説明

発電装置

【課題】2次側の低圧蒸気の使用量が変化しても2次側の圧力を一定に保つことができる発電装置を提供する。
【解決手段】発電装置1は、蒸気の膨張を回転力に変換する容積式スチームエキスパンダ5と、容積式スチームエキスパンダ5の回転軸に接続された発電機6と、発電機6の運転周波数を設定するインバータ10と、スチームエキスパンダ5の排気圧力を検出する圧力検出器17と、圧力検出器17の検出した排気圧力の目標値に対する偏差に応じて、インバータ10の設定周波数を変更する制御手段14とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気でタービンを回して発電機を駆動する発電装置が広く用いられている。また、タービンから吐出される低圧の蒸気を2次利用することも、例えば、特許文献1および2に記載されている。
【0003】
タービンを用いた発電装置では、タービンから吐出される低圧蒸気の圧力を制御することが難しく、低圧蒸気の安定した供給が困難であり、低圧蒸気の用途が限られている。
【0004】
そこで、スクリュ膨張機のような容積式スチームエキスパンダの利用の可能性が検討される。容積式スチームエキスパンダは、回転数によらず、給気圧力(1次側圧力)と排気圧力(2次側圧力)との差でトルクが決まり、蒸気流量が回転数に比例するというフラットな特性を有している。
【0005】
容積式スチームエキスパンダを用いたとしても、低圧蒸気を汎用的および効率的に2次利用するためには、低圧蒸気の使用量が変化しても低圧蒸気の圧力が変動しないようにするために、発電装置の排気側にバッファタンクまたは容積の大きなヘッダを設ける必要がある。しかしながら、バッファ容量を無限に大きくすることはできないため、低圧蒸気の使用量が継続的に多くなるとバッファ圧力が低下し、低圧蒸気の使用量が継続的に少なくなるとバッファ圧力が上昇してしまうという問題がある。
【0006】
また、特許文献3には、タービンの回転数を発電機の周波数設定によって制御する技術についての記載がある。
【特許文献1】特開2006−2576号公報
【特許文献2】特開2004−100657号公報
【特許文献3】特開2005−176496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記問題点に鑑みて、本発明は、2次側の低圧蒸気の使用量が変化しても2次側の圧力を一定に保つことができる発電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明による発電装置は、蒸気の膨張を回転力に変換する容積式スチームエキスパンダと、前記容積式スチームエキスパンダの回転軸に接続された発電機と、前記発電機の運転周波数を設定する発電機運転周波数設定手段と、前記容積式スチームエキスパンダの排気圧力を検出する圧力検出器と、前記圧力検出器の検出した排気圧力の目標値に対する偏差に応じて、前記発電機運転周波数設定手段の設定周波数を変更する制御手段とを有するものとする。
【0009】
この構成によれば、低圧蒸気の使用量が増加したときに2次側の圧力が低下するので、2次側の圧力低下を検出して発電機の周波数、つまり、容積式エキスパンダの回転数を上昇させて、容積式エキスパンダの蒸気流量を低圧蒸気の使用量より多くすることによって、2次側の圧力を回復することができる。したがって、前記制御手段は、前記排気圧力が低下すると前記発電機運転周波数設定手段の設定周波数を高く変更するように、前記排気圧力の目標値に対する偏差により、前記発電機運転周波数設定手段の設定周波数に対して負のフィードバックをすればよい。
【0010】
また、本発明の発電装置は、前記容積式スチームエキスパンダが排気した蒸気を2次利用するために、バッファ容量を備える低圧流路を有することが好ましい。
【0011】
また、本発明の発電装置において、前記容積式スチームエキスパンダがスクリュ膨張機であれば、好ましいフラットな出力特性が得られる。
【0012】
また、本発明の発電装置は、前記発電機の発電電力を商用周波数に周波数変換する周波数変換器を有することで、発電電力を一般に使用可能な電力系統に供給することができる。
【0013】
また、本発明の発電装置において、前記発電機運転周波数設定手段で、前記発電機の界磁電流の周波数を変更することで、容積式スチームエキスパンダの回転数を適切に制御できる。
【0014】
また、本発明の発電装置は、前記容積式スチームエキスパンダの給気側に流量調節弁を有し、前記制御手段は、前記発電機の回転数が所定の下限回転数以下であるときには、前記発電機の回転数を前記下限回転数に維持するように前記発電機運転周波数設定手段の設定周波数を制御し、前記排気圧力を前記目標値に維持するように前記流量調整弁の開度を制御してもよい。
【0015】
この構成によれば、回転軸に設けたファンによって冷却する空冷式の発電機において、発電機の回転数が低下しすぎて冷却能力が不足し、オーバーヒートするトラブルを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
容積式スチームエキスパンダの排気圧に応じて、発電機の回転数を制御することで、2次側の低圧蒸気の使用量にかかわらず、2次側の蒸気圧力を一定に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に、本発明の第1実施形態の発電装置1を示す。発電装置1は、電力系統2に連係変圧器3を介して接続されている。
【0018】
発電装置1は、高圧蒸気ヘッダ4から所定圧力Ps(例えば5MPa)の高圧蒸気が供給され、高圧蒸気の膨張を回転力に変換する容積式スチームエキスパンダの一種であるスクリュ膨張機5と、スクリュ膨張機5の回転軸に接続された同期式の発電機6とを有している。
【0019】
発電機6の界磁巻線7には、電力系統2から連係変圧器3を介して供給され、界磁周波数変換器8によって任意の周波数に変換された電流が入力されるようになっている。界磁周波数変換器8は、供給された商用周波数の電流を直流に順変換するコンバータ9と、コンバータ9の出力を半導体によってスイッチングして所望の周波数の交流電流に変換するインバータ10とからなっている。
【0020】
同期式の発電機6の回転子は、界磁巻線7に印加された界磁電流に同期して回転し、界磁電流と同じ周波数の電力を発電する。つまり、発電機6の運転周波数は、インバータ10によって設定される。
【0021】
また、発電機6の出力は、出力周波数変換器11によって商用周波数に変換され、連係変換器3を介して電力系統に導出されるようになっている。出力周波数変換器11も、界磁周波数変換器8と同様に、コンバータ12とインバータ13とで構成されている。インバータ10は、プログラム制御された制御装置(制御手段)14によって出力周波数が設定される。すなわち、本実施形態において、インバータ10と制御装置14とが、主に発電機運転周波数設定手段の役割を担う。
【0022】
スクリュ膨張機5は、高圧蒸気の膨張力を回転力に変換し、低圧の蒸気を排気する。スクリュ膨張機5が排気した蒸気は、バッファタンク15に貯留され、低圧蒸気流路16を介して低圧蒸気を2次利用する需要設備に供給される。スクリュ膨張機5の排気圧力Pdは、圧力検出器17で検出され、電気信号に変換して制御装置14に入力される。
【0023】
制御装置14は、コンソール18から排気圧力Pdの目標圧力Ptが入力され、排気圧力Pdの目標圧力Ptに対する偏差により、インバータ10の設定周波数に対して負のフィードバックをかけるようになっている。例えば、制御装置14は、排気圧力Pdの目標圧力Ptに対する偏差(Pd−Pt)に負の定数を乗じた値と、偏差(Pd−Pt)の積分値に負の定数を乗じた値と、偏差(Pd−Pt)の微分値に負の定数を乗じた値とを、インバータ10の設定周波数に加算するPID制御を行う。
【0024】
ここで、目標圧力Ptは、スクリュ膨張機5との総合効率を考慮して設計された低圧蒸気の需要設備における2次利用に最適な圧力(例えば0.8MPa)に設定される。
【0025】
例えば、低圧蒸気の需要設備における使用蒸気量Quが、スクリュ膨張機5の排気蒸気量Qeより多い場合、バッファタンク15内の蒸気量が徐々に減少し、バッファタンク15の圧力、即ち、スクリュ膨張機5の排気圧力Pdが低下してゆく。すると、制御装置14がインバータ10の設定周波数に負のフィードバックをかけるので、インバータ10の出力周波数が上昇して、発電機6の界磁周波数が上昇する。
【0026】
スクリュ膨張機5の回転数は、発電機6の界磁周波数に比例するので、排気圧力Pdが低下すると、スクリュ膨張機5の回転数が上昇する。すると、スクリュ膨張機5の回転数の上昇に伴い、スクリュ膨張機5の排気蒸気量Qeが増加する。排気蒸気量Qeが需要設備の使用蒸気量をQuより多くなると、バッファタンク15内の蒸気量が増加し、バッファタンク15の圧力、即ち、スクリュ膨張機5の排気圧力Pdを上昇させる。
【0027】
排気圧力Pdが目標圧力Ptより高くなった場合、制御装置14が、インバータ10の設定周波数に負のフィードバックをかけるので、発電機6の界磁周波数が低下してスクリュ膨張機5の排気蒸気量Qeが減少する。
【0028】
このように、発電装置1では、制御装置14が発電機6の界磁周波数制御することで、スクリュ膨張機5の排気圧力Pdを需要設備において最も効率よく使用できる圧力に保つことができる。
【0029】
さらに、図2に、本発明の第2実施形態の発電装置1を示す。本実施形態において、第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略する。本実施形態において、発電機6は、空冷タイプの誘導式発電機が採用されている。また、本実施形態の発電装置1は、発電機6の回転数を検出する回転センサ19と、スクリュ膨張機5の給気側の高圧蒸気の流路を制限する流量調整弁20とが設けられている。
【0030】
本実施形態において、制御装置14には、回転センサ19が検出した発電機6の回転数が入力される。制御装置14は、発電機6の回転数が所定の下限回転数以下になったときは、スクリュ膨張機5の排気圧力Pdにかかわらず、インバータ10の設定周波数を制御して、発電機6の回転数を下限回転数以上に保つようになっている。その場合、制御手段14は、排気圧力Pdを目標値Ptに維持するように、流量調整弁20の開度をPID制御する。
【0031】
発電機6は、回転子の回転軸に設けた冷却ファンによって巻線を冷却しているが、回転数が低下しすぎると冷却が不十分になり、オーバーヒートする危険がある。そこで、発電機6の冷却ファンの特性や、発電機6の耐用温度などを考慮して、予め下限回転数を設定しておくことで、発電機6の冷却不足によるトラブルを防止できる。
【0032】
このように、発電機6の回転数が低下するのは、低圧蒸気の2次使用量Quが極めて少なく、排気圧力Pdが上昇してしまう場合である。そこで、流量調整弁20によって、スクリュ膨張機5の給気流路を制限して蒸気流量を減少させることで、排気流量Qeを低下させるとともに、排気圧力を低下させることで、バッファタンク15の圧力上昇を防止できるようにしている。
【0033】
また、発電機5の回転数が下限回転数に等しい場合、インバータ10の設定周波数を上昇させる制御よりも、流量調整弁20を開放する制御を優先させるようになっている。つまり、発電機5の回転数が下限回転数より高い場合、流量調整弁20は常に全開になる。
【0034】
本実施形態では、回転センサ19を設けて発電機6の回転数を検出しているが、発電機6の回転数は界磁周波数に同期する回転数に近似しているので、インバータ10の設定周波数を発電機6の回転数とみなして制御することで、制御を簡略化してもよい。
【0035】
図3に、本発明の第3実施形態の発電装置1を示す。本実施形態において、第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略する。本実施形態における発電機21には、いわゆる力行運転、回生運転の切り換え可能なモータジェネレータが採用されている。この発電機21には、回転子に永久磁石が埋め込まれ、固定子に巻線を含む永久磁石埋込型のものが望ましい。
【0036】
そして、発電機21には、出力周波数変換器22が接続されている。この出力周波数変換器22は、インバータ23とコンバータ24とによって構成されている。インバータ23とコンバータ24とは、図示しないが、ともに、直列に連結されたダイオードからなる3相のいわゆるハーフブリッジ回路と、そのハーフブリッジ回路に並列に連結されたIGBT等のスイッチング素子とによって構成されている。
【0037】
上述のとおり、発電機21は、力行運転、回生運転の切り換え可能なモータジェネレータである。その発電機21に接続されるインバータ23およびコンバータ24は、直流電力から交流電力を生成する逆変換回路(狭義のインバータ)としての機能、交流電力から直流電力を生成する順変換回路(狭義のコンバータ)としての機能を切り換え可能なものである。すなわち、発電機21が力行運転(モータとして運転)される際には、インバータ23が直流から交流電力を生成する逆変換回路(狭義のインバータ)としての機能を果たし、それと同時にコンバータ24は交流電力から直流電力を生成する順変換回路(狭義のコンバータ)としての機能を果たす。そして、発電機21が回生運転(発電機として運転)される際には、インバータ23とコンバータ24とは互いの機能を逆転する。
【0038】
そして、発電機21は、永久磁石埋込型のものであるので、回転磁界の極と回転子の永久磁石の磁極との吸引および反発に基づくマグネットトルクと、回転磁界の極と回転子の突極との吸引に基づくリラクタンストルクを生じる。このマグネットトルクおよびリラクタンストルク、ひいては全発生トルクはいわゆる電流位相角によって変化する(電流位相角が0°から45°の範囲で正の最大トルクとなり、135°から180°の範囲で負の最大トルクとなる)。本実施形態の発電装置1は、その電流位相角を適宜調整することによって、発電機21の全発生トルクの制御、ひいては発電機21の回転数の制御が可能なように構成されている。具体的には、本実施形態の発電装置1は、上述のインバータ23のスイッチング素子に対して制御装置14からパルス幅変調されたゲート信号を発信して適切なスイッチングを行うことによって、発電機21の全発生トルクの制御、ひいては発電機21の回転数の制御が可能なように構成されている。すなわち、本実施形態では、インバータ23と制御装置14とが主に発電機運転周波数設定手段の役割を担う。
【0039】
なお、本発明は、上述の実施形態に限られるものではない。例えば、本発明の第3実施形態の発電装置1における出力周波数変換器22に換えて、マトリックスコンバータを採用してもよい。交流から直流、直流から再度交流へと変換するコンバータおよびインバータを採用したものと較べ、交流から直接交流へと変換するマトリックスコンバータを採用したものであれば、小型・軽量化、高効率化の面で利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態の発電装置の構成を示す概略図。
【図2】本発明の第2実施形態の発電装置の構成を示す概略図。
【図3】本発明の第3実施形態の発電装置の構成を示す概略図。
【符号の説明】
【0041】
1 発電装置
2 電力系統
4 高圧蒸気ヘッダ
5 スクリュ膨張機(容積式スチームエキスパンダ)
6 発電機
7 界磁巻線
8 界磁周波数変換器
9 コンバータ
10 インバータ
11 出力周波数変換器
12 コンバータ
13 インバータ
14 制御装置(制御手段)
15 バッファタンク
16 低圧蒸気流路
17 圧力検出器
19 回転センサ
20 流量調整弁
21 発電機
22 周波数変換器
23 インバータ
24 コンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気の膨張を回転力に変換する容積式スチームエキスパンダと、
前記容積式スチームエキスパンダの回転軸に接続された発電機と、
前記発電機の運転周波数を設定する発電機運転周波数設定手段と、
前記容積式スチームエキスパンダの排気圧力を検出する圧力検出器と、
前記圧力検出器の検出した排気圧力の目標値に対する偏差に応じて、前記発電機運転周波数設定手段の設定周波数を変更する制御手段とを有することを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記排気圧力の目標値に対する偏差により、前記発電機運転周波数設定手段の設定周波数に対して負のフィードバックをすることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記容積式スチームエキスパンダが排気した蒸気を2次利用するために、バッファ容量を備える低圧流路を有することを特徴とする請求項1または2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記容積式スチームエキスパンダは、スクリュ膨張機であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の発電装置。
【請求項5】
前記発電機の発電電力を商用周波数に周波数変換する周波数変換器を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の発電装置。
【請求項6】
前記発電機運転周波数設定手段は、前記発電機の界磁電流の周波数を変更することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の発電装置。
【請求項7】
前記容積式スチームエキスパンダの給気側に流量調節弁を有し、
前記制御手段は、前記発電機の回転数が所定の下限回転数以下であるときには、前記発電機の回転数を前記下限回転数に維持するように前記発電機運転周波数設定手段の設定周波数を制御し、前記排気圧力を前記目標値に維持するように前記流量調整弁の開度を制御することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−169777(P2008−169777A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4741(P2007−4741)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】