説明

発毛の低減

育毛の軽減方法は、TRPM8及び/又はTRPA作用物質を、単独で或いは熱と共に、局所適用することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物の、特に美容上の目的において発毛を低減することに関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類の毛の主要機能は、環境からの保護を提供することである。しかし、その機能は、ヒトではほとんど失われており、毛は、本質的に美容上の理由から、身体の様々な部分で維持又は除去されている。例えば、一般に、頭皮に毛髪を有することは好まれるが、顔面に毛を有することは好まれない。
【0003】
剃毛、電解、脱毛クリーム又はローション、ワクシング、抜き毛、及び治療用抗アンドロゲン剤を含む種々の手順が、不必要な毛を除去するために使用されてきた。一般に、これらの従来の手順は、これらに伴う欠点を有する。例えば、剃毛は、切り傷をもたらすことがあり、毛の再生の速度が速まるという感じを残すことがありうる。また、剃毛は、望ましくない不精ひげを残すことがありうる。一方電解は、処置領域を無毛状態に長期間保つことができるが、高価で痛みを伴い、時には瘢痕を残すことがありうる。脱毛クリームは、非常に有効であるが、典型的には、それらの刺激の可能性が高いために頻繁な使用は推奨されない。ワクシング除毛及び抜き毛は、痛み、不快感、及び短毛の不十分な除去をもたらすこともありうる。最後に、抗アンドロゲン剤―これは、女性の多毛症を処置するために使用されてきた―は、望ましくない副作用をもたらすことがありうる。
【0004】
発毛の速度及び性質は、特定の酵素の皮膚阻害物質の適用によって変わりうることが、以前に開示されている。これら阻害物質には、5−αレダクターゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、S−アデノシルメチオニン・デアルボキシラーゼ、γ−グルタミル・トランスペプチターゼ、及びトランスグルタミナーゼ阻害剤が挙げられる。例えば、ブリューワー(Breuer)らによる米国特許第4,885,289号、シャンダー(Shander)による米国特許第4,720,489号、アルワリア(Ahluwalia)による米国特許第5,095,007号、アルワリア(Ahluwalia)らによる米国特許第5,096,911号、及びシャンダー(Shander)らによる米国特許第5,132,293号を参照されたい。
【0005】
イオンチャネルのトランジェントレセプターポテンシャル(TRP)属は30超過のカチオンチャネルを含んでおり、次の7つの主要なサブファミリーに分類される:TRPC、TRPV、TRPM、TRPP、TRPML、TRPA、及びTRPN。TRPチャネル2つの別のサブファミリーのメンバーは冷覚の原因であると特定されている:TRPM8及びTRPA1。
【0006】
トランジェントレセプターポテンシャルメラスタチン(TRPM8)はTRPイオンチャネルのメラスタチンのサブファミリーに属する(トミナガ.M(Tominaga M.)ら、(2004)ニューロバイオロジー誌(J. Neurobiol.)、61(1):3〜12)。TRPM8は、特定の刺激に反応してCa(2+)イオンの直接流入を仲介するCa(2+)透過性非選択的カチオンチャネルである。反応は、低温度(24℃以下)並びにメタノール及びイシリンなどの冷却化合物によって活性化される(ツァバラー(Tsavaler)ら、(2001)、キャンサーリサーチ(Cancer Res.)、61(9):3760−9;マッケミー(McKemy)ら、(2002)、ネイチャー(Nature)416:52〜8;パイエル(Peier)ら、(2002)セル(Cell)、108(5):705〜15)。TRPM8チャネルは温度感知小型後根及び三叉神経ガングリオンのニューロンのサブセットで発現される(マッケミー(McKemy)ら、(2002)、上掲;パイエル(Peier)ら、(2002)上掲;ベイブズ(Babes)ら、(2004)、Eurニューロサイエンス(Eur J Neurosci.)20(9):2276〜82;ニーレン(Nealen)ら、(2004)、ニューロフィジオロジー(Neurophysiol.)誌(J Neurophysiol.)、90(1):515〜20)。三叉神経ガングリオンのニューロンは、口の上部の顔面皮膚、下顎領域、並びに額の上側及び目の周りに知覚神経繊維を提供する。したがって、TRPM8は哺乳類の温受容体の神経末端で低温度を感じることに関与している。知覚ニューロンに存在しているのに加え、機能的TRPM8受容体はまた各種神経細胞上でも確認されている。TRPM8mRNA発現は正常な前立腺組織に中程度報告されており、前立腺がんでは上昇するように思われ、増殖及びアポトーシスを含む多くのCa(2+)依存性プロセスに関与している(チュボー(Thebault)ら、バイオロジカルケミカル(J Biol Chem)誌、280(47):39423〜35)。また、乳房、結腸、肺及び皮膚起源の腫瘍でも発現する((チュボー(Thebault)ら、上掲)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
別のイオンチャネルであるアンキリン様タンパク質1(ANKTM1)受容体とも言われるはトランジェントレセプターポテンシャルチャネルアンキリンリピート1(TRPA1)は、低温度(18℃以下)、シンナムアルデヒド、アリシン、オイゲノール、ジンジェロール、及びサリチル酸メチル、並びにTRPM8と同様にイシリンにより活性化される。TRPA1は、TRPV1、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)及びサブスタンスPなどの侵害受容マーカーを発現するニューロンのサブセットで発現される(ストーリー(Story)ら、(2003)、セル(Cell)112:819〜829)。また、培養された線維芽細胞でも発現することが報告されており、線維芽細胞の発癌性形質転換後に下方制御される(ジャクマール(Jaquemar)ら、生化学(J. Biol. Chem.)誌、274:7325〜7333)。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある態様では、本発明は、哺乳類(好ましくはヒト)の不要な発毛を低減させる方法(典型的には美容のための方法)を提供する。本発明は、1以上の冷受容体作用物質、例えば、トランジェントレセプターポテンシャルメラスタチン−8(TRPM8)作用物質、及び/又はトランジェントレセプターポテンシャルチャネルアンキリンリピート1(TRPA1)作用物質、を皮膚の領域に適用することを含む。不必要な育毛は、例えば、美容上の観点から、望ましくない場合がある。
【0009】
TRPM8及び/又はTRPA1作用物質は、TRPM8(複数)及び/又はTRPA1(複数)と強く相互作用することにより、1以上の、毛嚢の中の、TRPM8(複数)、及び/又はTRPA1(複数)(例えば、1以上のTRPM8(複数))、及び/又はTRPA1(複数)、の少なくとも1つの活性を活性化させる化合物を含み、化合物は毛嚢の中の、1以上の、TRPM8(複数)及び/又はTRPA1(複数)の、レベル及び/又は発現、を増加させ;及び/又は化合物は毛嚢の中の、1以上の、mRNAのTRPM8及び/又はTRPA1の、発現、を増加させる。「強く相互作用する」とは、化合物がTRPM8(複数)及び/又はTRPA1(複数)に結合する又は優先的に結合することを意味する。前記化合物は、例えば、以下で論じる種類の化合物の1つから選択されることができる。代表的なTRPM8作用物質にはテルペン、例えば、環状テルペン類(例えば、メントール又はメンチルラクテート)、WS−3、冷却剤10、フレスコラト(Frescolat)MGA、及びフレスコラトMLが含まれる。TRPM8作用物質はまたTRPA1作用物質、例えば、イシリン及びオイゲノールでもあり得る。その他の代表的なTRPA1作用物質には、ジンジェロール、サリチル酸メチル、アリシン、及びシンナムアルデヒドが挙げられる。さらなるTRPM8及び/又はTRPA1作用物質の例は本明細書中に記載されている。
【0010】
一実施形態において、前記組成物は、TRPM8又はTRPA1作用物質、例えば、TRPM8又はTRPA1作用物質を単に能動的育毛阻害物質として有する組成物から基本的に成る。別の実施形態において、前記組成物は次の1以上を含まない:α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)、熱ショックタンパク質阻害剤、アポトーシスを促進する化合物、又はそれらの組み合わせ。さらに別の実施形態において、前記組成物はテルペン、例えば、メントールを含まない。その他の実施形態において、前記組成物は25重量%以上のTRPM8及び/又はTRPA1作用物質を含む。
【0011】
別の実施形態において、前記方法はTRPM8及び/又はTRPA1の1以上の作用物質を有する組成物を含む。一実施形態において、前記作用物質はTRPM8及びTRPA1を活性化させ、例えば、前記作用物質は両方のチャネルに結合し、またそれらを活性化するイシリンである。その他の実施形態において、TRPM8又はTRPA1に対して選択性のある1以上の作用物質の組み合わせを使用する。
【0012】
典型的には、本明細書に記載の方法を施行する際には、前記化合物に、皮膚科学的又は美容的に許容可能な賦形剤も含めることになろう。
【0013】
別の実施形態において、前記方法は、熱による皮膚領域の処理、化学的脱毛剤(例えば、本明細書に記載の1以上の育毛還元剤を含む)、又はその他の脱毛方法(例えば、剃毛、ワクシング、機械的な脱毛電解を含む)を含む。一実施形態において、熱脱毛処置は、例えば、レーザー又はフラッシュランプで皮膚領域を加熱することを含む。典型的には、加熱は10日、7日、5日以内で行い、より典型的には3日、2日又は1日以内であり、同時に組成物を適用する。適切な期間は、特定の作用物質により、1日まで短くすることが可能であろう。処置は同時であってもよい。典型的には、組成物は複数回適用し、加熱は7日以内、より好ましくは3日又は1日以内に行うか、何回目かの適用と同時に行うのが好ましい。その他の実施形態において、TRPM8及び/又はTRPA1作用物質は熱媒介毛髪阻害を促進し及び/又は光熱装置の使用頻度を削減する。例えば、光及び/又は高熱装置のエネルギー出力を約10〜30J/cm2、より典型的には約1〜3J/cm2に削減することができる。
【0014】
その他の実施形態において、TRPM8及び/又はTRPA1作用物質を含む組成物は、化学的脱毛剤又はその他の脱毛方法、例えば、ワクシングなどの皮膚への適用前に、適用中、又は適用後に、適用される。例えば、組成物は、1回又は複数回適用することができ、ワクシングは7日以内、より好ましくは3日以内、2日以内、又は1日以内に行うか、何回目かの適用と同時に行う。組成物はまた脱毛後、例えば、ワクシングの後などに適用することもでき、これにより、脱毛に伴う痛みを改善するという追加的利点を得ることができる。いくつかの実施形態において、TRPM8及び/又はTRPA1作用物質は、熱的、化学的、又はその他の脱毛方法がもたらす、例えば、刺激症及び/又は炎症などの1以上の望ましくない影響を軽減する。
【0015】
本発明はまた、皮膚科学的又は美容的に許容可能な賦形剤及び冷受容体作用物質、例えば、本明細書に記載のTRPM8及び/又はTRPA1作用物質、又はこれらの組み合わせを含む、局所適用(例えば、化粧品)の組成物に関する。さらに、本発明は、局所適用の組成物(例えば、本明細書に記載の組成物)の製造のための、冷受容体作用物質、例えば、本明細書に記載のTRPM8及び/又はTRPA1作用物質の使用に関する。本発明のこれら態様の実施形態は上記の1以上の特徴を含んでもよい。
【0016】
本明細に記した特有の化合物には、化合物それ自体、及びそれらの塩のうち製薬上許容可能な塩の双方を含む。
【0017】
本発明のその他の特徴及び利点は、発明を実施するための最良の形態及び請求項から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
組成物の例は、美容上及び/又は皮膚科学的に許容可能な賦形剤中の冷受容体作用物質、例えば、TRPM8及び/又はTRPA1作用物質を含む。組成物は、固体、半固体、又は液体であってもよい。組成物は、例えば、軟膏、ローション、フォーム、クリーム、ゲル、又は溶液の形態の、例えば、美容及び皮膚用製品であってもよい。また、本組成物は、剃毛調製物又はアフターシェーブの形態であってもよい。賦形剤自体は、不活性であることができるか、あるいはそれ自体の美容的、生理学的及び/又は薬学的利益を有することができる。
【0019】
TRPM8作用物質の例には、例えば、メントール及びメンチルラクテート(FrescolatML)などの環状テルペン類のようなテルペンを含む。テルペンは精油にみられる有機化合物類であり、芳香剤、香料及び薬などに用いられてきた。テルペンは、イソプレンユニット(C58)を有する化合物であり、含有するイソプレノイドユニットの数で分類され得る。例えば、モノテルペンは2つのイソプレンユニット(C10)から成り、セスキテルペンは3つ(C15)、及びジテルペンは4つ(C29)のイソプレンユニットから成る。通常使用されるテルペンはメントールであり、吸入及び皮膚軟化剤製剤に組み込まれてきた。テルペン類のその他の例には、ユーカリプトール(1,8−シネオール)、ゲラニオール、ネロリドール、メントン、シネオール、テルピネオール、D−リモネン、プレゴール(例えば、イソプレゴール)及びカルバクロールが挙げられる。テルペン及び非テルペンTRPM8作用物質のその他の例には、トランス−メンタン−3,8−ジオール、シス−p−メンタン3,8−ジオール、L−カルボン(スペアミント油)、N,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブタンアミド(WS−23)、N−エチルパラメンタン−3−カルボキシアミド(WS−3)、メンタングリセリンアセタール(フレスコラトMGA)、メントキシプロパンジオール(冷却剤10)、クールアクト(Coolact P)P、PMD−38、モノメチルコハク酸(フィスクール(Physcool))、モノメチルグルタル酸塩、及びヒドロキシシトロネラールが挙げられる。(例えば、国際公開特許WO2005/089206;ベーレント(Behrendt, H-J.)ら、(2004)、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(British Journal of Pharmacology)141:737〜745;カリスト(Calixto, J.B)ら、(2005)、ファーマコロジー・アンド・セラピュティクス(Pharmacology & Therapeutics)106:179−208;エルマン(Erman, M. B.)ら、(2005)コスメティクス・アンド・トイレタリーズ120(5):105〜118を参照のこと。これら文献は参照することにより本明細書に組み込まれる。)
TRPM8及びTRPA1に結合する及び活性化する作用物質の例は、オイゲノール、イシリン及びこれらの類縁体、例えば、イシリン様化合物を含む。イシリン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−4−(3−ニトロフェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−2−オン(CASNo.36945−98−9)は次のような化学構造を有する:
【0020】
【化1】

【0021】
イリシン様化合物は、典型的には以下のような1−[R1−フェニル]4−[R2−フェニル]−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−2−オン化学構造を有し、式中R1は典型的には1以上のヒドロキシ、クロロ、フルオロ、アルキル(約2〜4炭素原子)、アセトキシ、又は、トリフルオロメチルから選択され;及びR2は典型的には1以上の、ニトロ、クロロ、フルオロ、アルキル(約2〜4炭素原子)、又はトリフルオロメチルから選択される。
【0022】
【化2】

【0023】
イシリン及びイシリン様化合物の調製に好適な方法は、米国特許第3,821,221号、米国特許第6,919,348号に記載されており、両特許の内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0024】
メチルTRPA−1作用物質には次が含まれる:ジンジェロール;サリチル酸メチル(冬緑油);イソチオシアネート化合物(例えば、アリシン又はアリルイソチオシアネート(マスタード油)、並びに、ベンジル、フェニルエチル、イソプロピル、及びイソチオシアネート);シンナムアルデヒド(桂皮油);及びΔ9−テトラヒドロカンナビノール。本明細書に開示のTRPA1作用物質、並びにそれらの作用物質の合成及び試験方法は当該技術分野において既知であり、例えば、国際公開特許WO2005/08920及びカリスト(Calixto, J.B)ら、(2005)(上掲)に開示されており、当該文献の内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0025】
合成物質は1以上のTRPM8及び/又はTRPA1作用物質を含んでもよい。前記組成物には、HSP阻害物質、及び/又はアポトーシスを促進する化合物を1つ以上含有させてもよい。前記組成物には更に、米国特許第4,720,489号、米国特許第4,885,289号、米国特許第5,095,007号、米国特許第5,096,911号、米国特許第5,132,293号、米国特許第5,143,925号、米国特許第5,328,686号、米国特許第5,364,885号、米国特許第5,411,991号、米国特許第5,440,090号、米国特許第5,468,476号、米国特許第5,475,763号、米国特許第5,554,608号、米国特許第5,648,394号、米国特許第5,652,273号、米国特許第5,674,477号、米国特許第5,728,736号、米国特許第5,776,442号、米国特許第5,824,665号、米国特許第5,840,752号、米国特許第5,908,867号、米国特許第5,939,458号、米国特許第5,958,946号、米国特許第5,962,466号、米国特許第6,020,006号、米国特許第6,037,326号、米国特許第6,060,471号、米国特許第6,093,748号、米国特許第6,121,269号、米国特許第6,218,435号、米国特許第6,235,737号、米国特許第6,239,170号、米国特許第6,248,751号、米国特許第6,299,865号、米国特許第6,414,017号、米国特許第6,743,419号、及び米国特許第6,743,822号に記載されているような、その他の種類の発毛低下剤を1つ以上含有させてよい。前記の特許は全て、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0026】
前記組成物中の前記TRPM8及び/又はTRPA1作用物質の濃度は、飽和溶液までの広範囲にわたって変えることができ、好ましくは0.1重量%〜30重量%まで、又は更にそれ以上であり、発毛の低減は、皮膚の単位面積当たりに適用される作用物質の量が増加すると、増強する。有効適用量の最大値は、皮膚の浸透度によってのみ制限される。有効量は、例えば、皮膚の1平方センチメートル当たり10〜3000マイクログラム、又はそれよりも上の範囲であってもよい。
【0027】
賦形剤は、不活性であることができるか、又は、それ自体の美容的、生理学的及び/又は薬学的利益を有することができる。賦形剤は、液体又は固体皮膚軟化剤、溶媒、増粘剤、保湿剤、及び/又は粉末と共に配合できる。皮膚軟化剤としては、ステアリルアルコール、ミンク油、セチルアルコール、オレイルアルコール、イソプロピルラウレート、ポリエチレングリコール、石油ゼリー、パルミチン酸、オレイン酸、及びミリスチルミリステートが挙げられる。溶媒としては、エチルアルコール、イソプロパノール、アセトン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0028】
組成物は任意に、皮膚への及び/又は作用部位へのTRPM8及び/又はTRPA1作用物質の浸透を増進させる構成成分を含むことができる。浸透増進剤の例としては、尿素、ポリオキシエチレンエーテル類(例えば、ブリジ(Brij)−30及びラウレス(Laureth)−4)、3−ヒドロキシ−3,7,11−トリメチル−1,6,10−ドデカトリエン、テルペン類、シス−脂肪酸類(例えば、オレイン酸、パルミトレイン酸)、アセトン、ラウロカプラム(laurocapram)、ジメチルスルホキシド、2−ピロリドン、オレイルアルコール、グリセリル−3−ステアレート、プロパン−2−オール、ミリスチン酸イソプロピルエステル、コレステロール、及びプロピレングリコールが挙げられる。浸透増進剤は、例えば、0.1重量%〜20重量%、又は0.5重量%〜5重量%の濃度で添加できる。
【0029】
また、組成物は、TRPM8及び/又はTRPA1作用物質を連続的に持続放出するために、皮膚の内部又は表面上に貯蔵所(reservoir)を提供するように調製できる。また、前記組成物は、皮膚からゆっくり蒸発するように調製し、作用物質が更に時間をかけて皮膚に浸透可能になるようにすることもできる。
【0030】
TRPM8及び/又はTRPA1作用物質を含有するクリーム系の局所的組成物は、水及び全ての水溶性構成成分を混合容器−Aで混合することにより調製する。pHは約3.5〜8.0の所望の範囲に調節する。成分を完全に溶解するために、容器の温度を45℃まで上げてもよい。pH及び温度の選択はTRPM8及び/又はTRPA1作用物質の安定度による。防腐剤及び香料構成成分を除く油溶性構成成分を、別の容器(B)内で一緒に混合し、構成成分を溶融及び混合するために70℃まで加熱する。容器Bの加熱された内容物を、水相(容器A)に、勢いよく攪拌しながら注ぐ。混合は、約20分間続ける。防腐剤構成成分を、約40℃の温度で添加する。8Pa.s(8,000cps)〜12Pa.s(12,000cps)の粘度又は所望の粘度の軟質クリームを得るため、温度が約25℃に達するまで攪拌を続ける。内容物がまだ混合されており、粘度は所望の範囲まで高まっていない状態で、香料構成成分を約25℃〜30℃で添加する。得られるエマルションの粘度を上げることが望まれる場合、従来のホモジナイザー、例えば、角穴高剪断スクリーンを有するシルバーソン(Silverson)L4Rホモジナイザーを使用して、剪断を行なうことができる。局所適用組成物は、上記の製剤調製の際に水相に活性物質を含めることにより作製することができるか、又は製剤(賦形剤)調製が完了した後で加えることができる。活性物質は、賦形剤調製のいずれかの工程で加えることもできる。クリーム製剤の構成成分は、下記の実施例に記載されている。
【0031】
(実施例番号1)
【0032】
【表1】

a活性成分はTRPM8及び/又はTRPA1作用物質。
bポリクオチニウム(Polyquartinium)−51(コラボレイティブ・ラボ(Collaborative Labs)、ニューヨーク)。
cグリセリン、水、ナトリウムPCA、尿素、トレハロース、ポリクアタニウム(polyqauternium)−51、及びヒアルロン酸ナトリウム(コラボラティブ・ラボ(Collaborative Labs)、ニューヨーク)。
【0033】
(実施例♯2)
【0034】
【表2】

a活性成分はTRPM8及び/又はTRPA1作用物質。
【0035】
(実施例♯3)
【0036】
【表3】

a活性成分はTRPM8及び/又はTRPA1作用物質。
【0037】
(実施例♯4)
【0038】
【表4】

【0039】
TRPM8及び/又はTRPA1作用物質を実施例4の処方に加え、可溶化するまで混合する。
【0040】
(実施例♯5)
【0041】
【表5】

【0042】
TRPM8及び/又はTRPA1作用物質を実施例5の処方に加え、可溶化するまで混合する。
【0043】
(実施例♯6)
【0044】
【表6】

【0045】
TRPM8及び/又はTRPA1作用物質を実施例6の処方に加え、可溶化するまで混合する。
【0046】
(実施例♯7)
【0047】
【表7】

【0048】
TRPM8及び/又はTRPA1作用物質を実施例7の処方に加え、可溶化するまで混合する。
【0049】
(実施例♯8)
【0050】
【表8】

【0051】
TRPM8及び/又はTRPA1作用物質を実施例8の処方に加え、可溶化するまで混合する。
【0052】
TRPM8及び/又はTRPA1作用物質を包含するヒドロアルコール性製剤は、処方の構成成分を混合器の中で混合して調製する。製剤のpHは、3.5〜8.0の範囲の所望の値に調整される。このpH調整は、製剤成分を完全に溶解するためにも実施することができる。加えて、製剤成分の溶解を達成するために、活性物質の安定性に応じて、加熱を45℃まで、更には70℃まで行なうことができる。幾つかのヒドロアルコール性製剤が下記に示されている。
【0053】
(実施例♯9)
【0054】
【表9】

a活性成分はTRPM8及び/又はTRPA1作用物質である。
bカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(アビテック社(Abitec Corp.)、オハイオ州)。
【0055】
(実施例番号10)
【0056】
【表10】

a活性成分はTRPM8及び/又はTRPA1作用物質である。
【0057】
(実施例番号11)
【0058】
【表11】

【0059】
TRPM8及び/又はTRPA1作用物質を実施例8の処方に加え、可溶化するまで混合する。
【0060】
加熱は、例えばレーザー、フラッシュランプ、又は超短パルス光(IPL)装置を用いて行うことができる。例えば前記装置は、波長帯が700〜1,300nm(例えば810nm)のダイオードレーザー、654nmのルビーレーザー、755nmのアレキサンドライトレーザー、1,064nmのNd:YAGレーザー、600〜850nmのNd:YAGレーザー、400〜1,200nmのパルス光、超短パルス光、若しくはフラッシュランプ、550nm、580nm若しくは615〜1,200nmの蛍光パルス光、波長帯が400〜700nmの発光ダイオード(LED)、並びに、高周波電気エネルギーと組み合わせた光(580〜980nm)エネルギー若しくはダイオード(800+25nm)エネルギーにすることができる。前記光及び光熱装置のエネルギー出力(J/cm2)は、例えば、0.5〜50J/cm2、2〜20J/cm2、又は1〜10J/cm2であり得る。加熱をもたらすその他のレーザー源及び光源のパラメーターとしては、パルス幅、スポットサイズ、繰り返し数が挙げられる。これらのパラメーターの範囲は、使用する加熱装置によって異なる。パルス幅は、例えば0.1m〜500mまでの範囲であり得るか、又はそれは、米国特許第6,273,884号に記載されているように、連続波(CW)であり得る。
【0061】
加熱中、皮膚の温度は一般に、少なくとも40℃、例えば40℃〜55℃に加熱する。ただし皮膚は、ほんの数ミリ秒のパルスを用いて皮膚の火傷を回避しながら、例えば70℃ほどの高さまで加熱できる。40〜60℃のより低い温度域の場合、露光時間を0.5分〜数分に抑えるべきである。60℃超の温度の場合、露光時間を1〜500ミリ秒の範囲に留めるべきである。特定の機構による加熱によって実現される皮膚の温度は、一般に、以下に従って算出することができる。平均的な体温を有する対象者を25℃の温度の部屋に入れる。0.23mm(0.009−インチ)直径の熱電対を皮膚のある領域に入れる。熱電対計の出力をナショナルインスツルメンツ(National Instruments)の熱電対信号コンディショナーSCXI−1112に接続する。ナショナルインスツルメンツ(National Instruments)のデータ収集ボードで、最大収集速度が毎秒333キロサンプルである6052Eによってデータ収集及び信号利得を制御した。SCXI−1112及びNI6052EDAQの組み合わせによって、毎秒42キロサンプルの速度で最大8つの熱電対出力を同時に検出することができた。抽出率は、例えば1,000サンプル/秒で実施することができる。
【0062】
真皮領域の温度範囲を算出する際にも同様の方法を用いる。この場合には、熱電対計を生体外の人肌の約5mmの深さまで挿入し、皮膚表面に処理を適用する。
【0063】
当該組成物は、育毛を低減することが望まれる、皮膚の選択された領域に局所的に適用すべきである。加熱処理の前又は後から局所適用組成物を適用するまでの期間は、局所適用組成物内の活性化学物質の特性に応じて、1日という短期間から、若しくは加熱と同時にと、様々であってよい。組成物は、加熱の7日以内に(複数回、例えば2回、3回、又は4回)、より好ましくは加熱の1日又は2日以内に少なくとも1回適用するのが好ましい。組成物は、加熱の前に少なくとも2日又は3日間にわたって、1日に1回適用することができる。
【0064】
組成物は、例えば、顔、とりわけ顔のひげ領域、すなわち、頬、首、唇の上、あごに適用することができる。組成物は脚、腕、胴体、腋窩、眉毛、及び/又はビキニ領域に適用することができる。本組成物は、多毛症又は他の状態を有する女性において、不必要な毛の発育を低減するのに特に適している。組成物と加熱の組み合わせは、剃毛、ワクシング、機械脱毛、化学的脱毛、電解処理などのその他の除毛手段に対する補助として使用されてもよい。例えば、TRPM8及び/又はTRPA1作用物質を、例えば、ワクシングなどの前記の任意のその他の脱毛方法と組み合わせて使用するすることが可能である。かかる混合処置は熱的脱毛剤処置(例えば、レーザー)をさらに含んでもよい。TRPM8及び/又はTRPA1作用物質を用いる上記処置の組み合わせ及び/又は順序は本発明の範囲内である。
【0065】
発毛の低減は、処理領域における毛の長さ、毛の直径、毛の色素沈着、及び/又は毛の密度の低減により、定量的に実証することができる。発毛の低減は、処理領域において、目に見える毛が減少すること、毛の刈り株がより短くなること、毛がより細かく/より細くなること、毛が柔らかくなること、及び/又は剃毛が長期持続することによって、美容的に実証することができる。
【0066】
添付の実施例で使用するプロトコルは以下のとおりである。
【0067】
ヒト毛嚢発育分析結果
成長期(発育)のヒト毛嚢をフェイスリフト組織から単離した。
【0068】
(美容整形により得た)皮膚を薄い細片にスライスし、分析しやすそうな毛嚢の2〜3列を露出させた。毛嚢を、フィルポット(Philpott et al.)ら、((1990)セル・ソサイエティー誌(J. Cell Sci.)、97(Pt3):463〜71)に記載のように、2mLのL−グルタミン、10μg/mLのインスリン、10ng/mLのヒドロコルチゾン、及び抗生物質/抗菌物質の混合物を補充したウィリアムE培地(William's E medium)(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg, MD.))に定置した。毛嚢を24ウエルプレート(24-well plates)(1つの毛嚢/ウェル)の中で、37℃、5%のCO2雰囲気、及び湿度100%で、異なる時間インキュベートした(フィルポット(Philpott et al.)ら、上掲)。画像分析ソフトウェアシステムを用いて毛嚢の長さを算定した。TRPM8/TRPA1活性を変化させる分子の育毛への影響を測定するため、毛嚢をイシリン(トクリス・バイオサイエンス(Tocris Bioscience))及びL−メントール、L−メンチルラクテート(シグマ()Sigma)と共にインキュベートした。20倍率の解剖用顕微鏡下で、24ウエルプレート中の毛嚢の画像を取った。毛嚢の長さを、0日目(毛嚢を培地の中に置いた日)に測定し、6〜7日目に再び測定した。0日目の毛嚢の長さを6日目に測定した長さから減じることによって、毛の繊維の成長度合を算出した。
【0069】
免疫組織化学
毛嚢中のTRPM8の発現を測定するため、間接蛍光抗体プロトコルを採用した。新鮮な毛嚢のクリオスタット切片(μm)を用意しアセトン中に固定し、20%の羊正常血清でプレインキュベートし、続いて一晩室温にてTRPM8の一次抗体でインキュベートした。切片を次にTRITC標識羊のウサギIgG抗体でインキュベートした(ジャクソン・イミュノリサーチャー(Jackson ImmunoResearch);45分、37℃)。
【0070】
増殖性細胞を検出するため、Ki−67に対するウサギモノクロナール抗体を使用した間接蛍光抗体プロトコル。8μmの毛嚢切片をホルマリン中に固定し、次にエタノール/酢酸中に固定した。次に、切片をKi−67に対する抗体(1:50;ダコ(Dako);M7187)で一晩室温でインキュベートし、次にTRITC標識羊のウサギIgG抗体でインキュベートした(ジャクソン・イミュノリサーチャー(Jackson ImmunoResearch);45分、37℃)。
【0071】
ホエクスト(HOECHST)33342染料を使用して、対比染色を行った(PBS中10mg/mL;10分間)。各相は、洗浄工程(3回)により、PBSに散在させた(interspersed)。最後に、切片は、ベクタシールド(VectaShield)(ベクター・ラボラトリース(Vector Laboratories))を使用して、組み込まれた。
【0072】
メラニン形成タンパク質の免疫検出のため、切片をヒトチロシナーゼに対するマウスモノクロナール抗体又はヒトp−mel17に対するトリモノクロナール抗体のいずれかでインキュベートし(それぞれ、ネオマーカー(Neomarker)及びザイメッド(Zymed)、1:100、一晩)、次にTRITC標識羊のウサギIgG抗体(ジャクソン・イミュノリサーチャー(Jackson ImmunoResearch);45分、37℃)及びFITC−標識羊トリIgG抗体でそれぞれインキュベートした。次に、細胞核を同定するために切片をヘキスト(Hoechst)33342で対比染色し(1:300、15分)し、ベクタシールド(VectaShield)(ベクター・ラボラトリーズ(Vector Laboratories)を用いて標本にした。
【0073】
全ての切片は、オリンパス(Olympus)BX60蛍光顕微鏡下で検査され、デジタル画像分析システム(クールスナップ(CoolSnap)(商標)冷却CCDカメラ、アルファ・イノテック(Alpha Innotech))の助けを借りて写真記録された。
【0074】
ウエスタンブロット分析
ヒトメラノサイトの合計細胞タンパク質をリシスバッファー中に採取した(全タンパク質抽出キット:ケミコン・インターナショナル社(CHEMICON International, Inc))。1レーンに20μgのタンパク質を添加し、10%ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、10Vで1時間ニトロセルロース膜に移動した。次の一晩、トリス−リン酸−緩衝材生理食塩水(PBS)(PBS中に0.5%のツイーン(Tween)20)の中で5%無脂肪ドライミルク/ウシ血清アルブミン(BSA)を用いて、4℃でブロックし、膜をチロシナーゼ又はチロシナーゼ関連タンパク質−1或いはアクチンに対するモノクロナール抗体で1:1000の希釈で一晩インキュベートした。インキュベーション後、膜を短くPBS中で洗い、続いてトリス−PBSで洗い、1:1000の希釈で、1%ミルク/0.2%BSAの中で1時間、対応する二次抗体でインキュベートした(ピアース(Pierce)、イリノイ州ロックフォード(Rockford, IL))。よく洗浄した後、膜を酵素結合化学発光(enzyme-linked chemiluminescence)ウェスタンブロッティング(Western Blotting Detection Reagent)検出試薬(アマシャム(Amersham)、英国バッキンガムシャー州(Buckinghamshire, U.K.))で1分間インキュベートし、バンドをプリフラッシュしたコダックX−Omatフィルムで検出し、数秒間露光した後に現像した。
【0075】
RT−PCR
ヒトの皮膚全層及び毛嚢の単離された真皮乳頭細胞におけるTRPA1遺伝子転写は、RT−PCR分析で特徴付けた。全RNAは、全層頭皮皮膚サンプル及び単離された毛嚢真皮乳頭からTRIzol試薬を使用して単離した(インビトロジェン(Invitrogen)、カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego, Calif.))。RT−PCR用スーパースクリプト(SuperScript)(商標)ファースト・ストランド・シンセシス・システム(SuperScript(Trademark)First-Strand Synthesis System)(インビトロジェン(Invitrogen)、カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,Calif.))を使用し、2.5μgの全RNAを逆転写して、cDNAを合成した。次のオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、次の特定のc−DNAを増幅した:TRPA1:ヒトプライマー#1:5’・TCATGGTCCAACAGAACACATGGC−3’・及び5’・GCATGACAGGCATGGTACAGTGTT−3’・(プラマーのプロダクトサイズ:228bp)、プラマー#2:5’・TCCTCTCCATCTGGCAGCAAAGAA−3’・及び5・ATTGTGGCTCAGAAGAAGCGCAAC−3’・(プラマーのプロダクトサイズ:262bp)。増幅は、PCRスーパーミックス(SuperMix)(インビトロジェン(Invitrogen))を使用して、自動サーマルサイクラーによって38サイクル以上行なった。各サイクルは次の工程により構成されている:94℃で変性する(1分)、58℃でアニールする(45秒)、及び72℃で延伸する(45秒)。PCR生成物は、通常の方法を用いてゲル電気泳動(2%アガロース)及び酵素消化で分析した。
【0076】
(実施例1):発育毛嚢におけるTRPM8の免疫組織化学的局在
ヒト発育毛嚢におけるTRPM8を局在化させるために、ヒトTRPM8に対するウサギポリクローナル抗体を用いて免疫組織化学を適用した。TRPM8の発現が、毛嚢の真皮乳頭、並びに真皮乳頭を囲む毛髪マトリックスの細胞中に見られた。TRPM8及びメラノサイトマーカーpMel−17(gp100)同時検出のための多重免疫染色法は、これら2種類のタンパク質が毛嚢に共に局在化していることを明らかにした。これにより、毛髪マトリックスに見られるTRPM8発現細胞がメラノサイトであることが示唆される。したがって、TRPM8発現が、毛嚢の真皮乳頭、及び濾胞性並びに表皮メラニン細胞に検出された。
【0077】
(実施例2):ヒトの皮膚及び毛嚢におけるTRPA1mRNAの発現
ヒトの皮膚全厚における、また単離された毛嚢の真皮乳頭における、TRPA1遺伝子転写が、RT−PCR分析によって特徴付けられた。ヒトの頭皮皮膚及び毛髪真皮乳頭細胞からの全RNAが抽出され、また逆転写された。その結果、TRPA1−mRNAの検出可能な安定状態のレベルが、皮膚および真皮乳頭細胞に見つかった。
【0078】
(実施例3):TRPM8及びTRPA1作用物質の育毛への影響
TRPM8及びTRPA1活性の調節が育毛に影響するかどうかを同定するため、それらの作用物質が毛嚢培養モデルで試験された。10μMのメタノール、イシリン及びメンチルラクテートによる毛嚢処置は、対照と比較して、それぞれ、40%、45%、及び60%と十分有意な育毛阻害をもたらした。イシリン(TRPM8及びTRPA1の作用物質)で処置した毛嚢は濃度依存方法での細胞増殖を阻害する結果となり、これは毛髪マトリックス及び外毛根鞘のKi−67免疫活性の顕著な減少により検出された。したがって、冷却剤によるTRPM8又はTRPA1の活性化はインビトロでの育毛速度の顕著な減速につながる。
【0079】
(実施例4):TRPM8及びTRPA1作用物質のメラノサイトへの影響
TRPM8及びTRPA1作用物質がメラノサイトへの色素精製活性に影響を与えるかどうかを決定するために、10μMイシリンで免疫組織化学によって処置された毛嚢のチロシナーゼの発現を分析した。チロシナーゼ発現は対照と比較して、処置された毛嚢において減少した。さらに、イシリンのメラニン形成タンパク質発現への影響が、ヒトの表皮のメラノサイトの培養物で試験された。ウエスターンブロット分析で測定されたように、対象と比較して、10μMのイシリンで処置した後48時間でチロシナーゼ及びチロシナーゼ−関連タンパク質(TRP)−1発現レベルの減少が観察された。したがって、イシリンは、メラノサイトの色素生成活性の減少を伴ったインビトロでの育毛阻害効果を発揮する。これらの結果は、TRPM8及びTRPA1受容体の作用物質は過剰な色素沈着からメラノサイトを保護する可能性があることを示唆している。
【0080】
他の実施形態は、特許請求の範囲内にある。例えば、上記の特許のリストに記載され又参照して組み込まれる、化合物並びに特定の化合物の部類は、概要の項で開示された方法の中で使用することができる。
【0081】
「発明を実施するための最良の形態」で引用したすべての文献は、その関連部分において、本明細書に参照して組み込まれる;いかなる文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを認めるものであると解釈すべきではない。本書における用語の任意の意味又は定義が、参照して組み込まれた文献における同一の用語の任意の意味又は定義と相反する限りにおいて、本書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0082】
本発明の特定の諸実施形態を図示し、記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることは当業者には自明であろう。したがって、本発明の範囲内にあるかようなすべての変更及び修正を、付加された許請求の範囲でカバーするものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の育毛を軽減させる方法であって、
(a)育毛の軽減が望ましい哺乳類の皮膚領域を選択すること、及び
(b)前記皮膚領域に、トランジェントレセプターポテンシャルメラスタチン−8(TRPM8)作用物質、トランジェントレセプターポテンシャルチャネルアンキリンリピート1(TRPA1)作用物質、又はこれらの組み合わせ、から選択される冷受容体作用物質を含む、皮膚科学的に許容可能な組成物を適用すること、を含む方法。
【請求項2】
前記組成物がα−ジフルオロメチルオルニチンを含んでいない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記TRPM8作用物質が非テルペンTRPM8作用物質である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物がテルペンをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記TRPM8作用物質がテルペンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記テルペンがメントール又はメンチルラクテートである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記TRPM8又はTRPA1がイシリンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が熱ショックタンパク質阻害剤又はアポトーシスを促進する化合物を含んでいない、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
(c)前記皮膚領域を熱的脱毛剤と接触させる工程をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
レーザーが工程(c)に使用される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記皮膚領域が、前記組成物の適用後48時間以内にレーザーで処置される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
フラッシュランプが工程(c)に使用される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が0.1重量%〜30重量%の作用物質を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ヒトの前記皮膚領域が、顔、腋窩、脚、まゆ、及びビキニ領域から成る群から選択される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−529494(P2009−529494A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555933(P2008−555933)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【国際出願番号】PCT/IB2007/050654
【国際公開番号】WO2007/099503
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(500006524)ザ ジレット コンパニー (14)
【Fターム(参考)】