説明

痩身用組成物

【課題】 フコキサンチンによる白色細胞におけるUCP1の発現を相乗的に向上させ、高い痩身効果を発揮する痩身用組成物を提供する。
【解決手段】 成分(A)フコキサンチン、フコキサンチンを含有する褐藻類、特にマコンブ抽出物と、成分(B)ギムネマ及び/又はペパーミントを含有してなる痩身用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
痩身効果が相乗的に向上した痩身用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
日本人の食事は、近年著しく欧米化し、高カロリー化が進んでいる。特に、脂質の過剰摂取が現代の文明病とも言われている肥満を引き起こしている。また、肥満は、高脂血症、動脈硬化、糖尿病等、種々の疾病と密接に関連しているため社会問題の一つとなっている。また、近年の日本人の美意識に痩せたいという願望が極めて強くなってきている。
【0003】
フコキサンチンは、褐藻類、特にコンブに多く含まれるカロテノイドの一種である。このフコキサンチンが、通常は褐色脂肪細胞に特異的に存在するタンパク質であるサーモゲニン(Thermogenin;熱産生タンパク質)のUCP1(uncoupling protein 1)の発現を白色脂肪細胞において促すことで、脂肪組織における脂肪の燃焼を助けること(非特許文献1参照)、中性脂肪の吸収を調整すること(特許文献1参照)が知られており、痩身効果が期待される素材である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Maeda H,Hosokawa M,Sashima T,Funayama K.Miyashita K (2005)."Fucoxanthin from edible seaweed, Undaria pinnatifida, shows antiobesity effect thyough UCP1 expression in white adipose tissues.".Biochem Biophys Res Commun 332 (2):392-7.
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−231057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、化学合成や遺伝子組換などの手法によるフコキサンチンの生産が現在のところ不可能なため、供給源が褐藻のみであること、加えて褐藻中に含まれるフコキサンチン量は、多いものでも乾燥重量の0.1%程度であるため、フコキサンチンのみを有効量痩身用組成物に配合するのは困難な状況であった。そこで、本発明においては、フコキサンチンによる白色細胞におけるUCP1の発現を相乗的に向上させ、高い痩身効果を発揮する痩身用組成物を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第一の発明は、成分(A)フコキサンチンと、成分(B)ギムネマ及び/又はペパーミントを含有してなる痩身用組成物に関する。
【0008】
本願の第ニの発明は、成分(A)フコキサンチンを含有する褐藻類から選択される1種又は2種以上と、成分(B)ギムネマ及び/又はペパーミントを含有してなる痩身用組成物に関する。
【0009】
本願の第三の発明は、成分(A)フコキサンチンを含有するマコンブ抽出物と、成分(B)ギムネマ及び/又はペパーミントを含有してなる痩身用組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の痩身用組成物は、成分(A)フコキサンチン及びフコキサンチンを含有する褐藻類と、成分(B)ギムネマ及び/又はペパーミントを併用して用いることにより、フコキサンチンによる白色細胞におけるUCP1の発現が相乗的に向上し、高い痩身効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の痩身用組成物は、成分(A)フコキサンチン及びフコキサンチンを含有する褐藻類と、成分(B)ギムネマ及び/又はペパーミントを併用して用いる。これらの成分に関し、個々に説明する。
【0012】
本発明で用いるフコキサンチン(Fucoxanthin)は、下記化学式(1)で表されるカロテノイドの一つであり、褐藻やその他の不等毛藻に存在して茶色-オリーブ色を呈するとともに、葉緑体において光合成の補助色素として機能している。特に、褐藻類中のカロテノイドのほぼ100%がフコキサンチンであるといわれている。
【0013】
【化1】

【0014】
本発明においては、精製されたフコキサンチンを用いても、フコキサンチンを含有する褐藻若しくはその抽出物を用いても良い。
【0015】
フコキサンチンを含有する褐藻類としては、特に限定されないが、例えばモズク科(Spermatochnaceae)モズク(イトモズク,Nemacystus decipiens)、オキナワモズク(Cladosiphon okamuranus T.;Eudesme virescens J.AG.)、コンブ科(Laminariaceae)マコンブ(Laminaria japonica)、アラメ(Eisenia bicyclis)、チガイソ科(Alariaceae)ワカメ(Undaria pinnatifida)、ホンダワラ科(Sargassaceae)ホンダワラ(Sargassum fulvellum)、ヒジキ(Sargassum fusiforme)等が例示される。これらの中でもフコキサンチンの含有量の点からマコンブを用いることが最も好ましい。
【0016】
本発明において用いるギムネマは、ガガイモ科ホウライアオカズラ属に属する常緑のつる性植物で、熱帯地方を中心に25種ほどが分布する。本発明においては、ホウライアオカズラ属植物であれば特に限定されないが、原料の供給の面からギムネマシルベストリス(Gymnema sylvestris R.Br.)を用いることが好ましい。使用部位は、特に限定されないが、葉及び/又は茎を用いることが一般的である。
【0017】
本発明で用いるペパーミント(Mentha arvensis L. var. piperascens Malin.)は、シソ科(Labiatae)に属する多年草で、その同属植物である、セイヨウハッカ(Mentha piperita L.)、ミドリハッカ(Mentha viridis L.)を用いることもできる。ペパーミントは、葉,茎,花等各部位を用いることができるが、地上部の全体若しくは葉を用いることが好ましい。
【0018】
本発明の痩身用組成物において、上記の藻類、植物は、そのまま用いることもできるが、溶媒による抽出物を用いることもできる。抽出溶媒としては、水の他、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール、1、3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、エチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル類、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類などの溶媒を用いることができ、これらより1種又は2種以上を選択して用いる。また、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。さらに、水や二酸化炭素、エチレン、プロピレン、エタノール、メタノール、アンモニアなどの1種又は2種以上の超臨界流体や亜臨界流体を用いてもよい。また、オートクレーブなどを用いて、加圧下で抽出することも可能である。
【0019】
植物の上記溶媒による抽出物は、そのままでも使用することができるが、濃縮、乾固した物を水や極性溶媒に再度溶解して使用することもでき、これらの生理作用を損なわない範囲で脱色、脱臭、脱塩等の精製処理やカラムクロマトグラフィー等による分画処理を行った後に用いてもよい。植物の前記抽出物やその処理物及び分画物は、各処理及び分画後に凍結乾燥し、用時に溶媒に溶解して用いることもできる。
【0020】
本発明の痩身用組成物は、皮膚に外用、経口摂取等の手段で投与することが可能であり、化粧料、食品、飲料、あるいは医薬品などに応用することが可能である。
【実施例】
【0021】
さらに実施例により、本発明の特徴について詳細に説明する。まず、フコキサンチンとギムネマ、ペパーミントを併用した際のUCP1発現促進作用の評価について記載する。
【0022】
(試料)
1.フコキサンチン
オリザ油化株式会社製、商品名フコキサンチン−WSPC0.1を用いた。
2.ギムネマ抽出物
ギムネマシルベストリス(Gymnema sylvestris R.Br.)の茎を乾燥させて粉砕し、サンプル質量の50倍量の50容量%エタノール水溶液を加えて攪拌しながら3時間抽出した後、ろ過により不溶物を取り除いた。減圧濃縮後凍結乾燥を行って、ギムネマ抽出物を得た。得られたギムネマ抽出物を試料として用いた。
3.ペパーミント抽出物
丸善製薬社製ペパーミント抽出液LAを用いた。
【0023】
UCP1発現促進作用評価
(1)ヒト白色脂肪細胞の培養とcDNAの調製
皮下脂肪由来正常ヒト前駆脂肪細胞を1ウェル当り1.0×104個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地にはPGM培地(10%FBS,2mM L−glutamine,100units/mL Penicilline,100μg/mL Streptomycine含有)を用いた。24時間培養後、表1に示した濃度に調整した試料を添加したPGM分化用培地(10μg/mLインシュリン,1μM Dexamethasone,200μM Indomethacin,500μ MIsobutylmethylxanthine含有)に交換し、脂肪細胞への分化誘導を行った。分化誘導開始後、コントロール群が成熟して細胞内に多数の脂肪滴が蓄積されるまで、14日間培養した。さらに、適当な濃度のサンプル(50μL/well)を培地へ添加し、24時間培養した。mRNAの抽出及びcDNA合成にはSuperScriptIII cell direct cDNA Synthesis System(Invitrogen社製キット)を使用した。
(2)UCP1mRNA発現量の測定
上記(1)で得られたcDNAをテンプレートとし、real−time PCR法によりUCP1のmRNA発現量を測定した。評価機器としてApplied Biosystems 7900HT Fast リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems Japan社製)を用いた。試薬にはSYBR(登録商標)Premix Ex Taq II(タカラバイオ社製)を、UCP1センス側プライマー5’−ACTTGGTGTCGGCTCTTATCG−3’及びアンチセンス側プライマー5’−AGGATCCAAGTCGCAAGAAGG−3’若しくはGAPDHのセンス側プライマー5’−CCACTCCTCCACCTTTGACG−3’及びアンチセンス側プライマー5’−CACCCTGTTGCTGTAGCCAA−3’を用いた。UPC1の測定値をGAPDHの測定値で補正し、試料未添加の場合の値をコントロールとして試料添加によるUCP1の発現量を相対比較した。
【0024】
【表1】

【0025】
表1に示したとおり、フコキサンチンと、ギムネマ抽出物若しくはペパーミント抽出物を併用することにより、それぞれを単独で用いたときと比較して、相乗的なUCP1発現量の向上が認められた。
【0026】
続いて、上述のフコキサンチンと、ギムネマ抽出物若しくはペパーミント抽出物を併用した皮膚外用剤と食品の処方例を示す。
【0027】
[処方例1]乳液
(1)スクワラン 10.0(重量%)
(2)メチルフェニルポリシロキサン 4.0
(3)水素添加パーム核油 0.5
(4)水素添加大豆リン脂質 0.1
(5)モノステアリン酸ポリオキシエチレン
ソルビタン(20E.O.) 1.3
(6)モノステアリン酸ソルビタン 1.0
(7)グリセリン 4.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)カルボキシビニルポリマー 0.15
(10)精製水 57.85
(11)アルギニン(1重量%水溶液) 20.0
(12)フコキサンチン 0.5
(13)ギムネマ抽出物 0.5
製法:(1)〜(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)〜(10)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。乳化終了後、冷却を開始し、(11)〜(13)を順次加え、均一に混合する。
【0028】
[処方例2]化粧水
(1)エタノール 15.0(重量%)
(2)ポリオキシエチレン(40E.O.)硬化ヒマシ油 0.3
(3)香料 0.1
(4)精製水 82.38
(5)クエン酸 0.02
(6)クエン酸ナトリウム 0.1
(7)グリセリン 1.0
(8)ヒドロキシエチルセルロース 0.1
(9)フコキサンチン 0.5
(10)ペパーミント抽出物 0.5
製法:(1)に(2)及び(3)を溶解する。溶解後、(4)〜(8)を順次添加した後、十分に攪拌し、(9)、(10)を加え、均一に混合する。
【0029】
[処方例3]クリーム
(1)スクワラン 10.0(重量%)
(2)ステアリン酸 2.0
(3)水素添加パーム核油 0.5
(4)水素添加大豆リン脂質 0.1
(5)セタノール 3.6
(6)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(7)グリセリン 10.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)アルギニン(20重量%水溶液) 15.0
(10)精製水 40.7
(11)カルボキシビニルポリマー(1重量%水溶液) 15.0
(12)フコキサンチン 0.4
(13)ペパーミント抽出物 0.3
(14)ギムネマ抽出物 0.3
製法:(1)〜(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)〜(10)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。乳化終了後、(11)を加え、冷却を開始し、40℃にて(12)〜(14)を加え、均一に混合する。
【0030】
[処方例4]水性ジェル
(1)カルボキシビニルポリマー 0.5(重量%)
(2)精製水 86.7
(3)水酸化ナトリウム(10重量%水溶液) 0.5
(4)エタノール 10.0
(5)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(6)香料 0.1
(7)フコキサンチン 0.4
(8)ペパーミント抽出物 0.3
(9)ギムネマ抽出物 0.3
(10)ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油 0.1
製法:(1)を(2)に加え、均一に攪拌した後、(3)を加える。均一に攪拌した後、(4)に予め溶解した(5)を加える。均一に攪拌した後、予め混合しておいた(6)〜(10)を加え、均一に攪拌混合する。
【0031】
[処方例5]温感ジェル
(1)グリセリン 97.8(質量%)
(2)カルボキシビニルポリマー 0.5
(3)精製水 0.5
(4)香料 0.1
(5)ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油 0.1
(7)フコキサンチン 0.4
(8)ペパーミント抽出物 0.3
(9)ギムネマ抽出物 0.3
製法:全成分を均一に混合攪拌する。
【0032】
[処方例6]パック
(1)精製水 62.9(重量%)
(2)ポリビニルアルコール 12.0
(3)エタノール 17.0
(4)グリセリン 5.0
(5)ポリエチレングリコール(平均分子量1000) 2.0
(6)フコキサンチン 0.4
(7)ペパーミント抽出物 0.3
(8)ギムネマ抽出物 0.3
(9)香料 0.1
製法:(2)と(3)を混合し、80℃に加温した後、80℃に加温した(1)に溶解する。均一に溶解した後、(4)と(5)を加え、攪拌しながら冷却を開始する。40℃まで冷却し、(6)〜(9)を加え、均一に混合する。
【0033】
[処方例7]錠剤
(1)フコキサンチン 40.0(質量部)
(2)ペパーミント抽出物 30.0
(3)ギムネマ抽出物 30.0
(4)トウモロコシデンプン 15.0
(5)グリセリン脂肪酸エステル 12.0
(6)香料 12.0
製法:(1)〜(6)を混合し、常法により打錠して、全量が600mgの錠剤を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)フコキサンチンと、成分(B)ギムネマ及び/又はペパーミントを含有してなる痩身用組成物。
【請求項2】
成分(A)がフコキサンチンを含有する褐藻類から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の痩身用組成物。
【請求項3】
成分(A)がフコキサンチンを含有するマコンブ抽出物である、請求項1に記載の痩身用組成物。

【公開番号】特開2011−148741(P2011−148741A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12156(P2010−12156)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000135324)株式会社ノエビア (258)
【Fターム(参考)】