説明

発光装置

【課題】従来の保護膜とは異なる手段により、硫黄含有ガスによる導電部材の劣化を抑制することができる発光装置を提供する。
【解決手段】本発明の発光装置(100)は、導電部材(10)と、前記導電部材に接続された発光素子(20)と、前記導電部材の一部及び前記発光素子を封止する封止部材(30)と、を備え、前記封止部材(30)は、その母材中に、第1粒子(41)と、前記第1粒子に付着した、該第1粒子とは異なる物質の第2粒子(42)と、を含み、前記第2粒子(42)は、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、鉄、銅、ニッケル、銀、ジルコニウム、コバルト、クロム、鉛、バリウムから選択される少なくとも1種の元素の酸化物、水酸化物若しくは炭酸化物、又はこれらの化合物を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関し、より詳細には導電部材に接続された発光素子を備える発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子を光源とする発光装置において、光の取り出し効率を高めるため、リードフレーム等の導電部材に光反射率の高い鍍金が施されているが、この鍍金が空気中の硫黄含有ガスによって、変色する等、劣化する問題がある。
【0003】
このような問題を解決するため、例えば特許文献1には、一対の金属電極と、一対の金属電極に電気的に接続された光半導体チップと、光半導体チップと金属電極の一部を封止する透光性樹脂と、を備え、透光性樹脂は、ポリチオール系硬化剤で硬化したエポキシ樹脂であり、透光性樹脂と接する金属電極の表面の一部または全部に硫化物の生成を抑制する保護膜が設けられている発光ダイオードが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−109915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発光ダイオードであっても、保護膜を透過する硫黄含有ガスが存在するため、金属電極の劣化を完全に防止するのは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、従来の保護膜とは異なる手段により、硫黄含有ガスによる導電部材の劣化を抑制することができる発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る発光装置は、導電部材と、前記導電部材に接続された発光素子と、前記導電部材の一部及び前記発光素子を封止する封止部材と、を備え、前記封止部材は、その母材中に、第1粒子と、前記第1粒子に付着した、該第1粒子とは異なる物質の第2粒子と、を含み、前記第2粒子は、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、鉄、銅、ニッケル、銀、ジルコニウム、コバルト、クロム、鉛、バリウムから選択される少なくとも1種の元素の酸化物、水酸化物若しくは炭酸化物、又はこれらの化合物を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る別の発光装置は、導電部材と、前記導電部材に接続された発光素子と、前記導電部材の一部及び前記発光素子を封止する封止部材と、を備え、前記封止部材は、その母材中に、亜鉛の水酸化物若しくは炭酸化物、又はこれらの化合物を含む粒子を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の発光装置によれば、封止部材に添加された、硫黄と反応しやすい物質の粒子(第2粒子)が、空気中の硫黄含有ガスと優先的に反応することによって、導電部材の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態に係る発光装置の概略上面図(a)と、そのA−A断面における概略断面図(b)である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る発光装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態について適宜図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する発光装置は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、本発明を以下のものに限定しない。特に、以下に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0012】
<実施の形態1>
図1(a)は、実施の形態1に係る発光装置の概略上面図であり、図1(b)は、図1(a)におけるA−A断面を示す概略断面図である。図1に示す例の発光装置100は、導電部材10と、導電部材10に接続された発光素子20と、導電部材10の一部及び発光素子20を封止する封止部材30と、を備えている。
【0013】
より詳細には、発光装置100の基体60は、上面が開口し内側壁と底面を有する凹部が形成されたパッケージである。導電部材10は、基体60に一体的に保持された正負一対のリードフレームであって、その表面の一部が基体60の凹部の底面の一部を構成している。導電部材10の表面には、発光素子からの出射光に対して光反射性の高い金属の鍍金が施されている。発光素子20は、基体60の凹部の底面に接着剤で接着され、導電部材10にワイヤ50で電気的に接続されている。封止部材30は、基体60の凹部内に充填され、発光素子20及びワイヤ50を被覆している。
【0014】
そして、封止部材30は、その母材中に、第1粒子41と、この第1粒子に付着した、第1粒子とは異なる物質の第2粒子42と、を含んでいる。第2粒子42は、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、鉄、銅、ニッケル、銀、ジルコニウム、コバルト、クロム、鉛、バリウム(以下、これらの元素をまとめて「元素群G」と称する。)から選択される少なくとも1種の元素の酸化物、水酸化物若しくは炭酸化物、又はこれらの化合物を含むものである。具体的には、例えば、塩基性炭酸亜鉛(ZnCO3・Zn(OH)2)などの塩基性炭酸塩が挙げられる。
【0015】
ここで、導電部材の表層に形成される鍍金や光反射膜に好適な材料として、銀、アルミニウム、ロジウムなどが挙げられる。なかでも、銀は、可視波長域の広い範囲において、95%以上の高い光反射率を有する。しかし、銀は、硫黄と比較的反応しやすく、硫化すると黒く変色する欠点がある。例えば、鉄や銅を母材とし、それに銀の鍍金が施されたリードフレームを考えると、銀は、硫黄含有ガスの中でも、特に硫化水素を含む雰囲気下で硫化しやすく、鉄や銅は、硫黄酸化物(特に二酸化硫黄)を含む雰囲気下で硫化しやすい。空気中など、硫化水素と硫黄酸化物が含まれるガス雰囲気下においては、まず表層の銀の鍍金が硫化し、次いで、或いは並行して、より深層の母材への硫化反応が進行する。
【0016】
そこで、導電部材上にガスバリア性の高い保護膜を別途設けることで、硫黄含有ガスの導電部材への到達を抑制するのが、上記従来の手段である。これに対して、本発明では、導電部材の一部及び発光素子を封止する封止部材に、上記のような第2粒子を予め添加しておく。これにより、封止部材中の第2粒子が、硫黄含有ガスと優先的に反応するため、硫黄含有ガスの導電部材への到達を抑制することができる。また、これは、封止部材に粒子を添加することで済む、比較的容易且つ安価な手段である。さらに、保護膜を別途設ける従来の手段とは全く異なるため、従来の手段と組み合わせることができ、それにより導電部材の劣化を更に抑制することもできる。
【0017】
特に、図1(b)に示すように、第2粒子42は、第1粒子41に付着した状態で封止部材30中に存在していることが好ましい。このような第2粒子42は、後述するような第1粒子41の表面処理により形成され、その後封止部材30に添加されることで設けられる。第2粒子42が第1粒子41に付着した状態で封止部材30に添加されることで、第2粒子42の凝集が抑制され、第2粒子42単体で添加される場合に比べて、第2粒子42が封止部材30中で小さく分かれて設けられやすい。したがって、添加量が同等であっても、第2粒子42の表面積を大きくすることができ、硫黄含有ガスと効率良く反応させることができる。ひいては、より少ない添加量で導電部材10の劣化を抑制できるため、高い光取り出し効率を維持することができる。
【0018】
第2粒子42の第1粒子41への付着形態は、第1粒子41の表面の略全域を被包してもよいが、図1(b)に示すように、第1粒子41の表面の一部に付着していることが好ましい。これにより、第2粒子42の表面積を大きくしやすく、硫黄含有ガスと効率良く反応させやすい。また、第1粒子41の表面の一部が第2粒子42から露出され、第1粒子41に光が入射しやすく、第1粒子41が持つ光学的機能を活かしやすい。なお、封止部材30中に存在する第2粒子42の全てが第1粒子41に付着していてもよいし、第1粒子41に付着した第2粒子42と、単体で存在する第2粒子42と、が混ざっていてもよい。
【0019】
第2粒子42の第1粒子41への付着は、次のような方法で実現できる。まず、純水に第1粒子41を分散させ、上記元素群Gの酸化物、硫酸化物、硝酸化物から選択される少なくとも1種類の水溶性化合物を添加して攪拌する。次に、この懸濁液に、水酸化ナトリウム、炭酸水素アンモニウムから選択される塩基を滴下することで、pHを7.0以上11.5以下の範囲に調整する。最後に、生成される沈殿物に対して、十分に洗浄、脱液、乾燥、篩などを行えばよい。このような方法によれば、第2粒子42の粒径を制御しやすく、第2粒子42を小さく分かれさせて第1粒子41に付着させることができる。このほか、噴霧装置で第2粒子42を第1粒子41に噴きつけて付着させてもよい。
【0020】
第2粒子42は、その粒径が小さいほど、添加量に対する表面積の比が大きくなり、硫黄含有ガスと効率良く反応させることができる。また、第2粒子42の粒径は、第1粒子41の粒径より小さいほうが良い。具体的には、第2粒子42の粒径は、第1粒子41の粒径に依存するが、例えば2.5nm以上100μm以下、好ましくは0.05μm以上3μm以下であることが好ましい。なお、第1粒子41の粒径は、例えば5nm以上200μm以下、好ましくは0.5μm以上20μm以下とする。
【0021】
また、第2粒子42は、その添加量が多いほど、硫黄含有ガスによる導電部材10の劣化抑制効果を高められる。但し、第2粒子42の添加量は、粒子の添加による封止部材30の粘度や光取り出し効率の変化を考慮して決めるとよい。具体的には、第2粒子42が付着した第1粒子41、若しくは第2粒子42単体の添加量は、封止部材30の母材の重量に対して、例えば1wt%以上100wt%以下、好ましくは5wt%以上30wt%以下とする。
【0022】
第2粒子42は、封止部材30中に添加されても光の取り出し効率を維持しやすい、白色の物質であることが好ましい。また、第2粒子42は、硫化した後も封止部材30中に残存する。このため、第2粒子42は、硫黄含有ガスと反応して白色の硫化物を生成する物質が、光の取り出し効率を維持しやすく、好ましい。特に、上記元素群Gの中で、亜鉛は、白色の化合物を生成しやすく、また硫化後も白色である。このため、第2粒子42は、亜鉛の酸化物、水酸化物若しくは炭酸化物、又はこれらの化合物を含むことが好ましい。
【0023】
第2粒子42は、上記元素群Gの酸化物、水酸化物若しくは炭酸化物、又はこれらの化合物を複数種類含んでいてもよい。例えば、第2粒子42が、硫化後に白色になる第1物質と、硫化後に黒色又は有色になるが第1物質よりも硫黄との反応性が高い第2物質と、を含むものであることで、導電部材10の劣化抑制と光取り出し効率の維持との均衡を図ることができる。この場合、第1物質の粒子が第2物質の粒子の後に設けられる等して、第1物質の粒子が、第2物質の粒子の上に付着若しくは第2物質の粒子の表面を被包して設けられていると、なお良い。
【0024】
また、図1(b)に示す例では、第2粒子42が、基体60の凹部底面側に沈降する等して、封止部材30中の導電部材10側に偏在している。言い換えれば、封止部材30中の表面側に、該封止部材の母材がその殆どを占める層状の母材領域が存在する。この場合、まずその母材領域の母材自体が有するガスバリア性を活かして硫黄含有ガスの深層への透過を抑制しながら、更に導電部材10側に偏在する第2粒子42によって、母材領域を透過してきた硫黄含有ガスの導電部材10への到達を抑制できる。したがって、硫黄含有ガスによる導電部材10の劣化を効率良く抑制することができる。また逆に、第2粒子42が封止部材30中の表面側に偏在している場合は、その表面側に偏在する第2粒子42によって、硫黄含有ガスの深層への透過を抑制しやすく、また第2粒子42による遮光を低減して導電部材10の鍍金や光反射膜の光学的機能を活かしやすい。さらに、第2粒子42が封止部材30中の略全域に亘って分散している場合は、前述の2つの偏在形態の中間的で均衡の取れた特性を得ることができる。
【0025】
<実施の形態2>
図2は、実施の形態2に係る発光装置の概略断面図である。図2に示す例の発光装置200の基体60は、その上面に配線電極である導電部材10を備える配線基板である。基体60の上面には、枠体が設けられている。発光素子20は、その枠体内において、基体60の導電部材10に導電性接着剤55で接着されている。枠体内の導電部材10は、その最上層に、発光素子20からの出射光に対して光反射性の高い金属の光反射膜を有している。封止部材30は、枠体内に充填されて発光素子20を封止し、その外表面が凸曲面に成形されている。
【0026】
そして、封止部材30は、その母材中に、第2粒子42を含有している。第2粒子42は、上記元素群Gから選択される少なくとも1種の元素の酸化物、水酸化物若しくは炭酸化物、又はこれらの化合物を含むものである。特に、第2粒子42は、上記塩基性炭酸亜鉛のように、亜鉛の水酸化物若しくは炭酸化物、又はこれらの化合物を含む粒子とすることが好ましい。当然ながら、第2粒子42は、それ単体で封止部材に添加されても、硫黄含有ガスの導電部材への到達を抑制する効果を奏する。また、図2に示すように、本実施形態の第2粒子42は、封止部材30中で略均等に分散している。
【0027】
第2粒子42の単体は、次のような方法で得られる。まず、上記元素群Gの酸化物、硫酸化物、硝酸化物から選択される少なくとも1種類の水溶性化合物を純水に添加して攪拌する。次に、この懸濁液に、水酸化ナトリウム、炭酸水素アンモニウムから選択される塩基を滴下することでpHを7.0以上11.5以下の範囲に調整する。最後に、生成される沈殿物に対して、十分に洗浄、脱液、乾燥、篩などを行えばよい。
【0028】
以下、本発明の発光装置の各構成要素について説明する。
【0029】
(導電部材10)
導電部材は、発光素子に接続されて導電可能な金属部材を用いることができる。具体的には、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、鉄、ニッケル、又はこれらの合金、燐青銅、鉄入り銅などで形成されたリードフレームや配線電極が挙げられる。また、その表層に、銀、アルミニウム、ロジウム、金、銅、又はこれらの合金などの鍍金や光反射膜が設けられていてもよい。
【0030】
(発光素子20)
発光素子は、発光ダイオードや半導体レーザ等の半導体発光素子を用いることができる。発光素子は、種々の半導体で構成される素子構造に正負一対の電極が設けられているものであればよい。特に、蛍光体を効率良く励起可能な窒化物半導体(InAlGa1−x−yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)の発光素子が好ましい。このほか、緑色〜赤色発光のガリウム砒素系、ガリウム燐系半導体の発光素子でもよい。正負一対の電極が同一面側に設けられている発光素子の場合、その実装形態は、各電極がワイヤで導電部材と接続されるフェイスアップ実装でもよいし、各電極が導電性接着剤で導電部材と接続されるフェイスダウン(フリップチップ)実装でもよい。このほか、正負一対の電極が互いに反対の面に各々設けられている対向電極構造の発光素子でもよい。1つの発光装置に搭載される発光素子の個数は、1つでも複数でもよい。
【0031】
(封止部材30)
封止部材は、発光素子やワイヤ、導電部材の一部を、封止して、塵芥や水分、外力などから保護する部材である。封止部材の母材は、発光素子から出射される光を透過可能な材料(好ましくは透過率70%以上)で形成されていればよい。具体的には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフタルアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー、又はこれらの樹脂を1種以上含むハイブリッド樹脂が挙げられる。ガラスでもよい。なかでも、シリコーン樹脂は、エポキシ樹脂などに比べ、耐熱性や耐光性に優れる反面、ガスバリア性が低い。したがって、そのガスバリア性を第2粒子の添加により補填することで、より好適に利用することができる。封止部材の外表面は、凸、凹レンズなどの各種レンズ形状や、光を散乱させる凹凸面に成形することで、配光特性を調整することができる。
【0032】
(第1粒子41)
封止部材は、その母材中に、種々の機能を持つ粒子が添加されていてもよい。第1粒子は、充填剤又は蛍光体の粒子を用いることができる。特に、充填剤は、発光装置の発光波長への影響が小さいため、好ましい。充填剤は、光拡散剤や着色剤などを用いることができる。具体的には、シリカ、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガン、カーボンブラックなどが挙げられる。充填剤の粒子の形状は、破砕状でも球状でもよい。また、中空又は多孔質のものでもよい。蛍光体は、発光素子から出射される一次光の少なくとも一部を吸収して、一次光とは異なる波長の二次光を出射する。具体的には、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)や、ユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CaO−Al−SiO)などが挙げられる。これにより、可視波長の一次光及び二次光の混色光(例えば白色系)を出射する発光装置や、紫外光の一次光に励起されて可視波長の二次光を出射する発光装置とすることができる。
【0033】
(ワイヤ50、導電性接着剤55)
ワイヤは、金、銅、白金、アルミニウム又はこれらの合金の金属線を用いることができる。特に、熱抵抗などに優れる金線が好ましい。導電性接着剤は、銀、金、金−錫などのバンプやペーストを用いることができる。封止部材への第2粒子の添加によって、このようなワイヤや導電性接着剤の硫黄含有ガスによる劣化を抑制することもできる。
【0034】
(基体60)
基体は、発光素子が載置される台座となる部材である。基体は、導電部材の一部を底面に含む凹部を備えたパッケージの形態、凹部(側壁)を備えない基板の形態、又は枠体が設けられた基板の形態であってよい。封止部材の一部が基体の凹部や枠体に被覆されることで、封止部材への硫黄含有ガスの侵入を抑制しやすくすることができる。パッケージや枠体の材料は、ポリフタルアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などの母材中に、上述と同様の充填剤が添加されたものが挙げられる。第2粒子は、このようなパッケージや枠体に添加されてもよい。基板は、ガラスエポキシ、ガラス、セラミックス、アルミニウムなどで形成することができる。このほか、砲弾型LEDのように、リードフレームなどの導電部材が基体を兼ねてもよい。
【実施例】
【0035】
以下、本発明に係る実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0036】
<実施例1>
実施例1の発光装置は、実施の形態1に係る発光装置100の一例であって、外形が縦1.0mm、横2.8mm、奥行き(高さ)0.8mmの側面発光(サイドビュー)式の表面実装型LEDである。基体60は、その略中央に深さ0.3mmの凹部を備えたパッケージであって、弾性率が6000MPa、常温(25℃)での線膨張係数が60×10−6/K程度のポリフタルアミド樹脂により形成されている。導電部材10は、表面に銀の鍍金が施された銅合金製のリードフレームであって、その一部がパッケージの凹部底面に露出し且つパッケージの外側面に延出している。このような基体60は、金型内に、導電部材10を設置して、パッケージの構成材料を注入し硬化させることで形成される。発光素子20は、サファイア基板上に、窒化物半導体のn型層、活性層、p型層が順次積層された、青色(中心波長約460nm)発光可能な、縦290μm×横500μmの発光ダイオードチップである。この発光素子20は、基体60の凹部内において、一方(負極側)の導電部材10上に透光性エポキシ樹脂である接着剤で接着され、その各電極が金のワイヤ50により正負両極の導電部材10と各々接続されている。封止部材30は、基体60の凹部内に、発光素子20及びワイヤ50を被覆するように充填されている。このような封止部材30は、該封止部材の構成材料をポッティングにより基体60の凹部内に注入し硬化させることで形成される。封止部材30の母材は、粘度が4Pa・s、常温(25℃)での線膨張係数が300×10−6/K程度、水蒸気透過性が150g/m・day(0.9mm厚、試験環境 40℃/90%RH)のシリコーン樹脂である。
【0037】
そして、実施例1の発光装置は、封止部材30内に、平均粒径6.8μmのシリカの第1粒子41の表面に、粒径0.1μm〜2μm程度の塩基性炭酸亜鉛の第2粒子42が付着した粒子を含んでいる。この粒子は、純水にシリカを分散させ、硝酸亜鉛六水和物を、それに由来する亜鉛がシリカの重量に対して2wt%となるように添加して攪拌し、その懸濁液に炭酸水素アンモニウムを滴下してpHを7.8に調整した後、十分に洗浄、脱液、乾燥、篩を行うことにより得られるものである。なお、この粒子は、封止部材30の母材の重量に対して10wt%添加され、封止部材30中の略全域に亘って分散している。
【0038】
以下、実施例2〜9及び比較例1,2の発光装置における、封止部材に添加される粒子を除く構成は、実施例1の発光装置と同様であるため、説明を省略する。なお、以下全ての実施例、比較例において、封止部材30への粒子の添加量は、封止部材30の母材の重量に対して10wt%である。
【0039】
<実施例2,3>
実施例2,3の発光装置は、封止部材への塩基性炭酸亜鉛の第2粒子42の添加量を実施例1より増やしたものである。実施例2,3の発光装置では、それぞれ、硝酸亜鉛六水和物を、それに由来する亜鉛がシリカの重量に対して5wt%、10wt%となるように添加している。
【0040】
<実施例4>
実施例4の発光装置の封止部材は、実施例1の第2粒子42が付着した第1粒子41に替えて、塩基性炭酸亜鉛の単体の第2粒子42が添加されたものである。この粒子は、硝酸亜鉛六水和物を、それに由来する亜鉛が純水の重量に対して2wt%となるように添加した水溶液に、炭酸水素アンモニウムを滴下してpHを6.8に調整した後、十分に洗浄、脱液、乾燥、篩を行うことにより得られるものである。
【0041】
<比較例1>
比較例1の発光装置の封止部材は、実施例1と同様のシリカの第1粒子41のみが添加されたものである。
【0042】
次に、実施例1乃至4の発光装置における導電部材の劣化抑制効果を硫化試験により検証する。この硫化試験は、発光装置を硫化水素と二酸化硫黄の混合ガス雰囲気内に放置することで行われる。より具体的には、オートクレーブ中に、発光装置と硫化ナトリウム六水和物を入れて、100℃に加熱し、24時間放置する。
【0043】
硫化試験の結果を、以下の表1に示す。なお、相対光束維持率は、比較例の発光装置における硫化試験前後の光束維持率を1.000として、それと各実施例の発光装置における硫化試験前後の光束維持率を対比したときの相対値である。この相対光束維持率が高いほど、導電部材の劣化抑制効果が高いことを示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示すように、実施例1〜4の発光装置の相対光束維持率は1.000より大きくなっており、第2粒子42の添加により硫黄含有ガスによる導電部材の劣化を抑制できることがわかる。なお、実施例1〜4の発光装置は第2粒子42が添加されても高い初期光束値を維持しており、特に実施例1〜3の発光装置の初期光束値は実施例4の発光装置のそれより更に高い。このように、第2粒子42が第1粒子41に付着した状態で添加される場合には、硫黄含有ガスによる導電部材の劣化を抑制し且つ高い光束値を維持しやすい。
【0046】
<実施例5>
実施例5の発光装置は、実施例1の第1粒子41を平均粒径8.0μmのYAGの蛍光体に替え、また第2粒子42を水酸化亜鉛に替えたものである。この粒子は、純水にYAGの蛍光体を分散させ、硫酸亜鉛を、それに由来する亜鉛がYAGの重量に対して2wt%となるように添加して攪拌し、その懸濁液に水酸化ナトリウムを滴下してpHを7.7に調整した後、十分に洗浄、脱液、乾燥、篩を行うことにより得られるものである。
【0047】
<実施例6>
実施例6の発光装置は、実施例5の発光装置における第2粒子42を酸化亜鉛と水酸化亜鉛の混合物に替えたものである。この粒子は、純水にYAGの蛍光体を分散させ、酸化亜鉛をそれに由来する亜鉛がYAGの重量に対して2wt%、硫酸亜鉛をそれに由来する亜鉛がYAGの重量に対して0.5wt%となるように添加して攪拌し、その懸濁液に水酸化ナトリウムを滴下してpHを7.7に調整した後、十分に洗浄、脱液、乾燥、篩を行うことにより得られるものである。
【0048】
<実施例7>
実施例7の発光装置は、実施例5の発光装置における第2粒子42を水酸化鉄に替えたものである。この粒子は、純水にYAGの蛍光体を分散させ、硝酸鉄九水和物をそれに由来する鉄がYAGの重量に対して2wt%となるように添加して攪拌し、その懸濁液に水酸化ナトリウムを滴下してpHを7.7に調整した後、十分に洗浄、脱液、乾燥、篩を行うことにより得られるものである。
【0049】
<実施例8>
実施例8の発光装置は、実施例5の発光装置における第2粒子42を酸化亜鉛と水酸化鉄の混合物に替えたものである。この粒子は、純水にYAGの蛍光体を分散させ、酸化亜鉛をそれに由来する亜鉛がYAGの重量に対して2wt%、硝酸鉄九水和物をそれに由来する鉄がYAGの重量に対して0.5wt%となるように添加して攪拌し、その懸濁液に水酸化ナトリウムを滴下してpHを7.5に調整した後、十分に洗浄、脱液、乾燥、篩を行うことにより得られるものである。
【0050】
<実施例9>
実施例9の発光装置は、実施例5の発光装置における第2粒子42を酸化亜鉛と水酸化マグネシウムの混合物に替えたものである。この粒子は、純水にYAGの蛍光体を分散させ、酸化亜鉛をそれに由来する亜鉛がYAGの重量に対して2wt%、硝酸マグネシウムをそれに由来するマグネシウムがYAGの重量に対して0.5wt%となるように添加して攪拌し、その懸濁液に水酸化ナトリウムを滴下してpHを11.5に調整した後、十分に洗浄、脱液、乾燥、篩を行うことにより得られるものである。
【0051】
<比較例2>
比較例2の発光装置の封止部材は、実施例5と同様のYAGの蛍光体の第1粒子41のみが添加されたものである。
【0052】
次に、実施例5乃至9の発光装置における導電部材の劣化抑制効果を上記と同様の硫化試験により検証する。硫化試験の結果を、以下の表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
表2に示すように、第1粒子41を蛍光体とした実施例5〜9の発光装置においても、相対光束維持率が1.000より大きくなっており、第2粒子42の添加により硫黄含有ガスによる導電部材の劣化を抑制できることがわかる。
【0055】
また特に、第2粒子42が鉄を含む化合物である実施例7,8の発光装置は、相対光束維持率が非常に高くなっており、鉄の導電部材劣化抑制効果が高いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る発光装置は、液晶ディスプレイのバックライト光源、各種照明器具、大型ディスプレイ、広告や行き先案内等の各種表示装置、さらには、デジタルビデオカメラ、ファクシミリ、コピー機、スキャナ等における画像読取装置、プロジェクタ装置などに利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10…導電部材、20…発光素子、30…封止部材、41…第1粒子、42…第2粒子、50…ワイヤ、55…導電性接着剤、60…基体、100,200…発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部材と、前記導電部材に接続された発光素子と、前記導電部材の一部及び前記発光素子を封止する封止部材と、を備え、
前記封止部材は、その母材中に、第1粒子と、前記第1粒子に付着した、該第1粒子とは異なる物質の第2粒子と、を含み、
前記第2粒子は、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、鉄、銅、ニッケル、銀、ジルコニウム、コバルト、クロム、鉛、バリウムから選択される少なくとも1種の元素の酸化物、水酸化物若しくは炭酸化物、又はこれらの化合物を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第2粒子は、亜鉛の酸化物、水酸化物若しくは炭酸化物、又はこれらの化合物を含む請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第2粒子は、前記第1粒子の表面の一部に付着している請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
導電部材と、前記導電部材に接続された発光素子と、前記導電部材の一部及び前記発光素子を封止する封止部材と、を備え、
前記封止部材は、その母材中に、亜鉛の水酸化物若しくは炭酸化物、又はこれらの化合物を含む粒子を含有することを特徴とする発光装置。
【請求項5】
前記封止部材の母材は、シリコーン樹脂である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−204739(P2012−204739A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69781(P2011−69781)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】