説明

画像読取装置

【課題】原稿の両面を読み取り可能な画像読取装置において、ガラスか白基準板のどちらに異物が付着しているのか特定すること。
【解決手段】画像読取装置1では、CIS30とCIS40が搬送経路22を介して対向して配置されており、例えばCIS40が白基準板33を用いて取得した白基準データに異常が検出された場合、CIS40の光源41を照射させてCIS30とCIS40の両方で原稿を読み取る。そてし、CIS30が取得した透過読取データと、CIS40が取得した反射読取データを比較し、いずれか一方の読取データにのみ存在する画像情報が含まれている場合、CIS40のプラテンガラス44にゴミD2が付着していると判断し、いずれか一方の読取データにのみ存在する画像情報が含まれていない場合、CIS30の白基準板33にゴミD1が付着していると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の両面を読み取り可能な画像読取装置に用いられる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、原稿の搬送経路に移動不能に載置された読取デバイスを備えた画像読取装置が知られている。これらの装置では、読取デバイスを移動させて読み取りを行うことができないため、シェーディング補正等に用いられる白基準板などの基準部材が、搬送経路の読取デバイスに対向した位置に配置される。これらの装置では、原稿の搬送によって、紙粉等の異物が読取デバイスの搬送経路に面する部分に載置されるガラスや基準部材の表面に付着することがあり、この場合、読取デバイスの光量調整に支障が生じてしまう。従来から、ガラスと基準部材のいずれか一方に異物が付着したことを検出する技術が知られている(例えば特許文献1)。この技術によれば、ガラスと基準部材のいずれか一方に異物が付着した場合に、それを検出することができ、読取デバイスの光量調整に支障が生じることが回避されるという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−150431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、紙粉などの異物は、一般に非常に小さいものである。そのため、ガラスと基準部材のいずれか一方に異物が付着したことを検出した場合でも、ユーザが目視によりガラスか基準部材のどちらに異物が付着しているのか特定することは困難であり、ユーザはガラスか基準部材のいずれを掃除すればよいのか解らないという問題があった。特に、読取デバイスが互いに対向して固定されており、原稿の両面を読み取る画像読取装置では、原稿の片面を読み取る画像読取装置に比べて、ガラスや基準部材に異物が付着しやすく、当該問題が顕著化する虞がある。そのため、ガラスか基準部材のどちらに異物が付着しているのかを特定する技術が望まれている。
【0005】
本明細書では、原稿の両面を読み取り可能な画像読取装置において、ガラスか白基準板のどちらに異物が付着しているのか特定する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される画像読取装置は、原稿を搬送経路を通って搬送する搬送部と、前記搬送経路に沿って一方の側に設置され、第1透光部材と、第1基準板と、前記原稿の一方の面に対して前記第1透光部材を通して光を照射する第1光源と、前記原稿の一方の面で反射した光を前記第1透光部材を通して受光する第1受光素子と、を有する第1読取部と、前記第1読取部と前記搬送経路を介して対向して配置され、前記搬送経路に沿って他方の側に設置され、第2透光部材と、第2基準板と、前記原稿の他方の面に対して前記第2透光部材を通して光を照射する第2光源と、前記原稿の他方の面で反射した光を前記第2透光部材を通して受光する第2受光素子と、を有する第2読取部と、前記第1光源と前記第2光源のいずれか一方の光源を用いて、該光源が設置された側と異なる側に設置された基準板に対して光を照射し、該光源が設置された側と等しい側に設置された受光素子が受光した受光量から受光データを生成する受光データ生成部と、前記受光データに異常が有るか否かを検出する異常検出部と、前記異常検出部が異常を検出した場合、前記搬送部を用いて前記原稿を前記搬送経路を通って搬送し、少なくとも該光源を用いて該原稿に対して光を照射し、該光源を有する読取部は、該光源によって照射された面で反射された光を受光して該原稿を読み取るように、該光源を有しない読取部は、該光源によって前記原稿を透過した光を受光して該原稿を読み取るように制御する読取制御部と、前記第1読取部が読み取った第1読取結果と前記第2読取部が読み取った第2読取結果に、いずれか一方の読取結果にのみ存在する画像情報が含まれている場合、該光源が設置された側と等しい側に設置された透光部材に異物が存在すると判断し、いずれか一方の読取結果にのみ存在する画像情報が含まれていない場合、該光源が設置された側と異なる側に設置された基準板に異物が存在すると判断する異物判断部と、を備える。
【0007】
また、上記の画像読取装置では、前記異常検出部が異常を検出した場合、該異常検出部が検出した検出結果を通知する第1通知部と、前記第1通知部の通知に基づいて、前記透光部材と前記基準板のいずれに異物が存在するかを特定するか否かの選択結果を受け付ける入力部と、を備え、前記読取制御部は、前記入力部を介して前記特定する選択結果を受け付けた場合に、制御を行う構成としても良い。
【0008】
また、上記の画像読取装置では、前記異物判断部が判断した判断結果を通知する第2通知部を備える構成としても良い。
【0009】
また、上記の画像読取装置では、搬送する原稿を載置する載置部を備え、前記読取制御部は、前記載置部に載置されている原稿を搬送する構成としても良い。
【0010】
また、上記の画像読取装置では、前記異常検出部が異常を検出した場合、前記載置部に載置された原稿に換えて白紙の原稿を載置するように通知する第3通知部を備える構成としても良い。
【0011】
また、上記の画像読取装置では、前記異物判断部は、一方の読取結果に画像情報が含まれている位置に対応する位置の他方の読取結果に画像情報が含まれていない場合、あるいは一方の読取結果に画像情報が含まれていない位置に対応する位置の他方の読取結果に画像情報が含まれている場合、いずれか一方の読取結果にのみ存在する画像情報が含まれていると判断し、それ以外の場合、いずれか一方の読取結果にのみ存在する画像情報が含まれていないと判断する構成としても良い。
【発明の効果】
【0012】
本明細書によって開示される画像読取装置では、第1読取部と第2読取部が搬送経路を介して対向して配置されていることを利用して、いずれに異物が存在するかを特定する。例えば、第1光源から第2基準板に光を照射した場合の第1受光素子が受光した受光量から生成した受光データに異常が検出された場合、第1透光部材と第2基準板のいずれか一方に異物が存在することが解る。この画像読取装置では、上記の場合に、第1光源を照射させた場合に第1読取部及び第2読取部で原稿を読み取る。第1光源と原稿と第2透光部材には異物が存在しないため、第2読取結果に異物の影響がない。その一方、第1透光部材に異物が存在する場合には、第1読取部が読み取った第1読取結果には異物による画像情報が発生し、第2基準板に異物が存在する場合には、第1読取結果に異物の影響がない。また、第1読取結果に異物の影響があるか否かは、第1読取結果と第2読取結果を比較することで判断される。この画像読取装置によれば、透光部材と基準板のいずれか一方に異物が存在するのかを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】画像読取装置1の斜視図
【図2】画像読取装置1の概略的な断面図
【図3】読取部24の構造を説明するための図
【図4】画像読取装置1の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図5】読取処理を示すフローチャート
【図6】実施形態1のシェーディング補正データ作成処理を示すフローチャート
【図7】ゴミD1が付着している場合の原稿Gと読取データを示す図
【図8】ゴミD2が付着している場合の原稿Gと読取データを示す図
【図9】実施形態2のシェーディング補正データ作成処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
実施形態1を、図1ないし図8を用いて説明する。
【0015】
1.画像読取装置の機械的構成
図1は、本実施形態の画像読取装置1の外観を示す斜視図である。画像読取装置1は、給紙トレイ(載置部の一例)2と、本体部3と、排紙トレイ4と、を含む。本実施形態の画像読取装置1は、ユーザにより給紙トレイ2に載置された複数の原稿Gを排紙トレイ4に搬送するとともに、搬送中の原稿Gを本体部3に含まれる読取部24(図2参照)を用いて読み取るシートフィードスキャナである。
【0016】
給紙トレイ2は、図1に矢印8で示す給紙トレイ2の幅方向の両端部にガイド7A、7Bを有する。ガイド7A、7Bは、給紙トレイ2の幅方向に移動可能である。画像読取装置1では、ユーザによりガイド7A、7Bが押し広げられ、又は押し狭められることにより、ガイド7A、7Bの間の距離が原稿Gの幅と等しく調整され、給紙トレイ2のガイド7A、7Bの間に原稿Gが載置される。
【0017】
図2に示すように、本体部3には、給紙トレイ2と排紙トレイ4を接続する搬送経路22が設けられており、この搬送経路22の周辺に、ピックアップローラ20と、分離パッド21と、フィードローラ23と、読取部24と、排出ローラ25と、を備える。
【0018】
ピックアップローラ20は、摩擦力により、給紙トレイ2に載置された複数枚の原稿Gを本体部3の内部へと引き込む。分離パッド21は、摩擦力により、複数枚の原稿Gを各原稿Gに分離する。給紙トレイ2に載置された複数枚の原稿Gは、これらによって、各原稿Gに分離されて本体部3の内部へと引き込まれる。
【0019】
フィードローラ23は、図示しないモータにより駆動され、本体部3の内部へと引き込まれた原稿Gを搬送経路22上に搬送する。読取部24は、フィードローラ23によって搬送経路22内を搬送される原稿Gを読み取る。
【0020】
排出ローラ25は、搬送経路22上に搬送された原稿Gを排紙トレイ4に送り出す。排出ローラ25により排紙トレイ4に供給された原稿Gは、排紙トレイ4に積層される。つまり、ピックアップローラ20とフィードローラ23と排出ローラ25とによって、給紙トレイ2に載置された原稿Gを搬送経路22上に搬送する搬送部26が形成されている。
【0021】
図3に示すように、読取部24は、搬送経路22を介して対向して配置される一対のCIS30、40を含んで構成される。図3に示すように、CIS(第1読取部の一例)30は、搬送経路22に沿って上側(一方の側の一例)に配置されており、プラテンガラス(第1透光部材の一例)34下を通過する原稿Gの裏面を読み取る。また、CIS(第2読取部の一例)40は、搬送経路22に沿って下側(他方の側の一例)に配置されており、プラテンガラス(第2透光部材の一例)44上を通過する原稿Gの表面を読み取る。CIS30、40は、搬送経路22を挟んでお互いに相対移動不能に支持されている。
【0022】
CIS40は、上記プラテンガラス44の他、発光ダイオードなどで構成される光源(第2光源の一例)41、複数の受光素子が図3の紙面垂直方向に直線状に配列されている受光部(第2受光素子の一例)42、及びこれらが搭載されるキャリッジ45等を含む。CIS40は、図3に一点鎖線46で示すように、搬送経路22上に原稿Gが搬送されている場合、光源41から照射され原稿Gの表面で反射された光を受光し、その受光量から原稿Gの反射読取データ(受光データの一例)を取得する。なお、CIS30の構造はCIS40の構造と基本的に同じものであり、重複した説明を省略する。
【0023】
CIS30のプラテンガラス34には、CIS40の受光部42に対向する位置に白基準板(第1基準部材の一例)33が配置されている。白基準板33は、プラテンガラス34の搬送経路22に面する下面に、その表面がプラテンガラス34の下面と同一の高さとなるように配置されている。CIS40は、図3に一点鎖線47で示すように、搬送経路22上に原稿Gが搬送されていない場合、光源41から照射され、白基準板33の表面で反射された光を受光し、その受光量からシェーディング補正等に必要な白基準データ(受光データの別例)を取得する。また、光源31、41を照射しない状態の光を受光し、その受光量からシェーディング補正等に必要な黒基準データを取得する。
【0024】
白基準板33は、プラテンガラス34において、CIS30の受光部32とCIS40の光源41を結ぶ直線上の領域Rと異なる領域に配置されている。そのため、CIS30は、図3に二点鎖線48で示すように、搬送経路22上に原稿Gが搬送されている場合、CIS40の光源41から照射され原稿Gを透過した光を受光し、その受光量から原稿Gの透過読取データ(受光データの別例)を取得する。
【0025】
また、CIS40のプラテンガラス44には、CIS30の受光部32に対向する位置に白基準板(第2基準部材の一例)43が配置されている。白基準板43は、プラテンガラス44の搬送経路22に面する上面に、その表面がプラテンガラス44の上面と同一の高さとなるように配置されている。なお、CIS40の白基準板43の配置及び役割は、CIS30のプラテンガラス34と基本的に同じものであり、重複した説明を省略する。
【0026】
また、図1に示すように、本体部3には、この他に、電源スイッチや各種設定ボタンからなり、ユーザからの操作指令等を受け付ける操作部(入力部の一例)5や、液晶ディスプレイからなり、画像読取装置1の状況や読取部24が原稿Gを読み取った画像を表示する表示部(通知部の一例)6、及び画像読取装置1の状況を音でユーザに通知するスピーカ(通知部の別例)9を含む。
【0027】
2.画像読取装置の電気的構成
図4は、画像読取装置1の電気的構成を概略的に示すブロック図である。図4に示すように、画像読取装置1は、画像読取装置1の各部を制御するASIC(特定用途向け集積回路)10を含む。ASIC10は、中央処理装置(以下、CPU)11、ROM12、RAM13を備え、これらにバス14を介して操作部5、表示部6、スピーカ9、アナログフロントエンド(以下、AFE)15、点灯回路16、搬送部26に含まれる各ローラを駆動する駆動回路17、CIS30、40などが接続されている。
【0028】
ROM12には、画像読取装置1の動作を制御するための各種のプログラムが記憶されており、CPU11は、ROM12から読み出したプログラムに従って、受光データ生成部50、異常検出部51、読取制御部52、異物判断部53等として機能し、各部の制御を行う。
【0029】
点灯回路16は、CIS30、40に各々接続されており、CPU11からの命令に基づいて、光源31、41の点灯/消灯、及び照射時間Tを制御する信号をCIS30、40に送信する。CIS30、40は、点灯回路16から信号を受け取ると、光源31、41を点灯し、信号にて指定された照射時間Tに亘って光源31、41を照射する。その際、CIS30、40は、CPU11からの命令に基づいて、搬送経路22上を搬送される原稿Gや白基準板33、43から反射される反射光、又は搬送経路22上を搬送される原稿Gを透過した透過光を受光部32、42を用いて受光し、受光部32、42が受光した受光量に応じたアナログ信号である読取データ(電圧値)をAFE15に出力する。CIS30、40は、受光部32、42の受光素子毎に反射光又は透過光を受光し、各受光素子が受光した受光量に応じた読取データを順次、AFE15に出力する。
【0030】
AFE15は、CIS30、40に各々接続されており、CPU11からの命令に基づいて、CIS30、40から出力される読取データをデジタル信号である階調データ(階調値)に変換するA/D変換回路を有している。AFE15は、予め定められた入力レンジ及び分解能(例えば、8ビットであるならば0から255の階調)を有している。AFE15は、CIS30、40から出力された読取データを8ビット(0〜255)の階調データにA/D変換を行う。そして、AFE15によってA/D変換された階調データは、バス14を介してRAM13に記憶される。
【0031】
3.読取処理
次に、図5ないし図7を参照して、読取部24を用いて原稿Gを読み取る場合の、CPU11における処理について説明する。
【0032】
図5は、CPU11が所定のプログラムに従って実行する実施形態1のフローチャートを示す。CPU11は、ユーザによって画像読取装置1の給紙トレイ2に原稿Gが載置され、操作部5を介してCIS30、40による原稿Gの読取指示が入力されると、処理を開始する。CPU11は、処理を開始すると、まず、光量調整処理を実行する(S2)。
【0033】
光量調整処理において、CPU11は、まずCIS40の光源41の光量を調整する。CPU11は、光源41の照射時間Tを最大値に設定し、白基準データを取得する。この際、CIS30の光源31は消灯しておく。CPU11は、取得された白基準データをAFE15により階調値に変換し、変換された白基準階調データの最大階調値をAFE15の最大階調値Kmax(8ビットの場合、255)と比較する。CPU11は、白基準階調データの最大階調値がAFE15の最大階調値Kmaxと等しくなるように光源41の照射時間Tを調整する。光源41の光量調整終了後、同様に光源31の光量を調整し、光量調整処理を終了する。
【0034】
次に、CPU11は、シェーディング補正データ作成処理を実行する(S4)。図6に示すシェーディング補正データ作成処理において、CPU11は、まずCIS40のシェーディング補正データを作成する。CPU11は、受光データ生成部50として機能し、光量調整処理で調整された照射時間Tに亘って光源41を照射し、白基準データを1ラインに亘って取得する(S22)。この際、CIS30の光源31は消灯しておく。
【0035】
次に、CPU11は、異常検出部51として機能し、取得された白基準データの異常の有無を検出する(S24)。CPU11は、取得された白基準データをAFE15により階調値に変換し、変換された白基準階調データの最大階調値と最小階調値の差分階調値ΔKを検出する。ROM12には、予め基準差分階調値ΔKAが記憶されており、CPU11は、検出された差分階調値ΔKを基準差分階調値ΔKAと比較する。
【0036】
CPU11は、検出された差分階調値ΔKが基準差分階調値ΔKAよりも大きい場合(S24:YES)、取得された白基準データに異常が有ると判断し、表示部6及びスピーカ9を用いて当該異常をユーザに通知する(S30)。CPU11は、図3に一点鎖線46と干渉するように記載されたゴミD1、D2に示すように、白基準板33の表面、又はプラテンガラス44の受光部42に対応する領域の表面にゴミが付着しており、現状のまま原稿Gを読み取った場合、図7下段の反射読取データに示すように、原稿Gの反射読取データにおいて縦筋60等が読み取られる可能性が高いことをユーザに通知する。
【0037】
また、CPU11は、白基準板33の表面、又はプラテンガラス44の受光部42に対応する領域の表面のいずれにゴミD1、D2が付着しているかを特定するか否かを、表示部6及びスピーカ9を用いてユーザに促す(S32)。CPU11は、当該通知に基づいてゴミD1、D2の位置を特定する指示が入力された場合(S32:YES)、駆動回路17を用いて搬送部26を駆動し、給紙トレイ2の最もピックアップローラ20側に載置された原稿Gを搬送する(S34)。図7上段及び図8上段に示すように、原稿Gには、その両面に画像が印刷されている。
【0038】
次に、CPU11は、読取制御部52として機能し、原稿GがCIS40に対向する位置に到達すると、光源41の照射時間Tを最大値に設定し(S36)、図7下段及び図8下段に示すように、CIS40を制御して原稿Gの反射読取データを取得すると同時に、CIS30を制御して原稿Gの透過読取データを取得する(S38)。この際、CIS30の光源31は消灯しておく。CIS40では、光源41の照射時間Tが最大値に設定してあるため、CIS30では、原稿Gを透過した光を、受光部32を用いて受光することができ、その受光量から透過読取データを取得することができる。
【0039】
次に、CPU11は、異物判定部53として機能し、取得された反射読取データ及び透過読取データをAFE15により階調値に変換するとともに、変換された反射階調データと透過階調データとを比較する(S40)。反射階調データと透過階調データは、同一の原稿Gを読み取った階調データであり、濃淡の違いはあるものの同一の画像を示す階調データが含まれている。ROM12には、予め基準階調値KAが記憶されており、CPU11は、変換された反射階調データと透過階調データを基準階調値KAと比較し、基準階調値KA以下の階調値を有する階調データを無色階調データと判別し、基準階調値KAより大きい階調値を有する階調データを有色階調データと判別する。
【0040】
ROM12には、予め基準階調データ数KNが記憶されており、CPU11は、反射階調データと透過階調データの各々において、基準階調データ数KN以上に亘って連続している有色階調データを画像情報として検出する。
【0041】
CPU11は、反射階調データと透過階調データを比較し、いずれか一方の階調データにのみ存在する画像情報があるか否かを確認する。反射階調データと透過階調データは、同一の原稿Gを読み取った階調データであり、反射階調データと透過階調データには当該原稿Gの同一部分を読み取った対応する階調データ(以下、階調データ対)が含まれる。CPU11は、いずれか一方のみに画像情報が含まれる階調データ対が存在するか否かを確認し、いずれか一方のみに画像情報が含まれる階調データ対が存在する場合、いずれか一方の階調データにのみ存在する画像情報が有ると判断する。また、いずれか一方のみに画像情報が含まれる階調データ対が存在しない場合、いずれか一方の階調データにのみ存在する画像情報が無いと判断する。
【0042】
図7下段に示すように、CPU11は、反射階調データにのみ存在する縦筋60等の画像情報が有ると判断した場合(S40:YES)、プラテンガラス44の受光部42に対応する領域の表面にゴミD2が付着していると判断する(S42)。CPU11は、表示部6及びスピーカ9を用いて当該判断結果をユーザに通知し(S44)、処理を終了する。
【0043】
また、図8下段に示すように、CPU11は、反射階調データと透過階調データが等しく、いずれか一方の階調データにのみ存在する画像情報が無いと判断した場合(S40:NO)、白基準板33の表面にゴミD1が付着していると判断する(S46)。CPU11は、表示部6及びスピーカ9を用いて当該判断結果をユーザに通知し(S48)、処理を終了する。
【0044】
一方、CPU11は、検出された差分階調値ΔKが基準差分階調値ΔKA以下である場合(S24:NO)、又はS30の通知に基づいて、操作部5を介してゴミD1、D2の位置を特定しない指示が入力された場合、あるいは規定時間内に操作部5を介して指示が入力されない場合(S32:NO)、黒基準データを1ラインに亘って取得する(S26)。
【0045】
CPU11は、取得された黒基準データをAFE15により階調値に変換し、変換された黒基準階調データと白基準階調データを用いてシェーディング補正データ(以下、補正データ)Hを作成し(S28)、CIS40のシェーディング補正データ作成処理を終了する。補正データHによって、各受光素子の黒基準階調データは、AFE15の最小階調値Kminに補正され、各受光素子の白基準階調データは、AFE15の最大階調値Kmaxに補正される。なお、補正データHの作成方法は、従来技術における当該補正データの作成方法と同一であり、説明を省略する。
【0046】
CPU11は、CIS40のシェーディング補正データ作成処理終了後、同様にCIS30のシェーディング補正データ作成処理を実行する。CPU11は、CIS30、40のいずれの読取部においても補正データHが作成された場合に、シェーディング補正データ作成処理を終了する。
【0047】
補正データH作成後、CPU11は、駆動回路17を用いて搬送部26を駆動し、原稿Gの搬送を開始する(S6)。CPU11は、原稿Gの搬送開始後、原稿Gの搬送方向の先端がCIS40の受光部42に対向する位置に到達した場合に、原稿Gを読み取る(S8)。この際、CPU11は、1ラインの間、光量調整処理で調整された照射時間Tの時間の間、原稿に光を照射して、CIS30、40を用いて原稿Gの両面の反射読取データを同時に読み取るようにCIS30、40を制御する。また、CPU11は、これらの反射読取データをAFE15で変換した反射階調データに補正データHを用いて補正処理を行い、補正後の反射階調データをRAM13に記憶し、処理を終了する。
【0048】
4.本実施形態の効果
(1)画像読取装置1では、例えば図3に示すように、光源41から白基準板33に光を照射した場合に受光部42が受光した受光量からCIS40が取得する白基準データに異常が検出された場合、白基準板33の表面、又はプラテンガラス44の受光部42に対応する領域の表面のいずれにゴミD1、D2が付着していることが解るものの、いずれにゴミD1、D2が存在するかを特定することができない。
【0049】
本実施形態の画像読取装置では、CIS30とCIS40が搬送経路22を介して対向して配置されていることを利用して、いずれにゴミD1、D2が付着しているかを特定する。具体的には、光源41を照射させた場合にCIS30及びCIS40で原稿Gを読み取る。プラテンガラス44の領域Rの表面、原稿G、及びプラテンガラス34の受光部32に対応する領域の表面にはゴミが存在しないため、CIS30が取得する透過読取データにはゴミによる画像情報が発生しない。その一方、プラテンガラス44の受光部42に対応する領域の表面にゴミD2が存在する場合には、CIS40が読み取った反射読取データにゴミD1による画像情報が発生し、白基準板33の表面にゴミD1が存在する場合には、CIS40が読み取った反射読取データにゴミD2による画像情報が発生しない。また、CIS40が読み取った反射読取データにゴミD1による画像情報が発生したか否かは、CIS30が取得する透過読取データとCIS40が読み取った反射読取データを比較することで判断することができる。本実施形態の画像読取装置1によれば、白基準板33の表面、又はプラテンガラス44の受光部42に対応する領域の表面のいずれにゴミD1、D2が付着しているのかを特定することができる。
【0050】
(2)画像読取装置1では、白基準データに異常が検出された場合、ユーザに当該異常を通知し、この通知に基づいてユーザからゴミD1、D2の位置を特定する指示が入力された場合にのみゴミD1、D2の位置を特定する。そのため、ユーザが読取データに求める精度が高く、ゴミD2による画像情報を確実に除きたい場合には、ゴミの位置を特定することで、ゴミD1、D2を除去しやすい。一方、ユーザが読取データに求める精度が低く、ゴミD2による画像情報が含まれていても良い場合には、ゴミD1、D2を除去することなく、読取データを取得することができる。
【0051】
(3)画像読取装置1では、例えばCIS40が取得する白基準データに異常が検出され、白基準板33の表面、又はプラテンガラス44の受光部42に対応する領域の表面のいずれにゴミD1、D2が付着しているのかが判断された場合、表示部6及びスピーカ9を用いて当該判断結果をユーザに通知するので、ユーザは当該通知に基づいてゴミD1、D2を除去しやすい。
【0052】
(4)画像読取装置1では、白基準データに異常が検出された場合、載置部にもともと載置されている原稿を用いて搬送を行い、白基準板33の表面、又はプラテンガラス44の受光部42に対応する領域の表面のいずれにゴミD1、D2が付着していることを特定する。載置部にもともと載置されている原稿を用いてゴミD1、D2が付着している位置を特定するので、ユーザはゴミD1、D2の位置を特定する処理に先だって何かを準備する必要がなく、簡易にゴミD1、D2の位置を特定することができる。
【0053】
<実施形態2>
実施形態2を、図9を用いて説明する。本実施形態では、シェーディング補正データ作成処理において、取得された白基準データに異常が有ると判断され、ユーザからゴミD1、D2の位置を特定する指示が入力された場合、白紙の原稿GWを用いて搬送を行い、ゴミD1、D2の位置を特定する点で、実施形態1と異なる。以下の説明では、実施形態1と同一の内容については重複した記載を省略する。
【0054】
1.読取処理
図9は、CPU11が所定のプログラムに従って実行する実施形態2のフローチャートを示す。CPU11は、取得された白基準データに異常が有ると判断(S24)した後に、ユーザからゴミD1、D2の位置を特定する指示が入力された場合(S32:YES)、画像読取装置1が読み取ることが可能な最大読取サイズの白紙の原稿GWを給紙トレイ2に載置することを、表示部6及びスピーカ9を用いてユーザに通知して促す(S60)。CPU11は、ユーザによって給紙トレイ2の原稿Gが一端取り除かれ、ガイド7A、7Bを用いて最大読取サイズの原稿Gが載置されたことを検出した場合に、S36からの処理を実行する。
【0055】
2.本実施形態の効果
(1)本実施形態の画像読取装置1では、白基準データに異常が検出された場合、載置部にもともと載置されている原稿に換えて白紙の原稿GWを用いて搬送を行い、白基準板33の表面、又はプラテンガラス44の受光部42に対応する領域の表面のいずれにゴミD1、D2が付着していることを特定する。白紙の原稿GWを用いてゴミD1、D2の付着している位置を特定するので、載置部にもともと載置されている原稿のように、その両面に画像等が記載されている原稿を用いる場合に比べて、透過読取データを取得しやすく、透過読取データと反射読取データを用いて精度良くゴミD1、D2の位置を特定することができる。
【0056】
(2)本実施形態の画像読取装置1では、白紙の原稿GWとして画像読取装置1が読み取ることが可能な最大読取サイズの白紙の原稿GWを給紙トレイ2に載置することをユーザに促す。最大読取サイズの白紙の原稿GWを用いてゴミD1、D2の付着している位置を特定するので、CIS30、40の1ラインの全域においてゴミD1、D2の位置を特定することができる。
【0057】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、画像読取装置1を用いて説明を行ったが、本発明はこれに限られない。例えば、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能等の少なくとも1つの機能を有する複合機であっても良い。
【0058】
(2)上記実施形態では、画像読取装置1が1つのASIC10を有し、受光データ生成部50、異常検出部51、読取制御部52、異物判断部53等の機能をASIC10が有する1つのCPU11によって実行する例を用いて示したが、本発明はこれに限られない。例えば、お互いに異なるCPU、ASICなどによって各部が構成されても良い。
【0059】
(3)上記実施形態では、白基準板33、43が搬送経路22の表面に露出している場合の例を用いて説明を行ったが、白基準板33、43はプラテンガラス34、44よりも光源31、41側に配置されていても良い。この場合、白基準板33、43にゴミD1が付着するとは、プラテンガラス34、44の白基準板33、43に対応する位置にゴミが付着することを意味する。
【0060】
(4)上記実施形態では、CIS30、40の搬送経路22側に載置される透過部材を、プラテンガラス34、44を用いて説明したが、その材質は特に限定されず、透過率の比較的高いプラスチック等でも良い。
【0061】
(5)上記実施形態では、原稿Gの透過読取データ及び反射読取データを取得する際に、反射読取データを取得するCIS40(30)に含まれる光源41(31)のみから光を照射し、透過読取データを取得するCIS40(30)に含まれる光源41(31)を消灯する例を用いて説明を行ったが、本発明はこれに限られない。原稿Gの透過読取データ及び反射読取データを取得する際に、光源31、41の両方から光を照射しても良い。
【0062】
(6)また、上記実施形態では、原稿Gの透過読取データ及び反射読取データを取得する際に、反射読取データを取得するCIS40(30)に含まれる光源41(31)の照射時間Tを最大値とする例を用いて説明を行ったが、この場合の照射時間Tが別途設定されていても良い。この別途設定される照射時間Tは、照射された光が原稿を透過し、CIS30(40)によって透過読取データが取得できる時間に設定されている。
【0063】
(7)上記実施形態では、ROM12に記憶されている基準階調データ数KNを用いて画像情報を検出する例を用いて説明を行ったが、本発明はこれに限らない。例えばCIS40が取得する白基準データに異常が検出された場合であり、プラテンガラス44の受光部42に対応する領域の表面にゴミD2が付着している場合、通常、図7下段に示すように、反射読取データの搬送方向に沿って縦筋が発生する。CPU11は、透過階調データと反射階調データを比較し、反射階調データにのみ存在する縦筋を検出した場合に、プラテンガラス44の受光部42に対応する領域の表面にゴミD2が付着していると判断しても良い。
【符号の説明】
【0064】
1:画像読取装置、2:給紙トレイ、3:本体部、5:操作部、6:表示部、9:スピーカ、10:ASIC、11:CPU、15:AFE、16:点灯回路、22:搬送経路、24:読取部、26:搬送部、30、40:CIS、31、41:光源、32、42:受光部、33、43:白基準板、34、44:プラテンガラス、50:受光データ生成部、51:異常検出部、52:読取制御部、53:異物判断部、D1、D2:ゴミ、G:原稿、GW:白紙の原稿、H:補正データ、KA:基準階調値、KN:基準階調データ数、T:照射時間、ΔKA:基準差分階調値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を搬送経路を通って搬送する搬送部と、
前記搬送経路に沿って一方の側に設置され、第1透光部材と、第1基準板と、前記原稿の一方の面に対して前記第1透光部材を通して光を照射する第1光源と、前記原稿の一方の面で反射した光を前記第1透光部材を通して受光する第1受光素子と、を有する第1読取部と、
前記第1読取部と前記搬送経路を介して対向して配置され、前記搬送経路に沿って他方の側に設置され、第2透光部材と、第2基準板と、前記原稿の他方の面に対して前記第2透光部材を通して光を照射する第2光源と、前記原稿の他方の面で反射した光を前記第2透光部材を通して受光する第2受光素子と、を有する第2読取部と、
前記第1光源と前記第2光源のいずれか一方の光源を用いて、該光源が設置された側と異なる側に設置された基準板に対して光を照射し、該光源が設置された側と等しい側に設置された受光素子が受光した受光量から受光データを生成する受光データ生成部と、
前記受光データに異常が有るか否かを検出する異常検出部と、
前記異常検出部が異常を検出した場合、前記搬送部を用いて前記原稿を前記搬送経路を通って搬送し、少なくとも該光源を用いて該原稿に対して光を照射し、該光源を有する読取部は、該光源によって照射された面で反射された光を受光して該原稿を読み取るように、該光源を有しない読取部は、該光源によって前記原稿を透過した光を受光して該原稿を読み取るように制御する読取制御部と、
前記第1読取部が読み取った第1読取結果と前記第2読取部が読み取った第2読取結果に、いずれか一方の読取結果にのみ存在する画像情報が含まれている場合、該光源が設置された側と等しい側に設置された透光部材に異物が存在すると判断し、いずれか一方の読取結果にのみ存在する画像情報が含まれていない場合、該光源が設置された側と異なる側に設置された基準板に異物が存在すると判断する異物判断部と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置であって、
前記異常検出部が異常を検出した場合、該異常検出部が検出した検出結果を通知する第1通知部と、
前記第1通知部の通知に基づいて、前記透光部材と前記基準板のいずれに異物が存在するかを特定するか否かの選択結果を受け付ける入力部と、
を備え、
前記読取制御部は、前記入力部を介して前記特定する選択結果を受け付けた場合に、制御を行う、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の画像読取装置であって、
前記異物判断部が判断した判断結果を通知する第2通知部、
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の画像読取装置であって、
搬送する原稿を載置する載置部、
を備え、
前記読取制御部は、前記載置部に載置されている原稿を搬送すること、
を特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像読取装置であって、
前記異常検出部が異常を検出した場合、前記載置部に載置された原稿に換えて白紙の原稿を載置するように通知する第3通知部、
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の画像読取装置であって、
前記異物判断部は、一方の読取結果に画像情報が含まれている位置に対応する位置の他方の読取結果に画像情報が含まれていない場合、あるいは一方の読取結果に画像情報が含まれていない位置に対応する位置の他方の読取結果に画像情報が含まれている場合、いずれか一方の読取結果にのみ存在する画像情報が含まれていると判断し、それ以外の場合、いずれか一方の読取結果にのみ存在する画像情報が含まれていないと判断すること、
を特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−204972(P2012−204972A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66050(P2011−66050)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】