説明

発振回路、集積回路装置及び電子機器

【課題】複数の周波数のうちから所望の周波数を選択してクロック信号を生成できる発振回路、集積回路装置及び電子機器を提供すること。
【解決手段】発振回路は、キャパシター10の一端、第1の抵抗素子20の一端及び第2の抵抗素子30の一端がその入力に接続される第1の反転回路と、キャパシター10の他端がその出力に接続される第n(nは2以上の偶数)の反転回路とを有する第1〜第nの反転回路INV1〜INVnと、第nの反転回路INVnの出力が入力され、第1の抵抗素子20の他端を駆動する第1の駆動用反転回路DR1と、第nの反転回路INVnの出力が入力され、第2の抵抗素子30の他端を駆動する第2の駆動用反転回路DR2とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振回路、集積回路装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
クロック信号を生成するためのCR発振回路を含む電子機器(携帯型情報端末等)において、複数のクロック周波数を切り換えて動作させるという課題がある。この課題に対して例えば特許文献1には最高周波数のクロック信号を分周して複数のクロック周波数を得る手法が開示されている。しかしこの手法では最高周波数の整数分の1の周波数に限定されてしまい、自由に周波数を選択することができないという課題がある。また、必要な周波数に対応する個数のCR発振回路を設けるという手法もあるが、素子数及び端子数が多くなるという課題がある。
【特許文献1】特開平09−201045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の幾つかの態様によれば、複数の周波数のうちから所望の周波数を選択してクロック信号を生成できる発振回路、集積回路装置及び電子機器を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様は、クロック信号を出力する発振回路であって、キャパシターの一端及び第1の抵抗素子の一端及び第2の抵抗素子の一端がその入力に接続される第1の反転回路と、前記キャパシターの他端がその出力に接続される第n(nは2以上の偶数)の反転回路とを有する第1〜第nの反転回路と、前記第nの反転回路の出力が入力され、前記第1の抵抗素子の他端を駆動する第1の駆動用反転回路と、前記第nの反転回路の出力が入力され、前記第2の抵抗素子の他端を駆動する第2の駆動用反転回路とを含むことを特徴とする発振回路に関係する。
【0005】
本発明の一態様によれば、設定された2つの周波数のうちどちらか一方を選択してクロック信号を出力することができる。さらに所望の周波数ごとに発振回路を設ける方式に比べて、素子数及び端子数を少なくすることができる。また最高周波数を分周して所望の周波数を得る方式に比べて、自由に周波数を設定でき、さらに消費電力を低減できる。
【0006】
また本発明の一態様では、前記第1及び第2の駆動用反転回路がイネーブル状態又はディスイネーブル状態に設定されることで、可変の周波数の前記クロック信号を出力してもよい。
【0007】
このようにすれば、制御回路からの制御信号により駆動用反転回路を制御して所望の周波数を選択することができる。
【0008】
また本発明の一態様では、前記第1の抵抗素子の抵抗値が前記第2の抵抗素子の抵抗値より大きく設定され、前記クロック信号の周波数が第1の周波数に設定される場合には、前記第1の駆動用反転回路がイネーブル状態に設定され、前記クロック信号の周波数が前記第1の周波数より高い第2の周波数に設定される場合には、前記第2の駆動用反転回路がイネーブル状態に設定されてもよい。
【0009】
このようにすれば、2つの抵抗素子の抵抗値をそれぞれ所望の周波数に対応する値に設定して、設定された2つの周波数のうちどちらか一方を選択してクロック信号を出力することができる。
【0010】
また本発明の一態様では、前記クロック信号の周波数が前記第2の周波数より高い第3の周波数に設定される場合には、前記第1及び第2の駆動用反転回路が共にイネーブル状態に設定されてもよい。
【0011】
このようにすれば、第3の抵抗素子を設けることなく、3つの周波数のうちいずれかの周波数を選択してクロック信号を出力することができる。
【0012】
また本発明の一態様では、前記クロック信号の周波数が第1の周波数に設定される場合には、前記第1及び第2の駆動用反転回路のうちいずれか一方がイネーブル状態に設定され、前記クロック信号の周波数が前記第1の周波数より高い第3の周波数に設定される場合には、前記第1及び第2の駆動用反転回路が共にイネーブル状態に設定されてもよい。
【0013】
このようにすれば、1つの周波数とさらに高い周波数の2つの周波数のうちどちらか一方の周波数を選択してクロック信号を出力することができる。
【0014】
また本発明の一態様では、前記第1の駆動用反転回路の出力と前記第2の駆動用反転回路の出力のうち、いずれか一方の出力を選択して前記クロック信号を出力するためのセレクターを含んでもよい。
【0015】
このようにすれば、制御信号でセレクターを制御することにより、設定された複数の周波数のうち所望の周波数を選択してクロック信号を出力することができる。
【0016】
また本発明の一態様では、前記第1〜第nの反転回路のうちのいずれかの反転回路の出力に基づいて前記クロック信号を出力してもよい。
【0017】
このようにすれば、セレクターを設けることなく、設定された複数の周波数のうち所望の周波数を選択してクロック信号を出力することができる。
【0018】
本発明の他の態様は、上記いずれかに記載の発振回路と、前記キャパシターの一端、前記第1の抵抗素子の一端及び前記第2の抵抗素子の一端を接続するための第1の端子と、前記キャパシターの他端を接続するための第2の端子と、前記第1の抵抗素子の他端を接続するための第3の端子と、前記第2の抵抗素子の他端を接続するための第4の端子とを含むことを特徴とする集積回路装置に関係する。
【0019】
本発明の他の態様によれば、複数の設定された周波数のうちから所望の周波数のクロック信号を選択して出力することができるから、条件に応じてクロック周波数を最適化することができる。
【0020】
本発明の他の態様は、上記に記載の集積回路装置を含むことを特徴とする電子機器に関係する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0022】
1.発振回路の第1の構成例
図1に本実施形態の発振回路の第1の構成例を示す。本構成例はクロック信号CLKを出力する発振回路であって、第1、第2の反転回路INV1、INV2(広義には第1〜第nの反転回路INV1〜INVn(nは2以上の偶数))と、第1、第2の駆動用反転回路DR1、DR2とを含む。本構成例の発振回路は、反転回路INV1、INV2(INV1〜INVn)又は第1、第2の駆動用反転回路DR1、DR2のいずれかの出力に基づいてクロック信号CLKを出力することができる。さらに本構成例はセレクター40と、制御信号反転用インバーターSIVと、出力バッファー回路OBFとを含む。なお、本実施形態の発振回路は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0023】
本構成例では、反転回路INV1、INV2(INV1〜INVn)はインバーターで構成しているが、NAND回路又はその他の論理回路(ロジック回路、論理ゲート等)で構成してもよい。
【0024】
第1の反転回路INV1の入力には、キャパシター10の一端及び第1の抵抗素子20の一端及び第2の抵抗素子30の一端が接続される。第2の反転回路INV2(広義には第nの反転回路INVn)の出力には、キャパシター10の他端が接続される。
【0025】
第1の駆動用反転回路DR1は、第2の反転回路INV2(広義には第nの反転回路INVn)の出力が入力され、第1の抵抗素子20の他端を駆動する。第2の駆動用反転回路DR2は、第2の反転回路INV2(広義には第nの反転回路INVn)の出力が入力され、第2の抵抗素子30の他端を駆動する。
【0026】
キャパシター10及び第1、第2の抵抗素子20、30は、反転回路INV1、INV2(INV1〜INVn)及び第1、第2の駆動用反転回路DR1、DR2を含む集積回路装置の内部に設けてもよいし、外部に設けてもよい。
【0027】
本構成例では、制御回路からの制御信号SELにより第1及び第2の駆動用反転回路DR1、DR2がイネーブル状態又はディスイネーブル状態に設定されることで、可変の周波数のクロック信号CLKを出力する。具体的には、第1の抵抗素子20の抵抗値が第2の抵抗素子30の抵抗値より大きく設定される。そしてクロック信号CLKの周波数が第1の周波数f1に設定される場合には、第1の駆動用反転回路DR1がイネーブル状態に設定され、第1の周波数f1より高い第2の周波数f2に設定される場合には、第2の駆動用反転回路DR2がイネーブル状態に設定される。
【0028】
より具体的には、クロック信号CLKの周波数が第1の周波数f1に設定される場合には、制御信号SELがHレベル(高電位レベル)に設定される。このとき第1の駆動用反転回路DR1はイネーブル状態に設定され、第2の駆動用反転回路DR2はディスイネーブル状態に設定される。一方、第2の周波数f2に設定される場合には制御信号SELがLレベル(低電位レベル)に設定される。このときDR1はディスイネーブル状態に設定され、DR2はイネーブル状態に設定される。
【0029】
セレクター40は制御信号SELに基づいて、第1の駆動用反転回路DR1の出力と第2の駆動用反転回路DR2の出力のうち、いずれか一方の出力を選択する。セレクター40により選択された信号に基づいて、出力バッファー回路OBFはクロック信号CLKを出力する。
【0030】
図1の発振回路は以下のように動作する。制御信号SELがHレベルに設定される場合、すなわち第1の駆動用反転回路DR1がイネーブル状態に設定される場合を説明する。第1の反転回路INV1の入力ノードN4がLレベルとすると、第2の反転回路INV2の出力ノードN3はLレベル、第1の駆動用反転回路DR1の出力ノードN1はHレベルとなる。そうすると第1の抵抗素子20を介してN1からN4へ電流が流れる。この電流はキャパシター10を充電しながらN4の電位を上昇させて、N4の電位がINV1の論理しきい値より高くなるとINV1が反転する。INV1が反転するとN3はHレベル、N1はLレベルとなるから、N4からN1へ電流が流れてキャパシター10を放電する。N4の電位が降下してINV1の論理しきい値より低くなるとINV1が反転して、N3がLレベル、N1がHレベルとなって再びキャパシター10の充電が始まる。このようにして充電と放電を繰り返すことにより一定の周波数で発振する。なお、この場合には第2の駆動用反転回路DR2はディスイネーブル状態であるから、その出力ノードN2はハイインピーダンス(Hi−Z)となり上記の動作に影響を及ぼさない。
【0031】
キャパシター10の充電又は放電に要する時間はほぼRC時定数すなわち抵抗値と容量値の積で決まる。具体的には、例えば第1の抵抗素子20の抵抗値をRA1とし、キャパシター10の容量値をCAとした場合に、CLKの第1の周波数f1に対応する周期T1はほぼT1=2×RA1×CAで与えられる。また、第1の周波数f1はT1の逆数すなわちf1=1/T1で与えられる。
【0032】
以上はDR1がイネーブル状態に設定される場合について説明したが、DR2がイネーブル状態に設定される場合についても、上記と同様にして第2の周波数f2が決まる。具体的には、第2の抵抗素子30の抵抗値をRA2とした場合に、f2に対応する周期T2はほぼT2=2×RA2×CAで与えられ、f2はf2=1/T2で与えられる。したがって、RA1>RA2の場合にはT1>T2であり、f1<f2である。
【0033】
図2は発振回路の第1の構成例の信号波形の一例を示す。図2では第1の駆動用反転回路DR1がイネーブル状態に設定される場合のノードN1、N2、N4の各電圧V1、V2、V4及びクロック信号CLKの波形を示している。以下、図2を用いて本構成例の発振回路の動作を説明する。
【0034】
初めにV4すなわちINV1の入力電圧が図中A1に示すようにLレベルにあるとすると、V1すなわちDR1の出力電圧はB1に示すようにHレベルとなる。この状態では第1の抵抗素子20を介してN1からN4へ電流が流れてキャパシター10を充電するから、V4はA2に示すように徐々に電圧が上昇する。そしてV4がINV1の論理しきい値に達すると、INV1が反転し、さらにINV2も反転して、N3がLレベルからHレベルに遷移する。このためにV4はA3からA4に示すように急峻に上昇する。一方、このときV1はB2からB3に示すようにHレベルからLレベルに遷移する。この状態では第1の抵抗素子20を介してN4からN1へ電流が流れてキャパシター10を放電するから、V4はA5に示すように徐々に降下する。そしてV4がINV1の論理しきい値に達すると、INV1が反転し、さらにINV2も反転して、N3がHレベルからLレベルに遷移する。このためにV4はA6からA7に示すように急峻に降下する。そして再びキャパシター10の充電が開始されて、A1〜A7が繰り返される。
【0035】
図2のV4の波形から分かるように、周期Tは充電時間trと放電時間tfの和で与えられる。充電時間tr及び放電時間tfは共にほぼRC時定数すなわち抵抗値と容量値の積で決まる。例えば第1の抵抗素子20の抵抗値をRA1とし、キャパシター10の容量値をCAとした場合に、周期T1はほぼT1=2×RA1×CAで与えられる。なお、実際の発振回路では、使用されるトランジスターのゲートに含まれる寄生容量等も考慮して周期T1を求める必要がある。より詳細な回路シミュレーションによれば、例えばRA1=120kΩ、CA=10pFの場合に、T1=2.83μsである。
【0036】
図3は駆動用反転回路DR1、DR2の構成例を示す。本構成例はP型トランジスターTP1、TP2、N型トランジスターTN1、TN2及びインバーターIVAを含む。
【0037】
制御信号SELがHレベル(高電位レベル)に設定される場合は、TP1とTN2がオン状態となるから、TP2とTN1は通常のインバーターとして動作する。この状態をイネーブル状態とすることができる。一方、制御信号SELがLレベル(低電位レベル)に設定される場合は、TP1とTN2がオフ状態となるから、入力IAのレベルに関係なく出力QAはハイインピーダンス(Hi−Z)となる。この状態をディスイネーブル状態とすることができる。
【0038】
なお、本実施形態の駆動用反転回路は図3の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0039】
以上説明したように図1に示す発振回路の第1の構成例によれば、第1、第2の抵抗素子20、30の抵抗値をそれぞれ所望の周波数に対応する値に設定して、制御信号SELで制御することにより、設定された2つの周波数のうちどちらか一方を選択してクロック信号を出力することができる。さらに所望の周波数ごとに発振回路を設ける方式に比べて、素子数及び端子数を少なくすることができる。また最高周波数を分周して所望の周波数を得る方式に比べて、自由に周波数を設定できること、及び消費電力を低減できることの利点がある。
【0040】
なお、本構成例では2個の抵抗素子と2個の駆動用反転回路を設けているが、3個以上の抵抗素子とそれに対応する個数の駆動用反転回路を設けてもよい。こうすれば3つ以上の周波数のうちから所望の周波数を選択してクロック信号を出力することができる。
【0041】
2.発振回路の第2の構成例
図4に本実施形態の発振回路の第2の構成例を示す。本構成例は第1、第2の反転回路INV1、INV2(広義には第1〜第nの反転回路INV1〜INVn(nは2以上の偶数))と、第1、第2の駆動用反転回路DR1、DR2と、出力バッファー回路OBFとを含む。
【0042】
第1の反転回路INV1の入力には、キャパシター10の一端及び第1の抵抗素子20の一端及び第2の抵抗素子30の一端が接続される。第2の反転回路INV2(広義には第nの反転回路INVn)の出力には、キャパシター10の他端が接続される。
【0043】
第1の駆動用反転回路DR1は、第2の反転回路INV2(広義には第nの反転回路INVn)の出力が入力され、第1の抵抗素子20の他端を駆動する。第2の駆動用反転回路DR2は、第2の反転回路INV2(広義には第nの反転回路INVn)の出力が入力され、第2の抵抗素子30の他端を駆動する。DR1及びDR2は、それぞれ制御信号SEL1及びSEL2により、イネーブル状態又はディスイネーブル状態に設定される。なお、本実施形態の発振回路は図4の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0044】
本構成例では、反転回路INV1、INV2(INV1〜INVn)はインバーターで構成しているが、NAND回路又はその他の論理回路(ロジック回路、論理ゲート等)で構成してもよい。
【0045】
キャパシター10及び第1、第2の抵抗素子20、30は、反転回路INV1、INV2(INV1〜INVn)及び第1、第2の駆動用反転回路DR1、DR2を含む集積回路装置の内部に設けてもよいし、外部に設けてもよい。
【0046】
図4では、第2の反転回路INV2の出力に基づいてクロック信号CLKが出力されるが、第1の反転回路INV1の出力に基づいてクロック信号CLKを出力してもよい。n個の反転回路を含む場合では、第1〜第nの反転回路INV1〜INVnのうちのいずれかの反転回路の出力に基づいてクロック信号CLKを出力してもよい。
【0047】
第2の構成例では、制御回路からの制御信号SEL1、SEL2により第1及び第2の駆動用反転回路DR1、DR2がイネーブル状態又はディスイネーブル状態に設定されることで、可変の周波数のクロック信号CLKを出力する。具体的には、第1の抵抗素子20の抵抗値RA1が第2の抵抗素子30の抵抗値RA2より大きく設定され、クロック信号CLKの周波数が第1の周波数f1に設定される場合には、第1の駆動用反転回路DR1がイネーブル状態に設定される。また、第1の周波数f1より高い第2の周波数f2に設定される場合には、第2の駆動用反転回路DR2がイネーブル状態に設定される。さらにクロック信号CLKの周波数が第2の周波数f2より高い第3の周波数f3に設定される場合には、第1、第2の駆動用反転回路DR1、DR2が共にイネーブル状態に設定される。
【0048】
より具体的には例えばクロック信号CLKの周波数がf1に設定される場合は、第1の制御信号SEL1がHレベルに設定され、第1の駆動用反転回路DR1がイネーブル状態に設定される。また、第2の制御信号SEL2がLレベルに設定され、第2の駆動用反転回路DR2がディスイネーブル状態に設定される。上述したように、このときのf1に対応する周期T1はほぼT1=2×RA1×CAで与えられる。
【0049】
クロック信号CLKの周波数がf2に設定される場合は、SEL1がHレベルに設定され、DR1がイネーブル状態に設定される。また、SEL2がLレベルに設定され、DR2がディスイネーブル状態に設定される。上述したように、このときのf2に対応する周期T2はほぼT2=2×RA2×CAで与えられる。
【0050】
さらにクロック信号CLKの周波数がf3に設定される場合は、SEL1、SEL2が共にHレベルに設定され、DR1、DR2が共にイネーブル状態に設定される。この場合には第1、第2の抵抗素子20、30の両方を介してキャパシター10が充電又は放電される。したがって第1、第2の抵抗素子20、30を並列接続した合成抵抗値をR12とした場合に、f3に対応する周期T3はほぼT3=2×R12×CAで与えられる。ここで合成抵抗値R12は、第1の抵抗素子20の抵抗値をRA1とし、第2の抵抗素子30の抵抗値をRA2とした場合に、R12=RA1×RA2/(RA1+RA2)で与えられる。RA1>RA2に設定された場合には、RA1>RA2>R12となるから、T1>T2>T3となり、したがってf1<f2<f3となる。
【0051】
さらに第2の構成例によれば、クロック信号CLKの周波数が第1の周波数f1に設定される場合には、第1、第2の駆動用反転回路DR1、DR2のうちいずれか一方がイネーブル状態に設定される。また、f1より高い第3の周波数f3に設定される場合には、第1、第2の駆動用反転回路DR1、DR2が共にイネーブル状態に設定される。
【0052】
具体的にはクロック信号CLKの周波数がf1に設定される場合は、SEL1がHレベルに設定され、SEL2がLレベルに設定されてもよいし、反対にSEL1がLレベルに、SEL2がHレベルに設定されてもよい。この場合はDR1、DR2のうちいずれか一方がイネーブル状態に設定される。一方、クロック信号CLKの周波数がf3に設定される場合は、SEL1、SEL2が共にHレベルに設定され、DR1、DR2が共にイネーブル状態に設定される。上述したように、第1、第2の抵抗素子20、30を並列接続した合成抵抗値をR12とした場合に、f3に対応する周期T3はほぼT3=2×R12×CAで与えられる。したがってCLKの周波数をf1に設定する場合にDR1、DR2のどちらをイネーブル状態に設定しても、R12<RA1、R12<RA2であるから、f3>f1となる。
【0053】
以上説明したように図4に示す発振回路の第2の構成例によれば、第1、第2の抵抗素子20、30の抵抗値を適当な値に設定して、2つの制御信号SEL1、SEL2で制御することにより、最大3つの周波数のうちいずれかの周波数を選択してクロック信号を出力することができる。さらに所望の周波数ごとに発振回路を設ける方式に比べて、素子数を少なくすることができる。また最高周波数を分周して所望の周波数を得る方式に比べて、自由に周波数を選択できること、及び消費電力を低減できることの利点がある。
【0054】
なお、本構成例では2個の抵抗素子と2個の駆動用反転回路を設けているが、3個以上の抵抗素子、それに対応する個数の駆動用反転回路及びそれに対応する個数の制御信号を設けてもよい。こうすればさらに多数の周波数のうちから所望の周波数を選択することができる。
【0055】
3.集積回路装置
図5に本実施形態の発振回路を含む集積回路装置の構成例を示す。図5の集積回路装置200は本実施形態の発振回路100と、キャパシター10の一端、第1の抵抗素子20の一端及び第2の抵抗素子30の一端を接続するための第1の端子P1と、キャパシター10の他端を接続するための第2の端子P2と、第1の抵抗素子20の他端を接続するための第3の端子P3と、第2の抵抗素子30の他端を接続するための第4の端子P4とを含む。なお、キャパシター10及び第1、第2の抵抗素子20、30は、集積回路装置の内部に設けることもできる。
【0056】
さらに本構成例の集積回路装置200は、制御回路110、PLL(Phase-Locked Loop)回路(広義にはクロック生成回路)130、ロジック回路140、アナログ回路150を含む。制御回路110はレジスター120を含む。
【0057】
本構成例の集積回路装置200では、制御回路110はレジスター120に記憶されたデータに基づいて制御信号SEL1、SEL2を発振回路100に出力する。発振回路100は制御信号SEL1、SEL2に従って、クロック信号CLKの周波数を第1〜第3の周波数f1〜f3のうちのいずれかの周波数に設定して出力する。PLL回路130はクロック信号CLKに基づいてさらに所望のクロック信号を生成し、ロジック回路140及びアナログ回路150に供給する。
【0058】
上述したように、本構成例の集積回路装置200によれば、複数の設定された周波数のうちから所望の周波数のクロック信号を選択して生成することができるから、条件に応じてクロック周波数を最適化することができる。さらに所望の周波数ごとに発振回路を設ける方式に比べて、素子数及び端子数を少なくすることができる。また最高周波数を分周して所望の周波数を得る方式に比べて、自由に周波数を選択できること、及び消費電力を低減できることの利点がある。
【0059】
4.電子機器
図6に本実施形態の集積回路装置を含む電子機器(携帯型情報端末)の一例を示す。なお、本実施形態の電子機器は携帯型情報端末には限定されず、携帯電話機、PDAなどであってもよい。
【0060】
図6に示す電子機器は、本実施形態の発振回路を含む送受信回路(広義には集積回路装置)200、CPU(Central Processing Unit)210、表示部220、操作入力部230、メモリー部240、アンテナ250を含む。送受信回路200はアンテナ250で受信した信号を復調してCPU210に出力し、またCPU210からのデータを変調してアンテナ250から送信する。CPU210は操作入力部230からの操作情報に基づいて、送受信回路200及びメモリー部240とデータをやりとりし、必要なデータ処理を行う。表示部220はCPU210からのデータを表示する。
【0061】
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また集積回路装置及び電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】発振回路の第1の構成例。
【図2】信号波形の一例。
【図3】駆動用反転回路の構成例。
【図4】発振回路の第2の構成例。
【図5】集積回路装置の構成例。
【図6】電子機器の一例。
【符号の説明】
【0063】
INV1、INV2 第1、第2の反転回路、
DR1、DR2 第1、第2の駆動用反転回路、SIV 制御信号反転用インバーター、
OBF 出力バッファー回路、SEL 制御信号、CLK クロック信号、
10 キャパシター、20 第1の抵抗素子、30 第2の抵抗素子、
40 セレクター、100 発振回路、110 制御回路、120 レジスター、
130 PLL回路、140 ロジック回路、150 アナログ回路、
200 集積回路装置、210 CPU、220 表示部、230 操作入力部、
240 メモリー部、250 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号を出力する発振回路であって、
キャパシターの一端及び第1の抵抗素子の一端及び第2の抵抗素子の一端がその入力に接続される第1の反転回路と、前記キャパシターの他端がその出力に接続される第n(nは2以上の偶数)の反転回路とを有する第1〜第nの反転回路と、
前記第nの反転回路の出力が入力され、前記第1の抵抗素子の他端を駆動する第1の駆動用反転回路と、
前記第nの反転回路の出力が入力され、前記第2の抵抗素子の他端を駆動する第2の駆動用反転回路とを含むことを特徴とする発振回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1及び第2の駆動用反転回路がイネーブル状態又はディスイネーブル状態に設定されることで、可変の周波数の前記クロック信号を出力することを特徴とする発振回路。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1の抵抗素子の抵抗値が前記第2の抵抗素子の抵抗値より大きく設定され、
前記クロック信号の周波数が第1の周波数に設定される場合には、前記第1の駆動用反転回路がイネーブル状態に設定され、
前記クロック信号の周波数が前記第1の周波数より高い第2の周波数に設定される場合には、前記第2の駆動用反転回路がイネーブル状態に設定されることを特徴とする発振回路。
【請求項4】
請求項3において、
前記クロック信号の周波数が前記第2の周波数より高い第3の周波数に設定される場合には、前記第1及び第2の駆動用反転回路が共にイネーブル状態に設定されることを特徴とする発振回路。
【請求項5】
請求項2において、
前記クロック信号の周波数が第1の周波数に設定される場合には、前記第1及び第2の駆動用反転回路のうちいずれか一方がイネーブル状態に設定され、
前記クロック信号の周波数が前記第1の周波数より高い第3の周波数に設定される場合には、前記第1及び第2の駆動用反転回路が共にイネーブル状態に設定されることを特徴とする発振回路。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記第1の駆動用反転回路の出力と前記第2の駆動用反転回路の出力のうち、いずれか一方の出力を選択して前記クロック信号を出力するためのセレクターを含むことを特徴とする発振回路。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記第1〜第nの反転回路のうちのいずれかの反転回路の出力に基づいて前記クロック信号を出力することを特徴とする発振回路。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の発振回路と、
前記キャパシターの一端、前記第1の抵抗素子の一端及び前記第2の抵抗素子の一端を接続するための第1の端子と、
前記キャパシターの他端を接続するための第2の端子と、
前記第1の抵抗素子の他端を接続するための第3の端子と、
前記第2の抵抗素子の他端を接続するための第4の端子とを含むことを特徴とする集積回路装置。
【請求項9】
請求項8に記載の集積回路装置を含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−154449(P2010−154449A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332885(P2008−332885)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】