説明

痛みおよび他のα2アドレナリン作動性仲介状態を処置するための方法および組成物

鎮静または他の副作用は抑制しつつαアドレナリン受容体アゴニスト活性を直接的または間接的に刺激する組成物を使用する、哺乳動物の痛みおよび他の状態を処置するための方法および組成物。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ヒトのアドレナリン受容体は、αアドレナリン受容体およびβアドレナリン受容体の2つの広いクラスに分類されている内在性膜タンパク質である。両タイプとも、カテコールアミン類、ノルエピネフリンおよびエピネフリンが結合したときの末梢交感神経系の作用を仲介している。
【0002】
ノルエピネフリンはアドレナリン作動性の神経末端により産生され、一方、エピネフリンは副腎髄質により産生される。これらの化合物に対するアドレナリン受容体の結合親和性は分類の1つの基礎となっている:α受容体は、エピネフリンよりも強く、そして合成化合物のイソプロテレノールよりもはるかに強く、ノルエピネフリンと結合する傾向がある。これらのホルモンの好ましい結合親和性は、β受容体については逆になる。多くの組織において、α受容体の活性化によって誘導される平滑筋収縮などの機能的応答は、β受容体の結合によって誘導される応答に対抗している。
【0003】
後に、α受容体とβ受容体との機能的な差異が、様々な動物源および組織源に由来するこれらの受容体を薬理学的に特徴付けることによってさらに強調され、精緻化された。その結果、αアドレナリン受容体およびβアドレナリン受容体は、3つのα1サブタイプ、3つのα2サブタイプ、および3つのβサブタイプにさらに分けられた。
【0004】
α1受容体とα2受容体との機能的な違いが認識されており、これらの2つのサブタイプの間で選択的な結合を示す化合物が開発されている。例えば、WO92/00073では、アドレナリン受容体のα1サブタイプに対して選択的に結合するテラゾシンのR(+)エナンチオマーの選択的な能力が報告された。この化合物のα1/α2選択性は有意義であるとして開示された。これは、α2受容体の作動性刺激は、エピネフリンおよびノルエピネフリンの分泌を阻害すると言われており、一方、α2受容体の拮抗作用はこれらのホルモンの分泌を増大させると言われていたからである。従って、フェノキシベンザミンおよびフェントラミンなどの非選択的α−アドレナリン作動性遮断薬の使用は、それらのα2アドレナリン受容体によって仲介される、増大した血漿カテコールアミン濃度誘導および付随する生理学的結果(増大した心拍数および平滑筋弛緩または収縮)の故に制限されると言われていた。
【0005】
さらに、αアゴニスト活性および選択性を調べる方法として、RSAT(受容体選択および増幅技術)アッセイが挙げられる。これは、Messierら、High Throughput Assays Of Cloned Adrenergic,, Muscarinic, Neurokinin And Neurotrophin Receptors In Living Mammalian Cells、Pharmacol. Toxicol.、76:308〜11 (1995)に記載され、α2受容体に関して用いるよう適合されている。このアッセイでは、コンフルエンス細胞の混合集団における受容体含有細胞の選択的な増殖をもたらす接触阻害の受容体媒介による喪失が測定される。細胞数の増大が、96ウェルフォーマットで容易に活性を測定できるβ-ガラクトシダーゼなどの適切なトランスフェクトされたマーカー遺伝子を用いて評価される。Gタンパク質(Gq)を活性化する受容体により、この応答が誘発される。α2受容体は、通常の場合にはGiに共役しているが、Gi受容体認識ドメインを含有するハイブリッドGqタンパク質(これはGq/i52と呼ばれる)と同時発現させたときにはRSAT応答を活性化する。Conklinら、Substitution of Three Amino Acids Switches Receptor Specificity Of Gqa To That Of Gia、Nature、363:274〜6 (1993)を参照されたい。
【0006】
α−アドレナリン受容体の一般的な背景については、α1/α2のサブクラス分類の基礎、分子生物学、シグナル伝達、作動剤の構造−活性相関、受容体の機能、およびα−アドレナリン受容体親和性を示す化合物に関する治療的適用が調べられた、Robert R. Ruffolo, Jr.、α-Adrenoreceptors:Molecular Biology, Biochemistry and Pharmacology (Progress in Basic and Clinical Pharmacology series、Karger、1991)が注目される。
【0007】
動物組織に由来する様々なα受容体サブタイプのクローニング、配列決定および発現により、α1アドレナリン受容体は、α1A、α1Bおよびα1Dのサブクラスに分類された。同様に、ヒトα2アドレナリン受容体もまた、α2A、α2Bおよびα2Cの受容体に分類されている。それぞれのα2受容体サブタイプはそれぞれ独自の薬理学的特異性および組織特異性を示すようである。
【0008】
α受容体汎(pan)アゴニスト、例えばクロニジンおよびデクスメデトミジンは、有効な鎮痛活性を有し、この目的で現在広く、中枢神経系に直接投与されている(例えばクモ膜下または硬膜外に)。このようなα受容体汎アゴニストはしばしば、慢性痛、例えば癌の痛み、術後痛、神経障害性の痛み、異痛、ヘルペス後神経痛、過敏性腸症候群および他の内臓痛の処置に用いられている。そのようなα汎アゴニストがいくらかの処置効果をもたらす他の状態には、依存症療法(例えば麻酔剤または喫煙の解毒)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、トゥーレット症候群、抑うつおよび他の精神医学的障害、高血圧、高眼圧(例えばいくつかの形態の緑内障に関連するもの)、並びに痙性がある。しかし、そのような剤は、鎮痛剤として、または上記のような他の適応症の処置において、一般的におよび効果的に使用されていない。これは、処置効果と、顕著な、しばしば重篤な心血管作用および鎮静作用との間のセラピューティック・ウィンドウ(therapeutic window)が非常に狭いからであり、また、鎮静作用に関係する他の療法との相互作用が懸著であるからである。後者の例として、Higuchi H.ら, The Interaction Between Propofol And Clonidine For Loss Of Consciousness, Anesth. Analg. 94(4): 886-91, (2002年4月); Jaffe, R.ら, Adverse interaction between Clonidine and Verapamil, Annals Pharmacother. 28(7-8): 881-3 (1994年7-8月)(クロニジンとベラパミルとの鎮静作用の、致命的となる可能性のある相乗作用を報告している)を参照されたい。
【0009】
処置用量での高い鎮静および心血管抑制作用を包含する共通する副作用の故に、FDAが承認したα受容体アゴニスト(現在までのところ、α受容体汎アゴニストを包含するに過ぎない)は通例、局所的薬物または局所適用薬物としてよりも全身的薬物としての有用性が低い。すなわち、α汎アゴニストであるクロニジンは、高眼圧(IOP)(例えば緑内障による)の眼科的処置に用いられている。この薬物は点眼剤として眼に直接投与されるので、通常の全身的作用の多くは最小限に抑えることができる。しかし、そのような薬物を眼に局所適用する場合でも(眼の血管への浸透によって、また、鼻への鼻涙管を経由して、全身的デリバリーが可能であり)、前記のような副作用を排除することはできず、したがって処置有効用量はやはりそのような作用の故に制限される。
【発明の開示】
【0010】
<発明の概要>
本発明は第一の態様において、1)αアドレナリン受容体の直接的または間接的活性化をもたらす活性を有する化合物を含んで成る第1成分、および2)αアドレナリン受容体アンタゴニストを含んで成る第2成分を哺乳動物(特にヒト)に併用投与すると、第1成分の処置活性効力が向上し、その鎮静活性は顕著に増大しないという驚くべき発見に関する。すなわち、上記2成分の併用投与により、第1成分の処置活性と鎮静活性との間のセラピューティック・ウィンドウが広がる。
【0011】
現在好ましい態様においては、本発明は、痛み、特に慢性痛;痙性;神経変性障害;交感神経的に増大したストレスに関連する状態;および緑内障および高眼圧を包含する眼状態から成る群から選択する状態を処置する方法に関する。
【0012】
好ましくは、第1成分に含まれる化合物は、α受容体アゴニストおよびノルエピネフリントランスポーター阻害剤(例えば三環系抗うつ剤またはTCA)から成る群から選択する。α汎アゴニストおよびTCAの例は、当分野で長年よく知られている。しかし、本発明者は、本書に開示する方法は本願が初めて提供するものであると考える。
【0013】
TCA(アミトリプチリン(Amitril、Elavil)およびノルトリプチリン(Aventyl、Pamelor);デシプラミン(Pertofrane、Norpramin);ドキセピン(Sinequan、Adapin);イミプラミン(Janamine、Tofranil);プロトリプチリン(Vivactil);トリミプラミン(Surmontil);およびクロミプラミン(Anafranil)を包含する)は、抑うつ状態の処置に最初に、そして主に用いられてきた。しかしそれらが広範な障害、例えば大うつ病エピソード、ある種のいわゆる非定型うつ病、パニック障害、対人恐怖、過食症、ナルコレプシー、注意欠陥障害(ADD)(多動を伴うものまたは伴わないもの)、偏頭痛および様々な他の慢性痛症候群(神経障害性の痛みを包含する)、小児遺尿、並びに強迫性障害に有用であると報告されている。他の主要な精神障害、例えば躁うつ病、統合失調症および統合失調性感情障害において起こるうつ症状も、後述のようにある種の警告を伴ってTCAで処置される。
【0014】
α受容体汎アゴニストと同様、多くのTCAについても、危険な副作用は鎮静である。このため、それらは通例、夜、就寝前に投与するよう処方される。心血管作用もそれら剤に伴う。起立性低血圧(すなわち起き上がり時または他の急な姿勢変更時のめまい)がよく見られる。しばしば頻脈(時には動悸を伴う)が報告される。該剤は、不健康な心臓に悪影響も及ぼし得、例えば EKG(心電図)の変化または不整脈(拍動または心臓状態の乱れ)をもたらし得、あるいは狭心症または心不全または心筋梗塞(心臓発作)を悪化または急進させうる。このような心臓作用の故に、多くの患者に対しTCAの投与を避けることがある。三環系剤の過量が極めて危険なのは心臓作用の故である。過量により重篤な、場合によっては致命的な心臓合併症が起こりうる。三環系抗うつ剤は現在、米国において薬物過量による死亡原因の最大のものである。
【0015】
α汎アゴニストのクロニジンの硬膜外投与により、局所麻酔剤ブピバカイン−フェンタニルによってもたらされるのと同様の痛み緩和および運動遮断(分娩時)が有効にもたらされることが報告されている。Angelo, Reg. Anaesth. & Pain Med. 25:3(2000年1〜2月)(引用により本書の一部とする)。しかし、それらの効果には、局所麻酔剤使用時に見られるよりも顕著な鎮静および血心管作用(例えば血圧低下)が伴う。他のα汎アゴニスト、例えばデクスメデトミジンを用いた場合も同様の結果が見られる。αアゴニスト、例えばα受容体汎アゴニストは、慢性痛、例えば癌の痛み、術後痛、ヘルペス後神経痛、過敏性腸症候群および他の内臓痛、糖尿病性神経障害、筋痙性に伴う痛み、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、交感神経依存性疼痛、頭痛の痛み、異痛の痛み、炎症性の痛み、例えば関節炎に関連する痛み、胃腸の痛み、例えば過敏性腸症候群(IBS)およびクローン病、並びに神経障害性の痛みの処置に、末梢的または非末梢的に用いられている。しかし、いずれの場合も、そのような化合物による処置は、鎮痛と過度の鎮静との間の狭いセラピューティック・ウィンドウの故に制限される。
【0016】
また、αアドレナリンアゴニスト、例えばアプラクロニジン(汎アゴニスト)およびブリモニジンは、緑内障、および高IOPまたはブドウ膜強膜房出流出低下を伴う他の眼状態を処置するための眼用製剤中に用いられている。薬物を眼に直接点眼投与することで薬物の全身的濃度は低く、したがって望ましくない副作用は軽いが、点眼によっても、やはり薬物はいくから吸収されまたは取り込まれる。それ故、高眼圧を最も効果的に処置するのに必要な薬物用量が、該濃度でも望ましくない副作用が起こりうるという事実によって、しばしば制限される。
【0017】
これに対し、本発明は、α活性化剤処置に応答しうる状態を有する哺乳動物(ヒトを包含する)を処置する方法であって、αアドレナリン受容体アンタゴニストおよびα活性化剤を哺乳動物に投与することを含んで成る方法を包含する。この場合、鎮静または心血管抑制の程度は、A2AAを同等に有効な用量で単独投与した場合よりも軽い。
【0018】
「α活性化剤」または「A2AA」とは、αアゴニスト、TCA、またはαアドレナリン受容体の直接的もしくは間接的活性化をもたらす活性を有する他の化合物を意味する。
【0019】
本発明を制限するものではないが注目すべきことに、本発明の方法は、痛み、特に慢性痛の処置に用いる場合、A2AAを単独の鎮痛剤として含有する組成物と比較して、より良好な鎮痛活性(すなわちより低いEC50)を提供する。更に、そのような併用投与は、A2AAを単独の処置剤として含有する組成物に通常伴う薬物濃度と鎮静および降圧作用との用量応答相関に実質的に影響を及ぼさないようである。「EC50」とは、ある剤がその最大測定活性の半分をもたらす濃度を意味する。
【0020】
鎮痛および他の適用において、A2AAの好ましい投与経路は末梢または非末梢であり得、経口、静脈内、クモ膜下および硬膜外投与を包含しうる。いずれかの成分(または両成分)を投与するための他の可能な手段としては、クモ膜下ポンプ、皮下ポンプ、皮膚パッチ、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、局所クリームもしくはゲル、または経口ピル、またはそのような方法の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。A2AAの末梢投与手段は現在、ある種の適用において好適ではないが、そのような場合でも、剤の性質およびその投与の適応症に少なくとも部分的に依存して、本発明方法の利点は観察されうる。
【0021】
第1および第2成分は、活性成分に加えて、選択した投与様式に応じて薬学的に許容しうる担体を1種またはそれ以上含有することが好ましい。本発明において「薬学的に許容しうる担体」とは、薬学的に許容しうる材料、組成物または賦形剤、例えば液体または固体の増量剤、希釈剤、佐剤、溶媒または封入材料を意味する。各坦体は、製剤中の他の成分、投与様式と適合性で、患者に有害ではないという意味において「許容しうる」ものでなくてはならない。薬学的に許容しうる担体として機能しうる材料の例を次に挙げるが、それらに限定されない:(a)糖、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;(b)デンプン、例えばトウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;(c)セルロースおよびその誘導体、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよびセルロースアセテート:(d)トラガカント粉末;(e)麦芽;(f)ゼラチン;(g)タルク;(h)佐剤、例えばカカオ脂および坐剤ワックス;(i)油、例えばピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油:(j)グリコール、例えばプロピレングリコール;(k)ポリオール、例えばグリセロール、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;(l)エステル、例えばエチルオレエートおよびエチルラウレート;(m)寒天;(n)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸およびホウ酸ナトリウム、並びにリン酸緩衝剤;(o)アルギン酸;(p)発熱物質不含有水;(q)等張塩類液;(r)リンガー液;(s)エチルアルコール;(t)リン酸緩衝溶液;および(u)医薬製剤中に使用するのに適当な他の無毒性適合性物質。
【0022】
慢性痛の処置方法に関し、下記のことが本発明の理解の助けとなりうる。慢性痛(ガン、関節炎および多くの神経障害性外傷に由来する痛みなど)と、急性痛(組織の切開、つねる、突くまたは圧迫などの即時的な物理的刺激によって生じる痛みなど)とは、異なる神経線維および神経受容体によって、または慢性的な刺激を受けたときのこれらの神経の機能の再編成もしくは変化によって、大きな程度で仲介される異なる神経学的現象であることが知られている。急性痛の感覚は、機械的、熱的および化学的な刺激に対する高い閾値を通常の場合には有するC線維と呼ばれる求心性の神経線維によって主に、極めて迅速に伝達される。慢性痛の機構は完全には解明されていないが、急性の組織傷害は、痛み応答を誘発させるために必要な刺激の大きさを局所的に低下させることを含む二次的な徴候を、最初の刺激を受けてから数分後または数時間後の内に生じさせ得る。この現象は、典型的には最初の刺激部位に由来する領域(しかし、そのような部位よりも大きい領域)において生じ、痛覚過敏と呼ばれている。この二次的な応答は、機械的刺激または熱的刺激に対して非常に高まった感受性を生じさせ得る。
【0023】
A求心性線維(Aβ線維およびAδ線維)は、C線維よりも低い閾値で刺激され得るが、慢性痛の感覚に関与しているようである。例えば、正常な条件のもとでは、これらの線維の低い閾値の刺激(軽くなでるまたはくすぐるなど)は痛みを伴わない。しかし、ある種の状態、例えば神経傷害後の状態、または帯状疱疹として知られているヘルペスウイルス媒介症状のある状態では、そのような軽い接触または衣類の擦れさえも非常な痛みを伴い得る。このような状態は異痛と呼ばれ、少なくとも部分的にはAβ求心性神経によって仲介されているようである。C線維もまた慢性痛の感覚に関与し得るが、もしそうであるならば、ニューロンの長時間にわたる持続した興奮が、慢性痛の感覚を生じさせる何らかの種類の変化を生じさせるようである。
【0024】
用語「痛み」は急性の痛みおよび慢性の痛みの両方を包含する。本明細書中で使用される用語「急性の痛み」は、傷害(例えば、切り傷、挫傷、火傷など)によって、または、化学的刺激(例えば、カプサイシン(唐辛子の活性成分)にさらされたときに経験する痛みなど)によってもたらされる即時型の、一般には高い閾値の痛みを意味する。本明細書中で使用される用語「慢性の痛み」は、急性の痛みでない痛みを意味し、これには、神経障害性の痛み、内臓痛、線維筋痛の痛み、炎症性の痛み、頭痛の痛み、筋肉痛および関連痛(これらに限定されない)が含まれる。慢性の痛みはしばしば、比較的長い持続期間(例えば、数ヶ月または数年)の痛みであり、継続的または間断的であり得ることが理解される。
【0025】
1つの実施形態において、本発明の方法は、「神経障害性の痛み」を処置するために使用される。本明細書中で使用される「神経障害性の痛み」は、神経に対する傷害から生じる痛みを意味する。神経障害性の痛みは、小さい皮膚神経、または筋肉もしくは結合組織における小さい神経が関係する急性の組織傷害によって引き起こされる痛みである侵害受容性の痛みから区別されうる。神経障害性の痛みとは対照的に、侵害受容性の痛みは、通常、継続期間が組織修復の期間に限定され、一般には、利用可能な鎮痛剤またはオピオイドによって緩和されうる(Myers、Regional Anesthesia、20:173〜184 (1995))。
【0026】
神経障害性の痛みは典型的には、長く持続するか、または慢性的であり、最初の急性組織傷害の数日後または数ヶ月後に現れ得る。神経障害性の痛みは、持続的かつ無意識な痛み、ならびに、通常の場合には痛くない刺激に対する痛い応答である異疼痛、または、痛覚過敏(通常的にはありふれた痛い刺激(例えば、ピン刺激など)に対する強調された応答)を伴う。神経障害性の痛みは、一般には、オピオイド治療に対して抵抗性である(Myers、上掲、(1995))。
【0027】
本発明の方法は、末梢神経、後根神経節、脊髄、脳幹、視床または皮質の外傷、傷害または疾患(これらに限定されない)から生じる神経障害性の痛みを処置するのに有用である。本発明の方法によって処置され得る神経障害性の痛みの例には、神経痛(例えば、帯状疱疹後神経痛など)、求心路遮断の痛み、および糖尿病性神経障害が含まれる。本発明の方法は、痛みの病因にかかわらず、神経障害性の痛みの処置において有用であることが理解される。例として、本発明の方法は、末梢神経障害(例えば、神経腫など)から生じる神経障害性の痛み、神経圧迫から生じる神経障害性の痛み、神経の挫傷もしくは伸張または不完全な神経切断(transsection)から生じる神経障害性の痛み、あるいは単神経障害または多発神経障害から生じる神経障害性の痛みを処置するために使用することができるが、それらに限定されない。さらなる例として、本発明の方法は、後根神経節圧迫などの障害;脊髄の炎症;脊髄の打撲、腫瘍または半側切断;脳幹、視床または皮質の腫瘍または外傷から生じる神経障害性の痛みを処置するのに有用であるが、それらに限定されない。
【0028】
上記で示されたように、本発明の方法は、単神経障害または多発神経障害から生じる神経障害性の痛みを処置するのに有用でありうる。神経障害は、末梢神経系における機能的な乱れまたは病理学的な変化であり、臨床的には感覚ニューロンまたは運動ニューロンの異常によって特徴づけられる。単神経障害の用語は、1つだけの末梢神経が冒されていることを示し、一方、多発神経障害の用語は、いくつかの末梢神経が冒されていることを示す。神経障害の病因は既知または未知であり得る。既知の病因には、神経障害を生じさせる最も一般的な代謝性障害である糖尿病などの疾患状態または毒性状態の合併症、あるいは、刺激、虚血または血管炎が含まれる。本発明の方法によって処置され得る多発神経障害は、ポリオ後症候群、糖尿病、アルコール、アミロイド、毒素、HIV、甲状腺機能低下症、尿毒症、ビタミン欠乏症、化学療法、2',3'-ジデオキシシチジン(ddC)またはファブリー病(これらに限定されない)から生じ得る。本発明の方法は、病因が既知または未知であるこれらの神経障害または他の慢性神経障害の慢性痛を処置するために使用され得ることが理解される。
【0029】
本発明の方法は、頭痛、例えば緊張型頭痛、偏頭痛、群発頭痛、ホルモン性頭痛、反跳性頭痛、副鼻腔頭痛および器質性頭痛による慢性痛の処置にも適用しうる。本発明の方法は更に、活動、例えば限定するわけではないが長時間のコンピュータ作業、重い物または重い機械を扱う作業、長時間の立位、および反復動作障害(RMD)の結果としての慢性痛の処置にも適用しうる。RMDは慢性痛を引き起こしうる様々な筋肉状態である。RMDは、労力の使い過ぎ、悪い姿勢、筋肉疲労、神経もしくは組織の圧迫、ある活動もしくは動性の絶え間ない過度の反復、または不自然もしくはぎこちない動作(例えば腕または手首をねじること)によって起こる摩擦によって引き起こされうる。RMDは通例、手、手首、肘、肩、首、背中、腰、膝、脚、足および足首に起こるが、手と腕に最も多い。本発明の方法は、任意のタイプのRMDに由来する慢性痛の処置に適用しうる。
【0030】
本発明の方法は更に、過度の筋緊張の結果生じる慢性痛、例えば椎間板ヘルニア等によるある種の背部痛;坐骨神経痛および関節痛、並びに炎症(炎症性疾患、例えば骨関節炎および関節リウマチによる炎症;傷害、例えば組織または関節の圧搾、穿刺、伸長によって起こる炎症;感染、例えば結核による炎症;または神経性炎症を包含する)の結果生じる慢性痛を処置するのにも適用することができる。本発明の方法によって処置しうるものの例には、慢性消化器炎症、例えばクローン病、潰瘍性大腸炎,胃炎、過敏性腸疾患、および慢性内臓痛、例えば癌による痛み、または癌療法(例えば化学療法または放射線療法)に伴う痛みがあるが、それらに限定されない。同様に、本発明の方法は、例えば関節炎(例えば関節リウマチ、痛風性関節炎または骨関節炎);脊椎炎;または自己免疫疾患(例えば紅斑性狼瘡)によって起こる慢性炎症痛の処置にも適用しうる。本発明の方法は更に、慢性筋肉痛、薬物乱用または脱離に関連する慢性痛、および原因のわかっているかまたはわかっていない他の種類の慢性痛の処置にも使用しうる。本発明の方法においては、第1および第2の薬物を適切な方法で併用投与しうることを意図する。薬物を、同じかまたは異なる方法で、同時または異なる時点で投与しうる。
【0031】
αアゴニストおよびTCAは、痛みの処置に加えて、神経保護にも有用であることが知られている。例えば、本発明の方法により、より少ない副作用を伴って第1および第2成分で処置しうる状態は、神経変性状態、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症および多発性硬化症;虚血、例えば卒中;癩癇;並びに神経障害、例えば糖尿病性および虚血性網膜症を包含するが、それらに限定されない。更に、統合失調症および双極性障害のような精神医学的状態が神経変性とある程度関連すると現在考えられている。
【0032】
更に、本発明の組成物および方法は現在、交感神経的に増大したストレスに関連する様々な状態の予防または治療にも、鎮静を伴わずに有用であることがわかっている。そのような状態は、知覚過敏、例えば線維筋痛または偏頭痛のような頭痛に関連する知覚過敏;消化器疾患、例えば過敏性腸症候群および消化不良;皮膚障害、例えば乾癬;心血管障害;頻脈;末梢血管収縮傷害、例えばレイノー症候群および強皮症;パニック発作;代謝障害、例えばII型糖尿病、インスリン抵抗性および肥満;筋肉収縮障害、例えば骨格筋収縮障害、平滑筋収縮障害、痙性、および緊張型頭痛に関連する筋収縮障害;行動障害;並びに性殖機能不全を包含するが、それらに限定されない。一態様において、交換神経的に増幅された状態は、交感神経遮断によって緩和しうる痛みである交感神経依存性疼痛以外の状態である。そのような適用に関する背景技術は、やはり本願の譲受人に譲渡されている2003年9月12日出願の“NOVEL METHODS FOR IDENTIFYING IMPROVED, NON-SEDATING α−2 AGONISTS”と題する米国特許出願第60/502840号に記載されており、これを引用により本書の一部とする。
【0033】
α活性化剤とαアンタゴニストの併用投与に基づいて、本発明は、A2AA単独使用の場合に見られるよりも少ない鎮静または心血管副作用を伴って、神経変性状態の処置において処置効果を提供する。
【0034】
病態生理学または症状の改善は、ニューロン死の軽減または防止によって理解しうる。本発明において、「ニューロン死」とは、傷害または異常に応答した死の誘発による神経細胞の破壊を意味する。非病理学的ニューロンアポトーシス(例えば胚成長時、またはアポトーシス感受性ニューロンを含有する自己再生組織(例えば嗅上皮)中に起こるニューロンアポトーシス)は、「ニューロン死」の定義に含めない。したがって、「ニューロン死」は、嗅上皮でない神経上皮ニューロンの損傷、例えば中枢神経系ニューロン(例えば脳ニューロン)の損傷、および非アポトーシス感受性ニューロンにおけるニューロン損傷を包含しうる。本発明において、「軽減」とは、ニューロン死に関連して用いられる場合、神経細胞死誘発の防止、減少または解消を意味する。有効量のA2AAおよびαアンタゴニストの投与によるニューロン死の軽減は、ニューロン死または機能障害を伴う状態を、少ない鎮静または心血管副作用で処置するのに有効な方法でありうる。
【0035】
本発明において「神経変性状態」とは、進行性の神経系機能障害によって特徴付けられる障害を意味する。神経変性状態は、病因の多種多様な、いろいろな中枢または末梢神経系障害群を包含する。そのような状態は、遺伝性、毒性もしくは代謝過程に続発的であり得、感染の結果としてのものでありうるが、それらに限定されない。神経変性状態は、年齢に関連するかまたは慢性でありうる進行性障害である。そのような状態は、比較的特定の部分の脳または特定のニューロン群の異常によって特徴付けられる。様々な神経変性状態において冒された特定の細胞群が、障害の臨床的表現型を通例決定する。特に、神経変性状態は、特定の冒された中枢または末梢神経系構造の萎縮が関連しうる。
【0036】
神経変性状態の例は下記のものを包含するが、それらに限定されない:運動ニューロン障害(ALS)、パーキンソン症候群、多発性硬化症、びまん性皮質性小脳萎縮症、レヴィー小体認知症、ピック病、中脳縁皮質性(mesolimbocortical)認知症、視床変性、球麻痺、ハンチントン舞踏病、皮質−線条体−脊髄変性、皮質−脳幹神経節変性、脳小脳変性、痙性不全対麻痺を伴う家族性認知症、ポリグルコサン小体病、シャイ・ドレーガー症候群、オリーブ橋小脳萎縮症、進行性核上麻痺、奇形性筋失調症、ハレルフォルデン・スパッツ病、メージ症候群、家族性振せん、ジル・ド・ラ・トゥーレット症候群、有棘赤血球性舞踏病、フリードライヒ失調症、Holmes型家族性小脳皮質萎縮症、エイズによる認知症、Gerstmann−Straussler−Scheinker病、進行性脊髄性筋萎縮症、進行性球麻痺、原発性側索硬化症、遺伝性筋萎縮症、痙性対麻痺、腓骨筋萎縮症、肥厚性間質性ポリニューロパシー、家族性多発神経炎性失調、視神経症、糖尿病性網膜症、アルツハイマー病、および眼筋麻痺。これらおよび他の、軽度、中程度または重度の神経変性状態を本発明の方法に従って処置しうることを当業者は理解する。
【0037】
本発明の他の一態様では、眼状態を処置する方法であって、A2AAを含んで成る第1成分、およびα受容体アンタゴニストを含んで成る第2成分を併用投与することを含んで成る方法を提供する。この態様においては、鎮静および心血管作用の大幅な低減をもたらすA2AA濃度で処置効果が得られる。
【0038】
本発明の方法で処置し得る眼状態の例は下記のものを包含するが、それに限定されない:緑内障(開放隅角緑内障を包含する)、高眼圧、黄斑変性および網膜変性、例えば非滲出性加齢黄斑変性症(ARMD)、滲出性加齢黄斑変性症(ARMD)、脈絡膜新血管形成、糖尿病性網膜症、中心性漿液性脈絡網膜症、類嚢胞黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、近視性網膜変性;
【0039】
炎症性疾患、例えば急性多発性斑状網膜色素上皮症、ベーチェット病、Birdshot Retinochoroidopathy、感染症(梅毒、ライム病、結核、トキソプラズマ症)、中間部ブドウ膜炎(扁平部炎)、多病巣性脈絡膜炎、多発性消失性白点症候群(MEWDS)、眼サルコイドーシス、後部強膜炎、匍行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、原田症候群、Punctate Inner Choroidopathy、急性後部多発性斑状網膜色素上皮症、急性網膜色素上皮炎、Acute Macular Neuroretinopathy;
【0040】
血管疾患および滲出性疾患、例えば糖尿病性網膜症、網膜中心動脈閉塞性疾患、網膜中心静脈閉塞症、播種性血管内凝固、網膜静脈分枝閉塞症、高血圧眼底変化、虚血性眼症候群、網膜動脈毛細血管瘤、コーツ病、傍中心窩毛細血管拡張症、半網膜静脈閉塞症、乳頭静脈炎、網膜中心動脈閉塞症、網膜動脈分枝閉塞症、頸動脈疾患(CAD)、Frosted Branch Angiitis、鎌状赤血球網膜症および他の異常血色素症、網膜色素線条、家族性滲出性硝子体網膜症、イールズ病;
【0041】
外傷性、外科的および環境的障害、例えば交感性眼炎、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、外傷、網膜レーザー、光線力学療法、光凝固、術中の血流低下、放射線網膜症、骨髄移植網膜症;増殖性疾患、例えば増殖性硝子網膜症および網膜上膜;感染性疾患、例えば眼ヒストプラズマ症、眼トキソカリア症、推定眼ヒストプラズマ症候群(POHS)、眼内炎、トキソプラズマ症、HIV感染に関連する網膜疾患、HIV感染に関連する脈絡膜疾患、HIV感染に関連するブドウ膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性網膜外層壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核、広汎性片眼性亜急性神経網膜炎、蝿蛆症;
【0042】
遺伝性疾患、例えば網膜色素変性症、網膜ジストロフィーを伴う全身性疾患、先天性固定夜盲症、錐体ジストロフィー、スタルガルト病および黄色斑眼底、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー、X連鎖網膜分離症、Sorsby眼底ジストロフィー、良性同心性黄斑症、Bietti's Crystalline Dystrophy、弾性線維性仮性黄色腫;網膜損傷、例えば黄斑円孔、巨大網膜裂傷;
【0043】
網膜腫瘍、例えば腫瘍に関連する網膜疾患、RPEの先天性肥大、後部ブドウ膜黒色腫、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜および網膜色素上皮の複合過誤腫、網膜芽腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星細胞腫、および眼内リンパ腫。
【0044】
神経網膜および視神経の虚血は、網膜静脈分枝閉塞、網膜動脈分枝閉塞、網膜中心動脈閉塞、網膜中心静脈閉塞、硝子体内手術、網膜変性、例えば網膜色素変性、および加齢性黄斑変性において起こりうる。
【0045】
本発明の方法において使用する組成物、例えば併用投与するA2AAおよびαアンタゴニストの、神経死または機能障害を軽減する能力は、該化合物による処置の存在下および不存在下に神経細胞破壊の観察可能な兆候または症候を分析することによって評価することができる。ニューロンのアポトーシス死の開始は、細胞の機能および形態に観察可能な影響をもたらし得、また、機能障害ニューロンまたはアポトーシスニューロンを有する組織、器官および動物に観察可能な影響をもたらしうる。すなわち、ニューロン損傷のインディケータは下記のものを包含しうる:分子変化の観察可能なパラメータ、例えばアポトーシス誘発遺伝子発現の増加;細胞機能の変化、例えばミトコンドリア機能の低下;細胞形態の変化、例えば細胞の収縮およびブレブ形成、器官および組織の機能および形態の変化、例えば梗塞部または他の病変部の存在(その重篤度は、病変体積および病変サイズを包含するパラメータによって評価しうる);動物モデルにおける生理学的変化、例えば機能変化、例えば運動機能の低下、死亡率の上昇と生存率の低下、および行動の変化、例えば認知症または記憶力低下の発症。
【0046】
少なくとも2つの状態の細胞、組織、器官または動物におけるニューロン損傷のインディケータを比較することによって、細胞、組織、器官または動物におけるニューロン損傷のインディケータの減少を評価することができる。すなわち、ニューロン損傷インディケータの減少を、対照状態に対して相対的に表すことができる。対照状態は例えば、処置の前の、処置不存在下の、別の処置の存在下の、正常動物の、細胞、組織、器官または動物、あるいは当業者が適切と判断する他の状態でありうる。
【0047】
特定の実施形態において、本発明の方法は、本発明の第1および第2成分を末梢投与することによって実施する。本明細書中で使用される用語「末梢投与」または用語「末梢投与する」は、薬剤を中枢神経系の外側で対象に導入することを意味する。末梢投与は、脊椎または脳への直接的な投与ではない任意の投与経路を包含する。そのため、クモ膜下投与および硬膜外投与、ならびに頭蓋注射または頭蓋埋め込みは、本発明の実施形態の範囲には含まれるが、用語「末梢投与」または用語「末梢投与する」の範囲に含まれないことは明らかである。
【0048】
末梢投与は局所的または全身的であり得る。局所投与では、局所投与された部位に対して、投与部位から遠位の領域よりも著しく多い量の医薬組成物が送達される。全身的投与では、本質的には対象の末梢神経系全体に対する医薬組成物の送達がもたらされ、そしてまた、組成物の性質に依存して中枢神経系への送達がもたらされることがある。
【0049】
本発明の方法において有用な末梢投与経路には、経口投与、局所投与、眼内投与、静脈内注射または他の注射、および埋め込まれたミニポンプまたは他の持続放出デバイスまたは配合物が包含されるが、これらに限定されない。本発明において有用な医薬組成物は、例えば、錠剤、液剤、カプセル剤または粉末剤などでの任意の許容され得る形態で経口投与によって;静脈内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射または非経口注射によって;経皮拡散またはエレクトロホレシスによって;滴剤、クリーム、ゲルまたは軟膏などでの任意の許容され得る形態で局所的に;また、ミニポンプまたは他の埋め込まれた持続放出デバイスまたは配合物によって末梢投与することができる。
【0050】
本発明は、哺乳動物の痛みを処置する方法であって、a)αアドレナリン受容体の直接的または間接的活性化をもたらす活性を有する化合物を含んで成る第1成分と、b)
αアドレナリン受容体アンタゴニストを含んで成る第2成分とを、末梢的または非末梢的に併用投与することを含んで成り、該方法に従って最大鎮痛の半分をもたらすのに有効な用量の第1成分の投与によって引き起こされる鎮静の程度は、同様の状態の哺乳動物において最大鎮痛の半分をもたらすの有効な用量の該第1成分を第2成分不存在下に投与した場合の鎮静の程度よりも軽い方法にも関する。本発明のこの態様または他の態様の投与様式は、非末梢的、例えばクモ膜下もしくは硬膜外、または全身的、例えば経口、腹腔内、静脈内、筋肉内、または経皮でありうる。
【0051】
痛みの処置に加えて、本発明の他の一態様は、α受容体アゴニストが有効であることが知られている他の状態を処置するための方法に関する。それは、眼障害、例えば高眼圧
および緑内障、交感神経的に増幅されたストレスに関連する状態、神経変性状態、および痙性を包含するが、それらに限定されない。このような状態をαアドレナリン作動剤で処置する場合に望ましくない鎮静副作用も起こりうるが、本発明はその軽減を促しうる。
【0052】
この態様において、第1および第2成分を眼に処置送達するのに、第1および第2成分を局所送達するのが有利でありうる。局所用眼用製剤は当分野でよく知られている。
眼用医薬組成物は、第1および第2成分(単一の製剤として、または個別の製剤として)の処置有効量を活性成分として、眼科学的に許容しうる通常の医薬賦形剤と組み合わせることによって、および眼への局所適用に適当な単位用量形態を形成することによって調製しうる。各成分の処置有効量は独立して、通例、液体製剤中約0.0001〜5%(w/w)、好ましくは約0.001〜1.0%(w/w)である。
【0053】
眼科的な適用のためには、主な賦形剤として生理食塩液を用いて溶液を調製することが好ましい。そのような眼用溶液のpHは、薬学的に許容しうる適当な緩衝系(例えばホウ酸、トロメタミンまたはリン酸緩衝系であるが、それらに限定されない)によって約6.2〜7.8に保つことが好ましい。このような製剤は、薬学的に許容し得る通常の保存剤、安定剤および界面活性剤をも含有し得る。
【0054】
本発明の眼用局所的方法および組成物において使用し得る好ましい保存剤は、塩化ベンザルコニウム、他の第四級アンモニウムポリマー保存剤(例えばPHMBおよびPolyquad(登録商標))、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀および硝酸フェニル水銀を包含するが、これらに限定されない。特に好ましい保存剤群は、酸化的保存剤、例えば安定化二酸化塩素(例えば Purite (登録商標)安定化二酸化塩素)、安定化オキシボレートなどである。
【0055】
眼用製剤中に使用する界面活性剤は、イオン性またはノニオン性の界面活性剤、例えばTriton(例えばTriton X-100)、Tween(登録商標)(例えばポリソルベート40;ポリソルベート80)、およびPluronic(登録商標)界面活性剤を包含しうるが、それらに限定されない。
【0056】
同様に、種々の好ましい賦形剤を本発明の眼用製剤中に使用しうる。そのような賦形剤は、ポリビニルアルコール;Carbopol(登録商標)(アリルスクロースで架橋したプロピオン酸のポリマー);Pemulin(登録商標);ポビドン;ポロキサマー:セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどを包含するが、それらに限定されない。
【0057】
眼用製剤をエマルジョンとして調製することが有利でありうる。その場合、エマルジョンは水中油型エマルジョンまたは油中水型エマルジョンでありうる。エマルジョンは、保存剤および/または賦形剤を含有しうるが、通例少なくとも1種の界面活性剤を含有し得、乳化剤を含有しうる。乳化剤は界面活性剤でもありうる。好ましい乳化剤の1つは、架橋ポリアクリレートであるPemulin(登録商標)である。
【0058】
必要に応じて、または好都合に、浸透圧調整剤を添加し得る。浸透圧調整剤は、塩、とりわけ塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールおよびグリセリンを包含するが、これらに限定されるものではなく、眼科的に許容し得る他の適当な浸透圧調整剤も使用し得る。
【0059】
眼科的に許容し得る製剤が得られるのであれば、pH調整のためにどのような緩衝剤および手段を用いてもよい。緩衝剤は、酢酸、クエン酸、リン酸およびホウ酸の緩衝剤を包含する。製剤のpHを調整するために、必要に応じて酸または塩基を使用し得る。
【0060】
同様に、本発明において使用するための眼科的に許容し得る抗酸化剤の例は、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソールおよびブチル化ヒドロキシトルエンを包含するが、それらに限定されるものではない。
【0061】
本発明の眼用製剤が含有し得る他の佐剤成分はキレート剤である。好ましいキレート剤はエデト酸二ナトリウムであるが、その代わりに、またはそれと組み合わせて他のキレート剤も使用し得る。
【0062】
成分は次のような量で使用しうる:

【0063】
本発明の活性化合物の実際の用量は、化合物によって、および処置する症状によって異なる。当業者はその知識の範囲内で、適当な用量を選択することができる。
本発明の眼用製剤は、眼への適用を容易にするよう、計量適用に適した形態(例えばドロッパー付き容器)に充填することが好都合である。滴下適用に適した容器は通例、不活性で無毒性の適当なプラスチック材料製であり、液剤を通例約0.5〜15ml収容する。
【0064】
約10単位用量まで、好ましくは約5単位用量までを含有する再密閉不可能な容器内に入った、保存剤不含有の溶液をしばしば調製する。単位用量は通例、1〜約8滴、好ましくは1〜約3滴である。1滴の体積は通例、約20〜35μlである。本発明の方法において、第1成分は好ましくはαアゴニストまたはTCAから成る群から選択し、より好ましくはαアゴニストから選択し、一層好ましくはクロニジン、デクスメデトミジン、ミバゼロールおよびチザニジンから成る群から選択するα汎アゴニストである。そのような化合物およびその合成法は周知である。
【0065】
特定の態様において、αアドレナリン受容体アンタゴニストは、プラゾシンおよびテラゾシンおよび5−メチルウラピジルから成る群から選択する。前二者の化合物およびその合成法は、米国特許第3511836号および同第4026894号にそれぞれ記載されている。後者の化合物は、その合成が米国特許第3957786号に記載されるウラピジル易合成誘導体である。これらの、および本願において引用する他のすべての文献は、引用によって本書の一部とする。更に、他のα受容体アンタゴニストが当分野でよく知られている。そのような化合物が数多く臨床用に承認されている。Lagu, 26 Drugs of the Future 757-765 (2001)およびForrayら, 8 Exp. Opin. Invest. Drugs 2073 (1999)をも参照されたい。該文献は多くのαアンタゴニストの例を挙げており、引用により本書の一部とする。
他の態様は、本明細書を参照して当業者に明らかであろう。
【0066】
<発明の詳細な説明>
本発明は第一の態様において、a)αアドレナリン受容体活性の直接的または間接的刺激をもたらす活性を有する化合物を含んで成る第1成分と、b)αアドレナリン受容体アンタゴニストを含んで成る第2成分とを含んで成る組成物を、それを必要とする哺乳動物に末梢的または非末梢的に併用投与すると、処置効果の提供に要する第1成分の用量が、前記第1成分を単独の処置剤として投与される同様の状態の哺乳動物において同様の処置効果を達成するのに要する用量よりも少ない場合、鎮静および/または心血管副作用がより軽いという、出願人の驚くべき発見に関する。すなわち、ヒトを包含する哺乳動物に第1および第2成分を併用投与することによって、処置効果、例えば鎮痛、眼圧降下作用、神経保護などを達成することができ、処置用量での鎮静および心血管抑制は、同様に有効である処置用量の第2成分を投与する場合と比較して著しく軽度である。現在好ましい態様においては、哺乳動物は慢性痛の鎮痛を要するものである。
【0067】
すなわち本発明のこの態様において、出願人は、αアドレナリン受容体の直接または間接的な活性化をもたらす活性を有する化合物(A2AA)、例えばα受容体汎アゴニスト、例えばクロニジン、デクスメデトミジンもしくはチザニジン、またはTCAを、α受容体アンタゴニストと併用投与すると、A2AAの処置効力を向上すると共に、該剤の使用時に通常見られる鎮静副作用を実質的に増加することなく、A2AAのα仲介処置活性の「非マスキング」または向上をもたらす、ということを見出した。その結果として、選択したA2AAによる処置に際するセラピューティック・ウィンドウが、同じ剤をαアンタゴニストを伴わずに投与する場合と比較して広がり、ある場合にはA2AA用量を増加することが可能となり、また別の場合には同じ用量を用いても副作用を軽減することが可能となる。好ましくはA2AAはαアドレナリン受容体アゴニストである。
【0068】
本発明が特定の理論により制限されると解釈されるものではないが、出願人の考えるところでは、α受容体またはその1つもしくはそれ以上のサブタイプ(ヒトのα1A、α1Bおよびα1D受容体を含む)の刺激が、α2A、α2Bおよび/またはα2C受容体の刺激による鎮痛活性を減弱する故に、本発明の効果がもたらされる。また、大多数のA2AAはα刺激活性を持たないとは断定されておらず(α「選択的」であるといえるか否かには関わらない)、従って、前記減弱効果をもたらすのに充分なαアゴニスト内活性を有すると考えられる。
【0069】
すなわち、αアンタゴニストの併用投与により、α受容体刺激によって起こる望ましくない痛覚過敏作用がブロックされると考えられる。αアンタゴニストは好ましくは少なくともα1A受容体アンタゴニスト活性、α1Bアンタゴニスト活性またはα1D受容体アンタゴニスト活性を有する。α受容体アンタゴニストは最も好ましくは少なくともα1A受容体アンタゴニスト活性を有する。そのようなアンタゴニストは、1つより多いα受容体サブタイプでアンタゴニスト活性を示すものでありうる。
【0070】
哺乳動物に対するA2AAとαアンタゴニストの併用投与は、αアゴニストで哺乳動物をクモ膜下処置する場合に見られる鎮静副作用を増強せず、しばしば軽減するということに加えて、A2AAの処置効果をも改善し(すなわち「セラピューティック・ウィンドウ」を拡大する)、それによって、従来よりも低用量での処置が可能となる。
【0071】
他の一態様において、本発明は、哺乳動物の痛みを処置する方法であって、1)αアドレナリン受容体の直接的または間接的活性化をもたらす活性を有する第1成分と、2)αアドレナリン受容体アンタゴニストを含んで成る第2成分とを投与することによる方法に関する。A2AAは、好ましくはα受容体アゴニストおよびノルエピネフリントランスポーター阻害剤(例えば三環系抗うつ剤またはTCA)から成る群から選択し、より好ましくはα受容体アゴニストから選択する。あるいはA2AAは、好ましくはブリモニジン、クロニジン、チザニジン、デクスメデトミジンおよびノルエピネフリン並びにMPV−2426(ラドルミジン(radolmidine))から成る群から選択する。
【0072】
更に、他の一態様において本発明は、A2AA投与後の眼圧の実質的「スパイク」または初期上昇を伴うことなく、哺乳動物の高眼圧を処置する方法であって、1)αアドレナリン受容体の直接的または間接的活性化をもたらす活性を有する第1成分と、2)αアドレナリン受容体アンタゴニストを含んで成る第2成分とを投与することを含んで成る方法に関する。この態様において好ましい投与経路は、局所用眼用製剤、例えば溶液剤、懸濁液剤またはエマルジョンによるものでありうる。好ましい態様において、A2AAはαアゴニスト、特にα汎アゴニストである。
【0073】
第1および第2成分は、好ましくは併用投与のために単一の製剤中に存在するが、別個の組成物として併用投与してもよい。本発明において「併用投与」とは、単一組成物として、または別個の組成物としての第1および第2成分の投与を包含する。更に、各成分を異なる経路で、および/または同時または時間を置いて投与しうる。
【0074】
別の態様において本発明は、処置有効量の第1および第2成分を薬学的に許容しうる担体と共に配合した組成物に関する。更に別の態様においては、第1および第2成分は1つの分子を構成する異なる部分でありうる。
【0075】
鎮痛適用において、A2AAの好ましい投与経路は末梢または非末梢であり得、経口、静脈内、クモ膜下および硬膜外投与を包含しうる。いずれかの成分(または両成分)を投与するための他の可能な手段としては、クモ膜下ポンプ、皮下ポンプ、皮膚パッチ、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、局所クリームもしくはゲル、または経口ピル、またはそのような方法の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。A2AAの末梢投与手段は現在、ある種の適用において好適ではないが、そのような場合でも、剤の性質およびその投与の適応症に少なくとも部分的に依存して、本発明方法の利点は観察されうる。
【0076】
第1および第2成分は、活性成分に加えて、選択した投与様式に応じて薬学的に許容しうる担体を1種またはそれ以上含有することが好ましい。本発明において「薬学的に許容しうる担体」とは、薬学的に許容しうる材料、組成物または賦形剤、例えば液体または固体の増量剤、希釈剤、佐剤、溶媒または封入材料を意味する。各坦体は、製剤中の他の成分、投与様式と適合性で、患者に有害ではないという意味において「許容しうる」ものでなくてはならない。薬学的に許容しうる担体として機能しうる材料の例を次に挙げるが、それらに限定されない:(a)糖、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;(b)デンプン、例えばトウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;(c)セルロースおよびその誘導体、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよびセルロースアセテート:(d)トラガカント粉末;(e)麦芽;(f)ゼラチン;(g)タルク;(h)佐剤、例えばカカオ脂および坐剤ワックス;(i)油、例えばピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油:(j)グリコール、例えばプロピレングリコール;(k)ポリオール、例えばグリセロール、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;(l)エステル、例えばエチルオレエートおよびエチルラウレート;(m)寒天;(n)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸およびホウ酸ナトリウム、並びにリン酸緩衝剤;(o)アルギン酸;(p)発熱物質不含有水;(q)等張塩類液;(r)リンガー液;(s)エチルアルコール;(t)リン酸緩衝溶液;および(u)医薬製剤中に使用するのに適当な他の無毒性適合性物質。
【0077】
慢性痛の処置方法に関し、下記のことが本発明の理解の助けとなりうる。慢性痛(ガン、関節炎および多くの神経障害性外傷に由来する痛みなど)と、急性痛(組織の切開、つねる、突くまたは圧迫などの即時的な物理的刺激によって生じる痛みなど)とは、異なる神経線維および神経受容体によって、または慢性的な刺激を受けたときのこれらの神経の機能の再編成もしくは変化によって、大きな程度で仲介される異なる神経学的現象であることが知られている。急性痛の感覚は、機械的、熱的および化学的な刺激に対する高い閾値を通常の場合には有するC線維と呼ばれる求心性の神経線維によって主に、極めて迅速に伝達される。慢性痛の機構は完全には解明されていないが、急性の組織傷害は、痛み応答を誘発させるために必要な刺激の大きさを局所的に低下させることを含む二次的な徴候を、最初の刺激を受けてから数分後または数時間後の内に生じさせ得る。この現象は、典型的には最初の刺激部位に由来する領域(しかし、そのような部位よりも大きい領域)において生じ、痛覚過敏と呼ばれている。この二次的な応答は、機械的刺激または熱的刺激に対して非常に高まった感受性を生じさせ得る。
【0078】
A求心性線維(Aβ線維およびAδ線維)は、C線維よりも低い閾値で刺激され得るが、慢性痛の感覚に関与しているようである。例えば、正常な条件のもとでは、これらの線維の低い閾値の刺激(軽くなでるまたはくすぐるなど)は痛みを伴わない。しかし、ある種の状態、例えば神経傷害後の状態、または帯状疱疹として知られているヘルペスウイルス媒介症状のある状態では、そのような軽い接触または衣類の擦れさえも非常な痛みを伴い得る。このような状態は異痛と呼ばれ、少なくとも部分的にはAβ求心性神経によって仲介されているようである。C線維もまた慢性痛の感覚に関与し得るが、もしそうであるならば、ニューロンの長時間にわたる持続した興奮が、慢性痛の感覚を生じさせる何らかの種類の変化を生じさせるようである。
【0079】
用語「痛み」は急性の痛みおよび慢性の痛みの両方を包含する。本明細書中で使用される用語「急性の痛み」は、傷害(例えば、切り傷、挫傷、火傷など)によって、または、化学的刺激(例えば、カプサイシン(唐辛子の活性成分)にさらされたときに経験する痛みなど)によってもたらされる即時型の、一般には高い閾値の痛みを意味する。本明細書中で使用される用語「慢性の痛み」は、急性の痛みでない痛みを意味し、これには、神経障害性の痛み、内臓痛、線維筋痛の痛み、炎症性の痛み、頭痛の痛み、筋肉痛および関連痛(これらに限定されない)が含まれる。慢性の痛みはしばしば、比較的長い持続期間(例えば、数ヶ月または数年)の痛みであり、継続的または間断的であり得ることが理解される。
【0080】
1つの実施形態において、本発明の方法は、「神経障害性の痛み」を処置するために使用される。本明細書中で使用される「神経障害性の痛み」は、神経に対する傷害から生じる痛みを意味する。神経障害性の痛みは、小さい皮膚神経、または筋肉もしくは結合組織における小さい神経が関係する急性の組織傷害によって引き起こされる痛みである侵害受容性の痛みから区別されうる。神経障害性の痛みとは対照的に、侵害受容性の痛みは、通常、継続期間が組織修復の期間に限定され、一般には、利用可能な鎮痛剤またはオピオイドによって緩和されうる(Myers、Regional Anesthesia、20:173〜184 (1995))。
【0081】
神経障害性の痛みは典型的には、長く持続するか、または慢性的であり、最初の急性組織傷害の数日後または数ヶ月後に現れ得る。神経障害性の痛みは、持続的かつ無意識な痛み、ならびに、通常の場合には痛くない刺激に対する痛い応答である異疼痛、または、痛覚過敏(通常的にはありふれた痛い刺激(例えば、ピン刺激など)に対する強調された応答)を伴う。神経障害性の痛みは、一般には、オピオイド治療に対して抵抗性である(Myers、上掲、(1995))。
【0082】
本発明の方法は、末梢神経、後根神経節、脊髄、脳幹、視床または皮質の外傷、傷害または疾患(これらに限定されない)から生じる神経障害性の痛みを処置するのに有用である。本発明の方法によって処置され得る神経障害性の痛みの例には、神経痛(例えば、帯状疱疹後神経痛など)、求心路遮断の痛み、および糖尿病性神経障害が含まれる。本発明の方法は、痛みの病因にかかわらず、神経障害性の痛みの処置において有用であることが理解される。例として、本発明の方法は、末梢神経障害(例えば、神経腫など)から生じる神経障害性の痛み、神経圧迫から生じる神経障害性の痛み、神経の挫傷もしくは伸張または不完全な神経切断(transsection)から生じる神経障害性の痛み、あるいは単神経障害または多発神経障害から生じる神経障害性の痛みを処置するために使用することができるが、それらに限定されない。さらなる例として、本発明の方法は、後根神経節圧迫などの障害;脊髄の炎症;脊髄の打撲、腫瘍または半側切断;脳幹、視床または皮質の腫瘍または外傷から生じる神経障害性の痛みを処置するのに有用であるが、それらに限定されない。
【0083】
上記で示されたように、本発明の方法は、単神経障害または多発神経障害から生じる神経障害性の痛みを処置するのに有用でありうる。神経障害は、末梢神経系における機能的な乱れまたは病理学的な変化であり、臨床的には感覚ニューロンまたは運動ニューロンの異常によって特徴づけられる。単神経障害の用語は、1つだけの末梢神経が冒されていることを示し、一方、多発神経障害の用語は、いくつかの末梢神経が冒されていることを示す。神経障害の病因は既知または未知であり得る。既知の病因には、神経障害を生じさせる最も一般的な代謝性障害である糖尿病などの疾患状態または毒性状態の合併症、あるいは、刺激、虚血または血管炎が含まれる。本発明の方法によって処置され得る多発神経障害は、ポリオ後症候群、糖尿病、アルコール、アミロイド、毒素、HIV、甲状腺機能低下症、尿毒症、ビタミン欠乏症、化学療法、2',3'-ジデオキシシチジン(ddC)またはファブリー病(これらに限定されない)から生じ得る。本発明の方法は、病因が既知または未知であるこれらの神経障害または他の慢性神経障害の慢性痛を処置するために使用され得ることが理解される。
【0084】
本発明の方法は、頭痛、例えば緊張型頭痛、偏頭痛、群発頭痛、ホルモン性頭痛、反跳性頭痛、副鼻腔頭痛および器質性頭痛による慢性痛の処置にも適用しうる。本発明の方法は更に、活動、例えば限定するわけではないが長時間のコンピュータ作業、重い物または重い機械を扱う作業、長時間の立位、および反復動作障害(RMD)の結果としての慢性痛の処置にも適用しうる。RMDは慢性痛を引き起こしうる様々な筋肉状態である。RMDは、労力の使い過ぎ、悪い姿勢、筋肉疲労、神経もしくは組織の圧迫、ある活動もしくは動性の絶え間ない過度の反復、または不自然もしくはぎこちない動作(例えば腕または手首をねじること)によって起こる摩擦によって引き起こされうる。RMDは通例、手、手首、肘、肩、首、背中、腰、膝、脚、足および足首に起こるが、手と腕に最も多い。本発明の方法は、任意のタイプのRMDに由来する慢性痛の処置に適用しうる。
【0085】
本発明の方法は更に、過度の筋緊張の結果生じる慢性痛、例えば椎間板ヘルニア等によるある種の背部痛;坐骨神経痛および関節痛、並びに炎症(炎症性疾患、例えば骨関節炎および関節リウマチによる炎症;傷害、例えば組織または関節の圧搾、穿刺、伸長によって起こる炎症;感染、例えば結核による炎症;または神経性炎症を包含する)の結果生じる慢性痛を処置するのにも適用することができる。本発明の方法によって処置しうるものの例には、慢性消化器炎症、例えばクローン病、潰瘍性大腸炎,胃炎、過敏性腸疾患、および慢性内臓痛、例えば癌による痛み、または癌療法(例えば化学療法または放射線療法)に伴う痛みがあるが、それらに限定されない。同様に、本発明の方法は、例えば関節炎(例えば関節リウマチ、痛風性関節炎または骨関節炎);脊椎炎;または自己免疫疾患(例えば紅斑性狼瘡)によって起こる慢性炎症痛の処置にも適用しうる。本発明の方法は更に、慢性筋肉痛、薬物乱用または脱離に関連する慢性痛、および原因のわかっているかまたはわかっていない他の種類の慢性痛の処置にも使用しうる。本発明の方法においては、第1および第2の薬物を適切な方法で併用投与しうることを意図する。薬物を、同じかまたは異なる方法で、同時または異なる時点で投与しうる。別法として、A2AAおよびαアンタゴニスト活性の両方を1つの分子内に組み合わせることができ、これは例えば、化学リンカー(例えば二官能性試薬)を用いたαアゴニストとαアンタゴニストとの結合によるものでありうる。
【0086】
出願人は、本発明のある種の態様を説明する目的で以下実施例を記載する。実施例による本発明の制限を意図するものではない。
【実施例1】
【0087】
αアゴニストおよびαアンタゴニストの併用投与による慢性痛の緩和
慢性痛(特に末梢神経障害)のモデルでは、実験動物の片側のL5(および必要な場合にはL6)脊髄神経を手術により結紮する。手術から回復したラットは体重が増え、正常なラットと類似する全体的活動レベルを示す。しかし、これらのラットは、後肢がわずかに外反し、足指が束ねられているという脚の異常を発症する。より重要なことには、手術による影響を受けた側の後肢は、手術後約1週間以内に、低い閾値の機械的刺激(例えばヒトにおいてはかすかな接触感覚を生じさせる刺激)からの痛みに対して感じやすくなっているようである。正常な場合には痛みにならない接触に対するこの感受性は「触覚異痛」と呼ばれており、少なくとも2ヶ月間にわたって続く。応答には、影響を受けた後肢を上げて刺激から逃避すること、脚をなめること、および脚を空中に長く保持することが含まれる。これらの応答はどれも、通常、コントロール群では認められない。
【0088】
ラットを手術前に麻酔する。手術部位を剃毛し、ベタジンまたはノバカイン(Novacaine)のいずれかで処置する。切開を胸椎XIIIから下に仙骨まで行う。筋肉組織をL4〜S2のレベルで脊椎(左側)から離す。L6脊椎を探し出して、横突起を、小さい骨鉗子を用いて注意して除き、L4〜L6の脊髄神経を露出させる。L5およびL6の脊髄神経を隔離して、6−0絹糸できつく結紮する。脊髄神経の結紮を行わないことを除いて、同じ手順をコントロールとして右側で行う。
【0089】
完全な止血を確認して、傷を縫合する。少量の抗生物質軟膏を切開領域に塗布して、ラットを、調節された熱温度ランプのもとでの回復用のプラスチックケージに移す。手術後少なくとも7日目の実験当日に、試験群あたり6匹のラットに試験薬物を、クモ膜下注射、腹腔内注射、経口胃管投与、またはそれらの1つもしくはそれ以上の組み合わせによって投与する。
【0090】
別法として、50%DMSO中のスルプロストン(プロスタグランジンE2受容体アゴニスト)200ngを5μlの体積でマウスにクモ膜下処置することによって異痛を誘発することもできる。このモデルにおいては、塗装用ブラシで脇腹を撫でることに対する痛み応答を、スルプロストンの脊髄投与の15分後から35分間にわたって8回評価する。Minamiら, 57 Pain 217-223 (1994)。スルプロストン処置のみでは、16ポイントのスケールで12〜13のスコアをもたらす。
【0091】
化合物を約0.01〜5%DMSO中に調製し、全身的投与のために1ml/kg体重の体積で投与するか、またはクモ膜下投与ために塩類液中5μlの体積で投与する。
【0092】
Chungラットモデルにおいて、触覚異痛は、剛性が段階的に異なる一連の細い毛であるvon Frey毛を使用して薬物投与の前およびその30分後に測定する。ラットを金網目底のプラスチックケージに入れ、約30分間慣れさす。von Frey毛を、わずかに屈曲させるに十分な力で、ラットの後肢の足裏中央領域に網目を通して直角に当て、6秒〜8秒保つ。加える力は、0.41〜15.1グラムの範囲と計算されている。脚を素早く引っ込めた場合、それは陽性の応答であると見なされる。正常な動物はこの範囲の刺激には応答しないが、手術により結紮された脚は1〜2グラム毛に応答して引っ込める。50%の脚引込閾値を、Dixon,W. J.、Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 20:441〜462(1980)(引用により本書の一部とする)の方法を使用して求める。投与後の閾値を投与前の閾値と比較して、触覚感受性の軽減率を15.1グラムの正常な閾値に基づいて計算する。
【0093】
その結果、クロニジンがラットにおいてもマウスにおいても用量依存的に鎮痛作用を示すことがわかる。Chungの異痛ラットモデルにおいては、0.1μgのクモ膜下用量では鎮痛効果はないが、1.0μgで最大鎮痛が見られる。セラピューティック・ウィンドウを調べるために、ラットを様々な用量のクロニジンで処置し、鎮静をアッセイする。
【0094】
鎮静を試験するために、6匹のオスSprague-Dawleyラットに、クロニジンを様々な用量でクモ膜下注射する。鎮静は、薬物投与の30分後に、下記のように運動能力をモニターすることによって評価する。ラットを暗い蓋付きチャンバーに入れ、デジコム(digicom)アナライザー(Omnitech Electronic)により、それらの調査用行動を5分間にわたって定量化する。この装置で、ラットがX方向およびY方向の32本の光電ビームのアレイを遮る各時間を記録し、クロニジンの代わりに塩類液を投与した対照動物と比較して行動の相違を定量する。
【0095】
このアッセイにおいて、3.0μgのクモ膜下用量はやや鎮静をもたらし、10μgの用量は最大の鎮静をもたらす。すなわち、鎮痛と鎮静は約3〜10倍隔たっている。
スルプロストン誘発異痛マウスモデルにおいて、同様の結果を得る。
【0096】
図1からわかるように、スルプロストン誘発マウスモデルにおいて、クロニジン投与の5分前にαアンタゴニストの5-メチルウラピジルを30μg/kgの用量で腹腔内投与した場合、クロニジン単独の場合の用量応答よりも、有効鎮痛用量が10分の1に低下するようシフトし(図1)、鎮静用量には変化がなかった(図2)。すなわち、クロニジン(αアゴニスト)とαアンタゴニストとの併用投与は、慢性痛モデルにおいて、痛みと鎮静との間のセラピューティック・ウィンドウを、3〜10倍から約30〜100倍に拡張する。
【実施例2】
【0097】
TCAおよびαアンタゴニスト(5-メチルウラピジル)の併用投与による慢性痛の緩和
三環系抗うつ剤(TCA)(一般的に処方される抗うつおよび鎮痛剤)は、ノルエピネフリン取り込みの阻害によってα受容体を間接的に刺激する。
【0098】
スルプロストン誘発異痛マウスモデルおよびTCAのアミトリプチリンを用いて、実施例1に記載のものと同様の実験を行う。アミトリプチリンおよびその合成は、米国特許第3205264号に記載されており、それを引用により本書の一部とする。
【0099】
アミトリプチリンを指定用量で50%DMSOに溶解し、各マウスに5μlの体積でクモ膜下注射すると共に、30μg/kgの5-メチルウラピジルまたは塩類液をIP注射する。実施例1に記載のように塗装用ブラシ刺激を行って評価した。結果を図3に示す。αアゴニストとαアンタゴニストとの組み合わせと同様に、アミトリプチリンとαアンタゴニストとの組み合わせも、最大鎮痛を達成するのに要する用量の低下をもたらした。この場合、約3分の1に低下した。
【0100】
すなわち、本実施例は、αアドレナリン受容体の直接的または間接的刺激(例えばノルエピネフリン産生の増加によるか、またはノルエピネフリン取り込みもしくは再生の抑制による)とαアンタゴニズムとの組み合わせにより、A2AA単独使用の場合と比較して、鎮静と処置効果との間のセラピューティック・ウィンドウの拡張が見られることを示している。
【実施例3】
【0101】
αアゴニストおよびαアンタゴニスト(プラゾシン)の併用投与による慢性痛の緩和
スルプロストン誘発異痛モデルに関して記載したのと同様の方法において、αアンタゴニストのプラゾシンの腹腔内投与(100ng/kg)は、それ自体効果がないか(痛みスコア=4.8±0.6)、またはスルプロストン誘発異痛モデルにおいて効果がない(12.8±0.8)。
【0102】
マウスにスルプロストンおよび様々なクモ膜下用量のクロニジン(体積5μlの50%DMSO中、0.03、0.1および0.4μg)を投与する15分前に、プラゾシンを投与する。このαアンタゴニストを併用投与した場合のクロニジンの鎮痛用量応答は次の通りである:用量0.03μgでは13.3±0.9、用量0.1μgでは4.8±0.8、用量0.4μgでは4.8±0.6。この結果は、クロニジンのEC50がクロニジン単独i.t.投与の場合と比較して約4分の1に低下することを示している。
【0103】
すなわち、A2AAとαアンタゴニストとの両方を投与すると、やはり、A2AAの効力がその単独使用の場合と比較して増強される。本実験において、用量0.1μgのクロニジンはプラゾシン不存在下には鎮痛作用を示さない。
【実施例4】
【0104】
αアゴニストとαアンタゴニストとを同一経路で投与することによる慢性痛の緩和
実施例1と同様の実験手順を用いる。ただし、クロニジン(様々な用量)および5-メチルウラピジル(クモ膜下、1μg)の両方を、50%DMSO賦形剤中、全体積5μlで併せてクモ膜下注射により投与する。結果は、αアンタゴニストを腹腔内注射した場合と実質的に同様である。すなわち、これら2つの剤を、処置効果を同じかまたは同様として、同時にまたは少し時間を置いて投与することができ、同じかまたは異なる投与経路で投与しうる。
【実施例5】
【0105】
αアゴニストおよびαアンタゴニストによる高眼圧の処置
正常眼圧IOP測定に対する薬物作用を評価するために、雄ニュージーランドウサギを用いる。ウサギの興奮を最少限にするよう、注意深く扱う。ウサギを持ち上げるときは首すじをつまみ、他方の手で後脚を支えるべきである。ウサギをケージから出したら、希Oph thetic(登録商標)(0.05%)局所麻酔剤約25μlを各眼に投与する。両眼の初期IOPを測定する。この時点で左右の眼のIOP差が3mmHgまたはそれ以上のウサギは除外する。
【0106】
両眼の時間0(T=0)での測定の直後に、各実験用ウサギのランダムに選択した試験眼である一方の眼の角膜に、酒石酸ブリモニジン0.1%(w/w)の眼用製剤を点眼する。非対照ウサギには、0.001%または0.003%(w/w)のプラゾシン-HClをも投与する。他方の眼には、薬物不含有の賦形剤を投与する。眼用製剤は、50ppmのPurite(登録商標)(安定化二酸化塩素)、0.5%のカルボキシメチルセルロース、0.6%(w/w)のホウ酸緩衝剤(pH7.7)および少量の塩(NaCl、KCl、CaCl2、MgCl2)を含有する。処置眼(一方の眼)および未処置眼(反対側の眼)の両方の眼圧を、7時間にわたり指定の間隔で測定する。測定および記録装置として、モデル30 Classic(登録商標)Pneumatonometerを使用して眼圧を測定する。これにより、眼圧(IOP)を圧平眼圧測定により非侵襲的に測定する。
【0107】
0.003%プラゾシン35μlを一方の眼に点眼する場合の眼圧測定結果を図4Aに示す。初期に未処置眼と比較して眼圧が少し低下し、その後眼圧が徐々に上昇することがわかる。αアゴニストの0.1%ブリモニジンを点眼する場合の結果を図4Bに示す。この場合、初めの30分以内に眼圧が明らかに上昇し、その後降下する。0.1%ブリモニジンおよび0.001%プラゾシンを併用点眼する場合も、図4Cに見られるように結果はあまり異ならない。しかし、0.1%ブリモニジンおよび0.003%プラゾシンをウサギ眼に点眼する場合は(図4D)、初期の眼圧上昇が極くわずかに過ぎず、このことは、αアンタゴニストを加えることで、ブリモニジン単独使用の場合に見られる眼圧上昇が軽減されることを示唆する。
特許請求の範囲は上記のおよび更なる本発明の態様に関する。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】野生型マウスにおいてスルプロストン誘発異痛モデルを用い、5−メチルウラピジルの併用投与を行った場合と行わなかった場合のクロニジンの鎮痛活性を示す。
【図2】詳細は上述したように実施した5−メチルウラピジルの併用投与を行った場合と行わなかった場合のクロニジンの鎮静作用の用量応答曲線である。この結果は、5−メチルウラピジルがクロニジンによる鎮静に影響しないことを示している。
【図3】野生型マウスにおいてスルプロストン誘発異痛モデルを用い、5−メチルウラピジルの併用投与を行った場合と行わなかった場合のアミトリプチリンの鎮痛活性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
痛みの治療または予防を、それを必要とする哺乳動物において行う方法であって、
a)αアドレナリン受容体活性を直接的または間接的に刺激する活性を有する化合物を含んで成る第1成分、および
b)αアドレナリン受容体アンタゴニストを含んで成る第2成分
を哺乳動物に併用投与することを含んで成り、あるレベルの鎮痛を提供するのに必要な第1成分の用量が、該第1成分を単独の鎮痛剤として同様の状態の哺乳動物に投与する場合よりも少ない方法。
【請求項2】
第1成分を、末梢投与または非末梢投与から成る群から選択する手段により投与する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1成分を、クモ膜下注射、クモ膜下ポンプ、皮下ポンプ、経皮パッチ、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、局所クリームもしくはゲル、または経口投与から成る群から選択する方法で投与する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1成分をクモ膜下投与する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1成分を硬膜外投与する請求項3に記載の方法。
【請求項6】
第1成分がαアドレナリン受容体アゴニストを含んで成る請求項1に記載の方法。
【請求項7】
α受容体アゴニストがα受容体汎アゴニストである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
αアドレナリン受容体アゴニストを、ブリモニジン、クロニジン、チザニジン、デクスメデトミジンおよびミバゼロールから成る群から選択する請求項6に記載の方法。
【請求項9】
αアドレナリン受容体アゴニストがブリモニジンである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
αアドレナリン受容体アゴニストがクロニジンである請求項8に記載の方法。
【請求項11】
αアドレナリン受容体アゴニストがチザニジンである請求項8に記載の方法。
【請求項12】
αアドレナリン受容体アゴニストがデクスメデトミジンである請求項8に記載の方法。
【請求項13】
αアドレナリン受容体アゴニストがミバゼロールである請求項8に記載の方法。
【請求項14】
第1成分が三環系抗うつ剤を含んで成る請求項1に記載の方法。
【請求項15】
第1成分がアミトリプチリンを含んで成る請求項14に記載の方法。
【請求項16】
αアドレナリン受容体アンタゴニストを、5−メチルウラピジル、ウラピジル、プラゾシン、テラゾシンおよびドキサゾシンから成る群から選択する請求項1に記載の方法。
【請求項17】
αアドレナリン受容体アンタゴニストが5−メチルウラピジルである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
αアドレナリン受容体アンタゴニストがウラピジルである請求項16に記載の方法。
【請求項19】
αアドレナリン受容体アンタゴニストがプラゾシンである請求項16に記載の方法。
【請求項20】
αアドレナリン受容体アンタゴニストがテラゾシンである請求項16に記載の方法。
【請求項21】
αアドレナリン受容体アンタゴニストがドキサゾシンである請求項16に記載の方法。
【請求項22】
第1および第2成分を同じ経路で投与する請求項1に記載の方法。
【請求項23】
第1および第2成分を経口投与する請求項6に記載の方法。
【請求項24】
第1および第2成分を中枢神経系に投与する請求項6に記載の方法。
【請求項25】
第1および第2成分をクモ膜下投与する請求項23に記載の方法。
【請求項26】
第1および第2成分を硬膜外投与する請求項23に記載の方法。
【請求項27】
第1および第2成分を異なる経路で投与する請求項1に記載の方法。
【請求項28】
投与経路の1つがクモ膜下である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
投与経路の1つが経口である請求項27に記載の方法。
【請求項30】
哺乳動物の痛みを治療または予防する方法であって、
1)αアドレナリン受容体の直接的または間接的活性化をもたらす活性を有する化合物を含んで成る第1成分、および
2)αアドレナリン受容体アンタゴニストを含んで成る第2成分
を併用投与することを含んで成り、該方法により最大鎮痛の半分をもたらすのに有効な用量の第1成分の投与により引き起こされる鎮静の程度が、該第1成分を第2成分の不存在下に最大鎮痛の半分をもたらすのに有効な用量で同様の状態の哺乳動物に投与する場合よりも小さい方法。
【請求項31】
第1成分を中枢神経系に直接投与する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
第1成分を、末梢投与または非末梢投与から成る群から選択する手段により投与する請求項30に記載の方法。
【請求項33】
第1成分を、クモ膜下注射、クモ膜下ポンプ、皮下ポンプ、皮膚パッチ、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、局所クリームもしくはゲル、または経口投与から成る群から選択する方法で投与する請求項32に記載の方法。
【請求項34】
第1成分をクモ膜下投与する請求項31に記載の方法。
【請求項35】
第1成分を硬膜外投与する請求項31に記載の方法。
【請求項36】
第1成分がαアドレナリン受容体アゴニストを含んで成る請求項30に記載の方法。
【請求項37】
第1成分がα受容体汎アゴニストを含んで成る請求項36に記載の方法。
【請求項38】
αアドレナリン受容体アゴニストを、ブリモニジン、クロニジン、チザニジン、デクスメデトミジンおよびミバゼロールから成る群から選択する請求項36に記載の方法。
【請求項39】
αアドレナリン受容体アゴニストがブリモニジンである請求項38に記載の方法。
【請求項40】
αアドレナリン受容体アゴニストがクロニジンである請求項38に記載の方法。
【請求項41】
αアドレナリン受容体アゴニストがチザニジンである請求項38に記載の方法。
【請求項42】
αアドレナリン受容体アゴニストがデクスメデトミジンである請求項38に記載の方法。
【請求項43】
αアドレナリン受容体アゴニストがミバゼロールである請求項38に記載の方法。
【請求項44】
第1成分が三環系抗うつ剤を含んで成る請求項28に記載の方法。
【請求項45】
第1成分がアミトリプチリンを含んで成る請求項40に記載の方法。
【請求項46】
αアドレナリン受容体アンタゴニストを、5−メチルウラピジル、ウラピジル、プラゾシン、テラゾシンおよびドキサゾシンから成る群から選択する請求項30に記載の方法。
【請求項47】
αアドレナリン受容体アンタゴニストが5−メチルウラピジルである請求項46に記載の方法。
【請求項48】
αアドレナリン受容体アンタゴニストがウラピジルである請求項46に記載の方法。
【請求項49】
αアドレナリン受容体アンタゴニストがプラゾシンである請求項46に記載の方法。
【請求項50】
αアドレナリン受容体アンタゴニストがテラゾシンである請求項46に記載の方法。
【請求項51】
αアドレナリン受容体アンタゴニストがドキサゾシンである請求項46に記載の方法。
【請求項52】
第1および第2成分を同じ経路で投与する請求項30に記載の方法。
【請求項53】
第1成分を、末梢投与および非末梢投与から成る群から選択する手段により投与する請求項52に記載の方法。
【請求項54】
第1および第2成分を経口投与する請求項53に記載の方法。
【請求項55】
第1および第2成分を中枢神経系に投与する請求項53に記載の方法。
【請求項56】
第1および第2成分をクモ膜下投与する請求項53に記載の方法。
【請求項57】
第1および第2成分を硬膜外投与する請求項55に記載の方法。
【請求項58】
第1および第2成分を異なる経路で投与する請求項30に記載の方法。
【請求項59】
投与経路の1つがクモ膜下である請求項58に記載の方法。
【請求項60】
投与経路の1つが経口である請求項58に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−505173(P2008−505173A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520292(P2007−520292)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/006817
【国際公開番号】WO2006/011915
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】