説明

異方性導電材料及びその製造方法

【課題】高温・高湿条件下での接続信頼性に優れた異方性導電フィルム材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリウレタン樹脂原料のポリオールとして、耐熱性に優れるポリカーボネートジオールを用い、ポリカーボネートジオールとポリエーテルジオールとを、質量比で(ポリカーボネートジオール):(ポリエーテルジオール)=3:7〜9:1の割合で配合し、良好な接着強度を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粒子が分散された異方性導電材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)は、プリント基板に半導体などの部品を装着させるために使用されている。
【0003】
また、ポリウレタン樹脂は、硬化時の応力緩和性に優れ、また、極性基を有することから、特に、低温、短時間圧着を行うアクリル系異方性導電フィルムに好ましく使用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
ポリウレタン樹脂は、ポリオール(ジオール)とポリイソシアネートとの重合によって生成され、ポリオールとして、従来からポリエステル骨格やポリエーテル骨格を有するものが用いられる。
【0005】
しかし、ポリエステル骨格を有するポリオールは、接着力を向上させるものの、加水分解耐性が低く、高温・高湿条件下で異方性導電フィルムの接続信頼性が低下する。下記一般式(1)にポリエステル系ポリウレタンの加水分解機構を示す。ポリエステル部分のエステル結合が水と反応してアルコールと酸に分解される。
【0006】
【化1】

【0007】
一方、ポリエーテル骨格を有するポリオールは、良好な加水分解耐性を示すものの、耐熱水性に劣るため、高温・高湿条件下で同様に特性劣化が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−322938号公報
【特許文献2】特開2009−111327号公報
【特許文献3】特表2009−508290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、高温・高湿条件下での接続信頼性に優れた異方性導電フィルム材料及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本件発明者らは、鋭意検討を行った結果、ポリウレタン樹脂原料のポリオールとして、耐熱性に優れるポリカーボネートジオールを用い、ポリカーボネートジオールとポリエーテルジオールとの質量比を規定することにより、高温・高湿条件下での接続信頼性を向上させることができることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明に係る異方性導電材料は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン樹脂を含有する異方性導電材料において、前記ポリオールは、ポリカーボネートジオールとポリエーテルジオールとが3:7〜9:1の質量比で配合され、ポリカーボネートジオールの数平均分子量が、500より大きいことを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る異方性導電材料の製造方法は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン樹脂を含有する異方性導電材料の製造方法において、前記ポリオールとして、ポリカーボネートジオールとポリエーテルジオールとを、3:7〜9:1の質量比で配合し、ポリカーボネートジオールの数平均分子量が、500より大きいことを特徴としている。
【0013】
また、本発明に係る接続方法は、第1の電子部品の端子上に前記異方性導電フィルムを貼付け、前記異方性導電フィルム上に第2の電子部品を仮配置させ、前記第2の電子部品上から加熱押圧装置により押圧し、前記第1の電子部品の端子と、前記第2の電子部品の端子とを接続させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る接合体は、前記接続方法により製造される接合体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ポリウレタン樹脂原料のポリオールとして、耐熱性に優れたポリカーボネートジオールを用い、さらに、ポリエーテルジオールを配合することにより、高温・高湿条件下での接続信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、下記順序にて詳細に説明する。
1.異方性導電材料
2.異方性導電材料の製造方法
3.接続方法
4.実施例
【0017】
<1.異方性導電材料>
本発明の具体例として示す異方性導電材料は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン樹脂を含有するものである。
【0018】
ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基とアルコール基とを縮合させた高分子量樹脂であり、骨格内に原料であるポリオールに起因するソフトセグメントと、ポリイソシアネートを起因とするハードセグメントとを有する。
【0019】
本実施の形態におけるポリウレタン樹脂は、ソフトセグメントのポリオールとして、耐熱性及び耐湿性に優れたポリカーボネートジオールを用い、さらに、ポリエーテルジオールを配合することにより、耐熱性及び接着性を向上させたものである。
【0020】
ポリカーボネートジオールとしては、下記一般式(2)で表される基本構造を有するものを用いることができる。
【0021】
【化2】

[式(2)中、R、Rは、炭素数1〜18のアルキレン基を示し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、nは、ポリカーボネートの重合度を表す。]
【0022】
上記一般式(2)で表されるポリカーボネートジオールとしては、例えば、α,ω−ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、α,ω−ポリ(3−メチル−ペンタメチレンカーボネート)ジオールなどが挙げられ、市販されているものとしては、ダイセル化学(株)製の商品名:CD205、CD220などが挙げられる。本実施の形態では、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
また、ポリカーボネートジオールの数平均分子量Mnは、500より大きいことが好ましく、1000以上5000以下であることがより好ましい。ポリカーボネートポリオールの数平均分子量Mnが500以下の場合、ポリウレタンの架橋密度が高くなり、接着強度が低下する。また、ポリカーボネートポリオールの数平均分子量Mnが5000を超える場合、伸度の増加によるリール加工後のはみ出しが生じるとともにポリウレタン樹脂の溶媒溶解性が低下する。
【0024】
ポリエーテルジオールとしては、例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などが挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
本実施の形態では、ソフトセグメントのポリオールとして、ポリカーボネートジオールとポリエーテルジオールとを、(ポリカーボネートジオール):(ポリエーテルジオール)=3:7〜9:1の質量比で配合する。ポリカーボネートジオールとポリエーテルジオールとを、(ポリカーボネートジオール):(ポリエーテルジオール)=0:10〜2:8の質量比で配合した場合、異方性導電材料の耐熱性が低下するとともに、接着性も低下する。また、ポリカーボネートジオールとポリエーテルジオールとを、(ポリカーボネートジオール):(ポリエーテルジオール)=10:0の質量比で配合した場合、異方性導電材料の耐熱性は良好であるが、接着性が低下する。より好ましいポリカーボネートジオールとポリエーテルジオールとの質量比は、(ポリカーボネートジオール):(ポリエーテルジオール)=3:7〜7:3であり、高温・高湿環境後においても良好な接続抵抗値及び接着強度を得ることができる。
【0026】
ハードセグメントのポリイソシアネートとしては、従来からポリウレタンの製造に使用されているものを使用することができる。例えば、脂肪族ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジシソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなど)、脂環族ジイソシアネート(シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなど)、芳香族ポリイソシアネート(フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートなど)が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
ソフトセグメントのポリオールとハードセグメントのポリイソシアネートとの仕込み質量比は、(ポリオール):(ポリイソシアネート)=1000:100〜1000:400であることが好ましい。ポリオール1000質量部に対してポリイソシアネートが100質量部未満の場合、及びポリオール1000質量部に対してポリイソシアネートが400質量部を超える場合、硬化時にポリウレタン樹脂の良好な応力緩和性を得ることができない。
【0028】
また、本実施の形態における異方性導電材料は、ラジカル重合性物質と、硬化剤と、導電性粒子とを含有する。
【0029】
ラジカル重合性物質は、ラジカルにより重合する官能基を有する物質であり、例えば、アクリレート、メタクリレート、マレイミド化合物などが挙げられる。これらは、いずれかを単独で用いてもよく、2種以上を併用することもできる。また、ラジカル重合性物質は、モノマー及びオリゴマーのいずれの状態でも用いることができ、モノマーとオリゴマーとを併用することもできる。
【0030】
本実施の形態では、ラジカル重合性物質として、低温、短時間圧着を行うことが可能なアクリレートが好適に用いられる。アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
硬化剤は、加熱により分解して遊離ラジカルを発生するものであり、例えば、過酸化化合物、アゾ系化合物などが挙げられる。本実施の形態では、有機過酸化物が好適に用いられる。
【0032】
有機過酸化物としては、例えば、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらをマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長されるために好ましい。
【0033】
これらの接着剤成分の配合量は、通常の異方性導電材料と同様、ポリウレタン樹脂が2〜75質量部、ラジカル重合性物質が30〜60質量部、硬化剤が0.1〜30質量部である。これらの成分の配合量は、上述の範囲で適宜決定することができる。
【0034】
ポリウレタン樹脂の配合量が2質量部未満では、異方性導電材料の硬化時、熱負荷時等の応力緩和の効果に乏しく接着強度が低下する。また、75重量部を超えると、接続信頼性が低下する恐れがある。
【0035】
また、その他の添加組成物として、シランカップリング剤を添加することが好ましい。シランカップリング剤としては、エポキシ系、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系などを用いることができる。これにより、有機材料と無機材料の界面における接着性を向上させることができる。また、無機フィラーを添加させてもよい。無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウムなどを用いることができ、無機フィラーの種類は特に限定されるものではない。無機フィラーの含有量により、流動性を制御し、粒子捕捉率を向上させることができる。また、ゴム成分なども接合体の応力を緩和させる目的で、適宜使用することができる。
【0036】
導電性粒子は、電気的に良好な導体であるものであれば使用でき、例えば、銅、銀、ニッケルなどの金属粉末や樹脂よりなる粒子を上記金属により被覆したものが挙げられる。また、導電性粒子の全表面を絶縁性の皮膜で被覆したものを用いてもよい。また、その配合量は、接着剤成分に対して0.1〜30体積%とすることが好ましく、用途に応じて適宜決定することができる。
【0037】
<2.異方性導電材料の製造方法>
次に、上述した異方性導電材料の製造方法について説明する。先ず、ポリウレタン樹脂のソフトセグメントのポリオールとして、ポリカーボネートジオールとポリエーテルジオールとを3:7〜9:1の質量比で配合し、ソフトセグメント(ポリオール)とハードセグメント(ポリイソシアネート)との仕込み質量比が、(ポリオール):(ポリイソシアネート)=1000:100〜1000:400の範囲となるように、ソフトセグメントとハードセグメントとを配合する。これらを反応炉で、窒素気流下、30〜100℃で反応させて、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得る。
【0038】
次に、水性ウレタン樹脂分散液を得るために、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーをアミン類に添加し、30〜100℃で反応させて、鎖伸長させてポリカーボネートポリウレタン樹脂溶液(ポリウレタン樹脂)を得る。
【0039】
アミン類としては、例えば、イソホロンジアミン、ジ−n−ブチルアミン、エチレンジアミン、1,2ープロパンジアミンなどが挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
次に、トルエン、酢酸エチル、又はこれらの混合溶剤、その他各種有機溶剤を用いて、ポリウレタン樹脂と、ラジカル重合性物質と、硬化剤とを2〜75:30〜60:0.1〜30の質量比で配合し、絶縁性バインダ(接着剤成分)を作製する。そして、絶縁性バインダに対して導電性粒子を体積比率0.1〜30%で分散させ、異方性導電材料を得る。
【0041】
シート状の異方性導電フィルムを作製する場合、シリコーンなどの剥離剤が塗布されたPET(Poly Ethylene Terephthalate)などの剥離基材上に上述した異方性導電材料を塗布し、剥離基材上の異方性導電材料を熱オーブン、加熱乾燥装置などを用いて乾燥させ、所定厚さの層を形成する。
【0042】
<3.接続方法>
次に、上述した異方性導電材料を用いた電子部品の接続方法について説明する。本実施の形態における電子部品の接続方法は、第1の電子部品の端子上に上述した異方性導電材料を貼付け、異方性導電材料上に第2の電子部品を仮配置させ、第2の電子部品上から加熱押圧装置により押圧し、第1の電子部品の端子と、前記第2の電子部品の端子とを接続させるものである。これにより、異方性導電材料に分散された導電性粒子を介して第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とが接続された接続体が得られる。
【0043】
本実施の形態における異方性導電材料は、ポリウレタン樹脂原料のポリオールとして、耐熱性に優れたポリカーボネートジオールを用い、さらに、ポリエーテルジオールを配合しているため、高温・高湿条件下でも接続抵抗及び接着強度が低下するのを防ぐことができる。
【実施例】
【0044】
<4.実施例>
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。ここでは、実施例1〜9及び比較例1〜7のシート状接続材料を用いて実装体を作製し、実装体の接続抵抗及び接着強度を測定し、評価した。
【0045】
[実施例1]
先ず、撹拌機、温度計、冷却器、及び窒素ガス導入管を備えた4ツ口フラスコに、ポリカーボネートジオール(Mn=2000、商品名:プラクセルCD220、ダイセル化学(株)製)300質量部と、ポリエーテルジオール(Mn=2000、商品名:エクセノール2020、旭硝子ウレタン(株)製)700質量部と、イソホロンジシソシアネート200質量部とを配合し、窒素気流下、80℃で5時間反応させて、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。これにトルエン512質量部を加えてウレタンプレポリマー溶液とした。
【0046】
次に、イソホロンジアミン31.2質量部、ジ−n−ブチルアミン12.8質量部、トルエン279質量部、メチルエチルケトン579質量部及びジアセトンアルコール579質量部からなる混合物に、ウレタンプレポリマー溶液1000質量部を添加し、50℃で3時間反応させ、固形分30%のポリカーボネートポリウレタン樹脂溶液(ポリウレタン樹脂)を得た。
【0047】
この合成したポリウレタン樹脂と、ラジカル重合性物質(商品名:EB600、ダイセル・サイテック(株)製)と、硬化剤(商品名:パーヘキサC、日本油脂(株)製)とを60:38:2の質量比で配合し、絶縁性バインダを作製した。そして、絶縁性バインダに導電性粒子(商品名:AUL704、積水化学工業(株)製)を体積比率10%で分散させ、PETフィルムに塗布・乾燥させることにより、厚さ20μmのシート状接続材料を作製した。
【0048】
[実施例2]
ポリカーボネートジオール(Mn=2000、商品名:プラクセルCD220、ダイセル化学(株)製)を400質量部、及びポリエーテルジオール(Mn=2000、商品名:エクセノール2020、旭硝子ウレタン(株)製)を600質量部とした以外は、実施例1と同様にしてシート状接続材料を作製した。
【0049】
[実施例3]
ポリカーボネートジオール(Mn=2000、商品名:プラクセルCD220、ダイセル化学(株)製)を500質量部、及びポリエーテルジオール(Mn=2000、商品名:エクセノール2020、旭硝子ウレタン(株)製)を500質量部とした以外は、実施例1と同様にしてシート状接続材料を作製した。
【0050】
[実施例4]
ポリカーボネートジオール(Mn=2000、商品名:プラクセルCD220、ダイセル化学(株)製)を600質量部、及びポリエーテルジオール(Mn=2000、商品名:エクセノール2020、旭硝子ウレタン(株)製)を400質量部とした以外は、実施例1と同様にしてシート状接続材料を作製した。
【0051】
[実施例5]
ポリカーボネートジオール(Mn=2000、商品名:プラクセルCD220、ダイセル化学(株)製)を700質量部、及びポリエーテルジオール(Mn=2000、商品名:エクセノール2020、旭硝子ウレタン(株)製)を300質量部とした以外は、実施例1と同様にしてシート状接続材料を作製した。
【0052】
[実施例6]
ポリカーボネートジオール(Mn=2000、商品名:プラクセルCD220、ダイセル化学(株)製)を800質量部、及びポリエーテルジオール(Mn=2000、商品名:エクセノール2020、旭硝子ウレタン(株)製)を200質量部とした以外は、実施例1と同様にしてシート状接続材料を作製した。
【0053】
[実施例7]
ポリカーボネートジオール(Mn=1000、商品名:プラクセルCD210、ダイセル化学工業(株)製)を500質量部、及びポリエーテルジオール(Mn=2000、商品名:エクセノール2020、旭硝子ウレタン(株)製)を500質量部とした以外は、実施例1と同様にしてシート状接続材料を作製した。
【0054】
[実施例8]
ポリカーボネートジオール(Mn=5000、商品名:クラレポリオール C−5090、クラレ(株)製)を500質量部、及びポリエーテルジオール(Mn=2000、商品名:エクセノール2020、旭硝子ウレタン(株)製)を500質量部とした以外は、実施例1と同様にしてシート状接続材料を作製した。
【0055】
[実施例9]
ポリカーボネートジオール(Mn=2000、商品名:プラクセルCD220、ダイセル化学(株)製)を500質量部、ポリエーテルジオール(Mn=2000、商品名:エクセノール2020、旭硝子ウレタン(株)製)を500質量部、及びイソホロンジシソシアネート400質量部とした以外は、実施例1と同様にしてシート状接続材料を作製した。
【0056】
[比較例1]
ポリカーボネートジオール及びポリエーテルジオールの代わりに、ポリエステルジオール(クラポールP2010、クラレ(株)製)を1000質量部配合した以外は、実施例1と同様にしてシート状接続材料を作製した。
【0057】
[比較例2]
ポリカーボネートジオールを配合せずに、ポリエーテルジオール(Mn=2000、商品名:エクセノール2020、旭硝子ウレタン(株)製)を1000質量部配合した以外は、実施例1と同様にしてシート状接続材料を作製した。
【0058】
[比較例3]
ポリカーボネートジオール(Mn=2000、商品名:プラクセルCD220、ダイセル化学(株)製)を1000質量部配合し、ポリエーテルジオールを配合しない以外は、実施例1と同様にしてシート状接続材料を作製した。
【0059】
[比較例4]
ポリカーボネートジオール(Mn=2000、商品名:プラクセルCD220、ダイセル化学(株)製)を200質量部、及びポリエーテルジオール(Mn=2000、商品名:エクセノール2020、旭硝子ウレタン(株)製)を800質量部とした以外は、実施例1と同様にしてシート状接続材料を作製した。
【0060】
[比較例5]
ポリカーボネートジオール(Mn=2000、商品名:プラクセルCD220、ダイセル化学(株)製)を500質量部配合し、ポリエーテルジオールを配合せずに、ポリエステルジオール(クラポールP2010、クラレ(株)製)を500質量部配合した以外は、実施例1と同様にしてシート状接続材料を作製した。
【0061】
[比較例6]
ポリカーボネートジオールを配合せずに、ポリエーテルジオール(Mn=2000、商品名:エクセノール2020、旭硝子ウレタン(株)製)を500質量部、及びポリエステルジオール(クラポールP2010、クラレ(株)製)を500質量部配合した以外は、実施例1と同様にしてシート状接続材料を作製した。
【0062】
[比較例7]
ポリカーボネートジオール(Mn=500、商品名:プラクセルCD205、ダイセル化学(株)製)を500質量部、及びポリエーテルジオール(Mn=2000、商品名:エクセノール2020、旭硝子ウレタン(株)製)を500質量部とした以外は、実施例1と同様にしてシート状接続材料を作製した。
【0063】
<評価>
実施例1〜9及び比較例1〜7のシート状接続材料をそれぞれ1.5mmにスリットし、これを緩衝材150μm厚のテフロンを用いたツール幅1.5mmの仮圧着機にて70℃−1MPa−1secの条件、ガラス基板(IZO、厚さ250nm)上に仮圧着させた。
【0064】
次いで、COF(Chip On Film用フィルム、50μmP(L/S=1/1)、Cu:8μmt、Sn plating、PI=38μmt)を仮圧着機にて80℃−0.5MPa−0.5secの圧着条件で仮固定し、最後に200℃−5MPa−10secの圧着条件にて1.5mmツールを用いた本圧着機で圧着し、各実装体を完成させた。
【0065】
このようにして得られた各実装体について、接続抵抗値及び接着強度を測定し、評価した。表1に評価結果を示す。また、接続抵抗値及び接着強度の測定は、次のように行った。
【0066】
[接続抵抗値の測定]
各実装体について、プレッシャークッカー試験(PCT)を行って接続抵抗値を評価した。初期及び85℃/85%/500hr投入後の接続抵抗値は、デジタルマルチメータ(横河電機社製)を用いて測定した。測定は、4端子法を用い、電流1mAを流して行った。
【0067】
[接着強度の測定]
各実装体について、プレッシャークッカー試験(PCT)を行って接着強度を評価した。初期及び85℃/85%/500hr投入後の接着強度は、引張試験機(AMD社製)を用いて測定した。測定は、90℃の温度において50mm/secの速度でCOFを引き上げて行った。
【0068】
【表1】

【0069】
表1から分かるように、ポリウレタン樹脂のソフトセグメントとして、ポリエステルジオールのみ用いた場合(比較例1)、ポリエステル骨格の加水分解によって高温・高湿環境後の接続抵抗値及び接着強度が劣化した。
【0070】
また、ポリウレタン樹脂のソフトセグメントとして、ポリエーテルジオールのみ用いた場合(比較例2)、耐熱水性に劣るため、高温・高湿環境後で同様に接続抵抗値及び接着強度が劣化した。
【0071】
また、ポリウレタン樹脂のソフトセグメントとして、ポリカーボネートジオールのみ用いた場合(比較例3)、耐熱性及び耐湿性に優れていたものの、良好な接着強度が得られなかった。
【0072】
また、ポリウレタン樹脂のソフトセグメントとして、ポリカーボネートジオールとポリエステルジオールとを配合した場合(比較例5)、ポリエステル骨格の加水分解によって高温・高湿環境後の接続抵抗値及び接着強度が劣化した。
【0073】
また、ポリウレタン樹脂のソフトセグメントとして、ポリエーテルジオールとポリエステルジオールとを配合した場合(比較例6)、ポリエステル骨格の加水分解によって高温・高湿環境後の接続抵抗値及び接着強度が劣化した。
【0074】
また、ポリウレタン樹脂のソフトセグメントとして、ポリカーボネートジオールとポリエーテルジオールとを質量比で、(ポリカーボネートジオール):(ポリエーテルジオール)=2:8の割合で配合した場合(比較例4)、高温・高湿環境後の接続抵抗値及び接着強度が劣化した。
【0075】
また、ポリウレタン樹脂のソフトセグメントとして、ポリカーボネートジオールとポリエーテルジオールとを質量比で、(ポリカーボネートジオール):(ポリエーテルジオール)=0:10の割合で配合した場合(比較例3)、耐熱性及び耐湿性に優れていたものの、良好な接着強度が得られなかった。
【0076】
一方、ポリウレタン樹脂のソフトセグメントとして、ポリカーボネートジオールとポリエーテルジオールとを質量比で、(ポリカーボネートジオール):(ポリエーテルジオール)=3:7〜8:2の割合で配合した場合(実施例1〜6)、高温・高湿環境後においても良好な接続抵抗値及び接着強度が得られた。
【0077】
また、ポリウレタン樹脂のソフトセグメントとして、ポリカーボネートジオールとポリエーテルジオールとを配合し、ポリカーボネートジオールに数平均分子量Mnが500のものを用いた場合(比較例7)、架橋密度が高くなり、脆くなるため、良好な接着強度が得られなないが、ポリカーボネートジオールに数平均分子量Mnが1000〜5000のものを用いた場合(実施例3、7、8)、良好な接着強度が得られた。
【0078】
また、ポリオールとポリイソシアネートとの仕込み質量比が1000:400である場合(実施例9)も、仕込み質量比が1000:200の場合(実施例3)と同様、良好な接続抵抗値及び接着強度が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン樹脂を含有する異方性導電材料において、
前記ポリオールは、ポリカーボネートジオールとポリエーテルジオールとが3:7〜9:1の質量比で配合され、
前記ポリカーボネートジオールの数平均分子量が、500より大きい異方性導電材料。
【請求項2】
前記ポリカーボネートジオールの数平均分子量が、1000以上5000以下である請求項1記載の異方性導電材料。
【請求項3】
前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとが、1000:100〜1000:400の仕込み質量比で配合されている請求項1又は2記載の異方性導電材料。
【請求項4】
ラジカル重合性物質と、硬化剤と、導電性粒子とを含有し、
前記ラジカル重合性物質が、アクリレートである請求項1乃至3のいずれかに記載の異方性導電材料。
【請求項5】
ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン樹脂を含有する異方性導電材料の製造方法において、
前記ポリオールとして、ポリカーボネートジオールとポリエーテルジオールとを、3:7〜9:1の質量比で配合し、前記ポリカーボネートジオールの数平均分子量が、500より大きい異方性導電材料の製造方法。
【請求項6】
第1の電子部品の端子上に請求項1乃至4のいずれかに記載の異方性導電材料を貼付け、
前記異方性導電フィルム上に第2の電子部品を仮配置させ、
前記第2の電子部品上から加熱押圧装置により押圧し、
前記第1の電子部品の端子と、前記第2の電子部品の端子とを接続させる接続方法。
【請求項7】
請求項6記載の接続方法により製造される接合体。

【公開番号】特開2011−40403(P2011−40403A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−215485(P2010−215485)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】