説明

画像読取装置及び方法

【課題】センサチップを直線状に配列したラインセンサにおいて原稿の画像が高周波数成分を含む場合にも、センサチップ間の欠落画素の補間を正確に行なう。
【解決手段】直線状に配列された複数個のカラーセンサチップ(6C1〜6C6)と、直線状に配列された複数個のモノクロセンサチップ(5M1〜5M5)を備え、隣り合うカラーセンサチップの境目の位置を撮像可能に設けられ、モノクロセンサチップで得られた撮像信号を用いて、カラーセンサチップで得られた画像データの輝度成分を、モノクロセンサチップで得られた撮像信号を用いて補間する(4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スキャナ、FAX、複写機などに搭載される画像読取装置に関するものであり、特に、複数のセンサチップを直線状に配列したラインセンサで原稿を読み取る際にセンサチップ間にデータを補間して出力する画像読取装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数のセンサチップを直線状に配列した密着型イメージセンサーにおいて、隣接するチップ間の境界を挟んで隣接する撮像素子(画素)の間隔を、センサチップ内の画素ピッチの2倍にして、上記境界を挟んで隣接する画素間に、画像データを補間するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−101724号公報(第5〜6頁、第3〜5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、上記境界を挟んで隣接する2つの画素の画素値の平均値を求めることにより、或いは境界を挟んで隣接する4つの画素の画素値を用いた4次式の曲線を使って補間を行っているため、原稿の画像に高周波数成分が含まれる場合正確に補間を行なうことができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述のような課題を解消するためになされたもので、本発明の画像読取装置は、
原稿を読み取るラインセンサを有する画像読取装置であって、
それぞれ複数個のRGBの撮像素子を有する複数個のカラーセンサチップが直線状に配列され、前記RGBの撮像素子が光電変換した第1の電気信号を出力するカラー撮像部と、
前記第1の電気信号を第1のデジタルデータに変換する第1のAD変換部と、
前記第1のデジタルデータに含まれる撮像素子の素子ごとの特性ばらつきを補正し第1の補正後データとして出力する第1のシェーディング補正部と、
複数個のモノクロ撮像素子を有するモノクロセンサチップが直線状に配列され、前記モノクロ撮像素子が光電変換した第2の電気信号を出力するモノクロ撮像部と、
前記第2の電気信号を第2のデジタルデータに変換する第2のAD変換部と、
前記第2のデジタルデータに含まれる前記モノクロ撮像素子の素子ごとの特性ばらつきを補正し第2の補正後データとして出力する第2のシェーディング補正部と、
前記第2の補正後データを用いて前記第1の補正後データに対する補間を行なう画素補間部とを備え、
前記モノクロ撮像部の前記モノクロセンサチップは、前記原稿のうちの、前記複数のカラーセンサチップのうちの互いに隣り合うカラーセンサチップの境目の位置において、前記原稿を読み取ることができるように配置され、
前記画素補間部は、前記第2の補正後データを用いて前記第1の補正後データで表される輝度成分を表すデータの補間を行なって、前記互いに隣り合うカラーセンサチップ相互の境目に整列した位置における、前記輝度成分に相当するデータを生成する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、原稿の画像に高周波数成分が含まれる場合にも正確に補間を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態1の画像読取装置の構成を示すブロック図である。
【図2】カラー撮像部1Cが有するカラーセンサチップとモノクロ撮像部1Mが有するモノクロセンサチップの位置関係を説明するための図である。
【図3】互いに隣接するカラーセンサチップ6C1及び6C2の境目部分の拡大図である。
【図4】画素補間部4の構成例を示すブロック図である。
【図5】(a)〜(c)は、読み取られる原稿の画像の一例、及び撮像により得られたデータを示す図である。
【図6】図1のシェーディング補正部及び画素補間部の処理をソフトウエアにより実現する場合の構成を示すブロック図である。
【図7】(a)及び(b)は、図6のCPUにより実施される処理の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による画像読取装置の構成を示す図である。
【0009】
実施の形態1による画像読取装置は、カラー撮像部1Cと、第1のAD変換部2Cと、第1のシェーディング補正部3Cと、モノクロ撮像部1Mと、第2のAD変換部2Mと、第2のシェーディング補正部3Mと、画素補間部4を備える。
【0010】
カラー撮像部1Cは、各々複数個のRGBの撮像素子を有する複数個のカラーセンサチップを有し、原稿からの反射光を光電変換し、電気信号S1R、S1G、S1Bを出力する。
Rの撮像素子には赤色の光の波長のみを透過させるカラーフィルターが撮像素子の表面にかぶせてあり、Rの撮像素子は、原稿からの反射光のうちの赤色の光のみを受光し、その光量に応じた電気信号S1Rを出力する。
Gの撮像素子にも同様に緑色の光の波長のみを透過させるカラーフィルターが撮像素子の表面にかぶせてあり、Gの撮像素子は原稿からの反射光のうちの緑色の光のみを受光し、その光量に応じた電気信号S1Gを出力する。
Bの撮像素子にも同様に青色の光の波長のみを透過させるカラーフィルターが撮像素子の表面にかぶせてあり、Bの撮像素子は原稿からの反射光のうちの青色の光のみを受光し、その光量に応じた電気信号S1Bを出力する。
電気信号S1R、S1G及びS1Bは第1のAD変換部2Cに入力される。
【0011】
モノクロ撮像部1Mは、各々複数個のモノクロ撮像素子を有する複数個のモノクロセンサチップを有し、カラー撮像部1Cの複数個のカラーセンサチップの境目に位置する原稿部分を読み取ることができるように配置されている。
モノクロ撮像部1Mは原稿からの反射光を光電変換し、反射光の光量に応じた電気信号S1Mを出力する。電気信号S1Mは、第2のAD変換部2Mに入力される。
【0012】
図2は、カラー撮像部1Cが有するカラーセンサチップとモノクロ撮像部1Mが有するモノクロセンサチップの位置関係である。
【0013】
カラーセンサチップ6C1〜6C6の各々には、複数組のRGBの撮像素子が直線状に配列され、さらにカラーセンサチップ6C1〜6C6が、各センサチップ内の撮像素子の配列方向と同じ方向に直線状に配列されている。
モノクロセンサチップ5M1〜5M5の各々には、複数個のモノクロ撮像素子が直線状に配置され、さらにモノクロセンサチップ5M1〜5M5が、各センサチップ内の撮像素子の配列方向と同じ方向に直線状に配列されている。
モノクロセンサチップ5M1〜5M5の配列方向は、カラーセンサチップ6C1〜6C6の配列方向と同じ(互いに平行)であり、モノクロセンサチップ5M1〜5M5は、カラーセンサチップ6C1〜6C6に平行に配置されている。
【0014】
なお、図2ではカラーセンサチップ6個、モノクロセンサチップ5個の構成による画像読取装置の例を示したが、本発明はこれに限定されない。
【0015】
また、図2ではカラーセンサチップ内のRGBの撮像素子を8組、モノクロセンサの撮像素子を8個と図示したが、本発明はこれに限定されない。
【0016】
隣り合うカラーセンサーチップ相互の境界を挟む、互いに隣接する撮像素子(画素)間の間隔は、チップ内における画素ピッチよりも大きい。
【0017】
モノクロセンサチップ5M1〜5M5の各々は、その撮像素子の一つが、互いに隣接するカラーセンサチップ相互の境目でRGBの撮像素子が存在しない位置に整列するように、配置されている。
例えば、モノクロセンサチップ5M1は、その撮像素子の一つが、互いに隣接するカラーセンサチップ6C1及び6C2相互の境目でRGBの撮像素子が存在しない位置に整列するように、配置されている。
モノクロセンサ5M2も同様に、その撮像素子の一つが、互いに隣接するカラーセンサチップ6C2及び6C3相互の境目でRGBの撮像素子が存在しない位置に整列するように、配置されている。
一般化して言えばi番目(i=1〜5)のモノクロセンサチップ5Miは、その撮像素子の一つが、i番目のカラーセンサチップ6Ciと(i+1)番目のカラーセンサーチップ6C(i+1)の境目でRGBの撮像素子が存在しない位置に整列するように配置されている。
モノクロセンサチップ5Miの総数(I)は、カラーセンサチップ6Ciの総数(I+1)よりも1だけ小さい。
【0018】
カラーセンサチップ6C1〜6C6とモノクロセンサチップ5M1〜5M5を矢印7の方向又はその反対の方向(センサチップの配列方向に直交する方向)に走査して(移動させて)原稿を読み取る。逆に、原稿を矢印7の方向又はその反対の方向に搬送することで原稿を読み取ってよい。センサチップと原稿の相対的移動方向乃至搬送方向を副走査方向と言い、センサチップ内における撮像素子の配列方向(カラーセンサチップ内の同じ色の撮像素子の配列方向、モノクロセンサチップ内の撮像素子の配列方向)を主走査方向と言うことがある。
【0019】
図3は、カラーセンサチップ6C1及び6C2相互の境目の拡大図である。図3を用いてカラーセンサチップとモノクロセンサチップの詳細な位置関係を説明する。横軸は水平位置(主走査方向)、縦軸は垂直位置(副走査方向)とする。
横軸方向の位置は指標としてのk−2、k−1、k、k+1、k+2などで表され、縦軸方向の位置は指標としてのj−2、j−1、j、j+1、j+2などで表されている。カラーセンサチップ内の同じ色の撮像素子は、水平方向に等間隔で配置されており、該間隔を1画素間隔と言い、「1」で表すものとする。カラーセンサチップ内の異なる色の撮像素子は、垂直方向に等間隔で配置されており、該間隔を1画素間隔と言い、「1」で表すものとする。ただし、水平方向の「1」と垂直方向の「1」と同じ寸法であるとは限らない。
【0020】
カラーセンサチップ6C1及び6C2には垂直位置jにRの撮像素子、垂直位置j−1にGの撮像素子、垂直位置j−2にはBの撮像素子が配置されている。モノクロセンサチップ5M1には垂直位置j+2に撮像素子が配置されている。
カラーセンサチップ6C1及び6C2の撮像素子の周縁には額縁領域8が存在するため、センサチップ内と同じピッチでセンサチップ間の撮像素子を配置することができない。そのため、カラーセンサチップ6C1の右端の撮像素子を水平位置k−1に配置し、カラーセンサチップ6C2の左端の撮像素子は水平位置k+1に配置する。すると、カラーセンサチップ6C1及び6C2では水平位置kの原稿部分を読み取ることができない。この水平位置を欠落位置と言う。
【0021】
しかし、互いに隣接するカラーセンサチップ相互間の境目の、該境目を挟んで隣接する撮像素子相互の間隔をカラーセンサチップ内の撮像素子の間隔の2倍とし、カラーセンサチップ相互間に対応する位置(欠落位置)にデータを補間することにより等間隔の位置の画素データを得ることができる。即ち補間データをサンプリングデータと同様に扱うこととすれば、サンプリング間隔が実質的に均一になる。
【0022】
モノクロセンサチップ5M1は、欠落位置である水平位置kの原稿が読み取れるような水平位置に配置する。カラーセンサチップとモノクロセンサチップにはそれぞれ周縁部に額縁領域があるため、カラーセンサチップとモノクロセンサチップとは、カラーセンサチップのRの撮像素子の列(カラーセンサチップ内の撮像素子の列のうち、モノクロセンサチップに最も近い側に位置する撮像素子の列)とモノクロセンサチップの撮像素子の列とが、カラーセンサチップ内の垂直方向の画素間隔の2倍の間隔で分離されるように配置される。従って、モノクロセンサチップ5M1の撮像素子は垂直位置j+2に配置される。
【0023】
カラーセンサチップの撮像素子とモノクロセンサチップの撮像素子の位置をカラーセンサチップ内の垂直方向の画素間隔の整数倍とすることにより、補間データを含めたサンプリング間隔が一定になり、カラーセンサチップの撮像素子で取得したデータとモノクロセンサチップの撮像素子で取得したデータの位置合わせを容易にすることができる。
【0024】
第1のAD変換部2Cは、電気信号S1Rをアナログデジタル変換したデジタルデータD2Rと電気信号S1Gをアナログデジタル変換したデジタルデータD2Gと、電気信号S1Bをアナログデジタル変換したデジタルデータD2Bを出力する。デジタルデータD2R、D2G及びD2Bは第1のシェーディング補正部3Cに入力される。
【0025】
第2のAD変換部2Mは、電気信号S1Mをアナログデジタル変換したデジタルデータD2Mを出力する。デジタルデータD2Mは第2のシェーディング補正部3Mに入力される。
【0026】
第1のシェーディング補正部3Cは、カラー撮像部1Cが有する撮像素子の素子毎の特性ばらつきをRGBの色毎に補正する。
第1のシェーディング補正部3Cは、
デジタルデータD2RについてRの撮像素子の素子毎の特性ばらつきを補正した第1の補正後データD3Rを出力し、
デジタルデータD2GについてGの撮像素子の素子毎の特性ばらつきを補正した第1の補正後データD3Gを出力し、
デジタルデータD3BについてBの撮像素子の素子毎の特性ばらつきを補正した第1の補正後データD3Bを出力する。
第1の補正後データD3R、D3G及びD3Bは画素補間部4に入力される。
【0027】
第2のシェーディング補正部3Mは、モノクロ撮像部1Mが有する撮像素子の素子ごとの特性ばらつきを補正する。第2のシェーディング補正部3Mは、デジタルデータD2Mについて撮像素子の素子毎の特性ばらつきを補正した第2の補正後データD3Mを出力する。第2の補正後データD3Mは画素補間部4に入力される。
【0028】
第1のシェーディング補正部3C及び第2のシェーディング補正部3Mによるシェーディング補正により、デジタルデータD2R、D2G及びD2BとデジタルデータD2Mのレベルの差も調整される。
【0029】
シェーディング補正部3C、3Mの詳細な動作についてはすでに公知の技術であるので詳細な説明は省略する。
【0030】
画素補間部4は、第2の補正後データD3Mを使って第1の補正後データD3R、D3G及びD3Bに含まれるセンサチップの境目のデータ(水平位置kのデータ)を補間し、画像データD4R、D4B及びD4Bを出力する。
画像データD4R、D4G及びD4Bは画像読取装置の出力データとして出力される。
【0031】
次に、画素補間部4の構成について詳細に説明する。図4は、画素補間部4の構成例を示す図である。
【0032】
画素補間部4は、垂直位置合わせ部8と、輝度色差変換部9と、色差補間部10と、輝度補間部11と、RGB変換部12を備える。
【0033】
第1の補正後データD3R、D3G及びD3Bと第2の補正後データD3Mは、垂直位置合わせ部8に入力される。図3で示したようにカラーセンサチップのRGBの撮像素子とモノクロセンサチップの撮像素子は垂直位置がずれている。従って、同時に読み取る原稿位置は異なるため垂直方向に位置を合わせる必要がある。矢印7の方向に画像読取装置を走査した場合、垂直位置j−2の原稿部分をGの撮像素子が読み取る時にはBの撮像素子は垂直位置j−3の原稿部分を読み取っているため垂直位置j−2で読み取ったBの撮像素子のデータを記憶しておく必要がある。同様にRの撮像素子が垂直位置j−2の原稿部分を読み取る時にはBとGの撮像素子はそれぞれ垂直位置j−4とj−3の原稿部分を読み取っているため垂直位置j−2で読み取ったBとGの撮像素子のデータを記憶しておく必要がある。さらに、モノクロセンサチップの撮像素子が垂直位置j−2の原稿部分を読み取るときにはB、G及びRの撮像素子はそれぞれ垂直位置j−6、j−5、j−4の原稿部分を読み取っているため垂直位置j−2で読み取ったB、G及びRの撮像素子のデータを記憶しておく必要がある。垂直位置合わせ部8は、内部にラインメモリなどの記憶素子を備えカラーセンサチップで読み取ったR、G及びBのデータを、それぞれ、4、3、2ライン分記憶したデータにより垂直位置を合わせる。垂直位置合わせ部8は、この記憶により、第1の補正後データD3R、D3G、D3Bデータを、それぞれ2、3、4ライン分に相当する時間遅延させ、それにより、垂直位置が揃った第1の整列後データD8R、D8G及びD8Bと第2の整列後データD8Mを出力する。第1の整列後データD8R、D8G及びD8Bは輝度色差変換部9に入力され、第2の整列後データD8Mは輝度補間部11に入力される。
【0034】
輝度色差変換部9は、第1の整列後データD8R、D8G及びD8Bを輝度データD9Yと色差データD9R及びD9Bに変換する。RGBから輝度色差へは式(1)を使って変換される。ただし、式(1)はRGBから輝度色差への変換式の一例であり、変換式は式(1)に限定されない。輝度データD9Yは輝度補間部11に入力され、色差データD9RとD9Bは色差補間部10に入力される。
【0035】
D9Y=0.3×D8R+0.59×D8G+0.11×D8B
D9R=0.7×(D8R−D8G)−0.11×(D8B−D8G)
D9B=0.89×(D8B−D8G)−0.3×(D8R−D8G)
・・・(1)
なお、式(1)の計算に当たっては、互いに同じ水平位置の画素についての整列後のRGBのデータを用いて行い、計算の結果は、同じ水平方向位置の画素についての輝度データ、色差データとして用いられる。
【0036】
色差補間部10は、
色差データD9Rのカラーセンサチップの境目に対応するデータ(水平位置kのデータ)を補間して色差補間データD10Rを出力し、
色差データD9Bのカラーセンサチップの境目に対応するデータ(水平の位置kのデータ)を補間して色差補間データD10Bを出力する。
色差補間データD10R及びD10BはRGB変換部12に入力される。
色差データの補間は境目の左右の位置に対応するデータの平均値を使って補間する。例えば、図3に対応して説明すると水平位置kの色差補間データは、
D10R(k)=(D9R(k−1)+D9R(k+1))/2
D10B(k)=(D9B(k−1)+D9B(k+1))/2
・・・(2)
で与えられる。
【0037】
輝度補間部11は、第2の整列後データD8Mを使って輝度データD9Yのカラーセンサチップの境目に対応するデータ(水平位置kのデータ)を補間して輝度補間データD11Yを出力する。輝度補間データD11YはRGB変換部に入力される。
輝度データD11Yの補間は第2の整列後データD8Mのカラーセンサチップの境目に対応する位置のデータを輝度データD9Yのカラーセンサチップの境目に対応する位置に挿入する。即ち、第2の整列後データD8Mの値をそのまま輝度データD9Yの値として用いる方法により補間が行なわれる。例えば、図3に対応して説明すると水平位置kの輝度補間データD11Yは、
D11Y(k)=D8M(k) ・・・(3)
で与えられる。
【0038】
上記のようにして補間を行なうためには、第2の整列後データD8Mの信号レベルを輝度補間データD11Yの信号レベルに揃えるためのレベル調整を行なっておくことが必要である。このようなレベル調整は、シェーディング補正部3C及び3Mによるシェ−ディング補正により行われる。
モノクロセンサチップの撮像素子のうち、カラーセンサチップの境目の位置(欠落位置)に整列した位置の撮像素子以外の撮像素子の出力は、上記のレベル調整のために用いられるので、図2に示すように、カラーセンサチップと同じ長さにわたって撮像素子が配列されたものでなくても、欠落位置に整列した位置の撮像素子及びその近傍の領域にのみ撮像素子を有するものを用いれば良い。また、カラーセンサチップと同じ長さにわたって撮像素子が配列されたモノクロセンサチップを用いる場合にも、そのうちの、欠落位置に整列した位置の撮像素子及びその近傍の領域にのみ撮像素子からの出力信号のみを利用する(AD変換部2Mへ供給する)こととしても良い。
【0039】
RGB変換部12は、輝度補間データD11Yと色差補間データD10R及びD10BをRGBデータD12R、D12G及びD12Bに変換する。輝度色差からRGBへは式(4)を使って変換される。ただし、式(4)は輝度色差からRGBへの変換式の一例であり、変換式は式(4)に限定されない。RGBデータD12R、D12G及びD12Bは、それぞれ画像データD4R、D4G及びD4Bとして画素補間部4から出力される。
D12R=D10R+D11Y
D12G=(0.59×D11Y−0.3×D10R−0.11×D10B)/0.59
D12B=D10B+D11Y
・・・(4)
【0040】
次に、具体例を用いて本発明の効果について説明する。図5(a)〜(c)は具体例を説明するための図である。図5(a)は白と黒の縦縞の読取原稿(「黒」の部分をハッチングで示す)、図5(b)は図5(a)に対応する第1の補正後データD3R、D3G及びD3B、図5(c)は図5(a)に対応する第2の補正後データD3Mを示す。図5(a)の横軸は読み取り原稿のサンプリング位置、図5(b)及び図5(c)の横軸は水平位置、図5(b)の縦軸は第1の補正後データ、図5(c)の縦軸は第2の補正後データを示す。図5(b)及び(c)において、縦軸上のデータ値は最大値を「1」として正規化している。図5(a)〜(c)で水平位置を示すkは図3のkと対応している。すなわち、カラーセンサチップでは水平位置kの原稿を読み取ることができない。
【0041】
図5(a)の原稿をカラーセンサチップが読み取った場合、原稿は白黒なので第1の補正後データはD3R、D3G及びD3Bは図5(b)のように1画素ごとに「0」と「1」を繰り返す周期性を有するデータになる。しかし、カラーセンサチップの境目である水平位置kのデータを取得することはできない。一方、図5(a)の原稿をモノクロセンサチップが読み取った場合、図5(b)と同様に1画素ごとに「0」と「1」を繰り返す周期性を有するデータになる。また、図3で示したように水平位置kに画素(撮像素子)が位置するようにモノクロセンサチップを配置するのでモノクロセンサチップでは水平位置kの原稿を読み取ることができる。
【0042】
垂直位置合わせ部8は、第1の補正後データD3R、D3G及びD3Bと第2の補正後データD3Mの垂直方向の位置を合わせる。
【0043】
輝度色差変換部は式(1)を使って整列後データD8R、D8G及びD8Bを輝度色差データD9R、D9B及びD9Yに変換する。第1の整列後データが「0」の場合、式(1)より、
D9Y=0.3×0+0.59×0+0.11×0=0
D9R=0.7×(0−0)−0.11×(0−0)=0
D9B=0.89×(0−0)−0.3×(0−0)=0
となる。第1の整列後データが「1」の場合、式(1)より、
D9Y=0.3×1+0.59×1+0.11×1=1
D9R=0.7×(1−1)−0.11×(1−1)=0
D9B=0.89×(1−1)−0.3×(1−1)=0
となる。
【0044】
色差補間部10は、カラーセンサチップの境目の左右の画素に対応する色差データの平均値を使って補間する。
D10R(k)=(D9R(k−1)+D9R(k+1))/2=(0−0)/2
D10B(k)=(D9B(k−1)+D9B(k+1))/2=(0−0)/2
【0045】
輝度補間部11はカラーセンサチップの境目の位置に対応するモノクロセンサチップのデータをカラーセンサチップの境目の位置に対応する輝度データに補間する。
D11Y(k)=D8M(k)=1
【0046】
RGB変換部12は、輝度補間データD11Yと色差補間データD10R及びD10BからRGBデータに変換する。輝度補間データが「0」、色差補間データが「0」の場合、式(4)より、
D12R=0+0=0
D12G=(0.59×0−0.3×0−0.11×0)/0.59
D12B=0+0=0
となる。輝度補間データが「1」、色差補間データが「0」の場合、式(4)より、
D12R=0+1=1
D12G=(0.59×1−0.3×0−0.11×0)/0.59=1
D12B=0+1=1
となる。
【0047】
以上より、読取原稿が図5(a)に示すような高周波数の情報を含む原稿であっても白黒の原稿であれば正しく補間することができる。
【0048】
一方、色つきの原稿であっても自然画であれば、高周波数の情報は輝度データに集約されるため、色差データをカラーセンサチップの境目の左右の平均値で補間しても本発明の画像読取装置は画像の品質を損なうことなく画像データを出力することができる。
【0049】
すなわち、本発明の実施の形態1にかかる画像読取装置によれば、複数のカラーセンサチップを直線状に配置したラインセンサであっても、情報を損なうことなく原稿の読取画像を出力することができる。
【0050】
実施の形態2.
図6は、実施の形態1の画像読取装置の一部をソフトウェアとして、即ちプログラムされたコンピュータにより実現する場合の構成を示し、図7(a)及び(b)は、図6のCPUで実行される処理の手順を示す。
図6に示すように、実施の形態2にかかる画像読取装置はカラー撮像部1Cと、第1のAD変換部2Cと、モノクロ撮像部1Mと、第2のAD変換部2Mと、CPU21と、プログラムメモリ22と、データメモリ23と、第1のインターフェース24と、第2のインターフェース25と、これらを接続するバス26とを備える。
【0051】
CPU21は、プログラムメモリ22に記憶されたプログラムに従って動作する。第1のインターフェース24は、第1のA/D変換部2Cから出力されるデジタルデータD2R、D2G及びD2B、並びに第2のA/D変換部2Mから出力されるデジタルデータD2Mを受信し、バス26を介してCPU21に伝える。CPU21による処理を受けたデータはバス26を介して、第2のインターフェース25から出力される。データメモリ23は、第1のインターフェース24から入力されたデータ、第2のインターフェース25から出力されるべきデータ、及びCPU21による処理の途中で生成されるデータを記憶する。
【0052】
第1のA/D変換部2CからのデジタルデータD2R、D2G及びD2B並びに第2のA/D変換部2MからのデジタルデータD2Mを用いて行なわれるCPU21の処理は、図7(a)に示されるように、第1のシェーディング補正ステップST3Cと、第2のシェーディング補正ステップST3Mと、画素補間ステップST4を含む。
【0053】
画素補間ステップST4は、図7(b)に示されるように、垂直位置合わせステップST8と、輝度色差変換ステップST9と、色差補間ステップST10と、輝度補間ステップST11と、RGB変換ステップST12を含む。
【0054】
第1のシェーディング補正ステップST3Cは、第1のデジタルデータD2R、D2G及びD2Bをシェーディング補正した第1の補正後データD3R、D3G及びD3Bを生成する。この動作は、第1のシェーディング補正部3Mの動作と同等である。
第2のシェーディング補正ステップ3Mは、第2のデジタルデータD2Mをシェーディング補正した第2に補正後データD3Mを生成する。この動作は第2のシェーディング補正部3Cの動作と同等である。
【0055】
画素補間ステップST4は、第2の補正後データD3Mを使って第1の補正後データD3R、D3G及びD3Bを補間して補間後データD4R、D4G及びD4Bを生成する。この動作は、画素補間部4の動作と同等である。
【0056】
垂直位置合わせステップST8は、第1の補正後データD3R、D3G及びD3Bと第2の補正後データD3Mの垂直位置を合わせた第1の整列後データD8R、D8G及びD8Bと第2の整列後データD8Mを生成する。この動作は、垂直位置合わせ部8の動作と同等である。
輝度色差変換ステップST9は、第1の整列後データD8R、D8G及びD8BをRGBから輝度色差に変換して、輝度データD9Yと色差データD9R及びD9Bを生成する。この動作は、輝度色差変換部9の動作と同等である。
【0057】
色差補間ステップST10は色差補間データD9R及びD9Bのカラーセンサチップの境目の位置に対応するデータを境目の左右のデータの平均値として補間した色差補間データD10R及びD10Bを生成する、この動作は、色差補間部10の動作と同等である。
輝度補間ステップST11は、第2の整列後データD8Mを使って輝度データのカラーセンサチップの境目の位置に対応するデータを補間した輝度補間データD11Yを生成する。この動作は、輝度補間部11の動作と同等である。
【0058】
RGB変換ステップST12は、輝度補間データD11Yと色差補間データD10R及びD10Bを輝度色差からRGBに変換したRGBデータD12R、D12G及びD12Bを生成する。この動作は、RGB変換部12の動作と同等である。
以上が実施の形態2にかかる画像読取装置の動作である。
【0059】
実施の形態2にかかる画像読取装置は、実施の形態1の画像読取装置の一部をソフトウェアとして実現したものであり、その効果は同等である。
【符号の説明】
【0060】
1C カラー撮像部、 2C 第1のAD変換部、 3C 第1のシェーディング補正部、 1M モノクロ撮像部、 2M 第2のAD変換部、 3M 第2のシェーディング補正部、 4 画素補間部、 5M1〜5M5 モノクロセンサチップ、 6C1〜6C6 カラーセンサチップ、 8 垂直位置合わせ部、 9 輝度色差変換部、 10 色差補間部、 11 輝度補間部、 12 RGB変換部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を読み取るラインセンサを有する画像読取装置であって、
それぞれ複数個のRGBの撮像素子を有する複数個のカラーセンサチップが直線状に配列され、前記RGBの撮像素子が光電変換した第1の電気信号を出力するカラー撮像部と、
前記第1の電気信号を第1のデジタルデータに変換する第1のAD変換部と、
前記第1のデジタルデータに含まれる撮像素子の素子ごとの特性ばらつきを補正し第1の補正後データとして出力する第1のシェーディング補正部と、
複数個のモノクロ撮像素子を有するモノクロセンサチップが直線状に配列され、前記モノクロ撮像素子が光電変換した第2の電気信号を出力するモノクロ撮像部と、
前記第2の電気信号を第2のデジタルデータに変換する第2のAD変換部と、
前記第2のデジタルデータに含まれる前記モノクロ撮像素子の素子ごとの特性ばらつきを補正し第2の補正後データとして出力する第2のシェーディング補正部と、
前記第2の補正後データを用いて前記第1の補正後データに対する補間を行なう画素補間部とを備え、
前記モノクロ撮像部の前記モノクロセンサチップは、前記原稿のうちの、前記複数のカラーセンサチップのうちの互いに隣り合うカラーセンサチップの境目の位置において、前記原稿を読み取ることができるように配置され、
前記画素補間部は、前記第2の補正後データを用いて前記第1の補正後データで表される輝度成分を表すデータの補間を行なって、前記互いに隣り合うカラーセンサチップ相互の境目に整列した位置における、前記輝度成分に相当するデータを生成する
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記複数のカラーセンサチップは、前記隣り合うカラーセンサチップの、互いに隣接する端部の撮像素子相互間の間隔が前記カラーセンサチップ内の撮像素子の相互間の間隔の2倍となるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記モノクロ撮像部は、
前記カラーセンサチップの撮像素子の列のうち、前記モノクロ撮像部のモノクロセンサチップに最も近い側に位置する撮像素子の列と、前記モノクロセンサチップの撮像素子の列との間隔が、カラーセンサチップ内の撮像素子の前記列の方向に垂直な方向の間隔の整数倍となるように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記画素補間部は、
前記第1の補正後データの垂直方向の位置合わせを行った第1の整列後データと前記第2の補正後データを前記第1の整列後データの垂直位置に合わせた第2の整列後データを出力する垂直位置合わせ部と、
前記第1の整列後データをRGBから輝度色差に変換して輝度データと色差データを出力する輝度色差変換部と、
前記色差データに含まれる前記カラーセンサチップの境目の位置のデータを補間した色差補間データを出力する色差補間部と、
前記第2の整列後データを使って前記輝度データに含まれる前記カラーセンサチップの境目の位置のデータを補間した輝度補間データを出力する輝度補間部と、
前記輝度補間データと前記色差補間データを輝度色差からRGBに変換したRGBデータを出力するRGB変換部と
を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記色差補間部は、前記色差データに含まれる前記カラーセンサチップの境目を挟んで互いに隣接する画素のデータの平均値を前色差補間データとして出力することを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記輝度補間部は、
前記第2の整列後データに含まれる前記カラーセンサチップの境目に位置するデータを前記輝度データ中の前記カラーセンサチップの境目のデータとして挿入する
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
原稿を読み取るラインセンサを有する画像読取装置を用いた画像読取方法であって、
前記画像読取装置が、
それぞれ複数個のRGBの撮像素子を有する複数個のカラーセンサチップが直線状に配列され、前記RGBの撮像素子が光電変換した第1の電気信号を出力するカラー撮像部と、
前記第1の電気信号を第1のデジタルデータに変換する第1のAD変換部と、
複数個のモノクロ撮像素子を有するモノクロセンサチップが直線状に配列され、前記モノクロ撮像素子が光電変換した第2の電気信号を出力するモノクロ撮像部と、
前記第2の電気信号を第2のデジタルデータに変換する第2のAD変換部とを有し、
前記第1のデジタルデータに含まれる撮像素子の素子ごとの特性ばらつきを補正し第1の補正後データとして出力する第1のシェーディング補正ステップと、
前記第2のデジタルデータに含まれる前記モノクロ撮像素子の素子ごとの特性ばらつきを補正し第2の補正後データとして出力する第2のシェーディング補正ステップと、
前記第2の補正後データを用いて前記第1の補正後データに対する補間を行なう画素補間ステップとを備え、
前記モノクロ撮像部の前記モノクロセンサチップは、前記原稿のうちの、前記複数のカラーセンサチップのうちの互いに隣り合うカラーセンサチップ相互の境目に整列した位置において、前記原稿を読み取ることができるように配置され、
前記画素補間ステップは、前記第2の補正後データを用いて、前記第1の補正後データで表される輝度成分を表すデータの補間を行なって、前記互いに隣り合うカラーセンサチップ相互の境目に整列した位置における、前記輝度成分に相当するデータを生成する
ことを特徴とする画像読取方法。
【請求項8】
前記複数のカラーセンサチップは、前記隣り合うカラーセンサチップの、互いに隣接する端部の撮像素子相互間の間隔が前記カラーセンサチップ内の撮像素子の相互間の間隔の2倍となるように配置されていることを特徴とする請求項7に記載の画像読取方法。
【請求項9】
前記モノクロ撮像部は、
前記カラーセンサチップの撮像素子の列のうち、前記モノクロ撮像部のモノクロセンサチップに最も近い側に位置する撮像素子の列と、前記モノクロセンサチップの撮像素子の列との間隔が、カラーセンサチップ内の撮像素子の前記列の方向に垂直な方向の間隔の整数倍となるように配置されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の画像読取方法。
【請求項10】
前記画素補間ステップは、
前記第1の補正後データの垂直方向の位置合わせを行った第1の整列後データと前記第2の補正後データを前記第1の整列後データの垂直位置に合わせた第2の整列後データを出力する垂直位置合わせステップと、
前記第1の整列後データをRGBから輝度色差に変換して輝度データと色差データを出力する輝度色差変換ステップと、
前記色差データに含まれる前記カラーセンサチップの境目の位置のデータを補間した色差補間データを出力する色差補間ステップと、
前記第2の整列後データを使って前記輝度データに含まれる前記カラーセンサチップの境目の位置のデータを補間した輝度補間データを出力する輝度補間ステップと、
前記輝度補間データと前記色差補間データを輝度色差からRGBに変換したRGBデータを出力するRGB変換ステップと
を備えることを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の画像読取方法。
【請求項11】
前記色差補間ステップは、前記色差データに含まれる前記カラーセンサチップの境目を挟んで互いに隣接する画素のデータの平均値を前色差補間データとして出力することを特徴とする請求項10に記載の画像読取方法。
【請求項12】
前記輝度補間ステップは、
前記第2の整列後データに含まれる前記カラーセンサチップの境目に位置するデータを前記輝度データ中の前記カラーセンサチップの境目のデータとして挿入する
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−171927(P2011−171927A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32665(P2010−32665)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】