説明

発泡成形品の製造方法及び発泡成形品

【課題】薄肉化を図り、軽量化を図ることができ、かつ機械的強度などの物性を高めることができる発泡成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】発泡性熱可塑性樹脂組成物を固定型と可動型との間のキャビティXに供給し、発泡性成形品を形成した後、可動型の一部を後退させて発泡性成形品を発泡させる発泡成形法であって、可動型として、薄肉部成形用可動型2と、厚肉部成形用可動型3とを有する可動型を用い、型閉め状態で薄肉部成形用可動型2と固定型1との対向距離T1に比べ、厚肉部成形用可動型3と固定型1との対向距離T2を大きくして、発泡性成形品11を得た後に、薄肉部成形用可動型2を後退させて発泡し、薄肉部成形用可動型2が対向している部分において内層に発泡部16aを有する発泡成形品16を得る、発泡成形品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形により発泡部及び非発泡部を有する発泡成形品の製造方法及び該発泡成形品に関し、より詳細には、発泡成形品の薄肉化、軽量化及び強度の向上を果たすことが可能な発泡成形品の製造方法及び発泡成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形品の軽量化を果たすために、射出発泡成形法が用いられている。射出発泡成形法で得られた発泡成形品は、発泡体であるため、軽量化を果たすことができる。このような射出発泡成形の一例が、下記の特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている射出発泡成形法では、固定型と金型との間のキャビティに溶融状態の非晶性樹脂を注入する。次に、発泡剤として超臨界流体状態の不活性ガスを含浸させた後、可動型の一部を後退させ、キャビティの容積を目的とする発泡成形体の容積に拡大させ、発泡を行なう。
【0003】
特許文献1では、超臨界流体状態の不活性ガスを非晶性樹脂に含浸させるため、微細な発泡セルが均一に分散された発泡成形体が得られると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−212945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、発泡成形品では、より一層の軽量化が求められている。発泡成形品の軽量化を進めるには、発泡前の樹脂肉厚を薄くすればよい。そのためには、金型のキャビティを薄くしなければならない。キャビティを薄くすると、使用する熱可塑性樹脂の流動性を高めねばならないが、発泡成形品に要求される機能や原料価格などにより、流動性の高い原料を用いることができないことがあった。
【0006】
すなわち、薄いキャビティへの充填性を高めるために、溶融粘度の低い樹脂を用いる方法も考えられる。しかしながら、ポリエチレンテレフタレート(PET)もしくはポリアミドなどのエンジニアリングプラスチックでは、流動性が高い材料のコストが高く、かつ得られた発泡成形品の寸法安定性もしくは耐衝撃性などの物性が要求物性を満たし得ないことがあった。従って、コストや品質のバランスを考慮して、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系材料が用いられることが多い。
【0007】
ところで、ポリオレフィンの溶融粘度を低めるには、a)平均分子量を低める方法、b)分岐構造が少ないポリマーを用いる方法、c)ブロックコポリマーまたはホモポリマーのような規則性の高いポリマーを用いる方法、あるいはd)低分子量の滑剤を配合する方法などが考えられる。もっとも、c)では、成形後に配向が生じ、寸法の異方性が生じたり、耐衝撃性が低下する。d)では、滑剤の配合により、剛性や耐衝撃性が低下したり、滑剤がブリードアウトするおそれがあった。上記のように、材料の工夫だけでは、薄いキャビティの全体に発泡性熱可塑性樹脂組成物を行き渡らせ、かつ十分な強度の発泡成形品を得ることはできなかった。
【0008】
なお、流動性が良好でない熱可塑性樹脂組成物を用いる場合、キャビティへの溶融状態の熱可塑性樹脂組成物の注入口であるゲートの数を増やす方法が考えられる。しかしながら、金型のコストが高くなり、さらにメンテナンスが煩雑となる。
【0009】
また、発泡成形品においては、十分な強度を有することも求められる。しかしながら、発泡成形品の厚みを薄くした場合、機械的強度が低下するおそれがある。特に、軽量化を果たすために、発泡倍率を高めた場合には、発泡倍率が高くなるほど機械的強度が低下する。すなわち、発泡成形品の薄肉化、軽量化及び機械的強度の向上を果たすことは非常に困難であった。
【0010】
なお、機械的強度を補うために、補強材料を発泡性熱可塑性樹脂に配合する方法も考えられるが、再利用性が低下したり、重量が増加したりするという問題があった。すなわち、軽量化を果たすための発泡成形品の利点が補強材料の配合により著しく損なわれることとなる。
【0011】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、薄肉化が可能であり、軽量であり、さらに機械的強度などの物性に優れた発泡成形品を得ることを可能とする発泡成形品の製造方法、並びに該製造方法により得られる発泡成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、発泡性熱可塑性樹脂組成物を、固定型と金型とを有する金型に供給し、表皮層と、内層とを有する発泡性成形品を形成する工程と、前記可動型の一部を後退させて前記発泡性成形品の内層を発泡させる工程とを備える発泡性成形品の製造方法において、前記発泡性成形品が、ゲートから前記発泡性成形品の外周縁に至る厚肉部と前記厚肉部よりも厚みが薄い薄肉部とを有するように、前記可動型を後退させる前の状態において、前記固定型との対向距離が相対的に大きい厚肉成形用可動型と、前記固定型との対向距離が相対的に短い薄肉部成形用可動型とを有する可動型を用い、前記発泡に際し、前記薄肉部成形用可動型を後退させて発泡を行なうことを特徴とする、発泡成形品の製造方法が提供される。
【0013】
従って、前記薄肉部成形用可動型を後退させる前の状態において、厚肉成形用可動型と固定型との対向距離が相対的に大きく、該対向距離が相対的に大きい部分が発泡性成形品の外周縁に相当する部分にまで至っているため、対向距離が相対的に大きい部分を通り発泡性熱可塑性樹脂組成物の溶融物が十分にキャビティ内に行き渡ることとなる。すなわち、発泡成形品全体の薄肉化を図った場合でも、上記発泡前に、厚肉成形用可動型と固定型との間の相対的対向距離が大きい部分を利用して、発泡性熱可塑性樹脂組成物の溶融物をキャビティの外周縁にまで無理なく行き渡らせることができる。
【0014】
本発明に係る発泡成形品の製造方法のある特定の局面では、前記厚肉部が前記発泡性成形品の外周縁を囲む枠状部分をさらに有するように前記厚肉部形成用可動型が構成されている。この場合には、上記枠状部分に相当する部分まで、発泡性熱可塑性樹脂組成物の溶融物を容易にかつ確実に充填することができる。また、得られる発泡成形品が強度に優れた枠状部分を有することとなるため、より一層機械的強度に優れた発泡成形品を得ることができる。
【0015】
本発明に係る発泡成形品の製造方法の他の特定の局面では、前記発泡性成形品が、前記枠状部と前記ゲートとを連結している複数本の連結ブリッジ部をさらに有するように前記厚肉部成形用可動型が構成されている。この場合には、複数本のブリッジ部を通して発泡性熱可塑性樹脂組成物の溶融物をより一層キャビティ内に無理なくかつ確実に行き渡らせることができる。また、上記複数本のブリッジ部により、得られる発泡成形品の機械的強度をより一層高めることができる。
【0016】
本発明に係る発泡成形品は、本発明に従った発泡成形品の製造方法により得られた発泡成形品であって、表皮層と、表皮層で囲まれた内層とを有し、前記表皮層が非発泡部であり、前記内層のうち、前記ゲートに対向していた部分から発泡成形品の外周縁に連なる部分の少なくとも一部非発泡部とされており、内層の前記非発泡部以外の部分が発泡部とされている、発泡成形品である。
【0017】
本発明に係る発泡成形品のある特定の局面では、前記内層の非発泡部が、前記発泡成形品の外周縁を囲む枠状部分を有する。この場合には、発泡成形品が枠状部分を有するため、発泡成形品の機械的強度をより一層高めることができる。
【0018】
本発明に係る発泡成形品のさらに別の特定の局面では、前記内層の非発泡部が、前記枠状部分と前記ゲートに対向していた部分とを連結している複数本のブリッジ部を有する。この場合には、複数本のブリッジ部が設けられているため、発泡成形品の機械的強度をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る発泡成形品の製造方法によれば、可動型が、上記厚肉部成形用可動型及び薄肉部成形用可動型を有するため、発泡前の状態において、厚肉部成形用可動型と固定型との相対的に対向距離が大きい部分を経由して、発泡性熱可塑性樹脂組成物の溶融物がキャビティの外周縁まで容易にかつ無理なく行き渡ることとなる。従って、より一層薄肉の発泡成形品を確実に得ることが可能となり、発泡成形品の薄肉化及び軽量化を進めることができる。さらに、本発明の製造方法により得られた本発明の発泡成形品では、表皮層と、内層のうちの上記厚肉部成形用金型に対向している部分とが非発泡部とされており、内層の残りの部分が発泡部とされているので、軽量化及び機械的強度等の物性の向上を果たすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る発泡成形品の製造方法を説明するための各模式的正面断面図である。
【図2】本発明の一実施形態において用意される可動型のキャビティに対向している面を説明するための模式的部分切欠斜視図である。
【図3】(a)は本発明の一実施形態の発泡成形品の製造方法で金型内で形成される発泡性成形品をゲート側からみた斜視図であり、(b)はゲートとは反対側の面からみた発泡性成形品の斜視図であり、(c)は(b)中のA−A線に沿う断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の発泡成形品の製造方法により得られた発泡成形品を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0022】
図1(a)は、本発明の一実施形態の発泡成形品の製造方法を説明するための模式的正面断面図である。
【0023】
本実施形態の発泡成形品の製造方法では、まず、発泡性熱可塑性樹脂組成物を用意する。発泡性熱可塑性樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂と発泡剤とを含有する適宜の発泡性熱可塑性樹脂組成物を用いることができる。
【0024】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、PPE樹脂、PET樹脂、PBT樹脂などを挙げることができる。
【0025】
また、発泡の実現方法としては熱分解型の化学発泡剤を使用する方法や、二酸化炭素や窒素などのガスを樹脂に含浸しておいて金型内で発泡させる方法がある。好ましくは、発泡性熱可塑性樹脂組成物の形成が容易であり、かつ加熱による金型内での発泡が容易であるため、熱分解型発泡剤が好適に用いられる。
【0026】
上記熱分解型発泡剤としては、重炭酸ナトリウム(重曹)、アゾジカルボンアミド(ADCA)などを挙げることができる。
【0027】
なお、発泡性熱可塑性樹脂組成物には、他の成分が添加されていてもよい。このような他の成分としては、クエン酸、リンゴ酸などのようにカルボキシル基を有する有機酸や、粒径の小さいナノクレイなど、気泡核となりやすい微粒子を挙げることができる。
【0028】
本実施形態の製造方法では、図1(a)に示す金型を用意する。この金型は、固定型1と、薄肉部成形用可動型2及び厚肉部成形用可動型3とを有する。なお、可動型は、薄肉部成形用可動型2及び厚肉部成形用可動型3以外の可動型を含んでいてもよい。
【0029】
上記固定型1は、可動型側に位置する第1の面1aと、第1の面1aと反対側の背面である第2の面1bとを有する。第2の面1bに、溶融状態にある発泡性熱可塑性樹脂を外部から注入するために、注入口1cが形成されている。
【0030】
第1の面1a内には、所定の深さの凹部1dが形成されている。凹部1dは、成形空間としてのキャビティXの一部を形成するものである。凹部1dの中央に、ゲート1eが開口している。ゲート1eは、注入口1cから凹部1dに向かって延ばされており、凹部1dの中央に開口している。ゲート1eを通り、キャビティに発泡性熱可塑性樹脂組成物の溶融物が注入される。
【0031】
凹部1dの平面形状は、目的とする発泡成形品の形状に応じ、矩形とされている。
【0032】
他方、図2は、型閉め状態における可動型の形状を模式的に示す部分切欠斜視図である。型閉め状態では、厚肉部成形用可動型3の下面3aよりも、薄肉部成形用可動型2の下面2aが下方に突出されている。この可動型の形状の理解を容易とするために、図1(a)に示す型閉め状態で成形される発泡性成形品11の形状を先に説明することとする。
【0033】
発泡性成形品11は、図1(a)に示す型閉め状態において、熱可塑性樹脂組成物の溶融物をゲート1eからキャビティに注入することにより形成される。発泡性熱可塑性樹脂組成物の溶融物がキャビティに注入されると、キャビティ内において、固定型1及び可動型である薄肉部成形用可動型2及び厚肉部成形用可動型3の表面に接触して冷却され、表皮層が形成される。それによって、図1(a)に示すキャビティXに相当する形状の発泡性成形品11が形成される。
【0034】
図3(a)は、発泡性成形品11を下方からみた斜視図であり、(b)は上方からみた斜視図であり、(c)は(b)中のA−A線に沿う断面図である。
【0035】
発泡性成形品11は、固定型1の凹部1dに応じ矩形の平面形状を有する。すなわち、全体が略矩形のプレートである。この矩形のプレートにおいて、厚みが相対的に厚い厚肉部と、薄肉部12とが形成されている。この薄肉部12の平面形状は、上記薄肉部成形用可動型2の下面2aの平面形状と略等しくされている。従って、本実施形態では、図2に示すように、下面2aの三角形状の平面形状の底面部分に応じ、4つの三角形の平面形状の薄肉部12が形成されている。
【0036】
他方、図2に示すように、上記薄肉部成形用可動型2の下面2a以外には、上記厚肉部成形用可動型3の下面3aがキャビティ上方に臨むこととなる。図1(a)に示すように、型閉め状態において、薄肉部成形用可動型2の下面2aと固定型1との対向距離T1に比べ、厚肉部成形用可動型3の下面3aと固定型1との対向距離T2が大きくされている。従って、図3(a)〜(c)に示すように、薄肉部12の周囲が、厚肉部とされている平面形状が矩形の発泡性成形品11が得られる。この発泡性成形品11では、ゲート1eが開口している部分から発泡性成形品11の外周縁に連なるように上記厚肉部が形成されている。より詳しくは、厚肉部が、上記ゲート1eが開口している部分に相当する部分から発泡性成形品11の外周縁に連なる複数本のブリッジ部14a〜14dと、複数本のブリッジ部14a〜14dの外側端に連なっており、かつ発泡性成形品の外周縁を取り囲むように設けられている枠状部分13とを有する。
【0037】
上記複数本のブリッジ部14a〜14dは、ゲート1eが開口している部分において集合しており、かつ該部分から放射状に延ばされているが、異なる態様で複数本のブリッジ部が外周縁に至るように設けられていてもよい。いずれにしても、複数本のブリッジ部を形成する場合、複数本のブリッジ部は、均一に分散配置されていることが好ましく、それによって、最終的に得られる発泡性成形品の機械的強度や物性の等方性を高めることができる。
【0038】
なお、上記ブリッジ部14a〜14dは、複数本形成される必要は必ずしもなく、1本のブリッジ部のみが形成されてもよい。
【0039】
上記のように、発泡性成形品11の形状から明らかなように、キャビティX内においては、厚肉部に相当する部分のキャビティの厚みT2は、薄肉部に対向しているキャビティ部分の厚みT1よりも大きくされている。
【0040】
本発明では、上記厚肉部が、ゲート1eが開口している部分からキャビティXの外周縁に至るように設けられていることが必要である。それによって、発泡性熱可塑性樹脂組成物の溶融物は、上記キャビティにおいて、ゲート1eが開口している部分から外周縁に向かって流動するが、厚肉部では、薄肉部に比べ、キャビティの厚みが厚いため、発泡性熱可塑性樹脂組成物の溶融物が外周縁まで確実に行き渡る。従って、発泡成形品の薄型化を図るために、キャビティの厚みを薄くした場合であっても、相対的に肉厚の厚い厚肉部において、発泡溶融状態にある発泡性熱可塑性樹脂組成物が確実にキャビティの外周縁に行き渡るため、薄いキャビティ内に発泡性熱可塑性樹脂組成物を確実に充填することができる。よって、流動性がさほど低くない発泡性熱可塑性樹脂組成物を用いた場合であっても、薄肉の発泡成形品を得ることが可能となる。
【0041】
次に、図1(b)に示すように、薄肉部成形用可動型2を型開き方向に移動させ、下面2aを厚肉部成形用可動型3の下面3aと面一とする。しかる後、加熱により発泡させる。なお、発泡に際しての加熱は、上記薄肉部成形用可動型2を後退させた後に行なってもよく、後退させつつ行なってもよい。
【0042】
薄肉部成形用可動型2の下面が、厚肉部成形用可動型3の下面と面一とされることにより、キャビティX1が形成される。キャビティX1は、最終的に得られる発泡成形品の形状に応じて、厚みが均一な矩形のプレート状の空間とされている。すなわち、厚肉部成形用可動型3の下面3aと固定型1との対向距離T2に相当する厚みの矩形の平面形状のキャビティX1が形成される。
【0043】
このキャビティX1内において、表皮層で囲まれた内層の一部が発泡することとなる。その結果、上記発泡性成形品11内の発泡剤が加熱により発泡し、発泡成形品16を得ることができる。発泡成形品16は、加熱により発泡した発泡部16aを内部に有する。図4に斜視図で示すように、上記発泡成形品16では、内部に発泡部16aが形成されており、発泡部16aが非発泡部16bに囲まれている。発泡部16aは、上記薄肉部成形用可動型2を後退させ発泡させることにより加熱により発泡剤が分解し、形成される部分である。従って、発泡部16aは、上記薄肉部12が位置していた部分において、発泡性成形品の内層の一部に形成されている。他方、発泡性成形品11における相対的に肉厚である厚肉部は非発泡のままとされる。従って、上記ゲート1eに対向している部分14、ブリッジ部14a〜14d及び枠状部分13は非発泡のままである。よって、図4では、これらについては、図3(b)と同じ参照番号を付することとする。
【0044】
成形後に、薄肉部成形用可動型2と厚肉部成形用可動型3とを同時に後退させ、発泡成形品16を取り出せばよい。
【0045】
本実施形態の発泡成形品16では、上記のように、発泡部16aを内部に有するため、軽量化を図ることができる。この場合、発泡部16aの発泡倍率を高めたり、気泡径を大きくしたりすることにより、軽量化をさらに進めることができる。
【0046】
他方、上記非発泡部16bでは、ゲート1eに開口していた部分から発泡成形品16の外周縁に連なるように複数本のブリッジ部14a〜14dが設けられており、かつ枠状部分13もまた非発泡部とされている。従って、得られた発泡成形品16では、機械的強度などの物性も十分に高められる。
【0047】
加えて、発泡成形品16の全体の厚みを薄くしようとした場合、キャビティ内のゲートから離れた外周縁部分まで熱可塑性樹脂組成物の溶融物を確実に充填させることが従来困難であった。しかしながら、本実施形態では、上記のように、ゲート1eが開口している部分から外周縁に延びるように厚肉部成形用可動型が形成されているので、該厚肉部に相当する部分において、発泡性熱可塑性樹脂組成物の溶融物を容易に外周縁側に導くことができるので、発泡成形品16の薄肉化を図った場合においても、欠陥の少ない、かつ薄い発泡成形品16を確実に提供することが可能となる。
【0048】
なお、上記実施形態では、発泡性成形品11において、枠状部分13もまた厚肉部とされていたが、枠状部分13は必ずしも設けられずともよい。もっとも、好ましくは、上記のように、発泡性成形品11の外周縁を取り囲むように枠状部分13を設けることが望ましく、それによって、得られる発泡成形品16の機械的強度をより一層高めることができる。
【0049】
なお、ゲート1eに注入されている熱可塑性樹脂組成物成形部分である突起15は、発泡成形後に適宜の方法により除去されるものである。
【0050】
本実施形態では、厚肉部成形用可動型3において、ゲート1eに対向している厚肉部成形用可動型部分3bと、周囲に位置している厚肉部成形用可動型部分3cとは一体に形成されているが、これらは別体で形成されていてもよい。もっとも、可動型部分3b,3cは一体に形成されていることが好ましく、この場合には、可動型の構造の簡略化を図ることかできる。
【符号の説明】
【0051】
1…固定型
1a…第1の面
1b…第2の面
1c…注入口
1d…凹部
1e…ゲート
2…薄肉部成形用可動型
2a…下面
3…厚肉部成形用可動型
3a…下面
3b…厚肉部成形用可動型部分
3c…厚肉部成形用可動型部分
11…発泡性成形品
12…薄肉部
13…枠状部分
14…部分
14a〜14d…ブリッジ部
15…突起
16…発泡成形品
16a…発泡部
16b…非発泡部
T1…対向距離
T2…対向距離
X1…キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性熱可塑性樹脂組成物を、固定型と金型とを有する金型に供給し、表皮層と、内層とを有する発泡性成形品を形成する工程と、
前記可動型の一部を後退させて前記発泡性成形品の内層を発泡させる工程とを備える発泡性成形品の製造方法において、
前記発泡性成形品が、ゲートから前記発泡性成形品の外周縁に至る厚肉部と前記厚肉部よりも厚みが薄い薄肉部とを有するように、前記可動型を後退させる前の状態において、前記固定型との対向距離が相対的に大きい厚肉成形用可動型と、前記固定型との対向距離が相対的に短い薄肉部成形用可動型とを有する可動型を用い、前記発泡に際し、前記薄肉部成形用可動型を後退させて発泡を行なうことを特徴とする、発泡成形品の製造方法。
【請求項2】
前記厚肉部が前記発泡性成形品の外周縁を囲む枠状部分をさらに有するように前記厚肉部形成用可動型が構成されている、請求項1に記載の発泡成形品の製造方法。
【請求項3】
前記発泡性成形品が前記枠状部と前記ゲートとを連結している複数本の連結ブリッジ部をさらに有するように前記厚肉部成形用可動型が構成されている、請求項2に記載の発泡成形品の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の発泡成形品の製造方法により得られた発泡成形品であって、
表皮層と、表皮層で囲まれた内層とを有し、
前記表皮層が非発泡部であり、前記内層のうち、前記ゲートに対向していた部分から発泡成形品の外周縁に連なる部分の少なくとも一部が非発泡部とされており、内層の前記非発泡部以外の部分が発泡部とされている、発泡成形品。
【請求項5】
前記内層の非発泡部が、前記発泡成形品の外周縁を囲む枠状部分を有する、請求項4に記載の発泡成形品。
【請求項6】
前記内層の非発泡部が、前記枠状部分と前記ゲートに対向していた部分とを連結している複数本のブリッジ部を有する、請求項5に記載の発泡成形品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−25450(P2011−25450A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171268(P2009−171268)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】