説明

画素補正装置

【課題】 画素補正装置を内蔵しないことで熱画像カメラの小型化を実現する。
【解決手段】 熱画像カメラのレンズを覆う着脱可能な均熱板と、前記均熱板を前記熱画像カメラ本体に装着するために該均熱板及び該熱画像カメラ本体に設けられた装着部と、前記均熱板に接し或いはその近傍に設けられ該均熱板の温度を測定する温度センサと、前記熱画像カメラ本体内に位置し前記赤外線撮像素子の各画素が測定した温度情報及び前記温度センサが測定した前記均熱板の温度情報をデジタル量にそれぞれ変換するための変換部と、同じく前記熱画像カメラ本体内に位置し前記デジタル量を前記各画素の測定温度及び前記均熱板の測定温度に演算した後前記各画素の測定温度と前記均熱板の測定温度との差分を割り出し該差分から感度にばらつきのある画素の補正に必要な補正係数を演算し補正を行うための演算部とを備えたことを特徴とする熱画像カメラの画素補正装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型の熱画像カメラに係る画素補正に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線撮像素子を用いた熱画像カメラについて、測定結果として表示される熱画像は多数の撮像画素の測定温度から成り立っている。理論上では、同一の温度を持つ物体を表示するのであれば、すべての画素は均一な測定温度となる。しかしこの画素に、感度にばらつきのある画素が混在することで、同じ温度を持つ物体を測定している場合であっても、各画素の測定温度に差異が生じ、結果熱画像の精度は低下する。そのため均熱の板を測定した測定温度と、各画素の測定温度との誤差を演算によって補正することが従来から行われてきた。
【0003】
この方法として例えば、光学系の開口絞りの位置に瞬間的に開閉できるシャッターを配置するとともに、そのシャッターの温度を測定する温度センサーを設けたものが知られている。ここで用いられるシャッターは、写真工業で一般的なレンズシャッターを転用できる。
【0004】
【特許文献1】特開平10−115557号(第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、以上に述べた熱画像カメラでは、シャッター及びその開閉を制御する機構は熱画像カメラ本体に設置されている。小型の熱画像カメラにおいて、均熱板としての役割を果たすシャッターを本体に収納することは、カメラの小型化の障害になるとともに、コストの増大を招くこととなる。
【0006】
本発明は、このような従来の構成が有していた問題を解決しようとするものであり、小型の熱画像カメラにおいても簡易かつ安価にて均熱板による画素の補正を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1記載の小型熱画像カメラの画素補正装置は、赤外線撮像素子を用いた熱画像カメラに係る画素補正装置において、前記熱画像カメラのレンズを覆う着脱可能な均熱板と、前記均熱板を前記熱画像カメラ本体に装着するために、該均熱板及び該熱画像カメラ本体に設けられた装着部と、前記均熱板に接し或いはその近傍に設けられ、該均熱板の温度を測定する温度センサと、前記熱画像カメラ本体内に位置し、前記赤外線撮像素子の各画素が測定した温度情報及び前記温度センサが測定した前記均熱板の温度情報をデジタル量に、それぞれ変換するための変換部と、同じく前記熱画像カメラ本体内に位置し、前記デジタル量を前記各画素の測定温度及び前記均熱板の測定温度に演算した後、前記各画素の測定温度と前記均熱板の測定温度との差分を割り出し、該差分から感度にばらつきのある画素の補正に必要な補正係数を演算し補正を行うための演算部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、均熱板を熱画像カメラ本体に収納することなく手動で着脱可能な形態をとっているため、熱画像カメラの小型化が可能となるとともに、複雑な機構を省略することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明である画素補正装置を採用した熱画像カメラの側断面概略図であり、図2(a)は温度センサ及び変換部の拡大断面略図であり、図2(b)は温度センサと変換部が電気的に接続したときの拡大断面略図であり、図3は温度情報が演算部において処理されるフロー図であり、図4は本発明の他の実施例である。
【実施例】
【0010】
まず図1に基づいて、本発明である画素補正装置を採用した熱画像カメラの側断面概略図を説明する。黒体であり、補正に係る基準熱源である均熱板1は、その周縁部に装着部2を備える。この装着部は例えば円筒2a、係止凸部2b及び係止凹部2cから成る。均熱板1の周縁部にはこの円筒2aが設けられ、かつ円筒2aの少なくとも一点には係止凸部2bが固着されている。一方係止凹部2cは、熱画像カメラ本体3の係止凸部2bに対応した位置に設けられており、均熱板1は、この係止凸部2bが係止凹部2cに挿入されることで、レンズ4を覆いながら熱画像カメラ本体3に装着される。
この均熱板1の内部或いは近傍には、均熱板1の温度を測定するための、サーミスタなどの温度センサ5の測温部が内蔵されている。熱画像カメラ本体3内には、この温度センサ5が測定した均熱板1の温度情報を受信し、電気信号であるこの温度情報をデジタル量に変換するための変換部6が設けられている。この変換部6にて変換されたデジタル量が演算部7に伝達され、そこでこのデジタル量に基づいて測定温度を演算する。一方FPA(Focal Plane Array)8の各画素が測定した電気信号である温度情報も、同様に変換部6においてデジタル量に変換され、このデジタル量に基づいて演算部7において測定温度が演算される。そして演算部7において、前述の各画素の測定温度は均熱板1の測定温度と比較される。
【0011】
次に図2に基づいて、温度センサ5及び変換部6並びに両者が電気的に接続した場合について説明する。温度センサ5は、図2(a)及び既述の通り、測温部が均熱板1の内部或いは近傍に配置され、熱画像カメラ本体3に均熱板1の温度情報を伝達するための伝達部5aが係止凸部2bの端部から外部に伸びる。ここで均熱板1は、前述のように熱画像カメラ本体3に設けられたレンズ4を完全に覆う形で設置される。このとき図2(b)に示すように、係止凸部2b及び伝達部5aが、熱画像カメラ本体3に設けられた係止凹部2c及び変換部6に挿入されるように位置決めする。伝達部5aが変換部6に挿入されると、均熱板1の温度情報はデジタル量に変換された後、配線9aを介して熱画像カメラ本体3の内部に設けられた演算部7へ伝達される。
【0012】
次に図3に基づいて、各画素がどのように補正されるのかをフロー図に基づいて説明する。均熱板1がレンズ4を覆った状態で撮像すると(S301)、均熱板1の温度は一定のため、FPA8における各画素はすべて同一の測定温度となるはずである。しかし現実には感度にばらつきのある画素が存在し、同一の測定温度となるとは限らない。そこで、まずは各画素が測定した温度情報であって変換部6において変換されたデジタル量が配線9bを介して演算部7に伝達される(S302)。
一方、温度センサ5において均熱板1の温度が測定される。ここで測定された温度情報は電気信号であるため、変換部6においてデジタル量に変換される(S303)。このデジタル量が配線9aを通じて演算部7に伝達され(S304)る。結果、演算部7は、各画素の温度情報のデジタル量と、この均熱板1の温度情報のデジタル情報を受信し、この二つのデジタル量を演算することで測定温度を導く。(S305)。
【0013】
演算部7が前記各画素の測定温度及び前記均熱板1の測定温度を演算したとき、この演算部7において各画素の測定温度と均熱板1の測定温度との比較が行われ、二つの温度を一致させるための補正係数が演算される(S305)。
例えば、正常な画素の場合、均熱板1の測定温度が20度であれば各画素の測定温度も20度となり、補正係数は1と導かれる。しかし感度にばらつきのある画素においては、同じように均熱板1の測定温度が20度であっても、例えば画素の測定温度が25度を示すことがある。このような場合、表面温度が20度である測定対象が実際の測定時に正確に20度と測定されるための補正係数を求める。また例えば、逆に感度にばらつきのある画素の測定温度が16度を示す場合も同様である。このようにして導かれた補正係数を記憶装置に記憶し(S306)、次回測定対象撮像時にFPA8における各画素の測定温度を補正する(S307)ことで、画素の補正は行われる。
【0014】
最後に図4に基づいて本発明の他の実施例について説明する。本例においては、装着部2は円筒2a、係止凸部2b及び係止凹部2cから形成されるが、本図に示すように円筒2aを省略し、少なくとも一以上の係止凸部2b及びこれに対応する係止凹部2cから形成される構成であっても良い。
【0015】
各図に示す実施例において、円筒2aに係止凸部2bを、熱画像カメラ本体3に係止凹部2cを備える構成で説明しているが、均熱板1を熱画像カメラ本体3に装着するという目的を果たすことが可能な構成であればこれに限らない。
また、装着部2内から温度センサ5の導線が伸びる構成を図示しているが、測温部が均熱板内部或いは近傍に位置するのであれば、導線が装着部2内を挿通しない構成であっても良い。
さらに、本例では先にFPA8の各画素の温度情報をデジタル量に変換しているが、温度センサ5からの情報を先に処理する構成であっても良い。
【0016】
このように、本発明である画素補正装置を用いれば、いつでも簡便に画素の補正が行えるうえ、シャッター及びその開閉機能が内蔵されていないため小型カメラの大きさを保持することが可能である。
【0017】
以上、本願発明における最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明である画素補正装置を採用した熱画像カメラの側断面概略図である。
【図2】図2(a)は温度センサ及び読み出し部の拡大断面略図であり、図2(b)は温度センサ及び読み出し部が接触したときの拡大断面略図である。
【図3】図3は温度情報が演算部において処理されるフロー図である。
【図4】図4は本発明の他の実施例である。
【符号の説明】
【0019】
1 均熱板
2 装着部(2a 円筒、2b 係止凸部、2c 係止凹部)
3 熱画像カメラ本体
4 レンズ
5 温度センサ
5a 伝達部
6 変換部
7 演算部
8 FPA(Focal Plane Array)
9a、9b 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線撮像素子を用いた熱画像カメラに係る画素補正装置において、
前記熱画像カメラのレンズを覆う着脱可能な均熱板と、
前記均熱板を前記熱画像カメラ本体に装着するために、該均熱板及び該熱画像カメラ本体に設けられた装着部と、
前記均熱板に接し或いはその近傍に設けられ、該均熱板の温度を測定する温度センサと、
前記熱画像カメラ本体内に位置し、前記赤外線撮像素子の各画素が測定した温度情報及び前記温度センサが測定した前記均熱板の温度情報をデジタル量に、それぞれ変換するための変換部と、
同じく前記熱画像カメラ本体内に位置し、前記デジタル量を前記各画素の測定温度及び前記均熱板の測定温度に演算した後、前記各画素の測定温度と前記均熱板の測定温度との差分を割り出し、該差分から感度にばらつきのある画素の補正に必要な補正係数を演算し補正を行うための演算部とを備えたことを特徴とする熱画像カメラの画素補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−246731(P2009−246731A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91586(P2008−91586)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000133526)株式会社チノー (113)
【Fターム(参考)】