説明

発泡成形体、車両用内装材、車両用タイヤスペーサおよび車両用ラゲージボックス

【課題】成形性、断熱性、耐薬品性、耐衝撃性等に優れ、高温における荷重下での寸法安定性に優れた、発泡成形体、車両用内装材、車両用タイヤスペーサおよび車両用ラゲージボックスを提供することを課題とする。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂100重量部とポリスチレン系樹脂100〜400重量部とを含む発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させ、次いで型内成形することにより得られ、JIS K 7135に準拠した80℃における寸法の変形係数が−7〜0%/時であることを特徴とする発泡成形体により課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体、車両用内装材、車両用タイヤスペーサおよび車両用ラゲージボックスに関する。さらに詳しくは、本発明は、成形性に優れ、高温における荷重下での寸法安定性に優れた、発泡成形体、車両用内装材、車両用タイヤスペーサおよび車両用ラゲージボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させ、次いで型内成形することによって得られる発泡成形体は、その成形性、断熱性、剛性、軽量性、耐水性等に優れるため、建材用断熱材、包装用緩衝材等として幅広く利用されている。
【0003】
しかしながら、車両用内装材、車両用タイヤスペーサ、車両用ラゲージボックス等の用途においては、前記物性に加えて、さらに、高い耐薬品性、耐衝撃性等の物性が発泡成形体に求められ、これらの観点からは、前記発泡成形体は満足のいくものではなかった。
【0004】
そこで、前記問題点に鑑みて、発泡性ポリプロピレン系樹脂粒子を予備発泡させた発泡成形体が特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−29466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発泡成形体は、耐薬品性、耐衝撃性等には優れるものの、成形性、耐熱性等については満足のいくものではなかった。特に、前記車両用の用途では、気温の高い地域、時期において発泡成形体を使用する場合、車内の温度は外気以上に高くなり、発泡成形体はかなりの高温に長時間さらされることとなる。このため、前記用途においては、長時間に亘る熱履歴のために発泡成形体が変形してしまうことがある。この場合、前記変形は、外見上美麗ではなく、さらに、所望の物性に悪影響を与える場合もあり、発泡成形体の性能面でも好ましくはない。
【0007】
従って、前記問題点に鑑みて、成形性、断熱性、耐薬品性、耐衝撃性等に優れ、高温における荷重下での寸法安定性に優れた、発泡成形体、車両用内装材、車両用タイヤスペーサおよび車両用ラゲージボックスを提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かくして本発明によれば、ポリプロピレン系樹脂100重量部とポリスチレン系樹脂100〜400重量部とを含む発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させ、次いで型内成形することにより得られ、JIS K 7135に準拠した80℃における寸法の変形係数が−7〜0%/時であることを特徴とする発泡成形体が提供される。
【0009】
また本発明によれば、前記発泡成形体からなる車両用内装材も提供される。
本発明によれば、前記発泡成形体からなる車両用タイヤスペーサも提供される。
本発明によれば、前記発泡成形体からなる車両用ラゲージボックスも提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発泡成形体は、ポリプロピレン系樹脂100重量部とポリスチレン100〜400重量部とを含む発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させ、次いで型内成形することにより得られ、JIS K 7135に準拠した80℃における寸法の変形係数が−7〜0%/時であるため、成形性、断熱性、耐薬品性、耐衝撃性等に優れ、高温における荷重下での寸法安定性に優れた発泡成形体を得ることができる。
【0011】
本発明においては、発泡成形体が22.2〜100kg/m3の密度を有する場合、所望の倍数の発泡成形体をより容易に得ることができ、発泡成形体により高い剛性を付与することもできる。
【0012】
本発明においては、発泡成形体がFMVSS 302に準拠した80mm/分以下の燃焼速度を有する場合、発泡成形体により高い自己消火性を付与することができる。
【0013】
本発明においては、発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子が発泡性改質ポリスチレン系樹
脂粒子100重量部に対して難燃剤1.5〜6重量部を含む場合、発泡成形体により高い難燃効果を付与することができる。
【0014】
本発明においては、発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子が発泡性改質ポリスチレン系樹
脂粒子100重量部に対してカーボン1〜8重量部を含む場合、発泡成形体の黒度を維持
しつつ、車両用内装材に、より高い耐熱性を付与することができる。
【0015】
本発明においては、成形性、断熱性、耐薬品性、耐衝撃性等に優れ、高温における荷重下での寸法安定性に優れた車両用内装材を得ることができる。
【0016】
本発明においては、成形性、断熱性、耐薬品性、耐衝撃性等に優れ、高温における荷重下での寸法安定性に優れた車両用タイヤスペーサを得ることができる。
【0017】
本発明においては、成形性、断熱性、耐薬品性、耐衝撃性等に優れ、高温における荷重下での寸法安定性に優れた車両用ラゲージボックスを得ることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の発泡成形体は、ポリプロピレン系樹脂100重量部とポリスチレン系樹脂100〜400重量部とを含む発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させ、次いで型内成形することにより得られ、JIS K 7135に準拠した80℃における寸法の変形係数が−7〜0%/時であることを特徴とする。
【0019】
以下に本発明で用いる発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子について説明する。
本発明で用いる発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子は、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを含むため、発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子にポリスチレン系樹脂の有する成形性、断熱性、剛性、軽量性、耐水性等の物性に加えて、ポリプロピレン系樹脂の有する高い耐薬品性、耐衝撃性を導入することができる。また、ポリスチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂との比率を適宜調整することにより、所望の物性を選択して向上させることもできる。
【0020】
本発明において、ポリプロピレン系樹脂とは、二重結合を有するプロピレン系重合性単量体を重合させることにより得られる樹脂をいう。ポリプロピレン系樹脂として、例えば、ポリプロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテンランダム共重合体、ポリプロピレン単独重合体等のポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0021】
本発明においては、より高い耐薬品性、耐衝撃性等の物性を得うる場合があるため、ポリプロピレン系樹脂としてポリプロピレン単独重合体が好ましい。
【0022】
本発明においては、予備発泡工程等に影響を与えない限り前記ポリプロピレン系樹脂を単独で使用しても、2種以上を使用してもよい。
【0023】
また、本発明のポリプロピレン系樹脂は、好ましくは120〜145℃、より好ましくは125〜140℃の融点を有する。前記融点が120℃より低い場合、発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子が所望の耐熱性を得ることができないことがある。また、易揮発性発泡剤の保持能が低下するため、予備発泡を安定に行い得ないことがある。他方、前記融点が145℃より高い場合、発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子が十分に軟化せず、所定の発泡倍数を得ることができないことがある。なお、融点の測定方法等については実施例において詳説する。
【0024】
ポリスチレン系樹脂とは、ポリスチレン単独重合体、スチレン系単量体(例えば、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等)の重合体、またはスチレンを主成分とし、スチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体である。ここでスチレンを主成分とするとは、スチレンが全単量体の70重量%以上を占めることを意味する。他の単量体として、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジメタクリレート等が例示される。例示中、アルキルとは炭素数1〜8のアルキルを意味する。本発明においては、発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子をより安定に予備発泡させ得ることがあるポリスチレン単独重合体が好ましい。
【0025】
ポリスチレン系樹脂は、発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子中に、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して100〜400重量部の範囲で含まれる。また、ポリプロピレン系樹脂粒子100重量部に対するポリスチレン系樹脂の、原料のスチレン系単量体の配合量も、同様にポリスチレン系樹脂と同じ100〜400重量部である。ポリスチレン系樹脂の含有量が400重量部より多いと、予備発泡粒子および発泡成形体の耐熱性が低下し、ブロッキングを起こすことがある。一方、100重量部より少ないと、発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子の表面層からの易揮発性発泡剤の逸散が速くなり所望の発泡性を得ることができず、易揮発性発泡剤の保持性が低下することがある。
【0026】
本発明においては、ポリスチレン系樹脂の含有量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して125〜240重量部が好ましく、140〜190重量部がより好ましい。他方、より高いレベルで所望の物性を得ることができる場合があるため、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との組合せとしてポリプロピレン単独重合体とポリスチレン単独重合体との組合せが好ましい。
【0027】
ポリプロピレン系樹脂およびポリスチレン系樹脂は、予備発泡工程等に影響を与えない限り、それぞれ、ビニル基、カルボニル基、芳香族基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基等の官能基を含んでいてもよく、2以上のビニル基を有する架橋剤等により架橋されていてもよく、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0028】
また、得られる発泡成形体の物性に影響を与えない限り、分枝鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、これら重合体の架橋体等のその他のポリオレフィン系樹脂等を含んでいてもよい。なお、前記例示中、低密度とは0.91〜0.94g/cm3であることが好ましく、0.91〜0.93g/cm3であることがより好ましい。高密度とは0.95〜0.97g/cm3であることが好ましく、0.95〜0.96g/cm3であることがより好ましい。中密度とはこれら低密度と高密度の中間の密度である。
【0029】
発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子は易揮発性発泡剤を含む。易揮発性発泡剤として、公知の種々の揮発性発泡剤を使用することができる。特に、発泡性能付与の観点からブタンを用いることが好ましい。ブタンとして、ノルマルブタンおよびイソブタンが挙げられる。また、プロパン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロペンタン等のその他の炭化水素を少量併用してもよい。易揮発性発泡剤中、ブタンの含量は80重量%以上であることが好ましい。
【0030】
易揮発性発泡剤の含有量は、改質ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは8〜20重量部、より好ましくは10〜17重量部である。易揮発性発泡剤の含有量が8重量部より低いと、発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下することがある。発泡性が低下すると、嵩倍数の高い低嵩密度の予備発泡粒子が得られ難くなると共に、この予備発泡粒子を型内成形して得られる発泡成形体は、合着率が低下し、耐割れ性が低下することがある。一方、20重量部より高いと、成形性の低下や、得られる発泡成形体の圧縮、曲げ等の強度特性の低下が発生することがある。
【0031】
さらに、発泡助剤を用いてもよい。発泡助剤として、例えば、シクロヘキサン、d−リモネン等の溶剤、ジイソブチルアジペート、グリセリン、ジアセチル化モノラウレート、やし油等の可塑剤(高沸点溶剤)が挙げられる。なお、前記の易揮発性発泡剤および発泡助剤は、予備発泡工程等に影響を与えない限り、ビニル基、カルボニル基、芳香族基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基等の官能基を含んでいてもよい。
【0032】
本発明においては、所望の黒度、より高い耐熱性を得ることができるため、発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子は、カーボンを発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、1〜8重量部含むことが好ましい。また、発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子から得られる発泡成形体の燃焼速度を下げ得ることもある。前記含有量が、1重量部より少ない場合、所望の耐熱性、黒度を得ることができないことがある。他方、8重量部より多い場合、所望の嵩倍数の発泡成形体を得ることができないことがある。
【0033】
カーボンとしては、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、黒鉛、炭素繊維等の炭素系化合物を挙げることができ、耐熱性の観点からファーネスブラックが好ましい。発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子に含有されるカーボンは、粒子状であることが好ましく、その平均粒子径は、通常、5nm〜100nmが好ましく、15nm〜35nmがより好ましい。なお、前記平均粒子径は、電子顕微鏡による算術計算により求めることができる。具体的には、カーボンの集合体を構成する小さな球状成分(微結晶による輪郭を有し、分離することができない)を電子顕微鏡で測定、算出することにより求めることができる。また、得られる発泡成形体の物性に影響を与えない限り、前記カーボンを単独で使用しても、2種以上を使用してもよい。
【0034】
本発明においては、高い難燃効果を得うる場合があるため、発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子は、難燃剤を発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、1.5〜6重量部含むことが好ましく、2〜5重量部含むことがより好ましい。1.5重量部より少ない場合、所望の難燃効果を得ることができないことがある。他方、6重量部より多い場合、所望の嵩倍数の発泡成形体を得ることができないことがある。
【0035】
また、難燃剤として、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、ヘキサブロモシクロドデカン、ペンタブロモシクロオクタン、トリブロモフェノール、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル等の自己消火性効果を有する化合物を挙げることができ、より高い自己消火性を得うる場合があるトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートが好ましい。
【0036】
さらに、難燃剤の性能を向上させるために難燃助剤を併用することがより好ましい。難燃助剤としてジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物や2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン等が挙げられる。発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子は、難燃助剤を発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、0.1〜3重量部含むことが好ましく、0.5〜2.5重量部含むことがより好ましい。同様に、含有量が0.1重量部より少ない場合、所望の難燃効果を得ることができないことがある。他方、含有量が3重量部より多い場合、所望の嵩倍数の発泡成形体を得ることができないことがある。
【0037】
なお、得られる発泡成形体の物性に影響を与えない限り、難燃剤、難燃助剤を単独で使用しても、2種以上を使用してもよい。
【0038】
所望の予備発泡粒子を得ることができる限り、予備発泡粒子は添加剤等を含んでいてもよい。添加剤として、具体的には、連鎖移動剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、消泡剤、増粘剤、熱安定剤、レベリング剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0039】
予備発泡時に使用する発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法について以下に説明する。
発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子の製造時に使用する改質ポリスチレン系樹脂粒子の製造には、公知の重合法、即ち、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、シード重合法等を適宜使用することができる。本発明においては、重合時の過度な発熱、圧力上昇を抑制しつつ、より容易かつ安全に改質ポリスチレン系樹脂粒子を製造することができるため、重合法としてシード重合法を用いることが好ましい。
【0040】
特に、シード重合法として、ポリプロピレン系樹脂粒子中にスチレン系単量体を水性媒体中で含浸、重合させることにより改質ポリスチレン系樹脂粒子を製造する含浸重合法が好ましい。前記含浸重合により、発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子の表層におけるポリプロピレン系樹脂の比率がより高くなることがある。この場合、発泡成形体に、より高い耐薬品性、耐衝撃性等を導入することができることがある。
【0041】
次いで、得られた改質ポリスチレン系樹脂粒子に易揮発性発泡剤を含浸させることにより、発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を得ることができる。易揮発性発泡剤の含浸は、易揮発性発泡剤存在下、水性媒体の存在下または非存在下に行うことができる。前記含浸は改質ポリスチレン系樹脂粒子を過剰量の易揮発性発泡剤に接触、浸漬することで、改質ポリスチレン系樹脂粒子に易揮発性発泡剤を含浸させることに対応している。
【0042】
含浸法の例として、
易揮発性発泡剤と改質ポリスチレン系樹脂粒子とを攪拌下に混合させる方法;
改質ポリスチレン系樹脂粒子が保持された容器中に易揮発性発泡剤を循環させる方法;
改質ポリスチレン系樹脂粒子が分散している水性媒体中に発泡剤を注入して改質ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる方法等が挙げられる。
【0043】
発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子の予備発泡方法について以下に説明する。
予備発泡方法は、公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、発泡ポリスチレンビーズ用予備発泡機(笠原工業社製、製品名PSX−40)を用いて、通常の条件で、製造することができる。
【0044】
本発明の予備発泡粒子は、好ましくは嵩密度22.2〜100kg/m3(嵩倍数10〜45倍)、より好ましくは嵩密度33〜50kg/m3(嵩倍数20〜30倍)を有する。嵩密度が22.2kg/m3より低いと、得られる発泡成形体の強度が低下することがある。一方、嵩密度100kg/m3より高いと、得られる発泡成形体の重量が増加することがある。
【0045】
また、予備発泡粒子の平均粒子径は8.4mm以下が好ましく、6.0mm以下がより好ましい。平均粒子径が8.4mmより大きいと、発泡成形機への予備発泡粒子の充填性が低下することがあり、得られる発泡成形体の強度が低下することがある。
【0046】
次いで、得られた予備発泡粒子は、発泡成形機の成形金型内に形成された成形空間に供給され、所望の発泡成形体に型内成形される。前記発泡成形機としては、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子から発泡成形体を製造する際に用いられるEPS成形機等を用いることができる。
【0047】
前記成形金型としては、特に限定されるものではないが、雄型および雌型から構成される金型を用いることができる。このような成形金型は、雄型と雌型とが組み合わされることによって、前記成形空間が形成されるように構成されている。また、成形金型は、成形空間内に高温の水蒸気を噴霧可能に構成されている。具体的には、成形金型は、雄型および雌型の内部に高温の水蒸気を導入可能に構成され、成形空間を形成する雄型および雌型の面から高温の水蒸気を噴霧可能に構成されている。
【0048】
これにより、成形空間に充填された前記予備発泡粒子に高温の水蒸気が噴霧され、予備発泡粒子を水蒸気によって発泡成形することが可能となっている。この際、成形空間に充填された複数の予備発泡粒子は、高温の水蒸気と接触し、膨張すると共に、隣接する予備発泡粒子同士の表面が熱融着し、成形空間の形状に対応した所望の形状の発泡成形体が形成される。
【0049】
本発明においては、ポリプロピレン系樹脂100重量部とポリスチレン系樹脂100〜400重量部とを含む発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させ、次いで型内成形するため、得られた発泡成形体は、JIS K 7135に準拠した、80℃において、−7〜0%/時の、好ましくは−6〜0%/時の、より好ましくは−5〜0%/時の変形係数を有する。このことは、本発明で得られる発泡成形体は、所定の荷重下、80℃のような高温であっても、極めて良好な寸法安定性、即ち成形性、耐熱性を有していることを示している。また、前記変形係数が−7〜0%/時の範囲に含まれない場合、寸法安定性が低下することがある。なお、変形係数の測定法等については実施例において詳説する。
【0050】
また、得られた発泡成形体が、好ましくは22.2〜100kg/m3の、より好ましくは33〜50kg/m3の密度を有する場合、所望の嵩倍数の発泡成形体を得ることができ、その結果より高い断熱性、軽量性、耐水性、発泡成形性等を有する発泡成形体を得ることができる場合がある。
【0051】
さらに、得られた発泡成形体が、FMVSS 302に準拠した、好ましくは80mm/分以下の、より好ましくは0mm/分の燃焼速度を有する場合、高い自己消火性を発泡成形体に導入できることもある。この場合、車両の安全性等の観点から極めて好ましい。
【0052】
本発明で得られる発泡成形体は、前記樹脂組成を有し、かつ、極めて低い変形係数を有するため、成形性等に優れ、高温における荷重下での寸法安定性に優れている。このため、本発明で得られる発泡成形体は、特に、車両用内装材、車両用タイヤスペーサおよび車両用ラゲージボックスとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を挙げてさらに説明するが、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。各種製造条件および評価方法について以下に説明する。
<ポリプロピレン系樹脂の融点>
JIS K 7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」に記載の方法に従ってポリプロピレン系樹脂の融点の測定を行う。具体的には、示差走査熱量計装置DSC220型(セイコー電子工業社製)を用い、測定容器に試料を7mg充填し、窒素ガス流量30ml/分のもと、室温から220℃の間で10℃/分の昇・降スピードにより昇温、降温、昇温を繰り返し、2回目の昇温時のDSC曲線の融解ピーク温度を融点とする。また、融解ピークが2つ以上ある場合は、低い側のピーク温度を融点とする。
【0054】
<予備発泡粒子の嵩密度>
予備発泡粒子の嵩密度を下記の要領で測定する。
まず、予備発泡粒子を500cm3のメスシリンダ内に500cm3の目盛りまで充填する。なお、メスシリンダを水平方向から目視し、予備発泡粒子が一粒でも500cm3の目盛りに達しているものがあれば、その時点で予備発泡粒子のメスシリンダ内への充填を終了する。次に、メスシリンダ内に充填した予備発泡粒子の質量を少数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とする。
次いで、下記の式によって予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
嵩密度(g/cm3)=W/500
【0055】
<予備発泡粒子の嵩発泡倍数>
予備発泡粒子の嵩発泡倍数は次式により算出する。
嵩発泡倍数(倍)=1/嵩密度
【0056】
<発泡成形体の密度>
JIS K7222:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」記載の方法で測定する。
50cm3以上(半硬質および軟質材料の場合は100cm3以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出する。
密度(kg/m3)=試験片質量(kg)/試験片体積(m3
試験片状態調節、測定用試験片は、成形後72時間以上経過した試料から切り取り、23℃±2℃×50%±5%または27℃±2℃×65%±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものである。
【0057】
<発泡成形体の燃焼速度>
発泡成形体の燃焼速度は、米国自動車安全基準FMVSS 302に準拠した方法で測定する。試験片は、倍数30倍、350mm×100mm×12mm(厚さ)とし、少なくとも350mm×100mmの2面には表皮が有るものとする。
【0058】
<発泡成形体の加熱圧縮荷重試験>
JIS K 7135:1999「硬質発泡プラスチック−圧縮クリープの測定方法」に準拠した方法で測定する。試験片サイズは、40×40×40mmとし、雰囲気温度80℃の熱風循環式乾燥機の中、荷重5.5kgをかけた状態で、5時間置いた後に、標準状態の場所に取り出し、その直後に厚みの寸法を測定し、下記式によって変形係数ζ(単位 %/時)を測定する。
S=(L1−L0)/L0×100
ζ=S/t
式中、ζは加熱圧縮荷重試験における変形係数(%/時)、Sは加熱圧縮荷重寸法変化率(%)、L1は加熱圧縮荷重後の厚みの平均寸法(mm)、L0は初めの厚みの平均寸法(mm)、tは加熱時間(時)をそれぞれ表す。
加熱圧縮荷重試験は以下の基準で評価する。
1.ζが−7〜0%/時の場合 :○(合格)
2.ζが−7〜0%/時の範囲に含まれない場合 :×(不合格)
【0059】
<発泡成形体の耐薬品性>
発泡成形体から縦100mm×横100mm×厚み20mmの平面長方形状の板状試験片を3枚切り出し、23℃、湿度50%の条件で24時間放置する。なお、試験片の上面全面が発泡成形体の表面から形成されるように試験片を発泡成形体から切り出す。次に、3枚の試験片の上面毎に別々の薬品(ガソリン、灯油、ジブチルフタレート(DBP))1gを均一に塗布し、23℃、湿度50%の条件で60分放置する。その後、試験片の上面から薬品を拭き取り、試験片の上面を目視観察して下記基準に基づいて判断する。
1.変化が無く、良好。 :○(合格)
2.表面軟化が見られるが使用できる。 :△(合格)
3.表面陥没(収縮)があり、使用できない程悪い。 :×(不合格)
【0060】
実施例1
<ポリプロピレン系樹脂粒子の調製>
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「F−744NP」、融点:140℃)1900gと、ファーネスブラック(三菱化学社製、商品名「#650B」)100gを混合し、この混合物を押出機に供給して溶融混練してストランドカットにより造粒ペレット化することにより、ポリプロピレン系樹脂に、ファーネスブラックを5重量%含有させた球状(卵状)のカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得た。このときのカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を100粒あたり80mg、平均粒子径約1mmに調整した。
【0061】
<第1の重合>
次に、攪拌機付5Lオートクレーブに、前記カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子800gを入れ、水性媒体として純水2kg、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5gを加え、攪拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温して水系懸濁液とした。次に、この懸濁液中にジクミルパーオキサイド0.7gを溶解させたスチレン単量体336gを30分で滴下した。滴下後30分保持し、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。次に、反応系の温度を140℃に昇温して1.5時間保持し、スチレン単量体をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させた。
【0062】
<第2の重合>
次に、第1の重合の反応液を125℃にして、この懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.5gを加えた後、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド3.6gを溶解したスチレン単量体864gを4時間15分かけて滴下し、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合(第2の重合)を行った。この滴下終了後、120℃で1時間保持した後に140℃に昇温し、3時間保持して重合を完結し、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0063】
<易揮発性発泡剤の含浸>
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート(日本化成社製、難燃剤)60gと、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(化薬アクゾ社製、難燃助剤)30gを投入し、投入後、反応系の温度を130℃に昇温し、2時間攪拌を続け、カーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。次に、常温まで冷却し、該樹脂粒子を5Lオートクレーブから取り出した。取り出し後のカーボン含有改質ポリスチレン系樹脂粒子2kgと水2Lを再び攪拌機付5Lオートクレーブに投入し、発泡剤としてブタン300gを攪拌機付5Lオートクレーブに注入した。注入後、70℃に昇温し、4時間攪拌を続けた。その後、常温まで冷却して5Lオートクレーブから取り出し、洗浄し、脱水乾燥した後に発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0064】
<予備発泡>
次に、得られた発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を笠原工業株式会社製PSX40予備発泡機缶内にゲージ圧0.05MPaの圧力の水蒸気を用いて嵩発泡倍数31倍に予備発泡させた予備発泡粒子を得た。
【0065】
<型内成型>
また、得られた予備発泡粒子を1日間室温に放置した後、400mm×300mm×50mmの大きさのキャビティを有する成形型の該キャビティ内に充填し、成形型にゲージ圧0.25MPaの水蒸気を50秒間導入して加熱し、その後、発泡成形体の最高面圧が0.001MPaに低下するまで冷却して、発泡成形体を得た。この成形条件により外観、融着とも良好な発泡成形体を得た。
次いで、得られた発泡成形体を用いて、発泡倍数、燃焼速度等の測定を行った。
【0066】
発泡成形体の発泡倍数、加熱圧縮荷重試験、耐薬品性の評価を表1に示す。
予備発泡粒子の嵩密度および嵩発泡倍数はそれぞれ32.3kg/m3、31倍であった。
発泡成形体の嵩密度は32.3kg/m3であった。
発泡成形体の燃焼速度は0mm/分であった。
【0067】
実施例2
実施例1で得られた予備発泡粒子を用いて、発泡成形体の発泡倍数を変更した以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0068】
発泡成形体の発泡倍数、加熱圧縮荷重試験、耐薬品性の評価を表1に示す。
予備発泡粒子の嵩密度および嵩発泡倍数はそれぞれ28.6kg/cm3、35倍であった。
発泡成形体の嵩密度は28.6kg/m3であった。
発泡成形体の燃焼速度は0mm/分であった。
【0069】
比較例1
ポリプロピレン樹脂粒子発泡体であるダイハツ社製車種タントのツールボックス(品番:58410−B2030)を購入し、発泡成形体を得た。
発泡成形体の発泡倍数、加熱圧縮荷重試験、耐薬品性の評価を表1に示す。
発泡成形体の嵩密度は33.3kg/m3であった。
【0070】
比較例2
ポリスチレン系樹脂のみからなる発泡性樹脂粒子を用いて、発泡成形体の密度33.3kg/m3になるように成形したこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
予備発泡粒子の嵩密度および嵩発泡倍数はそれぞれ33.0kg/cm3、30倍であった。
発泡成形体の嵩密度は33.0kg/m3であった。
【0071】
表1に、実施例および比較例の原料種等を示す。
【0072】
【表1】

【0073】
表1より、実施例1〜2で得られた発泡成形体は、成形性、耐薬品性に優れていることを示している。また、実施例1〜2で得られた発泡成形体は、その変形係数ζが−7〜0%/時であるため、高温における荷重下での寸法安定性が優れていることも示している。
一方、実施例1、2と比較例1を比較すると実施例1、2は比較例1よりも密度が低いにもかかわらず、変形係数は高い値を示している。またポリプロピレン系樹脂を有していない比較例2では耐薬品性を有していない。
従って、本発明の発泡成形体は、成形性に優れ、高温における荷重下での寸法安定性に優れた、車両用内装材、車両用タイヤスペーサおよび車両用ラゲージボックスの用途に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂100重量部とポリスチレン系樹脂100〜400重量部とを含む発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させ、次いで型内成形することにより得られ、JIS K 7135に準拠した80℃における寸法の変形係数が−7〜0%/時であることを特徴とする発泡成形体。
【請求項2】
前記発泡成形体が、22.2〜100kg/m3の密度を有する請求項1に記載の発泡成形体
【請求項3】
前記発泡成形体が、FMVSS 302に準拠した80mm/分以下の燃焼速度を有する請求項1または2に記載の発泡成形体。
【請求項4】
前記発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子が、前記発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子1
00重量部に対して難燃剤1.5〜6重量部を含む請求項1〜3のいずれか1つに記載の
発泡成形体。
【請求項5】
前記発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子が、前記発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子1
00重量部に対してカーボン1〜8重量部を含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の
発泡成形体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つの発泡成形体からなる車両用内装材。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1つの発泡成形体からなる車両用タイヤスペーサ。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1つの発泡成形体からなる車両用ラゲージボックス。

【公開番号】特開2011−208066(P2011−208066A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78777(P2010−78777)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】