説明

発泡固形潤滑剤封入軸受およびその製造方法

【課題】潤滑油を保持する固形潤滑剤の潤滑性能に優れ、長寿命で高速回転でも運転が可能であるとともに、製造工程を比較的簡単にすることができ低コスト化の要望に応じ得る発泡固形潤滑剤封入軸受を提供する。
【解決手段】軸受31内部に発泡固形潤滑剤37が封入されてなる発泡固形潤滑剤封入軸受であって、上記発泡固形潤滑剤37は、潤滑成分および樹脂成分を必須成分とし、該樹脂成分を発泡・硬化して多孔質化した固形物であり、上記発泡固形潤滑剤は、ゴム状弾性を有する樹脂またはゴムからなる樹脂成分を具備し、外力による変形により潤滑成分の滲出性を有し、上記樹脂成分がポリウレタン樹脂である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡固形潤滑剤封入軸受およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車や産業用機械に代表されるようなほとんどの機械の摺動部や回転部において潤滑剤が使用されている。通常、転がり軸受は、その内部にグリースを充填して転動体と軸受内外輪および保持器相互の摩擦面を潤滑しており、充填されたグリースが外部へ流出しないように、また、その内部へ塵や水分等が侵入しないように、シール等の密封装置が設けられている。しかし、密封装置付きの転がり軸受であっても、グリースを完全に密封することは困難であり、長時間使用すると徐々に流出したり、軸受内に外部から侵入した水分によってグリースが徐々に劣化することがある。このようなグリースの密封不良および劣化防止に関する問題点を解決するべく、潤滑油を増ちょうさせて保形性を持たせたグリースや、液体潤滑剤を保持してその飛散や垂れ落ちを防止できる固形潤滑剤も知られている。
【0003】
例えば、潤滑油やグリースに、超高分子量ポリオレフィン、またはウレタン樹脂およびその硬化剤を混合し、樹脂の分子間に液状の潤滑成分を保持させて徐々に滲み出る物性を持たせた固形潤滑剤が知られている(特許文献1〜特許文献3参照)。
また、潤滑剤の存在下でポリウレタン原料であるポリオールとジイソシアネートとを潤滑成分中で反応させた自己潤滑性のポリウレタンエラストマーが知られている(特許文献4参照)。
また、樹脂成分である固形成分を発泡体化し、これに潤滑油を後含浸させ、軸受内部の摩擦接触部の近傍に設ける含油発泡体が知られている(特許文献5参照)。
【0004】
これらの固形潤滑剤は、軸受に封入して固化させると、潤滑油を徐々に滲み出させるものであり、これを用いると潤滑油の補充のためのメンテナンスが不要になり、水分の多い厳しい使用環境や強い慣性力の働く環境などでも軸受寿命の長期化に役立てることを狙ったものである。
一方、ポリオール成分とイソシアネート成分とで生成されるポリウレタン樹脂内に潤滑油を含ませた潤滑性組成物が知られている(特許文献6〜特許文献8参照)。
また、瀝青などによる油展が可能な原料として水酸基末端ポリジエン化合物がこれまでに報告されている。(特許文献9参照)
【0005】
しかしながら、上記した従来技術による固形潤滑剤を充填した転がり軸受では、寿命が短い、高速回転においては焼きつきやすい、そして発熱が大きくなるために母材である樹脂成分が溶融してしまうために使用できないという問題がある。また、フルパック仕様においては、前述固形潤滑剤を軸受内で固化させた後冷却する過程において、加熱条件によっては硬化中に固形潤滑剤が収縮し、固形潤滑剤自身が転動体を抱きこんでしまい、軸受起動時の回転トルクが大きくなりやすく発熱しやすいという問題点がある。また、使用する軸受の使用条件によっては回転時の遠心力によって固形潤滑剤が軸受外輪側に変形してしまい、適切に潤滑剤が供給されない場合がある。
また、このような固形潤滑剤を製造する工程では、潤滑油やグリースを確実に含浸させるために多くの製造工程が必要になり、これでは低コスト化の要求に応えることも困難である。
【特許文献1】特開平6−41569号公報
【特許文献2】特開平6−172770号公報
【特許文献3】特開2000−319681号公報
【特許文献4】特開平11−286601号公報
【特許文献5】特開平9−42297号公報
【特許文献6】特開昭60−173010号公報
【特許文献7】特開昭62−241997号公報
【特許文献8】特開平8−3259号公報
【特許文献9】特開昭58−189243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題点に対処するためになされたものであり、潤滑油を保持する固形潤滑剤の潤滑性能に優れ、長寿命で高速回転でも運転が可能であるとともに、製造工程を比較的簡単にすることができ低コスト化の要望に応じ得る発泡固形潤滑剤封入軸受およびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受は、潤滑成分と、樹脂成分と、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させてなる発泡固形潤滑剤が軸受内部空間に封入されてなり、上記発泡固形潤滑剤の発泡倍率が 1.1 倍以上 20 倍未満であり、かつ発泡成形収縮率が 5 %以下であることを特徴とする。
また、上記発泡固形潤滑剤の特性が、上記特性に加え、(1)80.3 gf の力を連続して加え 5 時間経過したときの、油分離率が 1 %以上 15 %以下である、(2)日本工業規格K6400に準じて測定される引張強さが 50 kPa 以上である、および/または(3)連続気泡率が 50 %以上であることを特徴とする。
【0008】
本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受に使用できる第1の発泡固形潤滑剤は、上記潤滑成分が炭化水素系潤滑油および炭化水素系グリースから選ばれた少なくとも1つの潤滑成分であり、上記樹脂成分が分子内に水酸基を有する液状ゴムであり、該液状ゴムは高分子主鎖が炭化水素から構成され、該主鎖末端に水酸基価が 25 〜 110 mgKOH/g となる量の水酸基を有する液状ゴムであり、上記硬化剤が分子内にイソシアネート基を有する有機化合物であり、上記発泡剤が水であり、上記液状ゴムと上記硬化剤との割合は、液状ゴムに含まれる水酸基と硬化剤に含まれるイソシアネート基とが当量比で(OH/NCO)=1/( 1.0 〜 2.0 )の範囲であり、上記混合物は、混合物全体に対して、上記潤滑成分を 40 〜80 重量%、上記液状ゴムを 5 〜45 重量%含むことを特徴とする。
また、上記液状ゴムがブタジエンもしくはイソプレンの重合体の主鎖末端に水酸基を有する数平均分子量 1000〜3500 の水酸基末端ジエン系重合体、または該ジエン系重合体を水添処理した変性水酸基末端ジエン系重合体であることを特徴とする。
また、上記分子内にイソシアネート基を持つ有機化合物は、分子内に2個以上のイソシアネート基を有し、イソシアネート基の割合が 2.5 NCO%〜 5.0 NCO%からなるプレポリマーか、または芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする。
【0009】
本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受に使用できる第2の発泡固形潤滑剤は、上記潤滑成分が潤滑油およびグリースから選ばれた少なくとも1つの潤滑成分であり、上記樹脂成分が分子内にイソシアネート基を 2 重量%以上 6 重量%未満含有するウレタンプレポリマーであり、上記発泡剤が水であり、上記混合物は、混合物全体に対して、上記潤滑成分を 30 〜 70 重量%含み、発泡後の連続気泡率が 50 %以上であることを特徴とする。また、上記ウレタンプレポリマーは、エステル系ウレタンプレポリマー、カプロラクトン系ウレタンプレポリマー、およびエーテル系ウレタンプレポリマーから選ばれた少なくとも1つのウレタンプレポリマーであることを特徴とする。
また、上記イソシアネート基と、該イソシアネート基と反応する硬化剤の官能基との割合が当量比で(硬化剤の官能基/NCO)=1/(1.1〜2.5)の範囲であることを特徴とする。
また、上記水の水酸基と、上記硬化剤の官能基との割合が当量比で(水の水酸基/硬化剤の官能基)=1/(0.7〜2.0)の範囲であることを特徴とする。
上記硬化剤が芳香族ポリアミノ化合物であることを特徴とする。
【0010】
本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受の製造方法は、潤滑成分と、樹脂成分と、硬化剤と、発泡剤とを含む成分を混合する混合工程と、この混合工程で得られる混合物が発泡硬化する前に軸受内部に封入する工程と、封入後に軸受内部空間にて発泡硬化させる工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受は、発泡固形潤滑剤が軸受内部空間に封入され、発泡倍率が 1.1 倍以上 20 倍未満であり、かつ発泡成形収縮率が 5 %以下であり、また、上記特性に加え、(1)80.3 gf の力を連続して加え 5 時間経過したときの油分離率が 1 %以上 15 %以下である、(2)日本工業規格K6400に準じて測定される引張強さが 50 kPa 以上である、および/または(3)連続気泡率が 50 %以上であるので、起動時の回転トルクおよび遠心力による潤滑剤の供給不足を抑えることができる。
【0012】
また、本発明で用いる発泡固形潤滑剤は、潤滑成分が発泡・硬化した固形成分内に吸蔵される。このため、本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受は、発泡固形潤滑剤中の潤滑成分の保持量が単なる気孔内の含浸による保持量よりも多くなるとともに、運転時において発泡固形潤滑剤中より転動体周囲等に潤滑油が徐放されるので、高速回転でも運転が可能であり、長寿命に寄与することができる。なお、本発明において「吸蔵」とは、液体・半固体状の潤滑成分が他の配合成分と反応することなく、固体の樹脂中に化合物にならないで含まれることをいう。
また、発泡固形潤滑剤を封入することで、転走面近くに潤滑剤が存在できグリース潤滑と比較してより潤滑剤が転走面に供給されやすい。また、外部からの塵・水分等の侵入に対してはシール部材の役割をも果たす。その上、多孔質な部分を多く持つので、軸受の軽量化の点でも有利である。
本発明の製造方法は、組み立て後に潤滑剤を封入する必要がないので、生産効率が向上し、安価に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受の軸受内部空間に封入される発泡固形潤滑剤は、発泡倍率が 1.1 倍以上 20 倍未満、好ましくは 1.1 倍〜10 倍であり、かつ発泡成形収縮率が 5 %以下の特性を有する。
ここで発泡倍率は、発泡後の固形潤滑剤の体積を発泡前の原料混合液体の体積で除した値である。また、発泡成形収縮率は、成形型に原料混合液体を入れて発泡させるとき、成形型の寸法をA、成形型より取り出した成形後発泡固形潤滑剤の寸法をBとすると、[100×(A−B)/A]で表される値である。
発泡倍率が 1.1 倍未満であると、気泡体積が小さく、外部応力が加わったときに変形を許容できないし、または多孔質化した固形物が硬すぎるため、外部応力に追随した変形ができないなどの不具合がある。また、20 倍以上の場合は外部応力に耐える強度を得ることが困難となり、破損や破壊に至る場合がある。
発泡成形収縮率が 5 %をこえると転動体に対する固形潤滑剤の収縮が大きく、潤滑剤の供給が不足しがちな起動時の回転トルクが大きくなる。
【0014】
発泡固形潤滑剤は、上記特性に加え、(1)80.3 gf の力を連続して加え 5 時間経過したときの、油分離率が 1 %以上 15 %以下である、(2)日本工業規格K6400に準じて測定される引張強さが 50 kPa 以上である、および/または(3)連続気泡率が 50 %以上である。
上記方法で測定される油分離率は 1 %以上 15 %以下の範囲である。1%未満の時は潤滑剤供給不足となる。また 15 %以上の時は潤滑剤供給が過多となり、長期間の潤滑剤の供給に支障をきたす。
発泡固形潤滑剤の引張強さは 50 kPa 以上である。 50 kPa 未満であると材料強度が不足し、軸の回転中に遠心力によって材料が外輪側に偏ってしまい、適切な潤滑剤の供給不足になる可能性がある。
また、発泡後の連続気泡率は 50 %以上、好ましくは 50 〜 90 %である。連続気泡率が 50%未満の場合は、樹脂成分中の潤滑油が一時的に独立気泡中に取り込まれている割合が多くなり、必要な時に外部へ供給されない場合がある。
【0015】
連続気泡率は以下の手順で算出できる。
(1)発泡硬化した発泡固形潤滑剤を適当な大きさにカットし、試料Aを得る。試料Aの重量を測定する。
(2)Aを 3 時間ソックスレー洗浄(溶剤:石油ベンジン)する。その後 80℃で 2 時間恒温槽に放置し、有機溶剤を完全に乾燥させ、試料Bを得る。試料Bの重量を測定する。
(3)連続気泡率を以下の手順で算出する。
連続気泡率=(1−(試料Bの樹脂成分重量−試料Aの樹脂成分重量)/試料Aの潤滑成分重量)×100
なお、試料A、Bの樹脂成分重量、潤滑成分重量は、試料A、Bの重量に組成の仕込み割合を乗じて算出する。
連続していない独立気泡中に取り込まれた潤滑成分は 3 時間ソックスレー洗浄では外部へ放出されないため試料Bの重量を減少させることがないので、上記の操作で試料Bの重量減少分は連続気泡からの潤滑成分の放出によるものとして連続気泡率が算出できる。
【0016】
上述した特性を有する発泡固形潤滑剤は、潤滑成分と、樹脂成分と、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させて得られる。
本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受は、封入した発泡固形潤滑剤の樹脂内に潤滑成分を吸蔵させるので、樹脂の柔軟性により、例えば圧縮、膨張、屈曲、ねじりなどの外力による変形や毛細管現象により潤滑剤を滲み出させて樹脂の分子間から外部に徐放できる。この際、滲み出す潤滑油量は、外力の大きさに応じて弾性変形する程度を樹脂の選択などによって変えることにより、必要最小限にすることができる。
また、本発明に用いる発泡固形潤滑剤において樹脂成分は、発泡により表面積が大きくなっており、滲み出した余剰の潤滑油を再び発泡体の気泡内に一時的に保持することもできて滲み出す潤滑油量は安定しており、また樹脂内に潤滑剤を吸蔵させるとともに気泡内に含浸させることによって非発泡の状態より潤滑油の保持量も多くなる。
【0017】
その上、本発明に用いる発泡固形潤滑剤は、非発泡体と比較して屈曲時に必要なエネルギーが非常に小さく、潤滑油を高密度に保持しながら柔軟な変形が可能である。よって、該発泡固形潤滑剤を固化させた後冷却する過程において、固形潤滑剤が収縮し転動体を抱き込んだとしても屈曲・変形時に必要なエネルギーが小さいために容易に変形することができ、回転トルクが大きくなるという問題を防ぐことができる。また、発泡部分すなわち多孔質な部分を多く持つため、軽量化の点でも有利である。
また、本発明に用いる発泡固形潤滑剤は潤滑成分と、樹脂成分とを必須成分として含む混合物を発泡・硬化させるだけであるので、特別な設備も不要であり、任意の場所に充填して成形することが可能である。
また、上記混合物の配合成分の配合量をコントロールすることにより発泡固形潤滑剤の密度を変化させることができる。
【0018】
本発明に用いる発泡固形潤滑剤を構成する樹脂成分としては、発泡・硬化後にゴム状弾性を有し、変形により潤滑成分の滲出性を有するものが好ましい。
発泡・硬化は、樹脂生成時に発泡・硬化させる形式であっても、樹脂成分に発泡剤を配合して成形時に発泡・硬化させる形式であってもよい。ここで硬化は架橋反応および/または液状物が固体化する現象を意味する。また、ゴム状弾性とは、ゴム弾性を意味するとともに、外力により加えられた変形がその外力を無くすことにより元の形状に復帰することを意味する。
【0019】
本発明に使用できる発泡固形潤滑剤の樹脂成分には耐熱性および柔軟性に優れ、低コスト化が可能となるウレタン樹脂を用いるのが好ましい。樹脂成分として、以下に説明する分子内に水酸基を有する液状ゴムを用いる第1の発泡固形潤滑剤、所定のNCOを含有するウレタンプレポリマーを用いる第2の発泡固形潤滑剤が発泡固形潤滑剤として好ましい。
また、ポリオールとしてのポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる樹脂成分を用いることができる。
【0020】
上記第1の発泡固形潤滑剤に用いられる樹脂成分には耐熱性および柔軟性に優れ、低コスト化が可能となるウレタン樹脂を用いるのが好ましい。ウレタン樹脂を形成する水酸基含有成分としては、分子内に水酸基を有する液状ゴムが好ましく、この液状ゴムは高分子主鎖が炭化水素から構成され、該主鎖末端に水酸基価が 25〜110 mgKOH/g となる量の水酸基を有する液状ゴムであることが好ましい。水酸基価が 25 mg KOH/g 未満では、発泡・硬化が十分でなく、水酸基価が 110 mg KOH/g をこえると、発泡固形潤滑剤の弾力性が失われる場合がある。
この液状ゴムは、ブタジエンもしくはイソプレンの重合体の主鎖末端に水酸基を有する数平均分子量 1000〜3500 の水酸基末端ジエン系重合体、または該ジエン系重合体を水添処理した変性水酸基末端ジエン系重合体を用いることができる。
水酸基末端液状ポリブタジエンとしては、poly-bd R45HT(出光興産社製)、poly-bd R15HT(出光興産社製)、NISSO−PB G−1000、G−2000、G−3000(日本曹達社製)が挙げられ、水酸基末端液状ポリイソプレンとしては、poly-ip(出光興産社製)が挙げられ、水添処理した水酸基末端ポリジエン化合物としては、エポール(出光興産社製)、NISSO−PB GI−1000、GI−2000、GI−3000(日本曹達社製)等が挙げられる。
【0021】
また、これら水酸基末端ポリジエン化合物または水添処理した水酸基末端ポリジエン化合物の末端水酸基をイソシアネート基やエポキシ基などで一部変性した水酸基末端ポリジエン化合物または水添処理した水酸基末端ポリジエン化合物も水酸基が末端に含まれれば使用することができる。製造された発泡体の物性を制御するなどの目的でこれら化合物を2種類以上混合して用いてもよい。
【0022】
上記水酸基末端ポリジエン系重合体または水添処理した水酸基末端ポリジエン系重合体は、後述する炭化水素から構成されるパラフィン系やナフテン系の鉱物油からなる潤滑成分と分子構造が類似するので、潤滑成分を構成する分子との化学的親和性に優れ、水酸基末端ポリジエン系重合体または水添処理した水酸基末端ポリジエン系重合体と潤滑成分分子とが比較的弱い相互作用によって絡み合っていると考えられる。そのため多くの潤滑成分をその水酸基末端ポリジエン系重合体または水添処理した水酸基末端ポリジエン系重合体の分子内に含浸させることが可能であり、高い潤滑成分保持性を発揮することができる。これに熱や遠心力などの強い力を加えることで、水酸基末端ポリジエン系重合体または水添処理した水酸基末端ポリジエン系重合体と潤滑成分の相互作用が壊され、潤滑成分を徐放させることができる。
【0023】
液状ゴムを硬化させる硬化剤としての分子内にイソシアネート基を有する有機化合物は、液状ゴム内の水酸基と反応し、分子鎖を延長させ、または架橋させるイソシアネート化合物であれば、特に制限なく使用できる。好ましいイソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート類を挙げることができる。ポリイソシアネート類は後述する発泡剤となる水と反応して気体を発生させることができるので特に好ましい。
ポリイソシアネート類としては、ポリイソシアネートおよび/または分子内に2個以上のイソシアネート基を有するプレポリマーが挙げられる。
【0024】
ポリイソシアネート類は芳香族、脂肪族、または脂環族ポリイソシアネート類を挙げることができる。
芳香族ポリイソシアネート類としては、トリレンジイソシアネート(以下、TDIと記す)、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと記す)、TDIの多量体、MDIの多量体、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、フェニレンジイソシアネート、ジフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート類としては、オクタデカメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、へキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ポリイソシアネート類としては、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
また、上記ポリイソシアネート類とトリメチロールプロパンなどのポリオールとの付加物も使用できる。
液状ゴムの末端官能基である水酸基との反応を高温度で行なう場合は、フェノール類、ラクタム類、アルコール類、オキシム類などのブロック剤でイソシアネート基をブロックしたブロックイソシアネート等を使用することができる。
【0025】
水酸基末端ポリジエン系重合体と反応させる場合、ポリイソシアネート類の中で芳香族ポリイソシアネート類が好ましく、更には水酸基末端ポリジエン系重合体等との発泡性および反応性に優れるTDIが好ましい。
【0026】
分子内に2個以上のイソシアネート基を有するプレポリマーとしては、イソシアネート基の割合が 2.5〜5.0 NCO%からなるプレポリマーであれば使用できる。ここでNCO%はプレポリマー全体に含まれるNCO重量%を意味する。2.5〜5.0 NCO%のプレポリマーは水酸基末端ポリジエン系重合体等と反応して弾力性に富んだウレタンを得ることができる。
プレポリマー類には重合させるモノマーの種類によりPPG系、PTMG系、エステル系、カプロラクトン系などに分類される。PPG系にはタケネートL-1170(三井化学ポリウレタン社製)、L-1158(三井化学ポリウレタン社製)があり、PTMG系にはコロネート4090(日本ポリウレタン社製)などがある。また、エステル系としてはコロネート4047(日本ポリウレタン社製)などがあり、カプロラクトン系にはタケネートL-1350(三井化学ポリウレタン社製)、タケネートL-1680(三井化学ポリウレタン社製)、サイアナプレン7-QM(三井化学ポリウレタン社製)、プラクセルEP1130(ダイセル化学工業社製)などを挙げることができる。上記プレポリマーは、目的に応じて2種類以上を混合して使用することもできる。
【0027】
末端水酸基を有する水酸基末端ポリジエン系重合体または水添処理した水酸基末端ポリジエン系重合体とイソシアネート基を有するイソシアネート化合物との配合割合は、水酸基(−OH)とイソシアネート基(−NCO)との当量比で(OH/NCO)= 1 /( 1.0〜2.0 )の範囲が好ましく、特に優れた発泡性および弾力性を考慮すると、(OH/NCO)= 1 /( 1.1〜1.9 )の範囲が好ましい。(OH/NCO)が 1/2.0 より小さいときはイソシアネート基が過剰となり、架橋密度が大きく弾性に劣る場合がある。また、(OH/NCO)が 1/1.0 より大きいときには架橋するイソシアネート基が不足するため硬化が十分でなくなる。
【0028】
第1の発泡固形潤滑剤に使用できる潤滑成分は、発泡体を形成する固形成分を溶解しないものであれば使用することができる。潤滑成分としては、炭化水素系潤滑油、炭化水素系グリース、または炭化水素系潤滑油と炭化水素系グリースとの混合物が挙げられる。
炭化水素系潤滑油としては、パラフィン系やナフテン系の鉱物油、炭化水素系合成油、GTL基油等が挙げられる。これらは単独でも混合油としても使用できる。
炭化水素系グリースは炭化水素油を基油とするグリースであり、基油としては上述の炭化水素系潤滑油を挙げることができる。増ちょう剤としては、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けん、カルシウム石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミニウム石けん、アルミニウムコンプレックス石けん等の石けん類、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物が挙げられるが、特に限定されるものではない。ジウレア化合物はジイソシアネートとモノアミンの反応で、ポリウレア化合物はジイソシアネートとポリアミンの反応で、それぞれ得られる。
【0029】
上記潤滑成分には、炭化水素系合成ワックス、ポリエチレンワックス、高級脂肪酸エステル系ワックス、高級脂肪酸アミド系ワックス、ケトン・アミン類、水素硬化油などを混合して使用することができる。
【0030】
第1の発泡固形潤滑剤を発泡させる手段は、原料にイソシアネート化合物を用いることから、イソシアネート化合物と反応して二酸化炭素ガスを発生させる水を用いることが好ましい。
【0031】
第1の発泡固形潤滑剤は、上記潤滑成分と、液状ゴムと、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させて得られる。
上記潤滑成分の配合割合は、混合物全体に対して、40〜80 重量%である。潤滑成分が 40 重量%未満であると、潤滑油などの供給量が少なく発泡固形潤滑剤としての機能を発揮できず、80 重量%より多いときには固化しなくなる。
上記液状ゴムの配合割合は、混合物全体に対して、5〜45 重量%、好ましくは 9〜42 重量%である。5 重量%より少ないときは固化しないため発泡固形潤滑剤としての機能を持たず、45 重量%より多いときには潤滑剤の供給が少なく、発泡固形潤滑剤としての機能を持たない。
【0032】
また、第1の発泡固形潤滑剤の硬化速度を促進させるために、3級アミン系触媒や有機金属触媒などを用いることができる。使用する3級アミン系触媒としてはモノアミン類、ジアミン類、トリアミン類、環状アミン類、アルコールアミン類、エーテルアミン類などが挙げられる。また、有機金属触媒としてはスタナオクタエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンメルカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンマレエート、ジオクチルチンジメルカプチド、ジオクチルチンチオカルボキシレートなどが挙げられる。また、反応のバランスを整えるなどの目的でこれら複数種類を混合して用いてもよい。
【0033】
本発明における第2の発泡固形潤滑剤の樹脂成分として使用できるウレタンプレポリマーは、活性水素基を有する化合物とポリイソシアネートとの反応によって得られ、イソシアネート基は、分子鎖末端であっても、あるいは分子鎖内から分岐した側鎖末端に含まれていてもよい。また、ウレタンプレポリマーは分子鎖内にウレタン結合を有していてもよい。
反応するモノマー(=活性水素基を有する化合物)の種類によって、カプロラクトン系、エステル系、エーテル系などに分類される。エーテル系にはタケネートL-1170(三井化学ポリウレタン社製)、L-1158(三井化学ポリウレタン社製)、コロネート4090(日本ポリウレタン社製)などがある。また、エステル系としてはコロネート4047(日本ポリウレタン社製)などがあり、カプロラクトン系にはタケネートL-1350(三井化学ポリウレタン社製)、タケネートL-1680(三井化学ポリウレタン社製)、サイアナプレン7-QM(三井化学ポリウレタン社製)、プラクセルEP1130(ダイセル化学工業社製)などが挙げられる。
また、末端基をイソシアネート基に変性したオリゴマーやプレポリマー化合物も使用することができる。このような化合物としては末端イソシアネート変性ポリエーテルポリオールや水酸基末端ポリブタジエンのイソシアネート変性体が挙げられる。末端イソシアネート変性ポリエーテルポリオールにはコロネート1050(日本ポリウレタン社製)などが挙げられる。また、水酸基末端ポリブタジエンのイソシアネート変性体には poly−bd MC50(出光興産社製)や poly−bd HTP9(出光興産社製)が挙げられる。
これらウレタンプレポリマーは目的とする機械的性質などに応じて2種類以上を混合して使用することができる。
【0034】
第2の発泡固形潤滑剤は、イソシアネート基含有量が 2 重量%以上 6 重量%未満のウレタンプレポリマーを使用できる。イソシアネート基(NCO)の含有量が 2 重量%未満であると発泡性と弾力性の両立が難しくなるし、6 重量%以上であると硬度が大きくなりすぎて反発弾性が大きくなり外力による変形を受けるときに発熱等を起こしやすくなる。
また、イソシアネート基は、フェノール類、ラクタム類、アルコール類、オキシム類などのブロック剤でイソシアネート基をブロックしたブロックイソシアネート等を使用することができる。
【0035】
上記ウレタンプレポリマーを硬化させる硬化剤としては、活性水素を有する化合物が好ましく、官能基がアミノ基であるポリアミノ化合物、官能基が水酸基であるポリオール化合物が挙げられる。
ポリアミノ化合物としては、3,3′-ジクロロ-4,4′-ジアミノジフェニルメタン(以下、MOCAと記す)、3,3′-ジメチル-4,4′-ジアミノジフェニルメタン、3,3′-ジメトキシ-4,4′-ジアミノジフェニルメタン、4,4′-ジアミノ-3,3′-ジエチル-5,5′-ジメチルジフェニルメタン、トリメチレン-ビス-(4-アミノベンゾアート)、ビス(メチルチオ)-2,4-トルエンジアミン、ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミン、メチルチオトルエンジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミンに代表される芳香族ポリアミノ化合物が挙げられる。
【0036】
上記ポリアミノ化合物の中でも芳香族アミノ化合物が低コストであり、物性が優れているため、好ましく、特にアミノ基の隣接位に置換基を有する芳香族ジアミノ化合物が好ましい。第2の発泡固形潤滑剤においては、発泡と共に硬化させる工程を経るため、隣接位の置換基によりアミノ基の反応性が抑制されるためと考えられる。
【0037】
ウレタンプレポリマーをポリアミノ化合物で硬化させるとウレタンおよびウレア結合を分子内に有する発泡固形潤滑剤となる。ウレア結合を生成させることによって分子中のウレタン結合密度を下げることになり、伸びや反発弾性が向上する。また、ウレア結合を生成させることによって剛性を与えることができる。
【0038】
ポリオール化合物としては、1,4-ブタングリコールやトリメチロールプロパンに代表される低分子ポリオール、ポリエーテルポリオール、ひまし油系ポリオール、ポリエステル系ポリオールが挙げられる。ポリオール化合物の中では、ポリエーテルポリオール、トリメチロールプロパンが好ましい。
また、第2の発泡固形潤滑剤の発泡剤は、イソシアネート化合物と反応して二酸化炭素ガスを発生させる水が好ましい。
【0039】
ウレタンプレポリマーに含まれるイソシアネート基(−NCO)と、該イソシアネート基と反応する硬化剤の官能基との割合は、官能基がアミノ基または水酸基である場合、当量比で(硬化剤の官能基/NCO)=1/(1.1〜2.5)の範囲である。
ウレタンプレポリマーに含まれるイソシアネート基と硬化剤のアミノ基(−NH2)または水酸基(−OH)、そして発泡剤である水の水酸基(−OH)との割合で発泡固形潤滑剤の発泡倍率や柔軟性、弾力性等が定まる。硬化剤のアミノ基(−NH2)または水酸基(−OH)とウレタンプレポリマーのイソシアネート基(−NCO)とを当量で反応させると、発泡剤である水と反応するイソシアネート基(−NCO)が消失してしまうため、(硬化剤の官能基/NCO)=1/(1.1〜2.5)の範囲が好ましい。また、発泡剤である水の水酸基と、硬化剤の官能基との割合が当量比で(水の水酸基/硬化剤の官能基)=1/(0.7〜2.0)の範囲である。
上記範囲よりも硬化剤の量が少なくなると発泡固形潤滑剤の強度等の物性が著しく低下するばかりでなく、ウレタンエラストマーとして硬化しない場合もある。
【0040】
第2の発泡固形潤滑剤に使用できる潤滑成分は、第1の発泡固形潤滑剤と同様に、発泡体を形成する固形成分を溶解しないものであれば使用することができる。潤滑成分としては、例えば潤滑油、グリース、ワックスなどを単独でもしくは混合して使用できる。特に好ましいものとして炭化水素系潤滑油、炭化水素系グリース、または炭化水素系潤滑油と炭化水素系グリースとの混合物が挙げられる。
炭化水素系潤滑油としては、第1の発泡固形潤滑剤と同様のものを使用できる。また、エステル系合成油、エーテル系合成油、フッ素油、シリコーン油等も使用することができる。これらは単独でも混合油としても使用できる。
グリースとしては第1の発泡固形潤滑剤と同様のグリースの他に、エステル系合成油、エーテル系合成油、GTL基油、フッ素油、シリコーン油等を基油としたグリースも使用できる。
また、第1の発泡固形潤滑剤と同様の炭化水素系合成ワックス、ポリエチレンワックス、高級脂肪酸エステル系ワックス、高級脂肪酸アミド系ワックス、ケトン・アミン類、水素硬化油などを混合して使用することができる。
また、第2の発泡固形潤滑剤の硬化速度を促進させるために、上述した3級アミン系触媒や有機金属触媒などを用いることができる。
【0041】
第2の発泡固形潤滑剤は、上記潤滑成分と、樹脂成分と、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させて得られる。
上記潤滑成分の配合割合は、混合物全体に対して、30〜70 重量%、好ましくは 40〜60 重量%である。潤滑成分が 30 重量%未満であると、潤滑油などの供給量が少なく発泡固形潤滑剤としての機能を発揮できず、70 重量%より多いときには固化しなくなる。
【0042】
なお、第1および第2の発泡固形潤滑剤には必要に応じて顔料や帯電防止剤、難燃剤、防黴剤、補強剤、無機充填剤、老化防止剤、フィラーなどの各種添加剤等を添加することができる。補強剤としてはカーボンブラック、ホワイトカーボン、コロイダルシリカなどが挙げられ、無機充填剤としては炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレイ、硅石粉などが挙げられる。
さらに二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤、有機モリブデン等の摩擦調整剤、アミン、脂肪酸、油脂類等の油性剤、アミン系、フェノール系などの酸化防止剤、石油スルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、ソルビタンエステルなどの錆止め剤、イオウ系、イオウ−リン系などの極圧剤、有機亜鉛、リン系などの摩耗防止剤、ベンゾトリアゾール、亜硝酸ソーダなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレンなどの粘度指数向上剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
【0043】
第1および第2の発泡固形潤滑剤は、潤滑油などの潤滑成分存在下で発泡反応と硬化反応とを同時に行なう反応型含浸法を用いることが、潤滑成分の高充填化と材料物性の高伸化を同時に両立させるためには望ましい。これは発泡体形成段階において発泡体に形成された気泡に潤滑剤が均一に含浸されるとともに、潤滑成分が発泡・硬化した固形成分内に吸蔵されることにより潤滑剤の高充填化と材料物性の高伸化が両立するものと考えられる。
これに対してあらかじめ発泡体を製造しておき、これに潤滑剤を含浸させる後含浸法では潤滑剤保持力が十分でなく、短時間で潤滑剤が放出され長期的に使用すると潤滑剤が供給不足となる。
【0044】
本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受の製造方法は、上述した潤滑成分と、樹脂成分と、硬化剤と、発泡剤とを含む成分を混合する混合工程と、この混合工程で得られる混合物が発泡硬化する前に軸受内部に封入する工程と、封入後に軸受内部空間にて発泡硬化させる工程とを備える。
上記混合物を混合する方法としては、特に限定されることなく、例えばヘンシェルミキサー、リボンミキサー、ジューサーミキサー、ミキシングヘッド等、一般に用いられる撹拌機を使用して混合することができる。
上記混合物は、市販のシリコーン系整泡剤などの界面活性剤を使用し、各原料分子を均一に分散させておくことが望ましい。また、この整泡剤の種類によって表面張力を制御し、生じる気泡の種類を連続気泡または独立気泡に制御することが可能となる。このような界面活性剤としては陰イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0045】
混合物は発泡硬化する前に軸受内部に封入し、その後発泡される。形状が複雑な軸受内の任意の部位にも容易に充填することが可能であり、発泡成形体を得るための成形金型や研削工程等も不要であることから、本発明では、混合物を発泡・硬化前に軸受内に流し込み、軸受内において発泡・硬化させる方法を採用することが好ましい。該方法を採用することで、製造工程が簡易となり低コスト化が図れる。
【0046】
これらの発泡固形潤滑剤は、各種の周知な形式の軸受に封入することができる。例として、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、スラスト玉軸受、円筒ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト円筒ころ軸受、スラスト針状ころ軸受、円すいころ軸受、スラスト円すいころ軸受、自動調心玉軸受、自動調心ころ軸受、スラスト自動調心ころ軸受、すべり軸受などが挙げられる。また、これらの軸受に対して、シール部材またはシールド板の有無は問わず適用することができる。
【0047】
本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受の一例を図5に基づいて説明する。図5は本発明の一実施例に係る深溝玉軸受の断面図である。
図5に示すように軸受31は内輪32と、内輪32と同心に配置された外輪33と、これらの内、外輪間に介在する複数個の転動体34と、この複数個の転動体34を保持する保持器36と、外輪33等に固定されるシール部材35とにより構成される。少なくとも転動体34の周囲に上述の発泡固形潤滑剤37が封入される。
【0048】
軸受への発泡固形潤滑剤の封入方法の一例を、図1〜図3に基づいて説明する。
図1は、本発明の他の実施例に係るラジアル玉軸受(シール部材なし)への封入例を示す模式図である。図1に示すように、軸受外径7より大きい鉄板5もしくはそれに類似する治具の上に内輪2と、外輪3と、内、外輪間に介在する転動体4とを有する軸受1を置き、よく撹拌した発泡直前の発泡固形潤滑剤成分の混合物6を内輪2と、外輪3と、鉄板5とに囲まれた空間に流し込み、発泡・硬化させる。この場合、混合物6を軸受1内に流し込んだ後にさらに軸受1上部に軸受外径7より大きい鉄板5もしくはそれに類似する治具をかぶせてもよい。鉄板もしくは治具をかぶせる場合、軸受内での発泡固形潤滑剤の充填率が向上する。混合物6の発泡・硬化終了後に鉄板5もしくはそれに類似する治具を外して、発泡固形潤滑剤封入軸受を得る。
【0049】
図2は、本発明の他の実施例に係るラジアル玉軸受(シール部材付き)への封入例を示す模式図である。図2に示すように、内輪12と、外輪13と、内、外輪間に介在する転動体14と、片側のみに装着されたシール部材15を有する軸受11を、シール部材15を下側にして静置する。そして、よく撹拌した発泡直前の発泡固形潤滑剤成分の混合物16を軸受11に流し込み、発泡・硬化させる。この場合、図1と同様に軸受内での発泡固形潤滑剤の充填率が向上させるために、混合物16を軸受11内に流し込んだ後にさらに軸受11上部に軸受外径より大きい鉄板もしくはそれに類似する治具をかぶせてもよい。上側のシール部材は、充填率向上のための治具の代わりとして、発泡過程中に装着してもよいし、発泡・硬化が終わってから軸受11に装着してもよい。
【0050】
図3は本発明の他の実施例に係るスラスト玉軸受への封入例を示す模式図である。図4は、図3にて円筒治具の使用を示す模式図である。図3および図4に示すように、スラスト玉軸受21が収まる金型25を準備し、内輪22と外輪23と、内、外輪間に介在する転動体24とを有する軸受21を設置する。軸受21の内径側からよく撹拌した発泡直前の発泡固形潤滑剤成分の混合物26を軸受21に流し込み、内径と同径の円筒治具27を内径部に差し込み、発泡・硬化させる。混合物26が発泡・硬化し発泡固形潤滑剤28となった後、金型25と円筒治具27を外して、発泡固形潤滑剤封入軸受を得る。
また、軸受への潤滑剤の封入には、射出成形機等を用いることもできる。この場合、軸受は金型に装着され、スクリュー内で混合された発泡固形潤滑剤成分はノズルより軸受内へ封入される。
【0051】
本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受において、発泡固形潤滑剤中に含浸された状態で含まれる潤滑成分は、外力による発泡体の変形によっても急激に滲み出すことがなく、潤滑成分を効率よく摺動面に滲み出させて用いることができる。その結果、該軸受は潤滑成分量が必要最小限でよく、長寿命で高速回転でも運転が可能である。
【実施例】
【0052】
以下に本発明の実施例を挙げ、本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
実施例1〜実施例15および比較例1〜比較例4
実施例1〜実施例15および比較例1〜比較例4に用いた潤滑成分、液状ゴム、硬化剤、発泡剤、触媒を以下に示す。なお、( )内は表中での略号を表す。
潤滑成分
潤滑油(潤滑油):タービン100(新日本石油社製)
潤滑グリース(グリース1):NTG2218M(協同油脂社製)
液状ゴム
水酸基末端ポリブタジエン(PBOH1):Poly-bd R45HT(水酸基価:46.6 mgKOH/g、数平均分子量:2,800、出光興産社製)
水酸基末端ポリブタジエン(PBOH2):Poly-bd R15HT(水酸基価:102.7 mgKOH/g 、数平均分子量:1,200、出光興産社製)
水酸基末端ポリイソプレン(PipOH):Poly-ip(水酸基価:46.6 mgKOH/g 、数平均分子量:2,500、出光興産社製)
水添水酸基末端ポリイソプレン(HPipOH):エポール(水酸基価:50.5 mgKOH/g 、数平均分子量:2,500、出光興産社製)
硬化剤
イソシアネート化合物(TDI):コロネートT-80(日本ポリウレタン社製)
エラストマ1(UE1):コロネート4090(4.4 NCO% 日本ポリウレタン社製)
エラストマ2(UE2):プラクセルEP1130(3.3 NCO% ダイセル化学工業社製)
発泡剤(発泡剤) イオン交換水
整泡剤(整泡剤) SRX298(東レダウ社製)
触媒(触媒1) DM70(東ソー社製)
【0053】
硬化剤(イソシアネート)を除く配合材料を表1〜表3に示す配合割合でよく混合し、最後に硬化剤を加えて素早く混合した混合物 40 g を、ポリテトラフルオロエチレン樹脂製容器(直径 70 mm×高さ 150 mm )に充填した。数秒後に発泡反応が始まり、常温で数時間放置し硬化させて円柱試験片を得た。この試験片を目視および光学顕微鏡を用いて観察した。試験片に 30 Nの力を試験片の円柱軸方向に印加したときに油が滲み出す形状の弾性ゴムの発泡体であるものを優れた発泡固形潤滑剤であると評価して「○」印を、また、発泡体として硬化しない場合、潤滑油が分離したり放出したりしない場合を「×」印を付して表1〜表3に併記した。
また、「○」印と評価された試験片は試験片の円柱軸方向に 25 %伸張させても油が滲み出すことはなかった。
【0054】
後述する方法で測定した上記試験片の発泡倍率は全て 1.1 倍以上 20 倍未満、発泡成形収縮率は 5 %以下、油分離率は 1 %以上 15 %以下、引張強さは 50 kPa 以上、連続気泡率が 50 〜 90 %であった。
【0055】
また、ポリテトラフルオロエチレン樹脂製容器(直径 70 mm×高さ 150 mm )内で硬化剤を除く配合材料を表1および表2に示す配合割合でよく混合した。次に硬化剤を加えて素早く混合した後、この混合物を、玉軸受6204の内部空間に充填した。数秒後に発泡反応が始まり、常温で放置し硬化させて発泡固形潤滑剤封入軸受の試験片を得た。この試験片を用いて以下に示す実機耐久試験を行ない、実機での耐久性を評価した。
【0056】
<実機耐久試験>
得られた試験片について、Fa=Fr=67 N の荷重を負荷し、100℃で 10000 rpmで回転させ、回転軸を駆動している電動機の入力電流が制限電流を超過した時(回転トルクが始動トルクの 2 倍をこえた時)までの寿命時間を測定した。評価として、1000 時間を超える寿命を示したものに「○」印を付し、それ以外を「×」とした。結果を表1および表2に併記する。
【0057】
【表1】

【表2】

【表3】

【0058】
表1〜表3に示すように、実施例1〜実施例15の発泡固形潤滑剤では指で押したとき相当する力を加えたときに油が滲み出す形状の弾性ゴムの発泡体であり、優れた発泡固形潤滑剤であると認められたが、比較例1〜比較例4では発泡はしたものの一部固化せず、発泡固形潤滑剤としては機能しないことがわかった。
また、実施例1〜実施例15の発泡固形潤滑剤を封入した玉軸受は、実機耐久性に優れていた。
【0059】
実施例16〜実施例35および比較例5〜比較例10
実施例16〜実施例35および比較例5〜比較例10に用いた潤滑成分、ウレタンプレポリマー、硬化剤、発泡剤、触媒を以下に示す。なお、( )内は表中での略号を表す。潤滑成分
潤滑油(潤滑油1):タービン100(パラフィン系鉱油、新日本石油社製)
潤滑油(潤滑油2):クリセフ150(ナフテン系鉱油、新日本石油社製)
潤滑油(潤滑油3):シンフルード801(ポリ-α-オレフィン、新日鉄化学社製)
潤滑グリース(グリース2):パイロノックユニバーサルN6C(新日本石油社製)
潤滑グリース(グリース3):Li系グリース NKG708(協同油脂社製)
ウレタンプレポリマー
カプロラクタン系ウレタンプレポリマー1(プレポリマー1):プラクセルEP1130(NCO 3.3%、ダイセル化学工業社製)
エーテル系ウレタンプレポリマー(プレポリマー2):コロネート4090(NCO 4.3%、日本ポリウレタン社製)
エステル系ウレタンプレポリマー(プレポリマー3):コロネート4047(NCO 4.3%、日本ポリウレタン社製)
カプロラクタン系ウレタンプレポリマー(プレポリマー4):タケネートL-1350(NCO 2.3%、三井化学ポリウレタン社製)
エーテル系ウレタンプレポリマー(プレポリマー5):タケネートL-1170(NCO 2.4%、三井化学ポリウレタン社製)
カプロラクタン系ウレタンプレポリマー(プレポリマー6):タケネートL-1680(NCO 3.2%、三井化学ポリウレタン社製)
カプロラクタン系ウレタンプレポリマー(プレポリマー7):サイアナプレン7−QM(NCO 2.3%、三井化学ポリウレタン社製)
エーテル系ウレタンプレポリマー(プレポリマー8):タケネートL-1158(NCO 4.4%、三井化学ポリウレタン社製)
ポリオール
ポリエーテルポリオール(ポリオール1):プレミノールSX4004(旭硝子社製)
硬化剤
MOCA(MOCA):イハラキュアミンMT(イハラケミカル社製)
トリメチレン-ビス-(4-アミノベンゾアート)(CUA−4):CUA-4(イハラケミカル社製)
ビス(メチルチオ)-2,4-トルエンジアミン、ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミンおよびメチルチオトルエンジアミンの混合物(エタキュア300):エタキュア300(アルベマール社製)
トリメチロールプロパン:試薬
イソシアネート化合物(TDI):コロネートT-80(日本ポリウレタン社製)
発泡剤(発泡剤) イオン交換水
整泡剤(整泡剤) SRX298(東レダウ社製)
触媒(触媒1) DM70(東ソー社製)
【0060】
表4〜表6に示す配合割合で、ウレタンプレポリマー、整泡剤、潤滑油、グリースをよく混合し、次に、硬化剤を加えて素早く混合した。なお、硬化剤がMOCAの場合は、混合温度を 80℃として、MOCAは 120℃で溶解して加えた。硬化剤がCUA−4の場合は、混合温度を 100℃として、CUA−4は 140℃で溶解して加えた。硬化剤がエタキュア300およびトリメチロールプロパンの場合は、混合温度を 80℃とした。最後に発泡剤およびアミン触媒を投入し撹拌した後、玉軸受6204の内部空間に充填した後、 120 ℃に設定された恒温槽に 1 時間放置して硬化させ、発泡固形潤滑剤封入軸受を得た。また、上記同様にポリテトラフルオロエチレン製ビーカー内で発泡体の製造を行ない測定用サンプルを得た。
【0061】
なお、実施例18の場合は、ポリエーテルポリオール、整泡剤、潤滑油、アミン系触媒、発泡剤としての水を加え、90 ℃で加熱しよく攪拌した。これにイソシアネートを加えてよく攪拌し、玉軸受6204の内部空間に充填した後、90 ℃に設定した恒温槽で 15 分放置し、発泡固形潤滑剤封入軸受を得た。また、上記同様にポリテトラフルオロエチレン製ビーカー内で発泡体の製造を行ない測定用サンプルを得た。
また、比較例6の場合は、表6に示す成分(組成)のうち、潤滑油を除く組成で実施例1と同じ方法で発泡体を玉軸受6204の内部空間に充填した。潤滑油は後から含浸させ、後含浸型の発泡潤滑剤封入軸受とした。
【0062】
得られた測定用サンプルおよび発泡固形潤滑剤封入玉軸受を用いて、以下の評価をした。結果を表4〜表6に示す。
<発泡倍率>
発泡倍率は、[発泡後体積/発泡前の液体体積]として求めた。
<収縮率>
収縮率は、引っ張り試験に用いるダンベル寸法の収縮から収縮率を求めた。具体的には下記式により求めた。

収縮率(%)=100×成形後ダンベルの収縮長さ(長手方向)/型寸法
=100×(型寸法−成形後寸法)/型寸法

<連続気泡率>
連続気泡率は上述した方法で測定した。
<引張り強さ>
JISK6400に準拠して試験を行なった。ダンベル試験片はポリテトラフルオロエチレン製型を作製し、発泡前原料を流し込んで厚さ5mmの発泡体ダンベルを作製した。
<油分離率>
潤滑剤供給性として油分離率で評価した。試験片を約 1.5 g 程度になるように切り出し測定前重量を精密天秤で計量した。市販の遠心分離機を用いて回転数 850 rpm、回転半径 100mm( 80.3 gf 相当)で 5 時間後の測定後重量を再び精密天秤で計量し、下記の式にて算出した。

油分離率(%)=100×潤滑剤放出量/測定前重量
=100×(測定前重量−測定後重量)/測定前重量

<軸受寿命時間>
得られた試験片について、Fa=Fr=67 N の荷重を負荷し、100℃で 10000 rpmで回転させ、回転軸を駆動している電動機の入力電流が制限電流を超過した時(回転トルクが始動トルクの 2 倍をこえた時)までの寿命時間を測定した。
【0063】
【表4】

【表5】

【表6】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受は、潤滑油を保持する固形潤滑剤の潤滑性能に優れ、長寿命で高速回転でも運転が可能であるので、撚線機、電動機器、印刷機、自動車部品、電装補機、建設機械等の各種産業用機械用の発泡固形潤滑剤封入軸受として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の他の実施例に係るラジアル玉軸受(シール部材なし)への封入例を示す模式図である。
【図2】本発明の他の実施例に係るラジアル玉軸受(シール部材付き)への封入例を示す模式図である。
【図3】本発明の他の実施例に係るスラスト玉軸受(シール部材なし)への封入例を示す模式図である。
【図4】図3にて円筒治具の使用を示す模式図である。
【図5】本発明の一実施例に係る深溝玉軸受の断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1、11 ラジアル玉軸受
2、12、22、32 内輪
3、13、23、33 外輪
4、14、24、34 ボール(転動体)
5 鉄板
6、16、26 発泡固形潤滑剤成分の混合物
7 軸受外径
15、35 シール部材
21 スラスト玉軸受
25 金型
27 円筒治具
28 発泡固形潤滑剤
31 深溝玉軸受
36 保持器
37 発泡固形潤滑剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑成分と、樹脂成分と、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させてなる発泡固形潤滑剤が軸受内部空間に封入された発泡固形潤滑剤封入軸受であって、
前記発泡固形潤滑剤の発泡倍率が 1.1 倍以上 20 倍未満であり、かつ発泡成形収縮率が 5 %以下であることを特徴とする発泡固形潤滑剤封入軸受。
【請求項2】
前記発泡固形潤滑剤は、80.3 gf の力を連続して加え 5 時間経過したときの、油分離率が 1 %以上 15 %以下であることを特徴とする請求項1記載の発泡固形潤滑剤封入軸受。
【請求項3】
前記発泡固形潤滑剤は、日本工業規格K6400に準じて測定される引張強さが 50 kPa 以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発泡固形潤滑剤封入軸受。
【請求項4】
前記発泡固形潤滑剤は、連続気泡率が 50 %以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項記載の発泡固形潤滑剤封入軸受。
【請求項5】
前記潤滑成分は炭化水素系潤滑油および炭化水素系グリースから選ばれた少なくとも1つの潤滑成分であり、
前記樹脂成分は分子内に水酸基を有する液状ゴムであり、該液状ゴムは高分子主鎖が炭化水素から構成され、該主鎖末端に水酸基価が 25 〜 110 mgKOH/g となる量の水酸基を有する液状ゴムであり、
前記硬化剤は分子内にイソシアネート基を有する有機化合物であり、
前記発泡剤が水であり、
前記液状ゴムと前記硬化剤との割合は、前記液状ゴムに含まれる水酸基と前記硬化剤に含まれるイソシアネート基とが当量比で(OH/NCO)=1/( 1.0 〜 2.0 )の範囲であり、
前記混合物は、混合物全体に対して、前記潤滑成分を 40 〜80 重量%、前記液状ゴムを 5 〜45 重量%含むことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載の発泡固形潤滑剤封入軸受。
【請求項6】
前記液状ゴムがブタジエンもしくはイソプレンの重合体の主鎖末端に水酸基を有する数平均分子量 1000〜3500 の水酸基末端ジエン系重合体、または該ジエン系重合体を水添処理した変性水酸基末端ジエン系重合体であることを特徴とする請求項5記載の発泡固形潤滑剤封入軸受。
【請求項7】
前記分子内にイソシアネート基を持つ有機化合物は、分子内に2個以上のイソシアネート基を有し、イソシアネート基の割合が 2.5 〜 5.0 NCO%からなるプレポリマーか、または芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする請求項5または請求項6記載の発泡固形潤滑剤封入軸受。
【請求項8】
前記潤滑成分は潤滑油およびグリースから選ばれた少なくとも1つの潤滑成分であり、
前記樹脂成分は分子内にイソシアネート基を 2 重量%以上 6 重量%未満含有するウレタンプレポリマーであり、
前記発泡剤が水であり、
前記混合物は、混合物全体に対して、前記潤滑成分を 30 〜 70 重量%含み、発泡後の連続気泡率が 50 %以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載の発泡固形潤滑剤封入軸受。
【請求項9】
前記ウレタンプレポリマーは、エステル系ウレタンプレポリマー、カプロラクトン系ウレタンプレポリマー、およびエーテル系ウレタンプレポリマーから選ばれた少なくとも1つのウレタンプレポリマーであることを特徴とする請求項8記載の発泡固形潤滑剤封入軸受。
【請求項10】
前記イソシアネート基と、該イソシアネート基と反応する前記硬化剤の官能基との割合が当量比で(硬化剤の官能基/NCO)=1/(1.1〜2.5)の範囲であることを特徴とする請求項8または請求項9記載の発泡固形潤滑剤封入軸受。
【請求項11】
前記水の水酸基と、前記硬化剤の官能基との割合が当量比で(水の水酸基/硬化剤の官能基)=1/(0.7〜2.0)の範囲であることを特徴とする請求項8、請求項9または請求項10記載の発泡固形潤滑剤封入軸受。
【請求項12】
前記硬化剤が芳香族ポリアミノ化合物であることを特徴とする請求項8ないし請求項11のいずれか一項記載の発泡固形潤滑剤封入軸受。
【請求項13】
潤滑成分と、樹脂成分と、硬化剤と、発泡剤とを含む成分を混合する混合工程と、この混合工程で得られる混合物が発泡硬化する前に軸受内部に封入する工程と、封入後に軸受内部空間にて発泡・硬化させる工程とを備えることを特徴とする請求項5または請求項8記載の発泡固形潤滑剤封入軸受の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−297370(P2008−297370A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142677(P2007−142677)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】