説明

異方導電性フィルム、これに含まれる異方導電性フィルム組成物およびこれを含む装置

【課題】回路接続時の腐食の発生を抑止する異方導電性フィルム、これに含まれる異方導電性フィルム組成物およびこれを含む装置を提供する。
【解決手段】バインダー、硬化剤、開始剤および導電性粒子を含み、前記バインダーがニトリルブタジエンゴム系樹脂およびウレタン系樹脂からなる群から選択される1種以上を含み、イオン含有量が0超100質量ppm以下であることを特徴とする異方導電性フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性フィルム、異方導電性フィルム用異方導電性フィルム組成物および異方導電性フィルムを含む装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
異方導電性フィルムは、ニッケルや金等の金属粒子、またはそのような金属でコーティングされた高分子粒子等の導電性粒子を分散させた接着性のフィルムである。異方導電性フィルムを、接続させようとする回路間に位置させた後、一定条件の下で加熱および加圧すると、回路端子間は導電性粒子によって電気的に接続され、隣接回路との間のピッチ(pitch)には絶縁性接着樹脂が充填されて導電性粒子が相互独立して存在するようになるため、高い絶縁性を付与するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開第2005−187637号公報
【特許文献2】特開第2009−041019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年のITデバイスの軽薄化、簡素化およびフラットパネルディスプレイの解像度の増加に伴い、デバイスの回路幅は狭くなっている。既存の回路幅が広いものでは、回路内の金属電極部分の一部に腐食が発生しても回路全体がショートすることはなかった。しかし、近年のピッチの狭い回路では、電極回路内の金属電極が狭いため、回路内の金属電極部分の一部に腐食が発生した場合であっても回路全体がショートしうる。これは接続信頼性に影響を与えうる。
【0005】
したがって、本発明は、回路接続時の腐食の発生を抑止する異方導電性フィルム、これに含まれる異方導電性フィルム組成物およびこれを含む装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の異方導電性フィルムは、バインダー、硬化剤、開始剤および導電性粒子を含み、前記バインダーがNBR(ニトリルブタジエンゴム)系樹脂およびウレタン系樹脂からなる群から選択される1種以上を含み、イオン含有量が0超100質量ppm以下でありうる。
【0007】
一実施形態において、前記イオン含有量が0超50質量ppm以下でありうる。
【0008】
一実施形態において、前記異方導電性フィルムの電気伝導度が0超100μS/cm以下でありうる。
【0009】
一実施形態において、前記NBR系樹脂のイオン含有量が0超100質量ppm以下でありうる。
【0010】
一実施形態において、前記ウレタン系樹脂のイオン含有量が0超100質量ppm以下でありうる。
【0011】
一実施形態において、前記バインダーがアクリル系樹脂をさらに含みうる。
【0012】
一実施形態において、前記バインダーが、前記アクリル系樹脂を20〜90質量%含み、前記イオン含有量が0超100質量ppm以下のNBR系樹脂を5〜55質量%含み、前記イオン含有量が0超100質量ppm以下のウレタン系樹脂を5〜40質量%で含みうる。
【0013】
一実施形態において、前記異方導電性フィルムがポリウレタンビーズをさらに含みうる。
【0014】
一実施形態において、前記ポリウレタンビーズのイオン含有量が0超10質量ppm以下でありうる。
【0015】
他の態様において、本発明の異方導電性フィルム組成物は、バインダー、硬化剤、開始剤および導電性粒子を含み、前記バインダーはNBR系樹脂およびウレタン系樹脂からなる群から選択される1種以上を含み、前記異方導電性フィルム組成物で製造された異方導電性フィルムのイオン含有量が0超100質量ppm以下でありうる。
【0016】
本発明の装置は、前記異方導電性フィルムまたは前記異方導電性フィルム組成物で製造された異方導電性フィルムを含みうる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、回路接続時の腐食の発生を抑止する異方導電性フィルム、これに含まれる異方導電性フィルム組成物およびこれを含む装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態において、異方導電性フィルムは、バインダー、硬化剤、開始剤および導電性粒子を含み、イオン含有量は0超100質量ppm以下である。好ましくは、イオン含有量は0超50質量ppm以下でありうる。この場合、金属電極の腐食の可能性が減り信頼性が向上する。
【0019】
前記異方導電性フィルムは、バインダー、導電性粒子等を含む多数の成分を使用して製造される。よって、各成分のイオン含有量および全フィルムのイオン含有量を測定する既存の方法では、実際にフィルムを回路に接続させた時に、電圧および電流が印加される状況で腐食が発生するか判断できない。そこで異方導電性フィルムの電気伝導度を予め測定して0超100μS/cm以下になることを確認することで、回路接続時の端子間で腐食が起こるか予め判断することができる。電気伝導度は、通常の方法で測定できる。例えば、異方導電性フィルム0.4gを20gの脱イオン水(D.I.W)に入れた後、100℃で10時間沸騰し、水に溶け出たイオンを伝導度メーター(Conductivity Meter)を使用して測定できる。前記電気伝導度は、好ましくは、0超30μS/cm以下でありうる。前記範囲である場合、高温・高湿でも電気抵抗が上昇せず、高い信頼性を有する。特に好ましくは10超29.8μS/cm以下でありうる。
【0020】
バインダー
本発明の異方導電性フィルムは、フィルムのマトリックスの役割をするバインダーにNBR系樹脂およびウレタン系樹脂からなる群から選択される1種以上を含みうる。
【0021】
前記バインダーは、異方導電性フィルムのうち固形分基準で20〜78質量%含まれうる。前記範囲内でフィルムの形成が好適に行われ、電気伝導度は高くならない。前記バインダーは、好ましくは30〜75質量%で含まれうる。
【0022】
本明細書中の「イオン含有量」の「イオン」とは、単量体等の重合等による共重合体樹脂またはビーズの製造過程で生成するイオンを意味するものであり、例えばNa、Cl等を含みうるが、これらに制限されるのではない。
【0023】
「イオン含有量」は、通常の方法で測定できる。例えば、自動燃焼装置を利用したイオンクロマトグラフィー等がある。
【0024】
本発明においてNBR系樹脂のイオン含有量は、0超100質量ppm以下でありうる。NBR系樹脂のイオン含有量が前記範囲の場合、製造された異方導電性フィルムの電気伝導度は低く、回路接続時に腐食は発生しない。前記NBR系樹脂のイオン含有量は、好ましくは0超20質量ppm以下でありうる。
【0025】
前記イオン含有量が0超100質量ppm以下のNBR系樹脂は、通常のNBR系樹脂をイオン交換処理して製造できる。例えば、NBR系樹脂の溶解度は低いがイオン等をよく溶かす溶媒、例えばメタノール、メチルエチルケトン等を利用してNBR系樹脂等に含まれているイオン不純物を溶解して除去する希釈法等を通じてできるが、これらに制限されるのではない。イオン交換処理によって、NBR系樹脂に含まれているイオン含有量は減少する。
【0026】
前記NBR系樹脂は、アクリロニトリルとブタジエンとの乳化重合によって製造された共重合体であり、共重合体中のアクリロニトリルとブタジエンとのそれぞれの含量は特に制限されず、重合方法も特に制限がない。
【0027】
前記NBR系樹脂は、質量平均分子量が50,000〜2,000,000g/molの樹脂でありうる。好ましくは80,000〜1,500,000g/molでありうる。前記分子量である場合、フィルム形成が容易であり、信頼性等の物性に優れる。
【0028】
本発明においてウレタン系樹脂のイオン含有量は、0超100質量ppm以下でありうる。ウレタン系樹脂のイオン含有量が前記範囲の場合、製造された導電性フィルムの電気伝導度は低く、回路接続時の腐食は発生しない。好ましくは0超10質量ppm以下でありうる。
【0029】
前記イオン含有量が0超100質量ppm以下のウレタン系樹脂は、通常のウレタン系樹脂をイオン交換処理して製造できる。例えば、NBR系樹脂のようにメタノール、メチルエチルケトン等を利用した希釈法等を利用できるが、これらに制限されるのではない。イオン交換処理によって、ウレタン系樹脂に含まれているイオン含有量は減少する。
【0030】
前記ウレタン系樹脂はウレタン結合を有する高分子樹脂であり、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、およびトリレンジイソシアネート等からなる群から選択される1以上のイソシアネートと、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール等からなる群から選択される1以上のポリオールを重合して製造されるものであるが、これに制限はされない。
【0031】
前記ウレタン系樹脂は、質量平均分子量が50,000〜2,000,000g/molの樹脂でありうる。好ましくは80,000〜1,500,000g/molでありうる。前記分子量である場合、フィルム形成が容易であり、信頼性等の物性に優れる。
【0032】
前記バインダーは、さらにアクリル系樹脂を含みうる。
【0033】
前記アクリル系樹脂は、30〜120℃のガラス転移温度を有し、0〜150mgKOH/mgの酸価を有しうる。
【0034】
前記アクリル系樹脂は、質量平均分子量が50,000〜2,000,000g/molの樹脂でありうる。前記範囲内で、タック(tack)特性が適切なためフィルム成形が満足に行われ、硬化剤に含まれる成分との相溶性が良く、前記アクリル系樹脂と硬化剤の相分離が起こらない。質量平均分子量は、好ましくは65,000〜1,700,000g/mol、特に好ましくは80,000〜1,500,000g/molでありうる。
【0035】
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系単量体および/またはこれと重合可能な単量体を重合して得ることができる。例えば、アクリル系樹脂は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの炭素数2個〜10個のアルキル基を有する(メタ)アクリレート;2,3−エポキシシクロペンテニル(メタ)アクリレート、3,4―エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル化ポリカプロラクトンなどの脂環型エポキシ基を有する(メタ)アクリルアクリレート;(メタ)アクリル酸、ビニルアセテート、スチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリルおよびこれから変性されたアクリル系単量体からなる群から選択された1種以上の単量体を重合して製造されたものでありうる。重合方法は、特に制限されない。
【0036】
アクリル系樹脂は、バインダーのうち固形分基準で20〜90質量%、好ましくは20〜80質量%、特に好ましくは30〜50質量%で含まれうる。前記範囲内でフィルム形成が好適に行われうる。
【0037】
本発明のフィルムの一実施形態において、バインダーはアクリル系樹脂およびイオン含有量が0超100質量ppm以下のNBR系樹脂を含みうる。このような場合、バインダーは固形分基準でアクリル系樹脂を20〜80質量%およびイオン含有量が0超100質量ppm以下のNBR系樹脂を20〜80質量%含みうる。前記範囲内で、フィルム形成が良好で、電気伝導度は高くないため回路接続時に腐食が起こりにくい。好ましくは、固形分基準でアクリル系樹脂30〜70質量%およびイオン含有量が0超100質量ppm以下のNBR系樹脂30〜70質量%、特に好ましくは、固形分基準でアクリル系樹脂30〜50質量%およびイオン含有量が0超100質量ppm以下のNBR系樹脂50〜70質量%を含むことができる。
【0038】
このとき、一実施形態にかかるバインダーには、イオン交換処理されないウレタン系樹脂またはイオン含有量が100質量ppm超のウレタン系樹脂をさらに含みうる。これら樹脂の含量は、バインダー100質量部を基準に1〜10質量部、好ましくは1〜8質量部で含まれうる。前記範囲内でフィルムの電気伝導度が高くならない。
【0039】
本発明のフィルムの他の実施形態において、バインダーはアクリル系樹脂およびイオン含有量が0超100質量ppm以下のウレタン系樹脂を含みうる。このような場合、バインダーは固形分基準でアクリル系樹脂を20〜80質量%、およびイオン含有量が0超100質量ppm以下のウレタン系樹脂を20〜80質量%で含みうる。前記範囲内でフィルム形成が良好で、電気伝導度が高くないため、回路接続時に腐食が起こりにくい。好ましくは、固形分基準でアクリル系樹脂を30〜70質量%およびイオン含有量が0超100質量ppm以下のウレタン系樹脂を30〜70質量%、特に好ましくは、固形分基準でアクリル系樹脂30〜60質量%およびイオン含有量が0超100質量ppm以下のウレタン系樹脂を40〜70質量%含みうる。
【0040】
このとき、前記の他の実施形態にかかるバインダーは、イオン交換処理されていないNBR系樹脂またはイオン含有量が100質量ppm超のNBR系樹脂をさらに含みうる。これら樹脂の含量は、バインダー100質量部を基準に1〜10質量部、好ましくは1〜8質量部、特に好ましくは2〜6質量部で含まれうる。前記範囲内でフィルムの電気伝導度が高くならない。
【0041】
本発明の組成物のさらに他の実施形態において、バインダーはアクリル系樹脂、イオン含有量が0超100質量ppm以下のNBR系樹脂およびイオン含有量が0超100質量ppm以下のウレタン系樹脂を含みうる。このような場合、バインダーは固形分基準でアクリル系樹脂20〜90質量%、イオン含有量が0超100質量ppm以下のNBR系樹脂5〜55質量%およびイオン含有量が0超100質量ppm以下のウレタン系樹脂5〜40質量%を含みうる。前記範囲内でフィルム形成が良好で、電気伝導度が高くないため回路接続時に腐食が起こりにくい。好ましくは固形分基準でアクリル系樹脂20〜40質量%、イオン含有量が0超100質量ppm以下のNBR系樹脂30〜55質量%、およびイオン含有量が0超100質量ppm以下のウレタン系樹脂30〜40質量%を含みうる。
【0042】
本発明のフィルムにおいてバインダーは、イオン含有量が100質量ppm以下のNBR系樹脂、イオン含有量が100質量ppm以下のウレタン系樹脂、アクリル系樹脂以外にも、異方導電性フィルムのバインダーに通常含まれる他の熱可塑性樹脂をさらに含みうる。例えば、熱可塑性樹脂は、アクリロニトリル系、ポリアミド系、オレフィン系およびシリコン系樹脂からなる群から選択される1種以上を含みうるが、これらに制限されるのではない。
【0043】
硬化剤
本発明の異方導電性フィルムは、硬化剤として、ウレタン(メタ)アクリレート、および(メタ)アクリレート単量体からなる群から選択される1種以上を含みうる。
【0044】
硬化剤は、異方導電性フィルム組成物のうち、固形分基準で20〜50質量%で含まれうる。前記範囲内において、接着力、外観等の物性に優れ、信頼性が良く且つ安定的である。好ましくは、23〜40質量%で含まれうる。
【0045】
前記ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合および一以上の末端に二重結合を含みうる。ウレタン(メタ)アクリレート製造のための重合反応は特に制限されず、公知の重合反応を用いることができる。
【0046】
前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量は、500〜30,000g/molでありうる。前記範囲内でフィルムの形成が好適に行われ、相溶性が好適でありうる。
【0047】
前記ウレタン(メタ)アクリレートは、固形分基準で異方導電性フィルムのうち10〜30質量%、好ましくは20〜30質量%で含まれうる。前記範囲内において、異方導電性フィルムの相溶性が好適でありうる。
【0048】
(メタ)アクリレート単量体は、異方導電性フィルム組成物において、反応性希釈剤の役割をする。(メタ)アクリレート単量体は、特に制限されないが、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、エトキシ付加型ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ付加型ビスフェノール−Aジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、フェノキシ−t−グリコール(メタ)アクリレート、2−メタアクリロイルオキシメチルホスフェート、2−メタアクリロイルオキシエチルホスフェート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエートアクリレートおよびこれらの混合物からなる群から選択されうるが、これらに制限されない。
【0049】
前記(メタ)アクリレート単量体は、異方導電性フィルムのうち固形分基準で5〜20質量%、好ましくは5〜10質量%で含まれうる。前記範囲内で異方導電性フィルムの接続信頼性が高くなりうる。
【0050】
硬化剤は、ウレタン(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリレート単量体からなる群から選択される1種以上以外にも、アセタール系単量体、カルボジイミド系単量体、ポリオ−ル系単量体とイソシアネ−ト系単量体等をさらに含みうる。
【0051】
開始剤
本発明の異方導電性フィルムは開始剤を含み、開始剤としてはラジカル開始剤を使用できる。ラジカル開始剤として、光重合型開始剤または熱硬化型開始剤の1種以上を組合わせて使用できる。好ましくは熱硬化型開始剤を使用できる。
【0052】
開始剤は、異方導電性フィルムのうち固形分基準で1〜10質量%で含まれうる。前記範囲内で、硬化に必要な十分な反応が起き、適当な分子量の形成を通じてボンディング後の接着力、信頼性等で優れた物性を期待できる。開始剤は、好ましくは1〜5質量%で含まれうる。
【0053】
熱硬化型開始剤としては、特に制限はなく、パーオキシド系およびアゾ系を使用できる。パーオキシド系開始剤は、例えば、ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド等を使用できるが、これらに制限されない。アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオネート)等を使用できるが、これらに制限されない。
【0054】
導電性粒子
本発明の異方導電性フィルムは、導電性能を付与するためのフィラーとして導電性粒子を含む。
【0055】
導電性粒子は、異方導電性フィルムのうち固形分基準で1〜30質量%で含まれうる。前記範囲内で、電気的導通が適切に行われ、回路にショート等が発生しにくい。適当な導電性粒子の量は、前記異方導電性フィルムの用途によって決められ、その含量は実質的には異なる。好ましくは1〜20質量%、特に好ましくは2〜8質量%で含まれうる。
【0056】
導電性粒子としては、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ハンダ等を含む金属粒子;炭素;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール等を含む樹脂および金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ハンダ等を含む金属コーティングされてなる変性樹脂;その上に絶縁粒子を追加してコーティングした絶縁化処理された導電性粒子等を1種以上使用できる。
【0057】
導電性粒子の大きさは特に制限はされないが、接着力と接続信頼性のために、SEM(走査型電子顕微鏡)で測定した平均直径は1μm〜20μmが好適であり、好ましくは1.5μm〜15μm、特に好ましくは2μm〜10μmでありうる。
【0058】
本発明の異方導電性フィルムはポリウレタンビーズをさらに含むことができる。ポリウレタンビーズは架橋されたウレタン樹脂からなる球状の有機微粒子でありうる。
【0059】
ポリウレタンビーズは、アクリル系樹脂、イオン含有量が0超100質量ppm以下のNBR系樹脂および/またはイオン含有量が0超100質量ppm以下のウレタン系樹脂と共に、異方導電性フィルム形成のためのマトリックスの役割をするバインダーに分散されうる。
【0060】
ポリウレタンビーズは、イオン残留物が発生しないモノマーを用いるか、イオン交換処理されたものでありうる。ポリウレタンビーズのイオン交換処理方法は特に制限されないが、溶媒等による希釈法等が一般的である。ポリウレタンビーズがイオン交換処理される場合は、ポリウレタンビーズのイオン含有量は減少することになり、好ましくは、0超10質量ppm以下、より好ましくは0超1質量ppm以下、特に好ましくは0超0.1質量ppm以下である。前記範囲内でフィルムの電気伝導度が高くならず、回路接続時の腐食が起こりにくい。
【0061】
ポリウレタンビーズのSEMで測定した平均直径は特に制限されず、0.5〜10μmでありうる。
【0062】
ポリウレタンビーズは、異方導電性フィルム100質量部に対して固形分基準で1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部で含まれうる。前記範囲内でフィルムの電気伝導度が高くならず、回路接続時に腐食が起こりにくい。
【0063】
また、本発明の異方導電性フィルムは、基本物性を阻害しないと共に、付加的な物性を提供するために、重合防止剤、酸化防止剤、熱安定剤等の添加剤をさらに含むことができる。添加剤は特に制限されないが、固形分基準で異方導電性フィルム中に0.01〜10質量%で含まれうる。
【0064】
重合防止剤は、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、フェノチアジンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる。酸化防止剤は、フェノリック系またはヒドロキシシンナメート系物質等を使用できる。例えば、テトラキス−(メチレン−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシシンナメート)メタン、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパンチオールジ−1,2−エタンジイルエステル等を使用できる。
【0065】
本発明の異方導電性フィルムは、下記の異方導電性フィルム組成物で形成されうる。異方導電性フィルムを形成する際は、特別な装置や設備を必要としない。例えば、異方導電性フィルム組成物をトルエン等を含む有機溶媒に溶解させて液状化した後、導電性粒子が粉砕しない速度の範囲内で一定時間攪拌し、これを離型フィルム上に一定の厚さ、例えば10〜50μmの厚さで塗布した後、一定時間乾燥させて有機溶媒を揮発させたりまたはさらに紫外線を用いて硬化させることにより、4〜40μmの厚さの異方導電性フィルムを得ることができる。
【0066】
本発明の他の実施形態において、異方導電性フィルム組成物は、バインダー、硬化剤、開始剤および導電性粒子を含み、前記バインダーはNBR系樹脂およびウレタン系樹脂からなる群から選択される1種以上を含み、前記異方導電性フィルム組成物で製造された異方導電性フィルムのイオン含有量が0超100質量ppm以下、好ましくは0超10質量ppm以下、より好ましくは0超1質量ppm以下、特に好ましくは0超0.1質量ppm以下である。
【0067】
バインダー、硬化剤、開始剤および導電性粒子に対する内容は上述の通りである。また、本発明の異方導電性フィルム組成物は溶媒を含みうる。溶媒として、トルエン等の有機溶媒を使用できるが、これらに制限されない。
【0068】
本発明のさらに他の実施形態において、装置は、前記異方導電性フィルムまたは前記異方導電性フィルム組成物で形成された異方導電性フィルムのいずれか1種以上を含みうる。前記装置としては、異方導電性フィルムをモジュール間の接続材料として使用する液晶ディスプレイを始めとする各種ディスプレイ装置および半導体装置を含みうる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の好ましい実施例により本発明の構成および作用をより詳しく説明する。但し、これは本発明の好ましい例として提示したものであり、如何なる意味としてもこれによって本発明が制限されると解釈してはならない。
【0070】
ここに記載されていない内容は、本技術分野の当業者であれば十分に技術的に理解し評価できるものであるため、その説明は省略する。
【0071】
製造例1:イオン含有量が10質量ppmのNBR系樹脂の製造
NBR系樹脂(N−34、日本ゼオン)100gを、メタノールに希釈してイオン不純物を除去した。自動燃焼装置を利用したイオンクロマトグラフィーで測定したNBR系樹脂のイオン含有量は、600質量ppmから10質量ppmに減少した。
【0072】
製造例2:イオン含有量が10質量ppmのウレタン系樹脂の製造
ウレタン系樹脂(NPC7007T、Nanux)100gをメチルエチルケトンに希釈してイオン不純物を除去した。自動燃焼装置を利用したイオンクロマトグラフィーで測定したウレタン系樹脂のイオン含有量は、400質量ppmから10質量ppmに減少した。
【0073】
製造例3:イオン含有量が10質量ppmのポリウレタンビーズの製造
ポリウレタンビーズ(MM−101−MS)100gをメチルエチルケトンに希釈してイオン不純物を除去した。自動燃焼装置を利用したイオンクロマトグラフィーで測定したポリウレタンビーズのイオン含有量は、500質量ppmから10質量ppmに減少した。
【0074】
実施例1:異方導電性フィルム組成物の製造
フィルム形成のためのマトリックスの役割をするバインダーとして、アクリル系樹脂(アルキル(メタ)アクリレート樹脂(質量平均分子量Mw90,000g/mol、酸価2mgKOH/mg、MMA、BA、シクロヘキシルメタクリレート共重合体))24質量%、前記製造例1で製造したイオン含有量が10質量ppmのNBR系樹脂(N−34、日本ゼオン)40質量%を使用した。硬化剤として、ウレタンアクリレート(NPC7007、Nanux)25質量%、反応性単量体として、ラジカル重合型(メタ)アクリレート単量体である2−メタアクリロイルオキシエチルホスフェート1質量%、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート2質量%、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート2.5質量%を使用した。熱硬化型開始剤としてラウリルパーオキシド2.5質量%、導電性フィラーとして絶縁処理した導電性粒子(粒径:3μm、積水化学工業(株)製)を3質量%用いてフィルム組成物を製造した。
【0075】
実施例2〜4,6:異方導電性フィルム組成物の製造
前記実施例1においてバインダーの構成を下記表1のように変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でフィルム組成物を製造した。ウレタン系樹脂としては、前記製造例2で製造したウレタン系樹脂を使用した。
【0076】
実施例5:異方導電性フィルム組成物の製造
前記実施例1においてバインダーの構成を下記表1のように変更し、前記製造例3で製造したポリウレタンビーズを使用したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でフィルム組成物を製造した。
【0077】
比較例1および2:異方導電性フィルム組成物の製造
バインダーの構成でNBR系樹脂またはウレタン系樹脂をイオン交換処理しなかったこと(NBR系樹脂はイオン含有量が600質量ppm、ウレタン系樹脂はイオン含有量が400質量ppm)を除いては、前記実施例1または2と同様の方法でフィルム組成物を製造した。
【0078】
【表1】

【0079】
実験例:異方導電性フィルムの物性測定
前記実施例1〜6と比較例1および2で製造された異方導電性フィルム組成物100gをトルエン20gに溶解させて液状とした後、1時間25℃で攪拌し、これを離型フィルム上に16μmの厚さで塗布した後、70℃で15分間乾燥させてトルエンを揮発させることにより、異方導電性フィルムを得た。製造された異方導電性フィルムに対して、イオン含有量、電気伝導度、初期外観、85℃および85%のRHの条件下で250時間または500時間放置した後、腐食の有無により接続信頼性を評価した。その結果を表2に示す。
【0080】
<物性の測定方法>
1.イオン含有量:自動燃焼装置を利用したイオンクロマトグラフィーで測定した。
【0081】
2.電気伝導度:製造した異方導電性フィルム0.4gを精製水20gに入れ、100℃で10時間沸騰させた後に得られた液体を四方1cm(横、縦及び高さが1cm)の標準伝導度測定セルに入れ、25℃の補償温度で導電率計(EcoMet C75、イステック)を利用して電気伝導度を測定した。
【0082】
3.初期外観:前記の製造した異方導電性フィルムを25℃で1時間放置した後、金属電極ガラス(Mo/Al/Mo構造、三星電子)とCOF(Chip Of Film、三星電子)を利用して実測温度70℃、1秒の仮圧着条件と、180℃、5秒、4.5MPaの本圧着条件で接続した。それぞれの試片を10個準備し、これにより接続の初期異常の有無を確認した。
【0083】
4.信頼性:前記の製造した異方導電性フィルムを85℃および85%のRHの条件で250時間または500時間放置した後、外観を測定して腐食有無を確認した。
【0084】
【表2】

【0085】
表2に示すように、本発明の異方導電性フィルムはイオン含有量と電気伝導度が高くなく、500時間以降に腐食が起こらず接続信頼性が高かった(実施例1〜6参照)。一方、イオン交換処理されずイオン含有量が100質量ppm超のNBR系樹脂またはウレタン系樹脂を含む異方導電性フィルムは、イオン含有量と電気伝導度が高く、接続信頼性が良くないことが分かる(比較例1〜2参照)。
【0086】
以上、添付の図面および表を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、相違する多様な形態に製造でき、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更せずに他の具体的な形態で実施できるということが理解できると考える。そのため、上述の実施例は全ての面において例示的なものであり、限定的なものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー、硬化剤、開始剤および導電性粒子を含み、前記バインダーがニトリルブタジエンゴム系樹脂およびウレタン系樹脂からなる群から選択される1種以上を含み、イオン含有量が0超100質量ppm以下であることを特徴とする異方導電性フィルム。
【請求項2】
前記イオン含有量が0超50質量ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の異方導電性フィルム。
【請求項3】
電気伝導度が0超100μS/cm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の異方導電性フィルム。
【請求項4】
前記ニトリルブタジエンゴム系樹脂のイオン含有量が0超100質量ppm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の異方導電性フィルム。
【請求項5】
前記ウレタン系樹脂のイオン含有量が0超100質量ppm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方導電性フィルム。
【請求項6】
前記バインダーが、アクリル系樹脂をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の異方導電性フィルム。
【請求項7】
前記バインダーが、前記アクリル系樹脂を20〜80質量%で含み、イオン含有量が0超100質量ppm以下の前記ニトリルブタジエンゴム系樹脂を20〜80質量%で含むことを特徴とする請求項6に記載の異方導電性フィルム。
【請求項8】
前記バインダーが、前記アクリル系樹脂を20〜80質量%で含み、イオン含有量が0超100質量ppm以下の前記ウレタン系樹脂を20〜80質量%で含むことを特徴とする請求項6に記載の異方導電性フィルム。
【請求項9】
前記バインダーが、前記アクリル系樹脂を20〜90質量%で含み、イオン含有量が0超100質量ppm以下の前記ニトリルブタジエンゴム系樹脂を5〜55質量%で含み、イオン含有量が0超100質量ppm以下の前記ウレタン系樹脂を5〜40質量%で含むことを特徴とする請求項6に記載の異方導電性フィルム。
【請求項10】
前記バインダーが、アクリロニトリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、オレフィン系樹脂およびシリコン系樹脂からなる群から選択される1種以上の熱可塑性樹脂をさらに含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の異方導電性フィルム。
【請求項11】
前記硬化剤が、ウレタン(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリレート単量体からなる群から選択される1種以上を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の異方導電性フィルム。
【請求項12】
前記開始剤が、ラジカル開始剤であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の異方導電性フィルム。
【請求項13】
固形分基準で前記バインダー20〜78質量%、前記硬化剤20〜50質量%、前記ラジカル開始剤1〜10質量%および前記導電性粒子1〜20質量%を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の異方導電性フィルム。
【請求項14】
ポリウレタンビーズをさらに含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の異方導電性フィルム。
【請求項15】
前記ポリウレタンビーズは、イオン交換処理されたものであることを特徴とする請求項14に記載の異方導電性フィルム。
【請求項16】
前記ポリウレタンビーズのイオン含有量が、0超10質量ppm以下であることを特徴とする請求項14または15に記載の異方導電性フィルム。
【請求項17】
前記ポリウレタンビーズが、固形分基準で前記異方導電性フィルム100質量部に対して1〜10質量部で含まれることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の異方導電性フィルム。
【請求項18】
バインダー、硬化剤、開始剤および導電性粒子を含み、前記バインダーがニトリルブタジエンゴム系樹脂およびウレタン系樹脂からなる群から選択される1種以上を含む異方導電性フィルム組成物であって、前記異方導電性フィルム組成物から製造された異方導電性フィルムのイオン含有量が0超100質量ppm以下であることを特徴とする異方導電性フィルム組成物。
【請求項19】
前記異方導電性フィルム組成物から製造された異方導電性フィルムの電気伝導度が0超100μS/cm以下であることを特徴とする請求項18に記載の異方導電性フィルム組成物。
【請求項20】
請求項1〜17に記載の異方導電性フィルムまたは請求項18または19に記載の異方導電性フィルム組成物から製造された異方導電性フィルムのいずれか1種以上を含む装置。

【公開番号】特開2012−140589(P2012−140589A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224131(P2011−224131)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】