説明

発光装置用の配線基板、発光装置及び発光装置用配線基板の製造方法

【課題】配線パターンの酸化を抑制することができる発光装置用の配線基板を提供する。
【解決手段】配線基板1は、基板10と、基板10の第1主面R1上に形成された配線パターン20と、配線パターン20の表面20Aを覆うように形成されためっき層30と、めっき層30の形成された配線パターン20を被覆し、第1主面R1上に形成された絶縁層40と、を有している。絶縁層40には、めっき層30の形成された配線パターン20の一部を発光素子の実装領域CAとして露出する開口部40Xが形成されている。めっき層30は、配線パターン20の表面20Aに形成されたNi又はNi合金からなる第1めっき層31と、Pd又はPd合金からなる第2めっき層32と、Au又はAu合金からなる第3めっき層33とが順に積層された3層構造を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置用の配線基板、発光装置及び発光装置用配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子が基板に実装されてなる発光装置には、様々な形状のものが提案されている。この種の発光装置としては、例えば樹脂基板上に配線パターンを形成し、その配線パターン上に発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)などの発光素子を実装した構造が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−092010号公報
【特許文献2】特開2003−092011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記発光装置では、実使用時に発光ダイオードの通電に伴ってその発光ダイオードに発熱が生じ、温度が上昇する。また、配線パターンの材料としては、酸化や腐食などが起こり易い銅(Cu)が用いられる。このため、上述したような実使用時の温度上昇などにより、配線パターン(銅)が酸化され、配線パターンの表面に酸化銅が形成される虞がある。このような酸化銅が形成されると、配線の抵抗が上昇し、発光ダイオードの発光効率が低下するという問題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、基板と、前記基板の第1主面上に形成された配線パターンと、前記配線パターンの表面を覆うように形成されためっき層と、前記めっき層の形成された配線パターンを被覆し、前記第1主面上に形成された絶縁層と、を有し、前記絶縁層には、前記めっき層の形成された配線パターンの一部を発光素子の実装領域として露出する開口部が形成され、前記めっき層は、最外層に貴金属又は貴金属合金からなる最外めっき層を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一観点によれば、配線パターンの酸化を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(a)は、第1実施形態の配線基板を示す概略平面図、(b)は、(a)に示す配線基板のA−A概略断面図、(c)は、(b)に示す配線基板の一部を拡大した拡大断面図。
【図2】配線パターンを示す概略平面図。
【図3】(a)は、第1実施形態の発光装置を示す概略平面図、(b)は、(a)に示す発光装置のB−B概略断面図。なお、(a)では、封止樹脂の図示を省略している。
【図4】(a)〜(c)は、第1実施形態の配線基板の製造過程における状態を示す概略断面図、(d)は、(c)の要部を拡大した拡大断面図。
【図5】第1実施形態の配線基板の製造過程における状態を示す概略平面図。
【図6】(a)、(c)は、第1実施形態の配線基板の製造過程における状態を示す概略断面図、(b)は、(a)の要部を拡大した拡大断面図。
【図7】(a)、(c)は、第1実施形態の配線基板の製造過程における状態を示す概略断面図、(b)は、(a)の要部を拡大した拡大断面図。
【図8】第1実施形態の配線基板の製造過程における状態を示す概略平面図。
【図9】(a)、(b)は、第1実施形態の発光装置の製造過程における状態を示す概略断面図。
【図10】表面粗さと密着性との関係を示すテーブル。
【図11】変形例の配線基板を示す拡大断面図。
【図12】変形例の発光装置を示す概略断面図。
【図13】(a)は、第2実施形態の配線基板を示す概略断面図、(b)は、(a)に示す配線基板の一部を拡大した拡大断面図。
【図14】(a)〜(c)は、第2実施形態の配線基板の製造過程における状態を示す概略断面図、(d)は、(c)の要部を拡大した拡大断面図。
【図15】(a)〜(c)は、第2実施形態の配線基板の製造過程における状態を示す概略断面図。
【図16】変形例の配線基板を示す拡大断面図。
【図17】変形例の配線基板を示す拡大断面図。
【図18】(a)、(b)は、変形例の発光装置を示す概略断面図。
【図19】変形例の配線基板を示す拡大断面図。
【図20】変形例の配線パターンを示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して各実施形態を説明する。なお、添付図面は、特徴を分かりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。断面図では、各部材の断面構造を分かりやすくするために、一部の樹脂層のハッチングを省略している。拡大断面図では、各部材の断面構造を分かりやすくするために、めっき層のハッチングを省略している。
【0009】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態を図1〜図10に従って説明する。
(配線基板の構造)
図1(b)に示すように、発光装置に適用される配線基板1は、基板10と、基板10上に形成された配線パターン20と、配線パターン20上に形成されためっき層30と、めっき層30の一部を覆う絶縁層40とを有している。
【0010】
基板10は、例えば略矩形状の薄板である。基板10の材料としては、例えばポリイミド系樹脂やエポキシ系樹脂などの絶縁性樹脂、又はエポキシ系樹脂にシリカやアルミナ等のフィラーを混入した樹脂材を用いることができる。基板10の厚さは、例えば25〜200μm程度とすることができる。
【0011】
配線パターン20は、基板10の第1主面R1(図1(b)では上面)上に形成されている。この配線パターン20は、図2に示すように、基板10の第1主面R1を全体的に覆うように形成されており、互いに電気的に分離された略矩形状の複数の配線D1を有している。具体的には、配線パターン20は全体的には略櫛歯状に形成されており、その櫛歯状のパターンが図中の上下方向に延在された溝状の開口部20Xによって複数の配線D1に分離されている。換言すると、複数の配線D1が基板10上に略櫛歯状に配置されている。
【0012】
図1(c)に示すように、配線パターン20の表面20A(上面及び側面)は粗面化されており、微細な凹凸形状が形成されている。この粗面化された配線パターン20の表面20Aの粗度は、例えば表面粗さRa値で50〜500nmとなるように設定されている。ここで、表面粗さRa値とは、表面粗さを表わす数値の一種であり、算術平均粗さと呼ばれるものであって、具体的には測定領域内で変化する高さの絶対値を平均ラインである表面から測定して算術平均したものである。
【0013】
なお、配線パターン20の材料としては、例えば銅や銅合金などの金属を用いることができる。配線パターン20の厚さは、例えば15〜150μmとすることができる。
図1(b)に示すように、めっき層30は、配線パターン20の表面20A(粗化面)を覆うように形成されている。めっき層30は、配線パターン20の表面20Aに沿って形成されており、その表面30Aが粗面化されている。この粗面化されためっき層30の表面30Aの粗度は、例えば表面粗さRa値で50〜500nmとなるように設定されている。
【0014】
図1(c)に示すように、めっき層30は、配線パターン20の表面20A上に形成された下地用の第1めっき層31と、第2めっき層32と、第3めっき層33とが順に積層された3層構造を有している。ここで、本実施形態では、第1めっき層31がニッケル(Ni)めっき層、第2めっき層32がパラジウム(Pd)めっき層、第3めっき層33が金(Au)めっき層である。なお、これら第1〜第3めっき層31〜33は、例えば電解めっき法により形成することができる。
【0015】
第1層目の下地用の第1めっき層31は、その下層の配線パターン20に含まれるCuが上層の第2めっき層32(Pd層)及び第3めっき層33(Au層)に拡散するのを防止する機能を有する。この第1めっき層31は、上記拡散防止効果や配線パターン20の腐食を防止する耐腐食性効果、Pdからなる第2めっき層32との密着性などの特性を考慮して、材料組成や厚さが設定される。第1めっき層31の材料としては、例えばNiやNi合金などを用いることができる。また、第1めっき層31の厚さは、上記特性及び製造コストの観点から、0.05μm以上5.00μm以下の範囲が好ましく、0.1μm以上2.00μm以下の範囲がより好ましい。
【0016】
第2層目の第2めっき層32は、例えば熱による第1めっき層31に含まれるNiと第3めっき層33に含まれるAuとの相互拡散を防止する役割を果たす。このような機能を実現するための第2めっき層32の材料としては、例えばPd又はPd合金を用いることができる。第2めっき層32の厚さは、製造コストの点からできる限り薄膜化しつつも、上記相互拡散を抑制するためには、0.001μm以上0.5μm以下の範囲が好ましく、0.005μm以上0.03μm以下の範囲がより好ましい。
【0017】
第3層目の第3めっき層33は、例えばめっき層30や配線パターン20の加熱時の酸化を防止しつつ、コンタクト性(ワイヤボンディング性やはんだ付け性)を向上させる役割を果たす。このような機能を実現するための第3めっき層33の材料としては、配線パターン20(銅)よりも酸化し難く、硬度の低い金属であることが好ましく、例えばAuや銀(Ag)などの貴金属またはこれらの金属を少なくとも一種以上含む貴金属合金を用いることができる。第3めっき層33の厚さは、製造コストの点からできる限り薄膜化しつつも、ワイヤボンディング性を向上させるためには、0.001μm以上0.5μm以下の範囲が好ましく、0.001μm以上0.01μm以下の範囲がより好ましい。
【0018】
これら第1〜第3めっき層31〜33の表面31A〜33A(上面及び側面)は、上記配線パターン20の表面20Aと同様に粗面化されており、微細な凹凸形状が形成されている。これら粗面化された第1〜第3めっき層31〜33の表面31A〜33Aの粗度は、例えば表面粗さRa値で50〜500nmとなるように設定されている。これにより、めっき層30(特に、第3めっき層33)とその第3めっき層33上に形成される絶縁層40との密着性を、第3めっき層33の表面33Aが平滑面である場合よりも増大させることができる。
【0019】
図1(b)に示すように、絶縁層40は、めっき層30の一部を覆うように基板10の第1主面R1側に形成されている。具体的には、図1(a)に示すように、絶縁層40は、発光素子が実装される実装領域CA及び電極端子50が形成される端子領域以外のめっき層30及び基板10を覆うように形成されている。換言すると、絶縁層40には、実装領域CAに形成されためっき層30及び基板10を露出させるための開口部40Xが形成されるとともに、端子領域に形成されためっき層30を電極端子50として露出させるための開口部40Yが形成されている。これら開口部40X,40Yの平面形状は、例えば円形状に形成されている。開口部40Xは、基板10上にマトリクス状(図1(a)では4×4)に形成されている。このため、開口部40Xで画定された実装領域CAも同様に、基板10上にマトリクス状(図1(a)では4×4)に配列されている。この実装領域CAでは、開口部20Xによって分離された2つのめっき層30が開口部40Xから露出されている。ここで、上記開口部20Xは、隣接する2つのめっき層30(配線パターン20)間に溝状に形成されている。なお、開口部40Xから露出されるめっき層30がパッドとして機能する。また、開口部40Yで画定された電極端子50には、外部の電源から給電ケーブル(図示略)等を介して給電されるとともに、配線パターン20が電気的に接続されている。
【0020】
上記絶縁層40は、高い反射率を有する。具体的には、絶縁層40は、波長が450nm〜700nmの間で50%以上(好適には80%以上)の反射率を有する。このような絶縁層40は、白色レジスト層とも呼ばれる。この絶縁層40の材料としては、例えば白色の絶縁性樹脂を用いることができる。白色の絶縁性樹脂としては、例えばエポキシ系樹脂やオルガノポリシロキサン系樹脂に白色の酸化チタン等のフィラーを混入した樹脂材やTiO2又はBaSO4などの白色顔料を含有した樹脂材を用いることができる。このような絶縁層40(白色レジスト層)により基板10の最表面を覆うことにより、配線パターン20の保護に加えて、基板10に実装される発光素子からの光の反射率を高め、発光素子の光量ロスを低減させることができる。
【0021】
また、配線基板1には、複数の溝部60が形成されている。この溝部60は、図1(b)に示すように、絶縁層40の上面から、その絶縁層40及びめっき層30(第1〜第3めっき層31〜33)及び配線パターン20を貫通して基板10の厚みの途中まで形成されている。なお、この溝部60は、当該配線基板1の製造過程で使用されるめっき給電用の給電ライン22(図5参照)を除去するために形成されたものである。
【0022】
(発光装置の構造)
次に、発光装置2の構造について説明する。
図3(b)に示すように、発光装置2は、上記配線基板1と、その配線基板1に実装された複数(図3(a)では16個)の発光素子70と、発光素子70等を封止する封止樹脂75とを有している。
【0023】
図3(a)に示すように、各発光素子70は、配線基板1の各実装領域CAに実装されている。具体的には、各発光素子70は、各実装領域CAに形成された一方のめっき層30(配線パターン20)上に実装されている。より具体的には、図3(b)に示すように、各発光素子70は、上記一方のめっき層30上に接着剤71を介して接着されている。また、各発光素子70は、一方の電極(図示略)がボンディングワイヤ72を介して実装領域CA内の一方のめっき層30に電気的に接続され、他方の電極(図示略)がボンディングワイヤ72を介して実装領域CA内の他方のめっき層30に電気的に接続されている。これにより、各発光素子70の各電極は、ボンディングワイヤ72及びめっき層30を介して、配線パターン20と電気的に接続されている。このような接続により、本実施形態の発光装置2では、図3(a)に示すように、プラス側の電極端子50からマイナス側の電極端子50までの間に16個の発光素子70が直列に接続されることになる。そして、これら発光素子70は、外部の電源(図示略)から電極端子50や配線パターン20を介して給電されて発光する。なお、図1〜図3では、電気的接続の一例を示すために、電極端子50部分に「+」、「−」の記号を示している。
【0024】
上記発光素子70としては、例えば発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)や面発光型半導体レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)を用いることができる。ボンディングワイヤ72としては、例えばAuワイヤ、アルミニウム(Al)ワイヤやCuワイヤなどを用いることができる。
【0025】
図3(b)に示すように、封止樹脂75は、発光素子70及びボンディングワイヤ72等を封止するように配線基板1の上面に設けられている。この封止樹脂75の材料としては、例えばシリコーン樹脂に蛍光体を含有させた樹脂材を用いることができる。このような蛍光体を含有させた樹脂材を発光素子70上に形成することにより、発光素子70の発光と蛍光体の発光の混色を用いることが可能となり、発光装置2の発光色を様々に制御することができる。
【0026】
(作用)
配線パターン20の表面20A全面を覆うようにめっき層30を形成し、そのめっき層30の最外層(最表層)に、安定性の高いAu又はAu合金からなる第3めっき層33を形成するようにした。これにより、めっき層30の表面30A、第2めっき層32、第1めっき層31及び配線パターン20の酸化及び変色を好適に抑制することができる。
【0027】
(配線基板の製造方法)
次に、上記配線基板1の製造方法について図4〜図8に従って説明する。なお、図4(a)、(b)は、図1のA−A線位置における配線基板の製造過程の状態を示した概略断面図であり、図4(c)は、図5に示す配線基板のC−C概略断面図である。また、図6及び図7は、図1のA−A線位置における配線基板の製造過程の状態を示した概略断面図である。
【0028】
まず、配線基板1を製造するためには、図4(a)に示すように、基板10Aの片面に銅箔20Bが被着された片面銅張り基板を用意する。基板10Aは、最終的に切断位置B1で切断されることにより図1に示した基板10となる基板であり、基板10よりも外形が一回り大きく形成されている。
【0029】
次に、図4(b)に示す工程では、銅箔20Bの上面に、所定の箇所に開口部77Xを有するレジスト層77を形成する。このレジスト層77は、所要の配線パターン20及びめっき給電用の第1及び第2給電ライン21,22(図4(c)参照)に対応する銅箔20Bを被覆するように形成される。レジスト層77の材料としては、感光性のドライフィルムレジスト又は液状のフォトレジスト(例えばノボラック系樹脂やアクリル系樹脂等のドライフィルムレジストや液状レジスト)等を用いることができる。例えば感光性のドライフィルムレジストを用いる場合には、銅箔20Bの上面にドライフィルムを熱圧着によりラミネートし、そのドライフィルムを露光・現像によりパターニングして上記レジスト層77を形成する。なお、液状のフォトレジストを用いる場合にも、同様の工程を経て、レジスト層77を形成することができる。
【0030】
次に、図4(c)に示す工程では、レジスト層77をエッチングマスクとして銅箔20Bをエッチングし、銅箔20Bを所定形状にパターニングする。これにより、基板10Aの第1主面R1(上面)に、所要の配線パターン20と、第1及び第2給電ライン21,22とが形成される。具体的には、図5に示すように、多数の配線D1を有する配線パターン20と、基板10Aの外周縁に形成された第1給電ライン21と、その第1給電ライン21と配線パターン20とを電気的に接続する、又は各配線D1を電気的に接続する第2給電ライン22とが形成される。これにより、全ての配線D1が第1及び第2給電ライン21,22を介して電気的に接続されることになる。以下の説明では、配線パターン20、第1及び第2給電ライン21,22をまとめて配線層23とも称する。なお、上記銅箔20Bのパターニング終了後に、図4(b)に示したレジスト層77を例えばアルカリ性の剥離液により除去する。
【0031】
次に、図4(d)に示す工程では、配線パターン20に対して粗化処理を施す。この粗化処理は、配線パターン20の表面20A(上面及び側面)の粗度が、表面粗さRa値で50〜500nmとなるように行われる。このような粗化処理により、配線パターン20の表面20Aに微細な凹凸が形成されて、その表面20Aが粗面化される。粗化処理としては、例えばエッチング、酸化、めっき、ブラスト等によって行うことができる。なお、この粗化処理では、配線パターン20と同様に銅からなる第1及び第2給電ライン21,22も粗化される。
【0032】
次に、図6(a)に示す工程では、配線パターン20の表面20Aに、配線層23をめっき給電層に利用する電解めっき法を施し、配線パターン20の表面20Aに3層構造のめっき層30を形成する。具体的には、図6(b)に示すように、配線パターン20の表面20AにNiめっきを施して厚さ0.05〜5.00μm(好適には0.1〜2.00μm)のNi層(第1めっき層31)を形成する。このとき、第1めっき層31は、配線パターン20の表面20Aに沿った形状に形成されるため、配線パターン20と同様に、第1めっき層31の表面31Aも粗面化される。続いて、第1めっき層31上にPdめっきを施して厚さ0.001〜0.5μm(好適には0.005〜0.03μm)のPd層(第2めっき層32)を形成する。このとき、第2めっき層32は、第1めっき層31の表面31Aに沿った形状に形成されるため、第1めっき層31と同様に、第2めっき層32の表面32Aも粗面化される。そして、第2めっき層32上にAuめっきを施して厚さ0.001〜0.5μm(好適には0.001〜0.01μm)のAu層(第3めっき層33)を形成する。このとき、第3めっき層33は、第2めっき層32の表面32Aに沿った形状に形成されるため、第2めっき層32と同様に、第3めっき層33の表面33Aも粗面化される。したがって、第3めっき層33の表面33Aの粗度は、配線パターン20と同様に、表面粗さRa値で50〜500nmとなる。
【0033】
なお、本実施形態では、配線パターン20と同様に、第1及び第2給電ライン21,22上にもめっき層30を形成するようにしたが、第1及び第2給電ライン21,22上ではめっき層30の形成を省略してもよい。
【0034】
次に、図6(c)に示す工程では、基板10上及びめっき層30上に、実装領域CA及び電極端子50にそれぞれ対応する開口部40X,40Yを有する絶縁層40を形成する。例えば基板10Aの第1主面R1、配線パターン20及び給電ライン21,22を覆うように絶縁層40となるレジスト層を形成した後、フォトリソグラフィ法によりレジスト層を露光・現像して上記開口部40X,40Yを形成することで、上記絶縁層40を形成することができる。また、絶縁層40は、例えば樹脂ペーストのスクリーン印刷法によっても形成することができる。このとき、めっき層30の最表層の第3めっき層33の表面33A(図6(b)参照)が粗面化されているため、その第3めっき層33の表面33Aと絶縁層40との間で良好な密着性を得ることができる。
【0035】
また、上記絶縁層40の形成によって、配線パターン20上に形成されためっき層30が開口部40Xから露出される実装領域CAを形成することができる。このため、絶縁層40の形成後に、コンタクト性を向上させるために電解めっき等を施す必要がない。これにより、上記めっき層30を形成する際に使用されるめっき液の劣化を抑制することができる。詳述すると、絶縁層40を形成した後に、開口部40Xから露出された配線パターン20に対してめっき法(電解めっき法又は無電解めっき法)を施す場合には、そのときに使用されるめっき液に対して絶縁層40に含まれる樹脂材等が溶出し、めっき液の劣化とそれによる液寿命の短縮化を引き起こすという問題がある。これに対し、本実施形態の製造方法によれば、電解めっき法を実施する際には、絶縁層40が形成されていないため、上述したような問題の発生を未然に防止することができる。すなわち、本実施形態の製造方法によれば、めっき液の劣化を抑制することができるため、めっき液の液寿命の短縮化を抑制することができる。
【0036】
次いで、図7(a)に示す工程では、図6(c)に示した第2給電ライン22を除去するように溝部60を形成する。具体的には、図7(b)に示すように、溝部60は、第2給電ライン22に対向する絶縁層40及びめっき層30と第2給電ライン22(図6(c)参照)とを厚さ方向に貫通し、溝部60の底面が基板10Aの厚さ方向の中途に位置するように形成される。図8に示すように、この溝部60は第2給電ライン22の形成された全ての箇所(図8では、20箇所)に形成されるため、本工程では20個の溝部60が形成される。これにより、全ての第2給電ライン22及びそれら第2給電ライン22上に形成されためっき層30が除去され、溝部60の形成された領域では基板10Aが露出される。そして、このような溝部60の形成によって、基板10Aの外周縁に形成された第1給電ライン21と配線パターン20とが分離されるとともに、各配線D1が分離される。すなわち、上記溝部60の形成(第2給電ライン22の除去)により、各配線D1は電気的に分離される。なお、上記溝部60は、例えばルータ加工、レーザ加工や微細な金型を用いた金型加工により形成することができる。
【0037】
続いて、図7(c)に示す工程では、切断位置B1に対する部分の絶縁層40及び基板10をダイシングブレード等によって切断する。これにより、第1給電ライン21が除去され、図1に示した配線基板1が製造される。
【0038】
次に、発光装置2の製造方法を図9に従って説明する。なお、図9は、図3のB−B線位置における発光装置の製造過程の状態を示した概略断面図である。
図9(a)に示す工程では、上記配線基板1の各実装領域CA内に形成された配線パターン20(めっき層30)上に接着剤71を介して発光素子70を搭載する。その後、発光素子70の電極とめっき層30とをボンディングワイヤ72により接続し、発光素子70と配線パターン20とを電気的に接続する。具体的には、発光素子70の一方の電極を実装領域CA内の一方のめっき層30とボンディングワイヤ72により電気的に接続するとともに、発光素子70の他方の電極を実装領域CA内の他方のめっき層30とボンディングワイヤ72により電気的に接続する。
【0039】
次に、図9(b)に示す工程では、配線基板1上に実装された複数の発光素子70及びボンディングワイヤ72を封止する封止樹脂75を形成する。例えば封止樹脂75として熱硬化性を有する樹脂を用いる場合には、図9(a)に示す構造体を金型内に収容し、金型内に圧力(例えば、5〜10MPa)を印加し、流動化した樹脂を導入する。その後、樹脂を例えば180℃程度で加熱して硬化させることで、封止樹脂75を形成する。このとき、図9(b)に示すように、配線基板1の溝部60内にも封止樹脂75が充填される。なお、封止樹脂75は、液状の樹脂のポッティングにより形成することもできる。
【0040】
以上の製造工程により、図3に示した発光装置2が製造される。
(めっき層の密着性評価)
次に、めっき層30の表面30Aの表面粗さと、そのめっき層30に対する絶縁層40の密着性との関係について評価した結果を図10に従って説明する。
【0041】
まず、評価用のサンプルを5種類作成した。具体的には、実施例1,2及び比較例1,2のサンプルでは、表面の粗度が表面粗さRa値で75nmの銅板上に、Niめっき層、Pdめっき層及びAuめっき層からなるめっき層を形成した。このとき、Niめっきの条件を適宜調整することで、めっき層の最表層、つまりAuめっき層の表面の表面粗さRa値を各サンプルで異なる値に調整した。具体的には、図10に示すように、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2における最表層の表面の表面粗さRa値を、65nm、368nm、20nm、511nmにそれぞれ調整している。一方、比較例3のサンプルでは、表面の粗度が表面粗さRa値で75nmの銅板を用意した。
【0042】
そして、各サンプルの最表層(実施例1,2及び比較例1,2ではAuめっき層、比較例3では銅板)上に白色レジスト材料をスクリーン印刷した後、白色レジスト材料をオーブンで60分間150℃で加熱することにより熱硬化させて、厚さ30μmの絶縁層を形成した。なお、白色レジスト材料としては、オルガノポリシロキサン樹脂と、シリカフィラーと、酸化チタンフィラーと、硬化剤とを含む絶縁材料を使用した。
【0043】
(密着性評価方法)
全てのサンプルについて、カッターを用いて絶縁層に1mm間隔で格子状の切り込みを入れ100個のマスの目を作成した。その後、粘着テープを絶縁層のマス目上に貼り付け、粘着テープを勢いよく剥がした。このときに剥離せずに残ったマスの数をカウントした。そして、この剥離せずに残ったマスの数からめっき層に対する絶縁層の密着性を評価した。その結果を図10に示す。ここで、100個のマスのうち10個以上のマスが残っていれば、配線基板の絶縁層として実用上支障のない密着性を有すると言える。その一方で、100個のうち75個程度のマスが残っていれば、配線基板の絶縁層として十分な密着性を有すると言える。換言すると、これ以上密着性を向上させても粗化処理の手間や処理時間を考えると実用的ではない。
【0044】
図10に示した実施例1,2及び比較例1,2の結果から明らかなように、Auめっき層の表面の表面粗さRa値が高くなるほど、剥離せずに残るマスの数が多くなる、つまり絶縁層40との密着性が高くなる。具体的には、比較例1のようにAuめっき層の表面粗さRa値が20nmでは、剥離せずに残ったマスの数が0個であり、絶縁層との密着性が不十分であった。これに対し、実施例1のようにAuめっき層の表面粗さRa値を65nmとすると、15個のマスが剥離せず残り、配線基板の絶縁層として実用上支障のない密着性を得ることができる。このように、Auめっき層の表面粗さRa値を50nm以上とすることにより、そのめっき層と絶縁層との密着性が良好となる。さらに、実施例2のようにAuめっき層の表面粗さRa値を368nmとすると、48個のマスが剥離せず残り、銅板上に直接絶縁層を形成した場合(比較例3参照)と同等の密着性を得ることができる。但し、比較例2のようにAuめっき層の表面粗さRaを511nmとすると、81個のマスが剥離せず残る。このように、Auめっき層の表面粗さRa値が500nm以上になると、粗化処理が過剰であることが分かる。
【0045】
以上のことから、絶縁層との密着性及び粗化処理の手間や処理時間の観点から、めっき層の最表面の粗度は、表面粗さRa値で50nm以上500nm以下であることが好ましい。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)配線パターン20の表面20A全面を覆うようにめっき層30を形成し、そのめっき層30の最外層(最表層)に、安定性の高いAu又はAu合金からなる第3めっき層33を形成するようにした。これにより、めっき層30の表面30A、第2めっき層32、第1めっき層31及び配線パターン20の酸化及び変色を好適に抑制することができる。したがって、発光装置2の使用時に発生する熱によるめっき層30及び配線パターン20の酸化及び変色を抑制することができ、配線抵抗の上昇を抑制することができる。この結果、発光素子70の発光効率が低下することを好適に抑制することができる。
【0047】
(2)さらに、配線パターン20の表面20A全面を覆うようにめっき層30を形成した後に、そのめっき層30の一部を覆う絶縁層40を形成するようにした。この場合には、電解めっき法によりめっき層30を形成する際には、絶縁層40が形成されていないため、その絶縁層40の存在に起因してめっき液が劣化することを未然に防止することができる。これにより、めっき液の液寿命を延ばすことができ、そのめっき液を継続的に使用することができる。この結果、コスト削減に貢献することができる。
【0048】
(3)ところで、本実施形態の配線基板1では、基板10の第1主面R1上の面積に占める配線パターン20の面積の割合が非常に大きい(例えば、70〜80%以上が配線パターン20の面積になる)。このため、配線基板1からの絶縁層40の剥離防止の観点から、配線パターン20上に形成されためっき層30と絶縁層40との密着性の向上が重要となる。この点に関し、本実施形態の配線基板1では、めっき層30の表面30A(第3めっき層33の表面33A)を粗面化するようにした。これにより、めっき層30と絶縁層40との接触面積が増大するため、めっき層30と絶縁層40との密着性を向上させることができる。したがって、配線基板1から絶縁層40が剥離することを好適に抑制することができる。
【0049】
(4)さらに、めっき層30の表面30A(第3めっき層33の表面33A)の粗度を、表面粗さRa値で50〜500nmになるようにした。これにより、めっき層30と絶縁層40との間で良好な密着性を得ることができるため、配線基板1から絶縁層40が剥離することをより好適に抑制することができる。
【0050】
(5)めっき層30を、配線パターン20の表面20Aに形成された第1めっき層31(Ni層)と、第2めっき層32(Pd層)と、第3めっき層33(Au層)とが順に積層された3層構造のめっき層とした。めっき層30の最外層にAuからなる第3めっき層33を形成したことにより、上述したように、配線パターン20及びめっき層30の酸化を抑制することができるため、良好なワイヤボンディング性を得ることができる。また、Niからなる第1めっき層31と、Auからなる第3めっき層33との間に、バリア性の高いPdからなる第2めっき層32が介在されるため、熱などによるAuとNiとの相互拡散を抑制することができる。
【0051】
(6)第1〜第3めっき層31〜33を電解めっき法により形成するようにした。これにより、めっき層30を無電解めっき法により形成する場合よりも製造コストを低減することができる。
【0052】
なお、上記第1実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・図11に示されるように、第2給電ライン22を除去するために形成した溝部60を、絶縁層40、めっき層30、第2給電ライン22(配線パターン20)及び基板10を厚さ方向に貫通するように形成してもよい。すなわち、少なくとも第2給電ライン22が除去されるように、絶縁層40、めっき層30及び第2給電ライン22を厚さ方向に貫通するように溝部が形成されていればよい。
【0053】
・図12に示されるように、基板10の第2主面R2(図12では下面)に金属層80を形成するようにしてもよい。この金属層80は、例えば平板状に形成された金属板を用いることができる。金属層80の材料としては、例えば銅、アルミニウム、鉄などの熱伝導性に優れた金属を用いることができる。金属層80の厚さは、例えば0.1〜0.4mm程度とすることができる。この金属層80は、配線基板1の支持板として機能するとともに、発光素子70の発光時に発生する熱を放熱する放熱板として機能する。ここで、発光素子70(発光ダイオード)の発光効率は、その温度上昇に伴い減少する傾向にある。このため、上記金属層80により発光素子70から発生する熱を効率良く放熱することにより、発光素子70の発光効率の低下を好適に抑制することができる。
【0054】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態を図13〜図15に従って説明する。この実施形態の配線基板3は、配線パターン及びめっき層の構造、及び基板10の第2主面R2に金属層80が形成された点が上記第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、先の図1〜図12に示した部材と同一の部材にはそれぞれ同一の符号を付して示し、それら各要素についての詳細な説明は省略する。
【0055】
図13(a)に示すように、基板10の第2主面R2(図13(a)では下面)には、金属層80が形成されている。この金属層80は、例えば平板状に形成された金属板を用いることができる。金属層80の材料としては、例えば銅、アルミニウム、鉄などの熱伝導性に優れた金属を用いることができる。金属層80の厚さは、例えば0.1〜0.4mm程度とすることができる。
【0056】
図13(b)に示すように、基板10の第1主面R1(図13(b)では上面)に形成された配線パターン25は、その表面25A(上面及び側面)が凹凸の少ない平滑面に形成されている。配線パターン25の平面形状は、上記第1実施形態の配線パターン20と同様であるため、その図示を省略している。
【0057】
配線パターン25の表面25Aには、表面が粗面化された第1めっき層(粗面めっき層)36と、第2めっき層37と、第3めっき層38とが順に積層された3層構造のめっき層35が形成されている。ここで、本実施形態では、第1めっき層36がニッケル(Ni)めっき層、第2めっき層37がパラジウム(Pd)めっき層、第3めっき層38が金(Au)めっき層である。なお、これら第1〜第3めっき層36〜38は、例えば電解めっき法により形成することができる。
【0058】
第1めっき層36の表面(粗化面)36Aは、微細な凹凸形状に形成されている。この粗化面36Aの粗度は、例えば表面粗さRa値で50nm以上となるように設定されている。具体的には、粗化面36Aの粗度は、第1めっき層36を電解めっき法にて形成する際に使用するめっき液の組成や電流密度等を調整することにより、表面粗さRa値で50〜500nmとなるように設定されている。この第1めっき層36は、配線パターン25に含まれるCuの拡散防止効果や配線パターン25の腐食を防止する耐腐食性効果、Pdからなる第2めっき層37との密着性などの特性を考慮して、材料組成や厚さが設定される。第1めっき層36の材料としては、例えばNiやNi合金を用いることができる。また、第1めっき層36の厚さは、上記特性及び製造コストの観点から、0.05μm以上5.00μm以下の範囲が好ましく、0.1μm以上2.00μm以下の範囲がより好ましい。
【0059】
第2めっき層37は、例えば熱による第1めっき層36に含まれるNiと第3めっき層38に含まれるAuとの相互拡散を防止する役割を果たす。このような機能を実現するための第2めっき層37の材料としては、例えばPd又はPd合金を用いることができる。第2めっき層37の厚さは、製造コストの点からできる限り薄膜化しつつも、上記相互拡散を抑制するためには、0.001μm以上0.5μm以下の範囲が好ましく、0.005μm以上0.03μm以下の範囲がより好ましい。この第2めっき層37の表面37A(上面及び側面)は、上記第1めっき層36と同様に粗面化されており、微細な凹凸形状が形成されている。この粗面化された第2めっき層37の表面37Aの粗度は、例えば表面粗さRa値で50〜500nmとなるように設定されている。
【0060】
第3めっき層38は、例えばめっき層35や配線パターン25の加熱時の酸化を防止しつつ、コンタクト性(ワイヤボンディング性やはんだ付け性)を向上させる役割を果たす。このような機能を実現するための第3めっき層38の材料としては、配線パターン25(銅)よりも酸化し難く、硬度の低い金属であることが好ましく、例えばAuやAgなどの貴金属又はこれらの金属を少なくとも一種以上含む貴金属合金を用いることができる。第3めっき層38の厚さは、製造コストの点からできる限り薄膜化しつつも、コンタクト性を向上させるためには、0.001μm以上0.5μm以下の範囲が好ましく、0.001μm以上0.01μm以下の範囲がより好ましい。この第3めっき層38の表面38A(上面及び側面)は、上記第2めっき層37と同様に粗面化されており、微細な凹凸形状が形成されている。この粗面化された第3めっき層38の表面38Aの粗度は、例えば表面粗さRa値で50〜500nmとなるように設定されている。これにより、第3めっき層38とその第3めっき層38上に形成される絶縁層40との密着性を、第3めっき層38の表面38Aが平滑面である場合よりも増大させることができる。
【0061】
また、配線基板3には、溝部61が形成されている。この溝部61は、絶縁層40の上面から、その絶縁層40、めっき層35、配線パターン25及び基板10を貫通して金属層80の厚みの途中まで形成されている。なお、この溝部61は、当該配線基板3の製造過程で使用されるめっき給電用の給電ライン22(図14(b)参照)を除去するために形成されたものである。
【0062】
(配線基板の製造方法)
次に、上記配線基板3の製造方法について説明する。
まず、配線基板3を製造するためには、図14(a)に示すように、基板10Aの片面に銅箔25Bが被着された片面銅張り基板を金属層80Aに接着した構造体を用意する。ここで、基板10Aは、最終的に切断位置B1で切断されることにより図13に示した基板10となるものである。また、金属層80Aは、最終的に切断位置B1で切断されることにより図13に示した金属層80となるものである。
【0063】
次に、図14(b)に示す工程では、図4(b)及び図4(c)に示した工程と同様に、基板10Aの第1主面R1(図14(b)では上面)に形成された銅箔25Bを所定形状にパターニングする。これにより、基板10Aの第1主面R1に、所要の配線パターン25と、第1及び第2給電ライン21,22とが形成される。なお、以下の説明では、配線パターン25、第1及び第2給電ライン21,22をまとめて配線層26とも称する。
【0064】
続いて、図14(c)に示す工程では、配線パターン25の表面25Aに、配線層26をめっき給電層に利用する電解めっき法を施し、配線パターン25の表面25A(上面及び側面)に3層構造のめっき層35を形成する。
【0065】
具体的には、図14(d)に示すように、まず、配線パターン25の表面25Aに、表面が粗化面36Aである第1めっき層(粗面めっき層)36を形成する。ここで、粗化面36Aの表面粗度は、表面粗さRa値で50〜500nmの範囲であることが好ましい。但し、このような粗度に設定するためには、上述もしたように、使用するめっき液の組成や電流密度を適切に調整する必要がある。以下に、Niから構成される粗面めっき層36を形成する際のめっき条件の一例を説明する。具体的には、めっき液として塩化ニッケルめっき浴を使用する場合のめっき浴の組成及びめっき条件は、次の通りである。
【0066】
塩化ニッケルめっき浴:
塩化ニッケル 75g/L
チオシアン酸ナトリウム 15g/L
塩化アンモニウム 30g/L
ホウ酸 30g/L
pH: 約4.5〜5.5
浴温: 常温(約25℃)
処理時間: 約1〜30分間
陰極電流密度: 約1〜3A/dm
このように、予め使用するめっき液の組成や電流密度等を適切に調整することにより、第1めっき層36の表面36Aが粗面化され、その粗化面36Aの粗度を所望の表面粗度に設定させることができる。なお、上述しためっき液の組成やめっき条件は一例であり、第1めっき層36の粗化面36Aが所望の粗度になるように調整されるのであれば、その組成や条件は特に限定されない。
【0067】
次に、第1めっき層36上にPdめっきを施して厚さ0.001〜0.5μm(好適には0.005〜0.03μm)のPd層(第2めっき層37)を形成する。このとき、第2めっき層37は、第1めっき層36の粗化面36Aに沿った形状に形成されるため、第1めっき層36と同様に、第2めっき層37の表面37Aも粗面化される。以下に、Pdから構成される第2めっき層37を形成する際のめっき浴の組成及びめっき条件の一例を説明する。
【0068】
Pdめっき浴:
ジニトロテトラアンミンパラジウム 10g/L
クエン酸アンモニウム 150g/L
応力緩和剤
結晶調整剤
pH: 約7.5〜8.5
浴温: 約50℃
処理時間: 約2〜10秒間
陰極電流密度 約1〜3A/dm
続いて、第2めっき層37上にAuめっきを施して厚さ0.001〜0.5μm(好適には0.001〜0.01μm)のAu層(第3めっき層38)を形成する。このとき、第3めっき層38は、第2めっき層37の表面37Aに沿った形状に形成されるため、第2めっき層37と同様に、第3めっき層38の表面38Aも粗面化される。したがって、第3めっき層38の表面38Aの粗度は、第1めっき層36の粗化面36Aと同様に、表面粗さRa値で50〜500nmとなる。以下に、Auから構成される第3めっき層38を形成する際のめっき浴の組成及びめっき条件の一例を説明する。
【0069】
Auめっき浴:
シアン化金カリウム 10g/L
クエン酸カリウム 100g/L
置換抑制剤
光沢剤
pH: 約5.5〜6.5
浴温: 約50℃
処理時間: 約2〜20秒間
陰極電流密度: 約0.5〜1A/dm
次いで、図15(a)に示す工程では、基板10A上及びめっき層35上に、実装領域CA及び電極端子50に対応する開口部40X,40Yを有する絶縁層40を形成する。このとき、めっき層35の最表層の第3めっき層38の表面38Aが粗面化されているため、その第3めっき層38と絶縁層40との間で良好な密着性を得ることができる。
【0070】
次に、図15(b)に示す工程では、図15(a)に示した第2給電ライン22を除去するように溝部61を形成する。具体的には、溝部61は、第2給電ライン22に対向する絶縁層40及びめっき層35と第2給電ライン22と基板10Aとを厚さ方向に貫通し、溝部61の底面が金属層80Aの厚さ方向の中途に位置するように形成される。これにより、第2給電ライン22が除去される。なお、上記溝部61は、例えばルータ加工、レーザ加工や微細な金型を用いた金型加工により形成することができる。
【0071】
続いて、図15(c)に示す工程では、切断位置B1に対する部分の絶縁層40と基板10Aと金属層80Aをダイシングブレード等によって切断する。これにより、第1給電ライン21が除去され、図13に示した配線基板3が製造される。
【0072】
以上説明した実施形態によれば、第1実施形態の(1)〜(6)の効果に加えて以下の効果を奏する。
(7)基板10の第2主面R2に金属層80を形成するようにした。この金属層80によって発光素子70から発生する熱を効率良く放熱することにより、発光素子70の発光効率の低下を好適に抑制することができる。
【0073】
なお、上記第2実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・図16に示されるように、第2給電ライン22を除去するために形成した溝部61の代わりに、絶縁層40、めっき層35、第2給電ライン22(配線パターン25)、基板10及び金属層80を厚さ方向に貫通する溝部61Aを形成するようにしてもよい。
【0074】
・図17に示されるように、溝部61Aの形成によって露出された配線パターン25及びめっき層35の側面、すなわち溝部61Aの側面にもなる配線パターン25及びめっき層35の側面の一部を除去するようにしてもよい。具体的には、配線パターン25及びめっき層35の側面を、それらの側面が溝部61Aの側面から基板10内に後退した位置になるように一部を除去するようにしてもよい。これにより、基板10の厚さが薄い場合であっても、配線パターン25及びめっき層35と金属層80との間の距離が広がるため、それらが電気的に接続(短絡)されることを好適に抑制することができる。
【0075】
なお、上述したような配線パターン25及びめっき層35の除去は、例えばエッチングにより行うことができる。エッチングとしては、例えばゴムなどを用いたマスキングによる部分エッチングを用いることができる。この部分エッチングによれば、溝部61A周辺に対してのみエッチングを行うことができるため、所望の箇所(ここでは、溝部61Aの形成によって露出された配線パターン25及びめっき層35)に対して選択的にエッチングを行うことができる。
【0076】
ここでは、溝部61Aを形成した場合について説明したが、溝部60,61を形成した場合についても同様の処理を行うようにしてもよい。
・上記第2実施形態における金属層80を省略してもよい。
【0077】
(その他の変形例)
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記各実施形態では、基板10上に形成された配線パターン20,25を覆うように形成されためっき層30,35上に発光素子70をワイヤボンディング実装するようにした。これに限らず、例えば図18(a)、(b)に示すように、上記めっき層30,35上に発光素子90をフリップチップ実装するようにしてもよい。この場合、発光素子90は、実装領域CAに形成された開口部20X,25Xを跨るように、その開口部20X,25Xの両側に形成されためっき層30,35上に実装される。具体的には、発光素子90の回路形成面(図18では下面)に形成された一方のバンプ91が実装領域CA内の一方のめっき層30,35にフリップチップ接続され、他方のバンプ91が実装領域CA内の他方のめっき層30,35にフリップチップ接続される。
【0078】
・図19に示されるように、基板10の実装領域CAに凹部10Xを形成し、その凹部10X内に発光素子90を実装するようにしてもよい。この場合には、凹部10Xに配線パターン20を形成し、その配線パターン20の表面20Aを覆うようにめっき層30を形成し、実装領域CA以外のめっき層30を覆うように絶縁層40を形成する。そして、凹部10Xの底面に形成されためっき層30上に発光素子90を実装する。なお、図19では、発光素子90をフリップチップ実装するようにしているが、発光素子をワイヤボンディング実装するようにしてもよい。
【0079】
・上記各実施形態において、めっき層30,35の最外層のめっき層33,38を、下層のめっき層32,37の表面32A,37Aの一部が露出されるように、そのめっき層32,37の表面32A,37A上に分散して形成するようにしてもよい。
【0080】
・上記各実施形態において、めっき層30,35の層構成を適宜変更してもよい。例えば、第2めっき層32,37と第3めっき層33,38との間に、Ag又はAg合金からなる第4めっき層を形成するようにしてもよい。また、配線パターン20,25上に、Ni又はNi合金からなる第1めっき層31,36と、Au又はAu合金からなる第3めっき層33,38とを形成するようにしてもよい。すなわち、第2めっき層32,37を省略してもよい。
【0081】
また、配線パターン20,25上に、Ni又はNi合金からなる第1めっき層31,36と、Pd又はPd合金からなる第2めっき層32,37と、Ag又はAg合金からなる第4めっき層とを形成するようにしてもよい。すなわち、第3めっき層33,38の代わりに、第4めっき層を形成するようにしてもよい。また、配線パターン20,25上に、Ni又はNi合金からなる第1めっき層31,36と、Ag又はAg合金からなる第4めっき層とを形成するようにしてもよい。あるいは、配線パターン20,25上に、Ag又はAg合金からなる第4めっき層を1層のみ形成するようにしてもよい。このように、めっき層30,35の最外層をAg又はAg合金からなる第4めっき層とした場合には、AgがAuに比べて光の反射率が高いため、発光装置としての発光効率を向上させることができる。
【0082】
・上記各実施形態では、めっき層30,35を電解めっき法により形成するようにしたが、これに限らず、例えばめっき層30,35を無電解めっき法により形成するようにしてもよい。なお、この場合には、給電ライン21,22を形成する必要がないため、溝部60,61を省略することができる。
【0083】
・上記各実施形態における開口部40Xの平面形状は、円形状に限らず、例えば矩形状や五角形、六角形等の多角形状であってもよい。
・上記各実施形態では、基板10A上に1つの配線基板1,3を作製する例を示したが、基板10A上に複数の配線基板1,3となる部材を作製し、それを個片化して複数の配線基板1,3を得るような工程に変更してもよい。
【0084】
・上記各実施形態における発光素子70,90の個数や配置は、特に限定されない。また、上記各実施形態における配線パターン20,25の形状も特に限定されない。例えば、図20に示されるような配線パターンに変更してもよい。すなわち、帯状の複数の配線パターン24を平行に隣接して配置するようにしてもよい。この場合には、隣接する配線パターン24間には、下層の基板10を露出する溝状の開口部24Xが形成されている。そして、この開口部24Xによって、複数の配線パターン24は互いに電気的に分離されている。なお、電極端子50は、外側に形成された配線パターン24にそれぞれ形成される。このような配線パターン24及び電極端子50を有する配線基板に発光素子を実装した場合には、複数の発光素子が並列及び直列に接続されることになる。
【符号の説明】
【0085】
1,3 配線基板(発光装置用配線基板)
2 発光装置
10 基板
20,24,25 配線パターン
21,22 給電ライン
23,26 配線層
30,35 めっき層
31,36 第1めっき層
32,37 第2めっき層
33,38 第3めっき層(最外めっき層)
40 絶縁層
60,61,61A 溝部
70,90 発光素子
75 封止樹脂
80 金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の第1主面上に形成された配線パターンと、
前記配線パターンの表面を覆うように形成されためっき層と、
前記めっき層の形成された配線パターンを被覆し、前記第1主面上に形成された絶縁層と、を有し、
前記絶縁層には、前記めっき層の形成された配線パターンの一部を発光素子の実装領域として露出する開口部が形成され、
前記めっき層は、最外層に貴金属又は貴金属合金からなる最外めっき層を有することを特徴とする発光装置用の配線基板。
【請求項2】
前記めっき層の表面が粗面化されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置用の配線基板。
【請求項3】
前記めっき層の表面の粗度が、表面粗さRa値で50〜500nmであることを特徴とする請求項2に記載の発光装置用の配線基板。
【請求項4】
前記配線パターンの表面が粗面化され、該粗面化された配線パターンの表面に沿って前記めっき層が設けられることにより前記めっき層の表面が粗面化されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の発光装置用の配線基板。
【請求項5】
前記めっき層は、前記配線パターンの表面に形成されたNi又はNi合金からなる第1めっき層と、Pd又はPd合金からなる第2めっき層と、前記最外めっき層とが順に積層されて形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光装置用の配線基板。
【請求項6】
前記めっき層は、前記配線パターンの表面に形成され、表面が粗面化されたNi又はNi合金からなる第1めっき層と、Pd又はPd合金からなる第2めっき層と、前記最外めっき層とが順に積層されて形成されることを特徴とする請求項2又は3に記載の発光装置用の配線基板。
【請求項7】
少なくとも前記絶縁層、前記めっき層及び前記配線パターンを厚さ方向に貫通する溝部が形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の発光装置用の配線基板。
【請求項8】
前記基板の前記第1主面とは反対側の第2主面には金属層が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の発光装置用の配線基板。
【請求項9】
基板と、
前記基板の第1主面上に形成された配線パターンと、
前記配線パターンの表面を覆うように形成されためっき層と、
前記めっき層の形成された配線パターンを被覆し、前記第1主面上に形成されるとともに、前記めっき層の形成された配線パターンの一部を露出する開口部が形成された絶縁層と、
前記開口部から露出されためっき層上に実装された発光素子と、
前記発光素子を封止するように形成された封止樹脂と、を有し、
前記めっき層は、最外層に貴金属又は貴金属合金からなる最外めっき層を有することを特徴とする発光装置。
【請求項10】
基板の第1主面上に電解めっき用の給電ライン及び配線パターンを含む配線層を形成する工程と、
前記配線層を給電層とする電解めっき法により、前記配線パターンの表面全面にめっき層を形成する工程と、
前記めっき層の形成された配線パターンを被覆する絶縁層を前記第1主面上に形成する工程と、
前記絶縁層に、前記めっき層の形成された配線パターンの一部を発光素子の実装領域として露出する開口部を形成する工程と、
を有することを特徴とする発光装置用配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記絶縁層、前記めっき層及び前記給電ラインを貫通する溝部を形成する工程を有することを特徴とする請求項10に記載の発光装置用配線基板の製造方法。
【請求項12】
前記溝部の側面となる前記めっき層及び前記配線パターンの一部を除去する工程を有することを特徴とする請求項11に記載の発光装置用配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−65621(P2013−65621A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202126(P2011−202126)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】