説明

発振回路およびその制御方法

【課題】発振に係る電流消費を抑える。
【解決手段】圧電振動子12と帰還抵抗素子13を並列形態で入出力間に接続すると共にCMOS論理反転型回路で構成される増幅器11と、発振起動前において増幅器11の入出力レベルを固定化して発振を停止させておき、発振起動開始時において入出力レベルの固定化を解除し、発振起動開始の所定時間後に増幅器11の出力端にパルス信号を供給するCMOS論理回路で構成される制御回路14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振回路およびその制御方法に係り、特に、CMOS回路で構成される発振回路およびその制御方法に係る。
【背景技術】
【0002】
基準クロック発生源として用いられる発振回路では、CMOSインバータの入出力間に水晶振動子等の圧電振動子と帰還抵抗素子を並列形態で接続する回路が広く使われている。このような発振回路で発振停止時に無駄な電流消費を抑える技術が特許文献1において開示されている。特許文献1の発振回路は、帰還抵抗をMOSトランジスタによって構成し、このMOSトランジスタより低い抵抗値の第2の帰還抵抗と容量素子とを直列に接続してなる直列回路を上記MOSトランジスタに並列に接続し、発振停止用信号によってCMOSインバータの入力端子または出力端子を所望の電位に保持する制御回路を設ける。そして、発振停止用信号によってMOSトランジスタをオフにするように動作させる。
【0003】
一方、特許文献2には、発振の立ち上がりを速くすることを目的とし、増幅器の入力側または出力側に電源電圧の立ち上がりを検出してトリガを発生するトリガ回路を設け、トリガ回路によって発振回路にトリガパルスを供給して発振を起動する発振回路が記載されている。
【0004】
また、関連する技術として、特許文献3には、正常発振を促進させることを目的とし、発振回路の外部において帰還抵抗に並列接続した振動子と、該振動子の一方の端子に接続されて該振動子とともにパッケージ化された発振子を形成し、外部信号により導通して該端子を接地し帰還抵抗付き増幅器の発振を起動する発振起動回路とを備える発振回路が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−193427号公報
【特許文献2】特開昭59−205802号公報
【特許文献3】特開平11−308051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下の分析は本発明において与えられる。
【0007】
例えば、自動車用の電子キーなどの携帯型電子機器では、電池と電池によって電源が供給される発振回路が備えられる。そして、所定のコード信号を送出可能とするように、発振回路で生成した発振信号によって動作する所定の回路が設けられる。このような所定の回路において、スタンバイモードでは電池によって常時電源が供給された状態とされ、所定の回路が動作する時にのみ電源電流が流れるように動作して低消費電流を実現している。発振回路も同様であって、特許文献1の発振回路は、このようなスタンバイモードとして動作する発振回路として好適である。
【0008】
ところで、電子キーなどでは、キーに係るコードが単純であるため、コード信号を送出する時間自体は、極めて短い。例えば、数十バイトを送るために必要とされる時間は、1mSもあれば充分である。これに対し、コード信号を送出ために発振回路が起動され、発振を開始し、定常状態の発振信号を所定の回路に供給するまでに費やされる時間の方がはるかに長い。このような場合、電池は、発振回路の起動に係る時間において、ほとんど消費されることになる。特許文献1の発振回路は、発振停止時における無駄な電流消費を抑えるものの、発振回路の起動に係る電流消費を抑えることはできない。
【0009】
特許文献2の記載によれば、電源投入後、発振波形が実用上問題と成らない大きさになるまで、例えば、発振周波数が数MHzの場合に数mS〜十数mSであることが示されている。また、本発明者によれば、発振周波数が10MHzの場合に数百μS〜数mSであることが確かめられている。
【0010】
一方、特許文献2に記載の発振回路によれば、トリガパルスを入力端に供給することで上記の立ち上がりを数分の一に速くすることができる。しかしながら、トリガパルスによって入力端を一旦接地すると復帰するのに約3τ(100μs)程度かかる。すなわち、例えば入力端の容量(C=30pF)、帰還抵抗の抵抗値(R=1MΩ)とすれば、時定数τ(30μs)=R(1MΩ)×C(30pF))である。これは実際の発振開始時間とほぼ同等であって、特許文献2においてトリガパルス解除後に直ぐ起動するように書かれているが、実際にはトリガパルス解除後に暫くバイアス安定時間が有る事が判る。つまり電源投入からの解除ではバイアスが安定した後に再度バイアス安定時間が必要になる。さらに、特許文献2に記載の発振回路は、電源電圧の立ち上がりを検出してトリガを発生するため、スタンバイモードとして動作する発振回路を構成することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つのアスペクト(側面)に係る発振回路は、圧電振動子と帰還抵抗素子を並列形態で入出力間に接続すると共にCMOS論理反転型回路で構成される増幅器と、発振起動前において増幅器の入出力レベルを固定化して発振を停止させておき、発振起動開始時において入出力レベルの固定化を解除し、発振起動開始の所定時間後に増幅器の出力端にパルス信号を供給するCMOS論理回路で構成される制御回路と、を備える。
【0012】
本発明の他のアスペクト(側面)に係る発振回路の制御方法は、圧電振動子と帰還抵抗素子を並列形態で入出力間に接続すると共にCMOS論理反転型回路で構成される増幅器を備える発振回路の制御方法であって、増幅器に電源を供給しておくと共に、発振起動前において増幅器の入出力レベルを固定化して発振を停止しておくステップと、発振起動開始時において入出力レベルの固定化を解除するステップと、発振起動開始の所定時間後に増幅器の出力端にパルス信号を供給するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スタンバイモードとして動作すると共に発振の起動時間を短くして発振に係る電流消費を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。図1において、発振回路は、圧電振動子12と帰還抵抗素子13を並列形態で入出力間に接続すると共にCMOS論理反転型回路で構成される増幅器11と、発振起動前において増幅器11の入出力レベルを固定化して発振を停止させておき、発振起動開始時において入出力レベルの固定化を解除し、発振起動開始の所定時間後に増幅器11の出力端にパルス信号を供給するCMOS論理回路で構成される制御回路14と、を備える。
【0015】
本発明の発振回路において、増幅器は、インバータ回路で構成され、インバータ回路の入力端に接続される第1のスイッチ素子と、帰還抵抗素子と直列接続され帰還抵抗素子と共に圧電振動子に並列接続される第2のスイッチ素子と、を備え、制御回路は、発振起動前において、第1のスイッチ素子によってインバータ回路の入力端をハイレベルまたはローレベルに固定化すると共に第2のスイッチ素子をオフ状態とし、発振起動開始時において、インバータ回路の入力端の固定化を解除すると共に第2のスイッチ素子をオン状態とするようにしてもよい。
【0016】
本発明の発振回路において、増幅器は、2入力のNAND回路で構成され、NAND回路の一方の入力端子に圧電振動子と帰還抵抗素子との一端を接続し、制御回路は、発振起動前において、NAND回路の他方の入力端子をローレベルとし、発振起動開始時において、NAND回路の他方の入力端子をハイレベルとするようにしてもよい。
【0017】
本発明の発振回路において、増幅器は、2入力のNOR回路で構成され、NOR回路の一方の入力端子に圧電振動子と帰還抵抗素子との一端を接続し、制御回路は、発振起動前において、NOR回路の他方の入力端子をハイレベルとし、発振起動開始時において、NOR回路の他方の入力端子をローレベルとするようにしてもよい。
【0018】
本発明の発振回路において、増幅器は、クロックドインバータ回路で構成され、制御回路は、発振起動前において、クロックドインバータ回路がインバータ回路として機能しないようにクロックドインバータ回路のクロック端子のレベルを設定し、発振起動開始時において、クロックドインバータ回路がインバータ回路として機能するようにクロックドインバータ回路のクロック端子のレベルを設定するようにしてもよい。
【0019】
本発明の発振回路において、増幅器は、第1および第2の第1導電型のトランジスタと、第2導電型のトランジスタとを備え、第1の第1導電型のトランジスタは、ソースを第1の電源に接続し、ドレインを第2の第1導電型のトランジスタのソースに接続し、ゲートを増幅器の制御端とし、第2の第1導電型のトランジスタは、ドレインを第2導電型のトランジスタのドレインに接続して増幅器の出力端とし、ゲートを増幅器の入力端とし、第2導電型のトランジスタは、ソースを第2の電源に接続し、ゲートを増幅器の入力端とし、制御回路は、発振起動前において、増幅器の制御端を第1の電源側の電位に設定し、発振起動開始時において、増幅器の制御端を第2の電源側の電位に設定するようにしてもよい。
【0020】
本発明の携帯型電子機器において、上記の発振回路と、該発振回路に電源を供給する電池とを備えるようにしてもよい。
【0021】
以上のような発振回路によれば、発振起動前において増幅器の入出力レベルを固定化して発振を停止したスタンバイモードとし、発振起動開始時において入出力レベルの固定化を解除し、発振起動開始の所定時間後に増幅器の出力端にパルス信号を供給して発振動作を加速することができる。したがって、発振回路における電流消費を抑えることができる。
【0022】
以下、実施例に即し、回路図を参照して詳しく説明する。
【実施例1】
【0023】
図2は、本発明の第1の実施例に係る発振回路の回路図である。図2において、発振回路は、CMOS構成のインバータ回路INV、水晶振動子Xtal、抵抗素子R1、容量素子C1、C2、NMOSトランジスタQ1、Q3、PMOSトランジスタQ2、CMOS構成の制御回路14aを備える。
【0024】
インバータ回路INVは、増幅器として機能し、入力端に容量素子C1の一端、NMOSトランジスタQ1のドレイン、水晶振動子Xtalの一端、抵抗素子R1の一端を接続する。また、出力端に容量素子C2の一端、NMOSトランジスタQ3のドレイン、水晶振動子Xtalの他端、PMOSトランジスタQ2の一端を接続する。PMOSトランジスタQ2の他端と抵抗素子R1の他端とが接続される。容量素子C1の他端、NMOSトランジスタQ1のソース、容量素子C2の他端、NMOSトランジスタQ3のソースは、すべて接地される。
【0025】
制御回路14aは、CMOS論理回路で構成され、端子S0、S1、S2を備え、端子S0に発振回路の起動信号を入力し、端子S1をNMOSトランジスタQ1のゲートおよびPMOSトランジスタQ2のゲートに接続し、端子S2をNMOSトランジスタQ3のゲートに接続する。制御回路14aは、端子S0がLレベルからHレベルになった場合、即時に端子S1をHレベルからLレベルにし、所定時間後に一定期間、端子S2をHレベルにする。端子S2から出力されるパルス信号の制御には、例えばワンショット回路が内蔵される。
【0026】
次に、発振回路の動作について説明する。図3は、本発明の第1の実施例に係る発振回路の動作を表すタイミングチャートである。図3において、発振回路の起動信号が入力される時刻t0以前は、スタンバイモードである。この状態で、端子S0のレベルは、Lレベルであり、端子S1のレベルは、Hレベルであり、端子S2のレベルは、Lレベルである。したがって、NMOSトランジスタQ1はオン状態にあり、PMOSトランジスタQ2はオフ状態にあり、NMOSトランジスタQ3はオフ状態にある。このため、インバータ回路INVの入力電圧V1は、Lレベルで固定され、出力電圧V2は、Hレベルに固定される。PMOSトランジスタQ2はオフ状態にあるため、インバータ回路INVの出力端(OUT)から抵抗素子R1を介してオン状態のNMOSトランジスタQ1に電流が流れることはない。スタンバイモードにおいて、インバータ回路INVおよび制御回路14aがCMOS構成である限り、電源電流はほとんど流れることはない。
【0027】
時刻t0において、発振回路の起動信号として、端子S0にHレベルが入力されると、制御回路14aは、端子S1をLレベルとする。したがって、NMOSトランジスタQ1はオフ状態となり、PMOSトランジスタQ2はオン状態となり、インバータ回路INVの出力端(OUT)から抵抗素子R1を介してインバータ回路INVの入力端側に電流が流れて容量素子C1を充電する。このため、インバータ回路INVの入力電圧V1は、LレベルからHレベルに向かって徐々に上昇する。
【0028】
時刻t1において、入力電圧V1が電源と接地の中間電位付近に達すると、インバータ回路INVは、反転増幅器として機能し、出力電圧V2は、中間電位に向かって下降する。
【0029】
時刻t0から所定時間後の時刻t2において、制御回路14aは、端子S2をHレベルとし時刻t3まで持続する。ここで時刻t2は、出力電圧V2が電源と接地のほぼ中間の電位になる時刻である。NMOSトランジスタQ3はオン状態となって、出力電圧V2は、Lレベルとなる。これに伴い、入力電圧V1は、抵抗素子R1を介してLレベルに向かおうとするが、抵抗素子R1の抵抗値が高いためにすぐにはLレベルにならず中間の電位に留まる。
【0030】
トリガパルスの幅(t3−t2)に相当する時刻t3に達したならば、制御回路14aは、端子S2をLレベルに戻す。NMOSトランジスタQ3はオフ状態となって、入力電圧V1が中間の電位にあるために、出力電圧V2は、中間の電位に戻る。
【0031】
このようなインバータ回路INVの出力をLレベルとするようなトリガパルスの印加によって、時刻t4において、発振の開始が加速され、時刻t5において、発振が定常状態となる。発振信号は、出力OUTから発振回路の外部に出力される。
【0032】
なお、以上の説明では、時刻t0以前においてインバータ回路INVの入力電圧V1をオンであるNMOSトランジスタQ1によってLレベルに固定しているが、入力電圧V1を他の手段でHレベルに固定するようにしてもよい。この場合は、出力電圧V2はLレベルに固定され、時刻t1において、中間電位に向かって上昇することとなる。
【0033】
以上のようなインバータ回路INVで構成される発振回路によれば、発振起動前においてインバータ回路INVの入出力レベルを固定化して発振を停止して電流消費をほぼ0とする。さらに、発振起動開始の所定時間後にインバータ回路INVの出力端にパルス信号(トリガパルス)を供給して発振動作を加速することができる。したがって、発振回路の起動が短くなり、発振の起動に係る電流消費を抑えることができる。
【実施例2】
【0034】
図4は、本発明の第2の実施例に係る発振回路の回路図である。図4において、図2と同一の符号は同一物を表し、その説明を省略する。第2の実施例の発振回路は、図2に対し、NMOSトランジスタQ1、PMOSトランジスタQ2を廃し、インバータ回路INVの替わりに2入力のNAND回路NANDを備える。また、制御回路14bは、端子S1Bを備え、図2の端子S1から出力する信号と逆相である信号を端子S1BからNAND回路NANDの一方の入力端に出力する。NAND回路NANDの他方の入力端には、抵抗素子R1の一端、容量素子C1の一端、水晶振動子Xtalの一端が接続される。また、NAND回路NANDの出力端には、容量素子C2の一端、水晶振動子Xtalの他端、抵抗素子R1の他端、NMOSトランジスタQ3のドレインが接続される。
【0035】
次に、発振回路の動作について説明する。図5は、本発明の第2の実施例に係る発振回路の動作を表すタイミングチャートである。図5において、発振回路の起動信号が入力される時刻t0以前は、スタンバイモードである。この状態で、端子S0、端子S1B、端子S2のレベルは、共にLレベルである。したがって、NMOSトランジスタQ3はオフ状態にあり、NAND回路NANDの出力OUT(出力電圧V2)はHレベルに固定される。したがって、NAND回路NANDの他方の入力端(出力電圧V1)は、抵抗素子R1を介した電圧によってHレベルに固定される。スタンバイモードにおいて、NAND回路NANDおよび制御回路14bがCMOS構成である限り、電源電流は、ほとんど流れることはない。
【0036】
時刻t0において、発振回路の起動信号として、端子S0にHレベルが入力されると、制御回路14bは、端子S1BをHレベルとする。したがって、NAND回路NANDの出力OUT(出力電圧V2)は、急速にLレベルとなる。これに伴いNAND回路NANDの他方の入力端(出力電圧V1)は、抵抗素子R1を介して緩やかにLレベルに向かう。
【0037】
時刻t1において、入力電圧V1が電源と接地の中間電位付近に達すると、NAND回路NANDは、反転増幅器として機能し、出力電圧V2は、中間電位に向かって上昇する。
【0038】
時刻t0から所定時間後の時刻t2において、制御回路14bは、端子S2をHレベルとし時刻t3まで持続する。ここで時刻t2は、出力電圧V2が電源と接地のほぼ中間の電位になる時刻である。NMOSトランジスタQ3はオン状態となって、出力電圧V2は、Lレベルとなる。これに伴い、入力電圧V1は、抵抗素子R1を介してLレベルに向かおうとするが、抵抗素子R1の抵抗値が高いためにすぐにはLレベルにならず中間の電位に留まる。
【0039】
トリガパルスの幅(t3−t2)に相当する時刻t3に達したならば、制御回路14bは、端子S2をLレベルに戻す。NMOSトランジスタQ3はオフ状態となって、入力電圧V1が中間の電位にあるために、出力電圧V2は、中間の電位に戻る。
【0040】
このようなNAND回路NANDの出力をLレベルとするようなトリガパルスの印加によって、時刻t4において、発振の開始が加速され、時刻t5において、発振が定常状態となる。
【0041】
以上のようなインバータ回路INVで構成される発振回路によれば、実施例1と同様にスタンバイモードで電流消費をほぼ0とする。さらに、発振回路の起動に係る電流消費を抑えることができる。
【実施例3】
【0042】
図6は、本発明の第3の実施例に係る発振回路の回路図である。図6において、図2と同一の符号は同一物を表し、その説明を省略する。第3の実施例の発振回路は、図2に対し、NMOSトランジスタQ1、PMOSトランジスタQ2を廃し、インバータ回路INVの替わりに2入力のNOR回路NORを備える。端子S1は、NOR回路NORの一方の入力端に接続される。NOR回路NORの他方の入力端には、抵抗素子R1の一端、容量素子C1の一端、水晶振動子Xtalの一端が接続される。また、NOR回路NORの出力端には、容量素子C2の一端、水晶振動子Xtalの他端、抵抗素子R1の他端、NMOSトランジスタQ3のドレインが接続される。
【0043】
次に、発振回路の動作について説明する。第3の実施例に係る発振回路の動作を表すタイミングチャートは、時刻t0以前のスタンバイモード以外において図3と同様である。時刻t0以前のスタンバイモードにおいて、NMOSトランジスタQ3はオフ状態にあり、端子S1からNOR回路NORの一方の入力端にHレベルが与えられるために、NOR回路NORの出力OUT(出力電圧V2)はLレベルに固定される。したがって、NOR回路NORの他方の入力端(出力電圧V1)は、抵抗素子R1を介した電圧によってLレベルに固定される。
【0044】
時刻t0において、発振回路の起動信号として、端子S0にHレベルが入力されると、制御回路14aは、端子S1をLレベルとする。したがって、NOR回路NORの出力OUT(出力電圧V2)は、急速にHレベルとなる。これに伴いNOR回路NORの他方の入力端(出力電圧V1)は、抵抗素子R1を介して緩やかにHレベルに向かう。
【0045】
時刻t1以降は、第1の実施例の発振回路と同様に動作する。
【実施例4】
【0046】
図7は、本発明の第4の実施例に係る発振回路の回路図である。図7において、図2と同一の符号は同一物を表し、その説明を省略する。第4の実施例の発振回路は、図2に対し、NMOSトランジスタQ1、PMOSトランジスタQ2を廃し、インバータ回路INVの替わりにクロックドインバータ回路15を備える。クロックドインバータ回路15は、PMOSトランジスタQ4、Q5、NMOSトランジスタQ6、Q7を備える。PMOSトランジスタQ4は、ソースを電源Vddに接続し、ドレインをPMOSトランジスタQ5のソースに接続し、ゲートを端子S1に接続する。PMOSトランジスタQ5は、ドレインをNMOSトランジスタQ6のドレインと共にクロックドインバータ回路15の出力端(OUT)とし、ゲートをNMOSトランジスタQ6のゲートと共にクロックドインバータ回路15の入力端とする。NMOSトランジスタQ6は、ソースをNMOSトランジスタQ7のドレインと接続する。NMOSトランジスタQ7は、ソースを接地し、ゲートを端子S1Bに接続する。制御回路14cは、それぞれ逆相となる信号を出力する端子S1、S1Bを備える。
【0047】
次に、発振回路の動作について説明する。第4の実施例に係る発振回路の動作を表すタイミングチャートは、時刻t2以降において図3と同様である。
【0048】
時刻t0以前のスタンバイモードにおいて、端子S1、S1Bは、それぞれHレベル、Lレベルにある。したがって、PMOSトランジスタQ4、NMOSトランジスタQ7は、共にオフ状態にあり、クロックドインバータ回路15は、非動作状態であって入出力端がフローティング状態にある。
【0049】
時刻t0において、発振回路の起動信号として、端子S0にHレベルが入力されると、制御回路14cは、端子S1、S1BをそれぞれLレベル、Hレベルとする。したがって、PMOSトランジスタQ4、NMOSトランジスタQ7は、共にオンし、クロックドインバータ回路15は、反転増幅器として動作状態となって入出力端が電源と接地の中間電位になる(時刻t1)。
【0050】
時刻t2以降は、第1の実施例の発振回路と同様に動作する。
【実施例5】
【0051】
図8は、本発明の第5の実施例に係る発振回路の回路図である。図8において、図7と同一の符号は同一物を表し、その説明を省略する。第5の実施例の発振回路は、図7に対し、PMOSトランジスタQ4を廃して短絡すると共に、端子S1を廃する。
【0052】
次に、発振回路の動作について説明する。第5の実施例に係る発振回路の動作を表すタイミングチャートは、時刻t2以降において図3と同様である。
【0053】
時刻t0以前のスタンバイモードにおいて、端子S1Bは、Lレベルにある。したがって、NMOSトランジスタQ7は、オフ状態にあり、PMOSトランジスタQ5、NMOSトランジスタQ6で構成されるインバータ回路は、非動作状態であって入出力端がフローティング状態にある。
【0054】
時刻t0において、発振回路の起動信号として、端子S0にHレベルが入力されると、制御回路14bは、端子S1BをHレベルとする。したがって、NMOSトランジスタQ7は、オンし、PMOSトランジスタQ5、NMOSトランジスタQ6で構成されるインバータ回路は、反転増幅器として動作状態となって入出力端が電源と接地の中間電位になる(時刻t1)。
【0055】
時刻t2以降は、第1の実施例の発振回路と同様に動作する。
【実施例6】
【0056】
図9は、本発明の第6の実施例に係る発振回路の回路図である。図9において、図7と同一の符号は同一物を表し、その説明を省略する。第6の実施例の発振回路は、図7に対し、NMOSトランジスタQ7を廃して短絡すると共に、端子S1Bを廃する。
【0057】
次に、発振回路の動作について説明する。第6の実施例に係る発振回路の動作を表すタイミングチャートは、時刻t2以降において図3と同様である。
【0058】
時刻t0以前のスタンバイモードにおいて、端子S1は、Hレベルにある。したがって、PMOSトランジスタQ4は、オフ状態にあり、PMOSトランジスタQ5、NMOSトランジスタQ6で構成されるインバータ回路は、非動作状態であって入出力端がフローティング状態にある。
【0059】
時刻t0において、発振回路の起動信号として、端子S0にHレベルが入力されると、制御回路14aは、端子S1をLレベルとする。したがって、PMOSトランジスタQ4は、オンし、PMOSトランジスタQ5、NMOSトランジスタQ6で構成されるインバータ回路は、反転増幅器として動作状態となって入出力端が電源と接地の中間電位になる(時刻t1)。
【0060】
時刻t1以降は、第1の実施例の発振回路と同様に動作する。
【0061】
以上の各実施例において、NMOSトランジスタQ3をオンすることで、増幅器の出力端にLレベルとなるトリガパルスを供給するように説明した。しかし、これに限定されることなく、増幅器の出力端にHレベルとなるトリガパルスを供給するような手段を代わりに設け、発振起動を加速するようにしてもよい。
【0062】
なお、前述の特許文献等の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る発振回路の回路図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係る発振回路の動作を表すタイミングチャートである。
【図4】本発明の第2の実施例に係る発振回路の回路図である。
【図5】本発明の第2の実施例に係る発振回路の動作を表すタイミングチャートである。
【図6】本発明の第3の実施例に係る発振回路の回路図である。
【図7】本発明の第4の実施例に係る発振回路の回路図である。
【図8】本発明の第5の実施例に係る発振回路の回路図である。
【図9】本発明の第6の実施例に係る発振回路の回路図である。
【符号の説明】
【0064】
11 増幅器
12 圧電振動子
13 帰還抵抗素子
14、14a、14b、14c 制御回路
15 クロックドインバータ回路
C1、C2 容量素子
INV インバータ回路
NAND NAND回路
NOR NOR回路
Q1、Q3、Q6、Q7 NMOSトランジスタ
Q2、Q4、Q5 PMOSトランジスタ
R1 抵抗素子
Xtal 水晶振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子と帰還抵抗素子を並列形態で入出力間に接続すると共にCMOS論理反転型回路で構成される増幅器と、
発振起動前において前記増幅器の入出力レベルを固定化して発振を停止させておき、発振起動開始時において前記入出力レベルの固定化を解除し、発振起動開始の所定時間後に前記増幅器の出力端にパルス信号を供給するCMOS論理回路で構成される制御回路と、
を備えることを特徴とする発振回路。
【請求項2】
前記増幅器は、インバータ回路で構成され、
前記インバータ回路の入力端に接続される第1のスイッチ素子と、
前記帰還抵抗素子と直列接続され前記帰還抵抗素子と共に前記圧電振動子に並列接続される第2のスイッチ素子と、
を備え、
前記制御回路は、発振起動前において、前記第1のスイッチ素子によって前記インバータ回路の入力端をハイレベルまたはローレベルに固定化すると共に前記第2のスイッチ素子をオフ状態とし、発振起動開始時において、前記インバータ回路の入力端の固定化を解除すると共に前記第2のスイッチ素子をオン状態とすることを特徴とする請求項1記載の発振回路。
【請求項3】
前記増幅器は、2入力のNAND回路で構成され、
前記NAND回路の一方の入力端子に前記圧電振動子と前記帰還抵抗素子との一端を接続し、
前記制御回路は、発振起動前において、前記NAND回路の他方の入力端子をローレベルとし、発振起動開始時において、前記NAND回路の他方の入力端子をハイレベルとすることを特徴とする請求項1記載の発振回路。
【請求項4】
前記増幅器は、2入力のNOR回路で構成され、
前記NOR回路の一方の入力端子に前記圧電振動子と前記帰還抵抗素子との一端を接続し、
前記制御回路は、発振起動前において、前記NOR回路の他方の入力端子をハイレベルとし、発振起動開始時において、前記NOR回路の他方の入力端子をローレベルとすることを特徴とする請求項1記載の発振回路。
【請求項5】
前記増幅器は、クロックドインバータ回路で構成され、
前記制御回路は、発振起動前において、前記クロックドインバータ回路がインバータ回路として機能しないように前記クロックドインバータ回路のクロック端子のレベルを設定し、発振起動開始時において、前記クロックドインバータ回路がインバータ回路として機能するように前記クロックドインバータ回路のクロック端子のレベルを設定することを特徴とする請求項1記載の発振回路。
【請求項6】
前記増幅器は、第1および第2の第1導電型のトランジスタと、第2導電型のトランジスタとを備え、
前記第1の第1導電型のトランジスタは、ソースを第1の電源に接続し、ドレインを前記第2の第1導電型のトランジスタのソースに接続し、ゲートを前記増幅器の制御端とし、
前記第2の第1導電型のトランジスタは、ドレインを前記第2導電型のトランジスタのドレインに接続して前記増幅器の出力端とし、ゲートを前記増幅器の入力端とし、
前記第2導電型のトランジスタは、ソースを第2の電源に接続し、ゲートを前記増幅器の入力端とし、
前記制御回路は、発振起動前において、前記増幅器の制御端を前記第1の電源側の電位に設定し、発振起動開始時において、前記増幅器の制御端を前記第2の電源側の電位に設定することを特徴とする請求項1記載の発振回路。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一に記載の発振回路と、該発振回路に電源を供給する電池とを備える携帯型電子機器。
【請求項8】
圧電振動子と帰還抵抗素子を並列形態で入出力間に接続すると共にCMOS論理反転型回路で構成される増幅器を備える発振回路の制御方法であって、
前記増幅器に電源を供給しておくと共に、発振起動前において前記増幅器の入出力レベルを固定化して発振を停止しておくステップと、
発振起動開始時において前記入出力レベルの固定化を解除するステップと、
発振起動開始の所定時間後に前記増幅器の出力端にパルス信号を供給するステップと、
を含むことを特徴とする発振回路の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−87571(P2010−87571A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251169(P2008−251169)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】