルト15上に100%デューティの第2のトナー像Taを転写する。ステップS13において、制御部51は、帯電電圧を元の標準電圧Vsに戻す。ステップS14において、濃度測定部52は、濃度センサ26により測定した第2のトナー像Taの光学的濃度α2を記憶部56のメモリX2に記憶する。ステップS15において、濃度差演算部53は、
光学的濃度差β=光学的濃度α1−光学的濃度α2
を演算し、その結果を現像剤廃棄量決定部54に送る。
【0061】
ステップS16において、現像剤廃棄量決定部54は、光学的濃度差βが上限設定値Umを越えたか否かを判定する。光学的濃度差βが上限設定値Umを越えたときには(YES)、ステップS19へ進む。光学的濃度差βが上限値Umを越えていないときには(NO)、ステップS17へ進む。ステップS17において、現像剤廃棄量決定部54は、光学的濃度差βが下限設定値Lmを下回ったか否かを判定する。光学的濃度差βが下限設定値Lmを下回ったときには(YES)、ステップS19に進む。光学的濃度差βが下限設定値Lmを下回っていないときには(NO)、ステップS18へ進む。
【0062】
ステップS18において、現像剤廃棄量決定部54は、次式(1)で示される印刷度ドット数M4だけのドット数を廃棄する劣化トナーTwの量として決定し、ステップS21へ進む。
M4=DTf−M3・・・・(1)
【0063】
DTfは、トナー廃棄ドット数閾値であり、M3は、感光体ドラム31が印刷のための回転を開始してから回転停止するまでの間に印刷で使用された印刷ドット数である。ステップS19において、現像剤廃棄量決定部54は、光学濃度差βが下限設定値Lmを下回ったことから、図7に示す条件に基づいてドット数M6を決定し、ステップS21へ進む。図7の各条件で廃棄されるドット数M6は、トナー廃棄効果の検証実験から得られたものである。
【0064】
ステップS20において、現像剤廃棄量決定部54は、光学濃度差βが上限設定値Umを超えたことから、増加した劣化トナーTwを排出するために、図8の条件に基づいて、ドット数M5を決定し、ステップS21へ進む。図8の各条件で廃棄されるドット数M5は、トナー廃棄効果の検証実験から得られたものである。
【0065】
ステップS21において、現像剤廃棄部55は、現像剤廃棄量決定部54で決定したドット数に基づいて、このドット数に対応した廃棄パターンの画像データを選択する。制御部51は、選択された画像データに基づく静電潜像を形成させるために、LEDヘッド27の露光、及び感光体ドラム31の回転を制御して静電潜像を形成する。更に、制御部51は、現像ローラ33を制御し、静電潜像を現像して感光体ドラム31上にトナー像Taを形成する。このとき、廃棄パターンの画像データのデューティを、ドット数M4のとき2%、ドット数M5のとき5%、ドット数M6のとき1%になるように設定してトナー像Taを形成する。
【0066】
制御部51は、転写ローラ16に印加する電圧を、感光体ドラム31上のトナー像Taが感光体ドラム31上に保持されるように制御する。転写されずに感光体ドラム3上に残留したトナー像Taは、クリーニングブレード36によって掻き落とされて廃トナー回収容器25に収容され、ステップS1へ戻る。
【0067】
(実施例1の効果)
本実施例1の画像形成装置10によれば、帯電電圧を変化させて転写ベルト15上に形成した2つのトナー像Taの光学的濃度差βに基づいて廃棄に必要なドット数を決定するようにしたので、トナーの劣化に応じたトナーの廃棄量が決定される。その結果、トナーTの劣化による印刷画像の品質劣化を防ぐことができると共に、適正量のトナー廃棄が可能となる。
【実施例2】
【0068】
(実施例2の構成)
図10は、本発明の実施例2における画像形成装置10Aの制御系回路部50Aを示す機能ブロック図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0069】
本実施例2の画像形成装置10Aは、実施例1の画像形成装置10に対して、新たに、画像形成装置10Aの周囲の温度を検出する温度検出手段(例えば、温度計)61と、画像形成装置10Aの周囲の湿度を検出する湿度検出手段(例えば、湿度計)62と、検出された温度及び湿度に基づき、環境値を選択する環境値選択部63とを有している。記憶部56A内には、温度及び湿度によって決定される環境値を記録した環境値テーブル70が格納されている。更に、現像剤廃棄量決定部54Aの構成が実施例1の現像剤廃棄量決定部54と異なっている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0070】
(実施例2における画像形成装置の廃トナー廃棄動作)
図11は、図10中の記憶部56Aに格納されている環境値テーブル70を示す図である。
【0071】
トナーTの性質は、画像形成装置10Aの周囲の温度及び湿度により変わる。そのため、周囲の温度及び湿度により、イメージドラムユニット30内の劣化トナーTwの割合も変化する。本実施例2では、周囲の温度及び湿度に応じて、光学的濃度差βの上限設定値Um及び下限制限値Lmを変化させることにより、最適のトナー廃棄量を決定する。
【0072】
図11の横方向には、画像形成装置10Aの周囲の湿度が9段階に分けられて表示されている。縦方向には、画像形成装置10Aの周囲の温度が9段階に分けられて表示されている。例えば、温度が25℃以上、且つ30℃未満で、湿度が45%以上、且つ55%未満の場合を環境値4とする。環境値が1に近づくほど高温・多湿を意味し、環境値8に近づくほど低温・低湿を意味している。
【0073】
図12は、環境値と光学的濃度差βの上限設定値Um及び下限設定値Lmとの関係を示す図である。
【0074】
環境値選択部63によって、環境値が選択されると、この環境値は、現像剤廃棄量決定部54Aに送られる。現像剤廃棄量決定部54Aは、環境値に基づき、図12を参照して上限設定値Um及び下限設定値Lmを変更する。図12に示す環境値と光学的濃度差βの上限設定値Um及び下限設定値Lmとの関係は、図示しないテーブルの形式で記憶部56Aに格納されている。
【0075】
図13は、実施例2における画像形成装置10Aの廃トナー廃棄動作を示すフローチャートであり、実施例1を示す図9のステップと共通のステップには共通の符号が付されている。
【0076】
本実施例2においては、実施例1と同様のステップS1〜ステップS21に対し、新たなステップS31,S32が追加されている。
実施例1と同様に、ステップS1〜S15が実行され、濃度差演算部53は、
光学的濃度差β=光学的濃度α1−光学的濃度α2
を演算し、その結果を現像剤廃棄量決定部54に送る。
【0077】
実施例1と異なるステップS31において、環境値選択部63は、記憶部56Aから環境値テーブル70を読み出し、現時点の画像形成装置周辺の温度と湿度とから環境値を選択する。選択された環境値は、現像剤廃棄量決定部54Aに送られる。ステップS32において、現像剤廃棄量決定部54Aは、この環境値に基づき、図12を参照して上限設定値Um及び下限設定値Lmを変更する。
以下、実施例1と同様のステップS16〜S21が実行される。
【0078】
(実施例2の効果)
本実施例2の画像形成装置10Aによれば、実施例1の効果に加え、画像形成装置10Aの周囲の温度及び湿度に応じて、廃棄に必要なドット数を決定するようにしたので、実施例1よりも、更に精度の高い廃棄トナー量を決定できる。そのため、正常なトナーTを廃棄する可能性が少なくなるので、コスト低減の効果がある。
【0079】
(変形例)
本発明は、上記実施例1、2に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。
【0080】
例えば、実施例1、2では、画像処理装置10,10Aとして電子写真方式のページプリンタで説明したが、ファクシミリ装置や複合機等であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
10、10A 画像形成装置
16 転写ローラ
27 LEDヘッド
30 イメージドラムユニット
31 感光体ドラム
32 帯電ローラ
32p 帯電ローラ電源
33 現像ローラ
50,50A 制御系回路部
51 制御部
52 濃度測定部
53 濃度差演算部
54,54A 現像剤廃棄量決定部
55 現像剤廃棄部
56,56A 記憶部
57 感光体ドラム回転数計測部
58 帯電部材電源制御部
60 印刷ドット数計数部
61 温度計
62 湿度計
63 環境値選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像を担持するための像担持体と、
前記像担持体を帯電させる帯電部材と、
前記像担持体上を露光して前記像担持体上に前記静電潜像を形成する露光手段と、
現像剤を担持し、前記現像剤を前記静電潜像に供給して前記像担持体上に現像剤像を形成させる現像剤担持体と、
前記帯電部材に標準電圧又は前記標準電圧よりも低い設定電圧を印加させる帯電部材電源制御部と、
前記帯電部材に前記標準電圧が印加されて形成された第1の前記現像剤像と、前記帯電部材に前記設定電圧が印加されて形成された第2の前記現像剤像と、を転写電圧が印加されることにより被転写部材に転写する転写部材と、
前記被転写部材に転写された前記第1の現像剤像の第1の光学的濃度と、前記被転写部材に転写された前記第2の現像剤像の第2の光学的濃度と、を濃度検出手段により測定する濃度測定部と、
測定された前記第1の光学的濃度と測定された前記第2の光学的濃度との濃度差を算出する濃度差演算部と、
算出された前記濃度差と前記濃度差の上限設定値及び下限設定値とを比較して、現像剤廃棄量を決定する現像剤廃棄量決定部と、
決定された前記現像剤廃棄量に基づき、前記現像剤廃棄量に対応した廃棄パターンの画像データを選択する現像剤廃棄部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置は、更に、
前記画像形成装置の周囲の温度を検出する温度検出手段と、
前記画像形成装置の周囲の湿度を検出する湿度検出手段と、
検出された前記温度及び検出された前記湿度に基づき、環境値を選択する環境値選択部と、を備え、
前記現像剤廃棄量決定部は、
選択された前記環境値に基づき、前記上限設定値及び前記下限設定値を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像形成装置は、更に、
前記第1の現像剤像又は前記第2の現像剤像が転写された後において、前記像担持体上に残留している前記現像剤を掻き落とすクリーニング装置を備え、
前記転写部材は、
前記現像剤廃棄部が選択した廃棄パターンに基づいて、前記像担持体上に形成された第3の前記現像剤像を前記被転写部材に転写する際に、前記第3の現像剤像を前記像担持体上に保持するように前記転写電圧が印加される機能を有し、
前記クリーニング装置は、
前記像担持体上に保持された前記第3の現像剤像を掻き落とすことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記現像剤廃棄量決定部は、
前記濃度差が前記上限設定値と前記下限設定値との間にあるときには、前記現像剤廃棄量を所定量に決定し、
前記濃度差が前記上限設定値を越えているときには、前記現像剤廃棄量を前記所定量よりも大きい量に決定し、
前記濃度差が前記下限設定値を下回っているときには、前記現像剤廃棄量を前記所定量よりも小さい量に決定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−88471(P2013−88471A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225952(P2011−225952)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】