説明

発光装置

【課題】放熱性を向上させることができるとともに光出力の高出力化を図れる発光装置を提供する。
【解決手段】LEDチップ10と、当該LEDチップ10が一表面側に実装された実装基板20と、LEDチップ10から放射された光によって励起されてLEDチップ10の発光色とは異なる色の光を放射する蛍光体を含有した透光性材料により形成され実装基板20の上記一表面側に配設された色変換部材70とを備える。実装基板20は、熱伝導性材料からなる伝熱板21の一表面側に、LEDチップ10の一対の電極13,13それぞれに電気的に接続される複数(2つ)のリードパターン23,23が形成されており、LEDチップ10は、実装基板20側の一面11aとは反対側の他面11bの面積が上記一面11aの面積よりも大きな透明導電性基板11の上記他面11b側に、窒化物半導体材料からなる島状のLED薄膜部12が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDチップ(発光ダイオードチップ)を備えた発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、LEDチップとLEDチップから放射された光によって励起されてLEDチップとは異なる発光色の光を放射する蛍光体とを組み合わせ所望の混色光(例えば、白色光)を得るようにした発光装置の研究開発が各所で行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここにおいて、上記特許文献1には、図10に示すように、LEDチップ10’と、当該LEDチップ10’が一表面側に実装された実装基板20’と、透明樹脂(例えば、シリコーン樹脂など)の成形品により構成され実装基板20’の上記一表面側でLEDチップ10’を囲む枠体40’と、枠体40’の内側に透明樹脂材料(例えば、シリコーン樹脂など)を充填して形成されてLEDチップ10’および当該LEDチップ10’の一対の電極(図示せず)それぞれに接続されたボンディングワイヤ14,14を封止し且つ弾性を有する封止部50’と、封止部50’に重ねて配置されるレンズ55’と、LEDチップ10’から放射された光によって励起されてLEDチップ10’の発光色とは異なる色の光を放射する蛍光体を透明材料とともに成形した成形品であってレンズ55’と枠体40’とで構成される光学部材60’との間に空気層80’が形成される形で配設されるドーム状の色変換部材70’とを備えている。
【0004】
実装基板20’は、LEDチップ10’が搭載される金属板からなる伝熱板21’と、伝熱板21’に積層されたガラスエポキシ基板からなる絶縁性基材22’とで構成されており、当該絶縁性基材22’における伝熱板21’側とは反対側の表面にLEDチップ10’の両電極それぞれと電気的に接続される一対のリードパターン23’,23’が設けられるとともに、絶縁性基材22’においてLEDチップ10’に対応する部位に窓孔26’が設けられており、LEDチップ10’で発生した熱が絶縁性基材22’を介さずに伝熱板21’に伝熱できるようになっている。
【0005】
LEDチップ10’は、青色光を放射するGaN系青色LEDチップであり、結晶成長用基板としてサファイア基板に比べて格子定数や結晶構造がGaNに近く且つ導電性を有するn形のSiC基板からなる導電性基板11’を用いており、導電性基板11’の主表面側にGaN系化合物半導体材料により形成されて例えばダブルへテロ構造を有する積層構造部からなるLED薄膜部(発光部)12’がエピタキシャル成長法(例えば、MOVPE法など)により成長され、導電性基板11’の裏面に図示しないカソード側の電極であるカソード電極(n電極)が形成され、LED薄膜部12’の表面(導電性基板11’の主表面側の最表面)に図示しないアノード側の電極であるアノード電極(p電極)が形成されている。
【0006】
また、LEDチップ10’は、上述の伝熱板21’に、LEDチップ10’のチップサイズよりも大きなサイズの矩形板状に形成されLEDチップ10’と伝熱板21’との線膨張率の差に起因してLEDチップ10’に働く応力を緩和するサブマウント部材30’を介して実装されている。サブマウント部材30’は、上記応力を緩和する機能だけでなく、LEDチップ10’で発生した熱を伝熱板21’においてLEDチップ10’のチップサイズよりも広い範囲に伝熱させる熱伝導機能を有している。ここにおいて、サブマウント部材30’の材料としては、熱伝導率が比較的高く且つ絶縁性を有するAlNを採用しており、LEDチップ10’は、サブマウント部材30’側の電極がサブマウント部材30’におけるLEDチップ10’側の表面に設けられた導体パターン(図示せず)およびボンディングワイヤ14’を介して一方のリードパターン23’と電気的に接続され、LED薄膜部12’側の電極がボンディングワイヤ14’を介して他方のリードパターン23’と電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−87669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図10に示した構成の発光装置では、光出力の高出力化を図るためにLEDチップ10’への入力電力を増加させるにつれて、LEDチップ10’のLED薄膜部12’における発光領域での発熱量が多くなるが、LED薄膜部12’と伝熱板21’上のサブマウント部材30’との間に介在する導電性基板11’の断面積がLED薄膜部12’の断面積と略同じであり、LED薄膜部12’で発生した熱が導電性基板11’の厚み方向にしか伝熱されないから、LEDチップ10’の温度上昇を抑制する効果が制限されてしまう。また、LEDチップ10’のLED薄膜部12’から導電性基板11’側へ放射された光の一部が導電性基板11’の側面と封止部50’との界面でサブマウント部材30’上の電極側へ反射されて多重反射が起こるので、当該多重反射に起因した光損失が生じ、光取り出し効率の向上が制限されてしまう。
【0009】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、放熱性を向上させることができるとともに光出力の高出力化を図れる発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、LEDチップと、当該LEDチップが一表面側に実装された実装基板と、LEDチップから放射された光によって励起されてLEDチップの発光色とは異なる色の光を放射する蛍光体を含有した透光性材料により形成され実装基板の前記一表面側に配設された色変換部材とを備え、実装基板は、熱伝導性材料からなる伝熱板の一表面側に、LEDチップの一対の電極それぞれに電気的に接続される複数のリードパターンが形成されてなり、LEDチップは、実装基板側の一面とは反対側の他面の面積が前記一面の面積よりも大きな透明導電性基板の前記他面側に、窒化物半導体材料からなる島状のLED薄膜部が形成されてなることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、LED薄膜部で発生した熱が当該LED薄膜部に比べて大面積の透明導電性基板を通して放熱されるので、放熱性を向上させることができ、しかも、LED薄膜部から透明導電性基板側へ放射された光が透明導電性基板の側面で反射されて他面側から出射しやすくなるので、光取り出し効率の向上による光出力の高出力化を図れる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記LEDチップの透明導電性基板と前記実装基板の前記伝熱板との間に前記LED薄膜部から放射された光を反射する反射膜を介在させてなることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、前記LED薄膜部から前記透明導電性基板側へ放射された光を反射膜により反射させ前記透明導電性基板の前記他面において前記LED薄膜部が形成されていない部位から効率良く取り出すことができ、光取り出し効率の向上による光出力の高出力化を図れる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記LEDチップは、前記一対の電極のうちの一方の電極が前記LED薄膜部の表面に形成されるとともに他方の電極が前記透明導電性基板の前記一面側に形成されてなり、前記実装基板の前記複数のリードパターンのうち前記他方の電極に対応付けられたリードパターン上に搭載されてなることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、前記LEDチップと前記実装基板との間のボンディングワイヤの数を低減できて信頼性が向上する。
【0016】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記LEDチップは、前記透明導電性基板の前記他面側に複数の前記LED薄膜部が独立して形成されてなり、前記他方の電極が複数の前記LED薄膜部で共通化され1つだけ設けられてなることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、前記透明導電性基板の前記他面側に複数の前記LED薄膜部が独立して形成されてなり、前記他方の電極が複数の前記LED薄膜部で共通化されていることにより、小型化を図りつつ光出力の高出力化を図れる。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4の発明において、前記色変換部材の内側において前記LEDチップを囲む形で前記実装基板の前記一表面側に配設された光学部材と、光学部材の内側に充填され前記LEDチップを封止した透光性封止材料からなる封止部とを備え、光学部材と前記色変換部材との間に間隙が形成されてなることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、前記色変換部材が前記実装基板の前記一表面側で光学部材を覆い光学部材の光出射面との間に間隙が形成される形で配設されているので、前記LEDチップから放射され封止部および光学部材を通して前記色変換部材に入射し前記色変換部材中の前記蛍光体の粒子により散乱された光のうち光学部材側へ散乱されて光学部材を透過する光の光量を低減できて、前記LEDチップから放射される光と前記色変換部材の前記蛍光体から放射される光との混色光の取り出し効率を高めることができ、光出力の向上を図れ、しかも、外部雰囲気中の水分が前記LEDチップに到達しにくくなるという利点がある。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明では、放熱性を向上させることができるとともに光出力の高出力化を図れるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1の発光装置の概略断面図である。
【図2】同上の発光装置の概略斜視図である。
【図3】同上の発光装置の要部概略斜視図である。
【図4】実施形態2の発光装置の概略断面図である。
【図5】同上の発光装置の概略斜視図である。
【図6】同上の発光装置の要部概略斜視図である。
【図7】実施形態3の発光装置の概略断面図である。
【図8】同上の発光装置の概略斜視図である。
【図9】同上の発光装置の要部概略斜視図である。
【図10】従来例を示す発光装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態1)
以下、本実施形態の発光装置について図1〜図3を参照しながら説明する。
【0023】
本実施形態の発光装置は、LEDチップ10と、当該LEDチップ10が一表面側に実装された実装基板20と、LEDチップ10から放射された光によって励起されてLEDチップ10の発光色とは異なる色の光を放射する蛍光体を含有した透光性材料により形成され実装基板20の上記一表面側に配設されたドーム状の色変換部材70とを備えている。また、本実施形態の発光装置は、色変換部材70の内側においてLEDチップ10を囲む形で実装基板20の上記一表面側に配設されたドーム状の光学部材60と、光学部材60の内側に充填されLEDチップ10を封止した透光性封止材料からなる封止部50とを備え、光学部材60と色変換部材70との間に間隙(ここでは、空気層)80が形成されている。
【0024】
LEDチップ10は、青色光を放射するGaN系の青色LEDチップであり、窒化物半導体材料により形成されたLED薄膜部12と、LED薄膜部12の厚み方向の一面側(図1における下面側)に結合されたn形ZnO基板からなる透明導電性基板11とを備えている。ここにおいて、LEDチップ10の透明導電性基板11は、実装基板20側の一面11aとは反対側の他面11bの面積が上記一面11aの面積よりも大きくなる六角錘台状の形状に形成されており、LEDチップ10は、透明導電性基板11の上記他面11b側において上述のLED薄膜部12が島状に形成されている。
【0025】
上述のLEDチップ10は、LED薄膜部12が、p形窒化物半導体層12aと発光層12bとn形窒化物半導体層12cとの積層構造を有しており、LED薄膜部12の平面視形状を透明導電性基板11の上記他面11bよりも小さな正方形状の形状に形成してある。また、LEDチップ10は、LED薄膜部12のn形窒化物半導体層12cにおける発光層12b側とは反対側の表面に、一対の電極13,13のうちの一方の電極(ここでは、n電極)13を形成し、透明導電性基板11の上記他面11bの露出した部位に他方の電極(ここでは、p電極)13を形成してある。しかして、LEDチップ10は、n形窒化物半導体層12aと発光層12bとp形窒化物半導体層12cとの平面サイズを同じにすることができる。ここで、LEDチップ10は、上記一方の電極13が、n形窒化物半導体層12cに対してオーミック接触となるようにn形窒化物半導体層12cの表面に形成されてn形窒化物半導体層12cと電気的に接続されている。また、LEDチップ10は、透明導電性基板11の上記他面11b側において、上記他方の電極13が、透明導電性基板11に対してオーミック接触となるように透明導電性基板11の上記他面11b上に形成されており、透明導電性基板11を介してp形窒化物半導体層12aと電気的に接続されている。なお、LED薄膜部12は、後述のように当該LED薄膜部12に透明導電性基板11の基礎となるn形ZnOウェハを結合する前に、主表面が(0001)面であるサファイアウェハの上記主表面側に有機金属気相成長法(MOVPE法)のようなエピタキシャル成長技術を利用して成膜している。ここで、LED薄膜部12のエピタキシャル成長方法は、MOVPE法に限定するものではなく、例えば、ハイドライド気相成長法(HVPE法)や、分子線エピタキシー法(MBE法)などを採用してもよい。
【0026】
上述のn形窒化物半導体層12cは、n形GaN層により構成されているが、単層構造に限らず、多層構造でもよい。
【0027】
また、発光層12bは、GaN層からなる障壁層によりInGaN層からなる井戸層が挟まれた量子井戸構造を有しており、当該発光層12bの発光ピーク波長が450nmとなるようにInGaN層の組成を設定してあるが、発光波長(発光ピーク波長)は特に限定するものではない。なお、発光層12bの量子井戸構造は単一量子井戸構造に限らず、多重量子井戸構造でもよい。また、発光層12bは、必ずしも量子井戸構造を有している必要はなく、単層構造でもよい。また、発光層12bの材料も窒化物半導体材料であればよく、所望の発光波長に応じて、例えば、AlInGaN、AlInN、AlGaNなどを適宜採用してもよい。
【0028】
また、p形窒化物半導体層12aは、発光層12b上に形成されたp形GaN層で構成してあるが、単層構造に限らず、多層構造でもよく、例えば、p形AlGaN層からなる第1のp形半導体層と、第1のp形半導体層上に形成されたp形GaN層からなる第2のp形半導体層とで構成してもよい。
【0029】
ところで、GaNおよびZnOはウルツ鉱型の結晶構造でc軸方向に極性を有する有極性半導体であり、LED薄膜部12は、n形GaN層からなるn形窒化物半導体層12cにおける発光層12b側とは反対側の表面がN極性面である(000−1)面により構成され、p形GaN層からなるp形窒化物半導体層12aにおける発光層12b側とは反対側の表面がGa極性面である(0001)面により構成されており、透明導電性基板11は、LED薄膜部12側の上記一面11bがZn極性面である(0001)面により構成され、LED薄膜部12側とは反対側の上記他面11aがO極性面である(000−1)面により構成されている。要するに、LED薄膜部12と透明導電性基板11とは、透明導電性基板11のZn極性面とp形窒化物半導体層12aのGa極性面とが結合されている。なお、透明導電性基板11を構成するn形ZnO基板は、ドーピングではなく酸素空孔もしくは亜鉛の格子間原子欠陥によりn形の導電形を示すものを用いてもよいが、ドーピングによって導電形をn形とし且つ導電率を制御したもの、例えば、GaドープZnO基板(GZO基板)や、AlドープZnO基板(AZO基板)を用いる方が、上記他方の電極13とのオーミック接触の接触抵抗を低減するうえでより好ましい。
【0030】
また、上述の各電極13,13は、Ti膜とAl膜とAu膜との積層膜により構成してあり、いずれも最表面側がAu膜により構成されている。ここで、各電極13,13は、Ti膜の膜厚を10nm、Al膜の膜厚を50nm、Au膜の膜厚を500nmにそれぞれ設定してあるが、これらの数値は一例であって特に限定するものではない。いずれにしても、本実施形態の発光装置におけるLEDチップ10では、一対の電極13,13が、同一の金属材料により形成されて、同一の電極構造を有しており、各電極13,13それぞれを構成する積層膜において厚み方向で重なる膜同士の密着性を高めることができるとともに、n形窒化物半導体層12cおよび透明導電性基板11に対する密着性を高めることができる。ここにおいて、本実施形態では、各電極13,13を電子ビーム蒸着法(EB蒸着法)により同時に形成している。
【0031】
上述のLEDチップ10では、各電極13,13として、Ti膜とAl膜とAu膜との積層膜を採用することにより、それぞれ、n形窒化物半導体層12c、透明導電性基板11に対して良好なオーミック接触(低オーミック抵抗のオーミック接触)を得ることができるが、上記積層膜に限らず、Ti膜とAu膜との積層膜、Al膜とAu膜との積層膜、Ti膜とAl膜とNi膜とAu膜との積層膜の群から選択される1つの積層膜により構成してもよく、いずれの構成でも、各電極13,13の最表面側がAu膜となるので、各電極13,13の酸化を防止することができるとともに、実装基板20に実装して用いる場合に、各電極13,13とボンディングワイヤ14,14との接合信頼性を高めることができる。
【0032】
また、LEDチップ10は、LED薄膜部12における透明導電性基板11側とは反対側の表面に全反射抑制用の微細凹凸構造15が形成されており、LED薄膜部12のn形窒化物半導体層12cと封止部50との界面での全反射を抑制できる。
【0033】
上述のLEDチップ10では、上記他方の電極(p電極)13と上記一方の電極(n電極)13との間に順方向バイアス電圧を印加することにより、トンネル電流注入により上記他方の電極13からp形窒化物半導体層12aへホールが注入されるとともに、上記一方の電極13からn形窒化物半導体層12cへ電子が注入され、発光層12bに注入された電子とホールとが再結合することで発光し、n形窒化物半導体層12cの表面および透明導電性基板11の上記他面11bにおいてLED薄膜部12が形成されていない部位から光が放射される。なお、波長が450nmの光に対するZnOの屈折率は2.1、GaNの屈折率は2.4である。
【0034】
以下、上述のLEDチップ10の製造方法について説明する。
【0035】
上述のLEDチップ10は、上記主表面が(0001)面のサファイアウェハの上記主表面側にn形窒化物半導体層12cと発光層12bとp形窒化物半導体層12aとの積層構造を有するLED薄膜部12をMOVPE法などにより成長する結晶成長工程を行い、その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してLED薄膜部12を正方形状の形状にパターニングするパターニング工程を行い、次に、サファイアウェハの上記主表面側のLED薄膜部12と透明導電性基板11の基礎となるn形ZnOウェハとを直接接合する接合工程を行ってから、LED薄膜部12からサファイアウェハを除去するウェハリフトオフ工程を行い、続いて、n形窒化物半導体層12cの上記表面に微細凹凸構造15を形成する微細凹凸構造形成工程を行い、その後、各電極13,13を形成する電極形成工程を行ってから、n形ZnOウェハにおけるLED薄膜部12側とは反対側に所定形状(透明導電性基板11の上記一面11aの形状に相当する形状)にパターニングされたマスク層を形成するマスク層形成工程を行い、その後、塩酸系のエッチング液(例えば、塩酸水溶液など)を用いてエッチング速度の結晶方位依存性を利用した結晶異方性エッチングを行うことによりn形ZnOウェハの一部からなる六角錘台状のn形ZnO基板である透明導電性基板11を形成する加工工程を行い、その後、上記マスク層を除去するマスク層除去工程を行うようにしている。
【0036】
上述のn形ZnOウェハとしては、転位欠陥密度が10cm−2以下で結晶性の優れた単結晶ZnOウェハであり、量産に適した水熱合成法を利用して製造されものを用いている。また、上述の接合工程では、LED薄膜部12とn形ZnOウェハとの互いの接合表面を清浄化した後、LED薄膜部12におけるサファイアウェハ側とは反対側にn形ZnOウェハを重ね合わせ、所定圧力(例えば、2MPa)を印加しながら、熱処理を行うことにより、LED薄膜部12とn形ZnOウェハとを直接接合する。ここで、上述の所定圧力の値は特に限定するものではなく、また、n形ZnOウェハのウェハサイズに応じて適宜変更すればよい。また、熱処理の条件としては、雰囲気を窒素ガス雰囲気として熱処理温度を800℃としているが、これらの条件は一例であって、特に限定するものではない。
【0037】
微細凹凸構造形成工程では、n形窒化物半導体層12cの上記表面側に転写層を形成し、微細凹凸構造15に応じてパターン設計した凹凸パターンを形成したモールドを上記転写層に押し付けて上記凹凸パターンを上記転写層に転写した後で、上記転写層およびn形窒化物半導体層12cをドライエッチングすることでn形窒化物半導体層12cの上記表面側に微細凹凸構造15を形成する。
【0038】
また、電極形成工程では、n形ZnOウェハにおけるLED薄膜部12との接合面側に各電極13,13それぞれの形成予定領域が開口されたレジスト層をフォトリソグラフィ技術を利用して形成してから、電子ビーム蒸着法などにより各電極13,13を同時に形成し、続いて、上記レジスト層および上記レジスト層上の不要膜を、有機溶剤(例えば、アセトンなど)を用いて除去すればよい(リフトオフすればよい)。
【0039】
六角錘台状の透明導電性基板11の高さ(厚さ)は、n形ZnOウェハの厚さで規定することができ、本実施形態では、n形ZnOウェハとして厚さが500μmのものを用いているので、透明導電性基板11の高さは500μmとなっているが、n形ZnOウェハの厚さは特に限定するものではない。また、透明導電性基板11の上記他面11bに対する各側面11cそれぞれの傾斜角は、n形ZnOウェハの結晶軸方向で規定される。本実施形態では、LED薄膜部12側がZn極性面である(0001)面、LED薄膜部12側とは反対側がO極性面である(000−1)面のZnOウェハに対して上述の結晶異方性エッチングを行うことにより透明導電性基板11を形成しているので、透明導電性基板11の各側面11cは、{10−1−1}面により構成されており、再現性良く傾斜角が60°の側面11cを形成することができる。
【0040】
以上説明したLEDチップ10によれば、LED薄膜部12から透明導電性基板11側へ放射され透明導電性基板11の側面11cに入射する光のうち臨界角以上の入射角で入射する光は透明導電性基板11と封止部50との界面で全反射され、透明導電性基板11の上記他面11bから出射されやすくなるから、光取り出し効率を向上させることができる。また、上述のLEDチップ10では、上述の結晶異方性エッチングを行うことにより透明結晶基板3の各側面11cを形成しているので、各側面11cの平滑性が良く、各側面11cでの光の散乱を防止することができる。
【0041】
また、上述の実装基板20は、熱伝導性材料からなる矩形板状の伝熱板21の一表面側に、LEDチップ10の一対の電極13,13それぞれに電気的に接続される一対のリードパターン23,23が形成されており、LEDチップ10は、LED薄膜部12よりも透明導電性基板11が実装基板20に近くなる形で実装基板20に実装されている。
【0042】
また、本実施形態の発光装置は、LEDチップ10の透明導電性基板11と実装基板20の伝熱板21との間にLED薄膜部12から放射された光を反射する反射膜24を介在させてある。
【0043】
実装基板20は、上述の伝熱板21の熱伝導性材料として、電気絶縁性を有し且つ熱伝導率の高いAlNを採用しており、伝熱板21の上記一表面上に、上述の一対のリードパターン23,23および反射膜24が形成されている。なお、実装基板20の平面視形状は、矩形状となっているが、矩形状に限らず、例えば、円形状、六角形状でもよい。また、反射膜24の平面視形状は、六角形状となっているが、これに限らず、例えば、矩形状でも円形状でもよい。
【0044】
実装基板20の伝熱板21は、LEDチップ10で発生した熱を伝熱させる機能を有するものであり、ガラスエポキシ樹脂基板などの有機系基板に比べて熱伝導率の高いものであればよく、AlN基板に限らず、例えば、アルミナ基板や、ホーロー基板、表面にシリコン酸化膜が形成されたシリコン基板などを採用してもよい。また、各リードパターン23,23は、Cu膜とNi膜とAu膜との積層膜により構成され、最上層がAu膜となっているが、当該積層膜の積層構造に限定するものではない。また、反射膜24は、Ag膜により形成されている。
【0045】
ここで、反射膜24は、Ag膜の単層膜に限らず、例えば、Ag膜と当該Ag膜上のAu膜との多層膜でもよく、このような多層膜を採用することで、反射膜24の反射率を低下させることなく反射膜24の耐酸化性および耐腐食性を向上させることができる。また、反射膜24がAg膜とAu膜との積層膜により構成されている場合には、LEDチップ10を、例えば、AuSn、SnAgCuなどの鉛フリー半田を用いて接合することができ、LEDチップ10をエポキシ樹脂などのダイボンド材を用いて接合する場合に比べて、LEDチップ10から実装基板20までの熱抵抗を低減することができる。
【0046】
また、本実施形態では、透明導電性基板11がn形ZnO基板により構成されているので、透明導電性基板11をサファイア基板により構成する場合に比べてLED薄膜部12から実装基板20までの熱抵抗を低減することができて放熱性が向上し、LED薄膜部12のジャンクション温度の温度上昇を抑制できるから、入力電力を大きくでき、光出力の高出力化を図れる。なお、反射膜24は、例えば、スパッタ法や電子ビーム蒸着法などにより形成すればよい。
【0047】
また、本実施形態の発光装置は、実装基板20と色変換部材70とでパッケージを構成しており、実装基板20の各リードパターン23,23において、色変換部材70よりも内側の部位がインナーリード部23aを構成し、色変換部材70よりも外側の部位がアウターリード部23bを構成している。
【0048】
上述の封止部50の材料である透光性封止材料としては、シリコーン樹脂を用いているが、シリコーン樹脂に限らず、例えばアクリル樹脂や、ガラスなどを用いてもよい。
【0049】
光学部材60は、透光性材料(例えば、シリコーン樹脂、ガラスなど)の成形品であってドーム状に形成されている。ここで、本実施形態では、光学部材60をシリコーン樹脂の成形品により構成しているので、光学部材60と封止部50との屈折率差および線膨張率差を小さくすることができる。
【0050】
また、光学部材60は、光出射面が、光入射面から入射した光を光出射面と間隙80との境界で全反射させない凸曲面状に形成されており、LEDチップ10と光軸が一致するように配置されている。したがって、LEDチップ10から放射され光学部材60の光入射面に入射された光が光出射面と間隙80との境界で全反射されることなく色変換部材70まで到達しやすくなり、全光束を高めることができる。なお、光学部材60は、位置によらず法線方向に沿って肉厚が一様となるように形成されている。
【0051】
色変換部材70は、シリコーン樹脂のような透光性材料とLEDチップ10から放射された青色光によって励起されてブロードな黄色系の光を放射する粒子状の黄色蛍光体とを混合した混合物の成形品により構成されている(つまり、色変換部材70は、蛍光体および透光性材料により形成されている)。したがって、本実施形態の発光装置は、LEDチップ10から放射された青色光と黄色蛍光体から放射された光とが色変換部材70の光出射面(外面)を通して放射されることとなり、白色光を得ることができる。なお、色変換部材70の材料として用いる透光性材料は、シリコーン樹脂に限らず、例えば、アクリル樹脂、ガラス、有機成分と無機成分とがnmレベルもしくは分子レベルで混合、結合した有機・無機ハイブリッド材料などを採用してもよい。また、色変換部材70の材料として用いる透光性材料に混合する蛍光体も黄色蛍光体に限らず、例えば、赤色蛍光体と緑色蛍光体とを混合しても白色光を得ることができる。
【0052】
以上説明した本実施形態の発光装置では、LED薄膜部12で発生した熱が当該LED薄膜部12に比べて大面積の透明導電性基板11を通してLED薄膜部12の平面サイズよりも広い範囲へ放射状に放熱されるので、LED薄膜部12の発光領域で発生した熱をより効率的に放熱させることが可能となって、放熱性を向上させることができ、しかも、LED薄膜部12から透明導電性基板11側へ放射された光が透明導電性基板11の側面11cで反射されて他面11b側から出射しやすくなるので、光取り出し効率の向上による高出力化を図れる。
【0053】
また、本実施形態の発光装置は、LEDチップ10の透明導電性基板11と実装基板20の伝熱板21との間にLED薄膜部12から放射された光を反射する反射膜24を介在させてあるので、LED薄膜部12から透明導電性基板11側へ放射された光を反射膜24により反射させ透明導電性基板11の上記他面11bにおいてLED薄膜部12が形成されていない部位から効率良く取り出すことができ、光取り出し効率の向上による光出力の高出力化を図れる。なお、反射膜24の材料としては、LEDチップ10から放射される光に対する反射率が高く且つ熱伝導性の高い材料を用いることが望ましいことは勿論である。
【0054】
また、本実施形態の発光装置は、色変換部材70の内側においてLEDチップ10を囲む形で実装基板20の上記一表面側に配設された光学部材60と、光学部材60の内側に充填されLEDチップ10およびボンディングワイヤ14,14を封止した透光性封止材料からなる封止部50とを備え、光学部材60と色変換部材70との間に間隙80が形成されている(つまり、色変換部材70が、実装基板20の上記一表面側で光学部材60を覆い光学部材60の光出射面との間に間隙80が形成される形で配設されている)ので、光学部材60と色変換部材70との間に色変換部材70に比べて屈折率の小さな空気層などの気体層が介在しており、LEDチップ10から放射され封止部50および光学部材60を通して色変換部材70に入射し色変換部材70中の蛍光体の粒子により散乱された光のうち光学部材60側へ散乱されて光学部材60を透過する光の光量を低減できて、LEDチップ10から放射される光と色変換部材70の蛍光体から放射される光との混色光の取り出し効率を高めることができ、光出力の向上を図れ、しかも、外部雰囲気中の水分がLEDチップ10に到達しにくくなるという利点がある。なお、気体層の気体は空気に限らず、例えば、窒素ガスなどでもよい。
【0055】
(実施形態2)
以下、本実施形態の発光装置について図4〜図6を参照しながら説明する。
【0056】
本実施形態の発光装置の基本構成は実施形態1と略同じであって、LEDチップ10の一対の電極13,13のうちの一方の電極(ここでは、n電極)13がLED薄膜部12の表面に形成されるとともに、他方の電極(ここでは、p電極)13が透明導電性基板11の上記一面11a側に形成されており、LEDチップ10が、実装基板20の複数(ここでは、2つ)のリードパターン23,23のうち上記他方の電極13に対応付けられたリードパターン23におけるアウタリード部23b側とは反対側に設けられた平面視六角形状のダイパッド部23c上に、反射膜24を介して搭載されている点が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符合を付して説明を省略する。
【0057】
しかして、本実施形態の発光装置では、実施形態1の発光装置に比べて、LEDチップ10と実装基板20との間のボンディングワイヤ14の数を低減できて信頼性が向上する。
【0058】
(実施形態3)
以下、本実施形態の発光装置について図7〜図9を参照しながら説明する。
【0059】
本実施形態の発光装置の基本構成は実施形態2と略同じであって、LEDチップ10の構造などが相違する。ここにおいて、LEDチップ10は、透明導電性基板11の上記他面11b側に複数(ここでは、4つ)のLED薄膜部12が独立して形成されており、上記他方の電極13が複数のLED薄膜部12で共通化され透明導電性基板11の上記一面11aに1つだけ設けられている。ここで、4つのLED薄膜部12は、透明導電性基板11の上記他面11b上において、2×2のアレイ状に配置されている。なお、実施形態2と同様の構成要素には同一の符合を付して説明を省略する。
【0060】
また、本実施形態の発光装置では、複数のアウターリード部23bのうち、LEDチップ10の上記一方の電極(n電極)13の平面視形状を円形状とし、上記他方の電極(p電極)13の平面視形状を矩形状としてあるので、各アウターリード部23bそれぞれの極性を各アウターリード部23bの形状により視認することができ、誤接続を防止することができる。
【0061】
以上説明した本実施形態の発光装置によれば、透明導電性基板11の上記他面11b側に複数のLED薄膜部12が独立して形成され、上記他方の電極13が複数のLED薄膜部12で共通化されていることにより、小型化を図りつつ光出力の高出力化を図れる。
【0062】
ところで、上記各実施形態1〜3では、透明導電性基板11を六角錘台状の形状としてあるが、これに限らず、錘台状の形状であればよく、例えば、四角錘台状の形状や円錐台状の形状でもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 LEDチップ
11 透明導電性基板
11a 一面
11b 他面
12 LED薄膜部
13 電極
14 ボンディングワイヤ
20 実装基板
21 伝熱板
23 導体パターン
24 反射膜
50 封止部
60 光学部材
70 色変換部材
80 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDチップと、当該LEDチップが一表面側に実装された実装基板と、LEDチップから放射された光によって励起されてLEDチップの発光色とは異なる色の光を放射する蛍光体を含有した透光性材料により形成され実装基板の前記一表面側に配設された色変換部材とを備え、実装基板は、熱伝導性材料からなる伝熱板の一表面側に、LEDチップの一対の電極それぞれに電気的に接続される複数のリードパターンが形成されてなり、LEDチップは、実装基板側の一面とは反対側の他面の面積が前記一面の面積よりも大きな透明導電性基板の前記他面側に、窒化物半導体材料からなる島状のLED薄膜部が形成されてなることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記LEDチップの透明導電性基板と前記実装基板の前記伝熱板との間に前記LED薄膜部から放射された光を反射する反射膜を介在させてなることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記LEDチップは、前記一対の電極のうちの一方の電極が前記LED薄膜部の表面に形成されるとともに他方の電極が前記透明導電性基板の前記一面側に形成されてなり、前記実装基板の前記複数のリードパターンのうち前記他方の電極に対応付けられたリードパターン上に搭載されてなることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項4】
前記LEDチップは、前記透明導電性基板の前記他面側に複数の前記LED薄膜部が独立して形成されてなり、前記他方の電極が複数の前記LED薄膜部で共通化され1つだけ設けられてなることを特徴とする請求項3記載の発光装置。
【請求項5】
前記色変換部材の内側において前記LEDチップを囲む形で前記実装基板の前記一表面側に配設された光学部材と、光学部材の内側に充填され前記LEDチップを封止した透光性封止材料からなる封止部とを備え、光学部材と前記色変換部材との間に間隙が形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−49236(P2011−49236A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194493(P2009−194493)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】