説明

画像2値化装置

【課題】 CCDカメラで撮影された画像においては、スミアの影響で薄く映ってしまう領域が発生するため、2値化するとスミアのかかった部分が消えてしまうことがあった。
【解決手段】 入力濃淡画像をスミア方向に分割し、各分割領域毎にスミアの影響の有無を判定し、スミアの影響有りと判断された領域については画像濃度値を補正することにより、適正な2値化を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、カメラやCCDカメラ等により撮像された濃淡画像を2値化する画像2値化装置に関するものであり、特に一部にスミアのかかった画像からスミアの影響を除去して良好な2値画像を得る画像2値化装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図6は、従来の画像2値化装置を示す構成図である。図において1は光電変換して多値濃度の画像を入力するCCDカメラ、2は入力された画像を格納する画像格納手段、6は2値化する領域の平均濃度を求める平均濃度算出手段、7は平均濃度から2値化のしきい値を算出する2値化しきい値算出手段、8は算出された2値化しきい値で濃淡画像を2値化する画像2値化手段である。なお、画像格納手段2はメモリ、平均濃度算出手段6〜画像2値化手段8はコンピュータ等により構成される。
【0003】すなわち、CCDカメラ1で光電変換して得られた多値濃度の画像は画像格納手段2に画像データとして格納される。そして、平均濃度算出手段6で求められた2値化する領域の平均濃度から、2値化しきい値算出手段7により2値化のしきい値が算出され、画像2値化手段8は算出された2値化しきい値で濃淡画像を2値化する。
【0004】図7は、従来の画像2値化装置において2値化する例を示したものである。(a)の10は、画像格納手段2に格納された画像であり、この例は数字の「0」が印刷された紙面をCCDカメラ1で撮影したものである。この例においてスミアは縦方向に発生しており、スミアの影響で0の中央の上下部分が他の部分に比較して薄く写っていることが分かる。(b)の12はこの原画像を従来の画像2値化装置によって2値化した2値画像である。全体を1つのしきい値で2値化しているため、0の中央の上下の部分が消えてしまっているのがわかる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の画像2値化装置は以上のように、2値化する画像領域の平均濃度に基づいて領域全体を1つのしきい値で2値化するため、スミアの影響で濃度がうすくなってしまう領域を含む画像を適正に2値化することは困難であるという課題があった。
【0006】この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、スミアのかかった画像でも適正に2値化できる画像2値化装置を得ることを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的に鑑み、この発明は、画像をスミア方向に分割した各分割領域においてその領域の最黒点濃度値に応じて画像補正を行い、この補正された画像の平均濃度に基づく2値化しきい値で濃淡画像を2値化することを特徴とする画像2値化装置にある。
【0008】また、画像データを保存する画像格納手段と、格納された画像をスミア方向に分割する画像分割手段と、各分割領域および画像全体の最も濃度値の高い最黒点をそれぞれ検出する最黒点検出手段と、各分割領域においてその分割領域での最黒点濃度値と画像全体の最黒点濃度値の比に従って濃淡画像を補正する画像補正手段と、補正された画像の平均濃度を算出する平均濃度算出手段と、算出された平均濃度から2値化のしきい値を算出する2値化しきい値算出手段と、算出されたしきい値で濃淡画像を2値化する画像2値化手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像2値化装置にある。
【0009】また、各分割領域についてスミアの影響の有無を判定するスミア有無判定手段をさらに備え、画像補正手段がスミアの影響の有る分割領域について画像補正を行うことを特徴とする請求項2に記載の画像2値化装置にある。
【0010】この発明に係わる画像2値化装置は、スミア方向に画像を分割し、それぞれの最黒点を検出する手段とその最黒点の濃度値を用いて濃淡画像を補正する手段を設けたものである。
【0011】また、さらに分割した領域毎にスミアの影響の有無を判断する手段を設け、スミアの影響のある領域について濃淡画像を補正するようにしたものである。
【0012】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1を示す構成図であり、図において1は光電変換して多値濃度の画像を入力するCCDカメラ、2は入力された画像を格納する画像格納手段、3はスミア方向に画像を分割する画像分割手段、4は各分割領域および画像全体の最も濃度値の高い最黒点を検出しその濃度を求める最黒点検出手段、5は画像全体の最黒点の濃度値と各分割領域の最黒点の濃度値から画像の各点の濃度値を補正する画像補正手段、6は2値化する領域の平均濃度を求める平均濃度算出手段、7は平均濃度から2値化のしきい値を算出する2値化しきい値算出手段、8は算出された2値化しきい値で濃淡画像を2値化する画像2値化手段である。なお、画像格納手段2はメモリ、画像分割手段3〜画像2値化手段8はコンピュータ等により構成される。
【0013】図2は、この発明の実施の形態1の動作を説明する図であり、図において(a)の10は画像格納手段2に格納された濃淡画像を示す。(a)においてスミアは縦方向すなわち「0」の上下の部分に発生するため、画像分割手段3では画像を縦方向の列ごとに分割する。
【0014】最黒点検出手段4は、各分割領域および画像全体の最も濃度値の高い最黒点を検出しその濃度を求める、図3の13は、図2の(a)の画像について、各列ごとに最も濃度値の高い最黒点を検出し、その濃度値を表にしたものであり、列0が左端の列で、列19が右端の列を示す。この表によると6番目の列の最黒点が画像中で最も濃度値の高い点となるので、この点の濃度値をDmaxとする。
【0015】画像補正手段5では、例えば下記の(1)式により画像の濃度値を補正する。(1)式において、Dxynewは(x、y)の点の補正後の濃度値、Dxyは(x、y)の点の元の濃度値、Dymaxはy番目の列の最黒点の濃度値である。
【0016】
【数1】


【0017】図2の(b)の11に(1)式により補正された濃淡画像を示す。平均濃度算出手段6ではこの(b)の画像の平均濃度を求め、2値化しきい値算出手段7で下記の(2)式により2値化しきい値を求める。そして画像2値化手段8において2値化した画像を図2の(c)の12に示す。なお(2)式において、Thは2値化しきい値、Lvlは平均濃度値、αおよびβはともに係数である。
【0018】
【数2】


【0019】実施の形態2.図4はこの発明の実施の形態2を示す構成図であり、ここでは画像分割手段3で分割された各分割領域についてスミアの影響の有無を判定するスミア有無判定手段9をさらに設け、画像補正手段5ではスミア有りと判定された分割領域について画像全体の最黒点の濃度値と該分割領域の最黒点の濃度値から画像の各点の濃度値を補正するようにした。これによりスミア有りと判定された分割領域についてのみ補正を行うことで効率化される。
【0020】図5はスミア有無判定手段9の処理フローを示す図である。ステップ14で分割領域内の最も濃度値の高い最黒点を検出し、ステップ15で分割領域内で最も濃度値の低い最白点を検出し、ステップ16で最白点の濃度値があるしきい値C1より大きかった場合は、ステップ19でスミアの影響無しと判定する。一方ステップ16で最白点の濃度値があるしきい値C1以下であった場合は、ステップ17で最黒点の濃度値と最白点の濃度値の差を求めその差があるしきい値C2より小さかった場合はステップ18でスミアの影響有りと判定する。ステップ17で最黒点の濃度値と最白点の濃度値の差がC2より大きかった場合は、ステップ19でスミアの影響無しと判定する。
【0021】
【発明の効果】以上のようにこの発明の実施の形態1によれば、濃淡画像をスミア方向に分割しそれぞれの分割領域の最黒点の濃度値と画像全体の濃度値によって、各分割領域の濃度値の補正を行うため、スミアの影響を補正することができ、適正な2値化を行うことができる。
【0022】またこの発明の実施の形態2によれば、濃淡画像をスミア方向に分割しそれぞれの分割領域について、スミアの影響の有無を判定し、スミアの影響有りと判定された分割領域についてのみ画像の濃度値の補正を行うため、効率的区に適正な2値化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明による画像2値化装置の実施の形態1を示す図である。
【図2】 この発明による画像2値化装置の実施の形態1の動作を説明する図である。
【図3】 この発明による画像2値化画像装置の実施の形態1の最黒点検出結果例を示す図である。
【図4】 この発明による画像2値化装置の実施の形態2を示す図である。
【図5】 この発明による画像2値化装置の実施の形態2のスミア有無判定手段の処理フローを示す図である。
【図6】 従来の画像2値化装置の例を示す図である。
【図7】 従来の画像2値化装置の動作を説明する図である。
【符号の説明】
1 CCDカメラ、2 画像格納手段、3 画像分割手段、4 最黒点検出手段、5 画像補正手段、6 平均濃度算出手段、7 2値化しきい値算出手段、8 画像2値化手段、9 スミア有無判定手段、10 濃淡画像、11 補正後の濃淡画像、12 2値画像、13 最黒点検出結果表。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 画像をスミア方向に分割した各分割領域においてその領域の最黒点濃度値に応じて画像補正を行い、この補正された画像の平均濃度に基づく2値化しきい値で濃淡画像を2値化することを特徴とする画像2値化装置。
【請求項2】 画像データを保存する画像格納手段と、格納された画像をスミア方向に分割する画像分割手段と、各分割領域および画像全体の最も濃度値の高い最黒点をそれぞれ検出する最黒点検出手段と、各分割領域においてその分割領域での最黒点濃度値と画像全体の最黒点濃度値の比に従って濃淡画像を補正する画像補正手段と、補正された画像の平均濃度を算出する平均濃度算出手段と、算出された平均濃度から2値化のしきい値を算出する2値化しきい値算出手段と、算出されたしきい値で濃淡画像を2値化する画像2値化手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像2値化装置。
【請求項3】 各分割領域についてスミアの影響の有無を判定するスミア有無判定手段をさらに備え、画像補正手段がスミアの影響の有る分割領域について画像補正を行うことを特徴とする請求項2に記載の画像2値化装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【公開番号】特開2002−208003(P2002−208003A)
【公開日】平成14年7月26日(2002.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−5483(P2001−5483)
【出願日】平成13年1月12日(2001.1.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】