説明

発光性製品及びその製造方法

【課題】蓄光材の使用量を抑えつつ、発光輝度を高くする。
【解決手段】粒状の蓄光材料の層に、加熱により溶融した熱可塑性の透明ウレタン材を流し込み、透明ウレタン材に蓄光材料を混ぜることにより、透明ウレタン材に対する蓄光材料の配合傾斜を厚みd方向に設けた。これにより、蓄光体本体2において、蓄光材が多く配合された蓄光材リッチ層3と、蓄光材が少なく配合され透明ウレタン材が多く配合された透明ウレタンリッチ層4とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光性製品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地下鉄駅やデパート等の非常口を表示するものとして、蛍光灯等を使った案内表示板が用いられている。
【0003】
このような案内表示板は、文字情報に対して背面から蛍光灯を照らすことによって、蛍光灯の光が文字情報を透過することで、案内表示機能を発揮している。
【0004】
なお、関連する従来例が開示された文献としては、特許文献1がある。
【特許文献1】特許第3295229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、災害や火事、テロ等の非常事態においては電力も遮断される可能性がある。その場合は、蛍光灯は点灯せず、非常口表示や避難方向表示等は一般者(通行人、避難者、被災者)へ知らせることができない状態となる。
【0006】
そこで、光を蓄えることができる蓄光材を用いて案内表示板を製作することが考えられる。
【0007】
蓄光材を用いた製品は、一般的に、蓄光材の混合量が少ないと発光輝度が低く視認性の悪いものとなってしまうため、蓄光材の混合量を多くして製作することが必要とされる。
【0008】
しかし、蓄光材の量を多くするために配合比率を増やそうとすると、製品の母材となる透明樹脂材の分子結合が弱くなってしまい、脆い製品(脆い材料)となって(製品の)形状を保つことが困難となってしまう。
【0009】
また、蓄光材料は高額のため、蓄光材の量を多くする程、製品の高額化を招くこととなってしまう。
【0010】
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、蓄光材の使用量を抑えつつ、発光輝度を高くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
粒状の蓄光材の層に、加熱により溶融した熱可塑性の透明樹脂材が流し込まれ、前記透明樹脂材に前記蓄光材が混じることにより構成されるシート状の発光性製品であって、
前記透明樹脂材に対して前記蓄光材の配合傾斜が厚さ方向に設けられた(つけられた)ことを特徴とする。
【0012】
このように、シート状の発光性製品の厚さ方向に蓄光材の配合傾斜をつけることで、蓄光材の濃度が濃い領域(層)と薄い領域(層)とが構成される。そして、蓄光材の濃度が濃い領域の発光輝度は、従来のような、蓄光材の配合傾斜がついていない場合よりも高くなる。すなわち、上記のように構成することにより、蓄光材の使用量を抑えつつ、発光輝度を高くすることが可能となる。
【0013】
また、上記記載の発光性製品を多層に重ねて設けてもよい。
【0014】
このように構成することにより、蓄光材の濃度が濃い領域が磨耗により磨り減ってしまっても、下地(製品の内側)に蓄光材の濃度が濃い領域がさらに(別に)設けられているため、発光性能を高く維持することができる。
【0015】
ここで、発光性製品を多層に重ねる場合には、配合傾斜の向きを合わせた状態で重ね合わせるとよい。
【0016】
また、上記記載の発光性製品の厚さ方向に略直交する端面に、透明樹脂材により構成される保護層を設けてもよい。
【0017】
このように構成することにより、発光性製品の耐磨耗性、耐久性を向上することができる。
【0018】
ここで、保護層は、発光性製品の厚さ方向に略直交する端面のうち、前記蓄光材の濃度が濃い側の端面に設けるとよい。
【0019】
また、発光面側に表示用のマーキング層を備えるとよい。
【0020】
これにより、発光性製品を非常時等の表示用として適用することができる。
【0021】
本発明に係る発光性製品の製造方法にあっては、
粒状の蓄光材の層を形成する第1工程と、
前記第1工程により形成された前記蓄光材の層に、加熱により溶融した熱可塑性の透明樹脂材を流し込み、前記透明樹脂材に対して前記蓄光材の配合傾斜が厚さ方向に設けられたシート状の配合傾斜層を得る第2工程と、
を含むことを特徴とする。
【0022】
このように、シート状の配合傾斜層(発光性製品)の厚さ方向に蓄光材の配合傾斜をつけることで、蓄光材の濃度が濃い領域(層)と薄い領域(層)とを形成することができる。蓄光材の濃度が濃い領域の発光輝度は、従来のような、蓄光材の配合傾斜がついていない場合よりも高くなる。すなわち、上記のような製造方法により、蓄光材の使用量を抑えつつ、発光輝度を高くすることが可能となる。
【0023】
また、シート状に形成されたシート状透明樹脂層の上で、前記第1工程及び前記第2工程を行う(蓄光材の層を形成した後、加熱により溶融した熱可塑性の透明樹脂材を流し込む)ことにより、
前記シート状透明樹脂層に、前記配合傾斜層を積層するとよい。
【0024】
これにより、シート状透明樹脂層で配合傾斜層を保護することができる。したがって、発光性製品の耐磨耗性、耐久性を向上することができる。
【0025】
また、前記第2工程で得られた前記配合傾斜層の上で、前記第1工程及び前記第2工程を再度行う(蓄光材の層を形成した後、加熱により溶融した熱可塑性の透明樹脂材を流し込む)ことにより、
前記配合傾斜層を多層に重ねて成形するとよい。
【0026】
これにより、製品の内側に蓄光材の濃度が濃い領域をさらに(別に)設けることができ
るので、発光性製品の発光性能を高く維持することができる。(例えば、発光性製品のうち蓄光材の濃度が濃い領域が磨耗により磨り減ってしまった場合でも、製品の内側の蓄光材の濃度が濃い領域が発光性能を発揮する。)
なお、前記工程は連続シート成型法により行われるとよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、蓄光材の使用量を抑えつつ、発光輝度を高くすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0029】
図1は、本発明の実施例1に係る発光性製品としての蓄光表示案内板1を示す概略断面図である。
【0030】
本実施例の蓄光表示案内板1は、図1に示すように、蓄光体本体(配合傾斜層)2と、文字表示層(マーキング層)5とにより構成されている。
【0031】
図2は、蓄光体本体2を示す概略断面図である。図3は、蓄光体本体2の厚みd方向における、透明樹脂材成分と蓄光材成分との配合量をそれぞれ示す図である。なお、本実施例の透明樹脂材としては、柔軟性と材料強度を持たせるため、難黄変透明ポリウレタン材(以下、透明ウレタン材という)を用いている。
【0032】
本実施例の蓄光体本体2は、図3に示すように、厚みd方向において、透明ウレタン材成分と蓄光材成分との配合(混合)比率に傾斜分布をつけて構成されている。
【0033】
すなわち、蓄光体本体2においては、図2に示すように、表面6側には、蓄光材が多く配合された蓄光材リッチ層3が設けられ、表面6とは反対側の反対面7側には、蓄光材が少なく配合され透明ウレタン材が多く配合された透明ウレタンリッチ層4が設けられている。
【0034】
このように蓄光材リッチ層3を設けることにより蓄光機能を高めることができるとともに、透明ウレタンリッチ層4を設けることにより、素材(透明ウレタン材)の強度を保つことが可能となる。
【0035】
文字表示層5は、図1に示すような「非常口」や、「避難口」,「消火器」等を表示するためのものであり、蓄光体本体2の表面6に設けられることにより、蓄光体本体2の発光によって文字を表示する。
【0036】
以下、本実施例の蓄光表示案内板1の製造方法について具体的に説明する。
【0037】
図4は、蓄光表示案内板1の製造装置10を示す概略図である。図5(a),(b)はそれぞれ、図4のA−A断面の一実施形態を示す概略図である。
【0038】
図4に示す製造装置10は、連続シート成型法により蓄光表示案内板1を製造する装置である。
【0039】
粒状の蓄光材料11は、蓄光材収容部12内に収容されており、蓄光材収容部12からスチールベルト13上に散布される。スチールベルト13は、ローラ17,18によって張架され、ローラ17が図4に示す矢印B方向に回転することにより、スチールベルト13は図4に示す矢印C方向に回転する。
【0040】
スチールベルト13上に散布された蓄光材料11は、スクレーパー14によって掻き取られ、スチールベルト13上に薄い層をなして下流側に搬送される(第1工程)。ここで、図5(a),(b)ではそれぞれ、スチールベルト13上に蓄光材料11の薄い層を形成させる方法の一例を示している。
【0041】
図5(a)では、スチールベルト13上に凹部(窪み)13aを設けた場合について示している。図に示すように、スクレーパー14をスチールベルト13に当接させることにより、凹部13aとスクレーパー14との間の空間で蓄光材料11の厚み(高さ)や量を規制することができるので、蓄光材料11の薄層をスチールベルト13上に形成させることができる。
【0042】
図5(b)では、スクレーパー14に凹部(窪み)14aを設けた場合について示している。図に示すように、スクレーパー14をスチールベルト13に当接させることにより、スチールベルト13と凹部14aとの間の空間で蓄光材料11の厚み(高さ)や量を規制することができるので、蓄光材料11の薄層をスチールベルト13上に形成させることができる。
【0043】
このような方法を適用することにより、スチールベルト13上から蓄光材料11がこぼれてしまうようなことなく、所定の厚さ(高さ)を持った蓄光材料11の均一な薄層をスチールベルト13上により確実に形成することができる。
【0044】
透明ウレタン材15は、ウレタン加熱部16に収容されており、ウレタン加熱部16内で加熱され溶融した状態で、ウレタン加熱部16からスチールベルト13上に吐出される(流し込まれる)。
【0045】
ここで、透明ウレタン材15がウレタン加熱部16からスチールベルト13上に吐出される位置は、スチールベルト13上の蓄光材料11がスクレーパー14によって掻き取られる位置よりも下流側に設けられている。
【0046】
すなわち、透明ウレタン材15は溶融した状態で、蓄光材料11の薄い層が形成されたスチールベルト13上に吐出されることにより、スチールベルト13近傍における透明ウレタン材15と蓄光材料11とが混ざり合うこととなる。これにより、スチールベルト13上に流し込まれた透明ウレタン材15においては、スチールベルト13近傍では蓄光材料11の濃度が濃く、スチールベルト13から離れる程、蓄光材料11の濃度が薄い状態となる(配合傾斜層が得られる;第2工程)。
【0047】
また、透明ウレタン材15がウレタン加熱部16からスチールベルト13上に吐出される位置よりも下流側には、ローラ21,22,23,24により張架されたスチールベルト20がスチールベルト13に圧接するように設けられている。ここで、スチールベルト20は、ローラ21が図4に示すD方向に回転することにより、E方向に回転することとなる。
【0048】
ローラ17の外周に位置するスチールベルト13とスチールベルト20とは、ローラ17がローラ21,22間に配置され、ローラ17がスチールベルト20に食い込むように設けられることによって、圧接状態となっている。
【0049】
透明ウレタン材15と蓄光材料11とが混ざり合った混合物19は、スチールベルト13とスチールベルト20との間を搬送されることにより、スチールベルト13上で所定の厚さ(約1〜10mm)に成形される。
【0050】
そして、スチールベルト13上で所定の厚さに成形された混合物19は、分離部25でスチールベルト13から分離されることにより、連続したシート状の混合物19が形成される。
【0051】
その後、連続したシート状の混合物19が、所定の幅に分離(分割、切断)されることにより、蓄光体本体2が得られる。
【0052】
なお、連続したシート状の混合物19は、曲面成型によるもの、すなわち、ローラ17の外周に位置するスチールベルト13と、スチールベルト20との間で成形されるため、略曲面状となってしまうことが懸念される。
【0053】
この場合には、連続したシート状の混合物19を成型した後、又は、連続したシート状の混合物19が所定の幅に分離されることにより蓄光体本体2が得られた後で、平面状とする工程を設けるとよい。平面状とする工程は特に限定されるものではない。連続したシート状の混合物19(又は蓄光体本体2)の厚さは1〜10mm程度であるため、成型後であっても混合物19(又は蓄光体本体2)を平面状とすることは容易である。
【0054】
図6は、蓄光体本体2と文字表示層5とにより構成される蓄光表示案内板1を示す概略図である。
【0055】
本実施例においては、図6に示すように、上述したように形成された蓄光体本体2の表面6(発光面)側に、接着材により文字表示層5を貼り合わせることにより、本実施例に係る蓄光表示案内板1を形成する。
【0056】
以上説明したように、本実施例に係る蓄光表示案内板1は、発光現象を利用する(発光機能を有する)ため、夜間や災害等で電力供給が遮断されても、発光表示が可能である。特に、地下鉄駅のホーム、オフィスビルやデパート等の床面に貼ることにより、災害や火災、テロ等が発生した場合の非常口誘導案内板として非常に有効となる。
【0057】
蓄光表示案内板1を床面に設けた場合、蛍光灯による蓄光が垂直受光となるため、より効率良く蓄光され、また、災害等の避難時において、人(避難者)は、床面を這い蹲りながら避難することとなるため、一般的な壁掛け式の非常口誘導灯等よりも、より効果的である。
【0058】
ここで、従来の蓄光製品の場合には、蓄光材は内部に均一に分散していた。さらに蓄光材料は高額なので、製品の高額化を抑えるために蓄光材の使用量を抑える傾向にあった。そのため所望の発光輝度が得られなかった。
【0059】
本実施例によれば、内部に均一に分散させていた蓄光材を、表面側に集め、配合比率に傾斜分布をつけて構成しているので、蓄光材の使用量を抑えながら、従来よりも発光輝度の高い製品を提供することが可能となる。
【0060】
これにより、防災製品等においても好適に適用することが可能となる。
【実施例2】
【0061】
図7は、本発明の実施例2に係る発光性製品としての蓄光表示案内板50を構成する蓄光体本体(配合傾斜層)51を示す概略断面図である。なお、上述した実施例1と同様の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0062】
本実施例の蓄光体本体51は、図7に示すように、保護層としての第1層52と、第2層53との2つの層から構成される。
【0063】
第1層52は、透明樹脂材(透明ウレタン材)により構成される、シート状透明樹脂層としての透明ウレタン層である。
【0064】
第2層53は、実施例1で説明した蓄光体本体2のように、厚みd方向に透明ウレタン材と蓄光材との配合(混合)比率に傾斜分布をつけて構成されている。
【0065】
すなわち、第2層53においては、図7に示すように、蓄光材が多く配合された蓄光材リッチ層54が表面56側に設けられ、蓄光材が少なく配合され樹脂材が多く配合された透明ウレタンリッチ層55が表面56とは反対側の反対面57側に設けられている。
【0066】
このように蓄光材リッチ層54を設けることにより蓄光機能を高めることができ、透明ウレタンリッチ層55を設けることにより、素材(透明ウレタン材)の強度を保つことが可能となる。
【0067】
本実施例においては、第2層53の表面56側に第1層52を設けることにより、蓄光体本体51を構成している。
【0068】
第2層53の表面56側は樹脂材が少なくなっているため樹脂特性(耐磨耗性等)を発揮することができず、第2層53の表面56側に第1層52が設けられていない場合には、第2層53の表面56が歩行者に踏まれること等に起因して、蓄光材が取れてしまうことが懸念される。
【0069】
本実施例に係る蓄光表示案内板50では、第2層53の表面56側に第1層52が設けられているため、耐磨耗性をより向上させることが可能となる。すなわち、歩行者に踏まれるようなことがあっても、蓄光材が取れてしまうようなことはない。
【0070】
以下、蓄光表示案内板50の製造方法について具体的に説明する。
【0071】
図8は、蓄光表示案内板50の製造装置60を示す概略図である。図9は、図8のF−F断面の一実施形態を示す概略図である。
【0072】
実施例1で説明した製造装置10においては、蓄光材料11をスチールベルト13上に散布することにより、連続したシート状の混合物19をスチールベルト13上で形成するものであった。
【0073】
これに対して本実施例の製造装置60においては、予めシート状(フィルム状)の透明ウレタン層(透明樹脂層;例えばPU(ポリウレタン)フィルム)61を事前成形し、この透明ウレタン層61の上で、蓄光材料11と透明ウレタン材15とを混合させている。
【0074】
図8に示す製造装置60においては、図3に示した製造装置10のスチールベルト13の部分を透明ウレタン層61に置き換えて構成させたものである。
【0075】
そして、実施例1で説明したように、透明ウレタン層61上に対して、蓄光材料11が
散布され透明ウレタン材15が流し込まれた後、ローラ17の外周に位置する透明ウレタン層61とスチールベルト20との間を搬送されることにより、透明ウレタン層61(第1層52に相当)に、透明ウレタン材15と蓄光材料11とが混ざり合った混合層(第2層53に相当)が溶着されることとなる。
【0076】
これにより、連続したシート状の混合物62が得られる。その後、連続したシート状の混合物62が、所定の幅に分離(分割、切断)されることにより、
第1層52と、第1層52側に蓄光材リッチ層54が成形された第2層53とを有する蓄光体本体51が得られる。
【0077】
本実施例においては、図9に示すように、実施例1で説明した図5(b)に示すスクレーパー14と同様のものを適用することにより、透明ウレタン層61上に薄層の蓄光材料11を形成させている。
【0078】
図10は、蓄光体本体51と文字表示層5とにより構成される蓄光表示案内板50を示す概略図である。
【0079】
本実施例においては、図10に示すように、上述のように形成された蓄光体本体51の第1層52に、接着材により文字表示層5を貼り合わせることにより蓄光表示案内板50を得る。
【0080】
本実施例においては、上述した実施例1の効果に加えてさらに、蓄光表示案内板の耐磨耗性をより向上させる効果を得ることができる。
【0081】
なお、本実施例においては、透明ウレタン層61を事前成形し、この透明ウレタン層61の上で、蓄光材料11と透明ウレタン材15とを混合させるものであったが、透明ウレタン層61に替えて、実施例1の製造装置10により成形された、連続したシート状の混合物19を適用してもよい。
【0082】
この場合、連続したシート状の混合物19の上で、上述したように蓄光材料11と透明ウレタン材15とを混合させることにより、図2に示す蓄光体本体2が2層に重なった蓄光体を得ることができる。これに文字表示層5を貼り合わせて得られる蓄光表示案内板は、表面側の蓄光材リッチ層3に加えて、蓄光表示案内板の内側(内部、反対面側)にも、別の蓄光材リッチ層3を有することとなる。
【0083】
このため、例えば、表面側の蓄光材リッチ層3が磨耗により磨り減ってしまうような場合であっても、内側の別の蓄光材リッチ層3が発光機能を発揮することができる。すなわち、上述した実施例1の効果に加えてさらに、蓄光表示案内板の発光性能を高く維持することができる。
【0084】
なお、上記の工程を繰り返すことにより、蓄光体本体2が多層に重なった蓄光体を得ることができる。ここで、蓄光体本体2を多層に重ねる場合、それぞれの配合傾斜を合わせる(例えば、それぞれの蓄光体本体2の中で蓄光材リッチ層3が表面側に位置するようにする)ことが好ましいが、これに限るものではない。
【0085】
さらに、本実施例で説明した、図7で示す蓄光体本体51の上、すなわち、蓄光体本体51のうちの透明ウレタンリッチ層55の上で、蓄光材料11と透明ウレタン材15とを混合させてもよい。
【0086】
これにより、上述した蓄光体本体2が多層に重なった蓄光体に、さらに保護層を設ける
ことができる。すなわち、上述した実施例1の効果に加えてさらに、蓄光表示案内板の発光性能を高く維持することができ、かつ、蓄光表示案内板の耐磨耗性をより向上させることができる。
【実施例3】
【0087】
上述した実施例1,2において、蓄光材料11の薄層に透明ウレタン材15を流し込む際、蓄光材料11の量が多すぎる場合には、透明ウレタン材15が蓄光材料11の薄層に入り込まず(隣り合う蓄光材料11同士の隙間に透明ウレタン材15が入り込まず)、蓄光材料11が透明ウレタン材15に払い除けられてしまうことが懸念される。また、このような場合には、製造時において蓄光材料11の量の管理が困難となる。
【0088】
そこで、本発明の実施例3においては、蓄光材料11が散布される部材70(実施例1のスチールベルト13に相当、実施例2の透明ウレタン層61に相当)の長手方向(搬送方向)に筋目(四角溝やV溝等)を入れて、この筋目の間に蓄光材料11を散布するようにしている。
【0089】
図11は、本実施例において、蓄光材収容部12から蓄光材料11が散布される部材70(実施例1のスチールベルト13に相当、実施例2の透明ウレタン層61に相当)を示す図である。そして、部材70の長手方向に四角溝を設けた場合を図11(a)に示し、V溝を設けた場合を図11(b)に示している。なお、上述した実施例1,2と同様の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0090】
蓄光材収容部12から散布された蓄光材料11は、部材70において図11(a),(b)に示すように、筋目を入れることにより形成された凹部(蓄光材料収容部)71内に収容される。この状態で、透明ウレタン材15が流し込まれても、透明ウレタン材15は、凹部71内に充填される前に、凹部71間の凸部72に接触することとなる。したがって、透明ウレタン材15が凹部71内の蓄光材料11を凹部71外に排出して(押し出して)、凹部71内が透明ウレタン材15で充填されるようなことはない。すなわち、蓄光材料11は凹部71内に留まることができ、透明ウレタン材15は蓄光材料11の層に入り込む(隣り合う蓄光材料11同士の隙間に透明ウレタン材15が入り込む)ことができる。
【0091】
また、蓄光材料11の量が多すぎる場合であっても、蓄光材料11が透明ウレタン材15に払い除けられてしまうようなことはなく、透明ウレタン材15は蓄光材料11の層に入り込むことができる。
【0092】
上述したように、本実施例によれば、蓄光材料11を透明ウレタン材15に、より良好に混合させることができるので、製造時において蓄光材料11の量の管理が容易にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は本発明の実施例1に係る発光性製品を示す概略断面図である。
【図2】図2は本発明の実施例1の蓄光体本体を示す概略断面図である。
【図3】図3は本発明の実施例1の蓄光体本体の厚みd方向における、透明ウレタン材成分と蓄光材成分との配合量をそれぞれ示す図である。
【図4】図4は本発明の実施例1に係る発光性製品の製造装置を示す概略図である。
【図5】図5(a),(b)はそれぞれ、図4のA−A断面の一実施形態を示す概略図である。
【図6】図6は本発明の実施例1の蓄光体本体と文字表示層とにより構成される発光性製品を示す概略図である。
【図7】図7は本発明の実施例2に係る発光性製品を構成する蓄光体本体を示す概略断面図である。
【図8】図8は本発明の実施例2に係る発光性製品の製造装置を示す概略図である。
【図9】図9は、図8のF−F断面の一実施形態を示す概略図である。
【図10】図10は本発明の実施例2の蓄光体本体と文字表示層とにより構成される発光性製品を示す概略図である。
【図11】図11は本発明の実施例3において、蓄光材収容部から蓄光材料が散布される部材を示す図である。
【符号の説明】
【0094】
1,50 蓄光表示案内板
2,51 蓄光体本体
3 蓄光材リッチ層
4 透明ウレタンリッチ層
5 文字表示層
6 表面
7 反対面
10,60 製造装置
11 蓄光材料
12 蓄光材収容部
13,20 スチールベルト
13a 凹部
14 スクレーパー
14a 凹部
15 透明ウレタン材
16 ウレタン加熱部
17,18,21,22,23,24 ローラ
19 混合物
25 分離部
52 第1層
53 第2層
54 蓄光材リッチ層
55 透明ウレタンリッチ層
56 表面
57 反対面
61 透明ウレタン層
62 混合物
70 部材
71 凹部
72 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の蓄光材の層に、加熱により溶融した熱可塑性の透明樹脂材が流し込まれ、前記透明樹脂材に前記蓄光材が混じることにより構成されるシート状の発光性製品であって、
前記透明樹脂材に対して前記蓄光材の配合傾斜が厚さ方向に設けられたことを特徴とする発光性製品。
【請求項2】
請求項1に記載の発光性製品を多層に重ねて設けたことを特徴とする発光性製品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発光性製品の厚さ方向に略直交する端面に、透明樹脂材により構成される保護層を設けたことを特徴とする発光性製品。
【請求項4】
発光面側に表示用のマーキング層を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発光性製品。
【請求項5】
粒状の蓄光材の層を形成する第1工程と、
前記第1工程により形成された前記蓄光材の層に、加熱により溶融した熱可塑性の透明樹脂材を流し込み、前記透明樹脂材に対して前記蓄光材の配合傾斜が厚さ方向に設けられたシート状の配合傾斜層を得る第2工程と、
を含むことを特徴とする発光性製品の製造方法。
【請求項6】
シート状に形成されたシート状透明樹脂層の上で、前記第1工程及び前記第2工程を行うことにより、
前記シート状透明樹脂層に、前記配合傾斜層を積層することを特徴とする請求項5に記載の発光性製品の製造方法。
【請求項7】
前記第2工程で得られた前記配合傾斜層の上で、前記第1工程及び前記第2工程を再度行うことにより、
前記配合傾斜層を多層に重ねて成形することを特徴とする請求項5又は6に記載の発光性製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−160891(P2007−160891A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363883(P2005−363883)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】