説明

発光素子基板、露光装置、及び画像形成装置

【課題】発光領域の占有面積を制限しながら被露光面での光量の増加を図ることができる発光素子基板と、この発光素子基板を用いた露光装置及び画像形成装置と、を提供する。
【解決手段】複数の発光素子が第1の方向に並ぶように配列されると共に、第1の方向と交差する第2の方向に2列に分けて配列されて、基板上に配置された発光素子基板であって、複数の発光素子の各々は、角度θの頂角を有する五角形の発光領域を備え、頂角に対向する一辺が第1の方向に沿った第1の直線上に重なり且つ頂角が他方の列側を向くように、複数の発光素子が予め定めた間隔で配列された第1の発光素子列と、頂角に対向する一辺が第1の方向に沿った第2の直線上に重なり且つ頂角が他方の列側を向くと共に、頂角が第1の発光素子列の隣接する2個の発光素子の間に対向するように、複数の発光素子が予め定めた間隔で配列された第2の発光素子列と、を備えた発光素子基板とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子基板、露光装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光源基板上に(千鳥状に)配列された複数の発光素子と、透過する光を回折させることにより当該光の光線束を収束させて像を結ぶ複数の回折正レンズを有する第1レンズアレイと、複数のレンズを有し、前記複数の発光素子の各々との間に前記第1レンズアレイを挟む第2レンズアレイとを備え、前記複数の回折正レンズの各々は、前記光源基板に垂直な方向において前記複数の発光素子の各々に重なっていることを特徴とする露光装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、2列に配列された複数の発光素子アレイと、2列に配列され前記各発光素子アレイと1対1に対応する複数個のレンズとから成り、前記各発光素子アレイの発光素子の光を前記レンズを介して感光体面に照射させることによって感光体に潜像を形成する露光装置であって、前記少なくとも一方の列を構成する各レンズの光軸が2列の発光素子アレイの列間に位置していると共に、前記一方の列を構成する各発光素子アレイ間に他方の列を構成する発光素子アレイが配置されていることを特徴とする露光装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−237576号公報
【特許文献2】特開平10−211731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、発光領域の占有面積を制限しながら、被露光面での光量の増加を図ることができる発光素子基板と、この発光素子基板を用いた露光装置及び画像形成装置と、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、複数の発光素子が第1の方向に並ぶように配列されると共に、前記第1の方向と交差する第2の方向に2列に分けて配列されて、基板上に配置された発光素子基板であって、前記複数の発光素子の各々は、角度θの頂角、前記頂角に対向する一辺、前記一辺と直角を成し且つ前記一辺に隣接する二辺、及び前記二辺の各々に隣接し且つ前記頂角を成す二辺で構成された五角形の発光領域、又は前記五角形の各頂角の少なくとも1つが面取りされた形状の発光領域を備え、前記頂角に対向する一辺が前記第1の方向に沿った第1の直線上に重なり且つ前記頂角が他方の列側を向くように、複数の発光素子が予め定めた間隔で配列された第1の発光素子列と、前記頂角に対向する一辺が前記第1の方向に沿った第2の直線上に重なり且つ前記頂角が他方の列側を向くと共に、前記頂角が前記第1の発光素子列の隣接する2個の発光素子の間に対向するように、複数の発光素子が前記予め定めた間隔で配列された第2の発光素子列と、を備えた発光素子基板である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記2列の発光素子列が収まる前記第2の方向長さをLとし、前記第1の発光素子列と前記第2の発光素子列との間で互いに隣接する2個の発光素子間の間隔Pとしたときに、前記発光領域の前記第1の方向の長さ及び前記第2の方向の長さLが、2P<L≦6Pの範囲となる、請求項1に記載の発光素子基板である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発光素子基板の少なくとも1つと、前記発光素子基板の前記複数の発光素子の各々に対応して、前記発光素子からの射出光を回折して被露光面に集光する複数のホログラム素子が、前記被露光面に形成される複数の集光点が前記第1の方向に並ぶように多重記録されたホログラム記録層と、を備えた露光装置である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の発光素子基板の少なくとも1つと、前記発光素子基板の前記複数の発光素子の各々に対応して、前記発光素子からの射出光を回折して被露光面に集光する複数のホログラム素子が、前記被露光面に形成される複数の集光点が前記第1の方向に並ぶように多重記録されたホログラム記録層と、を備えた露光装置である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、同じ発光素子列内の互いに隣接する2個の発光素子間の最短距離d1が、異なる発光素子列の互いに隣接する2個の発光素子間の最短距離d2よりも大きい、請求項3又は4に記載の露光装置である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項3から請求項5までの何れか1項に記載の露光装置と、前記露光装置と予め定めた作動距離だけ離間して配置され、画像データに応じて前記露光装置により前記予め定めた方向に主走査されて画像が記録される感光性の画像記録媒体と、を含む画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発光素子基板によれば、発光領域の占有面積を制限しながら、被露光面での光量の増加を図ることができる。
【0013】
請求項2に記載の発光素子基板によれば、更に、限られた発光領域の占有面積の中で、被露光面での光量増加を図ることができる。
【0014】
請求項3に記載の露光装置によれば、発光素子基板の発光領域の占有面積を制限しながら、被露光面での光量増加を図ると共に、被露光面での結像スポットを1列にすることができる。
【0015】
請求項4に記載の露光装置によれば、更に、限られた発光領域の占有面積の中で、被露光面での光量増加を図ると共に、被露光面での結像スポットを1列にすることができる。
【0016】
請求項5に記載の露光装置によれば、本発明の構成を備えない場合に比べて、限られた発光領域の占有面積で、光利用効率を更に向上させることができる。
【0017】
請求項6に記載の画像形成装置によれば、露光装置の発光素子基板を構成する複数の発光素子による発光領域の占有面積を制限しながら、感光性の画像記録媒体の被露光面での光量の増加を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るLEDプリントヘッドの構成の一例を示す概略斜視図である。
【図3】LEDプリントヘッドにおけるLEDチップ配列の一例を示す平面図である。
【図4】LEDチップにおける発光領域の形状及び配置の一例を示す平面図である。
【図5】LEDの発光領域の形状の一例を示す平面図である。
【図6】(A)〜(C)はLEDの発光領域の形状の変形例を示す平面図である。
【図7】(A)はホログラム素子の概略形状を示す斜視図であり、(B)はLEDプリントヘッドの副走査方向の断面図であり、(C)はLEDプリントヘッドの主走査方向の断面図である。
【図8】(A)及び(B)は、ホログラム記録層にホログラムが記録される様子を示す図である。
【図9】位相共役記録によってホログラムが記録される様子を示す図である。
【図10】(A)及び(B)は、ホログラムが再生されて回折光が生成される様子を示す図である。
【図11】(A)〜(C)はLEDの発光領域の形状の変形例を示す平面図である。
【図12】(A)及び(B)は、比較例に係るLEDの発光領域の形状及び配置の一例を示す平面図である。
【図13】(A)及び(B)は、比較例に係るLEDの発光領域の形状及び配置の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0020】
<LEDプリントヘッドを搭載した画像形成装置>
まず、本発明の実施の形態に係るLEDプリントヘッドを搭載した画像形成装置について説明する。電子写真方式で画像を形成する複写機、プリンタ等では、感光体ドラムに潜像を書き込む露光装置として、従来の光走査方式の露光装置(即ち、光走査書き込み装置)に代わり、発光ダイオード(LED)を光源に用いたLED方式の露光装置が主流になりつつある。LED方式の露光装置では、走査光学系は不要であり、光走査方式に比べて大幅な小型化が可能である。また、ポリゴンミラーを駆動する駆動モータも不要であり、機械的なノイズが発生しないという利点もある。
【0021】
LED方式の露光装置は、LEDプリントヘッドと称され、LPHと略称されている。従来のLEDプリントヘッドは、長尺状の基板上に多数のLEDが配列されたLEDアレイと、多数の屈折率分布型のロッドレンズが配列されたレンズアレイと、を備えている。LEDアレイには、例えば1インチ当り1200画素(ドット)と、主走査方向の画素数に対応して多数のLEDが配列されている。従来、レンズアレイには、セルフォック(登録商標)などのロッドレンズが用いられている。各LEDから射出された光は、ロッドレンズにより集光されて、感光体ドラム上に正立等倍像が結像される。
【0022】
ロッドレンズに代えて「ホログラム素子」を用いたLEDプリントヘッドが検討されている。本実施の形態に係る画像形成装置は、以下に説明する「ホログラム素子アレイ」を備えたLEDプリントヘッドを備えている。ロッドレンズを用いたLPHでは、レンズアレイ端面から結像点までの光路長(作動距離)は数mm程度と短く、感光体ドラムの周囲における露光装置の占有割合が大きくなる。これに対して、ホログラム素子アレイを備えたLPH14は、作動距離が数cm程度と長く、感光体ドラムの周囲が混み合わず、全体として画像形成装置が小型化される。
【0023】
また、一般に、インコヒーレント光(非干渉性の光)を射出するLEDを用いるLPHでは、コヒーレンス性が低下してスポットぼけ(いわゆる色収差)が生じ、微小スポットを形成することは容易ではない。これに対して、ホログラム素子アレイを備えたLPH14は、ホログラム素子の入射角選択性及び波長選択性が高く、「ロッドレンズを用いたLPH」に比べると、感光体ドラム12上に微小スポットを形成し易い。
【0024】
図1は本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。この画像形成装置は、所謂タンデム型のデジタルカラープリンタであり、各色の画像データに対応して画像形成を行う画像形成部としての画像形成プロセス部10、画像形成装置の動作を制御する制御部30、及び画像読取装置3と例えばパーソナルコンピュータ(PC)2等の外部装置とに接続され、これらの装置から受信された画像データに対して予め定めた画像処理を施す画像処理部40を備えている。
【0025】
画像形成プロセス部10は、一定の間隔で並列に配置される4つの画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kを備えている。画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kの各々は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。なお、画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kを、適宜「画像形成ユニット11」と総称する。
【0026】
各画像形成ユニット11は、静電潜像を形成してトナー像を保持する像保持体としての感光体ドラム12、感光体ドラム12の表面を予め定めた電位で一様に帯電する帯電器13、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を露光する露光装置としてのLEDプリントヘッド(LPH)14、LPH14によって得られた静電潜像を現像する現像器15、転写後の感光体ドラム12表面を清掃するクリーナ16を備えている。
【0027】
LPH14は、感光体ドラム12の軸線方向の長さと略同じ長さの長尺状のプリントヘッドである。LPH14は、その長さ方向が感光体ドラム12の軸線方向を向くように、感光体ドラム12の周囲に配置されている。本実施の形態では、LPH14には、長さ方向に沿って複数のLEDがアレイ状(列状)に配列されている。また、LEDアレイ上には、複数のLEDに対応する複数のホログラム素子がアレイ状に配列されている。
【0028】
後述する通り、ホログラム素子アレイを備えたLPH14の作動距離は長く、感光体ドラム12の表面から数cm離間して配置されている。このため、感光体ドラム12の周方向における占有幅が小さく、感光体ドラム12の周囲の混雑が緩和されている。
【0029】
また、画像形成プロセス部10は、各画像形成ユニット11の感光体ドラム12にて形成された各色のトナー像が多重転写される中間転写ベルト21、各画像形成ユニット11の各色トナー像を中間転写ベルト21に順次転写(一次転写)させる一次転写ロール22、中間転写ベルト21上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写ロール23、及び二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着器25を備えている。
【0030】
次に上記画像形成装置の動作について説明する。
まず、画像形成プロセス部10は、制御部30から供給された同期信号等の制御信号に基づいて画像形成動作を行う。その際に、画像読取装置3やPC2から入力された画像データは、画像処理部40によって画像処理が施され、インターフェースを介して各画像形成ユニット11に供給される。
【0031】
例えば、イエローの画像形成ユニット11Yでは、帯電器13により予め定めた電位で一様に帯電された感光体ドラム12の表面が、画像処理部40から得られた画像データに基づいて発光するLPH14により露光されて、感光体ドラム12上に静電潜像が形成される。即ち、LPH14の各LEDが画像データに基づいて発光することで、感光体ドラム12の表面が主走査されると共に、感光体ドラム12が回転することで副走査されて、感光体ドラム12上に静電潜像が形成される。形成された静電潜像は現像器15により現像され、感光体ドラム12上にはイエローのトナー像が形成される。同様に、画像形成ユニット11M,11C,11Kにおいて、マゼンタ、シアン、黒の各色トナー像が形成される。
【0032】
各画像形成ユニット11で形成された各色トナー像は、図1の矢印A方向に回転する中間転写ベルト21上に、一次転写ロール22により順次静電吸引されて転写される(一次転写)。中間転写ベルト21上には、重畳されたトナー像が形成される。重畳トナー像は、中間転写ベルト21の移動に伴って二次転写ロール23が配設された領域(二次転写部)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部に搬送されると、トナー像が二次転写部に搬送されるタイミングに合わせて用紙Pが二次転写部に供給される。
【0033】
そして、二次転写部にて二次転写ロール23により形成される転写電界により、重畳トナー像は搬送されてきた用紙P上に一括して静電転写される(二次転写)。重畳トナー像が静電転写された用紙Pは、中間転写ベルト21から剥離され、搬送ベルト24により定着器25まで搬送される。定着器25に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着器25によって熱および圧力による定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙トレー(不図示)に排出される。
【0034】
<LEDプリントヘッド(LPH)>
次に、LEDプリントヘッドの構成について説明する。図2は本発明の実施の形態に係るLEDプリントヘッドの構成の一例を示す概略斜視図である。図2に示すように、LEDプリントヘッド(LPH14)は、複数のLED50を備えたLEDアレイ52と、複数のLED50の各々に対応して設けられた複数のホログラム素子54を備えたホログラム素子アレイ56と、を備えている。図2に示す例では、LEDアレイ52は6個のLED50〜50を備え、ホログラム素子アレイ56は6個のホログラム素子54〜54を備えている。なお、各々を区別する必要がない場合には、LED50〜50を「LED50」と総称し、ホログラム素子54〜54を「ホログラム素子54」と総称する。
【0035】
本実施の形態では、複数のLED50の各々は、LEDチップ53上に千鳥状に配列されている。図2に示す例では、3個のLED50、LED50及びLED50が1列目に配列されると共に、3個のLED50、LED50及びLED50が2列目に配列されている。1列目のLED50と2列目のLED50とは、主走査方向に並ぶように配置されると共に、主走査方向及び副走査方向に一定間隔ずらして配置されている。また、千鳥状に配列されたLED50の各々は、互いに隣接する2つのLED50の主走査方向の間隔(LEDピッチ)が、一定間隔「P」となるように配列されている。
【0036】
後述する通り、LEDチップ53は、複数のLED50と、複数のLED50の各々を駆動する駆動回路(回路部)と、が同じ基板上に形成されたものである。一般に、基板としては半導体基板が用いられる。LEDチップ53としては、複数の自己走査型LED(SLED:Self-scanning LED)が配列されたSLEDチップを用いてもよい。SLEDチップは、スイッチのオン・オフを二本の信号線によって行い、各SLEDを選択的に発光させてデータ線を共通化する。SLEDチップを用いると、基板上での配線数が少なくて済む。LEDチップ53におけるLED50の配置及び形状については、後で詳しく説明する(図4参照)。
【0037】
なお、図2は概略図であり、複数のLED50が1個のLEDチップ53上に一次元状に配列されたLEDアレイ52を概略的に図示しているに過ぎない。本実施の形態では、複数のLED50が配列された複数のLEDチップ53を、一次元状に配列してLEDアレイ52を構成する場合について説明する(図3参照)。ここで、複数のLEDチップ53に分けられていても、複数のLED50の各々は、互いに隣接する2つのLED50の主走査方向の間隔(LEDピッチ)が、一定間隔「P」となるように配列されている。
【0038】
LEDアレイ52としては、複数のLEDがチップ単位で基板上に実装されたLEDアレイ以外に、種々の形態のLEDアレイを用いてもよい。例えば、複数のLEDチップ53は、図示したように一列に配置してもよいが、千鳥状に配置してもよい。即ち、複数のLEDチップ53は、主走査方向に並ぶように配置されると共に、主走査方向及び副走査方向に一定間隔ずらして二列に配置されていてもよい。また、複数のLEDチップ53は、副走査方向に2個以上配置してもよい。
【0039】
図3は上記のLEDプリントヘッドにおけるLEDチップ配列の一例を示す平面図である。図3に示すように、複数のLEDチップ53は、長尺状のLED基板58上に、LED基板58の長さ方向に沿って実装されている。ここでの「長さ方向」は「主走査方向」に一致する。複数のLEDチップ53の各々は、複数のLED50が主走査方向に並ぶように位置合わせされて、LED基板58上に略一列に配置されている。これにより、複数のLED50の各々は、感光体ドラム12の軸線方向と平行な方向に沿って配列される。なお、LED50の各々を駆動する駆動回路は、LED基板58上に実装されていてもよい。
【0040】
LED50の配列方向が「主走査方向」である。また、感光体ドラム12の回転により副走査が行われるが、「主走査方向」と直交する方向を「副走査方向」として図示している。また、LED50の「発光光軸」は、上記の主走査方向及び副走査方向の各々とも直交する。後述する通り、LED50は予め定めた形状の「発光領域」を有しており「点光源」ではないが、以下では、LED50が配置される位置を適宜「発光点」と称する。また、「発光光軸」とは、LED50の発光領域から射出される拡散光の中心線である。LED50を発光点とみなす場合には、「発光光軸」の延びる方向はLED基板58の法線方向と一致する。
【0041】
LED基板58上には、ホログラム記録層60が形成されている。ホログラム記録層60は、ホログラムを永続的に記録保持することが可能な高分子材料から構成されている。このような高分子材料としては、いわゆるフォトポリマーを用いてもよい。フォトポリマーは、光重合性モノマーのポリマー化による屈折率変化を利用してホログラムを記録する。ホログラム素子アレイ56は、LED基板58上に形成されたホログラム記録層60内に形成されている。
【0042】
即ち、ホログラム記録層60には、複数のLED50〜50の各々に対応して、主走査方向に沿って複数のホログラム素子LED54〜54が形成されている。ホログラム素子54の各々は、互いに隣接する2つのホログラム素子54の主走査方向の間隔が、上記のLED50の主走査方向の間隔と、ほぼ同じ間隔となるように配列されている。即ち、互いに隣接する2つのホログラム素子54が互いに重なり合うように、径の大きいホログラム素子54が形成されている。また、互いに隣接する2つのホログラム素子54が異なる形状を有していてもよい。
【0043】
なお、ホログラム記録層60は、LED基板58上に積層されていてもよいが、LED基板58から予め定めた距離だけ離間して配置してもよい。例えば、LED基板58とホログラム記録層60とは、空気層や透明樹脂層を介して離間されていてもよい。或いは、ホログラム記録層60を図示しない保持部材で保持することにより、LED基板58から離間されていてもよい。
【0044】
図2に示すように、6個のLED50の各々から射出された各光のうち参照光の光路を通る光は、対応するホログラム素子54のいずれかに入射する。即ち、インコヒーレント光源であるLED50を発光させると、LED50から射出された発光光の一部は、発光点からホログラム径まで拡がる参照光の光路を通り、ホログラム素子54に参照光が照射されたのと略同じ状況となる。ホログラム素子54は、入射された光を回折して回折光を生成する。ホログラム素子54の各々で生成された各回折光は、参照光の光路を避けて、その光軸が発光光軸と角度θdを成す方向に射出され、感光体ドラム12の方向に集光される。
【0045】
射出された各回折光は、感光体ドラム12の方向に収束して、数cm先の焦点面に配置された感光体ドラム12の表面で結像され、6個の微小スポット62〜62が形成される。即ち、複数のホログラム素子54の各々は、対応するLED50から射出された光を回折して集光し、感光体ドラム12表面に結像させる光学部材として機能する。感光体ドラム12の表面には、スポット62〜62が主走査方向に一列に配列されるように形成される。換言すれば、LPH14により、感光体ドラム12が主走査される。なお、スポット62〜62の各々を区別する必要がない場合には、「スポット62」と総称する。
【0046】
なお、図2に示す例では、6個のLED50〜50が配列されている例を図示したが、実際の画像形成装置では、主走査方向の解像度に応じて数千個のLEDが配列されている。例えば、128個のSLEDが1インチあたり1200スポットの解像度となる間隔で配列された58個のSLEDチップが、主走査方向に沿って一列に配列されていると仮定する。この仮定の下で換算すると、上記解像度の画像形成装置では、7424個のSLEDが21μmの間隔で配列されることになる。これら7424個のSLEDに対応して、感光体ドラム12上には7424個のスポット62が主走査方向に一列に並ぶように形成される。
【0047】
<LED(発光領域)の配置及び形状>
次に、LED(発光領域)の配置及び形状について説明する。図4はLEDチップにおける発光領域の形状及び配置の一例を示す平面図である。図4に示すように、LEDチップ53は、複数のLED50と、複数のLED50の各々を駆動する回路部32とを備えている。複数のLED50と回路部32とは、図示しない同一基板上に形成されている。回路部32は、複数のLED50が形成されている領域に対し、基板の幅方向に隣接するように形成されている。ここでの「幅方向」は「副走査方向」に一致する。
【0048】
LED50は、LED50に駆動電流を印加する一対の電極34(アノード電極とカソード電極)を備えている。一対の電極34は、電極34から副走査方向に延びた配線36により、回路部32に電気的に接続されている。なお、図4は光射出側から見た平面図であり、アノード電極だけが図示されている。LED50〜50の各々は、同様に、対応する一対の電極34〜34を備えている。また、電極34〜34の各々は、対応する配線36〜36により回路部32に電気的に接続されている。なお、電極34〜34の各々を区別する必要がない場合には「電極34」と総称し、配線36〜36の各々を区別する必要がない場合には「配線36」と総称する。
【0049】
複数のLED50の各々は、角度θの頂角、この頂角に対向する一辺、この一辺と直角を成し且つこの一辺に隣接する二辺、及びこの二辺の各々に隣接し且つ前記頂角を成す二辺で構成された、平面視が五角形の発光領域を備えている。図5を参照して説明すると、五角形ABCDEは、角度θの頂角∠BAEを有し、この頂角∠BAEに対向する辺CD、この辺CDと直角を成し且つこの辺CDに隣接する辺BCと辺DE、辺BCと辺DEの各々に隣接し且つ頂角∠BAEを成す辺ABと辺AEの5辺を有している。
【0050】
また、発光領域は、五角形の各頂角の少なくとも1つが面取りされた形状でもよい。ここで面取りとは、角部を削り落とすことを意味している。例えば、「角度θの頂角」または「五角形の各頂角」が面取りされて、曲線部を有する形状でもよい。上記の五角形ABCDEの例で説明すると、辺ABの一端Aと辺AEの一端Aとの間が離間され、A−A間が曲線で結合されていてもよい。また、「角度θの頂角」または「五角形の各頂角」が面取りされて、その頂角が切り落とされている形状でもよい。
【0051】
図6(A)〜(C)はLED50の発光領域の形状の変形例を示す平面図である。図6(A)は、θ=180°の場合、即ち、平面視が四角形の発光領域を図示している。図5、図6(B)及び図6(C)に示すように、角度θは、90°≦θ<180°の範囲で変化させてもよい。図5はθ=120°の場合を図示している。図6(B)はθ=90°の場合を図示している。図6(C)はθ=150°の場合を図示している。
【0052】
LED50、即ち、平面視が五角形の発光領域は、角度θの頂角からこの頂角に対向する一辺に降ろした垂線について、対称な形状となる。発光領域の対称線上に在る中心点(重心)付近に、上述した電極34を設けてもよい。後述する通り、複数のLED50の各々は、発光領域の対称線が副走査方向を向くと共に、角度θの頂角に対向する一辺が主走査方向を向くように、LEDチップ53上に配置される。
【0053】
ここで、図5に示すように、発光領域の副走査方向の長さを「Es」とし、発光領域の主走査方向の長さを「Em」とする。LED50から射出される発光光は、発散して拡がることが知られている。この現象は「ランバーシアン配光」と称される。電界発光素子(EL)においても、同様の現象が観測される。この発光光の一部が、ホログラム素子54に入射して回折光を生成する。
【0054】
上述した通り、本実施の形態では、複数のLED50の各々は、LEDチップ53上に千鳥状に配列されている。即ち、複数のLED50の各々は、副走査方向において2列に分けて配列されると共に、1列目と2列目とで主走査方向の位置がずれるように配列されている。図4に示す例では、図2と同様に、3個のLED50、LED50及びLED50が1列目に配列されると共に、3個のLED50、LED50及びLED50が2列目に配列されている。以下では、1列目のLED50を「LED50A」と称し、2列目のLED50を「LED50B」と称して、両者を区別する。
【0055】
1列目に配列されたLED50Aの各々は、角度θの頂角に対向する一辺が主走査方向に沿った第1の直線L上に重なり且つ角度θの頂角が2列目側を向くように、予め定めた間隔「2P」で配列されている。一方、2列目に配列されたLED50Bの各々は、角度θの頂角に対向する一辺が主走査方向に沿った第2の直線L上に重なり且つ角度θの頂角が1列目側を向くように、予め定めた間隔「2P」で配列されている。
【0056】
ここで、予め定めた間隔「2P」は、同じ列内で主走査方向に互いに隣接する2個のLED50の中心点の間の距離である。同じ列内で主走査方向に互いに隣接する2個のLED50の端部の間の距離(即ち、間隙の長さ)は、主走査方向の最短距離「d1」である。また、複数のLED50の各々は、第1の直線Lと第2の直線Lとの間に配列されるので、第1の直線Lと第2の直線Lとの副走査方向の距離を、LED実装幅「L」とする。
【0057】
ここで、図4に示す発光領域の副走査方向の幅LとLEDピッチPの関係を2P<L≦6Pとすると、発光領域がより円に近くなり、効果的に光量を増加できる。即ち、L>6Pとなるように、図5に示す副走査方向の長さ「Es」を大きくして発光領域を増大したとしても、L=6Pの場合以上の光量増加は望めない。一方、L=2PまでしかLED実装幅を確保できない場合は、従来技術である長方形の発光領域を1列配列した方が、光量の点から得策である。
【0058】
また、2列目に配列されたLED50Bの各々は、角度θの頂角が1列目に配列されたLED50Aの隣接する2個のLED50の間に対向するように、予め定めた間隔「2P」で配列されている。従って、複数のLED50の各々は、2列に分けられていても、互いに隣接する2つのLED50の主走査方向の間隔が、一定間隔(LEDピッチ)「P」となるように配列される。
【0059】
また、LED50Bの角度θの頂角が、隣接する2個のLED50Aの間に対向するように配列することで、LED50Aの頂角とLED50Bの頂角とが噛み合う「平面充填構造」となり、発光領域の面積が増加して被露光面での光量も増加するが、発光領域の占有面積は極端に増加しない。ここで、異なる列間で互いに隣接する2個のLED50間の距離(即ち、間隙の長さ)は、互いに隣接するLED50AとLED50Bとの間の最短距離に相当する。この最短距離を、副走査方向の最短距離「d2」とする。なお、限られた発光領域の占有面積で、光利用効率を更に向上させるには、主走査方向の最短距離「d1」を、副走査方向の最短距離「d2」よりも大きくすればよい。
【0060】
<ホログラム素子の形状及び配置>
次に、ホログラム素子の形状及び配置について説明する。図7(A)はホログラム素子の概略形状を示す斜視図であり、図7(B)はLEDプリントヘッドの副走査方向の断面図であり、図7(C)はLEDプリントヘッドの主走査方向に沿ったA−A線(図7(B)に図示)での断面図である。
【0061】
図7(A)に示すように、ホログラム素子54の各々は、一般に厚いホログラムと称される体積ホログラムである。上述した通り、ホログラム素子は、入射角選択性及び波長選択性が高く、回折光の出射角度(回折角)を高精度で制御して、微小スポットを形成する。回折角の精度はホログラムの厚さが厚いほど高くなる。
【0062】
図7(A)及び図7(B)に示すように、ホログラム素子54の各々は、ホログラム記録層60の表面側を底面とし、LED50側に向かって収束する円錐台状に形成されている。この例では円錐台状のホログラム素子について説明するが、ホログラム素子の形状はこれには限定されない。例えば、円錐、楕円錐、楕円錐台等の形状としてもよい。円錐台状のホログラム素子54の直径は、底面で最も大きくなる。本実施の形態では、この円形の底面の直径を「ホログラム径r」とする。
【0063】
ホログラム素子54の各々は、LED50の主走査方向の間隔よりも大きな「ホログラム径r」を有している。例えば、LED50の主走査方向の間隔(LEDピッチ「P」)は30μmであり、ホログラム径rは2mm、ホログラム厚さhは250μmである。このように大きなホログラム素子54を用いることで、約4cmの作動距離で、約40μm(半値幅で約30μm)のスポットサイズφが実現される。
【0064】
図7(B)に示すように、異なる列に配列されたLED50及びLED50に対応して、主走査方向に互いに隣接する2つのホログラム素子54とホログラム素子54とが、互いに大幅に重なり合うように形成されている。複数のホログラム素子54は、例えば、球面波シフト多重により多重記録されている。上記のLEDピッチP及びホログラム径rの数値から分かるように、多重記録されたホログラム素子54の重なりは、図示された重なりよりもかなり大きい。
【0065】
図7(C)は、図7(B)のA-A線に沿った断面図である。A-A線(一点鎖線)は、1列目のLED50の発光光軸を表す。従って、図7(C)に示すように、同じ列に配列された3個のLED50、LED50及びLED50の各々に対応して、3個のホログラム素子54、ホログラム素子54及びホログラム素子54の各々が、主走査方向に互いに隣接する2つのホログラム素子同士が互いに大幅に重なり合うように、ホログラム記録層60に多重記録されている。
【0066】
なお、図7(B)及び図7(C)に示すように、複数のLED50の各々は、対応するホログラム素子54側に光を射出するように、発光面をホログラム記録層60の表面側に向けて、LED基板58上に配置されている。LED50の「発光光軸」は、対応するホログラム素子54の中心(例えば、円錐台の対称軸)付近を通り、LED基板58と直交する方向を向いている。
【0067】
また、図示は省略するが、LPH14は、ホログラム素子54で生成された回折光が感光体ドラム12の方向に射出されるように、ハウジングやホルダー等の保持部材により保持されて、図1に示す画像形成ユニット11内の予め定めた位置に取り付けられている。なお、LPH14は、調整ネジ(図示せず)等の調整手段により、回折光の光軸方向に移動するように構成されていてもよい。ホログラム素子54による結像位置(焦点面)が、感光体ドラム12表面上に位置するように、上記の調整手段により調整する。また、ホログラム記録層60上に、カバーガラスや透明樹脂等で保護層が形成されていてもよい。保護層によりゴミの付着が防止される。
【0068】
<ホログラムの記録方法>
次に、ホログラムの記録方法について説明する。図8(A)及び図8(B)は、ホログラム記録層にホログラム素子54が形成される様子、即ち、ホログラム記録層にホログラムが記録される様子を示す図である。図9は位相共役記録によってホログラムが記録される様子を示す図である。感光体ドラム12の図示は省略し、結像面である表面12Aだけを図示する。また、ホログラム記録層60Aは、ホログラム素子54が形成される前の記録層であり、符号Aを付して、ホログラム素子54が形成されたホログラム記録層60と区別する。
【0069】
図8(A)及び図8(B)に示すように、表面12Aに結像される(即ち、表面12Aに在る集光点に向って収束する)回折光の光路を通るコヒーレント光が、信号光としてホログラム記録層60Aに照射される。同時に、ホログラム記録層60Aを通過する際に、発光点から所望のホログラム径rまで拡がる拡散光の光路を通るコヒーレント光が、参照光としてホログラム記録層60Aに照射される。コヒーレント光の照射には、半導体レーザ等のレーザ光源が用いられる。
【0070】
信号光と参照光とは、ホログラム記録層60Aに対し、同じ側(LED基板58が配置される側)から照射される。信号光と参照光との干渉により得られる干渉縞(強度分布)が、ホログラム記録層60Aの厚さ方向にわたって記録される。これにより、透過型のホログラム素子54が形成されたホログラム記録層60が得られる。ホログラム素子54は、面方向及び厚さ方向に干渉縞の強度分布が記録された体積ホログラムである。このホログラム記録層60を、LEDアレイ52が実装されたLED基板58上に取り付けることで、LPH14が作製される。
【0071】
本実施の形態では、複数のLED50の各々は、副走査方向において2列に分けて配列されている。1列目に配列されたLED50Aと、2列目に配列されたLED50Bとでは、ホログラム記録時の「信号光の照射角度」及び「参照光の収束位置」が異なる。ここでは、図2に示したように、1列目のLED50Aの方が、2列目のLED50Bよりも感光体12に近い側に配置されている。具体的には、以下のようにして、LED50A及びLED50Bの各々に対応するホログラム素子54を記録する。
【0072】
図8(A)に示すように、1列目に配列されたLED50Aに対応してホログラム素子54を記録する場合には、LED50Aの発光光軸と角度θdで交差する光軸を有する回折光の光路を通るコヒーレント光が、信号光として照射される。同時に、LED50Aを発光点として、発光点からホログラム径rまで拡がる拡散光の光路を通るコヒーレント光が、参照光として照射される。
【0073】
また、図8(B)に示すように、2列目に配列されたLED50Bに対応してホログラム素子54を記録する場合には、LED50Bの発光光軸と角度θd(>θd)で交差する光軸を有する回折光の光路を通るコヒーレント光が、信号光として照射される。同時に、LED50Bを発光点として、発光点からホログラム径rまで拡がる拡散光の光路を通るコヒーレント光が、参照光として照射される。
【0074】
また、図9に示すように、ホログラム記録層60AをLEDアレイ52が実装されたLED基板58上に取り付けた後に、信号光と参照光を、前述した方向と反対側から照射してホログラムを記録してもよい(位相共役記録)。この場合も同様に、透過型のホログラム素子54が形成されたホログラム記録層60が得られる。なお、図9では、1列目に配列されたLED50Aに対応してホログラム素子54を記録する場合について図示している。
【0075】
<ホログラムの再生方法>
次に、ホログラムの再生方法について説明する。図10(A)及び図10(B)は、ホログラム素子から回折光が生成される様子、即ち、ホログラム記録層に記録されたホログラムが再生されて回折光が生成される様子を示す図である。図10(A)及び図10(B)に示すように、本実施の形態では、LED50を発光させると、LED50から射出された拡散光の一部は、発光点からホログラム径rまで拡がる参照光の光路を通る。従って、LED50の発光により、ホログラム素子54に参照光が照射されたのと略同じ状況となる。
【0076】
図10(A)に示すように、LED50Aを発光させると、点線で図示する参照光が照射されたのと同じ状況になる。次に、実線で図示するように、ホログラム素子54から信号光と同じ光が再生され、LED50Aの発光光軸と角度θdを成す方向に回折光が射出される。射出された回折光は収束して、数cmの作動距離で感光体ドラム12の表面12Aに結像される。表面12Aにはスポット62が形成される。図10(B)に示すように、LED50Bを発光させた場合も同様に、ホログラム素子54から信号光と同じ光が再生され、LED50Bの発光光軸と角度θdを成す方向に回折光が射出される。射出された回折光は収束して、感光体ドラム12の表面12Aに結像され、スポット62が形成される。
【0077】
感光体ドラム12の表面12Aには、複数のLED50とこれに対応する複数のホログラム素子54に対応して、複数のスポット62が形成される。複数のLED50は千鳥状に配列されて、副走査方向に分布して配置されているが、副走査方向の位置に応じて角度θd、角度θdを適切に設定することで、異なる列に配列された複数のLEDの各々を異なるタイミングで発光させなくても、複数のスポット62が主走査方向に一列に形成される。また、体積ホログラムは入射角選択性及び波長選択性が高く、高い回折効率が得られる。このためバックグラウンドノイズ(背景雑音)が低減され、信号光が精度よく再生されて、表面12Aに輪郭の鮮明な微小スポット(集光点)が形成される。
【0078】
なお、感光体ドラム12が、LED50からホログラム径rまで拡がる拡散光の光路の外側に位置するように、発光光軸と回折光の光軸とが成す角度θd、角度θdが設定されている。従って、ホログラム素子54で回折されずに透過する拡散光があったとしても、この透過拡散光は感光体ドラム12にバックグラウンド光として照射されない。或いは、LED50と感光体ドラム12との間に遮光部材を設けて、LED50からホログラム径rまで拡がる拡散光の光路の外側を通過する光を遮断してもよい。また、図10では、表面12Aが概略的に図示されているが、ホログラム径rは数mm、作動距離Lは数cmであるから、表面12Aはかなり離れた位置にある。このため、ホログラム素子54は、図7(A)に示すように、円錐台状に形成される。
【0079】
<その他の変形例>
なお、上記では、複数のLED(SLEDを含む)を備えたLEDプリントヘッドを備える例について説明したが、LEDに代えて電界発光素子(EL)、レーザダイオード(LD)等、他の発光素子を用いてもよい。発光素子の特性に応じてホログラム素子を設計する、不要露光を低減する等により、インコヒーレント光を射出するLEDやELを発光素子として用いた場合でも、コヒーレント光を射出するLDを発光素子として用いた場合と同様に、輪郭が鮮明な微小スポットが形成される。
【0080】
また、上記では、球面波シフト多重により複数のホログラム素子を多重記録する例について説明したが、所望の回折光が得られる多重方式であれば、他の多重方式で複数のホログラム素子を多重記録してもよい。また、複数種類の多重方式を併用しても良い。他の多重方式としては、参照光の入射角度を変えながら記録する角度多重記録、参照光の波長を変えながら記録する波長多重記録、参照光の位相を変えながら記録する位相多重記録等が挙げられる。多重記録された複数のホログラムからは、別々の回折光がクロストークなく再生される。
【0081】
また、上記では、画像形成装置がタンデム型のデジタルカラープリンタであり、その各画像形成ユニットの感光体ドラムを露光する露光装置としてのLEDプリントヘッドについて説明したが、露光装置により感光性の画像記録媒体を像様露光することで画像が形成される画像形成装置であればよく、上記の応用例には限定されない。例えば、画像形成装置は、電子写真方式のデジタルカラープリンタには限定されない。銀塩方式の画像形成装置や光書込み型電子ペーパー等の書き込み装置等にも本発明の露光装置を搭載してもよい。また、感光性の画像記録媒体は、感光体ドラムには限定されない。シート状の感光体や写真感光材料、フォトレジスト、フォトポリマー等の露光にも、上記応用例に係る露光装置を適用してもよい。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。以下の実施例に示す構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。従って、本発明は、以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0083】
<実施例1>
図4に示すLEDチップと同じ構造のLEDチップを作製した。図4で定義したパラメータを、表1に示すように、θ=120°とし、L/P=1、1.5、2、2.5、3、4、6、8と設定することにより、LEDチップの発光領域の形状及び配置を種々変更した。なお、LEDピッチ「P」は解像度に応じて決まる定数であり、1インチあたり1200スポットの解像度では、P=21μmである。従って、LED実装幅「L」は、LEDピッチ「P」に対する比「L/P」で表示した。また、主走査方向の最短距離「d1」、副走査方向の最短距離「d2」は、設計上は略一定の値となるため、d1=10.5μm、d2=3μmとする。
【0084】
作製したLEDチップの各々について「光量」を測定した。測定結果を表1に示す。ここでの「光量」は、従来の四角形のLEDを一列に配置した場合において、L/P=1の光量を基準値「1.00」とし、この光量に対する相対値として定義される値である。「光量」は、基準値も含め、NA0.3の対物レンズを用いた光学系とデジタルCCDカメラにより測定される。なお、このLEDを一列に配置した場合については、次に、図12を参照して「比較例」として説明する。
【0085】
図4で定義したパラメータの数値だけでは、LEDチップの発光領域の形状及び配置が分かり難いために、図4及び図11(A)〜(C)を参照して補足説明する。図11(A)は、θ=120°、L/P=1として、複数のLED50を千鳥状に配置した場合の平面図である。発光領域の形状は、副走査方向にひしゃげた五角形となる。これに対し、図4は、θ=120°、L/P=2として、複数のLED50を千鳥状に配置した場合の平面図である。
【0086】
また、図11(B)は、θ=120°、L/P=4として、複数のLED50を千鳥状に配置した場合の平面図である。発光領域の形状は、図4に示す五角形よりも副走査方向にやや延びた五角形となる。また、図11(C)は、θ=120°、L/P=6として、複数のLED50を千鳥状に配置した場合の平面図である。発光領域の形状は、副走査方向に延びた帯状の五角形となる。このように、頂角の角度θ及び配置形態が同じであっても、L/P値が変化すると、発光領域の形状が顕著に変化することが分かる。
【0087】
<実施例2>
θ=90°とした以外は、実施例1と同様にしてLEDチップを作製した。図4で定義したパラメータを、θ=90°とし、L/P=1、1.5、2、2.5、3、4、6、8と設定することにより、LEDチップの発光領域の形状及び配置を種々変更した。作製したLEDチップは、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0088】
<実施例3>
θ=150°とした以外は、実施例1と同様にしてLEDチップを作製した。図4で定義したパラメータを、θ=150°とし、L/P=1、1.5、2、2.5、3、4、6、8と設定することにより、LEDチップの発光領域の形状及び配置を種々変更した。作製したLEDチップは、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0089】
<比較例1>
比較例1として、四角形の発光領域を備えたLEDを一列に配置したLEDチップを作製した。図4で定義したパラメータに対応して、図12(A)及び(B)に示すように、各パラメータを定義した。θ=0°とし、L/P=1、1.5、2、2.5、3、4、6、8と設定することにより、LEDチップの発光領域の形状及び配置を種々変更した。実施例1と同様、P=21μm、d1=10.5μm、d2=3μmである。作製したLEDチップは、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0090】
<比較例2>
比較例2として、四角形の発光領域(θ=180°)を備えたLEDを千鳥状に配置したLEDチップを作製した。図4で定義したパラメータに対応して、図13(A)及び(B)に示すように、各パラメータを定義した。θ=180°とし、L/P=1、1.5、2、2.5、3、4、6、8と設定することにより、LEDチップの発光領域の形状及び配置を種々変更した。実施例1と同様、P=21μm、d1=10.5μm、d2=3μmである。作製したLEDチップは、実施例と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0091】
下記表1は、上記の実施例1〜3、比較例1、及び比較例2の結果を、まとめて示すものである。
【0092】
【表1】

【0093】
表1の結果から分かるように、実施例1〜3では、五角形の発光領域を備えたLEDを、角度θの頂角が噛み合うように千鳥状に配置することで、LED実装幅「L」の値を大きくして、発光領域の面積占有率を極端に大きくしなくても、十分な光量が得られることが分かる。2<L/P≦6の範囲において、比較例1及び比較例2よりも光量が増加している。一方、比較例1のように、四角形の発光領域を備えたLEDを一列に配置したLEDチップでは、LED実装幅「L」の値を相当大きくして、発光領域の面積占有率を極端に大きくしたい場合でも、十分な光量が得られないことが分かる。また、比較例2のように、四角形の発光領域を備えたLEDを千鳥状に配置したLEDチップでは、五角形の発光領域を備えた実施例1〜3に比べて、L/P<6の範囲では得られる光量が若干低くなることが分かる。
【符号の説明】
【0094】
2 PC
3 画像読取装置
10 画像形成プロセス部
11 画像形成ユニット
12 感光体ドラム
12A 表面
13 帯電器
14 LEDプリントヘッド
15 現像器
16 クリーナ
21 中間転写ベルト
22 一次転写ロール
23 二次転写ロール
24 搬送ベルト
25 定着器
30 制御部
32 回路部
34 電極
36 配線
40 画像処理部
50 LED
52 LEDアレイ
53 LEDチップ
54 ホログラム素子
56 ホログラム素子アレイ
58 LED基板
60 ホログラム記録層
60A ホログラム記録層
62 スポット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子が第1の方向に並ぶように配列されると共に、前記第1の方向と交差する第2の方向に2列に分けて配列されて、基板上に配置された発光素子基板であって、
前記複数の発光素子の各々は、角度θの頂角、前記頂角に対向する一辺、前記一辺と直角を成し且つ前記一辺に隣接する二辺、及び前記二辺の各々に隣接し且つ前記頂角を成す二辺で構成された五角形の発光領域、又は前記五角形の各頂角の少なくとも1つが面取りされた形状の発光領域を備え、
前記頂角に対向する一辺が前記第1の方向に沿った第1の直線上に重なり且つ前記頂角が他方の列側を向くように、複数の発光素子が予め定めた間隔で配列された第1の発光素子列と、
前記頂角に対向する一辺が前記第1の方向に沿った第2の直線上に重なり且つ前記頂角が他方の列側を向くと共に、前記頂角が前記第1の発光素子列の隣接する2個の発光素子の間に対向するように、複数の発光素子が前記予め定めた間隔で配列された第2の発光素子列と、
を備えた発光素子基板。
【請求項2】
前記2列の発光素子列が収まる前記第2の方向長さをLとし、前記第1の発光素子列と前記第2の発光素子列との間で互いに隣接する2個の発光素子間の間隔Pとしたときに、前記発光領域の前記第1の方向の長さ及び前記第2の方向の長さLが、2P<L≦6Pの範囲となる、請求項1に記載の発光素子基板。
【請求項3】
請求項1に記載の発光素子基板の少なくとも1つと、
前記発光素子基板の前記複数の発光素子の各々に対応して、前記発光素子からの射出光を回折して被露光面に集光する複数のホログラム素子が、前記被露光面に形成される複数の集光点が前記第1の方向に並ぶように多重記録されたホログラム記録層と、
を備えた露光装置。
【請求項4】
請求項2に記載の発光素子基板の少なくとも1つと、
前記発光素子基板の前記複数の発光素子の各々に対応して、前記発光素子からの射出光を回折して被露光面に集光する複数のホログラム素子が、前記被露光面に形成される複数の集光点が前記第1の方向に並ぶように多重記録されたホログラム記録層と、
を備えた露光装置。
【請求項5】
同じ発光素子列内の互いに隣接する2個の発光素子間の最短距離d1が、異なる発光素子列の互いに隣接する2個の発光素子間の最短距離d2よりも大きい、請求項3又は4に記載の露光装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5までの何れか1項に記載の露光装置と、
前記露光装置と予め定めた作動距離だけ離間して配置され、画像データに応じて前記露光装置により前記予め定めた方向に主走査されて画像が記録される感光性の画像記録媒体と、
を含む画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−56123(P2012−56123A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199404(P2010−199404)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】