説明

発泡複合体及びその製造方法

【課題】
用途に応じて選択された、種々の表皮を有する発泡複合体を製造する方法を提供すること。
【解決手段】
発泡体コアと、発泡体コアを覆う表皮とを有する発泡複合体の製造方法であって、架橋剤を含む架橋性樹脂粉末(1)、熱可塑性樹脂粉末(2)、及び架橋剤及び発泡剤を含むポリオレフィン粒状体(3)を金型内に投入し、金型を回転しながら加熱することを特徴とする発泡複合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡体コアと、発泡体コアを覆う表皮とを有する発泡複合体、及びその製造方法に関するものである。本発明の発泡複合体は、断熱材、浮揚材、クッション材等として使用される。
【背景技術】
【0002】
従来より、内部に発泡体を有し、外部に発泡体を被覆するプラスチックの表皮を有する発泡複合体を製造する方法が幾つか開発されている。その方法として、主に以下の3つの方法が挙げられる。
【0003】
(1)回転成形でプラスチックの中空成形体を作り、その中にウレタン樹脂を注入して発泡させる方法である。この方法では回転成形とウレタン樹脂注入発泡との2工程を要し、2種類の金型を必要とするために製造コストがかさむと同時に、得られる発泡複合体の表皮と発泡体との接着が不十分であり耐久性に問題がある。
【0004】
(2)ブロー成形でプラスチックの中空成形体を作り、その中にポリスチレン等の予備発泡体のビースを入れて蒸気を送り、ビースを発泡させて中空成形体の内部を発泡体で充填させる方法である。この技術も合計3工程を要し、製造コストがかさむと同時に、発泡温度が比較的低いために、やはり表皮と発泡体の接着性に難点がある。
【0005】
(3)ポリオレフィン粉末と、発泡剤と架橋剤を混練してなるポレオレフィンペレットを金型中に投入し、回転成形により、表皮を作ると同時に内部に発泡体を形成させて、表皮と発泡体の接着性に優れた発泡複合体を得る方法である。この方法は工程も1工程であり、なおかつ得られる発泡複合体の表皮と発泡体との接着も強いという特徴をもっている。この方法では、製造中にまずポリオレフィンの粉末が加熱された金型の内面に融着し表皮を形成し、その後にポリオレフィンペレットが加熱されて、架橋が進むとともに発泡して、内部に発泡体を形成するものである(例えば、特許文献1、非特許文献1参照。)。この方法は、工程も簡便であり、得られる発泡複合体は、外部の表皮と内部の発泡体とがともにポリオレフィンであるため完全に接着しており、現状では最も優れた方法であると考えられる。
【0006】
しかしながら、方法(3)においては、表皮の材料によっては、発泡複合体の成形が困難であるという傾向がある。すなわち、内部に発泡体を有さない、内部が空間の表皮のみからなる中空成形体の製造においては、金型にベント孔をあけておけば、金型内部、つまり、表皮内部の圧力が上昇しないために、表皮が形成される過程において、溶融した表皮材料が金型の接合面より流れ出ることは比較的少ない。したがって、表皮材料としてポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ナイロンなどの幾つかの熱可塑性樹脂が使用され、表皮厚の比較的均一な中空成形体を得ることができる。これに対し、金型内部に架橋剤と発泡剤を混練してなるペレットを共存させて、表皮内部を発泡体で充填する場合には、溶融している表皮材料が内部より発泡体で押されるために、表皮材料として溶融と共に急に粘度が低下する熱可塑性樹脂を用いた場合には、表皮材料が金型の接合面より外部に流出してしまう現象が発生する場合がある。この圧力はペレットの発泡、膨張により発生するものであり、金型面にベント孔を明けておいても圧力の上昇を抑えることはできず、表皮には、測定の結果3〜4kg/cmの圧力が掛かることが分かっている。表皮の内部にボイドの無い発泡体を形成するためには、ペレットが発泡した時に、表皮内部の圧力をある程度上昇させることが望ましく、表皮に掛かる圧力を低下させることは困難である。
【0007】
このために、方法(3)を適用する場合には、溶融した表皮が内部から発泡体による圧力を受けても容易に金型の接合面から流出しない材料に限られており、多くの場合には高密度ポリエチレンが使用されている。高密度ポリエチレンは結晶性の高い樹脂であり、溶融した後も急激に粘度が低下することがないために、この目的に適した材料として使用されている訳である。
【特許文献1】国際公開WO03/089219A1号パンフレット
【非特許文献1】椎名直礼、ポリエチレン発泡複合体の同時成形、プラスチックス、2001.07.01、第52巻、第7号、p77−82
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、現状において、最も優れていると考えられる(3)の方法に関する画期的改良法を提供するものである。
すなわち、本発明は、用途に応じて選択された、種々の表皮を有する発泡複合体を製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、用途に応じて選択された、種々の表皮を有する発泡複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者が鋭意検討した結果、表皮材料として、架橋剤を含む架橋性樹脂粉末と熱可塑性樹脂粉末とを混合して用いることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、発泡体コアと、発泡体コアを覆う表皮とを有する発泡複合体の製造方法であって、架橋剤を含む架橋性樹脂粉末(1)、熱可塑性樹脂粉末(2)、及び架橋剤及び発泡剤を含むポリオレフィン粒状体(3)を金型内に投入し、金型を回転しながら加熱することを特徴とする発泡複合体の製造方法に関する。
また、本発明は、架橋性樹脂粉末(1)が、ポリエチレン粉末、エチレン共重合体粉末又はこれらの2種以上を含む混合粉末である上記発泡複合体の製造方法に関する。
また、本発明は、熱可塑性樹脂粉末(2)が、ポリエチレン粉末、ポリプロピレン粉末、エチレン共重合体粉末、ポリアミド粉末、ポリエステル粉末、アクリル樹脂粉末、ポリアセタール樹脂粉末、アイオノマー粉末、熱可塑性エラストマー粉末又はこれらの2種以上を含む混合粉末である上記発泡複合体の製造方法に関する。
また、本発明は、架橋性樹脂粉末(1)の樹脂分が、架橋性樹脂粉末(1)の樹脂分及び熱可塑性樹脂粉末(2)の樹脂分の合計重量の5〜50重量%である上記記載の発泡複合体の製造方法に関する。
また、本発明は、熱可塑性樹脂粉末(2)が添加剤、可塑剤及び/又は充填材を含む上記発泡複合体の製造方法に関する。
また、本発明は、架橋剤の含有量が、架橋性樹脂粉末(1)の全重量に対し、0.1〜5重量%である上記発泡複合体の製造方法に関する。
また、本発明は、架橋剤を含む架橋性樹脂粉末(1)が、表面に架橋剤が付着した架橋性樹脂粉末である上記発泡複合体の製造方法に関する。
また、本発明は、発泡体コアと、発泡体コアを覆う表皮とを有する発泡複合体であって、発泡体コアがポリオレフィン発泡体(iii)を含む発泡体からなり、表皮が架橋樹脂(i)及び熱可塑性樹脂(ii)を含む樹脂からなることを特徴とする発泡複合体に関する。
架橋樹脂(i)が、ポリエチレン、エチレン共重合体又はこれらの2種以上を含む樹脂である上記発泡複合体に関する。
熱可塑性樹脂(ii)が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン共重合体、ポリアミド、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、熱可塑性エラストマー、又はこれらの2種以上を含む混合樹脂である上記発泡複合体に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法において、表皮材料として架橋剤を含む架橋性樹脂粉末(1)を用いることにより、表皮材料が溶融するとともに架橋反応が進みゲル化して、溶融状態の表皮材料に内部から圧力が掛かっても、表皮材料が金型接合面より流出することはない。本発明の製造方法は、表皮材料の全てに架橋剤が均一混練された材料を使用しなくとも、架橋剤を含む架橋性樹脂粉末(1)を表皮材料の一部に使用することにより、表皮材料の金型接合面からの流出を防ぐことを特徴的効果としている。熱可塑性樹脂(2)に架橋剤を含む架橋性樹脂粉末(1)を加えるだけで、用途に応じた発泡複合体を簡便に、経済的に製造する方法である。また、本発明の発泡複合体は、多種類の材料の表皮を有する発泡複合体であり、様々な用途に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の発泡複合体の製造方法は、架橋剤を含む架橋性樹脂粉末(1)、熱可塑性樹脂粉末(2)、及び架橋剤及び発泡剤を含むポリオレフィン粒状体(3)を金型内に投入し、金型を回転しながら加熱することを特徴とする。
【0012】
本発明において、架橋剤を含む架橋性樹脂粉末(1)とは、架橋剤を含む、当該架橋剤により架橋され得る樹脂粉末をいう。ここにいう架橋剤とは、有機過酸化物をいう。
【0013】
有機過酸化物としては、ジクミルペルオキシド、ジt−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ベンゼン、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド等を挙げることができ、本発明においては、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ベンゼンを用いることが好ましい。
【0014】
架橋性樹脂粉末(1)として使用される樹脂としては、ポリエチレン、ポリエチレンの共重合体を挙げることができる。
【0015】
ポリエチレン(PE)としては低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)を、エチレン共重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(E(M)A)、エチレン−アクリレート共重合体(EEA)、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を用いることが好ましい。
【0016】
架橋性樹脂粉末(1)として、2種類以上の粉末を含む混合粉末を用いてもよいし、また、粉末自体が2種類の樹脂を含む混合樹脂からなる粉末であってもよい。
【0017】
架橋性樹脂粉末(1)において、架橋剤の含有量は、好ましくは0.05〜2PHR、より好ましくは0.1〜1PHRである。架橋剤の量が2PHRを超えると、架橋性樹脂のゲル化が進み、架橋性樹脂の「だま」ができるために、表皮表面の荒れが目立つようになる傾向がある。架橋剤の量が0.05PHR未満であると、架橋性樹脂の金型の接合面からの流出を防止する効果が得にくくなる傾向がある。
【0018】
架橋性樹脂粉末(1)の大きさは、粒径が0.01〜2mmであることが好ましく、0.05〜1mmであることがより好ましい。0.01mm未満であると金型内全面に平均に付着しにくくなる傾向があり、2mmを超えるとポリオレフィン粒状体(3)との分離が悪くなる傾向がある。
【0019】
架橋性樹脂粉末(1)は、架橋剤を含んでいればその形態は特に限定されない。架橋剤を含む架橋性樹脂粉末(1)の形態としては、以下のものが例示できる。
【0020】
(A)架橋性樹脂粉末中に、架橋剤が混練された形態(以下、混練法粉末という。)
混練法粉末は、例えば、次の方法により得ることができる。架橋性樹脂と架橋剤とを、120℃前後に加熱した混練機能を持つ押し出し機に投入し、混練しながら小径の小穴を多数もつダイから押し出すとともに、高速カッターで切断し粉末に加工する。勿論、架橋性樹脂と架橋剤とを予めニダーやバンバリーミキサー等で混練した後に、押し出し機に投入して同様の粉末に仕上げることもできる。また、架橋剤を含む架橋性樹脂をペレット状にした後、粉末に加工してもよい。
【0021】
(B)架橋性樹脂粉末の表面に架橋剤を付着させた形態(以下、まぶし法粉末という。)
まぶし法粉末は、架橋性樹脂粉末と粉末状架橋剤とを常温で混合し、撹拌することにより得ることができる。
【0022】
(C)架橋性樹脂粉末の表面に架橋剤を加熱し付着させた形態(以下、まぶし加熱法粉末という。)
まぶし加熱法粉末は、架橋性樹脂粉末と粉末状架橋剤を混合し、攪拌しながら、架橋剤の融点以上に加熱することにより得ることができる。加熱温度は、好ましくは50〜70℃であり、加熱時間は好ましくは10〜60分である。撹拌、加熱には、密閉容器を用いることが好ましい。
【0023】
次に、本発明において、熱可塑性樹脂粉末(2)として、熱可塑性の樹脂の粉末であればいずれのものを用いてもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、エチレン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、スチレンブタジエン樹脂(SB)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、AS樹脂、ABS樹脂、アイオノマー(IO)、ニトリル樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、熱可塑性エラストマー等を用いることができる。ポリエチレン、エチレン共重合体の例としては上述の架橋性樹脂粉末(1)と同様のものを挙げることができる。熱可塑性樹脂粉末(2)は、架橋性樹脂粉末(1)が含む架橋剤によって架橋する樹脂からなる粉末であってもよく、また、架橋性樹脂粉末(1)が含む架橋剤によっては架橋しない樹脂からなる粉末であってもよい。
【0024】
熱可塑性樹脂粉末(2)として、2種類以上の粉末を含む混合粉末を用いてもよいし、また、粉末自体が2種類の樹脂を含む混合樹脂からなる粉末であってもよい。
【0025】
熱可塑性樹脂粉末(2)として、発泡複合体の使用用途に適した特性をもつものを選んで使用することができる。例えば、機械的強度が要求される場合にはポリアミド樹脂などが有用であり、耐候性が要求される用途にはアクリル樹脂などが有用になるであろう。
【0026】
熱可塑性樹脂粉末(2)の大きさは、粒径が0.01〜2mmであることが好ましく、0.05〜1mmであることがより好ましい。0.01mm未満であると金型内面に平均に付着しにくくなる傾向があり、2mmを超えるとポリオレフィン粒状体(3)との分離がされにくくなる傾向がある。
【0027】
本発明において、架橋性樹脂粉末(1)及び熱可塑性樹脂粉末(2)は、添加剤、可塑剤や充填材を含んでいてもよい。添加剤としては、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、抗菌剤、抗黴剤、カップリング剤、離型剤、発泡剤、熱安定剤等を挙げることができる。充填材としては無機化合物の粉末や繊維状無機化合物を練り込んだ粉末を挙げることができる。このように添加剤、可塑剤や充填材の添加により、樹脂の化学特性、機械的強度、難燃性などを向上させることができる。従来、表皮材料として最もよく使用されていた高密度ポリオレフィンには、親和力が劣っているために混合し難い添加剤、可塑剤や充填材があった。これに対し、本発明においては、表皮材料として様々な種類の樹脂を用いることが可能であり、よって、添加剤、可塑剤や充填材としても様々な種類のものが使用できる。その結果、本発明によれば、表皮に、使用用途に合わせた特性を付与することが可能となる。
【0028】
本発明において使用する架橋性樹脂粉末(1)と熱可塑性樹脂粉末(2)との組み合わせについては、発泡複合体の使用目的に応じて選択すればよい。好ましくは、親和性のある樹脂粉末同士、相容性のある樹脂同士を選択する。
【0029】
次に、本発明において使用する架橋剤及び発泡剤を含むポリオレフィン粒状体(3)は、架橋剤と発泡剤とを混練したポリオレフィンを用いて得られた架橋発泡性のペレットである。
【0030】
架橋剤としては、有機過酸化物が用いられ、有機過酸化物としては、上述の架橋性樹脂粉末(1)として例示した有機過酸化物と同様のものを用いることができる。架橋剤は発泡に先立って分解してポリオレフィンを架橋し、粘弾性を改善して発泡体を良好に形成する。本発明においては、架橋剤と共に、1,2−ポリブタジエン、トリアシルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の反応性二重結合を分子内に2個以上有する架橋助剤を用いることもある。
【0031】
発泡剤としては、アゾジカーボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N’−ニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルヒドラジン、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)等が用いられ、本発明においてはアゾジカーボンアミド又はN,N’−ニトロソペンタメチレンテトラミンを用いることが好ましい。
【0032】
ポリオレフィン粒状体(3)として、2種類以上の粒状体を含む混合粒状体を用いてもよいし、また、粒状体自体が2種類の樹脂を含む混合樹脂からなる粒状体であってもよい。
【0033】
ポリオレフィン粒状体(3)において、架橋剤の含有量は、好ましくは0.1〜1.5PHR、より好ましくは0.3〜1PHRである。架橋剤の量が1.5PHRを超えると、ゲル化が速すぎになる傾向がある。架橋剤の量が0.1PHR未満であると、ゲル化が遅すぎる傾向がある。
【0034】
ポリオレフィン粒状体(3)において、発泡剤の含有量は、好ましくは5〜50PHR、より好ましくは10〜30PHRである。発泡剤の量が5PHR以下になると発泡しにくくなる傾向があり、発泡剤の量が50PHR以上であると、微細な発泡になりにくくなる傾向がある。
【0035】
ポリオレフィン粒状体(3)の粒径は、架橋性樹脂粉末(1)及び熱可塑性樹脂粉末(2)の粒径の好ましくは3倍以上、より好ましくは10倍以上である。具体的には、粒径が0.3〜15mmであることが好ましく、1〜10mmであることがより好ましく、3〜8mmであることが最も好ましい。0.3mm未満であると表皮材料の粉末と分離しにくくなる傾向があり、15mmを超えると表皮から発泡体が露出する傾向がある。そして、形状は、球形、ロッド、立方体が好ましく、回転成形中に動きやすい形のものが好ましい。
【0036】
本発明において、架橋性樹脂粉末(1)の樹脂分は、架橋性樹脂粉末(1)の樹脂分及び熱可塑性樹脂粉末(2)の樹脂分の合計重量の、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜35重量%である。架橋性樹脂粉末(1)及び熱可塑性樹脂粉末(2)は、溶融した場合に少なくとも見かけ上相容して、均一に混合する樹脂同士であることが好ましい。架橋性樹脂粉末(1)の混合比はできるだけ少ない方が、熱可塑性樹脂粉末(2)の物性、特性を生かした表皮が得られるため好ましい。
【0037】
架橋性樹脂粉末(1)及び熱可塑性樹脂粉末(2)は、ポリオレフィン粒状体(3)とともに、回転成形金型に入れられて加熱される。架橋性樹脂粉末(1)及び熱可塑性樹脂粉末(2)は、ともに融解して金型内面に表皮を形成する。この時に、架橋性樹脂粉末(1)がゲル化し、融解状態の表皮が発泡層におされても、金型接合部より表皮材料が流出することを防止する効果を奏する。
【0038】
本発明に使用する金型は、熱伝導性の良い鉄、アルミニウム、真鍮等の金属材料の板材または鋳物で作られ、二つ割りか、側壁と前後の蓋よりなるのが普通である。一面に余分なガスを排出するためのベント孔を持つ場合が多い。金型には軸回転と揺動回転が加えられることにより3次元に攪拌される。加熱は熱風、直火等により行われる。金型の温度は170℃〜300℃、好ましくは190〜250℃である。加熱時間は10〜50分である。金型内に投入される架橋性樹脂粉末(1)、熱可塑性樹脂粉末(2)、及びポリオレフィン粒状体(3)の合計体積は、金型の内体積の90%以下であることが、材料の動きがよく、均一な表皮が得られるために好ましい。
【0039】
次に本発明の発泡複合体について説明する。
本発明の発泡複合体は、発泡体コアと、発泡体コアを覆う表皮とを有する発泡複合体であって、発泡体コアがポリオレフィン発泡体(iii)を含む発泡体からなり、表皮が架橋樹脂(i)及び熱可塑性樹脂(ii)を含む樹脂からなることを特徴とする。本発明の発泡複合体は、好ましくは、上述した発泡複合体の製造方法により製造することができる。
【0040】
本発明の発泡複合体の形状は、特に限定されず、立方体状、直方体状、円柱状、円筒状、箱状、板状等、いずれの形状であってもよい。
【0041】
表皮の厚さは特に限定されず発泡複合体の用途によって選択できるが、好ましくは0.5〜10mm、より好ましくは1〜5mmである。
【0042】
表皮を形成する樹脂としては、主に架橋樹脂(i)及び熱可塑性樹脂(ii)からなり、さらに架橋樹脂(i)及び熱可塑性樹脂(ii)以外の樹脂、添加剤、可塑剤、充填材、未反応の架橋剤等を含んでいてもよい。本発明において架橋樹脂(i)とは、架橋構造を有する樹脂をいう。
架橋樹脂(i)及び熱可塑性樹脂(ii)に用いられる樹脂としては、上述の架橋性樹脂粉末(1)及び熱可塑性樹脂粉末(2)における樹脂と同様のものが挙げられる。
【0043】
発泡体コアを形成する発泡体としては、主にポリオレフィン発泡体(iii)からなり、さらにポリオレフィン以外の発泡体、添加剤、可塑剤、充填材、未反応の架橋剤、発泡剤等を含んでいてもよい。
ポリオレフィン発泡体(iii)に用いられるポリオレフィンとしては、上述のポリオレフィン粒状体(3)におけるポリオレフィンと同様のものが挙げられる。
【0044】
本発明において、架橋樹脂(i)が、架橋樹脂(i)及び熱可塑性樹脂(ii)の合計重量の、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜35重量%である。
【0045】
従来、表皮材料とポリオレフィン発泡体の材料が異なる場合には、接着性に劣るために、表皮がポリオレフィン発泡体から剥がれやすくなる場合があったが、本発明の発泡複合体においては、表皮中に架橋樹脂(i)中にポリエチレン又はエチレン共重合体が存在すると、架橋ポリオレフィンよりなる発泡体と架橋樹脂との接着性が増加することで、表皮とポリオレフィン発泡体との密着性を高めることができる。
【実施例】
【0046】
以下に本発明の実施例を示す。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
実施例1
[ポリオレフィン粒状体]
三菱化学(株)製のペレット状の低密度ポリエチレン(ノバテックLF405M)に、架橋剤(ジクミルペルオキシド)0.35PHR、発泡剤(アゾジカーボンアミド)20PHR、架橋助剤(TMPT)0.5PHR、及び発泡助剤(ステアリン酸亜鉛)2gを、常温下で混合し、混練機に投入し、120℃で10分間混練した。その後、約8mm径のロッド状に押し出し、さらに約8mm長に切断してペレット状にした発泡体材料のペレット(3)を作製した。
【0048】
[架橋剤を含む架橋性樹脂粉末]
三井化学(株)製の約0.1mm径の粉末状低密度ポリエチレン(エボリュウ4030P)1000g、及び粉末状架橋剤(1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン)(商品名パーカドックス)5gを常温下で混合し、約7Lのステンレス製密閉容器に移し、60℃に調整された加熱空気循環式高温槽中で容器ごと約8rpmに回転させて45分間攪拌加熱処理し、容器を取り出して大気中で空冷した後、容器の蓋を開けて内容物を取り出した。この操作で表面に架橋剤が付着した粉末状ポリエチレン(まぶし加熱法粉末)(1)が得られた。
【0049】
[熱可塑性樹脂粉末]
ダイセルテグザ(株)製の耐熱グレードポリアミド12粉末(L1640P)(2)を使用した。
【0050】
[発泡複合体の成形]
粉末状ポリアミド(2)43gと、上記で用意された架橋剤を含む樹脂粉末(1)17g(全樹脂分の約28重量%)と、上記で用意された発泡体材料のペレット(3)10.5gを、内面に離型剤を均一に塗布した、内容積100×100×25mmのステンレス製金型中に入れ、ガス抜き用の5mm径のテフロン(登録商標)製の短管が付いた蓋を被せて、蓋の周囲を多数のボルトで固定し、ステンレス製金型を密閉する。
その金型を鞍状の鉄製架台に固定し、架台ごと230℃に調整された内部空気攪拌電気炉内の回転台に固定した。炉の扉を開けて、架台をセットすると外気が入り、炉の温度は約30℃一時的に低下するが、約10分後には230℃になった。
電気炉自体は6rpmの速度で往復揺動させ、内部に固定された架台は10回転ごとに回転方向を逆転しつつ14rpmで回転させた。その状態で35分間回転加熱した。
炉の蓋を開けて架台に固定された金型をはずし、金型の蓋を開けて製品を取り出した。外観は良好で断面の観察をしたところ、均等で平滑な表皮を持ち、発泡倍率約20倍の発泡ポリエチレン層で満たされた発泡複合体が得られた(図1)。
得られた発泡複合体の表皮の特性を測定したところ、デューロメター(D)で測定した硬度は62、引張強度は60MPaであった。
この値は、高密度ポリエチレン皮膜の硬度55、引張強度34MPに比較して、高い性能であり、堅牢な皮膜をもつポリエチレン発泡体が得られた。皮膜から発泡層を引き剥がしても、発泡層がちぎれてしまうほどの密着性を持っていた。
ポリアミド12(L1640)は耐熱グレードの衝撃性にすぐれたナイロンであり、優れた特性を持つ表皮で被覆された発泡複合体が得られた。
【0051】
比較例1
効果の比較のために、架橋剤を含む樹脂粉末(1)を使用せず、表皮材料の樹脂粉末の全てを熱可塑性樹脂粉末L1640P(2)60gにして実施例1と同様の条件にて、回転成形にて同様の操作を行った。成形中に20分経過した頃より金型の蓋の接合部より表皮が一部漏れ出してきたが、35分間回転加熱を継続した。成形後冷却して製品を取り出したところ、金型接合部より表皮材料であるL1640が流れ出して固体化してできた大きなバリが出来ていた。中央部は表皮が欠如して、発泡体が露出した製品がえられた。表皮は隅に押しやられて、コナー部に厚くなっており、成形中に表皮は内部よりの発泡体に押されて、融解した低粘度の表皮材料が流出したものと観察された(図2)。
【0052】
実施例2
[ポリオレフィン粒状体]
実施例1で製造した材料(3)を使用した。
【0053】
[架橋剤を含む架橋性樹脂粉末]
住友精化(株)製の粉末EVA(D5020)1000gに架橋剤(パーカドックス)3gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、表面に架橋剤が付着した粉末状EVA(まぶし加熱法粉末)(1)を得た。
【0054】
[熱可塑性樹脂粉末]
住友精化(株)製のEVA(H4011)500gにシラン表面処理した水酸化アルミ粉600gとシラン表面処理した酸化アンチモン粉50g、DBDE(デカブロム−デイフェニルエーテル)125gを混練機で混練し、細粒に仕上げた(2)。この樹脂は難燃性および耐トラッキング性を有する組成である。
【0055】
[発泡複合体の成形]
熱可塑性粉末(2)90g(樹脂分35g)と、架橋剤を含む樹脂粉末(1)10g(全樹脂分の約22重量%)と、発泡体材料ペレット(3)10.5gを用いた以外は、実施例1と同様な操作の回転成形で、難燃性、耐トラッキング性を有する表皮をも持った発泡複合体を試作した。
得られた発泡複合体は表面状態も良好であり、断面観察から表皮厚もほぼ均一で平滑であった8図3)。
硬度は50であり、引張強度は20MPaであった。
この組成は別途行った難燃性テストではUL難燃性規格のV0相当であった。
【0056】
比較例2
効果の比較のために、架橋剤を含む樹脂粉末(1)を使用せず、表皮材料の樹脂粉末をすべて熱可塑性樹脂細粒(2)100gに置き換えた以外は、実施例2と同様の条件下に回転成形を行った。操作中、金型接合面より、かなりの量の表皮材料が流出していたが、35分間回転加熱を行い、取り出して冷却後金型を明けて試作品を取り出した。
表皮の中心部の欠陥は、操作中に融解した表皮材料の粘度が下がり、表皮内部の発泡層に押されて、隅に流れ、一部が金型接合部より流出したと見られる。バリも大きくなっていた(図4)。
実施例3〜6、比較例3〜6
以下実施例1と同じにして、表皮材料を変化させて試作した結果を表にして示す。
表皮厚みは2mmになるように、表皮材料の量を調整した。硬度はデューロメターDで測定した。
【0057】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0058】
従来の発泡複合体の製造方法においては、表皮材料として成形温度においても急激な粘度低下が見られない特定の樹脂以外を用いる場合には、成形が困難であったが、本発明の製造方法を使用することにより、用途に応じて要求される特性を持つ各種表皮材料の使用が可能になり、発泡複合体の適用範囲を画期的に広げ発展させることができる。
本発明の発泡複合体は、食品の容器、医療用品、乳幼児用品、光学機器の容器、電子部品の容器、収納箱、貯槽、建材、遊具、家具等のあらゆる用途に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1において得られた発泡複合体の外観を示す図面代用写真である。
【図2】比較例1において得られた発泡複合体の外観を示す図面代用写真である。
【図3】実施例2において得られた発泡複合体の外観を示す図面代用写真である。
【図4】比較例2において得られた発泡複合体の外観を示す図面代用写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体コアと、発泡体コアを覆う表皮とを有する発泡複合体の製造方法であって、架橋剤を含む架橋性樹脂粉末(1)、熱可塑性樹脂粉末(2)、及び架橋剤及び発泡剤を含むポリオレフィン粒状体(3)を金型内に投入し、金型を回転しながら加熱することを特徴とする発泡複合体の製造方法。
【請求項2】
架橋性樹脂粉末(1)が、ポリエチレン粉末、エチレン共重合体粉末又はこれらの2種以上を含む混合粉末である請求項1記載の発泡複合体の製造方法。
【請求項3】
熱可塑性樹脂粉末(2)が、ポリエチレン粉末、ポリプロピレン粉末、エチレン共重合体粉末、ポリアミド粉末、ポリエステル粉末、アクリル樹脂粉末、ポリアセタール樹脂粉末、アイオノマー粉末、熱可塑性エラストマー粉末又はこれらの2種以上を含む混合粉末である請求項1又は2記載の発泡複合体の製造方法。
【請求項4】
架橋性樹脂粉末(1)の樹脂分が、架橋性樹脂粉末(1)の樹脂分及び熱可塑性樹脂粉末(2)の樹脂分の合計重量の5〜50重量%である請求項1〜3いずれかに記載の発泡複合体の製造方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂粉末(2)が添加剤、可塑剤及び/又は充填材を含む請求項1〜4いずれかに記載の発泡複合体の製造方法。
【請求項6】
架橋剤の含有量が、0.05〜2PHRである請求項1〜5いずれかに記載の発泡複合体の製造方法。
【請求項7】
架橋剤を含む架橋性樹脂粉末(1)が、表面に架橋剤が付着した架橋性樹脂粉末である請求項1〜6いずれかに記載の発泡複合体の製造方法。
【請求項8】
発泡体コアと、発泡体コアを覆う表皮とを有する発泡複合体であって、発泡体コアがポリオレフィン発泡体(iii)を含む発泡体からなり、表皮が架橋樹脂(i)及び熱可塑性樹脂(ii)を含む樹脂からなることを特徴とする発泡複合体。
【請求項9】
架橋樹脂(i)が、ポリエチレン、エチレン共重合体又はこれらの2種以上を含む樹脂である請求項8記載の発泡複合体。
【請求項10】
熱可塑性樹脂(ii)が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン共重合体、ポリアミド、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、アイオノマー粉末、熱可塑性エラストマー、又はこれらの2種以上を含む混合樹脂である請求項8又は9記載の発泡複合体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−297638(P2006−297638A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119043(P2005−119043)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(597054552)有限会社椎名化成 (4)
【Fターム(参考)】