皮膚に関連した症状の広域疑似全身的治療
皮膚に関連した疾病または疾患の治療のための医薬の製造における免疫調整薬剤、免疫賦活薬剤または免疫抑制薬剤の使用であって、薬剤は、所定の形状の複数の孔を有する孔形成された皮膚に対する局所投与用に、孔の所定の形状と薬剤の濃度との組合せが皮膚に関連した疾病または疾患の治療に有効であるように調剤されている。皮膚に関連した疾病または疾患の治療を容易にする方法であって、薬剤が皮膚に関連した疾病または疾患の治療に効果的であるという情報を提供することと、複数の孔を含む孔形成された一定の面積の皮膚へ薬剤を適用するための情報を提供することと、情報によって面積は1cm2以上であると指定され、情報によって、さらに、複数の孔のうちの少なくとも幾つかが所定の形状を有すると指定され、所定の形状は薬剤の全身投与を防止するのに有効である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に関連した疾病または疾患の治療を容易にする方法およびキットに関する。本発明はさらに、皮膚に関連した疾病または疾患の治療のための医薬の製造における薬剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の疾病および症状は、直接的または間接的に皮膚に関連しており、それらの疾病および症状の大半は、外因的な刺激に対する免疫反応に関連するか、あるいは免疫反応によって引き起こされる。免疫反応は、大半の場合、一般に望ましいものである(例えば、感染症を駆除する)が、自己免疫すなわち同種免疫の反応は、通常、有害である(例えば、皮膚移植において)。多くの皮膚疾病および症状の治療は、病原因子または刺激(例えば、負傷または感染症)に応じて、多くの場合、局所的かつ局部的である。しかしながら、様々な他の皮膚疾病および症状はより広範に発現し、領域的因子または刺激(例えば、アレルゲン、放射などへの暴露)の結果であることがあり、一部の場合には、全身的な内在症状(例えば、組織不適合)を有することがある。
【0003】
局所治療は、多くの場合、比較的簡単かつ有効であることが多いが、比較的大きな領域に現れている、すなわち、全身性の要素を有する疾病および症状の治療は、より一層困難である。概念的に、2つの治療選択肢が利用可能である。
【0004】
第1の選択肢では、薬剤が比較的大きな領域に適用される(例えば、局所軟膏の適用による)が、皮膚は分子量が500ダルトンを超える大半の化合物に対し浸透性バリアを示すので、効果は多くの場合望ましくない。薬剤が比較的小さい分子であるときであっても、親水性の薬剤は、通常、有効に送達されない。化学的手法(例えば、リポソームおよび他の親油性キャリアへのカプセル化によるミクロ/ナノベシクル送達や、アゾン、α−ヒドロキシ酸などの浸透強化剤)や、また機械的手法(例えば、テープ剥離による角皮層の部分的除去、皮膚剥離など)を含む幾つかの戦略が、これらの問題のうちの少なくとも幾つかを回避するために開発されている。残念なことに、特に大きな領域が処理される場合、大抵の機械的手法は問題を有するか、または実用的でなく、多くの化学種手法は必ずしも充分に許容されるものでないか、または調剤が困難である。さらに、局所送達される用量は、多くの場合、所望の効果を達成するのに充分なほど高くはなく、望ましくない副作用による全身暴露を生じることも多い。
【0005】
第2の選択肢では、通常、有効な送達を可能とする薬剤は、経口的または非経口的に投与される。しかしながら、そのような投与は、多くの場合、多数の欠点を有する。最も重要なことは、そのように投与された多くの薬剤は、比較的高い速度で代謝、排出またはその両方が行われることである。したがって、皮膚などの部分を薬剤に充分に曝露するのに充分なほど高い血清濃度は、その達成が困難であり、望ましくない、さらには有害でもある効果を生じる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上、当技術においては皮膚に関連する症状を治療する多数の方法が知られているが、それらの全部またはほぼ全部は1つ以上の欠点による被害を伴う。したがって、皮膚関連症状の治療のために皮膚への薬剤送達を改良する、改良された組成物および方法を提供する必要が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、所定の形状を有する複数の微小な孔を形成することによって、望ましくない全身的な影響を誘発させることなく、比較的高濃度で大きな領域の皮膚に対し安全かつ有効に薬剤を適用することが可能であることを見出した。より好適には、孔は、薬剤を表皮まで、より好適には表皮および真皮まで送達することを可能とするチャネルを角皮層に形成するのに充分なだけの深度を有する。
【0008】
最も好適には、この微小孔の大部分は、孔壁が(毛細)血管と交差しないように寸法決定される。したがって、異なる観点から見ると、微小孔壁によって表皮および真皮の組織層まで薬剤を到達させる領域が形成され、全身循環(体循環)における薬剤量が注入に比べ大きく低減されることが特に好適である。さらに微小孔の形状に関して、本発明による微小孔の側壁は、必ずしも真っすぐであることを要しないことが認識される。実際、薬剤送達において重要な少なくとも2つの因子について、微小孔の壁の形状が有意に影響を与えることが特に認識される。まず、総内面積は、孔直径、孔深度またはその両方を増大させることによって、容易に変更可能である。これに加えて、またはこれに代えて、側壁角も直角(角皮層の平均面に対して)でなくてもよく、それによって、総孔内面が増大することにより、薬剤送達の可能な領域が増大する。さらなる増大は、孔の側壁に段を設けることによって達成可能である。第2に、微小孔は時間を通じて治癒/充填されるので、微小孔の形状によって、微小孔壁を通じる薬剤の送達に利用可能な時間が決定される。第3に、微小孔壁が血管に重ならない(またはわずかな程度にしか重ならない)ので、微小孔壁へ適用された薬剤が容易に循環へと移らない。この結果、そのように適用される薬剤は主として表皮および真皮の組織に高い局所濃度で存在し、急速に体循環へ移ることはない。最後に、以下に記載するような孔形成装置を用いて形成した微小孔は、おそらくは光剥離のため、孔寸法が比較的小さいため、またはその両方のため、傷跡を残さない。
【0009】
それほど好適でない態様では、生体組織に孔を形成するために様々な他の技術を用いることが可能であり、本明細書では孔を形成するすべての既知の手法も想定される。例えば、適切な装置は、熱、アーク、高電圧パルスのうちの1つ以上を用いることができる。米国特許第6,148,232号明細書には、例えば、電場を用いることによってマイクロチャネルを形成するための技術が開示されている。この装置も、再現性よく微小孔を形成するように構成された(例えば、本発明によるフィードバック装置を介して個々の微小孔の特性を検出することにより)場合、所定の形状の微小孔を形成するのに適切であり得る。しかしながら、孔を形成するためにレーザビームを用いる微小孔形成装置が特に好適である。
【0010】
レーザ孔形成装置のレーザは、孔形成中、Qスイッチモードで作動されるとともに、レーザ照射によって凝固を生じることなく吹き飛ばす(blow−off)効果を生じるようなパルス幅およびエネルギーを有することが特に好適である。したがって、光剥離、光破断(photodisruption)またはその両方が特に好適である。そのような照射は、通常、組織を蒸発させ、熱的な損傷の生成は無視できる。例えば、適切な範囲の放射束密度は104W/cm2以上、より好適には105W/cm2以上、さらに好適には105W/cm2〜109W/cm2、最も好適には105W/cm2〜1012W/cm2であり、用いられるエネルギー密度は、約0.01J/cm2〜1000J/cm2、より典型的には、0.1J/cm2〜100J/cm2である。この結果、レーザパルス幅/組織曝露時間は、好適には1ms未満、より好適には100μs未満、さらに好適には100μs〜10ns、最も好適には100μs〜0.1psである。そのようなパラメータを達成するためのレーザのサイジングおよび操作は、当技術分野において充分に理解されており、したがって、多くのレーザおよび制御システムが市販されている。この結果、別の観点からみれば、最小の組織損傷と最大の所望の効果との間の平衡を得るように、特に適切な動作パラメータが選択されることが認識される。
【0011】
しかしながら、本発明の少なくとも幾つかの態様では、孔壁Aを、最も典型的には、図16の左の孔2に代表的に示すように孔底部3eを、少なくとも部分的に凝固させることが望ましい場合もある。左の方の孔2は、熱的な損傷を低減するために、まずQスイッチレーザモードを用いて、または短パルスによって、皮膚1に対し垂直に形成した。角皮層1a、表皮層1bおよび真皮層1cを示す。好適には、レーザは同じ孔2へ数回適用されて、孔2の下端部3a、3b、3c、3dが各レーザパルスの適用によって増大する。続いて、形成された孔2の底部3eは、フリーランニングモード(同じレーザをパルス幅100〜1000μsで用いる)のレーザを用いて、または別のレーザを凝固に有効な波長およびフルエンスで用いて凝固させる。したがって、レーザ照射には、光蒸散条件、光破断条件またはその両方の下で動作するスイッチモードのレーザを用いて孔2が形成され、有意により長い期間、1つ以上のレーザパルスが適用されるプロトコールが含まれてもよい。例えば、孔2の底部3e(所望の場合、これに加えて、またはこれに代えて側壁A)は、少なくとも部分的に凝固を達成するために、非Qスイッチまたは短パルスの「フリーランニング」モードで同じレーザもしくは第2のレーザ、または第2の波長の同じレーザもしくは第2の波長の第2のレーザを用いて照射されてもよい。例えば、孔2の底部3eが封止されるという事実のため、表皮層1bへの拡散Bは、例えば、孔2の壁Aを通じてしか達成されない。これによって、真皮層において薬剤が体循環へ送達される速度が減少される。さらに、そのような部分的に封止された孔2によって、水平の(すなわち、皮膚の表面に平行な)薬剤送達が行われるため、少なくとも幾らかの時間、送達の速度が遅らされる。当然のことながら、凝固させた組織が時間を通じて回復されると、薬剤の送達は加速する。当業者には、照射によって凝固を達成するのに適切な時間が容易に決定されるとともに、一般に適切なパルス幅が、約10μs〜約1000μs、より好適には約100μs〜約500μsの範囲にあることが想定される。
【0012】
本発明のさらなる一態様では、凝固した孔壁Aを有しない、図16の右の方に開示するような複数の孔2を形成することが望ましく、再現性のよい形状に孔2を形成することが望ましい。
【0013】
したがって、美容的かつ生理学的に望ましい環境を維持しつつ、同じ領域の微小孔を通じて薬剤の複数回の適用が実現される。本明細書に示す適用では隣接した組織の生存可能性および構造が維持されるので、想定される方法は、大きな領域における薬剤の投与にも適切である。さらには、想定される方法、組成物および装置を用いることによって、(a)全身的に投与された場合に有害効果を生じる、(b)従来の手法を用いて投与されたときには得られない、またはその両方である用量で、患者の皮膚へ薬剤を送達することが可能となることが特に認められる。さらに、孔の形状の制御により薬剤送達の動力学を制御することによって、1人の患者における様々な皮膚の部位や異なる患者間の異なる皮膚のタイプを考慮するように、薬剤送達が個別化され得る。同様に、薬剤送達の動力学を特定の薬剤に対し調整することが可能である(例えば、速やかに作用する薬剤についての遅い送達、不安定な薬剤に対する高速かつ多量の送達など)。特に好適な孔形成装置、代表的な方法および構成は、次の連続番号を有する本出願人らの同時継続中の特許出願においてが提供されている。それらすべてを引用によって本明細書に援用する。
【0014】
例えば、生体膜に孔形成を行って孔を形成するための微小孔形成装置は、同じ出願人のPCT特許出願である、「レーザ微小孔形成装置およびレーザ微小孔形成装置を動作させる方法(Laser microporator and method for operating a laser microporator)」と題する、PCT/EP2006/061639に開示されているレーザ微小孔形成装置のように設計されてよい。
【0015】
生体膜は、例えば、同じ出願人のPCT特許出願である、「浸透面を形成する方法(Method for creating a permeation surface)」と題する、PCT/EP2005/051703に開示されている方法によって孔形成されてよい。
【0016】
生体膜に孔形成を行うための孔形成装置および統合された浸透投与システムは、例えば、同じ出願人のPCT特許出願である、「生体膜に孔形成を行うための孔形成装置および統合された浸透投与システム(Microporator for porating a biological membrane and integrated permeant administering system)」と題する、PCT/EP2005/051702に開示されている微小孔形成装置のように設計されてよい。
【0017】
浸透物を経膜投与するためのシステムおよび浸透物を投与する方法は、例えば、同じ出願人のPCT特許出願である、「浸透物を経膜投与するためのシステムおよび浸透物を投与する方法(A system for transmembrane administration of a permeant and method for administering a permeant)」と題する、PCT/EP2006/050574に開示されているシステムのように設計されてよい。
【0018】
薬剤の投与用の経皮送達システムおよび薬剤を投与するための方法は、例えば、同じ出願人のPCT特許出願である、「経皮送達システムおよび不妊治療のための方法(Transdermal delivery system and method for treating infertility)」と題する、PCT/EP2006/067159に開示されているシステムのように設計されてよい。
【0019】
したがって、本発明の好適な一態様では、発明者らは、一定の面積の領域の孔形成された皮膚が形成される、皮膚に関連した疾病または疾患を処理する方法を想定する。ここで、この領域には複数の孔が含まれる。最も典型的には、この領域の面積は1cm2以上であり、より典型的には10cm2以上であり、さらに典型的には25cm2以上であり、最も典型的には100cm2以上である。孔の数は相当変化してもよく、適切な数には、約10〜100,000の範囲が含まれる。しかしながら、大きな領域が処理される場合には特に、より大きな数も想定される。したがって、cm2あたりの孔の数は、一般に、約1〜10、より典型的には10〜100、または100〜1000の間で変化してよく、まれな場合にはさらに大きな数であってよい。同様に、皮膚における孔のパターンも変化してよいが、一般に等方性の分布が好適である。しかしながら、特に解剖学的、生理学的上またはその両方において望ましい場合、異方性の分布も想定される。例えば、薬剤拡散の比較的遅い領域(例えば、繊維症の組織、厚い真皮など)が、より多い数の孔を有し、他の領域がより少ない数の孔しか有しなくてもよい。同様に、疾病の中心のある領域には孔が集中して存在し、周辺部の孔の数が減少していてもよい。同様に、大きな用量または量の薬剤が必要な領域は、より小さい用量しか必要としない領域におけるのより高い密度で孔を有してもよい。
【0020】
一般に、複数の孔のうちの少なくとも幾つかは、少なくとも部分的に薬剤に応じて異なる所定の形状を有することが好適である。さらに、この所定の形状によって、好適には、孔内面の面積、孔の再閉止までの時間、孔深度(すなわち、薬剤に接触する表皮または真皮の層)のうちの1つ以上が制御される。次いで、孔形成された皮膚の領域に、1回、反復的、または連続的(例えば、閉鎖下)に薬剤が適用される。多数の代替波長が適切であると思われるが、レーザ切除に特に好適な波長は2500nm以上の波長であり、最も好適なのは約2950nmである。
【0021】
想定される皮膚に関連した疾病または疾患は、免疫調整薬剤、免疫賦活薬剤または免疫抑制薬剤による治療に反応を示すものであり、特に好適な免疫調整薬剤、免疫賦活薬剤および免疫抑制薬剤には、インターフェロン、タクロリムス、アレファセプト、シクロスポリンA、ミコフェノレート、ラパマイシン、エベロリムス、グルココルチコイド、インフリキシマブ、アレムツズマブ、エタネルセプト、モフェチル、メトトレキサート、アザチオプリンおよびリバビリンが含まれる。例えば、特に想定される皮膚に関連した疾病または疾患には、皮膚移植拒絶反応、肢(例えば、指、手など)移植拒絶反応、および皮膚の自己免疫疾患が含まれる。したがって、本明細書では用いられる用語「皮膚に関連した疾病または疾患」には、皮膚が疾病に冒される、もしくは疾患を有する、または皮膚が少なくとも仲介の役割に関与するすべての疾病または疾患が含まれる。例えば、手の移植拒絶反応は、真皮および表皮におけるリンパ球および好酸球の浸潤によって仲介されると考えられる。
【0022】
想定される薬剤の投与に関して、総投与量が経口投与または非経口投与において与えられた量より大きいことと、薬剤が孔形成された領域へ変更可能なスケジュールで局所的に投与されることとが一般に好適である。例えば、代表的な治療スケジュールには、少なくとも数日、数週、数ヶ月および数年を通じて日に1回、週に1回、または月に1回など、長い期間を通じて複数回の孔形成を行うことが含まれる。ここで、続く孔形成は、同じ部位、重なる部位、または異なる部位にて実行されてよい。同様に、特定の薬剤に応じて、投与される量は、約1pmol/cm2〜1nmol/cm2、1nmol/cm2〜1μmol/cm2、またはさらには1μmol/cm2〜1mmol/cm2(またはそれより多い)に変化する。所望の場合、薬剤の適用は連続的(閉鎖下または大きな供給量で)、であってもよく、パッチ、スプレー、クリーム、乳液などの形態の1つ以上の適用であってもよい。パッチは、前腕の周囲にテープのように適用可能である(例えば、手移植の後)。強い副作用の場合、パッチを即座に除去することが可能である。
【0023】
したがって、本発明の別の態様では、皮膚に関連した疾病または疾患の治療のための医薬の製造において免疫調整薬剤、免疫賦活薬剤または免疫抑制薬剤を使用することが想定される。この薬剤は、孔形成された皮膚に対する局所性投与のために調剤される。そのような皮膚は、通常、孔の所定の形状と薬剤の濃度との組合せが皮膚に関連した疾病または疾患の治療に有効であるような、所定の形状の複数の孔を有する。例えば、皮膚の真皮層における単核細胞が拒絶反応を治療するための対象とされる場合、適切な薬剤には、少なくとも表皮層に達するが真皮層には達しない深度を有する孔に対するタクロリムスおよびシクロスポリンAが含まれる。所望の濃度に応じて、孔がより大きな直径/深度/角度(孔当たりの送達領域大)を有するように形成されてもよく、より小さな直径/深度/角度(適度な孔当たりの送達領域)を有するように形成されてもよい。さらに、より大きな用量が望ましい場合、孔の数が増大されてもよい。したがって、上述のように、この所定の形状によって、好適には、孔内面、孔の再閉止までの時間、送達深度(および目標組織)のうちの1つ以上が制御される。しかしながら、薬剤送達の動力学にかかわらず、典型的には、局所投与によって薬剤の全身送達が生じない(またはわずかな[例えば、総用量の10%未満、総用量の5%未満、または総用量の2%未満]程度にしか生じない)ような形状を孔が有することが好適である。
【0024】
好適な態様では、関連する薬剤を適切に調剤することと、孔の数および形状を調整することとによって、真皮へのリンパ球浸潤を抑制または完全に阻止するために、用量および濃度の調整された局所免疫抑制化合物を適用することが可能となる。さらに、真皮における免疫抑制剤の濃度は、一定の時間、例えば2週間以上に渡って、走化性またはリンパ球遊出を阻止するのに充分なほど高いことが想到される。ゆえに、同種移植における急性細胞性拒絶反応の主要な機構としての活性化したTリンパ球の浸潤は、全身的な暴露および関連する副作用を回避しつつ抑制される。
【0025】
また、例えば、小さな有機分子、生体分子(例えば、タンパク質、多糖類、不活化されたウイルス粒子)、ミセル、逆ミセル、ナノベシクルもしくはリポソームなどポリマー物質または超分子系などの接合物質を用いて接合体を形成し、関連する薬剤を共同して送達可能であることが想定される。接合体では、関連する薬剤が物理的または化学的に接合物質に結合している。これにより、組織−血管障壁の通過を防止することによって、あるいは表皮層から真皮層への薬剤の拡散を強く低減することによって、体循環への薬剤の送達が防止されるか、強く低減されることが可能である。
【0026】
したがって、想定される薬剤が指示書とまとめられ、皮膚に関連した疾病または疾患の治療に有効な薬剤と、複数の孔を有する孔形成された一定の面積の領域の皮膚へ薬剤を適用する指示書とからなるキットを形成してもよい。この領域の面積は情報によって1cm2以上であると指定され、さらに、この情報によって複数の孔のうちの少なくとも幾つかが、薬剤の全身投与を防止するのに有効である所定の形状を有すると指定される。特に好適な態様では、指示書は、所定の形状を決定する(例えば、随意では肌のタイプに応じて、数、形状、密度など)1つ以上のレーザ孔形成パラメータも含む。
【0027】
この結果、薬剤および医療デバイスの製造者は、薬剤が皮膚に関連した疾病または疾患の治療に効果的であるという情報を提供することによって、皮膚に関連した疾病または疾患の治療を容易にすることができる。最も典型的には、そのような提供には、印刷、表示またはその両方によるフォーマットにより与えられる、そのような薬剤および装置の市場調査に関する情報を規則的に提出することも含まれる。さらには、そのような製造者が、複数の孔を含む一定の面積の孔形成された皮膚(例えば、1cm2以上の領域)へ薬剤を適用するための情報をさらに提供してもよい。ここで、製造者は、通常、薬剤および孔形成装置のうちの1つ以上を製造するか、販売するかまたはその両方である。さらに好適な一態様では、そのような方法には、さらに複数の孔のうちの少なくとも幾つかが所定の形状を有することや、所定の形状は薬剤の全身投与を防止するのに有効であることを指定する情報も含まれる。好適な疾病、薬剤、装置およびさらなる想定に関して、上述と同じ考慮が適用される。
【0028】
さらなる想定される態様では、レーザ孔形成装置は、好適には、レーザビームが皮膚に投射される使い捨てチップを備える。そのようなチップは当技術分野において多数知られており、カップリングに関する周知の構成、材料および手法はすべて、本明細書における使用に適切であると思われる。しかしながら、特に好適な態様では、チップは、チップに接触すると所定の形状へとチップを処理する組織付勢要素も含む。最も典型的には、この所定の形状によって、皮膚全体を通じてビームを操縦するレーザミラーと、治療される皮膚との間の平均距離がほぼ同じであることが保証される。別の観点から見ると、組織付勢要素は、治療される領域全体を通じて治療される皮膚がレーザビームの焦点にあるように、皮膚を変形させる。そのように組織に付勢を与えることによって、既知のパラメータ、一様なパラメータまたはその両方を用いてレーザビームを一貫して適用することが可能となる。本明細書において想定されたチップを製造および使用するために、以下の図面および記載によって、当業者に充分な案内が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】レーザ式微小孔形成装置に適切なチップの代表的な長尺状部分を示す図。
【図2】チップの代表的な表面を示す図。
【図3】代表的なチップの斜視図。
【図4】チップのさらなる一実施形態の長尺状部分を(B−B)に沿って示す図。
【図5】図4のチップ(A−A)に沿った断面図。
【図6】チップのさらなる一実施形態の長尺状部分を(B−B)に沿って示す図。
【図7】図6のチップ(A−A)に沿った断面図。
【図8】チップのさらなる一実施形態の長尺状部分を(B−B)に沿って示す図。
【図9】図8のチップ(A−A)に沿った断面図。
【図10】さらなるチップの長尺状部分の前端部を示す図。
【図11】さらなるチップの組織付勢要素8aの正面図。
【図12】図11の組織付勢要素8aの斜視図。
【図13】さらなるチップの組織付勢要素8aの正面図。
【図14】さらなるチップの組織付勢要素8aの正面図。
【図15】図11の要素の交差を詳細に示す図。
【図16】レーザ孔形成された皮膚の2つの孔の断面を模式的に示す図。
【図17】レーザ孔形成装置を示す図。
【図18】レーザ微小孔形成装置の取り付けられた前腕の断面図。
【図19a】微小孔形成の形状の例の斜視図。
【図19b】微小孔形成の形状の例の斜視図。
【図19c】一列の微小孔を有する皮膚の平面図。
【図19d】一列の微小孔を有する皮膚の平面図。
【図19e】一列の微小孔を有する皮膚の平面図。
【図20】時間を通じた全微小孔の浸透面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、レーザ孔形成装置のレーザハウジング9に接続されたチップ8を示す。この図において、チップは切除部位近くに位置している。レーザ孔形成装置は、スイベル式の偏向ミラー8fを少なくとも一つ備えている。この偏向ミラー8fは、レーザビーム4,4aをさまざまな方向に偏向して皮膚1に照射させる。チップ8は、円筒壁8nと保護ガラス8iとで、容器を形成する。この容器は、切除した組織や、切除による放出物を収集するものである。チップ8の形状は、レーザ孔形成装置のハウジング9に対する着脱がしやすいものであることが好ましい。保護ガラス8iは、レーザビーム4を少なくとも部分的に透過させる媒体であり、ガラス、ポリカーボネートや、レーザビーム4を少なくとも部分的に透過させる他の媒体であってよい。保護ガラス8iの代わりに、fθレンズを配置してもよい。走査ミラー8fと組み合わせてfθレンズを用いる利点として、走査ミラー8fによる偏向の影響を受けずに、レーザビーム4の類似パターンを皮膚1に形成することができる。
【0031】
好ましい一実施形態として、チップ8は、チップ8の開口内に位置する皮膚1の一部を、線1aで示す所定の形状に付勢する(たとえば、ボウル形状をなすように下方に付勢する)組織付勢要素8aを備える。組織付勢要素8aは、レーザビーム4の反射点である、偏向ミラー8fの点Rに曲率中心をもつ凹みを形成することが好ましい。したがって、組織付勢要素8aにより、偏向ミラー8fと皮膚1の表面1aとの間で、レーザビーム4の長さをほぼ等しくすることができる。その結果、非常に再現性よく、一定の形状の孔を皮膚に形成することができる。
【0032】
チップ8は、電気配線8pに電気的に接続される、電気接触要素8o,8qをさらに備えてもよい。電気接触要素8qは、レーザハウジング9の接触要素9aに接続される。この構成により、皮膚に関するさまざまな生理的パラメータ(たとえば、接触要素8o間にある皮膚1のインピーダンス)を計測することができる。最も好ましくは、レーザビーム源を作動させる前にチップ8を皮膚上に適切に配置することが保証されるように、このような接触部をロック機構に用いることもできる。チップ8は、たとえば、皮膚の湿度、温度、またはペーハー(pH)値を計測するセンサをさらに備えていてもよい。レーザビーム4は、適切に取り扱わなければ傷害を起こしてしまうため、チップ8が皮膚上にあるときだけ作動させることが重要である。このため、図2と図3に示すように、使い捨てチッ
プ8は、その使用を一度だけ可能にする安全機構8sを含んでもよい。安全機構8sは、レーザハウジング8l内の接触要素に噛合する二つの接触要素8t、8uと、ヒューズ要素8vとからなる。このヒューズ要素8vは、電流印加後に気化したり、または機械的に故障したりするものであるか、あるいは再プログラム可能な電子デバイス(たとえば、マイクロチップ)である。孔形成後、ヒューズ要素の焼けなどの変化は、安全機構8sに適用される。チップ8を一度だけ使用可能とするように、安全装置8sの状態はレーザ孔形成装置10によって制御される。
【0033】
図4に示すチップ8の組織付勢要素8aは網状になっており、金属、金属合金、高分子、およびそれらの適当な組み合わせなど、多数の物質から作られる。図5に示す断面では、配線は、その間にレーザビーム4が皮膚表面1aを照射できる空間を残すように、互いに離間されている。別の実施形態においては、図6に示すチップ8の組織付勢要素8aは、四つの突出ピン8aからなる。図7に示す断面では、四つの突出ピン8aを互いに離間させ、中心にも空間を設けている。また、図8に示すチップ8の組織付勢要素8aは、一つの突出ピン8aからなる。図9に示す断面では、突出ピン8aと側壁8nとの間に、2つの空間を設けている。
【0034】
図1から図9の一つに示す使い捨てチップ8は、レーザ孔形成装置のハウジングに、取り外し可能に接続されているものとする。レーザビーム4は、組織付勢要素8aを照射するのではなく、皮膚表面1aのみを照射するよう、導入・偏向されることが好ましい。別の好ましい実施形態においては、レーザ孔形成装置は、組織付勢要素8aの形状や配向を検出する検出器を備え、組織付勢要素8a間の空間のみを照射するよう、レーザビーム4を偏向・導入する。このようなデバイスにおいて、付勢要素は、チップを識別する情報を、直接的または間接的に孔形成装置に提供する識別要素(たとえば、バーコード、反射要素、電子回路)を含んでいてもよい。
【0035】
チップ8は、皮膚1を伸張させる要素8wを、一つまたは複数さらに備えていてもよい。要素8wは、たとえば、図10に示すような弾性リングである。チップ8が皮膚1に押し付けられると、弾性リングにより皮膚1が径方向外側に押され、弾性リングで囲まれた領域内の皮膚が伸張する。これにより、皮膚の表面が組織付勢要素8a上にぴったり張られた状態になる。
【0036】
図11と図12は、さらなる組織付勢要素8aの正面図と斜視図をそれぞれ示す。この組織付勢要素8aは部分的に半球形状の網であり、弾性材(たとえば、金属線若しくはプラスティック部材)、または剛体材料(たとえば、金属)からなる。組織付勢要素8aは、金属線8bと、外輪8c(要素8bと同じ材料で作られたものが好ましい)とを含む。金属線8bは外輪8cに接続されている。必要に応じて、外輪8cは、円筒壁8nに取り付けられてもよく、チップ8に一体的に構成されてもよい。
【0037】
図13は、中心に空間を設けた組織付勢要素8aの正面図である。図14は、外輪8c上に配置された二つのセンサ8dを有する、組織付勢要素8aの正面図である(センサ8dは、配線8pにより電気的に接続されていてもよい)。
【0038】
チップ8とハウジング9は、さまざまな種類のコネクタ(たとえば、バネ錠、またはねじ)により、適切に接続されるものとする。好ましい実施形態においては、ハウジング9に対するチップ8の位置を確認してから、レーザ孔形成装置を皮膚に向ける。別の好ましい実施形態において、チップ8は、ハウジング9に対するチップ8の位置を検出する指示部8fを備える。図15に示すように、指示部8fは、要素8bの断面8eに配置された、組織付勢要素8aの反射面であってもよい。指示部8fの配向は、センサ、またはセンサと組み合わせてレーザビーム4で、検出することができる。指示部8fは、反射領域で
あってもよい。さらに好ましい実施形態において、指示部8fは、チップ8が使用されたとき、指示部8fの特性を変更する安全機構8として用いられてもよい。たとえば、指示部8fを形成する微小な反射層を変更または破壊するために、皮膚に孔を形成してからレーザビーム4を指示部8fに照射してもよい。皮膚に孔形成を開始する前に、レーザ孔形成装置のコントローラにより、レーザビーム4若しくは別のセンサで、指示部8fの状態を確認するとともに、指示部8fの特性に応じて、孔形成を許可するようにしてもよい。
【0039】
図17は、Qスイッチ若しくは短パルスのレーザビーム源7と、レーザビーム形成・案内装置17とからなるレーザ微小孔形成装置10を示す。レーザビーム源7は、レーザ活性物質7bを光学的に励起させる光源7cと、一組の反射ミラー7d,7eとを有する。レーザビーム源7は、レーザ結晶7bを含むレーザキャビティ7aを有する。励起部7cにより供給される、好ましくはErおよび任意で追加してPrをドープしたYAGを含むレーザキャビティ7aを有する。励起部7cは、エミッタ・バーまたはエミッタ・バーのスタックのような、シングル・エミッタ・レーザ・ダイオード、または一組のシングル・エミッタ・レーザ・ダイオードのアレイである。レーザビーム源7は、レーザ結晶7bの後方にある高反射ミラー7dと、レーザ結晶7bの前方にある出力結合ミラー7eと、レーザ結晶の後方にある可飽和吸収体7fとを含む光共振器をさらに備える。可飽和吸収体7fは、Qスイッチとして動作する。集束レンズ17aと発散レンズ17bは、出力結合ミラー7eを経た位置にあり、平行の若しくは準平行のレーザビーム4、または集束したレーザビーム4を形成する。微小孔形成装置10は、レンズ17a,17bの代わりに、たとえば、レーザビーム4を皮膚1の表面に集束させる異なる光学手段17a,17bを備えてもよい。発散レンズ17bは、モータ17cにより、図示される方向に移動されてもよい。これにより、レーザビーム4の幅を増減することができ、レーザビーム4の幅やレーザビーム4のエネルギーのフルエンスを変化させることができる。モータ17eにより駆動される可変吸収体17dは、発散レンズ17bを経た位置にあり、レーザビーム4のエネルギーのフルエンスを変化させる。偏向器8fは、x−y駆動部8gにより駆動されるミラーであって、吸収体17dを経た位置にあり、レーザビーム4をさまざまな方向に向け、個々の孔2を皮膚1の異なる場所に形成する。制御装置11は、配線11aにより、レーザビーム源7と、駆動要素17c,17e,8gと、センサと、詳述していないその他の要素とに、接続される。
【0040】
好ましい実施形態において、レーザ孔形成装置10は、フィードバック機構を備えたフィードバックループ13をさらに含む。図17において、フィードバックループ13は、孔2の深度を測定する装置9を含む。好ましくは、レーザビーム9dを生成する光学系を備えた送光器9aと、光学系を備えた受光器9bとを含む。レーザビーム9dの幅は、孔2の直径より小さく、たとえば、5分の1より小さい。このため、レーザビーム9dは孔2の下端に到達する。偏向ミラー8fは、送光器9aからの光を、計測される孔2に向け、反射光9dを受光器9bに戻るよう案内する。さまざまな方法により組み込まれた距離測定装置9により、下端の位置、たとえば、孔2の深度を計測することができる。好ましい実施形態においては、パルスレーザビーム4が孔2に照射される度に、孔2の深度を計測する。これにより、孔2の深度に対する各レーザパルスの効果を制御することができる。フィードバックループ13は、孔2のフィードバック信号の測定が可能となるよう、さまざまな方法で組み込まれる。フィードバックループ13は、たとえば、孔2の下端で反射した光について、スペクトルの変化を検出する分光器14として組み込まれた、送光器9aと受光器9bとを備えてもよい。これにより、たとえば、孔2の実際の下端3a,3b,3c,3dが,角質層1a若しくは表皮1bの一部であるか否かを検出することができる。レーザ孔形成装置10は、孔2の具体的なデータ、特に初期微小孔のデータセットを保持する孔形成記憶部12をさらに備える。レーザ孔形成装置10は、孔形成記憶部12に規定されるように孔2を形成することが望ましい。レーザ孔形成装置10は、さらに、入出力装置15またはインタフェース15を一つ若しくは複数備える。これにより、孔
形成装置10とのデータ交換が可能となり、特に、孔2のパラメータや初期微小孔のデータセットを、孔形成記憶部12に転送可能となる。または、特定の孔2iの実際の深度若しくは全表面積Aiなどのデータを取得可能となる。入出力装置15は、カード読み取り装置、スキャナー、有線インタフェースであってもよく、Bluetooth(登録商標)などの無線接続によるものであってもよい。
【0041】
孔形成装置は、物質や個人などのデータの交換を、手動で行う入出力装置若しくはユーザインタフェース15を、一つまたは複数備えてもよい。ユーザインタフェースは、たとえば、表示装置、ボタン、音声制御装置、または指紋センサを備えてもよい。
【0042】
レーザビーム源7は、さまざまで方法で構築される。レーザビーム源7は、たとえば、250μmなど、固定幅の光4を生成する光学系を備えたレーザダイオードとして、構築されてもよい。
【0043】
レーザビーム源7のパルス繰り返し周波数は、1Hzから1MHzの範囲内であり、好ましくは100Hzから100kHz、より好ましくは500Hzから10kHzである。レーザ孔形成装置10の用途としては、幅0.05mmから0.5mm若しくは1mm、深度5μmから200μmの孔2を、2個から100万個、好ましくは10個から10000個、より好ましくは10個から1000個、生体膜1に生成することができる。ただし、孔2の下端は、表皮1b内にあることが好ましい。必要に応じて、孔形成装置10は、深度が200μmより大きい孔を形成することもできる
レーザ孔形成装置10は、さらにインターロック機構を含む。これにより、レーザパルスは、皮膚1に向けられると照射される。フィードバックループ13は、たとえば、パルスが皮膚1に向けられているか否かを検出するのに用いられる。インターロック機構はさまざまな方法で作製され、それらすべての方法が意図されているものとして、当業者には理解されたい。一実施形態として、図4aを参照して説明する。
【0044】
図17に、円筒形状の孔2を形成する、円形のレーザビーム4を示す。孔2は別の形状であってもよく、たとえば、レーザビーム4は円形ではなく、楕円形、正方形、または長方形であってもよい。孔2は、偏向器8fを適切に移動させて形成してもよく、これにより、さまざまな形状の孔2を形成することができる。
【0045】
図18は、前腕の断面図である。レーザ微小孔形成装置10は、コネクタ10bを含む弾性ベルト10aを使って、前腕に開放可能に取り付けられてもよい。このように取り付けることにより、微小孔形成装置10と、微小孔形成装置10の前部が配置される前腕の領域との間で、相対運動を止めたり、抑えたりすることができる。皮膚に1cm2以上の大きさの孔を形成する場合、孔形成後に弾性ベルト10aを緩めて切除器10を皮膚から外し、弾性ベルト10aを再び締めるとよい。これにより、切除器10で皮膚のより広い領域に孔を形成することができる。つまり、25cm2,100cm2、またはそれ以上の広い部分に孔を形成することができる。切除される皮膚の領域に切除器のチップを繰り返し押し当て、切除器を作動させることにより、切除器10は位置を固定しないでも用いられる。また、切除器10の配置、および皮膚に対する切除器10の位置決め制御を可能にするスキャナーに、切除器10を取り付けてもよい。これにより、皮膚の広い領域に孔を形成するとき、非常に正確に制御することができる。
【0046】
図19aは、皮膚1に設けられた孔2の配列を示す。いずれの孔2も、ほぼ同じ形状と深度を有する。
図19bは、レーザ孔形成装置10を制御する孔形成コントローラ11の支持により形成される、さまざまな形状の孔2aから2fを示す。図19bに示す孔を形成するとき、レーザビーム4は、少なくとも異なる断面をもつ。好ましい実施形態においては、レーザ
孔形成装置10は、連続したパルスレーザビームそれぞれの断面、エネルギー密度またはその両方を変化させる。これにより、さまざまな形状の孔2を形成することができる。
【0047】
図19cは、微小孔の集合体を形成する孔2を規則的に配列した皮膚の平面図である。レーザ孔形成装置10によりすべての孔形成が完了したときの生体膜の微小孔を、「初期微小孔」とよぶ。孔形成記憶部12は、初期微小孔を定義する、初期微小孔のデータセットを保持することが好ましい。初期微小孔のデータセットは、各孔の幅、深度、形状、孔2の総数、生体膜上の孔2の幾何学的配置、孔2間の最小距離、孔形成装置で孔を形成する皮膚上での位置など、適切なパラメータを含む。レーザ孔形成装置10は、初期微小孔のデータセットにより定義されるように、孔2を形成する。たとえば、図19dに示すように、さまざまな形状の孔2を皮膚1に配置することもできる。図19eは、皮膚に設けられた孔の配置として、さらに利点を有するものを示す。孔2の数の密度を増減させ、皮膚のある領域に対する薬剤の供給量を増減させることができる。
【0048】
図20は、時間の経過に応じた総浸透面積Aを示す。レーザ孔形成装置10は、組織1に微小孔2の列を形成することにより、皮膚1などの組織に微小孔を形成することができる。微小孔2では細胞が成長するため、初期の浸透面を形成する微小孔2の総和と、初期浸透面の浸透面積A(t)とが所定時間の経過とともに減少するよう、微小孔2の数と形状を適切に選択する。
【0049】
図20に示す初期微小孔のデータセットは、形状の異なる円筒形の微小孔2を含み、下記の3つのグループからなる。
・直径250μm、深度50μm、時間に応じた浸透面積A1を有する415個の孔を含む第一のグループ
・直径250μm、深度100μm、時間に応じた浸透面積A2を有する270個の孔を含む第二のグループ
・直径250μm、深度150μm、時間に応じた浸透面積A3を有する200個の孔を含む第三のグループ。
【0050】
時間に応じた全浸透面積Aは、三つの浸透面積A1,A2,A3すべての合計である。
初期微小孔であるすべての孔2iは、数分の一秒から数秒若しくは数分といった、非常に短い時間で形成される。細胞の成長のため、初期浸透面を形成する孔2iの総和は、孔形成時間TPから時間の経過とともに減少する。すべての孔2iが閉じる時間TCでは、バリア性が極めて大きくなっている。
【0051】
想定例
[拒絶反応の治療]
1つの非限定的な例では、患者が両手移植後、導入療法のためアレムツズマブ(2×20mg)を受容することが想定される。予防的な免疫抑制には、好適には、タクロリムス、ミコフェノレートモフェチルおよびステロイドの投与が含まれる。典型的には、最初の用量は500mgであり、5mgの維持療法まで急速に漸減される。タクロリムスは、移植後早期には15〜20ng/mlのトラフレベルを達成するように、日に2回、経口で投与され、続いて10ng/mlまで漸減される。
【0052】
次いで、患者は拒絶反応の徴候について監視され、治療を適切に変更される。例えば、第1の拒絶反応エピソードは移植の2ヶ月後に観察される。病変は手の甲側に限定されており、約12〜15cm2の領域に広がっている。従来の治療では、通常、ステロイドの全身的な急速投与とともに、拒絶反応の治療用の免疫抑制維持の増大がなされる。対照的に、発明者らには、孔形成された皮膚への、例えば、タクロリムスやアレムツズマブ(alemtuzmab)の局所適用によって従来の療法が置換または補完されることが想定
される。そのような治療では、薬剤は作用部位へ急速に到達し、したがって有効な経路を示し、有害効果の可能性を有意に減少させることが認識される。そのように投与される薬剤は、1日1回(またはそれ未満)〜数回、用量一定、増量、または減量を含む様々なスケジュールにより、孔形成された皮膚へ適用されることができる。適切な用量に関して、上述と同じ考慮が適用される。
【0053】
[拒絶反応の予防処置]
例えば、手または顔移植後の免疫抑制は、次の通りであり得る。アレムツズマブまたは抗胸腺細胞グロブリンを用いる導入療法に続き、5〜8ng/ml程度の低いトラフレベルを狙ってタクロリムスの単独療法がなされる。加えて、移植部上、全方向に約3〜5cmの距離だけ離して孔形成された皮膚の複数の領域を形成することによって、薬剤摂取用の移植部用皮膚が調製される。続く、孔形成された皮膚の領域への適切な薬剤(例えば、efomycin)の適用は、好適には、真皮におけるリンパ球浸潤を抑制することによって拒絶反応を防止するのに有効である量でなされる。皮膚の局所治療が必要に応じて繰り返される(例えば、最初の6ヶ月は3週毎、続いて第1年の終わりまで6週間隔で適用)。その後、局所治療のレジメンが所定の間隔で継続される。
【0054】
[乾癬の治療]
乾癬の病変は皮膚の小領域へ限定されることもあるが、大きな領域へ広がることもあり、この場合、患者の日常活動を減退させる影響を与えることが多い。全身治療は薬剤の毒性のため制限されているが、最近では、エファリズマブによる治療によって患者の22〜28%の疾病を弱められることが示されている。エファリズマブによる治療の効果が限定されているのは、不適切な濃度、冒された皮膚領域全体への配分またはその両方によるものである可能性が大きい。したがって、発明者らには、エファリズマブまたはそれに匹敵するリンパ球遊出抑制剤の局所適用前に、冒された皮膚領域全体を孔形成された領域の形成によって処理することで、そのような治療手法の効果が有意に改良されることが想定される。
【0055】
次の一覧は、例として、特に皮膚に関連した症状の広域治療用にレーザ孔形成装置と組み合わせて用いられるのに適切な薬剤の一覧を開示するものである。
【0056】
【表1】
【0057】
本明細書に記載のチップ8はレーザ孔形成装置と組み合わせて用いられるように構成されていることが、特に認識される。したがって、そのようなチップは皮膚に関連する症状の治療のためにしか用いられずともよく、微小孔の形成、特に所定の孔形状を有する微小孔の形成や、薬剤送達の動力学が必要な用途において、独立に用いられてもよいことが認識される。例えば、想定される代替の使用には、浸透物および薬剤の全身的な経皮投与(多量の薬剤の投与など)用や、1cm2以下の領域による経皮投与用の孔を形成するためのチップの用途が含まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に関連した疾病または疾患の治療を容易にする方法およびキットに関する。本発明はさらに、皮膚に関連した疾病または疾患の治療のための医薬の製造における薬剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の疾病および症状は、直接的または間接的に皮膚に関連しており、それらの疾病および症状の大半は、外因的な刺激に対する免疫反応に関連するか、あるいは免疫反応によって引き起こされる。免疫反応は、大半の場合、一般に望ましいものである(例えば、感染症を駆除する)が、自己免疫すなわち同種免疫の反応は、通常、有害である(例えば、皮膚移植において)。多くの皮膚疾病および症状の治療は、病原因子または刺激(例えば、負傷または感染症)に応じて、多くの場合、局所的かつ局部的である。しかしながら、様々な他の皮膚疾病および症状はより広範に発現し、領域的因子または刺激(例えば、アレルゲン、放射などへの暴露)の結果であることがあり、一部の場合には、全身的な内在症状(例えば、組織不適合)を有することがある。
【0003】
局所治療は、多くの場合、比較的簡単かつ有効であることが多いが、比較的大きな領域に現れている、すなわち、全身性の要素を有する疾病および症状の治療は、より一層困難である。概念的に、2つの治療選択肢が利用可能である。
【0004】
第1の選択肢では、薬剤が比較的大きな領域に適用される(例えば、局所軟膏の適用による)が、皮膚は分子量が500ダルトンを超える大半の化合物に対し浸透性バリアを示すので、効果は多くの場合望ましくない。薬剤が比較的小さい分子であるときであっても、親水性の薬剤は、通常、有効に送達されない。化学的手法(例えば、リポソームおよび他の親油性キャリアへのカプセル化によるミクロ/ナノベシクル送達や、アゾン、α−ヒドロキシ酸などの浸透強化剤)や、また機械的手法(例えば、テープ剥離による角皮層の部分的除去、皮膚剥離など)を含む幾つかの戦略が、これらの問題のうちの少なくとも幾つかを回避するために開発されている。残念なことに、特に大きな領域が処理される場合、大抵の機械的手法は問題を有するか、または実用的でなく、多くの化学種手法は必ずしも充分に許容されるものでないか、または調剤が困難である。さらに、局所送達される用量は、多くの場合、所望の効果を達成するのに充分なほど高くはなく、望ましくない副作用による全身暴露を生じることも多い。
【0005】
第2の選択肢では、通常、有効な送達を可能とする薬剤は、経口的または非経口的に投与される。しかしながら、そのような投与は、多くの場合、多数の欠点を有する。最も重要なことは、そのように投与された多くの薬剤は、比較的高い速度で代謝、排出またはその両方が行われることである。したがって、皮膚などの部分を薬剤に充分に曝露するのに充分なほど高い血清濃度は、その達成が困難であり、望ましくない、さらには有害でもある効果を生じる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上、当技術においては皮膚に関連する症状を治療する多数の方法が知られているが、それらの全部またはほぼ全部は1つ以上の欠点による被害を伴う。したがって、皮膚関連症状の治療のために皮膚への薬剤送達を改良する、改良された組成物および方法を提供する必要が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、所定の形状を有する複数の微小な孔を形成することによって、望ましくない全身的な影響を誘発させることなく、比較的高濃度で大きな領域の皮膚に対し安全かつ有効に薬剤を適用することが可能であることを見出した。より好適には、孔は、薬剤を表皮まで、より好適には表皮および真皮まで送達することを可能とするチャネルを角皮層に形成するのに充分なだけの深度を有する。
【0008】
最も好適には、この微小孔の大部分は、孔壁が(毛細)血管と交差しないように寸法決定される。したがって、異なる観点から見ると、微小孔壁によって表皮および真皮の組織層まで薬剤を到達させる領域が形成され、全身循環(体循環)における薬剤量が注入に比べ大きく低減されることが特に好適である。さらに微小孔の形状に関して、本発明による微小孔の側壁は、必ずしも真っすぐであることを要しないことが認識される。実際、薬剤送達において重要な少なくとも2つの因子について、微小孔の壁の形状が有意に影響を与えることが特に認識される。まず、総内面積は、孔直径、孔深度またはその両方を増大させることによって、容易に変更可能である。これに加えて、またはこれに代えて、側壁角も直角(角皮層の平均面に対して)でなくてもよく、それによって、総孔内面が増大することにより、薬剤送達の可能な領域が増大する。さらなる増大は、孔の側壁に段を設けることによって達成可能である。第2に、微小孔は時間を通じて治癒/充填されるので、微小孔の形状によって、微小孔壁を通じる薬剤の送達に利用可能な時間が決定される。第3に、微小孔壁が血管に重ならない(またはわずかな程度にしか重ならない)ので、微小孔壁へ適用された薬剤が容易に循環へと移らない。この結果、そのように適用される薬剤は主として表皮および真皮の組織に高い局所濃度で存在し、急速に体循環へ移ることはない。最後に、以下に記載するような孔形成装置を用いて形成した微小孔は、おそらくは光剥離のため、孔寸法が比較的小さいため、またはその両方のため、傷跡を残さない。
【0009】
それほど好適でない態様では、生体組織に孔を形成するために様々な他の技術を用いることが可能であり、本明細書では孔を形成するすべての既知の手法も想定される。例えば、適切な装置は、熱、アーク、高電圧パルスのうちの1つ以上を用いることができる。米国特許第6,148,232号明細書には、例えば、電場を用いることによってマイクロチャネルを形成するための技術が開示されている。この装置も、再現性よく微小孔を形成するように構成された(例えば、本発明によるフィードバック装置を介して個々の微小孔の特性を検出することにより)場合、所定の形状の微小孔を形成するのに適切であり得る。しかしながら、孔を形成するためにレーザビームを用いる微小孔形成装置が特に好適である。
【0010】
レーザ孔形成装置のレーザは、孔形成中、Qスイッチモードで作動されるとともに、レーザ照射によって凝固を生じることなく吹き飛ばす(blow−off)効果を生じるようなパルス幅およびエネルギーを有することが特に好適である。したがって、光剥離、光破断(photodisruption)またはその両方が特に好適である。そのような照射は、通常、組織を蒸発させ、熱的な損傷の生成は無視できる。例えば、適切な範囲の放射束密度は104W/cm2以上、より好適には105W/cm2以上、さらに好適には105W/cm2〜109W/cm2、最も好適には105W/cm2〜1012W/cm2であり、用いられるエネルギー密度は、約0.01J/cm2〜1000J/cm2、より典型的には、0.1J/cm2〜100J/cm2である。この結果、レーザパルス幅/組織曝露時間は、好適には1ms未満、より好適には100μs未満、さらに好適には100μs〜10ns、最も好適には100μs〜0.1psである。そのようなパラメータを達成するためのレーザのサイジングおよび操作は、当技術分野において充分に理解されており、したがって、多くのレーザおよび制御システムが市販されている。この結果、別の観点からみれば、最小の組織損傷と最大の所望の効果との間の平衡を得るように、特に適切な動作パラメータが選択されることが認識される。
【0011】
しかしながら、本発明の少なくとも幾つかの態様では、孔壁Aを、最も典型的には、図16の左の孔2に代表的に示すように孔底部3eを、少なくとも部分的に凝固させることが望ましい場合もある。左の方の孔2は、熱的な損傷を低減するために、まずQスイッチレーザモードを用いて、または短パルスによって、皮膚1に対し垂直に形成した。角皮層1a、表皮層1bおよび真皮層1cを示す。好適には、レーザは同じ孔2へ数回適用されて、孔2の下端部3a、3b、3c、3dが各レーザパルスの適用によって増大する。続いて、形成された孔2の底部3eは、フリーランニングモード(同じレーザをパルス幅100〜1000μsで用いる)のレーザを用いて、または別のレーザを凝固に有効な波長およびフルエンスで用いて凝固させる。したがって、レーザ照射には、光蒸散条件、光破断条件またはその両方の下で動作するスイッチモードのレーザを用いて孔2が形成され、有意により長い期間、1つ以上のレーザパルスが適用されるプロトコールが含まれてもよい。例えば、孔2の底部3e(所望の場合、これに加えて、またはこれに代えて側壁A)は、少なくとも部分的に凝固を達成するために、非Qスイッチまたは短パルスの「フリーランニング」モードで同じレーザもしくは第2のレーザ、または第2の波長の同じレーザもしくは第2の波長の第2のレーザを用いて照射されてもよい。例えば、孔2の底部3eが封止されるという事実のため、表皮層1bへの拡散Bは、例えば、孔2の壁Aを通じてしか達成されない。これによって、真皮層において薬剤が体循環へ送達される速度が減少される。さらに、そのような部分的に封止された孔2によって、水平の(すなわち、皮膚の表面に平行な)薬剤送達が行われるため、少なくとも幾らかの時間、送達の速度が遅らされる。当然のことながら、凝固させた組織が時間を通じて回復されると、薬剤の送達は加速する。当業者には、照射によって凝固を達成するのに適切な時間が容易に決定されるとともに、一般に適切なパルス幅が、約10μs〜約1000μs、より好適には約100μs〜約500μsの範囲にあることが想定される。
【0012】
本発明のさらなる一態様では、凝固した孔壁Aを有しない、図16の右の方に開示するような複数の孔2を形成することが望ましく、再現性のよい形状に孔2を形成することが望ましい。
【0013】
したがって、美容的かつ生理学的に望ましい環境を維持しつつ、同じ領域の微小孔を通じて薬剤の複数回の適用が実現される。本明細書に示す適用では隣接した組織の生存可能性および構造が維持されるので、想定される方法は、大きな領域における薬剤の投与にも適切である。さらには、想定される方法、組成物および装置を用いることによって、(a)全身的に投与された場合に有害効果を生じる、(b)従来の手法を用いて投与されたときには得られない、またはその両方である用量で、患者の皮膚へ薬剤を送達することが可能となることが特に認められる。さらに、孔の形状の制御により薬剤送達の動力学を制御することによって、1人の患者における様々な皮膚の部位や異なる患者間の異なる皮膚のタイプを考慮するように、薬剤送達が個別化され得る。同様に、薬剤送達の動力学を特定の薬剤に対し調整することが可能である(例えば、速やかに作用する薬剤についての遅い送達、不安定な薬剤に対する高速かつ多量の送達など)。特に好適な孔形成装置、代表的な方法および構成は、次の連続番号を有する本出願人らの同時継続中の特許出願においてが提供されている。それらすべてを引用によって本明細書に援用する。
【0014】
例えば、生体膜に孔形成を行って孔を形成するための微小孔形成装置は、同じ出願人のPCT特許出願である、「レーザ微小孔形成装置およびレーザ微小孔形成装置を動作させる方法(Laser microporator and method for operating a laser microporator)」と題する、PCT/EP2006/061639に開示されているレーザ微小孔形成装置のように設計されてよい。
【0015】
生体膜は、例えば、同じ出願人のPCT特許出願である、「浸透面を形成する方法(Method for creating a permeation surface)」と題する、PCT/EP2005/051703に開示されている方法によって孔形成されてよい。
【0016】
生体膜に孔形成を行うための孔形成装置および統合された浸透投与システムは、例えば、同じ出願人のPCT特許出願である、「生体膜に孔形成を行うための孔形成装置および統合された浸透投与システム(Microporator for porating a biological membrane and integrated permeant administering system)」と題する、PCT/EP2005/051702に開示されている微小孔形成装置のように設計されてよい。
【0017】
浸透物を経膜投与するためのシステムおよび浸透物を投与する方法は、例えば、同じ出願人のPCT特許出願である、「浸透物を経膜投与するためのシステムおよび浸透物を投与する方法(A system for transmembrane administration of a permeant and method for administering a permeant)」と題する、PCT/EP2006/050574に開示されているシステムのように設計されてよい。
【0018】
薬剤の投与用の経皮送達システムおよび薬剤を投与するための方法は、例えば、同じ出願人のPCT特許出願である、「経皮送達システムおよび不妊治療のための方法(Transdermal delivery system and method for treating infertility)」と題する、PCT/EP2006/067159に開示されているシステムのように設計されてよい。
【0019】
したがって、本発明の好適な一態様では、発明者らは、一定の面積の領域の孔形成された皮膚が形成される、皮膚に関連した疾病または疾患を処理する方法を想定する。ここで、この領域には複数の孔が含まれる。最も典型的には、この領域の面積は1cm2以上であり、より典型的には10cm2以上であり、さらに典型的には25cm2以上であり、最も典型的には100cm2以上である。孔の数は相当変化してもよく、適切な数には、約10〜100,000の範囲が含まれる。しかしながら、大きな領域が処理される場合には特に、より大きな数も想定される。したがって、cm2あたりの孔の数は、一般に、約1〜10、より典型的には10〜100、または100〜1000の間で変化してよく、まれな場合にはさらに大きな数であってよい。同様に、皮膚における孔のパターンも変化してよいが、一般に等方性の分布が好適である。しかしながら、特に解剖学的、生理学的上またはその両方において望ましい場合、異方性の分布も想定される。例えば、薬剤拡散の比較的遅い領域(例えば、繊維症の組織、厚い真皮など)が、より多い数の孔を有し、他の領域がより少ない数の孔しか有しなくてもよい。同様に、疾病の中心のある領域には孔が集中して存在し、周辺部の孔の数が減少していてもよい。同様に、大きな用量または量の薬剤が必要な領域は、より小さい用量しか必要としない領域におけるのより高い密度で孔を有してもよい。
【0020】
一般に、複数の孔のうちの少なくとも幾つかは、少なくとも部分的に薬剤に応じて異なる所定の形状を有することが好適である。さらに、この所定の形状によって、好適には、孔内面の面積、孔の再閉止までの時間、孔深度(すなわち、薬剤に接触する表皮または真皮の層)のうちの1つ以上が制御される。次いで、孔形成された皮膚の領域に、1回、反復的、または連続的(例えば、閉鎖下)に薬剤が適用される。多数の代替波長が適切であると思われるが、レーザ切除に特に好適な波長は2500nm以上の波長であり、最も好適なのは約2950nmである。
【0021】
想定される皮膚に関連した疾病または疾患は、免疫調整薬剤、免疫賦活薬剤または免疫抑制薬剤による治療に反応を示すものであり、特に好適な免疫調整薬剤、免疫賦活薬剤および免疫抑制薬剤には、インターフェロン、タクロリムス、アレファセプト、シクロスポリンA、ミコフェノレート、ラパマイシン、エベロリムス、グルココルチコイド、インフリキシマブ、アレムツズマブ、エタネルセプト、モフェチル、メトトレキサート、アザチオプリンおよびリバビリンが含まれる。例えば、特に想定される皮膚に関連した疾病または疾患には、皮膚移植拒絶反応、肢(例えば、指、手など)移植拒絶反応、および皮膚の自己免疫疾患が含まれる。したがって、本明細書では用いられる用語「皮膚に関連した疾病または疾患」には、皮膚が疾病に冒される、もしくは疾患を有する、または皮膚が少なくとも仲介の役割に関与するすべての疾病または疾患が含まれる。例えば、手の移植拒絶反応は、真皮および表皮におけるリンパ球および好酸球の浸潤によって仲介されると考えられる。
【0022】
想定される薬剤の投与に関して、総投与量が経口投与または非経口投与において与えられた量より大きいことと、薬剤が孔形成された領域へ変更可能なスケジュールで局所的に投与されることとが一般に好適である。例えば、代表的な治療スケジュールには、少なくとも数日、数週、数ヶ月および数年を通じて日に1回、週に1回、または月に1回など、長い期間を通じて複数回の孔形成を行うことが含まれる。ここで、続く孔形成は、同じ部位、重なる部位、または異なる部位にて実行されてよい。同様に、特定の薬剤に応じて、投与される量は、約1pmol/cm2〜1nmol/cm2、1nmol/cm2〜1μmol/cm2、またはさらには1μmol/cm2〜1mmol/cm2(またはそれより多い)に変化する。所望の場合、薬剤の適用は連続的(閉鎖下または大きな供給量で)、であってもよく、パッチ、スプレー、クリーム、乳液などの形態の1つ以上の適用であってもよい。パッチは、前腕の周囲にテープのように適用可能である(例えば、手移植の後)。強い副作用の場合、パッチを即座に除去することが可能である。
【0023】
したがって、本発明の別の態様では、皮膚に関連した疾病または疾患の治療のための医薬の製造において免疫調整薬剤、免疫賦活薬剤または免疫抑制薬剤を使用することが想定される。この薬剤は、孔形成された皮膚に対する局所性投与のために調剤される。そのような皮膚は、通常、孔の所定の形状と薬剤の濃度との組合せが皮膚に関連した疾病または疾患の治療に有効であるような、所定の形状の複数の孔を有する。例えば、皮膚の真皮層における単核細胞が拒絶反応を治療するための対象とされる場合、適切な薬剤には、少なくとも表皮層に達するが真皮層には達しない深度を有する孔に対するタクロリムスおよびシクロスポリンAが含まれる。所望の濃度に応じて、孔がより大きな直径/深度/角度(孔当たりの送達領域大)を有するように形成されてもよく、より小さな直径/深度/角度(適度な孔当たりの送達領域)を有するように形成されてもよい。さらに、より大きな用量が望ましい場合、孔の数が増大されてもよい。したがって、上述のように、この所定の形状によって、好適には、孔内面、孔の再閉止までの時間、送達深度(および目標組織)のうちの1つ以上が制御される。しかしながら、薬剤送達の動力学にかかわらず、典型的には、局所投与によって薬剤の全身送達が生じない(またはわずかな[例えば、総用量の10%未満、総用量の5%未満、または総用量の2%未満]程度にしか生じない)ような形状を孔が有することが好適である。
【0024】
好適な態様では、関連する薬剤を適切に調剤することと、孔の数および形状を調整することとによって、真皮へのリンパ球浸潤を抑制または完全に阻止するために、用量および濃度の調整された局所免疫抑制化合物を適用することが可能となる。さらに、真皮における免疫抑制剤の濃度は、一定の時間、例えば2週間以上に渡って、走化性またはリンパ球遊出を阻止するのに充分なほど高いことが想到される。ゆえに、同種移植における急性細胞性拒絶反応の主要な機構としての活性化したTリンパ球の浸潤は、全身的な暴露および関連する副作用を回避しつつ抑制される。
【0025】
また、例えば、小さな有機分子、生体分子(例えば、タンパク質、多糖類、不活化されたウイルス粒子)、ミセル、逆ミセル、ナノベシクルもしくはリポソームなどポリマー物質または超分子系などの接合物質を用いて接合体を形成し、関連する薬剤を共同して送達可能であることが想定される。接合体では、関連する薬剤が物理的または化学的に接合物質に結合している。これにより、組織−血管障壁の通過を防止することによって、あるいは表皮層から真皮層への薬剤の拡散を強く低減することによって、体循環への薬剤の送達が防止されるか、強く低減されることが可能である。
【0026】
したがって、想定される薬剤が指示書とまとめられ、皮膚に関連した疾病または疾患の治療に有効な薬剤と、複数の孔を有する孔形成された一定の面積の領域の皮膚へ薬剤を適用する指示書とからなるキットを形成してもよい。この領域の面積は情報によって1cm2以上であると指定され、さらに、この情報によって複数の孔のうちの少なくとも幾つかが、薬剤の全身投与を防止するのに有効である所定の形状を有すると指定される。特に好適な態様では、指示書は、所定の形状を決定する(例えば、随意では肌のタイプに応じて、数、形状、密度など)1つ以上のレーザ孔形成パラメータも含む。
【0027】
この結果、薬剤および医療デバイスの製造者は、薬剤が皮膚に関連した疾病または疾患の治療に効果的であるという情報を提供することによって、皮膚に関連した疾病または疾患の治療を容易にすることができる。最も典型的には、そのような提供には、印刷、表示またはその両方によるフォーマットにより与えられる、そのような薬剤および装置の市場調査に関する情報を規則的に提出することも含まれる。さらには、そのような製造者が、複数の孔を含む一定の面積の孔形成された皮膚(例えば、1cm2以上の領域)へ薬剤を適用するための情報をさらに提供してもよい。ここで、製造者は、通常、薬剤および孔形成装置のうちの1つ以上を製造するか、販売するかまたはその両方である。さらに好適な一態様では、そのような方法には、さらに複数の孔のうちの少なくとも幾つかが所定の形状を有することや、所定の形状は薬剤の全身投与を防止するのに有効であることを指定する情報も含まれる。好適な疾病、薬剤、装置およびさらなる想定に関して、上述と同じ考慮が適用される。
【0028】
さらなる想定される態様では、レーザ孔形成装置は、好適には、レーザビームが皮膚に投射される使い捨てチップを備える。そのようなチップは当技術分野において多数知られており、カップリングに関する周知の構成、材料および手法はすべて、本明細書における使用に適切であると思われる。しかしながら、特に好適な態様では、チップは、チップに接触すると所定の形状へとチップを処理する組織付勢要素も含む。最も典型的には、この所定の形状によって、皮膚全体を通じてビームを操縦するレーザミラーと、治療される皮膚との間の平均距離がほぼ同じであることが保証される。別の観点から見ると、組織付勢要素は、治療される領域全体を通じて治療される皮膚がレーザビームの焦点にあるように、皮膚を変形させる。そのように組織に付勢を与えることによって、既知のパラメータ、一様なパラメータまたはその両方を用いてレーザビームを一貫して適用することが可能となる。本明細書において想定されたチップを製造および使用するために、以下の図面および記載によって、当業者に充分な案内が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】レーザ式微小孔形成装置に適切なチップの代表的な長尺状部分を示す図。
【図2】チップの代表的な表面を示す図。
【図3】代表的なチップの斜視図。
【図4】チップのさらなる一実施形態の長尺状部分を(B−B)に沿って示す図。
【図5】図4のチップ(A−A)に沿った断面図。
【図6】チップのさらなる一実施形態の長尺状部分を(B−B)に沿って示す図。
【図7】図6のチップ(A−A)に沿った断面図。
【図8】チップのさらなる一実施形態の長尺状部分を(B−B)に沿って示す図。
【図9】図8のチップ(A−A)に沿った断面図。
【図10】さらなるチップの長尺状部分の前端部を示す図。
【図11】さらなるチップの組織付勢要素8aの正面図。
【図12】図11の組織付勢要素8aの斜視図。
【図13】さらなるチップの組織付勢要素8aの正面図。
【図14】さらなるチップの組織付勢要素8aの正面図。
【図15】図11の要素の交差を詳細に示す図。
【図16】レーザ孔形成された皮膚の2つの孔の断面を模式的に示す図。
【図17】レーザ孔形成装置を示す図。
【図18】レーザ微小孔形成装置の取り付けられた前腕の断面図。
【図19a】微小孔形成の形状の例の斜視図。
【図19b】微小孔形成の形状の例の斜視図。
【図19c】一列の微小孔を有する皮膚の平面図。
【図19d】一列の微小孔を有する皮膚の平面図。
【図19e】一列の微小孔を有する皮膚の平面図。
【図20】時間を通じた全微小孔の浸透面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、レーザ孔形成装置のレーザハウジング9に接続されたチップ8を示す。この図において、チップは切除部位近くに位置している。レーザ孔形成装置は、スイベル式の偏向ミラー8fを少なくとも一つ備えている。この偏向ミラー8fは、レーザビーム4,4aをさまざまな方向に偏向して皮膚1に照射させる。チップ8は、円筒壁8nと保護ガラス8iとで、容器を形成する。この容器は、切除した組織や、切除による放出物を収集するものである。チップ8の形状は、レーザ孔形成装置のハウジング9に対する着脱がしやすいものであることが好ましい。保護ガラス8iは、レーザビーム4を少なくとも部分的に透過させる媒体であり、ガラス、ポリカーボネートや、レーザビーム4を少なくとも部分的に透過させる他の媒体であってよい。保護ガラス8iの代わりに、fθレンズを配置してもよい。走査ミラー8fと組み合わせてfθレンズを用いる利点として、走査ミラー8fによる偏向の影響を受けずに、レーザビーム4の類似パターンを皮膚1に形成することができる。
【0031】
好ましい一実施形態として、チップ8は、チップ8の開口内に位置する皮膚1の一部を、線1aで示す所定の形状に付勢する(たとえば、ボウル形状をなすように下方に付勢する)組織付勢要素8aを備える。組織付勢要素8aは、レーザビーム4の反射点である、偏向ミラー8fの点Rに曲率中心をもつ凹みを形成することが好ましい。したがって、組織付勢要素8aにより、偏向ミラー8fと皮膚1の表面1aとの間で、レーザビーム4の長さをほぼ等しくすることができる。その結果、非常に再現性よく、一定の形状の孔を皮膚に形成することができる。
【0032】
チップ8は、電気配線8pに電気的に接続される、電気接触要素8o,8qをさらに備えてもよい。電気接触要素8qは、レーザハウジング9の接触要素9aに接続される。この構成により、皮膚に関するさまざまな生理的パラメータ(たとえば、接触要素8o間にある皮膚1のインピーダンス)を計測することができる。最も好ましくは、レーザビーム源を作動させる前にチップ8を皮膚上に適切に配置することが保証されるように、このような接触部をロック機構に用いることもできる。チップ8は、たとえば、皮膚の湿度、温度、またはペーハー(pH)値を計測するセンサをさらに備えていてもよい。レーザビーム4は、適切に取り扱わなければ傷害を起こしてしまうため、チップ8が皮膚上にあるときだけ作動させることが重要である。このため、図2と図3に示すように、使い捨てチッ
プ8は、その使用を一度だけ可能にする安全機構8sを含んでもよい。安全機構8sは、レーザハウジング8l内の接触要素に噛合する二つの接触要素8t、8uと、ヒューズ要素8vとからなる。このヒューズ要素8vは、電流印加後に気化したり、または機械的に故障したりするものであるか、あるいは再プログラム可能な電子デバイス(たとえば、マイクロチップ)である。孔形成後、ヒューズ要素の焼けなどの変化は、安全機構8sに適用される。チップ8を一度だけ使用可能とするように、安全装置8sの状態はレーザ孔形成装置10によって制御される。
【0033】
図4に示すチップ8の組織付勢要素8aは網状になっており、金属、金属合金、高分子、およびそれらの適当な組み合わせなど、多数の物質から作られる。図5に示す断面では、配線は、その間にレーザビーム4が皮膚表面1aを照射できる空間を残すように、互いに離間されている。別の実施形態においては、図6に示すチップ8の組織付勢要素8aは、四つの突出ピン8aからなる。図7に示す断面では、四つの突出ピン8aを互いに離間させ、中心にも空間を設けている。また、図8に示すチップ8の組織付勢要素8aは、一つの突出ピン8aからなる。図9に示す断面では、突出ピン8aと側壁8nとの間に、2つの空間を設けている。
【0034】
図1から図9の一つに示す使い捨てチップ8は、レーザ孔形成装置のハウジングに、取り外し可能に接続されているものとする。レーザビーム4は、組織付勢要素8aを照射するのではなく、皮膚表面1aのみを照射するよう、導入・偏向されることが好ましい。別の好ましい実施形態においては、レーザ孔形成装置は、組織付勢要素8aの形状や配向を検出する検出器を備え、組織付勢要素8a間の空間のみを照射するよう、レーザビーム4を偏向・導入する。このようなデバイスにおいて、付勢要素は、チップを識別する情報を、直接的または間接的に孔形成装置に提供する識別要素(たとえば、バーコード、反射要素、電子回路)を含んでいてもよい。
【0035】
チップ8は、皮膚1を伸張させる要素8wを、一つまたは複数さらに備えていてもよい。要素8wは、たとえば、図10に示すような弾性リングである。チップ8が皮膚1に押し付けられると、弾性リングにより皮膚1が径方向外側に押され、弾性リングで囲まれた領域内の皮膚が伸張する。これにより、皮膚の表面が組織付勢要素8a上にぴったり張られた状態になる。
【0036】
図11と図12は、さらなる組織付勢要素8aの正面図と斜視図をそれぞれ示す。この組織付勢要素8aは部分的に半球形状の網であり、弾性材(たとえば、金属線若しくはプラスティック部材)、または剛体材料(たとえば、金属)からなる。組織付勢要素8aは、金属線8bと、外輪8c(要素8bと同じ材料で作られたものが好ましい)とを含む。金属線8bは外輪8cに接続されている。必要に応じて、外輪8cは、円筒壁8nに取り付けられてもよく、チップ8に一体的に構成されてもよい。
【0037】
図13は、中心に空間を設けた組織付勢要素8aの正面図である。図14は、外輪8c上に配置された二つのセンサ8dを有する、組織付勢要素8aの正面図である(センサ8dは、配線8pにより電気的に接続されていてもよい)。
【0038】
チップ8とハウジング9は、さまざまな種類のコネクタ(たとえば、バネ錠、またはねじ)により、適切に接続されるものとする。好ましい実施形態においては、ハウジング9に対するチップ8の位置を確認してから、レーザ孔形成装置を皮膚に向ける。別の好ましい実施形態において、チップ8は、ハウジング9に対するチップ8の位置を検出する指示部8fを備える。図15に示すように、指示部8fは、要素8bの断面8eに配置された、組織付勢要素8aの反射面であってもよい。指示部8fの配向は、センサ、またはセンサと組み合わせてレーザビーム4で、検出することができる。指示部8fは、反射領域で
あってもよい。さらに好ましい実施形態において、指示部8fは、チップ8が使用されたとき、指示部8fの特性を変更する安全機構8として用いられてもよい。たとえば、指示部8fを形成する微小な反射層を変更または破壊するために、皮膚に孔を形成してからレーザビーム4を指示部8fに照射してもよい。皮膚に孔形成を開始する前に、レーザ孔形成装置のコントローラにより、レーザビーム4若しくは別のセンサで、指示部8fの状態を確認するとともに、指示部8fの特性に応じて、孔形成を許可するようにしてもよい。
【0039】
図17は、Qスイッチ若しくは短パルスのレーザビーム源7と、レーザビーム形成・案内装置17とからなるレーザ微小孔形成装置10を示す。レーザビーム源7は、レーザ活性物質7bを光学的に励起させる光源7cと、一組の反射ミラー7d,7eとを有する。レーザビーム源7は、レーザ結晶7bを含むレーザキャビティ7aを有する。励起部7cにより供給される、好ましくはErおよび任意で追加してPrをドープしたYAGを含むレーザキャビティ7aを有する。励起部7cは、エミッタ・バーまたはエミッタ・バーのスタックのような、シングル・エミッタ・レーザ・ダイオード、または一組のシングル・エミッタ・レーザ・ダイオードのアレイである。レーザビーム源7は、レーザ結晶7bの後方にある高反射ミラー7dと、レーザ結晶7bの前方にある出力結合ミラー7eと、レーザ結晶の後方にある可飽和吸収体7fとを含む光共振器をさらに備える。可飽和吸収体7fは、Qスイッチとして動作する。集束レンズ17aと発散レンズ17bは、出力結合ミラー7eを経た位置にあり、平行の若しくは準平行のレーザビーム4、または集束したレーザビーム4を形成する。微小孔形成装置10は、レンズ17a,17bの代わりに、たとえば、レーザビーム4を皮膚1の表面に集束させる異なる光学手段17a,17bを備えてもよい。発散レンズ17bは、モータ17cにより、図示される方向に移動されてもよい。これにより、レーザビーム4の幅を増減することができ、レーザビーム4の幅やレーザビーム4のエネルギーのフルエンスを変化させることができる。モータ17eにより駆動される可変吸収体17dは、発散レンズ17bを経た位置にあり、レーザビーム4のエネルギーのフルエンスを変化させる。偏向器8fは、x−y駆動部8gにより駆動されるミラーであって、吸収体17dを経た位置にあり、レーザビーム4をさまざまな方向に向け、個々の孔2を皮膚1の異なる場所に形成する。制御装置11は、配線11aにより、レーザビーム源7と、駆動要素17c,17e,8gと、センサと、詳述していないその他の要素とに、接続される。
【0040】
好ましい実施形態において、レーザ孔形成装置10は、フィードバック機構を備えたフィードバックループ13をさらに含む。図17において、フィードバックループ13は、孔2の深度を測定する装置9を含む。好ましくは、レーザビーム9dを生成する光学系を備えた送光器9aと、光学系を備えた受光器9bとを含む。レーザビーム9dの幅は、孔2の直径より小さく、たとえば、5分の1より小さい。このため、レーザビーム9dは孔2の下端に到達する。偏向ミラー8fは、送光器9aからの光を、計測される孔2に向け、反射光9dを受光器9bに戻るよう案内する。さまざまな方法により組み込まれた距離測定装置9により、下端の位置、たとえば、孔2の深度を計測することができる。好ましい実施形態においては、パルスレーザビーム4が孔2に照射される度に、孔2の深度を計測する。これにより、孔2の深度に対する各レーザパルスの効果を制御することができる。フィードバックループ13は、孔2のフィードバック信号の測定が可能となるよう、さまざまな方法で組み込まれる。フィードバックループ13は、たとえば、孔2の下端で反射した光について、スペクトルの変化を検出する分光器14として組み込まれた、送光器9aと受光器9bとを備えてもよい。これにより、たとえば、孔2の実際の下端3a,3b,3c,3dが,角質層1a若しくは表皮1bの一部であるか否かを検出することができる。レーザ孔形成装置10は、孔2の具体的なデータ、特に初期微小孔のデータセットを保持する孔形成記憶部12をさらに備える。レーザ孔形成装置10は、孔形成記憶部12に規定されるように孔2を形成することが望ましい。レーザ孔形成装置10は、さらに、入出力装置15またはインタフェース15を一つ若しくは複数備える。これにより、孔
形成装置10とのデータ交換が可能となり、特に、孔2のパラメータや初期微小孔のデータセットを、孔形成記憶部12に転送可能となる。または、特定の孔2iの実際の深度若しくは全表面積Aiなどのデータを取得可能となる。入出力装置15は、カード読み取り装置、スキャナー、有線インタフェースであってもよく、Bluetooth(登録商標)などの無線接続によるものであってもよい。
【0041】
孔形成装置は、物質や個人などのデータの交換を、手動で行う入出力装置若しくはユーザインタフェース15を、一つまたは複数備えてもよい。ユーザインタフェースは、たとえば、表示装置、ボタン、音声制御装置、または指紋センサを備えてもよい。
【0042】
レーザビーム源7は、さまざまで方法で構築される。レーザビーム源7は、たとえば、250μmなど、固定幅の光4を生成する光学系を備えたレーザダイオードとして、構築されてもよい。
【0043】
レーザビーム源7のパルス繰り返し周波数は、1Hzから1MHzの範囲内であり、好ましくは100Hzから100kHz、より好ましくは500Hzから10kHzである。レーザ孔形成装置10の用途としては、幅0.05mmから0.5mm若しくは1mm、深度5μmから200μmの孔2を、2個から100万個、好ましくは10個から10000個、より好ましくは10個から1000個、生体膜1に生成することができる。ただし、孔2の下端は、表皮1b内にあることが好ましい。必要に応じて、孔形成装置10は、深度が200μmより大きい孔を形成することもできる
レーザ孔形成装置10は、さらにインターロック機構を含む。これにより、レーザパルスは、皮膚1に向けられると照射される。フィードバックループ13は、たとえば、パルスが皮膚1に向けられているか否かを検出するのに用いられる。インターロック機構はさまざまな方法で作製され、それらすべての方法が意図されているものとして、当業者には理解されたい。一実施形態として、図4aを参照して説明する。
【0044】
図17に、円筒形状の孔2を形成する、円形のレーザビーム4を示す。孔2は別の形状であってもよく、たとえば、レーザビーム4は円形ではなく、楕円形、正方形、または長方形であってもよい。孔2は、偏向器8fを適切に移動させて形成してもよく、これにより、さまざまな形状の孔2を形成することができる。
【0045】
図18は、前腕の断面図である。レーザ微小孔形成装置10は、コネクタ10bを含む弾性ベルト10aを使って、前腕に開放可能に取り付けられてもよい。このように取り付けることにより、微小孔形成装置10と、微小孔形成装置10の前部が配置される前腕の領域との間で、相対運動を止めたり、抑えたりすることができる。皮膚に1cm2以上の大きさの孔を形成する場合、孔形成後に弾性ベルト10aを緩めて切除器10を皮膚から外し、弾性ベルト10aを再び締めるとよい。これにより、切除器10で皮膚のより広い領域に孔を形成することができる。つまり、25cm2,100cm2、またはそれ以上の広い部分に孔を形成することができる。切除される皮膚の領域に切除器のチップを繰り返し押し当て、切除器を作動させることにより、切除器10は位置を固定しないでも用いられる。また、切除器10の配置、および皮膚に対する切除器10の位置決め制御を可能にするスキャナーに、切除器10を取り付けてもよい。これにより、皮膚の広い領域に孔を形成するとき、非常に正確に制御することができる。
【0046】
図19aは、皮膚1に設けられた孔2の配列を示す。いずれの孔2も、ほぼ同じ形状と深度を有する。
図19bは、レーザ孔形成装置10を制御する孔形成コントローラ11の支持により形成される、さまざまな形状の孔2aから2fを示す。図19bに示す孔を形成するとき、レーザビーム4は、少なくとも異なる断面をもつ。好ましい実施形態においては、レーザ
孔形成装置10は、連続したパルスレーザビームそれぞれの断面、エネルギー密度またはその両方を変化させる。これにより、さまざまな形状の孔2を形成することができる。
【0047】
図19cは、微小孔の集合体を形成する孔2を規則的に配列した皮膚の平面図である。レーザ孔形成装置10によりすべての孔形成が完了したときの生体膜の微小孔を、「初期微小孔」とよぶ。孔形成記憶部12は、初期微小孔を定義する、初期微小孔のデータセットを保持することが好ましい。初期微小孔のデータセットは、各孔の幅、深度、形状、孔2の総数、生体膜上の孔2の幾何学的配置、孔2間の最小距離、孔形成装置で孔を形成する皮膚上での位置など、適切なパラメータを含む。レーザ孔形成装置10は、初期微小孔のデータセットにより定義されるように、孔2を形成する。たとえば、図19dに示すように、さまざまな形状の孔2を皮膚1に配置することもできる。図19eは、皮膚に設けられた孔の配置として、さらに利点を有するものを示す。孔2の数の密度を増減させ、皮膚のある領域に対する薬剤の供給量を増減させることができる。
【0048】
図20は、時間の経過に応じた総浸透面積Aを示す。レーザ孔形成装置10は、組織1に微小孔2の列を形成することにより、皮膚1などの組織に微小孔を形成することができる。微小孔2では細胞が成長するため、初期の浸透面を形成する微小孔2の総和と、初期浸透面の浸透面積A(t)とが所定時間の経過とともに減少するよう、微小孔2の数と形状を適切に選択する。
【0049】
図20に示す初期微小孔のデータセットは、形状の異なる円筒形の微小孔2を含み、下記の3つのグループからなる。
・直径250μm、深度50μm、時間に応じた浸透面積A1を有する415個の孔を含む第一のグループ
・直径250μm、深度100μm、時間に応じた浸透面積A2を有する270個の孔を含む第二のグループ
・直径250μm、深度150μm、時間に応じた浸透面積A3を有する200個の孔を含む第三のグループ。
【0050】
時間に応じた全浸透面積Aは、三つの浸透面積A1,A2,A3すべての合計である。
初期微小孔であるすべての孔2iは、数分の一秒から数秒若しくは数分といった、非常に短い時間で形成される。細胞の成長のため、初期浸透面を形成する孔2iの総和は、孔形成時間TPから時間の経過とともに減少する。すべての孔2iが閉じる時間TCでは、バリア性が極めて大きくなっている。
【0051】
想定例
[拒絶反応の治療]
1つの非限定的な例では、患者が両手移植後、導入療法のためアレムツズマブ(2×20mg)を受容することが想定される。予防的な免疫抑制には、好適には、タクロリムス、ミコフェノレートモフェチルおよびステロイドの投与が含まれる。典型的には、最初の用量は500mgであり、5mgの維持療法まで急速に漸減される。タクロリムスは、移植後早期には15〜20ng/mlのトラフレベルを達成するように、日に2回、経口で投与され、続いて10ng/mlまで漸減される。
【0052】
次いで、患者は拒絶反応の徴候について監視され、治療を適切に変更される。例えば、第1の拒絶反応エピソードは移植の2ヶ月後に観察される。病変は手の甲側に限定されており、約12〜15cm2の領域に広がっている。従来の治療では、通常、ステロイドの全身的な急速投与とともに、拒絶反応の治療用の免疫抑制維持の増大がなされる。対照的に、発明者らには、孔形成された皮膚への、例えば、タクロリムスやアレムツズマブ(alemtuzmab)の局所適用によって従来の療法が置換または補完されることが想定
される。そのような治療では、薬剤は作用部位へ急速に到達し、したがって有効な経路を示し、有害効果の可能性を有意に減少させることが認識される。そのように投与される薬剤は、1日1回(またはそれ未満)〜数回、用量一定、増量、または減量を含む様々なスケジュールにより、孔形成された皮膚へ適用されることができる。適切な用量に関して、上述と同じ考慮が適用される。
【0053】
[拒絶反応の予防処置]
例えば、手または顔移植後の免疫抑制は、次の通りであり得る。アレムツズマブまたは抗胸腺細胞グロブリンを用いる導入療法に続き、5〜8ng/ml程度の低いトラフレベルを狙ってタクロリムスの単独療法がなされる。加えて、移植部上、全方向に約3〜5cmの距離だけ離して孔形成された皮膚の複数の領域を形成することによって、薬剤摂取用の移植部用皮膚が調製される。続く、孔形成された皮膚の領域への適切な薬剤(例えば、efomycin)の適用は、好適には、真皮におけるリンパ球浸潤を抑制することによって拒絶反応を防止するのに有効である量でなされる。皮膚の局所治療が必要に応じて繰り返される(例えば、最初の6ヶ月は3週毎、続いて第1年の終わりまで6週間隔で適用)。その後、局所治療のレジメンが所定の間隔で継続される。
【0054】
[乾癬の治療]
乾癬の病変は皮膚の小領域へ限定されることもあるが、大きな領域へ広がることもあり、この場合、患者の日常活動を減退させる影響を与えることが多い。全身治療は薬剤の毒性のため制限されているが、最近では、エファリズマブによる治療によって患者の22〜28%の疾病を弱められることが示されている。エファリズマブによる治療の効果が限定されているのは、不適切な濃度、冒された皮膚領域全体への配分またはその両方によるものである可能性が大きい。したがって、発明者らには、エファリズマブまたはそれに匹敵するリンパ球遊出抑制剤の局所適用前に、冒された皮膚領域全体を孔形成された領域の形成によって処理することで、そのような治療手法の効果が有意に改良されることが想定される。
【0055】
次の一覧は、例として、特に皮膚に関連した症状の広域治療用にレーザ孔形成装置と組み合わせて用いられるのに適切な薬剤の一覧を開示するものである。
【0056】
【表1】
【0057】
本明細書に記載のチップ8はレーザ孔形成装置と組み合わせて用いられるように構成されていることが、特に認識される。したがって、そのようなチップは皮膚に関連する症状の治療のためにしか用いられずともよく、微小孔の形成、特に所定の孔形状を有する微小孔の形成や、薬剤送達の動力学が必要な用途において、独立に用いられてもよいことが認識される。例えば、想定される代替の使用には、浸透物および薬剤の全身的な経皮投与(多量の薬剤の投与など)用や、1cm2以下の領域による経皮投与用の孔を形成するためのチップの用途が含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に関連した疾病または疾患の治療のための医薬の製造における免疫調整薬剤、免疫賦活薬剤または免疫抑制薬剤の使用であって、前記薬剤は、所定の形状の複数の孔を有する孔形成された皮膚に対する局所投与用に、前記孔の所定の形状と前記薬剤の濃度との組合せが前記皮膚に関連した疾病または疾患の治療に有効であるように調剤されている使用。
【請求項2】
前記皮膚に関連した疾病または疾患は、皮膚移植拒絶反応、皮膚が少なくとも仲介の役割に関与する疾病または疾患、肢移植拒絶反応、または自己免疫疾患である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記所定の形状によって、孔の内面、孔の直径、孔の再閉止までの時間および送達深度の決定のうちの1つ以上が制御される請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記複数の孔は、局所性投与によって薬剤の全身送達を生じないかまたは強く減少させる形状を有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記薬剤は全身循環への薬剤の侵入を低減または防止する部位へ接合される請求項1乃至4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
皮膚を通じた薬剤の広域投与のために1cm2以上の面積の孔形成された皮膚を生成するための孔形成装置の使用。
【請求項7】
孔形成装置は、パルスレーザビームを皮膚に注ぎ複数の孔を生成するためのレーザ孔形成装置であり、同レーザ孔形成装置は同複数の孔のうちの1つ以上を2回以上照射する請求項6に記載の使用。
【請求項8】
皮膚に関連した疾病または疾患の治療を容易にする方法であって、
薬剤が皮膚に関連した疾病または疾患の治療に効果的であるという情報を提供することと、
複数の孔を含む孔形成された一定の面積の皮膚へ薬剤を適用するための情報を提供することと、を備え、
前記情報によって前記面積は1cm2以上であると指定され、
前記情報によって、さらに、前記複数の孔のうちの少なくとも幾つかが所定の形状を有すると指定され、
前記所定の形状は薬剤の全身投与を防止するのに有効である方法。
【請求項9】
前記皮膚に関連した疾病または疾患は、免疫調整薬剤、免疫賦活薬剤または免疫抑制薬剤による治療に反応を示す請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記皮膚に関連した疾病または疾患は、皮膚移植拒絶反応または肢移植拒絶反応である請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記皮膚に関連した疾病または疾患は、自己免疫疾患(例えば、強皮症、皮膚筋炎、表皮水疱症、天疱瘡など)、アレルギー反応(例えば、接触性皮膚炎、アトピー性湿疹、じんましんなど)、または皮膚が少なくとも仲介の役割に関与する疾病または疾患である請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記薬剤は、免疫調整薬剤、免疫賦活薬剤、免疫抑制薬剤、抗炎症薬剤およびステロイ
ド薬剤からなる群から選択され、随意で全身循環への薬剤の侵入を低減または防止する部位へ接合される請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記面積は、1cm2〜25cm2、または25cm2〜100cm2である請求項8乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記孔は傷跡の形成を低減または防止するのに有効であるように形成される請求項8乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記面積の孔形成された皮膚における孔の数は10〜100,000である請求項8乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記所定の形状は少なくとも部分的に薬剤に応じて異なる請求項8乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記所定の形状は、孔の内面の決定、孔の再閉止までの時間の決定、孔深度、および送達深度の決定のうちの1つ以上を含む請求項8乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
(a)皮膚に関連した疾病または疾患の治療に有効な薬剤と、(b)複数の孔を含む孔形成された一定の面積の皮膚へ薬剤を適用する指示書と、からなるキットであって、情報によって前記面積は1cm2以上であると指定され、前記情報によって、さらに、前記複数の孔のうちの少なくとも幾つかが所定の形状を有すると指定され、前記所定の形状は薬剤の全身投与を防止するのに有効であるキット。
【請求項19】
前記皮膚に関連した疾病または疾患は、免疫調整薬剤、免疫賦活薬剤または免疫抑制薬剤による治療に反応を示す請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記皮膚に関連した疾病または疾患は、皮膚移植拒絶反応、皮膚が少なくとも仲介の役割に関与する疾病または疾患、肢移植拒絶反応、または自己免疫疾患である請求項18に記載のキット。
【請求項21】
指示書はさらに前記所定の形状を決定するレーザ孔形成パラメータを提供し、前記孔は傷跡の形成を低減または防止するように形成される請求項18乃至20のいずれか一項に記載のキット。
【請求項22】
皮膚に関連した疾病または疾患を治療する方法であって、
複数の孔を含む孔形成された一定の面積の皮膚を形成する孔形成工程と、前記面積は1cm2以上であることと、前記複数の孔のうちの少なくとも幾つかは所定の形状を有することと、
前記所定の形状は、少なくとも部分的には、薬剤の機能に応じて異なり、孔の内面、孔の再閉止までの時間および送達深度を制御することと、
孔形成された前記一定の面積の皮膚に薬剤を適用する薬剤適用工程と、からなる方法。
【請求項23】
孔形成工程は2500nm以上の波長によるレーザ切除を含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記皮膚に関連した疾病または疾患は、免疫調整薬剤、免疫賦活薬剤または免疫抑制薬剤による治療に反応を示す請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記皮膚に関連した疾病または疾患は、皮膚移植拒絶反応、皮膚が少なくとも仲介の役
割に関与する疾病または疾患、肢移植拒絶反応、または皮膚自己免疫疾患である、請求項22または23に記載の方法。
【請求項1】
皮膚に関連した疾病または疾患の治療のための医薬の製造における免疫調整薬剤、免疫賦活薬剤または免疫抑制薬剤の使用であって、前記薬剤は、所定の形状の複数の孔を有する孔形成された皮膚に対する局所投与用に、前記孔の所定の形状と前記薬剤の濃度との組合せが前記皮膚に関連した疾病または疾患の治療に有効であるように調剤されている使用。
【請求項2】
前記皮膚に関連した疾病または疾患は、皮膚移植拒絶反応、皮膚が少なくとも仲介の役割に関与する疾病または疾患、肢移植拒絶反応、または自己免疫疾患である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記所定の形状によって、孔の内面、孔の直径、孔の再閉止までの時間および送達深度の決定のうちの1つ以上が制御される請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記複数の孔は、局所性投与によって薬剤の全身送達を生じないかまたは強く減少させる形状を有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記薬剤は全身循環への薬剤の侵入を低減または防止する部位へ接合される請求項1乃至4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
皮膚を通じた薬剤の広域投与のために1cm2以上の面積の孔形成された皮膚を生成するための孔形成装置の使用。
【請求項7】
孔形成装置は、パルスレーザビームを皮膚に注ぎ複数の孔を生成するためのレーザ孔形成装置であり、同レーザ孔形成装置は同複数の孔のうちの1つ以上を2回以上照射する請求項6に記載の使用。
【請求項8】
皮膚に関連した疾病または疾患の治療を容易にする方法であって、
薬剤が皮膚に関連した疾病または疾患の治療に効果的であるという情報を提供することと、
複数の孔を含む孔形成された一定の面積の皮膚へ薬剤を適用するための情報を提供することと、を備え、
前記情報によって前記面積は1cm2以上であると指定され、
前記情報によって、さらに、前記複数の孔のうちの少なくとも幾つかが所定の形状を有すると指定され、
前記所定の形状は薬剤の全身投与を防止するのに有効である方法。
【請求項9】
前記皮膚に関連した疾病または疾患は、免疫調整薬剤、免疫賦活薬剤または免疫抑制薬剤による治療に反応を示す請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記皮膚に関連した疾病または疾患は、皮膚移植拒絶反応または肢移植拒絶反応である請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記皮膚に関連した疾病または疾患は、自己免疫疾患(例えば、強皮症、皮膚筋炎、表皮水疱症、天疱瘡など)、アレルギー反応(例えば、接触性皮膚炎、アトピー性湿疹、じんましんなど)、または皮膚が少なくとも仲介の役割に関与する疾病または疾患である請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記薬剤は、免疫調整薬剤、免疫賦活薬剤、免疫抑制薬剤、抗炎症薬剤およびステロイ
ド薬剤からなる群から選択され、随意で全身循環への薬剤の侵入を低減または防止する部位へ接合される請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記面積は、1cm2〜25cm2、または25cm2〜100cm2である請求項8乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記孔は傷跡の形成を低減または防止するのに有効であるように形成される請求項8乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記面積の孔形成された皮膚における孔の数は10〜100,000である請求項8乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記所定の形状は少なくとも部分的に薬剤に応じて異なる請求項8乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記所定の形状は、孔の内面の決定、孔の再閉止までの時間の決定、孔深度、および送達深度の決定のうちの1つ以上を含む請求項8乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
(a)皮膚に関連した疾病または疾患の治療に有効な薬剤と、(b)複数の孔を含む孔形成された一定の面積の皮膚へ薬剤を適用する指示書と、からなるキットであって、情報によって前記面積は1cm2以上であると指定され、前記情報によって、さらに、前記複数の孔のうちの少なくとも幾つかが所定の形状を有すると指定され、前記所定の形状は薬剤の全身投与を防止するのに有効であるキット。
【請求項19】
前記皮膚に関連した疾病または疾患は、免疫調整薬剤、免疫賦活薬剤または免疫抑制薬剤による治療に反応を示す請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記皮膚に関連した疾病または疾患は、皮膚移植拒絶反応、皮膚が少なくとも仲介の役割に関与する疾病または疾患、肢移植拒絶反応、または自己免疫疾患である請求項18に記載のキット。
【請求項21】
指示書はさらに前記所定の形状を決定するレーザ孔形成パラメータを提供し、前記孔は傷跡の形成を低減または防止するように形成される請求項18乃至20のいずれか一項に記載のキット。
【請求項22】
皮膚に関連した疾病または疾患を治療する方法であって、
複数の孔を含む孔形成された一定の面積の皮膚を形成する孔形成工程と、前記面積は1cm2以上であることと、前記複数の孔のうちの少なくとも幾つかは所定の形状を有することと、
前記所定の形状は、少なくとも部分的には、薬剤の機能に応じて異なり、孔の内面、孔の再閉止までの時間および送達深度を制御することと、
孔形成された前記一定の面積の皮膚に薬剤を適用する薬剤適用工程と、からなる方法。
【請求項23】
孔形成工程は2500nm以上の波長によるレーザ切除を含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記皮膚に関連した疾病または疾患は、免疫調整薬剤、免疫賦活薬剤または免疫抑制薬剤による治療に反応を示す請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記皮膚に関連した疾病または疾患は、皮膚移植拒絶反応、皮膚が少なくとも仲介の役
割に関与する疾病または疾患、肢移植拒絶反応、または皮膚自己免疫疾患である、請求項22または23に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19a】
【図19b】
【図19c】
【図19d】
【図19e】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19a】
【図19b】
【図19c】
【図19d】
【図19e】
【図20】
【公表番号】特表2010−507627(P2010−507627A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533851(P2009−533851)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061500
【国際公開番号】WO2008/049903
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(507344874)パンテック バイオソリューションズ アクチェンゲゼルシャフト (5)
【氏名又は名称原語表記】PANTEC BIOSOLUTIONS AG
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061500
【国際公開番号】WO2008/049903
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(507344874)パンテック バイオソリューションズ アクチェンゲゼルシャフト (5)
【氏名又は名称原語表記】PANTEC BIOSOLUTIONS AG
【Fターム(参考)】
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