説明

異方性導電フィルム及びその製造方法

【課題】優れた保存安定性を有する異方性導電フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】膜形成樹脂と、重合性アクリル系化合物と、有機過酸化物と、導電性粒子とを含有し、前記有機過酸化物が常温で固体の状態で含まれる異方性導電フィルム。剥離基材上に、膜形成樹脂と、重合性アクリル系化合物と、有機過酸化物と、導電性粒子とを含有する組成物を塗布する塗布工程と、前記剥離基材上の組成物を冷却し、前記有機過酸化物を常温で固体の状態にする固体化工程とを有する異方性導電フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粒子が分散された異方性導電フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルとテープキャリアパッケージ(TCP)基板又はチップオンフィルム(COF)基板とを接続する際や、プリント配線板(PWB)とTCP基板又はCOF基板とを接続する際には、一般に、熱硬化性エポキシ樹脂、重合開始剤及び導電性粒子を含む熱硬化性樹脂組成物をフィルム状に成形した異方性導電フィルム(ACF)が広く用いられる。この場合、通常、圧着温度が180〜250℃程度で、圧着時間が5〜10秒程度である。
【0003】
近年、PWBの電極部や液晶パネルのITO(Indium Tin Oxide)電極への熱的ストレスを低減するために、異方性導電フィルムを用いて熱圧着する際の圧着温度を下げることが求められ、さらに、熱的ストレスの低減のみならず生産効率の向上のために、圧着時間の短縮が求められている。このため、異方性導電フィルムの材料として、熱硬化性エポキシ樹脂に代えて、それよりも低温・短時間での硬化が可能な重合性アクリル系化合物をフィルム形成樹脂とともに使用することが試みられ、重合開始剤として、自己分解に伴ってガスを発生しない有機過酸化物の使用が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−32491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、重合開始剤として、有機過酸化物を使用した場合、低温短時間での圧着が可能となる代わりに、常温以下でも徐々に重合開始剤の分解反応が進むため、保存安定性が悪くなる。
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、優れた保存安定性を有する異方性導電フィルム及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係る異方性導電フィルムは、膜形成樹脂と、重合性アクリル系化合物と、有機過酸化物と、導電性粒子とを含有し、前記有機過酸化物が常温で固体の状態で含まれることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る異方性導電フィルムの製造方法は、剥離基材上に、膜形成樹脂と、重合性アクリル系化合物と、有機過酸化物と、導電性粒子とを含有する組成物を塗布する塗布工程と、前記剥離基材上の組成物を冷却し、前記有機過酸化物を常温で固体の状態にする固体化工程とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る実装体の接続方法は、膜形成樹脂と、重合性アクリル系化合物と、有機過酸化物と、導電性粒子とを含有し、前記有機過酸化物が常温で固体の状態で含まれる異方性導電フィルムを、第1の電子部品の電極と第2の電子部品の電極との間に挟み、前記第1の電子部品と前記第2の電子部品とを加熱加圧し、第1の電子部品の電極と、第2の電子部品の電極とを電気的に接続することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る実装体は、膜形成樹脂と、重合性アクリル系化合物と、有機過酸化物と、導電性粒子とを含有し、前記有機過酸化物が常温で固体の状態で含まれる異方性導電フィルムによって、第1の電子部品の電極と、第2の電子部品の電極とが電気的に接続された接続体されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、異方性導電フィルム中の有機過酸化物が常温で固体の状態で存在するため、重合開始剤の分解反応が抑制され、優れた保存安定性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、下記順序にて詳細に説明する。
1.異方性導電フィルム
2.異方性導電フィルムの製造方法
3.異方性導電フィルムを用いた接続方法
4.実施例
【0013】
<1.異方性導電フィルム>
本実施の形態における異方性導電フィルムは、膜形成樹脂と、重合性アクリル系化合物と、有機過酸化物と、導電性粒子とを含有する。
【0014】
膜形成樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、EVA等の熱可塑性エラストマー等を使用することができる。中でも、耐熱性、接着性のために、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、特にフェノキシ樹脂、例えばビスA型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂を挙げることができる。
【0015】
膜形成樹脂の使用量は、少なすぎるとフィルムを形成せず、多すぎると電気接続を得るための樹脂の排除性が低くなる傾向があるので、樹脂固形分(重合性アクリル系化合物と膜形成樹脂との合計)の80〜30質量%、より好ましくは70〜40質量%である。
【0016】
重合性アクリル系化合物の具体例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、リン酸エステル型アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、o−フタル酸ジグリシジルエーテルアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等、及びこれらに相当する(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0017】
重合性アクリル系化合物は、高い接着強度と導通信頼性とを得る点から、2官能アクリレート5〜40質量部と、ウレタンアクリレート10〜40質量部と、リン酸エステル型アクリレート0.5〜5質量部とを併用することが好ましい。ここで、2官能アクリレートは硬化物の凝集力を向上させ、導通信頼性を向上させるために配合され、ウレタンアクリレートはポリイミドに対する接着性向上のために配合され、そしてリン酸エステル型アクリレートは金属に対する接着性向上のために配合される。
【0018】
重合性アクリル系化合物の使用量は、少なすぎると導通信頼性が低くなり、多すぎると接着強度が低くなる傾向があるので、好ましくは樹脂固形分(重合性アクリル系化合物とフィルム形成樹脂との合計)の20〜70質量%、より好ましくは30〜60質量%である。
【0019】
有機過酸化物の具体例としては、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド(一分間半減期温度128.2℃)、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド(一分間半減期温度131.1℃)、ジベンゾイル パーオキサイド(一分間半減期温度 130.0℃)、t−ヘキシル パーオキシベンゾエート(一分間半減期温度 160.3℃)、t−ブチル パーオキシベンゾエート(一分間半減期温度 166.8℃)、ジイソブチリル パーオキサイド(一分間半減期温度 85.1℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチル パーオキシ−2−エチルヘキサノエート(一分間半減期温度 124.3℃)、ジラウロイル パーオキサイド(一分間半減期温度 116.4℃)、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(一分間半減期温度 112.6℃)、t−ブチル パーオキシピバレート(一分間半減期温度 110.3℃)、t−ヘキシル パーオキシピバレート(一分間半減期温度 109.1℃)、t−ブチル パーオキシネオヘプタノエート(一分間半減期温度 104.6℃)、t−ブチル パーオキシネオデカノエート(一分間半減期温度 103.5℃)、t−ヘキシル パーオキシネオデカノエート(一分間半減期温度 100.9℃)、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(一分間半減期温度 90.6℃)、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(一分間半減期温度 92.1℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチル パーオキシネオデカノエート(一分間半減期温度 92.1℃)、ジ−sec−ブチル パーオキシジカーボネート(一分間半減期温度 85.1℃)、ジ−n−プロピル パーオキシジカーボネート(一分間半減期温度 85.1℃)、クミル パーオキシネオデカノエート(一分間半減期温度 85.1℃)等を挙げることができる。これらは、2種以上を併用することができる。
【0020】
このような有機過酸化物の中でも、例えば、左右対称の構造、フェニル基を有する構造など、より結晶化し易い構造を有することが好ましい。また、有機過酸化物は、室温で固体であれば使用可能であるが、その融点は、30℃以上250℃以下であることが好ましい。
【0021】
また、有機過酸化物の使用量は、少なすぎると反応性が無くなり、多すぎると異方性導電フィルムの凝集力が低下する傾向があるため、重合性アクリル系化合物100質量部に対し、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは3〜7質量部である。
【0022】
本実施の形態では、異方性導電フィルム中の有機過酸化物が、常温で固体の状態である。これにより、有機過酸化物の分解反応が抑制され、優れた保存安定性を得ることができる。ここで、常温とは、20℃±15℃(5〜35℃)の範囲(JIS Z 8703)を云い、また、固体の状態とは、単結晶構造、多結晶構造及び非晶質構造のいずれかのものを云う。
【0023】
固体の粒径は、導電性粒子の粒径より小さい0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上3μm以下である。有機過酸化物の固体の粒径が、0.01μm以上5μm以下であることにより、固体から液体に変わるときに大きな熱エネルギーが必要となるため、有機過酸化物の分解反応が抑制され、優れた保存安定性を得ることができる。ここで、固体の粒径は、電子顕微鏡等により計測した粒子の最大径(長辺)を云い、有機過酸化物の形状は、針状、キューブ状などであっても構わない。
【0024】
また、有機過酸化物は、一分間半減期温度が80℃以上130℃以下であることが好ましい。このような一分間半減期温度が比較的低い有機過酸化物は、常温以下でも分解反応が徐々に進むが、本実施の形態では、有機過酸化物が固体の状態で存在するため、分解反応が抑制され、優れた保存安定性を得ることができる。
【0025】
さらに、前述のような一分間半減期温度が比較的低い有機過酸化物は、短時間で急激に硬化反応が進むため、圧着時の温度マージンが狭くなるが、本実施の形態のように有機過酸化物が固体の状態で存在することにより、急激な硬化反応が緩和され、電子的な接続が行われるよりも早く硬化するのを防止することができる。
【0026】
導電性粒子としては、従来の異方性導電フィルムで用いられているような導電性粒子を使用することができ、例えば、金粒子、銀粒子、ニッケル粒子等の金属粒子、ベンゾグアナミン樹脂やスチレン樹脂等の樹脂粒子の表面を金、ニッケル、亜鉛等の金属で被覆した金属被覆樹脂粒子等を使用することができる。このような導電性粒子の平均粒径としては、通常1〜10μm、より好ましくは2〜6μmである。
【0027】
導電性粒子の使用量は、少なすぎると導通不良が生ずる可能性が高まり、多すぎると短絡が生ずる可能性が高まるので、樹脂固形分100質量部に対し、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.2〜10質量部である。
【0028】
また、本実施の形態における異方性導電フィルムを構成する他の添加組成物として、必要に応じて、各種アクリルモノマー等の希釈用モノマー、充填剤、軟化剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤等を含有することができる。
【0029】
このような構成からなる異方性導電フィルムは、有機過酸化物が固体の状態で存在するため、有機過酸化物の分解反応が抑制され、優れた保存安定性を得ることができる。また、熱圧着時の有機過酸化物の急激な硬化反応が緩和され、熱圧着時の温度マージンを広くすることができる。
【0030】
<2.異方性導電フィルムの製造方法>
次に、前述した異方性導電フィルムの製造方法について説明する。本実施の形態における異方性導電フィルムの製造方法は、剥離基材上に、膜形成樹脂と、重合性アクリル系化合物と、有機過酸化物と、導電性粒子とを含有する組成物を塗布する塗布工程と、剥離基材上の組成物を冷却し、有機過酸化物を常温で固体の状態にする固体化工程とを有する。
【0031】
塗布工程では、剥離基材上に前述の組成物を調整後、バーコーター、塗布装置等を用いて塗布する。剥離基材は、例えば、シリコーンなどの剥離剤をPET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)などに塗布した積層構造からなり、組成物の乾燥を防ぐとともに、組成物の形状を維持する。また、組成物は、前述の組成物を有機溶剤に溶解させて得られ、有機溶剤としては、トルエン、酢酸エチル、又はこれらの混合溶剤、その他各種有機溶剤を用いることができる。
【0032】
次の固体化工程では、上述した組成物を熱オーブン、加熱乾燥装置などにより乾燥させた後、有機過酸化物を常温で固体の状態にする。有機過酸化物を常温で固体の状態にする方法として、組成物を冷却する、有機過酸化物の溶解度を減少させるような新たな溶媒を加える、化学反応を起こす、pHを変化させる、溶媒をゆっくりと蒸発させるなどの処理を用いることができるが、本実施の形態では、異方性導電フィルム内での不必要な化学反応を生じさせないために、冷却することが好ましい。また、冷却時の温度は、有機過酸化物に応じて設定され、その温度は−50℃以上0℃以下であることが好ましく、より好ましくは−50℃以上−20℃以下である。また、冷却時間は、有機過酸化物の結晶粒径に応じて設定され、好ましくは6時間〜24時間である。
【0033】
このように異方性導電フィルムの組成物を冷却することにより、有機過酸化物を分散性良く結晶化することができ、優れた保存安定性を得ることができる。
【0034】
<3.異方性導電フィルムを用いた接続方法>
次に、上述した異方性導電フィルムを用いた電子部品の実装方法について説明する。具体例として示す電子部品の接続方法は、膜形成樹脂と、重合性アクリル系化合物と、有機過酸化物と、導電性粒子とを含有し、有機過酸化物が常温で固体の状態で含まれる異方性導電フィルムを、第1の電子部品の電極と第2の電子部品の電極との間に挟み、第1の電子部品と第2の電子部品とを加熱加圧し、第1の電子部品の電極と、第2の電子部品の電極とを電気的に接続する。
【0035】
本実施の形態における異方性導電フィルムは、様々な場面で使用することができるが、第1の電気部品が、液晶パネル、プリント配線板(PWB)など、また、第2の電気部品が、フレキシブル印刷回路基板、テープキャリアパッケージ(TCP)基板、チップオンフィルム(COF)基板などである場合に好ましく適用できる。
【0036】
また、本実施の形態における接続方法では、有機過酸化物が固体の状態で存在する異方性導電フィルムを用いるため、急激な硬化反応を緩和することができ、圧着時の温度マージンを広くすることができる。
【0037】
また、本実施の形態における接続体は、有機過酸化物が固体の状態で存在する保存安定性の高い異方性導電フィルムを用いるため、高い接続信頼性を得ることができる。
【実施例】
【0038】
<4.実施例>
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
[実施例1]
[異方性導電フィルムの作製]
異方性導電フィルムを次のように作製した。ビスA型エポキシタイプフェノキシ樹脂(YP50、東都化成社製)50質量部、2官能アクリルモノマー(A−200、新中村化学社製)、ウレタンアクリレート(U−2PPA、新中村化学社製)、リン酸エステル型アクリレート(PM−2、日本化薬社製)、平均粒径3μmのNi粒子(Type287、インコ社製)2質量部、ジラウロイルパーオキサイド(パーロイルL、日油社製)5質量部にトルエンを加え、異方性導電組成物を作成した。
【0040】
これらの組成物を剥離処理されたポリエステルフィルムに塗布し、オーブンにて70℃の熱風を5分間吹き掛けて乾燥することにより異方性導電フィルムを作製した。
【0041】
そして、この異方性導電フィルムを、−40℃の冷凍庫に6時間入れ、重合開始剤(ジラウロイルパーオキサイド)の結晶化を行った。
【0042】
[結晶径の計測]
異方性導電フィルムを、SEM(Scanning Electron Microscope)にて結晶物の粒径を測定(3000倍)した。結晶物の長辺を計測し、任意の5箇所測定した平均値を結晶径とした。
【0043】
実施例1の異方性導電フィルム内の重合開始剤の結晶径を計測したところ、0・01μmであった。
【0044】
[接続信頼性評価用構造体の作製・評価]
接続信頼性評価用構造体を次のように作製した。ガラスエポキシ基板表面に35μm厚の銅箔からなる200μmピッチの配線が形成されたプリント配線板(PWB)に実施例1の異方性導電フィルムを80℃、1MPa、2秒という条件で加熱圧着し、剥離PETフィルムを引き剥がし、PWB表面に異方性導電フィルムを仮接着した。この異方性導電フィルムに対し、COF基板(厚さ38μmのポリイミドフィルムに、12μm厚のエポキシ系接着剤層と、このエポキシ系接着剤層上に200μmピッチの厚さ18μmの銅配線とを形成した配線基板)の銅配線部分を載せ、130℃、3MPa、5秒(低温接続)又は190℃、3MPa、5秒(高温接続)という条件で圧着して評価用接続構造体を得た。
【0045】
各条件下で圧着された評価用接続構造体について、4端子法にて導通抵抗を測定した。評価用接続構造体の導通抵抗が0.2Ω以下のものを○、0.2Ωより高いものを×と評価した。
【0046】
実施例1の異方性導電フィルムを用いた評価用接続構造体の導通抵抗の評価は、高温接続及び低温接続で○であった。
【0047】
[圧着外観]
評価用接続構造体の外観を30倍実体顕微鏡にて観察し、浮き、気泡などが無いかを目視で確認した。評価用接続構造体の圧着外観について、浮き、気泡などが無いものを○、浮き、気泡などが有るものを×と評価した。
【0048】
実施例1の異方性導電フィルムを用いた評価用接続構造体の圧着外観の評価は、○であった。
【0049】
[保存安定性]
異方性導電フィルムを40℃、3日のエージングを行い、DSC(示差走査熱量測定)測定を行った。評価用接続構造体の保存安定性について、発熱量が初期値の95%以上のものを◎、初期値の95%未満80%以上のものを○、初期値の80%未満のものを×と評価した。
【0050】
実施例1の異方性導電フィルムを用いた評価用接続構造体の保存安定性の評価は、○であった。
【0051】
[実施例2]
−40℃の冷凍庫に24時間入れて重合開始剤(ジラウロイルパーオキサイド)の結晶化を行った以外は、実施例1と同様にして実施例2の異方性導電フィルムを得た。
【0052】
実施例2の異方性導電フィルム内の重合開始剤の結晶径を計測したところ、0.1μmであった。
【0053】
また、実施例2の異方性導電フィルムを用いた評価用接続構造体の導通抵抗の評価は、高温接続及び低温接続で○であった。
【0054】
また、実施例2の異方性導電フィルムを用いた評価用接続構造体の圧着外観の評価は、○であった。
【0055】
実施例2の異方性導電フィルムを用いた評価用接続構造体の保存安定性の評価は、◎であった。
【0056】
[実施例3]
2官能アクリルモノマーを10質量部、ウレタンアクリレートを30質量部配合し、−40℃の冷凍庫に24時間入れて重合開始剤(ジラウロイルパーオキサイド)の結晶化を行った以外は、実施例1と同様にして実施例3の異方性導電フィルムを得た。
【0057】
実施例3の異方性導電フィルム内の重合開始剤の結晶径を計測したところ、1μmであった。
【0058】
また、実施例3の異方性導電フィルムを用いた評価用接続構造体の導通抵抗の評価は、高温接続及び低温接続で○であった。
【0059】
また、実施例3の異方性導電フィルムを用いた評価用接続構造体の圧着外観の評価は、○であった。
【0060】
実施例3の異方性導電フィルムを用いた評価用接続構造体の保存安定性の評価は、◎であった。
【0061】
[実施例4]
−40℃の冷凍庫に72時間入れて重合開始剤(ジラウロイルパーオキサイド)の結晶化を行った以外は、実施例1と同様にして実施例2の異方性導電フィルムを得た。
【0062】
実施例4の異方性導電フィルム内の重合開始剤の結晶径を計測したところ、3μmであった。
【0063】
また、実施例4の異方性導電フィルムを用いた評価用接続構造体の導通抵抗の評価は、高温接続及び低温接続で○であった。
【0064】
また、実施例4の異方性導電フィルムを用いた評価用接続構造体の圧着外観の評価は、○であった。
【0065】
実施例4の異方性導電フィルムを用いた評価用接続構造体の保存安定性の評価は、◎であった。
【0066】
[実施例5]
−40℃の冷凍庫に150時間入れて重合開始剤(ジラウロイルパーオキサイド)の結晶化を行った以外は、実施例1と同様にして実施例2の異方性導電フィルムを得た。
【0067】
実施例5の異方性導電フィルム内の重合開始剤の結晶径を計測したところ、5μmであった。
【0068】
また、実施例5の異方性導電フィルムを用いた評価用接続構造体の導通抵抗の評価は、高温接続及び低温接続で○であった。
【0069】
また、実施例5の異方性導電フィルムを用いた評価用接続構造体の圧着外観の評価は、○であった。
【0070】
実施例5の異方性導電フィルムを用いた評価用接続構造体の保存安定性の評価は、◎であった。
【0071】
[比較例1]
冷凍庫に入れずに、重合開始剤を結晶化しなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1の異方性導電フィルムを得た。
【0072】
比較例1の異方性導電フィルム内の重合開始剤は、完全溶解していた。
【0073】
また、比較例1の異方性導電フィルムを用いた評価用接続構造体の導通抵抗の評価は、低温接続で×、高温接続で○であった。
【0074】
また、比較例1の異方性導電フィルムを用いた評価用接続構造体の圧着外観の評価は、○であった。
【0075】
比較例1の異方性導電フィルムを用いた評価用接続構造体の保存安定性の評価は、×であった。
【0076】
表1に、実施例1〜5、及び比較例1の異方性導電フィルム及びその評価を示す。
【0077】
【表1】

【0078】
表1から分かるように、有機過酸化物であるジラウロイルパーオキサイドが常温で固体の状態で含まれる実施例1〜5の異方性導電フィルムによれば、有機過酸化物の分解反応が抑制され、優れた保存安定性を得ることができる。
【0079】
また、実施例1〜5に示すように、有機過酸化物の固体の粒径が、0.01μm以上5μm以下、特に、実施例2〜5に示すように、0.1μm以上5μm以下である場合、優れた保存安定性を示すことが分かった。
【0080】
また、実施例1〜5に示すように、有機過酸化物が常温で固体の状態で含まれることにより、低温接続条件(130℃、3MPa、5秒)及び高温接続条件(190℃、3MPa、5秒)のいずれも導通抵抗が低く、温度マージンが大きいことが分かった。
【0081】
また、実施例1〜5に示すように、異方性導電フィルム中に有機過酸化物が常温で固体の状態で含まれていても、浮き、気泡などが発生しないことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜形成樹脂と、重合性アクリル系化合物と、有機過酸化物と、導電性粒子とを含有し、
前記有機過酸化物が常温で固体の状態で含まれる異方性導電フィルム。
【請求項2】
前記有機過酸化物の固体の粒径が、0.01μm以上5μm以下である請求項1記載の異方性導電フィルム。
【請求項3】
前記有機過酸化物の一分間半減期温度が、80℃以上130℃以下である請求項1又は2記載の異方性導電フィルム。
【請求項4】
前記重合性アクリル系化合物は、2官能アクリレートと、ウレタンアクリレートと、リン酸エステル型アクリレートとを含む請求項1乃至3のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項5】
剥離基材上に、膜形成樹脂と、重合性アクリル系化合物と、有機過酸化物と、導電性粒子とを含有する組成物を塗布する塗布工程と、
前記剥離基材上の組成物を冷却し、前記有機過酸化物を常温で固体の状態にする固体化工程と
を有する異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記固体化工程では、−50℃以上−20℃以下の温度で冷却する請求項5記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項7】
膜形成樹脂と、重合性アクリル系化合物と、有機過酸化物と、導電性粒子とを含有し、前記有機過酸化物が常温で固体の状態で含まれる異方性導電フィルムを、第1の電子部品の電極と第2の電子部品の電極との間に挟み、
前記第1の電子部品と前記第2の電子部品とを加熱加圧し、第1の電子部品の電極と、第2の電子部品の電極とを電気的に接続する接続方法。
【請求項8】
膜形成樹脂と、重合性アクリル系化合物と、有機過酸化物と、導電性粒子とを含有し、前記有機過酸化物が常温で固体の状態で含まれる異方性導電フィルムによって、第1の電子部品の電極と、第2の電子部品の電極とが電気的に接続された接続体。

【公開番号】特開2011−202173(P2011−202173A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2011−109687(P2011−109687)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】