説明

皮膚の真空援用式光ベース治療用の装置

【課題】皮下障害、例えば血管障害を、皮膚表面又は表皮を損傷しない188nm未満の波長で作業する非切除式高強度パルス・レーザ又はパルス光システムによって、従来より少ない回数で治療する装置を提供する。
【解決手段】真空援用式光ベース皮膚治療のための装置1070が、皮膚ターゲット1087へ向けられる高強度パルス単色光又は非コヒーレント光を透過又は半透過する伝搬部材1076を有する真空チャンバCを含んでいる。真空発生時、皮膚ターゲットは伝搬部材へ吸引され、平板化され、痛みが緩和される。この装置は、2モードで用いられる。すなわち、0‐1気圧の範囲の高真空レベルに達する真空発生モードと、ターゲットに向けた光に関連する光エネルギーが皮膚表面1075下の予め定めた深さで吸収された後、光源1071と真空ポンプ1080とが非作動化される場合の真空解除モードである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、EP特許出願第050007952.4(2005年4月12日提出)及びIL特許出願第170132号(2005年8月4日提出)による優先権を請求するものであり、かつ米国特許出願11/057,542(2005年2月14日提出)の一部継続出願である。該米国特許出願は、イスラエル特許出願第160510号(2004年2月22日提出)による優先権を請求し、かつまた米国特許出願10/498,382号(2004年6月10日提出)の一部継続出願である。該米国特許出願は、IL 1470079(2001年12月10日提出)及びIL 150094(2002年6月6日提出)から派生するPCT/IL02/00635(2002年8月2日提出)の一部継続出願である。
本発明は、光ベースの皮膚治療の分野に関するものである。より詳しく言えば、本発明は、皮膚表面下の皮膚障害の非侵襲的治療のために、光源を使用することに関するものである。その場合、光は選択的に毛幹、血管、コラーゲン束に吸収され、望ましくない毛、血管、その他の皮膚障害を治療又は破壊する。
【背景技術】
【0002】
先行技術の極めて高強度の短時間持続パルス光システムは、スペクトルの可視部分、例えばフラッシュ−ライト又は高強度レーザ光を用いて作業し、現在は、2つの公知の形式で美肌治療に使用されている。すなわちa)皮膚の自然の吸収特性を妨げないように、治療区域に圧力を加えることなく皮膚に光を当てる形式と、b)皮膚に接触する治療具の出口窓によって皮膚に加圧することで皮膚内部の光路から血液を排除し、治療光源のスペクトル線が血液の吸収線と適合する場合には、皮膚ターゲットへの光の透過が、より十分に可能になるようにする形式とである。
高強度パルス光又は高強度パルスレーザのシステムの主な用途は、毛の除去、例えばポートワイン斑・末梢血管拡張症・クモ状静脈(spider veins)・下肢静脈の場合の血管凝固、例えば酒さ(赤鼻)の場合の血管多重加熱(multiple heating)、例えば黒斑・太陽斑の除去等の色素沈着肌の治療、タトゥーの除去、通常、光若返り法と呼ばれる、しわ周囲組織の加熱による小じわの除去等々である。
【0003】
米国特許第5,226,907号、第5,059,192号、第5,879,346号、第5,066,293号、第4,976,709号、第6,120,497号、第5,626,631号、第5,344,418号、第5,885,773号、第5,964,749号、第6,214,034号、第6,273,884号には、種々のレーザ及び非コヒーレント高強度パルス光システムが記載されている。これらの先行技術の光システムは皮膚の自然吸収力を増大させることを目指してはいない。これらの先行技術の光システムは、また治療中の痛みの伝搬をブロックすることを目指してはいない。
【0004】
例えばセルライトの処理のために、皮膚に真空作用を加えることは、先行技術により公知の処置である。この処置によりリンパ液流を発生させ、毒素を組織から排出させることができる。真空作用を加えると、皮膚にひだが形成される。この皮膚のひだは、周囲の皮膚表面より盛り上がり、手で保持した吸引具を、盛り上がった皮膚の両側で運動させることによりマッサージが行われる。吸引具をリンパ管に対して特定方向に動かすことで、リンパ液が自然の流れ方向に流れるようにすることができる。吸引具が間違った動きをさせられた場合、各リンパ管内のリンパ弁が、リンパ液の逆流を防止する。運動が、盛り上がった皮膚に伝わらない場合には、リンパ液は、概して蓄積される。概して、動力又は手動で駆動されるホイール又はボールによって行われるこのマッサージにより、リンパ液が、皮下脂肪区域及び他の皮下深部から吸出される。この皮下深部の深さは、真皮の下、約5‐10mmの深さである。
【0005】
米国特許第5,961,475号には、マッサージ中に皮膚に負圧を加えるマッサージ器が開示されている。米国特許第6,662,054号には類似のマッサージ器が記載されている。このマッサージ器は、脂肪組織を僅かに加熱することによってリンパ液流を改善するための無線周波(RF)源を有している。幾つかのマッサージシステム、例えばデカ社(Deka)及びシノジュア社(Cynosure)が製造したシステムは、約0.1‐2W/cmの低出力の連続動作(CW)光源を含むことで、約1‐3°Cで脂肪組織を深部加熱して、リンパ液循環を増進させる。真空リンパマッサージ器と組み合わされた光源は、低出力のため、血管の凝固の誘発は不可能である。また先行技術の真空リンパマッサージ器は、真空を作用させることで皮膚を突出させたり、皮膚にひだを発生させるようになっている。
【0006】
高強度パルスレーザ照射の吸収による血管の選択的治療は、585nmの色素レーザ並びに他の種類のレーザで可能である。光若返り法は、また800‐980nmの近赤外スペクトル帯域のダイオードレーザや、約1064nmの周波数を有するNd:YAGレーザでも実施されたが、成功は限られている。これらのレーザから発せられる光は、小血管又は近接の液体によって十分には吸収されない。広帯域の非コヒーレント高強度パルス光システムも、光若返り法に使用され、或る程度成功しているが、10回以上の反復治療が必要である。高強度短パルス器から発せられる光の結果として、血管に吸収される熱は、隣接コラーゲン束に伝搬する。
【0007】
血管によるパルスダイオード及びNd:YAGのレーザビーム吸収率は、パルス色素レーザビームの吸収率より低い。赤色・赤外高強度パルス光並びにレーザ・システムによる限られた光若返りを補正するには、30‐60J/cm程度の極めて高エネルギー密度を発生させる必要がある。このようなエネルギー密度では、メラニンに富む表皮、特に黒みがかった皮膚は、冷却されなければ損傷する。スペクトルの可視域又は近赤外域で作業する高強度パルスレーザ又は非コヒーレント高強度パルス光源のエネルギー密度を低減する方法は、したがって有益である。
【0008】
約585‐600nmの黄色スペクトル帯域で作業するパルス色素レーザは、はるかによく血管から吸収され、また小じわの除去にも使用される。約3‐5J/cmの色素レーザから発せられるエネルギー密度は、他のレーザから発せられる光の密度より、はるかに低い。しかし、色素レーザから発せられる光のパルス持続時間は、極めて短く、1マイクロ秒に近いので、黒ずんだ皮膚の表皮には危険である。色素レーザによるしわの治療は、血管集中度の高い赤又は淡紅色の皮膚特性より、むしろ治療される黄色又は白色の皮膚で明らかになるように、吸収する血管の低集中度のために、効果がなかなか現れない。色素レーザから発せられる光が低密度エネルギーのため、10回程度の治療が必要である。小じわの治療の場合に、色素レーザから発する光のエネルギー密度を低減する方法、又は現在使用されているエネルギー密度レベルで、必要な治療回数を減らす方法を得ることは、有益なことだろう。
【0009】
565nmで作業するパルス色素レーザは、またポートワイン斑又は末梢血管拡張症等の血管障害の治療やクモ状静脈の治療にも利用される。発生する光のエネルギー密度は、約10‐15J/cmであり、熱傷を発生しやすい一方、紫斑病の発症が避けがたい。血管障害の治療のため、色素レーザ光のエネルギー密度を低減する方法が得られれば、極めて有益だろう。
毛の除去は、赤外光の吸収を誘発することで達せられてきたが、赤外光は、毛の線維内に含まれるメラニンには余り吸収されず、血管に作用する。より詳しく言えば、赤外光が毛包の遠位端で血管に吸収されることで、毛の除去過程が助成される。毛の除去には、高強度パルスNd:YAGレーザ、例えばアルタス社(Altus)、デカ社、イリデックス社(Iridex)により製造され、エネルギー密度が50J/cmを超える光を発するレーザが使用される。光の浸透度は深く、しばしば6mmを超える。毛の除去又は光若返りに使用される幾つかの高強度パルス光又はパルス・レーザのシステム、例えばシネロン社(Syneron)製のシステムは、また皮膚内でのエネルギー吸収度を高めるため、RF源を採用している。
【0010】
皮膚ターゲットへの単色光の入射により発生する煙又は蒸気を、レーザシステムの遠位端の窓と皮膚ターゲットとの間隙から排出する作業は、先行技術の切除式レーザ・システム、例えばCO、エルビーウム、エキシマいずれかのレーザ・システムと関連して行われる。発生する煙又は蒸気は、通常、大気圧より高い圧力で導入される外部の新気により掃気される。
皮膚表面を切除をすることなしに皮下の血管障害を治療するパルス色素レーザ又はパルスNd:YAGレーザ等の凝固レーザは、概して皮膚ターゲット上に大気圧以下の圧力を生じさせる排出チャンバを備えていない。
【0011】
スペクトルの可視帯域及び近赤外帯域で作業し、例えば血管障害等の皮下障害をパルス色素レーザ・システム又はNd:YAGレーザで治療する幾つかの先行技術による高強度パルスレーザ・システムは、皮膚冷却装置システムを用いている。皮膚冷却システムを使用しているため、水分は、概して遠位の窓で凝縮する。水分は、皮膚治療では発生しないが、遠位の窓が低温であるために発生する。レーザの次の発光前に、レーザ・システムの遠位窓から凝縮蒸気を排除するのが望ましいだろう。
米国特許第5,595,568号及び第5,735,844号には、毛除去用のコヒーレント・レーザ・システムが記載されているが、この場合、皮膚に接触する透明の接触具によって皮膚が加圧され、それによって血管内の血液が治療区域から排除される。この手法では、光の皮下浸透度を高めるために、血液による光の吸収量が低減される。
【0012】
米国特許第5,630,811号及び第5,853,407号にも、毛除去用のコヒーレント・レーザ・システムが記載されているが、これらの場合は、局所的な血流を制限することにより、毛の周囲の皮膚組織に対する損傷が低減される。局所的な組織構造は、皮膚に対し正圧又は負圧を加えることにより平らにされる。治療ビームは5mmのみに限定される。該治療ビームは、約40mmのパルス当たり、より大きい治療スポットには不適である。また、加えられる圧力レベルは挙げられていないが、圧力レベルが異なれば、効果も異なるだろう。これらの効果の幾つかは、後述するように、5mm以下のビーム直径では達せられない。皮膚の加圧の結果による血液の排除は、均一ではない上に、その大きさの治療スポットに即時には生じないため、レーザビームの発光後も、血液が皮膚組織内に残ることがある。また、大直径の治療装置は、皮膚に負圧を加える場合、比較的高い持ち上げ力を要するので、別の治療部位へ簡単には置き換えられない。
【0013】
更にこのレーザ・システムは、皮膚に負圧を加える場合、ゲルによる閉塞を防止するための何らかの手段を備えていない。小直径の治療区域へ皮膚を平板化する正圧又は負圧を加えることで毛の除去は促進されるが、血管障害の治療は改善されない。なぜなら、血液を排除するため、治療区域内の血管には血液が少ないからである。このため、皮膚ターゲット内の血液分量を交互に増減できる真空補助装置が必要である。
【0014】
US 2002/0128635には、散乱媒体内で、選択した深さに光エネルギーを作用させるヘッド装置が開示されており、該散乱媒体が、ヘッド装置と物理的、熱的に接触する外層を有している。このヘッド装置は、エネルギー放射面を有する熱伝導性ブロックと、エネルギー放射面に隣接してブロックに取付けられた少なくとも1個のレーザダイオードとを含んでいる。ブロック底部には、スリット付き高反射性マスクを有する透明部材が取付けられ、皮膚からの散乱エネルギーの逆反射が最適化されている。一実施例では、該ブロックが凹部を有し、該凹部内へ皮膚が真空により吸引される。このヘッド装置は、面積の大きい皮膚表面を治療する場合、別の治療部位へ容易には置き換えられない。皮膚に真空を作用させた場合には、比較的大きい持ち上げ力が必要だからである。更に、皮膚に真空を作用させた場合のゲルによる閉塞を防止する手段を備えていない。
毛又は血管障害の、光ベースの非切除式(non‐ablative)治療は、しばしば極めて苦痛であり、特に、腿又は背部のビキニラインに現れる黒く、太い望ましくない毛の処置は苦痛である。痛みは、高強度パルス光源及びレーザを含むほとんどあらゆる種類の光ベースの毛除去装置の場合に、知覚される。
【0015】
前述の先行技術での血液排除の努力により、幾つかの場合、毛除去治療中に治療対象ではない皮膚組織に対する不必要な損傷、例えば不必要な血管内凝固が避けられる一方、毛除去効率が高められる。皮膚組織の損傷を低減することで、治療中に感じる痛みは直接には緩和されず、むしろ血液の排除により、光の治療パルスに対する毛幹の曝露度が高まる結果、毛包温度が上昇し、それに相応して、毛幹周囲の神経の過熱による激痛のレベルが高まる。更に、皮膚の一箇所から血液が排除されると、隣接区域の血液分量が増加し、治療光が、血量の豊富な隣接区域に拡散すると、熱損傷の危険が生じる。光ベースの毛除去の開業医には周知のように、毛の区域が、特に黒く太い毛が特徴の場合、治療時、治療ビームが入射すると、激痛を感じるが、無毛の区域に光ビームを当てても事実上無痛である。したがって、毛除去治療中に感じられる痛みは、毛幹周囲の神経によって生じ、皮膚の他の区域に分布している神経によるものではないことが結論付けられる。したがって、治療エネルギー密度を減少させることなしに、痛みを軽減する改良型装置が必要とされる。
【0016】
例えばW.カピットほか著「生理学塗り絵帳」(1987年、ハーパー・コリンズ社刊)に説明されている求心性抑制のゲート理論(Gate Theory of Afferent Inhibition)(p.88,89)によれば、広い範囲の急速伝導触覚神経により、例えば皮膚をこすることで感じられる圧力が、後角内の伝導ゲートを制限し、弱い痛み信号に対するアクセスを排除し、そのために脊髄内の痛覚神経による痛み信号の伝播が阻止される。光ベースの皮膚治療中、表皮近くの、毛包に隣接する痛覚神経は、毛包の比較的高い温度上昇を、しばしば70°Cを超える温度上昇を感知する。もし抑制されなければ、痛覚神経は、痛み信号を脊髄を介して脳へ伝達する。感知された痛みによって、治療時間はかなり増大する。
【0017】
光ベースの美肌治療による痛みの知覚には2種類が認められる。すなわち、即時型の鋭い痛みと、長く続くより穏やかな痛みである。即時型の鋭い痛みは、各治療パルス時に知覚され、数ショット後に我慢できないほどに高まり、患者はしばらく治療を延ばして休んでから、治療を再開せざるを得ない。治療速度は、特に腿の上方の広い区域の場合には、したがってかなり遅くなる。患者は、痛みに耐えられるかどうかで、治療の継続又は中止すら決めることになる。鋭い痛みは、表皮及び真皮内の神経末端が治療光に曝露されたり、真皮内深くに位置する毛幹の知覚レセプタに知覚されたり、毛幹が治療中にしばしば約70°Cに加熱されて毛球を取り囲む神経が刺激されたりすることで生じる。
より急激ではなく、長く続く、例えば治療の10分後から1日後まで続くより穏やかな痛みは、皮膚温度の上昇の累積によるもので、この温度は、体温より約3‐5°C高い温度である。皮膚温度の上昇は、発赤と浮腫を誘発し、毛の密度と隣接組織内の血液分量とに応じて痛みを生じさせる。治療直後に冷湿布をすることで、通常は、治療後の痛みの防止が助けられる。
【0018】
高強度パルス光による毛又は血管障害の非切除治療時に生じる即時型の鋭い痛みを緩和又は防止する最も普通の先行技術による方法は、カナダのアストラゼネカ社(AstraZeneca Canada Inc)製のEMLAクリームを塗布することである。このクリームは、治療の約30‐60分前に皮膚に塗布する局所麻酔薬であり、皮膚を無感覚にし、痛覚を低減させる。この先行技術による方法は、クリームの塗布から治療までの間、かなりの時間待たねばならない不便さのため、概して実用的ではない。保健専門員は所定時間内に最大数の患者を治療したがるので、クリニックは、EMLAクリーム塗布に続く高強度パルス光治療を受ける患者用の広い待合室を用意せねばならない。
毛又は血管障害の非切除治療により生じる痛みは、また高強度パルス光のエネルギー密度を低減することにより緩和又は防止できる。しかし、エネルギー密度の低減は治療の質を低下させ、加えて、特に治療費が比較的高価なため、受け入れがたい解決策である。
【0019】
米国特許第6,246,649号及び第6,530,920号には、皮膚治療レーザ用の冷却ヘッドと、治療部位周囲の皮膚を冷却することにより皮膚の切除式レーザ治療中の痛みを低減又は除去する方法が開示されている。痛みは、皮膚表面を切除又は焼灼することに関係している。冷却ヘッドの抽出ポートにより、例えば皮膚治療レーザにより治療部位から発生する煙等の残滓を真空源へ案内できる。除去された蒸気や煙等は新鮮な正常な空気に換えられる。
先行技術の排煙装置に関して言えば、大気圧の新気の導入により、概して、著しく大気圧以下の圧力は皮膚表面上方に発生しない。皮膚表面上方に大気圧以下の圧力が保たれると、治療用ハンドピースを治療過程で皮膚の一部位から持ち上げて他の部位へ移動させる妨げになる。加えて、先行技術の排煙装置は、長パルスNd:YAGレーザ等の非切除式レーザとは組み合わせられない。これらのレーザは、皮膚表面下でのみ組織を治療し、皮膚表面の蒸発による煙を発生しないからである。更に、皮膚のターゲット上への放熱ゲルの塗布は、ゲルが皮膚と周囲空気との間のバリアとなるため、表皮の切除の場合、又は続く残滓排出の場合には役立たない。
【0020】
現在のレーザ及びIPL皮膚治療システムは、冷却手段を利用している。しかし、痛みは依然として著しい。
したがって、むだ毛、小じわ、血管障害を高強度パルス光又は高強度パルスレーザ・システムを用いて治療するさいに生じる痛みを、光源強度を低減せず、局所麻酔を適用せず、痛み軽減手段として冷却器を使用することなしに緩和する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、皮下障害、例えば血管障害を、皮膚表面又は表皮を損傷しない188nm未満の波長で作業する非切除式高強度パルス・レーザ又はパルス光のシステムによって治療する装置を得ることである。
本発明の目的は、皮下の光吸収深さを制御する装置を得ることである。
本発明の目的は、皮膚ターゲット内の血管の集中度を増すことにより、皮膚ターゲットに入射する光の吸収量を増すための装置を得ることである。
本発明の付加的目的は、毛の除去や、目の周囲や手又は頚部近くのしわを含む小じわの除去や、ポートワイン斑又は酒さの治療に適した高強度パルス光のエネルギー密度レベルが、先行技術のそれより低減できる装置を得ることである。
本発明の付加的目的は、また現在使用されているエネルギー密度レベルでの毛の除去や、眼の周囲及び手や頚部の近くのしわを含む小じわの除去や、ポートワイン斑又は酒さの治療に必要な治療回数を、先行技術の回数より減少できる装置を得ることである。
【0022】
更に本発明の付加的目的は、レーザ治療された皮膚の冷却により遠位の窓に凝縮した蒸気を、次の光パルス発光前に反復排出する装置を得ることである。
更に本発明の付加的目的は、むだ毛、しわ、血管障害を、高強度パルス光又は高強度パルス・レーザのシステムにより治療するさいに生じる痛みを、光源強度を低下させることなく、また局所麻酔を適用することなく、更に痛み低減のための皮膚冷却に頼ることなく、緩和する装置を得ることである。
更に本発明の付加的目的は、真空した援用非切除式光ベース治療ハンドピースを一治療区域から次の治療区域へ迅速に置き換え可能な装置を得ることである。
更に本発明の付加的目的は、真空発生装置を妨害する結果を生じることなく、皮膚表面への放熱ゲルの塗布に役立つ真空援用光ベース皮膚治療用の装置を得ることである。
本発明の更に別の目的は、一方の手で保持できる真空援用光ベース治療装置と、他方の手で保持できる光治療ハンドピースとを得ることである。
本発明の他の目的及び利点は、説明が進むにつれて明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、真空援用式光ベース皮膚治療のための装置に関するものである。この装置は、皮膚ターゲットへ向けられる高強度パルス単色光又は非コヒーレント光に対し透過性又は半透過性の真空チャンバを含んでいる。真空チャンバが真空に引かれることで、前記皮膚ターゲットが前記真空チャンバに吸引される。この装置の効能及び有用性は、2モードで装置を用いることで達せられる:すなわち、(a)0‐1気圧の範囲の高真空レベルに達する真空発生モードと、(b)指向性光に関連する光学エネルギーが皮膚表面下の予め決められた深さで吸収された後、光源と真空ポンプとが非作動化される場合の真空解除モードとであり、この真空解除モードでは、大気が真空チャンバ内へ導入されるので、真空チャンバは別の皮膚ターゲットに迅速に再位置決めできる。
【0024】
本発明一実施例の場合、治療装置には、
a)非切除式高強度パルス単色光源又は非コヒーレント光源と、
b)皮膚ターゲット上に配置可能な真空チャンバとが含まれ、該真空チャンバが、遠位端には開口を、近位端には伝搬部材を備え、該伝搬部材が、前記光源から発せられる光に対し透過性又は半透過性であり、前記皮膚ターゲットに向けられており、また
c)前記真空チャンバに真空を発生させる装置が含まれ、発生させる真空のレベルが、前記開口を介して前記真空チャンバに前記皮膚ターゲットを吸引するのに適しており、
d)真空発生モードの間、真空チャンバ内へ空気の流入を防止する手段が含まれている。
【0025】
ここで言う「遠位」とは、光源の出口に向う方向と定義され、「近位」とは、遠位方向とは反対方向と定義される。
ここで言う「伝搬部材」とは、選択された皮膚ターゲットへ、所望の治療を行うのに適した電磁エネルギーを伝搬する部材を含んでいる。電磁エネルギーが光の場合、伝搬部材は光学素子である。電磁エネルギーがRFエネルギーの場合は、伝搬部材は金属でよい。
「排出チャンバ」、「真空チャンバ」の用語は、ここではいずれを用いてもよい用語として使用される。
ここで言う「真空レベル」の用語は、気圧未満の絶対圧を言う。真空レベル500mmHgは、したがって気圧未満500mmHgの圧力である。真空レベルが、一定値を超えるという場合、例えば400mmHgを超えるという場合、その圧力は、前記一定圧を超える気圧未満の値の絶対圧である。
真空チャンバに取付けられた取手を一方の手で保持でき、他方の手で光治療ハンドピースを保持できるのが好ましい。
【0026】
好ましくは、
a)真空を発生する装置が真空ポンプと少なくとも1つの制御弁を含み、
b)光の波長が400‐1800nmの範囲であり、
c)光のパルス持続時間が10nsec‐900msecの範囲であり、
d)光エネルギー密度が約2‐約150J/cmの範囲であり、
e)真空チャンバ内に発生する真空レベルが約0気圧‐約1気圧の範囲であり、
f)光源が、色素レーザ、Nd:YAGレーザ、ダイオード・レーザ、発光ダイオード、アレキサンドライト・レーザ、ルビー・レーザ、Nd:YAG周波数2倍レーザ、Nd:ガラス・レーザ、非コヒーレント高強度パルス光源、RF源又は単極もしくは双極RF源と組合された非コヒーレント高強度パルス光源から成る群から選択され、
g)この光は、毛の除去、コラーゲンの収縮、光若返り、血管障害の治療、皮脂腺又は汗腺の治療、いぼの治療、色素沈着病変の治療、損傷コラーゲンの治療、皮膚収縮、床擦れの治療、ケロイドの治療、乾癬の治療、ポルフィリン又は青緑素の色素沈着病変の治療に好適であり、
h)この光は、ポートワイン斑、末梢血管拡張、酒さ、クモ状静脈の群から選択した血管障害の治療に好適であり、
i)伝搬部材は、前記皮膚ターゲットに隣接する皮膚表面に対し事実上直角方向に光を伝搬するのに好適であり、
j)伝搬部材は、0.5‐50mmの、好ましくは約2mmの間隙によって隣接皮膚表面から隔てられており、
k)パルス当たりの治療スポットは5mmを超え、好ましくは15‐50mmであり、
l)真空発生モード中の真空チャンバ内への空気の流入が、制御弁及び制御回路により、又は真空チャンバの手動閉鎖手段により防止されており、
m)真空チャンバの遠位端に設けられた開口の最大長さ対最大幅の比が、約1対4であり、
n)真空チャンバが少なくとも1つの吸引開口を有し、真空が、前記少なくとも1つの吸引開口を介して真空チャンバに発生させられ、
o)真空チャンバがU字形であり、
p)真空チャンバが、皮膚ターゲットに隣接する皮膚表面と真空チャンバ壁との間の周縁接触域をシールするためのリムを備えている。
【0027】
好ましくは、前記治療装置は、更に真空ポンプの作業を制御する装置と、少なくとも1つの制御弁と、光源とを含んでいる。制御装置は、電子式、空気式、電気式、光学式の装置群から選択される。制御装置は、光治療ハンドピースに配置された指で押すボタンによって起動できる。
一態様では、制御装置は、真空ポンプの操作に続いて予め定めた第1の遅れ、例えば約0.5秒‐約4秒の後に、光源を発光させるのに適している。
一態様では、制御装置は、少なくとも1制御弁の開弁に続いて、予め定めた遅れの後に、光源を発光させるのに適している。
一態様では、制御装置は、第2の皮膚ターゲットに真空チャンバを楽に再位置決めするために、光源の非作動化に続いて、真空チャンバ内圧を気圧にまで高めるのに適している。真空チャンバ内圧の昇圧は、光源から発せられる光エネルギーの有意な減少を感知すると制御装置に信号を送る光検出器によってトリガされるか、又は光源の非作動化に続いて予め定めた第2遅れ後に起動される。
【0028】
一態様では、制御装置は、目標エネルギー密度レベルの光が皮膚ターゲットに向けられていることを検出するのに適し、かつまた該エネルギー密度レベルが前記目標レベルより有意に高い場合には、光源を非作動化するのに適している。
一態様では、真空チャンバは、近位に配置されたハンドピースに接続されるか、又はハンドピースと一体形成され、ハンドピースを介して光が皮膚ターゲットに向けて伝播される。真空チャンバは、開口を有するように形成された近位のカバーを有し、該カバーは、一体の伝搬部材を有する光案内となるように、ハンドピースに取り付け可能、又は取り外し可能に取り付け可能である。
一態様では、真空ポンプは空気ポンプである。
一態様では、真空ポンプは、空気とゲルとを真空チャンバ内から、真空チャンバ内部と連通する導管に接続されたホースを介して抜き取るためのポンプ、例えば蠕動ポンプである。ホースは、真空発生モード中、皮膚表面へホース端部から放出されるゲルによって光ベースの治療を皮膚ターゲットが受けたことを指示する手段を備えている。
【0029】
一態様では、この治療装置は、更に事実上非平面的な皮膚表面上で真空チャンバを安定化する手段を含んでいる。
一態様では、この治療装置は、更に皮膚ターゲット上への真空チャンバ配置を感知するための、かつまた皮膚ターゲット上への真空チャンバ配置に続いて真空ポンプ起動の第1信号を発生させるための皮膚接触検出器を含んでいる。
一態様によれば、制御弁は、光検出器による第2信号の発信に続いて開弁される。光検出器は、皮膚ターゲットに向けられた光の終了を感知するようにされており、それによって気圧が真空チャンバ内部へ導入される。
一態様では、前記第2信号は真空ポンプの非作動化するのに適している。
【0030】
本発明の別の実施例では、治療装置は、更に皮膚表面上に配置可能な真空チャンバ配列を含んでいる。この配列は、光透過性又は光半透過性の材料製単一のシートから形成されており、該シートが空気排出用の複数導管を有するように構成され、該導管の各々が、対応する真空チャンバと連通している。隣接真空チャンバ間の距離は、各チャンバ内部から拡散した光が、対応する導管下に位置する皮膚区域を治療できるように十分に狭くとられている。
各導管は、好ましくは、第1と第2の部分に分岐しており、これらの導管部分は、それぞれ真空ポンプと圧縮空気源とに連通している。
一態様では、各真空チャンバが、真空ポンプを起動する信号をトリガする接触検出器と、対応する第1と第2の導管部分を貫通する流体通路をそれぞれ制御する2個の制御弁と、皮膚ターゲットへ向けられた光の終了を感知すると、対応第2導管部分を介して圧縮空気を導入する信号を発する光検出器とを備えている。
一態様では、第1導管部分は、すべての真空チャンバからの空気が真空ポンプの起動時に、同時排出されるように構成されている。
【0031】
本発明の別の実施例では、真空発生装置が、伝搬部材を取り付けた垂直に変位可能なカバーと、該カバーを取り囲み、かつカバーと似た形状を有するチャンバ壁部とを含み、真空が、前記壁部に対する前記カバーの近位への変位時に、前記カバーと、前記壁部と、皮膚ターゲットとの間の容積により画成される真空チャンバ内に発生せしめられる。真空チャンバ内への流入を防止する手段はシール部材であり、該シール部材は、カバーの外周部に固定され、チャンバ壁部に弾性接触している。
一態様では、近位に向けられた力又は遠位に向けられた力が、複数ソレノイド、ばね組立体、空気式装置、これらの組み合わせから成る群の中から選択された何らかの手段により発生させられる。これらの手段は、カバーの周部に配備され、チャンバ壁に結合され、隣接皮膚表面に対し皮膚ターゲットを吸引する高さを調節するように制御可能である。それら手段の電力消費量が低いため、ソレノイドの励起には1.5V電池を使用できる。
【0032】
治療装置は、好ましくは、更に真空解除モード時に、真空チャンバ内へ大気を導入するための通気管を含んでいる。通気管は、皮膚ターゲット治療終了時に起動される弁と連通している。
一態様によれば、近位向きの力は、真空ポンプにより補助される。
本発明の別の実施例では、治療装置は、真空発生装置への皮膚冷却ゲルの浸入を防止する手段を含んでいる。
一態様によれば、真空発生装置へのゲルの浸入を防止する手段は、トラップと、真空チャンバからトラップへゲルと空気とを吸い込む第1導管と、トラップから真空ポンプへ空気を吸出する第2導管と、第1と第2の導管の入口に任意に配置されるフィルタとを含んでいる。
一態様によれば、前記トラップは、ゲルと結合可能なイオン交換樹脂をトラップに導入するのに適している。
【0033】
一態様によれば、ゲルの浸入を防止する手段は、取り外し可能な真空チャンバ上部であり、この上部を取り外すことにより、真空チャンバ内部に保有されるゲルを除去することができる。好適な装置は、開放中央区域を有する上部と、該上部に取り付けられた伝搬部材と、真空チャンバ壁部と、該壁部と直角の、前記上部を支持するように適宜に寸法づけられた真空チャンバ・カバーと、前記真空チャンバ・カバーに前記上部を取り外し可能に固定するための、対応真空チャンバ壁部に揺動可能に結合された複数取り付けクリップとを含んでいる。
一態様によれば、真空チャンバ壁部は疎水性材料で被覆されている。これによって真空チャンバは、真空解除モード時に、真空チャンバ壁部遠位端の形状で皮膚表面に落ちるゲルにより、皮膚ターゲットが光ベースの治療を受けたことを指示する。
一態様では、少なくとも1吸引開口が、真空チャンバ壁部遠位端の上方に、真空チャンバ中心線から十分に間隔をおいて配置されていることで、真空発生時に少なくとも1吸引開口がゲル及び吸引される皮膚により妨害されるのが防止される。
【0034】
本発明の別の実施例では、治療装置が、更に皮膚冷却手段を含み、該皮膚冷却手段が、皮膚ターゲットのところでの表皮温度上昇速度を低減するようにされている。発生させる真空のレベルは、皮膚冷却時に伝搬部材と皮膚ターゲットとの間隙内に発生し、伝搬部材のところに凝縮する蒸気を排出するのに適している。
一態様では、皮膚冷却手段は、真空チャンバ外側で真空チャンバに当接された金属板であり、金属板は、熱電冷却器によって冷却される。この金属板は、皮膚ターゲットに隣接する皮膚表面に配置可能であり、それにより真空チャンバの側面を冷却するか、又は伝搬部材と接触する。
一態様では、皮膚冷却手段は、伝搬部材の遠位面に取り付けられる指向性光を透過するポリカーボネート層である。
一態様では、皮膚冷却手段は、皮膚ターゲット上に当てがわれるゲル、低温液体、気体のいずれかである。
【0035】
本発明の別の実施例では、治療装置は、皮下の血管により光が吸収される深さを制御するのに適し、該治療装置には、
a)皮膚ターゲット上に配置する真空チャンバが含まれ、該真空チャンバは、遠位端に開口を有するように構成され、かつ近位端に伝搬部材を備えており、該伝搬部材が、前記皮膚ターゲットに向けられた高強度パルス単色光又は非コヒーレント光に対し透過性又は半透過性であり、前記皮膚ターゲットに隣接する皮膚表面と事実上直角方向に光を伝搬するのに適しており、また
b)前記真空チャンバに真空を発生させる装置が含まれ、発生する真空のレベルが、前記開口を介して前記真空チャンバに前記皮膚ターゲットを吸引するのに適しており、更に
c)前記皮膚ターゲットの皮膚表面下の予め定めた深さ以内で血管及び/又は血液の集中度の増大を誘発する手段を含み、皮膚ターゲットに向けられた光に関連する光学エネルギーが前記予め定めた深さ以内で吸収される。
【0036】
ここで言う「血液分量」という用語は、「皮膚表面下の予め定めた深さ以内での血液及び又は血管の集中度」という文言と置き換えることができる。
一実施例によれば、前記皮膚ターゲットの皮膚表面下の予め定めた深さ以内の血液及び/又は血管の集中度増加を誘発するための手段は、発生させた真空を調節するための手段である。
光エネルギーが吸収される皮膚表面下の深さは、この深さに位置する予め定めた皮膚組織が熱により損傷又は治療されるように選択することができる。ここで「皮膚組織」とは、表皮下に位置する損傷された、又は健康に機能している生体量と定義される。例えば血管、コラーゲン束、毛幹、毛包、皮脂腺、汗腺、脂肪組織等である。皮膚ターゲット内の血液集中度に応じて、光は、皮膚表面と上皮層とを、それらに吸収されることなく通過し、次に予め定めた皮膚組織層に対応する皮膚層で吸収される。ここで言う「光」という用語は、単色光と非コヒーレント光の両方を意味する。「光の吸収」及び「光学エネルギーの吸収」という用語は、同じ物理的過程を表しており、したがって相互に置き換えることができる。
【0037】
先行技術の真空援用式レーザ又は高強度パルス光治療用装置では、真空発生に続いて、はっきりした皮膚のひだがスリットを通して形成されるが、このような装置とは異なり、本発明の装置により真空を援用して吸引された皮膚は、ゆがむことがなく、むしろ僅かに、かつ事実上一様に真空チャンバ内へ吸引され、隣接皮膚表面より約1‐2mm突出するだけである。吸引された皮膚の、隣接皮膚表面からの最大突出量は、真空チャンバの近位端を形成する伝搬部材によって制限される。伝搬部材は、0.5‐50mmの範囲の間隙、好ましくは2mmの間隙によって隣接皮膚表面から隔てられている。本発明の一実施例では、吸引された皮膚は、伝搬部材に当接する。
【0038】
ここで言う「真空の調節」とは、真空チャンバに真空を発生させる頻度内での真空レベルの調節、又は該頻度の調節を意味する。適切に真空を調節することによって、皮下の予め定めた深さで真空チャンバへ向う方向での血管内の血流速度を制御できる。皮膚ターゲット内で血液及び/又は血管の集中度が増すにつれて、光吸収発色団の数が、予め決めた深さで相応に増加する。したがって、予め決めた深さでの光学エネルギーの吸収値は上昇する。この吸収値は、皮膚障害の治療効果に直接に影響する。
【0039】
以下のようであるのが好ましい:
a)光の波長は400‐1800nmの範囲である。
b)光のパルス持続時間は10nsec‐900msecの範囲である。
c)光エネルギー密度が2‐150J/cmの範囲である。
d)真空チャンバの遠位端に形成されている開口の最大幅対最大長さの比は約1対4である。
e)真空チャンバ内に発生させる真空のレベルは0‐1大気圧の範囲である。
f)真空調節の頻度(度数)は0.2‐100Hzの範囲である。
g)光は、真空発生に続く予め定めた遅れ時間後に発光される。
h)予め定めた遅れ時間は約10msec‐約1secの範囲である。
i)真空チャンバの真空発生時間は2sec未満である。
j)真空調節は電子式に制御される。
【0040】
本発明の一実施例では、前記皮膚ターゲットの予め定めた皮下深さ内での血液及び/又は血管の集中度上昇を誘発する手段は、少なくとも1支持部材であり、該支持部材が、皮膚ターゲットに隣接する皮膚区域に配置され、かつ前記予め定めた深さ以内での血液及び/又は血管の集中度上昇を誘発するのに適した厚さを有している。治療装置が、更に少なくとも1つの脚を含み、該脚が、少なくとも1つの支持部材よりかなり薄手の厚さを有し、真空チャンバの周囲に配置され、隣接支持部材から分離されており、前記少なくとも1支持部材は、前記少なくとも1つの脚によって皮膚ターゲット方向へ血液が強制的に送られるようにされている。
光学エネルギーが吸収される予め定めた皮下深さは、その深さに位置する予め定めた皮膚組織を熱損傷又は治療するために選択される。
【0041】
この治療装置の場合、種々の治療用の治療エネルギー密度レベルは有意に低減されており、先行技術のそれの平均50%である。治療エネルギー密度レベルは、ここでは、例えば血管の凝固、コラーゲン束の変性、腺内細胞の破壊、毛包内細胞の破壊、望ましくない病変部の破壊を、光力学的治療によって、目標の変化、又は他の何らかの効果を皮膚組織に生じさせる最小エネルギー密度レベルと定義される。以下に挙げるのは、本発明を使用することで行われる種々の治療のさいの治療エネルギー密度レベルである:
a)血管障害、ポートワイン斑、末梢血管拡張、酒さ、クモ状静脈を、色素レーザユニットから発せられる波長585nmの光により治療する場合:5‐12J/cm
b)血管障害、ポートワイン斑、末梢血管拡張、酒さ、クモ状静脈を、ダイオードレーザユニットから発せられる波長940nmの光により治療する場合:10‐30J/cm
c)血管障害を、高強度パルス非コヒーレント光ユニットから発せられる波長570‐900nmの光により治療する場合:5‐20J/cm
d)色素レーザユニットから発せられる波長585nmの光により治療する光若返りの場合:1‐4J/cm
e)高強度パルス非コヒーレント光ユニットから発せられる波長570‐900nmの光による光若返りの場合:5‐20J/cm
f)高強度パルス非コヒーレント光ユニットから発せられる波長570‐900nmの光と、RF源との組み合わせ効果による光若返りの場合:高強度パルス非コヒーレント光ユニット及びRF源双方の場合に10J/cm
g)Nd:YAGレーザユニットから発せられる波長1604nmの光による毛の除去の場合:25‐35J/cm
h)ダイオードによる青色光(420nm)、オレンジ色光(585nm)、赤色光(630nm)のいずれかを発する光によるポルフィリン・ベースの光力学的治療の場合:5‐20J/cm
【0042】
好ましくは更に、治療装置には、真空発生装置及び光源の操作を制御するための制御ユニットが含まれている。この制御ユニットは、また真空チャンバと連通する少なくとも1つの制御弁の動作を制御し、真空発生に続く予め定めた遅れ時間後に発光させ、真空を電子式に調節するのに適している。
一態様では、治療装置は、更に皮膚ターゲット上への真空チャンバの配置を検知する皮膚接触検出器を含んでおり、前記制御ユニットは、前記皮膚接触検出器により発せられる信号に応じて真空発生装置を起動するのに適している。
一態様では、治療装置は、更に皮膚ターゲットに向けた光の終わりを検知する光検出器を含んでおり、前記制御ユニットは、この光検出器から発せられる信号に応じて制御弁を調整することにより、大気圧の空気を真空チャンバ内へ導入するのに適している。
【0043】
一態様によれば、治療装置は、更に皮膚ターゲットへ適当な電磁波を向けるためのパルス無線周波(RF)源を含んでいる。この電磁波の周波数は0.2‐10MHzの範囲である。RF源は、ワイヤと電極を介して皮膚表面に印加する交流電圧を発生させる双極RF発生器、又は別個の接地電極を有する単極RF発生器である。制御ユニットは、第1命令パルスを少なくとも1制御弁へ送り、第2命令パルスを高強度パルス光源及びRF源へ送るのに適している。
一態様では、治療装置は、更に紅斑センサを含み、該センサは、真空発生装置により誘発される皮膚の発赤度を測定するのに適している。制御ユニットは、光源からの発光前に、光源から発する光のエネルギー密度を紅斑センサの出力に応じて制御するのに適している。
一態様によれば、真空チャンバは開口を有するように形成された近位のカバーを有し、該カバーは一体の伝搬部材を有するハンドピース、例えば光ガイド等に取り付け可能である。
【0044】
一態様によれば、治療装置は、更に皮膚冷却手段を含み、該皮膚冷却手段は、皮膚ターゲットの表皮の温度上昇速度を低減するようにされている。
一態様によれば、治療装置は、更に真空発生装置に皮膚冷却ゲルが浸入するのを防止するための手段を含んでいる。
本発明の別の実施例では、治療装置は、ターゲットとされた皮膚組織の非切除式光ベース治療による痛みの緩和又は防止に適している。したがって、前記皮膚ターゲットに隣接する皮膚から伝搬部材を隔てる間隙と、真空発生の結果生じる近位へ向いた力の大きさとの組み合わせが、皮膚ターゲットを真空チャンバへ伝搬部材に接触するまで真空チャンバ遠位端の開口を介して吸引するのに適している。制御装置は、真空発生装置の操作に続いて予め定めた第1遅れ時間後に光源を発光させるのに適している。
【0045】
一態様によれば、治療装置は、皮膚ターゲットを、予め定めた第1遅れ時間に等しい、又はそれより長い持続時間の間、伝搬部材に接触させるのに適しており、それによって、皮膚組織治療の間、神経組織が発生させる痛み信号が緩和又は防止される。
前記制御装置は、好ましくは、真空発生装置により発生する真空レベルを制御するのに適し、複数の押しボタンを有し、それらの各々が、真空発生装置及び光源を独特な組み合わせの作業条件で設定することで、真空チャンバ内に予め定めた真空レベルを発生させ、かつ真空発生装置の操作に続いて予め定めた遅れ時間後に光源を発光させるようにされている。
一態様によれば、単一光源及び真空ポンプは、異なる構成の真空チャンバ、例えば痛みの緩和に適した真空チャンバ、又は皮膚ターゲット内の血液集中度上昇を誘発するのに適した真空チャンバと協働して作業が可能である。異なる構成の各真空チャンバは、治療光ハンドピースに適当なねじ又はクリップによって取り外し可能に取り付け可能である。
【0046】
本発明の別の実施例では、真空チャンバと流体連通する皮膚科用真空ポンプが備えられ、その場合、真空チャンバは、ゲルを被覆された皮膚区域に配置可能であり、かつチャンバの近位端には、光ベースの皮膚科治療に適したパルス光を透過又は半透過する伝搬部材を、遠位端には開口を備えている。
前記真空ポンプは、頂点で終わる湾曲凸面を有する概して等辺三角形状の外輪郭を有する偏心回転ロータを含み、しかも、前記凸面の各々が、対応面の中心線に隣接する、対応面と事実上平行な中心面スロットを有するように形成されている。前記真空ポンプは、更にケーシングを含み、該ケーシングは、ロータが回転するキャビティを画成する外トロコイド形内壁を有するように形成され、かつ該ロータの頂点がロータの偏心的な全角変位にわたって前記内壁に接触するように構成されている。
【0047】
前記キャビティ内には、前記内壁と前記ロータ対応面との間の容積により可変寸法の複数画室が形成され、前記真空チャンバから吸引された空気とゲルとの制御された量が、真空ポンプの動作に続いて該画室を介して順次にポンプ排出部へ運ばれる。前記画室の各々は、吸入‐膨張サイクルで第1容積から第2容積へ容積が増大することで、前記真空チャンバ内に真空を発生させ、前記第2容積から第3容積へは圧縮‐排出サイクルで空気及びゲルを排出する。中心面スロットの近くの対応ロータ面は、圧縮‐排出サイクル時には対応画室内で加圧されるゲルによって加えられる力に応じてたわみ可能である。
前記真空ポンプは、圧縮不能のゲルにより真空ポンプ内に極めて高圧が発生するにも拘わらず、真空チャンバからゲルと空気とを同時排出可能である。この真空ポンプは、また僅かな又はかなりの粘性を有する別の液体が、光ベース治療中、皮膚区域から熱を伝えるのに使用される場合、該液体を排出することもできる。以後、「ゲル」という用語を使用する場合、粘性を有する液体をも含むこととする。
【0048】
前記ケーシングは、空気及びゲルを真空チャンバ内部から真空ポンプのキャビティへ吸引する導管と連通する入口と、空気及びゲルを排出管へ排出する出口とを有するように構成されている。該真空ポンプは、好ましくは更に排出管より寸法の大きい排出パイプを含んでいる。
前記真空ポンプは、好ましくは、更に真空チャンバ内圧を大気圧まで、例えば約0.1秒以内に回復する手段を含んでいる。真空チャンバ内圧は、真空ポンプの逆回転により大気圧まで回復され、大気圧空気が真空チャンバへ吸入される。
前記真空ポンプは、少なくとも500治療サイクルの間、真空チャンバから空気及びゲルを排出可能であるのが好ましい。該治療サイクルの各々は、真空発生段階、治療発光段階、真空解除段階を特徴とする。前記真空ポンプは、また前記各治療サイクル中、前記開口を介して真空チャンバに前記皮膚区域を吸引するのに適した真空レベルを真空チャンバ内に発生可能であるのが好ましい。
【0049】
真空チャンバ内に発生させる真空レベルは、500mmHgを超える値であるのが好ましい。真空ポンプの排出速度は、各治療部位での治療サイクルが3秒以内に、好ましくは1‐3秒又は2‐3秒、あるいはまた1秒未満で完了できるように十分に高速である。
真空ポンプは、好ましくは、更に真空チャンバ内に発生する真空レベルを制限する手段を含んでいる。真空チャンバ内に発生する真空レベルは、排出管又は排出パイプを介して排出されずに残留する大気圧によって制限され、この残留大気圧は、入口へ移動して真空チャンバから吸引された空気と混合可能である。真空チャンバ内に発生する真空レベルは、約0.05‐0.1気圧に制限される。
【0050】
前記真空ポンプは、好ましくは、更にロータをケーシングの形状に合致させるための手段を含んでいる。この手段は、対応頂点近くの各ロータ面に形成された端面スロットを含んでいる。端面スロットの各々は、対応面に対し事実上直角であり、該対応面を、より小さい部分とより長い部分とに分割され、より小さい部分が、ケーシング内壁への対応頂点の接触時にたわみ可能であり、そこではロータのキャビティのギャップは、ケーシング内壁の第2区域とは異なる寸法となる。
ロータを取り付けた軸を駆動するようにされたモータの電力消費量は、約1‐10Wの範囲が好ましい。
前記真空ポンプは、好ましくは、更にポンプカバーと底部とを含み、これらが、各治療サイクルにわたってケーシングに事実上密封当て付けされたままとなる。
【0051】
ロータ、ケーシング、カバー、底部は、好ましくは、ポリマー材料等の自己潤滑材料製、例えば、アセタル約70%と摩擦係数約0.05のテフロン(登録商標)約30%との混合材料製である。
一態様では、ロータ、ケーシング、カバー、底部は、鋼製である。
前記真空ポンプは、好ましくは、更に頂部と底部とのカバーを取り囲むシールリングと、頂部と底部とのカバーの間に挿入されたシールディスクとを含んでいる。
ポンプ容積は、好ましくは、25cm未満であり、したがって導管は10cmを超えない長さを有している。
【0052】
本発明は、また皮膚科用のハンドピースに関し、該ハンドピースには、
a)真空チャンバが含まれ、該真空チャンバは、ゲルで被覆された皮膚上に配置可能で、チャンバ近位端に光ベース皮膚治療に適したパルス光を透過又は半透過する伝搬部材を備え、チャンバ遠位端には開口を備えており、
b)前記真空チャンバに取り付けられたハンドピース胴部が含まれ、また
c)前記ハンドピース胴部内に収容された真空ポンプが含まれ、該真空ポンプが、頂点で終わる複数湾曲凸面を有する概して等辺三角形状の外輪郭を有する偏心回転ロータを含み、前記凸面の各々が、対応凸面の中心線に隣接する、対応凸面と事実上平行の中心面スロットを有するように構成されており、前記真空ポンプが、更に、前記ロータの回転するキャビティを画成する外トロコイド形内壁を有するように形成されたケーシングを含み、該ケーシングが、前記ロータの偏心角変位全域にわたってロータ頂点が前記内壁と接触するように構成されており、更に
d)前記真空チャンバと前記ポンプキャビティの第1ポートと流体連通する導管と、
e)前記ポンプキャビティの第2ポートと連通する排出管と、
f)前記ポンプロータを駆動する双方向モータと、
g)前記モータの制御ユニットと、
h)前記モータ及び前記制御ユニットの電源と、
i)前記モータの起動と非作動化のための電源と電気接続手段とが含まれ、
しかも、可変寸法の画室が、前記内壁と前記ロータの対応面との間キャビティ容積により形成され、かつこれらの画室によって、前記導管を介して前記真空チャンバから吸引された空気及びゲルの制御された量が、前記モータの起動に続いて前記排出管へ順次搬送可能であり、
前記画室の各々が、吸入‐膨張サイクルで第1容積から第2容積へ増大することで、前記真空チャンバ内に真空が発生し、圧縮‐排出サイクルで前記第2容積から第3容積へ収縮することで空気及びゲルが排出され、
中心面スロット近くの対応ロータ面が、圧縮‐排出サイクル中、対応画室内で加圧されるゲルにより加えられる力に応じてたわみ可能になる。
【0053】
一態様によれば、制御ユニットは、適当な命令の受信に続いて、モータの、したがってロータの回転方向を逆転可能であり、これにより大気圧の空気を真空チャンバへ送ることができる。
一態様によれば、排出管から皮膚区域へ排出されるゲルが、皮膚ターゲットが光ベース治療を受けたことを指示する手段とされている。
一態様によれば、モータを起動及び非作動化する装置が、制御ユニットと電気接続された少なくとも1つのセンサである。
一態様によれば、ハンドピース胴部は、1時間以上、異なる皮膚区域に反復的に置き換える間、ハンドピースを片手で断続的に保持する場合の操作者の疲労を防止するために、十分に小型で、軽量で、人間工学的設計を有している。
【0054】
一実施例では、ハンドピース胴部は、更に光源を収容している。したがって、制御ユニットは、真空ポンプと光源との双方の操作を制御し、このため、対応する皮膚区域の各治療サイクル毎に、真空発生段階、治療発光段階、真空解除段階を順次に同期するのに適している。
制御ユニットは、真空ポンプの起動と光源の発光との間の約0.5秒から約4秒の範囲の予め定めた遅れを同期するのに適し、それにより吸引された皮膚区域が、光源の発光後に十分長い神経作用抑制持続時間の間、真空チャンバの透明な伝搬部材と接触することが保証される。
制御ユニットは、また光源の非作動化に続いてモータの極性を逆にすることによって、真空チャンバ内圧を大気圧にまで高めるのに適している。
【0055】
一実施例では、ターゲットとされた皮膚組織の電磁エネルギー治療により生じる痛みを緩和又は防止する装置には、
a)発生した真空にさらされる部材が含まれ、発生した真空のレベルは、前記部材の下に位置する皮膚ターゲットを前記部材の方へ、前記部材に対して押し付けながら吸引するのに十分な値であり、それによって、前記皮膚ターゲット内に所在する痛みレセプタが発する痛み信号の伝搬が緩和又は阻止され、また
b)前記部材を介して伝搬され、かつ前記皮膚ターゲット内部の皮膚障害を治療するのに適した電磁波を発生させるための電磁エネルギーのパルス源が含まれている。
【0056】
一実施例によれば、ターゲットとされた皮膚組織の光ベース治療により生じる痛みの緩和又は防止装置には、
a)波長400‐1800nmのスペクトル帯域の光を発生させる、非切除式高強度パルス単色光又は非コヒーレント光の光源が含まれ、また
b)皮膚ターゲット上に配置される真空チャンバが含まれ、該真空チャンバがその遠位端に開口を有するように構成され、その近位端には伝搬部材が備えられ、該伝搬部材が前記光源から発せられる光を透過又は半透過し、皮膚ターゲットに隣接する皮膚表面に対し事実上直角方向に光を伝搬するのに適しており、更に
c)前記真空チャンバに真空を発生させる真空ポンプが含まれ、発生する真空レベルが、前記開口を介して皮膚ターゲットを前記伝搬部材のほうへ伝搬部材に対し押し付けながら吸引するのに適しており、それによって、前記皮膚ターゲット内部に所在する痛みレセプタが発する痛み信号の伝搬が緩和又は防止される。
【0057】
一態様では、この痛み緩和/防止装置には、更に光源遠位端を伝搬部材上で0.3‐40cm/secの速度で変位させる滑動装置が含まれている。
一態様によれば、痛み緩和/防止装置は、前記発生させた光により事実上皮膚ターゲットの全域を走査するためのスキャナを含み、皮膚ターゲットが、最大5パルス/secの反復速度で伝搬部材の下で治療される。
一態様によれば、痛み緩和/防止装置は、更に発生真空レベルが痛み信号の伝搬を阻止するのに十分かどうかを検出するため、真空チャンバ内部と連通する圧力センサを含んでいる。
一態様によれば、痛み緩和/防止装置は、更に皮膚ターゲット上への真空チャンバ配置を検知するための皮膚接触検出器を含んでいる。
【0058】
一態様によれば、痛み緩和/防止装置は、真空チャンバから空気及びゲルを排出するのに適している。
一態様によれば、真空ポンプは回転ポンプ、例えば、頂点に終わる湾曲凸面を有する概して外トロコイド3角形状の外輪郭を有する偏心回転ロータを備えた回転ポンプであり、前記湾曲凸面の各々が、対応面の中心線に隣接する、対応面と事実上平行の中心面スロット有するように形成されている。
一態様によれば前記伝搬部材は冷却される。
一態様によれば、痛み緩和/防止装置は、更に光源遠位端を真空チャンバ壁に対し、かつまた真空チャンバ壁上方にセンタリングするための手段を含んでいる。
一態様によれば、痛み緩和/防止装置は、更に真空チャンバを別の皮膚ターゲットに隙間又は重複なしに位置換えする手段を含んでいる。
【0059】
一態様によれば、痛み緩和/防止装置は、更に電子制御ユニットを含み、該制御ユニットは、次の作業に適している:
a)皮膚ターゲット上への真空チャンバ配置時に皮膚接触センサから信号を受信する作業、
b)真空ポンプを操作し真空発生モードを開始させるために、真空ポンプ・アクチュエータに第2信号を伝搬する作業、
c)発生真空レベルが痛み信号の伝搬を阻止するのに十分なレベルの場合、真空チャンバ内部と連通している圧力センサから第3信号を受信する作業、
d)光源の動作をトリガするため、又は光源のトリガを可能にするため、光源制御器に第4信号を伝搬する作業、
e)光源の非作動化を検出するようにされた光学センサからの第5信号を受信する作業、
f)真空解除モードを開始するため、真空ポンプ・アクチュエータへ第6信号を伝搬する作業。
【0060】
一態様によれば、痛み緩和/防止装置は、更に溶解液ポンプを含み、該溶解液ポンプが、溶解液溜めと流体連通し、かつ累積したゲルを清掃し溶解するため、真空ポンプ排出部に接続された導管を備えている。したがって、制御ユニットは、更に予め定めたサイクル数の真空発生モードと解除モードに続き、溶液ポンプを起動するため、溶解液ポンプ・アクチュエータへ第7信号を伝播するようにされている。
【0061】
一実施例では、無痛毛除去方法は次の段階、すなわち、
a)選択した皮膚ターゲット上方に剛性の面を配置する段階と、
b)皮膚ターゲットが平板にされ前記剛性の面に押し付けられるだけの十分なレベルの真空を前記皮膚ターゲット上に発生させる段階と、
c)毛除去処置に適する光源を発光させ、その光を前記皮膚ターゲットに向け、毛を除去する段階とを含んでおり、その場合、毛除去処置の間に神経組織から発せられる痛み信号は、前記剛性面に皮膚ターゲットが接触することで阻止される。
【0062】
一実施例では、タトゥー又は色素沈着病変部の無痛除去のための方法は、次の段階、すなわち、
a)選択した皮膚ターゲット上方に剛性の面を配置する段階と、
b)皮膚ターゲットが平板にされ前記剛性の面に押し付けられるだけの十分なレベルの真空を前記皮膚ターゲット上に発生させる段階と、
c)タトゥー又は色素沈着病変部の除去処置に適する光源を発光させ、その光を前記皮膚ターゲットに向け、毛を除去する段階とを含んでおり、その場合、タトゥー又は色素沈着病変部の除去処置の間に神経組織から発せられる痛み信号は、前記剛性面に皮膚ターゲットが接触することで阻止される。
【0063】
一実施例によれば、ターゲットとされた皮膚組織の非切除式光ベース治療により生じる痛みを緩和又は防止する方法には、次の段階、すなわち
a)近位端に開口を有し、遠位端に、選択した皮膚組織に対し目標の治療を行うのに適した光を透過する伝搬部材を有する真空チャンバを得る段階、
b)前記皮膚組織の近くの皮膚ターゲット上に前記真空チャンバを配置する段階、
c)段階b)に続いて、真空による近位向きの力で前記皮膚ターゲットを前記真空チャンバへ前記開口を介して吸引し、前記伝搬部材に接触させるのに十分なレベルの真空を自動式に発生させる段階、
d)光源の位端を前記皮膚ターゲットへ向ける段階、
e)段階c)に続いて、予め定めた遅れ時間後に光源を発光させ、光を前記皮膚組織に向け、所望の治療を行う段階が含まれ、
この場合、前記皮膚組織の治療中に神経組織が発する痛み信号が、前記予め定めた遅延時間に等しいか、又はそれより長い持続時間の間、前記伝搬部材に前記皮膚ターゲットが接触かつ押し付けられることにより、緩和又は阻止され、更に前記方法には、
f)光源の不動化に続いて真空チャンバから真空を自動式に解除する段階、
g)別の皮膚ターゲットの近くに真空チャンバを任意に際位置決めする段階、
h)光源の遠位端を前記別の皮膚ターゲットに向ける段階、
i)段階c)、e)、f)を反復する作業が含まれている。
【0064】
一態様では、別の皮膚ターゲットへ光源の遠位端を向ける段階は、光源の遠位端が伝搬部材上を滑動するようにすることで行われる。
一態様では、別の皮膚ターゲットへ光源遠位端を向ける段階はスキャナによって行われる。
一態様では、前記遅れ時間は、約0.5sec‐約4secの範囲である。
一態様では、前記光源は、高強度パルス単色光源又は非コヒーレント光源である。
一態様では、前記光は、スペクトル範囲400‐1800nmの光学帯域にある。
一態様では、目標の治療は、毛の除去、血管障害の治療、コラーゲン収縮、タトゥー除去、沈着色素病変部治療の群から選択される。
一態様では、真空レベルは、約0‐1気圧の範囲である。
一態様では、発生真空の持続時間は、0.1‐6secの範囲である。
【0065】
一実施例では、皮膚障害の治療装置は、次の部材、すなわち、
a)遠位端に開口を有し、近位端に伝搬部材を有する、皮膚ターゲット上に配置可能な真空チャンバと、
b)前記真空チャンバに真空を発生させる装置とを含み、
この場合、発生真空レベルは、前記開口を介して前記真空チャンバへ前記皮膚ターゲットを吸引するのに適し、かつ前記皮膚ターゲットの皮膚表面下の血液及び/又は血管の集中度増大を誘発するのに適しており、前記治療装置は、更に
c)前記真空チャンバを通して伝搬され、前記皮膚ターゲットを通して伝播する光を発するのに適し、かつ前記皮膚ターゲット上の皮膚障害の治療に適した光源を含んでいる。
【0066】
一実施例では、皮膚障害の治療装置は、次の部材、すなわち
a)遠位端に開口を有し、近位端に伝搬部材を有している、皮膚ターゲット上に配置可能な真空チャンバと、
b)前記真空チャンバに真空を発生させる装置とを含み、
この場合、発生真空レベルは、前記開口を介して前記真空チャンバへ前記皮膚ターゲットを吸引するのに適し、かつ前記皮膚ターゲットのスペクトル特性の変化を誘発するのに適しており、前記治療装置は、更に
c)前記真空チャンバを通して伝搬され、前記皮膚ターゲットを通して伝播する光を発するのに適し、かつ前記皮膚ターゲット上の皮膚障害の治療に適した光源を含んでいる。
【0067】
本発明は、レーザユニットの発光前の皮膚冷却中に生じる凝縮蒸気等の蒸気排出用のユニットを備えている。この排出ユニットは、U字形の真空チャンバと真空ポンプとを含み、該真空チャンバを介して、単色光又は高強度パルス光が皮膚ターゲットに向けられる。真空ポンプの動作中、真空チャンバ内の真空レベルは、真空チャンバの導管を、例えば操作者の指で閉じることで高められる。皮膚ターゲットに真空が作用すると、皮膚は真空チャンバのほうへ吸引され、ターゲット近辺の血管の集中度が高まる。血管の集中度が高まると、組織内で光の吸収量が高まるため、皮膚障害の治療が容易になる。
【0068】
図1には、先行技術の方法により、ハンドピース遠位端から、スペクトルの可視域又は近赤外域の波長の、言い換えると1800nm未満の波長の高強度パルスレーザビームが皮膚ターゲットに伝播する様子が示されている。ハンドピース1001は、伝搬部材1002、例えばレンズ又は窓を含んでいる。伝搬部材1002は、レーザユニットから発せられる単色光1007を透過し、皮膚ターゲット1004に入射する。レーザビームは、皮膚ターゲット1004に浸透し、選択的に皮下組織に作用し、例えばコラーゲン束1005、血管1009、毛包1006に熱傷を与える。この方法では、外部の圧力又は真空は皮膚に加えられない。
【0069】
図2は、先行技術の非コヒーレント高強度パルス光システムを示し、このシステムから光が、例えば血管障害、毛除去、光若返り治療のため、皮膚ターゲットに照射される。ハンドピース1010は、皮膚ターゲット1004に接触する光ガイド1011を含んでいる。ランプ1013から発生し、反射器1014に反射するレーザビーム1012は、非コヒーレント光であり、更に光ガイド壁に反射する。幾つかのハンドピース、例えばデカ社(Deka、イタリア)製のハンドピースでは、光ガイドではなく伝搬部材が使用される。この光システムが採用される場合は、皮膚には、しばしば冷却ゲルが塗布される。この方法では、外部の圧力又は真空を皮膚に作用させることはせず、ハンドピースが穏やかに皮膚上に当てがわれるので、ゲル層の剥がれが避けられ、約0.5mmの厚さで残るのが望ましい。
【0070】
図3は、米国特許第5,595,568号及び第5,735,844号に類似するレーザシステムを示したものだが、このシステムでは、遠位端に光学素子1022が用いられ、皮膚と接触する。矢印で略示されているように、皮膚ターゲット1004に圧力が加えられることで、その区域の血管1009から血液が排除される。血管は、皮下散乱光の光路にあることで、より多くの単色光が毛包1006又はコラーゲン束に作用する。毛の除去に関しては、メラニンが、概して吸収発色団として利用される。
【0071】
図4は先行技術の装置1031、例えばLPG社(フランス)製の装置を示すものだが、この装置は、皮膚1033に押圧接触させて、セルライト層1037の深部マッサージを行う。装置1031は、平面的な皮膚接触面1043の中心区域に凸面1039を形成するように構成されている。装置1031は、リンパ液が自然の流れ方向に流れるように刺激して、隣接組織から毒性物質を除去する。リンパ液流の刺激は、装置1031の内部を真空に引くことで達せられるので、空気は、皮膚の矢印方向に吸い込まれる。真空の発生で、皮膚は凸面1039の方向に吸引され、隣接する皮膚1033より盛り上がったひだ1040が一時的に形成される。皮膚の弾性のため、皮膚のひだ1040は、装置1031の次の運動時には、隣接する皮膚と同じ元の形状に戻る一方、別の皮膚のひだが形成される。装置1031はマッサージ師の手1036で、リンパ液の自然の流れ方向と同じ装置方向1044に動かされるので、リンパ液は自然の方向に流れる。しかし、リンパ液は、装置1031が方向1044と逆方向に動かされると、流れなくなろう。装置1031の運動は、ホイール1035によって一定にできる。
【0072】
幾つかのセルライト・マッサージ装置、例えばデカ社(イタリア)製又はルミセル・タッチ(Lumicell Touch、米国)製の場合、出力レベル0.1‐2W/cmの低電力連続作動赤外光源によりセルライト区域の深部加熱と付加的なリンパ液流刺激が可能になる。この光源は、温度変更が2‐3°C止まりである。なぜなら、これ以上温度が上昇すると、組織が損傷し、超高熱を引き起こすだろうからである。したがって、これらのマッサージ装置は、血管、毛包の選択的な熱損傷発生や小じわの平板化に要する熱を発生させることはできない。装置が動かされるため、皮膚に加えられる、例えば光量計による光学エネルギー量は正確に検出できない。
【0073】
図5に示した先行技術の毛除去装置は、米国特許第5,735,844号に類似し、ハンドピース1050の皮膚接触面1051の中心区域にスロット1052を備えている。ハンドピース1050が皮膚表面1058に配置され、開口1053を介してハンドピースが真空に引かれると、皮膚にひだ1054が生じる。狭幅のスロット1052は、相応に長い皮膚のひだ1054を生じさせる。光は、対応する光ファイバ1055と光学素子1057とを介して、ひだ1054の両側1056へ伝搬される。真空発生時、皮膚のひだ1054は圧縮され、血流通過が阻止される。したがって、該装置の意図は、皮膚のひだ1054内の血液集中度を低減させて、メラニンの豊富な毛幹への照射量を高める点にある。これに対し、本発明の一実施例では、真空による僅かな皮膚の突出部内に血液集中度を高めることで、後述するように、光の吸収量が高められる。更に、先行技術は、皮膚のひだ1054内の血液集中度が低下するので、血管障害や光若返りにも、毛包の周囲や下の血管による光エネルギー吸収で助成される毛の除去(メラニンによる光エネルギー吸収により助成される除去方法とは異なり)にも不適である。
【0074】
皮膚表面に真空を作用させる手法は、光エネルギーによる皮膚治療の補完手段として先行技術で採用されていたものだが、真空援用式光ベース皮膚治療のための先行技術による装置と本発明の装置との間には、次のような多くの重要な相違点があるのは明らかである:
a)先行技術による真空の適用は、光ベースの表皮除去により生じる煙又は蒸気の排出を目的としたものである。これに対し、本発明の装置では、光エネルギーは、表皮との相互作用を生じることなく、皮下組織をターゲットにし、煙や蒸気を発生させることはない。
b)先行技術による光ベースの皮膚治療で発生する煙や蒸気の排除のためには、フラッシング処置が必要とされ、そうすることで煙や蒸気が排出され、清浄な空気に換えられる。したがって、発生させられるのは低レベルの真空である。なぜなら、高真空レベルを発生させれば、治療ハンドピースを1つの皮膚ターゲットから持ち上げて別の皮膚ターゲットへ移動させる妨げになるだろうからである。これに対し、本発明の方法では、約0気圧の高真空を発生させるので、皮膚を十分に真空チャンバ内へ吸引でき、したがって、皮膚障害の治療が容易になり、しかも、治療ハンドピースを1つの皮膚ターゲットから他の皮膚ターゲットへ迅速に位置換えすることができる。
c)先行技術の装置による煙又は蒸気の除去は、光源の遠位窓への煙又は蒸気の付着を防止するので、先行技術の装置による真空の発生は、各光治療パルスの直後に行わねばならない。これに対して、本発明の一実施例の装置では、真空の作用により血管集中度の高まりが刺激されることで、光吸収量が高まるため、治療ビームの発光前に真空を発生させる必要がある。
d)先行技術の装置は、一時的に真空レベルを調節する手段を有していない。これに対し、本発明の装置は、発生した真空を調節する制御装置を有しており、それによって、皮膚ターゲットの光吸収量を調節し、目標とする治療を行うことができる。
e)先行技術の装置では、皮膚除去時の煙や組織片の排出により、皮膚上にゲルの保護層を塗布することができない。なぜなら、ゲルは、皮膚表面と周囲空気との間にバリアを形成するからである。先行技術の装置でゲルの塗布が可能だとしても、真空ポンプの詰まりを防止する手段は備えられていない。これに対し、本発明の装置では、真空援用式非切除治療の前に皮膚にゲルを塗布することができる。なぜなら、光ベース治療が皮下に対して行われ、加えて真空ポンプの詰まりを防止する手段を備えているからである。
f)局所的な皮膚組織からの血液排除を誘発することを意図する先行技術の装置の場合、治療ビームは、約5mmのレーザビームに限定されている。治療ビームが著しく大である場合、例えば40mmの場合、血液の排除は、一様でも即時的でもなくなり、したがってレーザビームの発光後も、血液は皮膚組織内に残存する。これに対し、本発明の装置は、治療ビームが40mmの場合に皮膚治療を行うのに適しており、加えてレーザユニットの直径より、著しく大きいビーム直径を有するIPLユニットによって皮膚治療を行うのに適している。
g)先行技術の真空援用式光ベース皮膚治療装置の場合、治療光に対する皮膚ターゲットの曝露度を増すために可能なことは、皮膚ターゲット内の血液集中度を低減することだけである。しかし、本発明の装置は、後述するように、皮膚ターゲット上に配置される真空チャンバを有し、該真空チャンバは、皮膚ターゲットの表皮から血液を排除する必要はなく、むしろ皮膚ターゲット内部の血液分量を増加させる。
【0075】
図22及び図23には、各々、真空チャンバの構成が示されているが、これらの真空チャンバは、異なる血液移動効果を誘発する。図22では、真空チャンバ100は、矢印方向で示されている通り、皮膚ターゲット130から周辺皮膚区域135への血液140の排除が誘発されるように構成されている。これに対し、図23の真空チャンバ200は、矢印方向で示されている通り、周辺皮膚区域210から皮膚ターゲット230への血液移動が誘発される構成になっている。
【0076】
血液の移動方向は、真空チャンバ壁厚に対する皮膚ターゲット直径の比に依存する。図22の真空チャンバ100は薄手の壁部105を有し、この壁部が血液を圧搾するのに役立つ一方、皮膚ターゲット130が近位へ吸引されると、周辺皮膚区域135は壁部105の下をスライドする。壁部105が薄手に又は鋭くなればそれだけ、壁部下の局所圧力が増し、その結果、皮膚がスライドする方向と等しい方向へ、壁部105から外方へ血液が、より効果的に絞られる。他方、図23に示すように、真空チャンバ200の支持部材250が相対的に厚手の場合は、皮膚ターゲット230の方への血液移動を誘発する。支持部材250の厚さが増すことで、支持部材250が下に位置する皮膚表面に加える摩擦力が、図22の壁部105が加える摩擦力より大きくなるため、周辺皮膚区域210は支持部材250の下をスライドすることが妨げられる。支持部材250が、下に位置する皮膚表面に押し付けられるにつれて、図22の壁部105により加えられる局部圧力より小さい圧力にせよ、相応の血管が圧搾され、血液が皮膚ターゲット230の方へ強制的に流れる。
【実施例1】
【0077】
光吸収深さ制御装置
図6に示した本発明の一実施例による装置は、全体を符号1070で示されている。装置1070は、光源1071と、遠位端に伝搬部材1076を備えたハンドピース1073と、符号1090で示された排出ユニットと、好ましくは真空チャンバ内圧を指示する圧力指示計(図示せず)とを含んでいる。
【0078】
排出ユニット1090は、真空ポンプ1080と、真空チャンバCと、真空チャンバCと連通する導管1078,1079とを含んでいる。皮膚表面1075上に配置される真空チャンバCは、遠位端に開口(図示せず)有するように形成され、近位端には伝搬部材1076を備えている。真空チャンバCはハンドピース1073と一体形成されているので、円筒壁1091は、ハンドピース1074と真空チャンバCの双方に共通である。伝搬部材1076は、皮膚ターゲットTに向けられた高強度パルス単色光又は非コヒーレント光のビーム1074を透過する。伝搬部材1076は、ビーム1074が皮膚ターゲットTに隣接する皮膚表面1075に対し事実上直角方向に透過されるように配置されている。開口は、方形、長方形、円形、その他所望するどのような形状でもよく、開口の最大長さ対最大幅の比は、約1対4の範囲である。開口が、前記比で形成されるので、皮膚ターゲットTは、皮膚表面1075から近位へ例えば1mm吸引され、符号1087で示すように、僅かに変形する一方、皮膚ターゲットT内の血液集中度が高められる。同じように、前記比の開口を採用することで、真空により誘発される皮膚のひだ形成が不可能となる。ひだ形成は、これまで先行技術で達せられ、皮膚ターゲットT内の血液集中度が低減された。
【0079】
円筒壁1091は、導管1078,1079にそれぞれ連通する開口1077,1084を有するように構成されている。2つの導管は、対応する開口に隣接する水平部分と、垂直部分と、長い排出部分とを有している。開口1077,1084は、対応するシール部材1093によりシールされ、真空チャンバからの流体の浸出が防止されている。導管1079は、また真空ポンプ1080と連通しており、真空ポンプは、流体、例えば空気を大気圧以下で吸い込む。U字形真空チャンバCは、したがって、ハンドピースの伝搬部材1076と、僅かに変形された皮膚表面1087と、円筒壁1091と、導管1078,1079とによって画成されている。
【0080】
1つの適当な光源は、例えばカンデラ社(Candela)又はサイノジュア社(Cynosure)製の血管障害治療用パルス色素レーザユニットである。このレーザユニットは、波長約585nm、パルス持続時間約0.5マイクロ秒、エネルギー密度レベル10J/cmの光を発する。同じように、他の適当な高強度パルスレーザユニット、例えば、スペクトルの可視域又は近赤外域で作業するNd:YAG、パルスダイオード、アレクサンドライト、ルビー、周波数2倍の各レーザを使用できる。同じように、パルストレーンを発生させるレーザユニット、例えばシノジュア社のアレクサンドライト・レーザ、ルメニス社の「クアティム」(Quatim)IPL、デカ社の「シルカピル」(Silkapill)も使用できる。発せられる光は、光ファイバ1072を介してハンドピース1073へ伝搬される。ハンドピース1073は、伝搬部材1076が皮膚表面1087に対向するように配置される。僅かに突出する皮膚表面1087へ伝播するビーム1074は、皮膚表面1075に対し事実上直角である。
【0081】
真空ポンプ1080の操作に続いて、空気が導管1079を介して真空チャンバCから排出され始める。導管1078の外側開口を操作員が指1083でふさいで導管1078を閉鎖することにより、真空チャンバC内の真空レベルは200‐1000ミリバールの圧力まで高められる。この真空の作用により皮膚ターゲットTは、僅かに真空チャンバCのほうへ吸引されるが、先行技術の場合に行われたように、加圧されることはなく、皮膚ターゲットT内の血管集中度が高められる。血管障害治療上のレーザユニットの効果は、皮膚ターゲットT内の血管集中度が高められる結果、体内組織内部でのビーム1074の光エネルギーの吸収量が増加するため、概して先行技術の場合より大きい。
操作員は、真空発生に続いてレーザを発光させることができ、次いで皮膚ターゲットTの色が赤みがかった色合いに変わるが、これは、皮膚内で血管集中度が高まったことを示している。真空発生とレーザ発光との間の時間的な遅れは、臨床経験又は組織の色の目視による点検に応じて決められる。
【実施例2】
【0082】
図7に示した本発明の別の実施例の場合、真空ポンプ及びパルスレーザ又は非コヒーレント光の操作は電子制御される。組織内部への光の浸透深さは、真空発生/パルス光発光間の時間的遅れの制御によって調整できる。時間的な遅れが比較的短ければ、例えば10msecであれば、血管の集中度上昇は、皮膚表面に近い約0.2mm深さでだけ発生するだろう。他方、この遅れが約300msecであれば、血管集中度が増大する深さは0.5‐1.0mm程度になろう。
装置1170は、ハンドピース1101と、レーザシステム1116と、排出ユニット1190と、制御ユニット1119とを含んでいる。
【0083】
レーザシステム1116は、電源(図示せず)と、光発生ユニット(図示せず)と、予め定めた密度のエネルギーが皮膚ターゲットに作用していることを検証する出力又はエネルギーの検出器1130とを含んでいる。操作員が手に保持するハンドピース1101は、光ファイバ1103が伝搬する単色ビーム1105をレーザシステム1116から皮膚ターゲット1140へ向けるレンズ1104を備えている。真空チャンバ1106を画成する伝搬部材1100は、概して皮膚表面1142の直近に、通常は1‐2mmの間隔Hで位置するが、間隔の範囲は、ハンドピースの直径に応じて0.5‐4mmである。この間隔は、真空チャンバ1106内に真空を発生させるのに十分な大きさだが、隣接皮膚表面1142からの皮膚ターゲット1140の突出を制限するために、伝搬部材1100の直径の約2分の1未満にされる。皮膚表面1142からの伝搬部材1100の間隔を制限する一方、皮膚ターゲット1140に作用する真空を維持することで、皮膚のひだ形成が防止される一方、より多くの血液が小さい皮膚厚内に集積される。このため、血管温度が局所的に有意に上昇し、50‐70°Cが可能になる。
【0084】
排出ユニット1190は、U字形でない真空チャンバ1106と、200‐1000ミリバールの真空を発生させるのに適した小型真空ポンプ1109と、真空チャンバ1106から排出される大気圧以下の流体が通過する導管1107及び制御弁1111と、例えば100mlを包含する小型加圧タンク1110とを含んでおり、空気は、該小型加圧タンクから、導管1112と制御弁1108とを介して真空チャンバ1106へ送られる。所望とあれば、伝搬部材は用いる必要はなく、その場合には、レンズ1104によって画成される真空チャンバ1106は、より大きい容積となろう。
【0085】
制御ユニット1119は、次の主な部材を含んでいる。すなわち、
a)レーザシステム1116から発せられる単色光のエネルギー密度レベルを表示するディスプレー1115と、予め定めたエネルギー密度を選択するためのセレクタ。
b)選択された密度のエネルギーが皮膚に作用していることを確認する確認指示器1120。予め定めた値を有意に超えたエネルギー密度のビームが発せられている場合には、制御回路がレーザ電源を切る。
c)パルスの構成、例えば波長、パルス持続時間、1列のパルス数に関するディスプレー1122。
d)真空ポンプ1109の操作とレーザシステム1116の操作との間の時間的遅れを選択するための制御回路1123。
e)真空ポンプ1109による真空チャンバ1106内の真空レベルの制御用セレクタ1124。
f)真空ポンプ1109の作業サイクル、制御弁1111の開閉時間、平均真空圧、真空の調節頻度、反復度を調整することにより真空デューティサイクルを制御するための制御回路1126。
g)制御弁1108のデューティサイクルを制御することにより正圧タンク1110から流体を放出するための制御回路1143。
h)光が皮膚ターゲット1140に入射しているかどうかを検知するための光検出器1185。
【0086】
1‐2気圧の範囲の圧力を有する空気を内包するタンク1110により、空気が1msec未満で真空チャンバ1106内へ高速放出され、相応に高速の真空レベル調整が、制御弁1108及び1111の第1開弁と真空ポンプ1109の起動とにより行われる。十分な量の流体、例えば1mlの流体が真空チャンバ1106へ送られた後、制御弁1108は閉じられる。次に、予め定めた真空レベルが維持されるように、制御回路1126,1143が制御弁の動作を調整する。予め定めた真空レベルが達せられると、制御回路1123は予め定めた時間的な遅れの後に、レーザシステム 1116を発光させる。この場合の時間的遅れは1‐1000msecの範囲である。
【0087】
制御ユニット1119は、また真空チャンバを容易に他の皮膚ターゲットに置き換えられるように、パルス光源の非作動化に続いて、真空チャンバ1106の内圧を大気圧に高めることができる(以下では「真空解除モード」と記す)。光源の非作動化と、別の皮膚ターゲットへの真空チャンバ移動前のチャンバ内圧上昇との間の反応を高速にするために、光検出器1185を用いて治療光源から発せられる光を検出する。光検出器が光源からの光を検出しなくなると、適当な命令が制御ユニット1119へ送られ、制御ユニットが制御弁1111の開弁命令を発生させ、それによりチャンバ内圧が上昇する。あるいはまた、真空チャンバ内の真空は、光源の非作動化に続いて、ハンドピースに設けられた空気式又は電気式の起動ボタンを押すことによって解除することができる。治療ハンドピースの迅速な位置換えを可能にするために、真空チャンバ内の真空の解除をトリガする光検出器を使用することは、高速治療システム、例えば1パルス毎秒の高速で作業するルメニス社製の毛除去用「ライト・シア」(Light Sheer)ダイオード・システムとの関連で特に重要である。
【0088】
図8に示した装置1270は、図2に関連して説明したシステムに似た非コヒーレント高強度パルス光システムを含み、Xeフラッシューランプ1201、例えばルメニス、デカ、パロマー(Palomar)、シネロン(Syneron)各社製のものを備えている。反射器1202は、発せられた光1207を光ガイド1208へ反射する。光ガイド1208の遠位端1203は、皮膚表面1242から1‐2mm離れていることで、真空チャンバ1206内に真空を発生させることができ、しかも隣接皮膚表面1242からの皮膚ターゲットの突出が制限されるため、治療効果は低下しない。
【実施例3】
【0089】
図15a‐図15bに示した本発明の別の実施例では、装置1670が高強度パルス光ガイド1602に取り付けられた真空チャンバ1601を含んでいる。図15aには、光ガイドに取り付ける前の真空チャンバ1601が略示され、図15bには、光ガイド1602に取り付けた真空チャンバ1601が略示されている。真空チャンバ1601は、壁部1608と、該壁部に形成された側部開口1605と、光ガイド1602の断面に事実上等しい寸法を有する近位開口1607を有するように構成された近位カバー1612とを有している。取り付け手段1604により、光ガイド1602又は光ガイドを保護するようにされた何らかの部材への真空チャンバ1601の取り付けが容易になる。取り付け手段1604は、好ましくは、またカバー1612と光ガイド1602とのインタフェースをシールし、真空発生後の真空チャンバ1601内への空気の侵入を防止する。
【0090】
光ガイド1602の伝搬部材1625は、また真空チャンバ内圧の上昇防止に役立つ。真空チャンバ1601が光ガイド1602に取り付けられると、真空チャンバは、選択された皮膚表面1603上に配置される。真空チャンバ1601内での真空発生後、皮膚ターゲット1606は真空チャンバ1601の内部へ吸引され、そのさい、パルス光ビーム1620が皮膚ターゲット1606へ向って発光する。真空チャンバ1601は、好ましくは、何らかの従来のIPL又はレーザ光源の遠位端に取り付けられ、本発明により、ターゲットの皮膚組織内での光吸収量を増すための装置に光源を変換する。この実施例は、光源の遠位端が一体の皮膚冷却手段を備えている場合に、特に有用である。
【0091】
図9は、腕1320上に治療装置1370を載置した場合を示している。装置1370は、ハンドピース1301と、排出ユニット1390と、単色光の照射の結果加熱された腕1310の表皮冷却用の皮膚冷却部材1300とを含んでいる。皮膚冷却部材1300は、好ましくはアルミニウム製の金属板であり、表皮と接触し、熱電冷却器によって冷却される。金属板の温度は、制御された温度、例えば0°Cに維持される。冷却された金属板は、皮膚ターゲット1340の隣接皮膚区域上に載置される。表皮は、光治療前に他の適当な手段、例えばゲル又は低温液体の塗布や、皮膚ターゲット上へのガス噴射によって冷却してもよい。
伝搬部材1376の表面に凝縮する蒸気の排出にU字形真空チャンバを利用することは、ハンドピース外壁と永久接触する皮膚冷却部材が採用されている場合、特に好ましい。この種の皮膚冷却部材は伝搬部材表面に蒸気の凝縮を生じさせるが、本発明による排出ユニットを使用することなしには排出されないだろう。あるいはまた、皮膚冷却部材は真空チャンバに取り外し可能に取り付けてもよい。
【0092】
図10には、本発明により皮膚ターゲットに大気圧以下の圧力を作用させ、皮膚ターゲット内部の血管の光吸収量を高める効果が示されている。分かりやすくするために、図には、単一の血管に対する効果が示されているが、実際には多くの血管が血流増加に寄与する効果があることが理解されよう。つまり、複数の血管が表皮の方へ吸引される結果、光エネルギーの吸収量が増大する。隣接皮膚区域に対する皮膚ターゲットの突出度は、説明目的のため、誇張して示されている。
皮膚ターゲット近くに真空を発生させることによる血管内の光吸収量の増加は、真空レベルに、又は真空の調節速度と加齢により減少する皮膚の弾性とに依存している。図示のように、直径Dの血管1329は、真空チャンバ1326の下方に位置している。排出ユニット1390により真空を発生させることにより、血流は、真空チャンバ1326に対し近い点Aと離れた点Bとの間の圧力差により血管1329内で矢印Mの方向に流れる。血管が静脈の場合、相応の静脈弁の影響で一方向にのみ流れよう。
【0093】
円管内の粘性流体の流れに関するハーゲン‐ポアズイュの方程式により、円管からの流出と、ひいては円管を通して流れる持続時間は、円管に沿った圧力勾配と、円管の直径の4乗、円管の長さに依存する。例えば、100マイクロメートルの直径は、約200マイクロメートルの深さでの乳頭下層に隣接する毛細血管では普通であり、500マイクロメートルの血管直径は、3mm深さの毛球に見ることができる。通常の血管長さは、約1‐2cmである。血管直径は、概して深さにつれて増すとはいえ、血管に沿った圧力勾配は、皮膚の層が深いほうが小さい。結果として、所定圧力、例えばゼロミリバールの真空を作用させた場合、皮膚表面からの各深さは、血液が充填される場合の特性的な時間応答に対応する。
【0094】
結果として、制御弁1111(図7)の開閉による真空の調節により、血管を通る血流が制御され、ひいては皮膚表面1342から所定深さでの血管による光吸収度が制御される。実際の状況では、複数血管が皮膚ターゲット内に存在し、各皮膚層が異なる調節頻度によって特徴づけられている。該調節頻度は、通常、上層の場合の100Hzと毛包下の深い層の場合の1Hzとの間である。変化する頻度による制御弁1108及び1111(図7)の開弁によって、操作員は皮膚ターゲットに作用させる真空を調節し、それによって異なる皮膚層の血液集中度を変えることができる。
【0095】
操作員は、通常、皮膚ターゲットを目視により点検し、発赤度を見て、前の制御弁調節頻度に応じて制御弁1108,1111の瞬間調節頻度を決定する。治療効率の改善に加えて、皮膚ターゲット内の発赤度を高めるのに必要とされるのは、好ましくは、より低エネルギー密度の高強度パルス光であり、それにより周囲のコラーゲンの加熱を生じる血液の凝結又は血管の加熱を達成することである。あるいはまた、紅斑計、つまり皮膚の発赤計、例えばドイツのクラージュ‐ハツァカ社(Courage‐Hazaka)製のものを用いて、発赤度を検出することで、治療に必要なエネルギー密度が決定される。
例えば、ポートワイン斑の治療には、40Hz程度の調節頻度か、又は真空発生後約1/40秒での色素レーザの発光が必要である。これに対し、小じわの除去の場合には、約1/2秒の遅れが、また毛の除去の場合には約1秒の遅れが、皮膚表面下1‐3mmの深さで必要になる。
【0096】
図11は、皮膚ターゲット1340内での複数血管の集中を示したものだが、その結果、皮膚の発赤が増し、ヘモグロビン吸収スペクトルに関して吸光量が高まり、皮膚の散乱特性が増す。吸光量は、単位容積当たりの血管数が増し、相応に吸光発色団数が増すことで高まる。色素レーザか、ヘモグロビンによる吸収度の高い黄色光のいずれかによる真空援用式の吸収の有利な効果は、例えば喫煙者の皮膚のような、血管に乏しい白い皮膚又は黄色い皮膚では、より著しい。これらの種類の皮膚は老化の度合いが高く、光若返りを必要とする。この光若返りの効果は、本発明を利用することで改善される。吸光度の増大は、また赤外レーザ及び高強度パルス光源を用いることで達せられる。
図12は、本発明による真空援用ハンドピースによる小じわ1401の治療を示す高画質写真で、真空発生の半秒後に撮られたものである。スポット1402‐4は治療スポットの色の順次変化を示している。スポット1403の色はスポット1402の色より淡い。スポット1404は、血液分量が多いため、スポット1402,1403より以上に淡紅色になった。
【実施例4】
【0097】
図23に示した本発明の別の実施例の場合、皮膚ターゲット内の血管の集中度が、真空チャンバの支持部材の厚さの選択によって増大している。皮膚ターゲット230上に載置された真空チャンバ200は、カバー205と、カバー205の中央に保持された伝搬部材215と、カバー205の周縁部下に設けられた厚さTの相対的に薄手の環状脚240と、厚さTの相対的に厚手の環状支持部材250と、カバー内に形成され真空チャンバを真空に引くための導管255とを含んでおり、前記環状支持部材250は、環状脚240から間隔をおいて配置され、皮膚ターゲット230に隣接する皮膚区域210に接している。各導管255は、内側入口282と外方側入口284とを備えている。各内側入口282は、環状支持部材250の内方の容積Vと連通し、各外側入口284は容積Vと連通している。容積Vは、容積Vより有意に小さく、支持部材250と環状脚240との間に形成されている。
【0098】
真空チャンバ200に真空が発生すると、周囲大気圧と真空チャンバ内の真空との圧力差により真空チャンバ200は、皮膚ターゲット230に隣接する皮膚に対し加圧することを強制される。圧力差に関連する合力が双方の環状脚240と支持部材250とに作用する。真空が容積V及び容積Vを介して支持部材250の両側に作用するので、支持部材250により下の皮膚区域210に伝えられる合力が、事実上一様な圧搾圧を生じさせる。真空の容積Vが小さいため、環状脚240は真空チャンバ200を安定化する手段として役立ち、このことは特に、骨の近くなどで完全には平面的でない皮膚区域では有用である。
【0099】
皮膚区域210に対して支持部材250が加える広範囲の圧力は、血液を皮膚ターゲット230及び環状脚240の方向へ排除する。内側入口282を介して容積Vから排出される空気は、皮膚ターゲット230を近位へ吸引し、血液を周辺皮膚区域210から皮膚ターゲット230へ移動させる。支持部材250は、したがって、矢印で示すように、周辺皮膚区域210からの皮膚ターゲット230への血液の移動を誘発し、その結果、皮膚ターゲット230内部の血液分量が有意の増加を示す。皮膚ターゲット230の内部の血液集中度が十分に高まった後、光ビーム260は、皮膚ターゲット内の血管によく吸収される波長で血管障害を治療するのに適しているため、先行技術のエネルギー密度より低いエネルギー密度で発光される。皮膚ターゲット230内での吸光深さは、支持部材250の厚さTを変えることで制御できる。
【0100】
容積Vから、対応する外側入口284を介して空気が排出されることにより、対応する容積Vの下の皮膚区域290は近位へ吸引される。皮膚区域290は、その場合、支持部材250の縁部によって加圧されることで、血液は、矢印292が示すように、支持部材250から外方へ環状脚240に向って移動させられる。血液の外方への移動が誘発されることで、血液分量と皮膚ターゲット230内の吸光深さとが、更に制御される。
皮膚ターゲット230内部の血液集中度は、支持部材250の圧力によってのみ増すことができ、環状脚240は使用されない。同じように、図10、図11、図13にそれぞれ示した支持部材1325,1345,1502も、皮膚ターゲットへの血液移動を誘発させ、付加的な脚の必要はない。
【実施例5】
【0101】
図13に示した装置1570では、皮膚ターゲット内への血管集中が、ハンドピースの使用なしに行われる。装置1570は、透明の真空チャンバ1501と伝搬部材1506とを有する排出ユニット1590を含んでいる。伝搬部材は、可視光又は近赤外光を透過する薄手の透明なポリマー、例えばポリカーボネート製、又はガラス製である。真空チャンバ1501は、直径5‐20mm、高さ約1‐3mmを有し、皮膚の過剰な突出が防止されている。真空チャンバ1501は、円筒形が好ましいが、他の形状も適している。真空チャンバ1501の周部には軟質シリコンリム(図示せず)が接着付加されており、それにより皮膚表面1542との良好な接触が可能になっている。真空チャンバ1501は、制御弁1504と連通する導管1503を介して、小型真空ポンプ及び制御ユニット1505により真空に引くことができる。
【0102】
真空チャンバ1501が皮膚ターゲット1540上に載置された後、スペクトルの可視域又は近赤外域で作業する何らかの従来式高強度パルスレーザ又は光源1509からのパルスビーム1508が、皮膚障害を透過して伝播され、治療が行われる。真空チャンバ1501と導管1503とは、使い捨てが好ましい。真空チャンバ1501が使い捨ての場合、伝搬部材1506は真空チャンバ1501のハウジング内に形成された適当な溝に挿入可能にする。真空チャンバ1501は、手で保持可能にしても、光源1509のハンドピースに取り外し可能に取り付けてもよい。手で保持する場合は、真空チャンバ1501、制御ユニット1505、ディスプレー(図示せず)は、単一の装置に統合することができる。治療は、したがって両手を使用して行うことができ、その場合、一方の手、例えば手1530で一体の真空チャンバ装置のハンドル1531を握り、他方の手で治療光源を保持することができる。この装置の利点は、低価格なことと、保健クリニックに既に設備されている何らかの高強度パルスレーザ又は非コヒーレント光源と協働できることである。
【0103】
皮膚ターゲットに真空を作用させた場合、血管による可視高強度パルス光の吸収度は、皮膚ターゲットに電磁波を向けることで高められる。普通、小血管の凝固には、0.2‐10Mhzの無線周波が使用される。例えば米国のエルマン社(Elman)、カナダのシンロン社(Synron)製の双極RF発生器で発生させた交流電界は、最小電気抵抗の経路をたどるが、この経路は血管内の血流方向に合致する。単極RF、例えば米国のサーメイジ社(Thermage)製のものも使用できる。
【実施例6】
【0104】
図14に示した装置1870は、高強度パルスレーザ又は高強度パルス光の光源1821と、RF源811と、排出ユニット1890とを含んでいる。排出ユニット1890は、血管障害の治療のため皮膚表面1802に載置される真空チャンバ1801と、小型真空ポンプ1805と、真空チャンバ1801内の真空レベル調整用の制御弁1804とを含んでいる。伝搬部材1806は、光源1821から発せられたビーム1820が、伝搬部材を透過して、皮膚表面1802に対し事実上直角に入射するように配置される。
RF源1811は双極RF発生器であり、ワイヤ1808及び電極1809を介して皮膚表面に加えられる交流電圧1807を発生させる。あるいはまた、RF源は、別個の接地電極を有する単極RF発生器である。電界1810は、皮膚内で最良の電気良導体である血管1813の形状に概して従う。表皮内に血管が集中し、皮膚表面1802下の血管集中の深さが真空レベルと真空調節頻度とに依存するため、ビーム1820及びパルスRF電界1810による光エネルギーの組み合わせ効果により、血管が加熱又は凝固される。制御弁1804は、制御ユニット1812によって調整される。制御ユニット1812の第1命令パルス1は制御弁1804を制御し、第2命令パルス2は遅延無線周波パルスと遅延光源パルスとを制御する。
【実施例7】
【0105】
痛みの緩和
真空チャンバが皮膚ターゲットに載置されると、治療装置は、高強度パルス単色光又は非コヒーレント光による毛の処理中、通常、生じる痛みを緩和できる点で付加的な利点を有している。
図16に示すように、装置1970は、真空発生時に皮膚ターゲット1960が、真空チャンバ1901の近位端に固定された例えばサファイア製の伝搬部材1906に接触するように構成されている。出願人は、通常、光ビーム皮膚治療時に感じられる即時型の鋭い痛みが、皮膚ターゲットを伝搬部材に接触させ、伝搬部材によって平板にすることで、緩和又は解消されることを、意外にも発見した。発生真空レベルは、隣接皮膚区域1965に対し皮膚ターゲット1960を僅かな、例えば2‐4mmの突出度Kだけ真空チャンバ1901のほうへ吸引するのに適している。この突出度は、伝搬部材1906と真空チャンバ1901の外壁1924の遠位端との間隙より僅かに大きい。
【0106】
伝搬部材1906を介して伝播する何らかの適当な高強度パルスレーザ又は高強度パルス光の光源からのパルスビーム1908を発生させ、発生した光学エネルギーによって皮膚ターゲット1960の表皮下の例えば毛包1962を治療する間、皮膚ターゲット1960は、伝搬部材1906と接触するように吸引される。皮膚ターゲット1960が、真空によって真空チャンバ1901内へ吸引され、近位向きの合力により伝搬部材1906に接触させられると、毛包1962又はターゲットにされた他の適宜の皮膚組織の加熱中に患者の神経組織から発せられる痛み信号が阻止される。したがって、パルスビーム1908の発光時に、皮膚ターゲット1960が、十分に長い神経抑制持続時間にわたり伝搬部材1906に確実に接触するようにするために、真空の発生と光治療パルスの発光との間の最適遅れを同期することが、痛み軽減の主要因である。痛みは、皮膚ターゲット1960に向けた光のエネルギーレベルが高い場合にも、つまり、通常、即時型の鋭い痛みが増す効果が生じる場合にも、この装置の使用により著しく軽減される。
【0107】
皮膚表面にわたって適切な真空を作用させ、平らな固体面で皮膚表面を平板化することは、皮膚に正圧を加えることと生理学的に等価でないことが理解されよう。
皮膚表面への正圧加圧時には、皮膚表面は圧縮され圧搾される。皮下の骨は反動力を加えるので、皮膚の圧縮度が高まり血管や神経束が圧搾される。皮膚の加圧に対する生理学的な反応は、皮膚厚に、特に皮膚表面と骨との距離に依存する。
これに対して、真空作用によって吸引される皮膚表面の下に位置する骨は、皮膚の平板化処置の間、何の影響も及ぼさない。皮下の骨は、骨の上の結合組織が真空チャンバのほうへ吸引されるさい、反動力を加えないので、皮膚の平板化処置を誘発した真空に関係する結合組織の生理学的な過程は、正圧の加圧の結果として圧縮される結合組織のそれとは異なる。本出願人は、皮膚の平板化処置を誘発する真空の効果を説明した公刊された臨床研究があることを知らない。皮膚表面への正圧の加圧に関する臨床成績が、皮膚の平板化を誘発する真空に関して入手可能な成績にとって臨床的に重要であるとは思われない。
【0108】
痛みの緩和は、修正マクギル痛み質問票に従って評価した。マクギル痛み質問票は痛みの専門家には周知であり、R.メルザクの「マクギル痛み質問票:主要特性と採点法」(R.Melzack,“The McGill Pain Questionnaire:Major Properties and Scoring Methods”,Pain1)(1975,P.277‐299)に説明されている。真空に誘発されて平板化した皮膚の光ベース治療に続く45の皮膚ターゲットで感知された痛みを、皮膚の平板化なしで行った光ビーム治療での痛みと比較した。痛みは激減し、極めて痛い治療を指示する平均痛みレベル4から、痛みなしを指示する平均痛みレベル2へ下がったことが明らかとなった。
本出願人が発見したところによると、痛みの緩和には、概して、最低150mmHgの、好ましくは最低400mmHgの真空レベルが必要である。より低い真空レベル、例えば血液排除に適した50mmHgでは、痛みの緩和には不十分であることが分かった。
【0109】
本出願人は、また真空援用式痛み緩和のレベルに貢献する要因は、伝搬部材の表面積であることを発見した。本出願人は、何らかの特定理論による制限を受けることを望まず、真空援用式痛み緩和のレベルと伝搬部材表面積との関係は、図47に反映していると信ずる。略示したように、十分に広い面積の伝搬部材2360により、相応に多くの数の圧力レセプタ2365が確実に圧縮されるだろう。真空チャンバ2350から導管2352を介して空気を排出するようにされた真空ポンプ2355の作業の間、皮膚ターゲット2354は伝搬部材2360へ吸引され、伝搬部材により平板化される。圧力レセプタ2365は、皮膚ターゲット2354が伝搬部材2360により平板化されるさい、皮膚ターゲットの圧縮を感知し、皮膚ターゲット2354内部にある高速伝導有髄圧力神経2368が、発生した圧力信号2369を脊髄へ伝える。
【0110】
圧力信号2369は、脊髄内の、脳へのシナプス2380で抑制信号2385として機能し、これにより痛み信号が抑制される。この痛み信号は、通常は、レーザ又はIPL光等の電磁エネルギーによる皮膚治療の間に、比較的高い温度上昇の結果として、痛みレセプタ2375により感知された後、脊髄の緩速無髄痛覚神経2378を介して脳へ伝えられるものである。伝搬部材2360の面積があまり大きくない場合は、少数の圧力レセプタ2365が圧縮され、痛みの感覚は、圧力レセプタによってゲート制御されない痛覚神経から脳への相応の痛み信号の伝導により感じられることになろう。痛みの緩和は、伝搬部材が少なくとも100mmの面積、例えば長さ20mm、幅40mmを有する場合に、著しいことが判明した。
【0111】
出願人は、また意外なことに、発生した真空の持続時間が予め定めた値より長くなった場合には、痛み信号の抑制が止まることを発見した。発生真空の持続時間が約0.1‐6秒の範囲の値を超えた場合、伝搬部材へ吸引された皮膚の圧縮は痛み抑制効果を失う。真空作用の持続時間の上限は重要なパラメータであり、先行技術の真空援用皮膚治療装置は、効果的な痛み伝導の抑制ができない。これは、特に、前記持続時間範囲内で発生真空を自動式に解除する制御装置を欠くためである。電磁エネルギーを利用して行う皮膚治療は、痛み抑制信号が治療中に発せられない場合、言い換えると、真空チャンバが、それがあればの話だが、圧縮された皮膚を伝搬部材へ吸引するのに不適な場合、又は発生真空の持続時間が約6秒を超え、真空発生と皮膚ターゲットへ向けた治療エネルギーの発生との間の遅れが6秒を有意に上回る場合には、極めて苦痛なものになりがちである。
【0112】
図22に示した真空チャンバ100は、また皮膚ターゲット130への光ビーム160の発光による痛みを緩和するように構成されている。導管155を介して真空チャンバ100が真空に引かれると、皮膚ターゲット130は、伝搬部材115の方へ吸引され、伝搬部材に接触する。皮膚ターゲット130の皮膚区域136への各治療パルスの入射時、対応毛球を取り囲み皮膚区域136へ延びる神経138は、即時型の鋭い痛みを感知することなく、痛覚を抑制するのに十分な持続時間の間、真空作用の結果生じる大きさの近位向きの力Fにより伝搬部材115に押し付けられる。光ビーム160は、毛包139によって十分に吸収される波長である。真空発生と光ビーム160の発光との間の時間的な遅れを最適化することにより痛覚は、十分に抑制され、光ビーム160のエネルギー密度を減じる必要がない。
【0113】
皮膚の真空援用式光ビーム治療の間に痛みを緩和する装置は、真空ポンプが発生させる真空レベル、並びに真空発生と光ビーム発光との時間的な遅れを調節する制御装置(図示せず)を含むことができる。制御装置は、好ましくは、指で押す複数のボタンを有し、ボタンの各々が、真空ポンプと光源とを独特の組合わせの作業条件に設定するようにされ、それにより真空チャンバ100内に予め定めた真空レベルが発生し、真空ポンプの作動と光ビーム160の発光との間の予め定めた時間的な遅れが生じ、どのボタンが押されたか表示される。この装置は、また制御装置と電気接続された制御弁を含み、これにより真空発生モード時には真空チャンバ内の空気が排出され、真空解除モード時にはチャンバ内へ空気が導入される。保健の専門家は、該ボタンの1つを押す場合、患者が概して感じる痛みレベルを予想できる。患者の痛み限界値が比較的低い場合、又は皮膚ターゲットへの真空チャンバによる真空の作用が妨げになる場合、保健専門員は、別のボタンを押して作業条件の組み合わせを変更できる。あるいは又患者の痛み限界値は、痛みに反応する筋肉反射の電気式測定により客観的に決定することもできる。
【0114】
皮膚ターゲット130が真空発生時に伝搬部材115に押し付けられると、血液は、皮膚ターゲット130から周辺皮膚区域135へ排除される。周辺皮膚区域135内の血液分量が増すと、周辺皮膚区域は治療光により損傷され易くなり、治療光は、皮膚ターゲット130から皮膚区域135へ皮下で拡散する可能性がある。皮膚区域135に対する可能な熱損傷に対処するために、真空発生前に皮膚ターゲット130に熱吸収ゲル(図示せず)が塗布され、次いで伝搬部材115により周辺皮膚区域135が圧搾される。移動したゲルは、したがって皮下散乱治療光による損傷から皮膚区域135を保護する。
図43に示した治療ハンドピース2185は、光源2195を有し、手2188に保持されている。治療光2199は、伝搬部材2191と、皮膚2194を吸引し平板化することで痛みの伝達を抑制する痛み抑制真空チャンバ2193とを介して伝播される。
【実施例8】
【0115】
図28は痛み緩和に適した本発明の別の実施例を示している。装置700は、真空チャンバ705とIPL治療光源710、例えば米国シネロン社製光源とを含んでいる。該光源は、その遠位端に2個の電極720の形式のRF源を備えている。真空チャンバ705の伝搬部材725は、電気絶縁性のサファイア製であり、RF波は、皮膚ターゲット735への伝播が防止されている。サファイアを装置700に好適の伝搬部材にするため、2個の金属導電性電極730が各々、サファイア製伝搬部材725に形成された2つのスリット内に溶接されている。
【0116】
スリットは、例えば米国のアメリカン・プレシジョン・ダイシング社(American Precision Dicing Inc.)製、イスラエルのロテム(Rotem)社製、同じくイスラエルのKPE社製のきり先での超音波ドリル加工又は精密研摩ドリル加工で形成できる。電極の典型的な寸法は、幅2mm、長さ17mm、奥行き2mmなので、例えばシネロン社製のダイオードレーザと適合し、これにより、ダイオードレーザの電極をサファイア製伝搬部材の電極730上に配置できる。電極730は、光源710に一体形成された電極720の伝播経路内に位置するように配置される。磁気ロッド(図示せず)等の適宜な部材を使用することで、サファイア製伝搬部材725の電極に対して光源710の迅速なセンタリングが可能になる。真空発生時、皮膚ターゲット740は伝搬部材725に接触し、電極730はRF波を皮膚ターゲット740に伝える。
【0117】
図29及び図30には、本発明の別の実施例が示されている。この場合、RFベースの皮膚治療との関連で、痛み緩和のために大型の真空チャンバが使用される。図29の装置では単極RF源が使用され、図30の装置では双極RF源が採用されている。これらRF源の各々は、異なる種類の治療に使用される。単極RF源は、概して、皮膚深部の引き締めが必要な場合に、例えばセルライトを有する腹部や下肢の皮膚の場合に使用される。双極RF源は、概して、顔の治療等の、より皮膚外表面の引き締めに使用される。所望とあれば、RFベースの皮膚治療は、光ベース治療で補完できる。
【実施例9】
【0118】
図29に示すように、治療装置750は、RF源783、真空チャンバ755、真空チャンバ・カバー781、カバー781内に配置された伝搬部材782とを含んでいる。真空発生時、空気は導管772を介して真空チャンバ755から排出される。真空チャンバ755の側部に、伝搬部材782の長さと事実上等しい距離だけ離れて配置されているマーカー765は、所望の位置に真空チャンバを置き換えるさいの助けとなる一方、真空チャンバを含むハンドピースが1つの皮膚ターゲットから別の皮膚ターゲットへ変位するさいの助けとなる。
マーカー765は、十分に目立つものであることによって、前の皮膚ターゲットの位置との、眼で見える関連を表すことができる。
【0119】
伝搬部材782は、吸引される皮膚759と接触でき、透明な導電性コーティング、例えば米国のエドマンド・オプティクス(Edmund Optics Inc.)社、米国のメルズ・グリオット(Melles Griot Inc.)社、米国のオフィア・オプティクス(Ophir Optics Inc.)社で製造されたコーティングで被覆された透明な材料製又は金属部材製でよい。伝搬部材782は、RF源783が発生させる単極電界784を、吸引された皮膚759を通して伝搬できる。単極電界784は、1‐50J/cmの範囲のエネルギー密度、0.4Mhz‐1GHzの範囲の周波数で発生させることができ、吸引された皮膚759の表面に対し直角であり、当業者には周知のように、背中等の身体部分に配置される帰還電極で終わっている。例えば、単極電界784は、エネルギー密度2.4J/cm、周波数2.4Mhzで発生させることができる。
【0120】
真空チャンバ755は、皮膚ターゲット上方の真空チャンバ755が真空に引かれる場合、皮膚ターゲットからの血液排除を誘発するように構成されている。比較的電気抵抗が小さい血液761が、約100トルの真空の発生に反応して排除された場合、RF波エネルギー783は、吸引された皮膚759の結合組織又はその下の脂肪組織を透過して伝播するが、血液が排除されない場合には血管を透過しない。RF電界784の電流に対する最小抵抗の経路は、したがって、排除された血液761を透過せず、むしろ、皮膚表面と直角の結合組織を透過する。吸引された皮膚759内で吸収される、RFエネルギー783のかなりの部分は、コラーゲンに富む真皮網状層を一様に加熱し、皮膚の収縮を促進させ、しわを除去する。当業者には周知のように、RF源の周波数の関数である浸透深さに応じて、RF電界784は、網状層下のセルライト又は脂肪層に作用し、セルライトの深さで皮膚収縮又は脂肪の軟化を生じさせる。約400トルの比較的高レベルの真空により、痛み信号は抑制され、治療は無痛で行われる。
【実施例10】
【0121】
図30に示した装置が有する真空チャンバ795は、双極RF源793と協働して真空援用治療を行うのに適している。0.2‐4MHzの周波数で発生する双極電界797の誘発に適した電極対787が、真空チャンバ795のカバー788上に配列され、電極対787の数は、カバー788の寸法と治療深さとに応じて1から100の間で変更できる。双極電界797は、エネルギー密度30J/cm、周波数450MHzで発生させるのがよい。カバー788は、RF源793が、皮膚障害の治療に使用される唯一のエネルギー源の場合、単色光不透過性にすることができる。カバー788は、皮膚治療がパルス光源に加えて双極RF源793によって行われる場合には、単色光透過性にすることができる。
【0122】
真空チャンバ795は、血液を真空チャンバ周辺へ排除するようにされ、吸引された皮膚ターゲット799内の結合組織は、RF電界797のエネルギーの大半を受け取ることができる。普通であれば、RF電界797のエネルギーは、血液を排除する真空チャンバの影響なしに最小電気抵抗の経路を形成する皮膚ターゲット799内の血管を指向し、それによって効果的な治療が行われるはずである。先行技術による治療、例えばイスラエルのシネロン社製の装置による治療では、サディックほか著「エステティック医学における選択的電気加熱分解:概観」(N.Sadicketal.,“Selective Electro‐Thermolysis in Aesthetic Medicine:A Review”)(「外科及び医学におけるレーザ」誌34:91‐97,2004年刊」)で説明されているように、血管の経路を利用して組織の加熱が行われるが、この治療では、本発明の皮膚平板化技術による痛み抑制は不可能である。
【0123】
M.ゴールドマンが「しわの治療及び真皮の双極真空援用電子加熱による皮膚緊締」(M.Goldman,“Treatment of Wrinkles and Skin Tightening using Bipolar Vscuum‐Assisted Radi Freqency Heating of th Dermis”)(ルメニス社刊)のなかで説明している、米国のルメニス社製のアルーマ(Aluma)による先行技術も同じようなもので、それによれば、皮膚が、皮膚と平行な2個の平行な電極間で28mmHgの低真空レベルに反応して吸引されるが、本発明の皮膚平板化技術による痛み抑制は不可能である。
【0124】
図35に示した真空チャンバ960は、伝搬部材964を介して作用させる電磁源による痛み抑制皮膚治療に適している。真空チャンバ960は、チャンバ内圧測定用の圧力センサ963を備え、これにより、発生真空レベルが痛み信号伝搬抑制に十分かどうかが検出される。圧力センサ963は、また閉ループ制御システム内に使用され、それによって真空ポンプ速度が、検出された真空レベルに応じて変更され、痛み抑制の目標レベルが達成される。操作員は、通常、真空チャンバ内の目標圧力レベルを400‐600mmHgの範囲の値に設定する。
【実施例11】
【0125】
図42a及び図42bは、本発明の追加実施例を示したものだが、この実施例の場合、レーザ治療光により治療された組織の治癒速度を高めるために、散光レンズ列が備えられている。痛み抑制のために比較的高レベルの真空を発生させることで、治療光による散乱度を制限する上で付加的な利点が得られる。比較的高レベルの真空を真空チャンバ内に発生させない場合、治療光は皮膚内の分子束及びコラーゲン束により大部分が散乱し、散光レンズ列によって、更に散乱度が高まり、治療光の効果が低下するだろう。
【0126】
図42aに示すように、真空チャンバの伝搬部材2150の近位面には、小型の凹レンズ2155が配列されている。凹レンズ2155は散光するため、皮膚表面2175と事実上直角の治療光2170が、皮膚表面2175に対し斜めの光線2171を発生させる。出射光線2171の発散により出射光の構造的な重複による高エネルギー密度の区域2177と、出射光が重複しない低エネルギー密度の区域2179とが発生する。伝搬部材2150の利点は、低エネルギー密度区域2179の下に位置する皮膚ターゲットは、熱損傷度が低いため治癒速度が速い点である。他方、高エネルギー密度の区域では治療効率が高くなる。
【0127】
図42bには、配列された凹レンズ2155を介して下に位置する皮膚表面へ入射する治療光のエネルギー分配形式が、平面図で略示されている。低エネルギー密度区域2179は白い円で示され、高エネルギー密度の区域2177は対応する白い円を囲む灰色の部分で示されている。
凹レンズ2155の直径は0.5mm‐3mmの範囲で変更できる。負の焦点距離はレンズ直径の1‐5倍とすることができる。配列は密であり、例えば、各レンズが6個の隣接レンズに対し接線方向となるような6角形の配列である。1‐mm直径のレンズの場合、レンズ密度は約1レンズ/mmである。凹レンズ2155は、プラスチック、ガラス、サファイアのいずれかで作られ、多数の配列小レンズ製造会社で購入できる。凹レンズは、またホログラフィ素子として、イスラエルのホロオア社(HoloOr Ltd.)で製造できる。
【0128】
配列レンズ2155は、また特に皮膚の緊締に好適である。755nm波長のアレキサンドライト・レーザ、又は1064nm波長のNd:YAGレーザから発せられルビームが伝搬部材2150を介して平板化された皮膚内へ透過した場合、血管が排除された皮膚ターゲットは、光のより深い浸透を助成し、コラーゲンによるより高い吸収を助成する。別の好適なレーザは、米国のDDCテクノロジ‐社製のものである。これらのレーザの各々は0.5‐5秒の持続時間の作業が可能であり、皮膚を約1‐2mm深さで約55°Cの温度まで加熱する。レーザの平均出力は80W、エネルギー密度は約15‐50J/cmである。
【0129】
図19に示したのは、本発明の痛み緩和装置に好適の典型的な皮膚冷却装置である。真空チャンバは、既述のように、真空を発生させた場合、皮膚ターゲットが伝搬部材に確実に接触するように構成されているので、皮膚の冷却は、伝搬部材を直接冷却した場合に、最適化される。このため、熱電冷却器1979により、又は熱伝導板上を流れる冷却液により冷却される熱伝導板1975を、伝搬部材1906に接触させて、治療された皮膚ターゲット1960から発生した熱が伝搬部材に吸収されるようにする。治療ハンドピースは、冷却器1979を備えているので、皮膚が比較的黒い場合、フィッツパトリク皮膚タイプ4‐6の場合に皮膚に損傷を与える表皮温度上昇が防止される。皮膚冷却器をよりコンパクトにするため、熱伝導板1975は伝搬部材1906に対し斜めに配置されているので、光ビーム1908の伝播を妨害しない。痛みの緩和は、冷却器によってではなく、真空の作用で皮膚を伝搬部材に接触させることで達せられることが理解されよう。例8で後述するように、痛みの軽減は、皮膚冷却器を使用せずに真空援用式光ベース治療について行った実験中に著しいものがあった。
【0130】
図45に示すように、伝搬部材は、また例えば米国のダーマチル社(Dermachill)製の低温スプレーを噴霧して冷却してもよい。装置2300は加圧容器2310を含み、ここから冷却蒸気2315が、真空チャンバ2330の伝搬部材2325に噴霧され、伝搬部材2325とその下の皮膚ターゲット2335とが冷却される。この冷却器は、米国のカンデラ社(Candela Corporation)製のアレキサンドライト・レーザに備えられ、皮膚を直接冷却することで、表皮が0°C未満の低温になる。表皮が極めて低温になることで、冷却効果は、秒単位より、むしろミリ秒単位の間に顕著になるため、冷却作業により、より深い皮膚区域を冷却することなく表皮が効果的に保護される。
【0131】
十分に薄手の伝搬部材2325を選択することで、冷却器は、あたかも伝搬部材2325が存在しないかのように、皮膚ターゲット2335を冷却できる。伝搬部材2325は、150‐500マイクロメートルの幅を有し、サファイア等の高い熱伝導性を有する材料製である。皮膚は、覆われていない皮膚上に規則的に噴霧されるスプレーによって冷却可能である。スプレーによる表皮の冷却は、サファイア製の伝搬部材の熱緩和時間(thermal relaxation)が、約0.5msecの表皮の熱緩和時間に等しいか、又はそれ未満である場合に、可能になる。例えば厚さ0.5mm、直径2.54cm(1インチ)のサファイア製伝搬部材は、米国のエスコープロダクツ社(Esco Products Inc.)から入手できる。
【0132】
ゲルによる妨害を防止する装置
この装置は、好ましくは、治療前に皮膚ターゲットに塗布される放熱ゲルによる真空チャンバ導管の詰まりを防止する手段を備えている。図24A及び図24Bに示すように、ゲル185は、真空発生後、真空チャンバ180の周辺へ押し込められる。真空チャンバ180が皮膚区域190から皮膚区域192へ移動すると、更にゲルは、図24Bに示すように、押し込められ累積する。このゲルは、場合によっては真空チャンバ導管内へ吸い込まれるが、通常、IPLユニットの場合、大直径の治療ビームが使用され、相応に大直径の真空チャンバの使用が必要なため、導管が詰まると重大な危険が発生する。ゲルの通過を防止する手段を用いない場合には、多量のゲルが導管に吸い込まれ、真空ポンプに達して、真空ポンプの不具合を生じさせ、治療効率を低下させがちである。また、吸い込まれたゲルは、真空チャンバを汚染しがちだが、別の患者の治療前に真空チャンバを洗浄し滅菌するのは困難である。
【0133】
図16に戻ってみると、真空チャンバ1901は2つの通路1930を有しており、これらの通路を介して、空気が真空チャンバから排出される。各通路1930は、真空チャンバ1901と流体連通しており、外壁1924と、垂直部分1926と、外壁1924及び垂直部分1926の双方に結合された円筒形の水平の通路壁1930とによって画成されている。垂直部分1926の遠位端は、皮膚表面1965上に載置された外壁1924の遠位端の垂直方向上方かつ内方へ間隔をおいて位置する伝搬部材1906と結合され、通路壁1930の垂直部分1926と結合されている。水平の通路壁1930の頂部は外壁1924と垂直方向上方へ間隔をおいて位置し、したがって真空チャンバ1901はU字形となるように考えられている。
【0134】
各水平の通路壁1930は開口1917で終わっており、開口1917は、外壁1924の遠位端から距離Pだけ隔たり、真空チャンバ1901の中心線1969から距離Jだけ隔たっている。ゲルは真空の発生によって吸引されるか、伝搬部材1906に押し付けられた後、皮膚ターゲット1960から横方向に押し出される一方、距離P及び距離Jは、通路1930の容積と、外壁1924と吸引された皮膚ターゲット1960の隣接表面との間の真空チャンバ内部の容積とが、ゲル1963による対応開口1917の詰まり防止するのに十分な大きさとなるように選択される。例えば、高さKが2mm、壁の開口直径3mm、開口から壁の遠位端までの距離Pが10mm、真空チャンバ中心線から開口までの横方向距離Jが20mmの真空チャンバは、ゲルによる開口の詰まりを防止するのに十分である。
【0135】
図17には、真空ポンプによるゲルに吸い込みを防止する別の装置が示されている。この装置は、トラップ1920と、ゲル及び空気を真空チャンバからトラップ1920へ吸い出す導管1940と、トラップ1920から真空ポンプへ空気を吸い出す導管1945とを含み、これらすべてが使い捨てである。真空チャンバから開口1917を介して排出される空気は、導管1940,1945を介して流れ、真空ポンプの入口へ到達する。真空チャンバから排出されたゲルは、トラップ1920に集められる。トラップ1920は周期的に空にされるので、累積したゲルは導管1945の入口より上へは達しない。
【0136】
トラップ1920及び導管1940,1945は、好ましくはプラスチックの親水性材料で作られ、ゲルが導管を介して真空ポンプへ吸引されるより、壁部に付着するように強制する。図示のように、ゲル1966は導管1940の壁部に付着し、ゲル1967はトラップ1920の底部に集められる。導管は、真空ポンプへのゲルの通過を防止するのに適当な寸法を有している。例えば真空チャンバ壁部の開口のところの導管1040の直径は30mmであり、トラップ1920への排出口の直径は10mmに狭くなっており、入口側の導管1945の直径は5mm、真空ポンプ入口近くの排出側では10mmである。
真空ポンプへのゲルの吸い込みを防止する別の装置も使用できる。例えばゲルを、トラップ1920内へ導入した適当なイオン交換樹脂に結合させることで、導管1945から吸引されるのが防止される。所望とあれば、フィルタを導管1940,1945の入口に配置できる。
【0137】
あるいはまた、真空チャンバ壁の開口のところの導管1940の直径を増すことで、ゲルが真空チャンバを出るのを防止することができる。したがって、真空解除モード時に、吸引された皮膚ターゲットから、導管1940を介して真空チャンバ内へ導入される大気により横方向へスライドしたゲルに作用する内向きの力は、真空チャンバからのゲルの漏出を防止するのに十分な大きさである。疎水性コーティング、例えばシリコン又はテフロン(登録商標)を真空チャンバ壁に被覆することもでき、そうすることで、特に真空解除モード時にゲルが真空チャンバ壁に付着するのが防止されよう。その場合、ゲルは、真空チャンバ壁に付着することなく、皮膚表面に沈着する。ゲルは、したがって、ハンドピースを他の皮膚ターゲットへ置き換える間、移動することなく、真空チャンバ壁の遠位端の形状を維持しているのが好ましい。真空チャンバ壁の遠位端が例えば円形の場合、真空解除モード時に皮膚表面に付着しているゲルも、また円形となり、治療を監督する保健専門員には、所定皮膚表面に既に治療光が入射したことを指示するものとなる。
【実施例12】
【0138】
図18に示した装置1980は、取り外し可能な上方部分を有する真空チャンバを含んでおり、これにより真空チャンバ内壁に付着したゲルは、例えば塩又は他の適当な溶剤によって溶解して内壁から除去できる。装置1980は、中央区域が開いた上方部分1983と、上方部分1983に取り付けられた伝搬部材1984と、真空チャンバ壁1981と、真空チャンバ壁1981と直角の、上方部分1983を支持するのに適当な寸法の真空チャンバカバー1982と、対応真空チャンバ壁1981に揺動可能に結合され、真空チャンバカバー1982に上方部分1983を取り外し可能に固定するための複数取り付けクリップ1987とを含んでいる。薄手の柔軟なシール部材1988を、真空チャンバカバー1982の周縁部に配置して、真空チャンバ内への大気の侵入を防止するのが好ましい。導管1940は、図示のように、真空チャンバ内部と連通している。
【0139】
図25には、皮膚の真空援用式光ベース治療時に真空チャンバ導管へのゲルの詰まりを防止する装置の別の実施例が示されている。装置400は、真空チャンバ420と、蠕動ポンプ430と、真空制御ユニット440と、制御弁450と、マイクロスイッチ460とを含んでいる。
【0140】
真空発生モードは、制御ユニット440への信号445の発信により開始され、引き続いて蠕動ポンプ430が起動される。蠕動ポンプ430は、真空チャンバ420内部と連通している導管425に接続されたホース442と、回転可能なハブ446とを含み、該ハブからは複数のシュー及び又はローラ448(以下では「押圧部材」と呼ぶ)が半径方向に延びている。ハブ446が回転すると、押圧部材が、続いてホース442の異なる区域を順次に圧搾することで、2つの押圧部材間に挟み込まれた流体量が、端部449へ向って確実にホース442内を一方向に流れるように強制される。これにより、蠕動ポンプが起動されると、空気が真空チャンバ内部から吸い出され、真空チャンバ内には0‐1気圧の範囲の真空が発生する。かなりの量のゲルが真空チャンバ内の周縁に累積すると、ゲルもホース内へ流入するように強制されるが、ホースを詰まらせることはない。ホース442の端部から放出されたゲルは、皮膚表面に載り、隣接皮膚ターゲットが光ベース治療を受けたことを指示する。
【0141】
マイクロスイッチ460又は他の適当な皮膚接触式検出器は、ハンドピース又は真空チャンバ420が皮膚ターゲット415上に載置されたことを検知するようにされている。マイクロスイッチ460は、皮膚ターゲット415に真空チャンバ420が載置されると、信号445を発生する。制御弁450は光検出器(図示せず)によりトリガされ、光検出器は、光ベース治療パルス470の終わりを検知すると、信号455を発生させる。制御弁450は、信号455発生後に開弁され、通路456を介して真空チャンバ420内へ大気を導入し、真空解除モードが開始される。信号455は、また制御ユニット440にも送られ、蠕動ポンプ430を停止させる。蠕動ポンプ430の既述の自動式作業は、したがって関連治療中の患者の痛みを防止する。所望とあれば、蠕動ポンプ430の自動式作業は手動で補助できる。
【0142】
蠕動ポンプ又は接触検出器は、本発明の他の実施例と一緒にも使用できることが理解されよう。
他の実施例では、真空ポンプは空気ポンプである。空気が真空チャンバから排出されると、常時、ばねにより閉じられているピストン(図示せず)が開いて、空気が吸い込まれる。真空解除モードでは、ピストンは元の位置に戻され、空気が真空チャンバ内へ流入し、吸い出されていたゲルは皮膚表面へ戻される。
【実施例13】
【0143】
図27A‐図27Cには、本発明の別の実施例が示されており、この実施例の場合、皮膚の真空援用式光ベース治療には真空ポンプが不要である。装置600は、伝搬部材615が取り付けられた垂直移動可能なカバー610と、垂直移動可能なカバー610が取り付けられたチャンバ壁620と、カバー610の外周部に固定されたシール部材625とを含んでいる。チャンバ壁620は、カバー610を取り囲み、カバーと類似の形状を有している。
【0144】
カバー610が、図17Aに示すように、最も下の位置にある場合、カバーはゲル635の層が塗布されている皮膚表面630と同一平面上にある。この位置では、カバー610と皮膚ターゲット630との間からの空気の侵入が、例えば、チャンバ壁620に外部から取り付けたシール部材によって防止される。矢印652で示した近位向きの力が、図27Bに示すように、カバー610に加わると、カバーは上昇し、その間、シール部材625は弾性的にチャンバ壁620に接触する。装置600は、カバー610の上昇後、遠位への力が加わらない限りカバー610の遠位への移動が阻止されるように構成されている。カバー610が上昇する間に、カバー610と皮膚表面630との間の容積が増すことで、真空チャンバ640がチャンバ壁内部に形成され、その間、空気の侵入が阻止される。
【0145】
近位へのカバー610の移動の結果、真空チャンバ640内に発生する真空は,0‐1気圧の範囲であり、図示のように、皮膚ターゲット650を変位したカバー610のほうへ吸引するのに適しており、引き続き皮膚ターゲットには治療パルスが入射される。光ベース治療に続いて、図27Cに示すように、矢印654で示された遠位向きの力がカバー610に加えられると、カバー610は、次の皮膚ターゲットへの移動準備に最下位置へ戻される。皮膚ターゲット治療終了時に真空チャンバ640に大気を導入することにより真空解除モード中に遠位へのカバー610の移動を迅速化するために、手動操作式弁又は制御弁(図示せず)と連通する通風管675を採用できる。
【0146】
近位向きの力652又は遠位向きの力654はカバー610に取り付けたハンドル(図示せず)で手動式に発生させてもよいし、電気式に複数ソレノイド670により及び/又はカバー610の周縁部に配備されたばね組立体660により発生させてもよいが、これは、カバーをバランスよく移動させるために当業者には周知のことである。ソレノイド670の取り付けは、ソレノイドの一方の側が移動可能なカバー610に機械式に結合され、他方の側がチャンバ壁に結合されるようになっている。カバー610の電気式操作が採用される場合には、皮膚接触センサ460(図25)が発する命令608が、カバー610と皮膚表面630との接触に続く予め定めた時間的遅れの後、ばね組立体660又はソレノイド670に伝えられることで、カバー610が、ピストンの持ち上げ力に比較できる近位向きの持ち上げ力652で近位へ移動せしめられる。
【0147】
ソレノイド670を適切に制御することによって、隣接皮膚表面630に対し引き上げられた皮膚ターゲット650の高さHは、治療スポットが拡大するのに応じて概して増大する。例えば高さHは、治療スポットが4mmの場合は、2mmであるのに対して、治療スポットが3mmの場合は、0.5mmとなろう。あるいはまた、痛み軽減のため皮膚ターゲット650を確実に伝搬部材615に接触するように高さHを調節することもできる。
【0148】
時には、光ベース治療を行うための十分な高真空が、不具合のため真空チャンバ640内に発生しないことがある。保健専門員が、皮膚ターゲット650と伝搬部材615との間隔がIPL又はレーザによる効果的治療のために予め定めた間隔より大であることに気づいた場合、カバー610の自動制御を手動で補助できる。ソレノイド670内の電流の方向を逆にすることによって、カバー610を皮膚表面630方向へ強制する一度だけの遠位向き力を発生させることができる。
治療用光源の遠位端がチャンバ壁620に配置される場合、カバー610は、比較的軽量で約50gmである。しかし、治療ハンドピースがカバー610上に配置され、双方の合計重量が約1kgに及ぶ場合は、カバーとハンドピースの両方を持ち上げてチャンバ640内に真空を発生させるには、ソレノイド670の容量を高める必要がある。
【0149】
装置600は電力消費量が低く、比較的コンパクトな点が有利である。ハンドピースがチャンバ壁620に配置され、ソレノイド670は、壁部の排流の必要なしに、カバー610の垂直移動が必要なときにのみ、電池によって励起される。カバー610を2mm高さに持ち上げるのに要するエネルギーは、背中又は下肢の大きい面積の通常500‐パルスの治療の場合、約0.5Jである。したがって安価な1.5Vの電池で1000を超える治療が可能である。
装置600もゲルの累積を効果的に防止する。皮膚ターゲット650が、真空発生モード時、図27Bに示すように吸引されると、ゲル635は真空チャンバ640内の周縁へ移動する。しかし、カバー610が、図27Cに示すように元の最下位置に戻ると、皮膚ターゲット650は引込む。ゲル635は、その場合、カバー610の圧力で事実上一様にカバー610の下に拡がる。同じく、装置600が別の皮膚ターゲット635へ移動した場合も、ゲル635は累積しない。
近位向き力は真空ポンプで補助でき、ゲルが過剰に皮膚表面630に付着したり、皮膚ターゲット650が既述のように光ベース治療を受けた指示が望まれる場合、この補助が必要になる。
【0150】
空気‐ゲル2重真空ポンプ
図31及び図32は、効果的な光ベース治療に十分な真空レベル、及び/又は痛み抑制の場合にポンプの故障を生じさせることなく空気及びゲルの双方を確実に吸引するのに必要な真空レベルを発生可能な皮膚科用ポンプを示している。
【実施例14】
【0151】
図31は、本発明による真空ポンプの一実施例の平面図であり、この実施例は、空気、ゲルの双方の吸引に適している。カバーを除去し、全体を符号860で示したこの真空ポンプは、内燃機関分野で周知のヴァンケル機関に似た形式に構成され、外転トロコイド形ケーシング内で偏心軸上の3角形ロータが回転する。この真空ポンプは、部品が3‐5個なので、簡単かつ安価に製造できる。真空ポンプ860は、電力消費量が低く、1‐10Wの範囲、例えば約5Wなので、治療ハンドピース内に収容される安価な電池、例えば再充電可能な電池で給電できる。
【0152】
電力消費量が極めて低いこのポンプは、次の要因により可能になった。すなわち、a)ケーシング、ロータ、カバーを含むポンプが、テフロン(登録商標)と混合されたアセタル等の、例えば摩擦係数0.05の自己潤滑性材料製であり、これにより摩擦が最小化されるため、電力消費量も低減されること。b)真空ポンプによって吸引され、ポンプの異なる画室内を移動するゲルの薄手の層がポンプの潤滑を補助すること。c)ポンプのロータが、後述するように、スロットを有するように形成され、それによりロータがケーシングの形状に合致でき、ゲルの加圧に応じてたわむことで、ロータの回転に対する抵抗が低減されること。
【0153】
ゲルは、真空チャンバからポンプのキャビティへ吸引されるさい、ポンプを潤滑するとはいえ、ポンプは自己潤滑性材料で製造してポンプの加熱又は不具合が防止できるのが望ましい。なぜなら、皮膚は極めて薄手のゲル層で覆われるか、完全にはゲルで覆われていないかのいずれかであり、したがって、ポンプの潤滑が適切には行われないからである。
【0154】
US5,944,499、US6,106,250、US6,158,992に記載の先行技術のヴァンケル機関では、3角形ロータの3面の各々が、次の4サイクルに順次関わっている。すなわち吸入、圧縮、動力、排気の各サイクルである。圧縮可能な流体が、第1面とケーシングとの間のピーク容積の画室を形成する吸入サイクル時に、ロータ第1面により吸気口内へ導入される。同時に第2面が燃焼力により駆動され、第3面が排気口から排気ガスを押し出す。圧縮サイクル時には、前記画室の容積はかなり縮小し、導入された流体はかなり圧縮され、次いで、圧縮された流体が動力サイクルで点火される。ゲル等の圧縮不能の流体がヴァンケル機関内へ導入されると、チャンバ容積が小さいため、圧縮サイクル時に流体はロータ及びケーシングが加える力で過剰に加圧される。加圧された流体は、その場合、内部で増大した力をロータに加えるため、各面の結合部のところにある頂点は、損傷し易く、応力集中度が高いために、例えばひび割れを発生する。ポンプカバー又はケーシング壁も、同じように損傷しやすい。先行技術のヴァンケル機関は、したがって圧縮不能の流体の信頼性ある送出には不適である。
【0155】
先行技術のヴァンケル機構とは異なり、本発明のヴァンケル型真空ポンプは空気等の圧縮可能な流体と、ゲル等の圧縮不能な流体との双方の吸引に適している。ロータが偏心取り付けされているので、ロータ面と取り囲むケーシングとの間に形成される画室は容積が変化し、空気等の圧縮可能な流体は、このため小さい容積を有する各室内で圧縮される。加圧されたゲルを小容積を有するポンプ画室内に順応させるために、ロータは各面にスロットを有するように構成するのが好ましい。ロータは、これにより圧縮‐排出サイクル時に、加圧されたゲルが、内部での増大した力をロータに加えた場合にたわむことができ、それによりロータの故障が防止される。ロータのたわみでゲルの圧力も制限される。ゲル圧力は、ロータがスロットが形成されていなければ、普通は、ポンプカバーをケーシングから剥ぎ取り、真空が発生すれば、ポンプ内部へ大気が侵入してしまうだろう。
【0156】
図31に示すように、ポンプ860はケーシング861と3角形ロータ865とを含んでいる。ロータ865は、凸面867A‐Cを備えた概して正3角形状の外輪郭を有し、ロータ865の中心区域に固定された、キャビティ871を画成する内歯車869を備えている。凸面867Aは、頂点868Aから頂点868Bまで延び、同じように凸面867Bは頂点868Bから頂点868Cまで延び、凸面867Cは、頂点868Cから頂点868Aまで延びている。内歯車869は外歯車877とかみ合い、外歯車は、キャビティ871の内部で回転する軸879を中心として軸受けされていることで、ロータ865は、矢印で示した方向に軸879を中心として軸879よりかなり遅い速度で遊星形式に偏心回転する。
【0157】
ロータ865は端面スロット873A‐Cと中央面スロット883A‐Cとを有するように構成されている。端面スロット873A‐Cの各々は、対応頂点868A‐Cの近くに形成され、対応凸面867A‐Cに対し事実上直角であり、凸面を途切らせ、2部分881A‐Cと882A‐Cとに分割しており、しかも、短い部分881A‐Cは長いほうの対応部分882A‐Cの約10分の1の長さである。中央面スロット883a‐Cの各々は、対応凸面867A‐Cの中心線に隣接し、かつ事実上それと平行にロータ865内に形成されている。
【0158】
ケーシング861は、ロータ865が回転するキャビティを画成する外トロコイド形の内壁862を有するように構成されている。内壁862は、ロータ865の頂点868A‐Cがロータ865の偏心的な角移動全域にわたって内壁862に接触するように構成されている。ロータ865の頂点868A‐Cが常時ケーシング861の内壁862と確実に接触するように、凸面867A‐Cの各々の周方向長さは、内壁862の対向部分間のロータキャビティの最小ギャップに等しいか又はそれを上回っている。ケーシング861とロータ865とは製造費を低減するために射出成形で製造されるので、時には製造のずれが生じ、例えば自動製造設備の操作又は金型の形成に関しては、最大0・05mmのずれが生じる。対応頂点868A‐C近くの端面スロット873A‐Cは、一つには、頂点868A‐Cが確実に内壁862に常時接触するように形成され、加えて、ロータキャビティのギャップ寸法が減少する内壁区域に凸面867A‐Cの長さが接触できるように形成されている。
【0159】
制御された量の空気及びゲルがポンプ内で順次移動せしめられる3種類の画室G,H,Iは、内壁862と対応する1対の頂点との間のキャビティ容積によって形成される。内方へ部分的に突出する内壁862の形状により2つの画室Gが形成される。すなわち、中央面スロット883Cと頂点868Cとの間の画室G1と、中央面スロット883Cと頂点868Aとの間の画室G2とである。1つだけの画室が形成される他の構成も適していることが理解されよう。
画室G,H,Iは、頂部と底部のケーシングカバー(図示せず)を囲むテフロン(登録商標)リングと、ロータ865/頂・底部カバー間に挿入された約0.1mm厚のテフロン(登録商標)製ディスクとによりシールされ、また付加的に頂点/ケーシング内壁862間の接触によってシールされている。
【0160】
ポンプ860は、3サイクルで操作可能である。すなわち、吸入‐膨張、圧縮‐排出、トランスファの各サイクルである。画室の各々では、対応する画室容積の変化につれて、これらのサイクルの1つが行われる。ロータ865の図示の配位では、画室G1は、最小容積を有し、トランスファ・サイクルで或る量の大気が運ばれる画室であり、画室Hは、吸入‐膨張サイクルで或る量の空気が膨張させられる画室であり、画室Iは、圧縮‐排出サイクルで或る量の空気とゲルとが排出される画室である。ロータ865が回転すると、空気及び又はゲルは、同じ画室内に拘束され、順次に圧縮‐排出、吸入‐膨張、トランスファの各サイクルが実施される一方、画室の容積はロータ865の偏心回転によって変化する。このため、図31に示した配位に続くサイクルでは、画室Iは、トランスファ・サイクルで或る量の空気が運ばれる画室となり、画室Gは、吸入‐膨張サイクルで或る量の空気が膨張する画室となり、画室Hは、圧縮‐排出サイクルで或る量の空気とゲルとが排出される画室となる。
【0161】
ケーシング861は、真空チャンバの各対応導管用の入口887と出口888とを有するように構成されており、該入口を介して空気とゲルトとは、真空チャンバ内部から、吸入‐膨張サイクルに或る量の空気とゲルトが受け入れられる画室へ吸引され、該出口を介して、前記空気とゲルとが圧縮‐排出サイクル時に排出管889へ排出される。排出管889の遠位端は、対応する治療された皮膚部位上方に位置する。排出管889から放出されるゲルは、したがって、或る皮膚区域に向けられ、その皮膚区域が光ベース真空援用式治療を受けたことを指示し、このため、治療ハンドピースは他の皮膚部位へ移動させる必要がある。
【0162】
吸入‐膨張サイクル時の空気の膨張で真空チャンバ内には真空が発生する。大気圧の空気が、相対的に小さい第1容積を有する画室、例えば画室G1内で入口887へ運ばれた後、保留画室の容積は増大して第2容積となり、空気の圧力は、したがって大気圧に降下する。この第2容積が入口887に連通すると、第2容積の圧力がより低いため、或る量の空気とゲルとが真空チャンバから吸引される。図31に示したロータ865の配位では、空気及びゲルは、吸入‐膨張サイクル時に真空チャンバから、画室G1より容積が大きい吸入画室へ、頂点868Cが入口887を通過するまで、吸引される。吸入‐膨張サイクル時に、空気及びゲルは吸入画室に受容され、そこに受容された空気は、漸次膨張して真空チャンバから追加の空気とゲルとを吸引する。ロータ865の回転が続くことで、画室Iと画室Hとが、次に入口887に連通することで、真空チャンバからの付加的な空気量が膨張せしめられ、これにより、光ベース真空援用に十分な持続時間の真空と皮膚区域吸引に十分なレベルの真空が発生する。ポンプ870の排出速度は軸879の回転速度を高めることで増すことができる。
【0163】
ケーシング861は、また排出管889より大寸法の排出パイプ891を備えている。ロータ865の回転の連続により排出管889から排出し切れなかった過剰のゲルは、排出パイプ981に向けられるのが好ましい。これによりゲルが真空チャンバに戻るのが防止される。ロータ865の付加的な回転に続いて、図31に示す画室Iの5%未満の容積の排出パイプ891又は排出管889から排出されなかった空気は、画室G2に保留される。ロータ865が回転を続けるにつれて、画室G2に保留されている大気圧の空気は、画室G1が示すように入口887の近くに運ばれる。吸入‐膨張サイクル時に、運ばれた大気圧の空気は真空チャンバから吸引された空気と混合され、これにより、吸入‐膨張サイクル時に発生した真空レベルが制限される。ポンプ860は、幾らかの大気圧の空気がポンプキャビティ内に残され、排出管889及び排出パイプ891から排出されないように構成されていることにより、真空チャンバ内に発生する真空レベルを約0.05‐0.1気圧に制限する手段が得られている。この真空レベルは、効果的な光ベース治療及び/又は痛み軽減には十分である。
【0164】
先述のように、ポンプは真空チャンバからゲルを排出できる。図32a及び図32bは、ゲルがポンプ860内で吸入‐膨張サイクルから圧縮‐排出サイクルを経て運ばれるさいのロータ865の変形を略示している。ケーシング861に対するロータ865の図32aに示した配位は、図31の配位に似ている。吸入‐膨張サイクルの完了時、ゲル802と膨張した空気804とは画室Hに保留されている。ロータ865の回転が加わると、画室Gは、対応画室G1,G2がトランスファ・サイクルを完了した後、吸入‐膨張サイクルに入り、画室Hが圧縮‐排出サイクルに入る。
【0165】
圧縮‐排出サイクル時、画室Hの容積は低減されるので、膨張した空気804(図示せず)を圧縮するのに十分である。画室Hの容積がかなり低減されるので、ゲル802Aは、ケーシング861の内壁862とロータ865の凸面867Aとの間で圧搾され、このため、内壁862と凸面867Aとによって加えられる対向力によって約10気圧ほどの極めて高い圧力まで加圧される。凸面867Aには、中央面スロット883Aにより圧縮‐排出サイクル時に画室H内でゲルの加圧の度合を低減するのに十分な可とう性が与えられている。凸面867Aの、スロット883Aに近い部分807は、したがって、ゲル802Aが加える力に応じて内方へたわまされる。ゲルへの加圧の度合が制限されるので、ポンプカバーは、ケーシング861に当接したままであり、このため、真空発生時、ポンプ内部への大気圧の空気の侵入が防止される。更に、弾性変形可能なロータ凸面により、ケーシング861のポリマー内壁862の摩耗が最小化される。
【0166】
圧縮空気及び加圧ゲルは排出管889内へ排出される。ロータ865が更に回転して、例えば相対的に多量のゲルがポンプキャビティへ吸入された場合、排出管889から排出されない空気及びゲルの圧力が降下する。残留ゲルは排出パイプ891から排出される一方、僅かな割合の残留空気のみは排出パイプ891から排出されず、トランスファ・サイクルにより入口887へ運ばれる。
ポンプ860は、好ましくは、0.1秒未満で真空チャンバ内圧を大気圧に戻し、それによって治療ハンドピースは持ち上げ可能となり、次の部位に載置される。この迅速な圧力回復は、ロータ865の回転方向を逆にすることで可能になる。ロータ865の回転方向は、ポンプモータの極性を変更することで逆にできる。電子制御ユニットが光源及びポンプモータの両方を制御している場合、ポンプモータの極性は、光学検出器による適当な命令伝達に続いて自動的に逆にできる。光学検出器は治療光パルスの停止を検出するようにされている。
【0167】
ロータ865の回転方向の逆転によって、図31に示したロータ配位の場合、大気圧の空気を画室Iから導管813へ、更に真空チャンバへ送入できる。大気圧以下の圧力は、ポンプ画室の容積がロータ865の回転でかなり拡大しても、ポンプキャビティ内には発生しない。なぜなら大気圧の空気が、排出管889及び排出パイプ891からポンプキャビティへ導入されるからである。導管831内にゲルが存在しても、ポンプ860はゲルの抵抗を克服するのに十分な空気圧を発生でき、空気が真空チャンバ内へ再流入できるので、真空解除速度は制限されないことが理解されよう。
以上に説明したように、ポンプ860は、安価な、テフロン(登録商標)と混合されたアセタル製なので、使い捨て可能である。所望とあれば、ポンプ860は、ヴァンケル機関に使用されるのと同じ種類の鋼製であってもよい。
【実施例15】
【0168】
図33に全体を符号350で示した皮膚科用ハンドピース・システムにより、ゲル被覆した皮膚に対する、信頼性のある迅速な真空援用式光ベース治療が容易に実施できる。ハンドピース・システム350は、真空チャンバ310及びハンドピース胴部362とを含んでおり、胴部362は、固定取り付け又は揺動可能な取り付け用の取り付け手段380、例えば1組のねじによって真空チャンバ310に取り付けられている。ハンドピース胴部362は、既述のような使い捨て可能なヴァンケル型真空ポンプ360と、軸345によりポンプ360を駆動する小型ブラシなしモータ340と、モータの方向及び速度を制御する制御ユニット390と、モータ340及び制御ユニット390に給電する電池370とを収容している。ポンプ360は、伝搬部材315を有する真空チャンバ310に導管313を介して連通し、伝搬部材315を介してIPL光又はレーザー光320が皮膚ターゲットに伝播される。排出管389がポンプ360から皮膚区域に通じており、どの皮膚区域が真空援用式光ベース治療を受けたかを指示する。
【0169】
ハンドピース胴部362は、操作員が疲労しないように十分に小型に軽量かつ人間工学的に設計されている。例えば、ハンドピース胴部362は、重さ0.5kg、長さ8cm、幅5cm、高さ10‐20cmである。背中又は下肢の真空援用式皮膚治療時、ハンドピース胴部362を1時間以上断続的に片手で保持して、異なる皮膚区域へ反復的に置き換えることができる。胴部362が小型のため、導管313及び排出管389の長さも短縮される。
【0170】
図示の真空チャンバ310は、IPL光源又はレーザ光源から分離された独立型装置である。この構成では、ハンドピース胴部362が片手で保持され、IPL又はレーザのハンドピースが他方の手で保持される。モータ340は、電池370と電気接続された操作ボタン385を押すことにより起動される。操作ボタンは、ハンドピース胴部362の上側に配置され、操作員の指で押すことができる。モータ340の、したがってポンプロータの回転方向は、例えばボタン385を素早く2回押すことで逆転できる。モータ340は、異なる押し方でボタン385を押しことで停止できる。あるいはまたポンプ360は、制御ユニット390と接続されたセンサ395、例えば、選択した皮膚区域への真空チャンバ310の載置を検出するようにされた皮膚接触検出器によって自動的に起動できる。制御ユニット390と接続されたセンサ395が、光ベース治療パルスの終わりを検出するようにされた光学センサである場合は、モータ340及びポンプロータの回転方向は制御ユニット390により自動式に逆転でき、それにより真空チャンバ310内の空気圧は大気圧に戻される。
【0171】
ハンドピース・システムは、光源と真空ポンプの双方を含む単一のハンドピース(図示せず)の形式に具体化できる。その具体例の場合は、制御ユニットが、真空ポンプと制御ユニット双方の操作を制御するようにされている。このため、制御ユニットは、各治療サイクルごとに真空発生段階、治療発光段階、真空解除段階を順次に同期させることができる。制御ユニットは、したがって真空ポンプの起動と光源の発光との間の約0.5秒‐約4秒の予め定めた遅れを同期するのに適しており、それにより、光源の発光後、十分に長い神経抑制時間にわたり、皮膚区域が真空チャンバの伝搬部材と確実に接触することが可能になる。制御ユニットはまた、光源の非作動化に続いてモータの極性を逆にすることで、真空チャンバ内圧を大気圧に昇圧させるのに適している。
【実施例16】
【0172】
本発明の別の実施例では、真空チャンバの排出を蠕動ポンプで行うことができる。
図34に示す装置910は、痛み抑制皮膚用空気‐ゲル真空ポンプ914と、該ポンプ914と流体連通している蠕動ポンプ935とを含み、ゲルの反復的な洗浄及び溶解の能力を有している。
図示のように、ヴァンケル型皮膚用空気‐ゲル真空ポンプ914の、又は他の適当な、約5cm/0.1secの高い瞬間処理量等の類似特性を有する回転ポンプ又は膜ポンプの吸い込み端部が、導管903を介して皮膚表面906に載置された真空チャンバ902と連通している。皮膚用ポンプ914の軸926は、安価な直流(DC)可逆電動機でよいモータ925により駆動される。直流電動機は、極性を逆にすることで即時に逆転可能である。
【0173】
ポンプ914により発生する真空レベルは、変量であり、モータ925のロータ回転速度の関数である。ロータ回転速度は、またモータ925に印加されるDC電圧に依存する。導管903は、ポンプ914が治療ハンドピース内に収容される場合には、長さが短く、例えば20mmでよく、あるいはまたポンプ914が、ハンドピースから離れた遠隔制御ボックス内に収容されている場合には、より長く、例えば3mでよく、タイゴン(Tygon)製にすることができる。ポンプ914の排出端は管915に結合され、管915は、分岐箇所Lでホース917と919とに分岐している。ホース917はゲル捕集溜め918に連通し、ホース919溶解液溜め931に連通している。
【0174】
真空発生・痛み抑制モードでは、皮膚用ポンプ914は、空気とゲルとを真空チャンバ902から排出する。ゲルは、ホース917を介して排出され、溜め918に集められる。ホース917は、比較的長く、例えば3mである。ゲルは優れた潤滑特性を有し、したがって皮膚用ポンプ914を潤滑可能ではあるが、乾き易く、固体となり粘着しがちである。
ゲルを再使用可能にするため、溶解液溜め931が備えられ、溜め931には2‐4%濃度のNaCl等の洗浄兼ゲル溶解液が充填されている。約200cm/10minの比較的低処理量の蠕動ポンプ935は、ホース919を介して溜め931から溶解液を送出するようにされている。ホース919は蠕動ポンプ935の加圧部材により順次に圧搾される。溶解液は、ホース917を介してゲル捕集溜め918へ流れ、管915を介して皮膚用ポンプ914と導管903とへ流れることができる。ホース919は、分岐箇所Lの近くに逆止め弁(図示せず)を備え、ゲルが溜め931へ流れるのを防止している。分岐箇所Lは、通常は皮膚用ポンプ914から2cmの間隔のところに設けられる。
【0175】
溜め918への溶解液の送出は、約200cm/10minの比較的低処理量の液体ポンプ983によって補助される。液体ポンプ983は、ホース917の、分岐箇所Lと溜め918との中間部分に配置されている。液体ポンプ983は、常時作業するか、又は比較的長時間、例えば10分の間、作業することができ、また真空解除モード時には、溜め918から皮膚用ポンプ914へのゲルの逆流を防止する。
皮膚用ポンプ914は、ハンドピース内に収容でき、皮膚治療の間の操作員の動きやすさを増大させる一方、ゲル溜め918、溶解液溜め931、蠕動ポンプ935、液体ポンプ983は遠隔制御ボックス(図示せず)内に配置できる。
【0176】
装置910の操作は次の通りである:
A)真空チャンバ902が皮膚表面906に載置されると、適当な皮膚接触検出器が信号を発信し、皮膚用ポンプ914の作動を可能にする。
B)皮膚用ポンプ914を、真空発生モードで、約0.1秒の極めて短時間作動させ、その間に空気が真空チャンバ902から排出され、少量のゲルが管903を介して皮膚表面906から吸引される。吸引されたゲルは液体ポンプ983によりゲル捕集溜め918へ送られる。
C)真空チャンバ902内の真空レベルが痛み抑制レベルに達し、吸引された皮膚が平板化されると、治療光が発光する。
D)治療パルスの終了に続いて、皮膚用ポンプ914の回転方向が逆転され、ポンプ914が、真空解除モードで、約0.1秒の極めて短時間、段階どうせ占められ、ハンドピースが他の皮膚ターゲットへ置き換えられる。
E)蠕動ポンプ935は、定期的に制御ユニット(図示せず)から命令を受け、例えばポンプ914の100回の真空発生サイクルごとに、ゲルの洗浄及び溶解作業を始める。蠕動ポンプ935の操作頻度は、利用されるゲルの粘度に依存する。溶解液は、蠕動ポンプ935により分岐箇所Lへ送られ、そこから液体ポンプ983により溜め918へ吸引される。洗浄作業時には、ゲルはホース917及び溜め918内で溶解され、皮膚用ポンプ914は作業を続け、皮膚治療速度が妨げられることはない。
F)皮膚用ポンプ914及び真空チャンバ902内のゲルは、各回の治療終了時に洗浄される。真空チャンバ902は、小型の液体容器(図示せず)内に入れてから、皮膚用ポンプ914を逆回転方向で動作させることで、溶解液を管915及び導管903を介して溜め931から吸引する一方、蠕動ポンプ935も動作させる。通常は、各真空適用・治療サイクル後にゲルの洗浄・溶解作業を始める必要はない。
【0177】
ヴァンケル型に加えて、他の形の空気‐ゲル真空ポンプ、例えば回転ポンプ又は膜ポンプを使用することもできる。
【0178】
皮膚用滑動装置
幾つかの光ベース毛除去装置は高い反復速度で作業し、その場合、皮膚上を装置が滑動することで高速治療が可能になる。そのような装置の一例が、2パルス毎秒の反復速度で作業できるルメニス社製のライト・シア・ダイオードレーザ(Light Sheer diode laser)である。このレーザの出口ビーム寸法は、約10×10mmである。このレーザは、40J/cmで極めて効率的だが、痛みがはなはだしく、痛みレベルは5である。
【実施例17】
【0179】
本発明の一好適実施例では真空チャンバが皮膚滑動装置を備えている。レーザユニット遠位端が、サファイア製伝搬部材上を0.3‐40cm/secの速度で滑動することで、極めて迅速かつ無痛の治療が可能になる。滑らせる動きは、適当なトラックを伝搬部材に形成するか付加することで可能になる。このトラックがレーザユニット遠位端を支持し、レーザユニット遠位端と伝搬部材との間の摩擦を最小化し、伝搬部材が掻き傷を受けないようにされる。皮膚用滑動装置は、好ましくは、レーザユニット遠位端が伝搬部材に対し事実上直角の位置に維持され、治療光により治療される隣接スポット間に重複箇所又は空き箇所が生じないように構成されている。痛みが発生しないのは、伝搬部材が比較的大寸法で、十分に多数の圧力レセプタが圧搾されることで、そこから発せられる信号が痛み信号の受信を抑制するためと、比較的高真空レベルのためである。各治療パルス時に即時性の痛みが感じられるため、患者が治療継続の前に長時間休息するか、又は危険な鎮痛クリームを局所塗布する必要がある先行技術の治療と異なり、真空チャンバ採用の本発明の装置での治療時には、時間をとる必要がない。
【0180】
例えば20×40mmの寸法の真空チャンバは、エネルギー密度40J/cmのライト・シア・ダイオードレーザから発せられる治療光に関連する痛みを抑制するのに適している。レーザユニットの遠位端は、0.5秒ごとに10mm、サファイア製伝搬部材上を変位することができる。作用させる真空が4秒間維持されることで、20×40mmの同じ面積を有する皮膚が、真空解除を要せずに治療光により治療される。
【実施例18】
【0181】
図36には、レーザ遠位端が真空チャンバの伝搬部材上で滑動するさい、次のような段階で滑動することが示されている:
A)レーザ遠位端2010が、先ず、真空チャンバ2050の伝搬部材2025の頂面と接触するように位置2015に載置される。
B)空気が真空チャンバ2050から0.5秒以内に導管2030を介して排出され、痛み抑制に適した少なくとも500mmHgの真空レベルにされる。
C)治療レーザパルス2018を、位置2015で、その下の皮膚ターゲット2028へ向けて発光させる。
D)レーザ遠位端2010を速度L/tで位置2015´へ移動させる。この場合、Lはビーム直径、tはレーザパルス間隔である。レーザ遠位端は、滑動トラックが等間隔のステーションを備えている場合、自動的かつ周期的に位置換えされる。各ステーションで、レーザ遠位端は発光時に強制的に停止させられる。
E)治療レーザパルス2018を、位置2015´で、その下の皮膚ターゲットへ向けて発光させる。
F)段階D)及びE)を、レーザ遠位端2010が伝搬部材2025の全表面積にわたって移動するまで反復する。
G)レーザ遠位端2010を最初の位置2015へ移動させる。
H)真空チャンバ2050内の真空が0.5秒以内に解除される。
I)真空チャンバ2050が持ち上げられ、再位置決めされる。
【0182】
レーザ遠位端2010の移動は、外部から、例えば、各ターゲット位置に対応する伝搬部材2025上のマーカーを検知する光学検出器によってトリガできる。あるいはまた、レーザ遠位端2010は、外部からトリガするのではなく、適当な機構により自由走行形式で伝搬部材2025上を定速L/tで駆動することもできる。例えばルメニス社のライト・シア等の12mm直径の光ビームを発光するレーザ遠位端は、レーザが自由走行モード時に2Hzの反復速度で作業する場合、20mm/secの速度で駆動されよう。自由走行モードでは、レーザの発する光パルスを検知し、レーザ遠位端が位置換えできることを指示する聴覚信号を発生するようにされているフォトダイオードを使用できる。
【0183】
図41a及び図41bは、真空チャンバの伝搬部材のそれぞれ平面図と側面図である。該伝搬部材は、レーザ光又はIPL治療光と関連する皮膚平板化及び痛み抑制に適した別の構成の双極RF援用の金属導電電極を備えている。サファイア製伝搬部材950には複数スリットが設けられ、これらスリットにアルミニウム等の金属材料が充填され、電極951が形成されている。スリットの寸法は、例えば長さ17mm、幅2mm、隣接スリット間隔30mmである。電極951は、その最上部953が凹状であり、吸引され平板化された皮膚に接触する最下部957が凸状である。最上部953が凹状であることで、電極956が座着し易くなる。該電極は、伝搬部材950を介して光954を発する例えばイスラエルのシネロン・メディカル社製のIPL又はレーザユニット955の遠位端に配置されている。最下部957が凸状であることで、皮膚との接触が良好になる。
【0184】
電極951のこのような構成により、RF援用IPL又はレーザユニット955は、高速Vで、例えば10ミリ秒以内に30mmの距離を移動できる速度で、伝搬部材950上を滑動できる。IPL又はレーザユニット955の凸状電極956は、したがって光954による治療前に、選択された皮膚ターゲット上方の対応凹状最上部953に迅速に座着される。
【0185】
図37a及び図37bには、痛み抑制真空チャンバの伝搬部材2025の頂面上を、寸法Dのレーザ遠位端2010が滑動するための2つの駆動手段が、それぞれ略示されている。
図37aの駆動手段は、定速で、又は手の力でレーザ遠位端2010を変位させる空気式の管2042である。遠位端2025の変位を測定するための線形定規2045は、等間隔の開口2048を有し、伝搬部材2025に取り付けられている。レーザ遠位端2010はフレーム2050を有し、フレームには、ばね2059が取り付けられ、このばねによって、レーザ遠位端2010が定規に沿って線形に変位できるようにする球形部材2052が付勢されている。ばね2059は、球形部材2052が対応開口2048の前に来ると、常に球形部材を対応開口2048内へ押し込む。レーザ遠位端2010を急速駆動することで、レーザ遠位端は不連続のステップで開口から開口へ移動し、それにより治療パルスが各後続ステップで発火できる。
【0186】
レーザ遠位端2010を手の力で移動させる場合、球形部材2052を、座着している開口2048から分離する力は、ばね2059の強さを選択することによって制御できる。ばね2059の強さは、レーザ反復速度に反比例する持続時間T以内に対応開口2048から球形部材2052が解離できるように選択される。結果として、レーザ遠位端2010は、D/Tに等しい速度Vで自由走行レーザ反復速度に対し同期して変位し、それによって、真空チャンバ下の皮膚表面が一様に治療される。レーザ又はIPLパルスを検出し、聴覚信号を発生させるためにフォトダイオード(図示せず)を使用でき、これにより、レーザ遠位端の変位がレーザの動作と同期することが可能になる。
図37bの駆動手段は、ばねモータ2065であり、このばねモータは、適当なトランスミッション又はアクチュエータを備え、レーザ遠位端2010は1つの開口2048から他の開口へ直線移動することができる。
【0187】
走査装置
米国のスチトン社(Sciton Inc.)製Nd:YAGレーザ、又はルメニス社製アレキサンドライト・レーザ等の幾つかの毛除去用レーザは、スキャナを使用して短時間内に大きい治療面積を走査する。本発明によれば、走査レーザは真空チャンバの伝搬部材下の皮膚表面を走査できる。走査は、通常は高速で、5パルス/secの反復速度に達することができる。大型の伝搬部材を使用することにより、真空発生は十分に長く持続されるので、治療面積を完全に走査できる。一例として、20×40mmのサファイア製伝搬部材が使用可能である。ビーム直径10×10mmのNd:YAGレーザの場合、伝搬部材下の皮膚区域全域を走査するには8スポットの走査を要する。走査は、4パルス/secの反復速度で2秒以内に達せられる。走査が済むと、真空は解除され、処置が次の皮膚区域で反復される。スキャナは、また線形スキャナであってもよい。該スキャナは、安価であり、ステップモータ又はガルバノメトリックモータ、例えば米国のケンブリッジ・テクノロジー社製のものを使用できる。
【0188】
図38に略示した揺動可能な線形スキャナ2080は、例えばアレキサンドライト・レーザから発せられるレーザビーム2085を真空チャンバの伝搬部材2085下の平板化された異なる皮膚ターゲット2087,2087´へ向けることができる。下に位置する皮膚表面全体を治療光2085で走査した後、スキャナは、元の位置に戻り、真空が解除され、真空チャンバは位置換えできる。
【0189】
図39には、スキャナによる皮膚ターゲット治療の、本発明の実施例による通常の命令の順序が示されている。この順序は、アレキサンドライト・レーザである光源及び線形スキャナによる毛除去に適している。段階2110では、光源と真空チャンバが収容されたハンドピースが皮膚ターゲット上に載置される。段階2115では、オプト‐カップラー接触センサが皮膚ターゲットに接触し、真空ポンプ起動信号を発する。ステップ2118では、真空チャンバ内に少なくとも400mmHgの真空レベルが、任意に圧力センサにより、0.5秒以内に発生させられる。段階2120では、レーザスキャナ制御器が伝搬部材下の全皮膚表面にわたり制御された形式でレーザビームの走査を開始する命令を発する。段階2122で、走査過程完了が光学センサにより任意に検出された後、真空ポンプ制御器は、段階2124で真空ポンプの方向逆転と0.5秒以内の真空解除とを命令される。次いで、段階2128で、ゲル溶解ポンプがゲルの溶解と洗浄のために溶解液を放出するよう命令される。
【実施例19】
【0190】
図40は、本発明の別の実施例を示している。この実施例により、真空チャンバの伝搬部材上での例えば毛除去用アレキサンドライト・レーザ又はNd:YAGレーザが発するレーザビームによる一様な走査が可能になる。例えば1mm直径の遠位のファイバ2131により、円形ビームが作られる。出力ビームは、例えば幅5mm、長さ50mmの方形カレイドスコープ内へ入射する。方形のビーム2133を放射するカレイドスコープ2132が皮膚表面上に映し出され、走査ミラー2134により走査され、皮膚表面上に方形ビームの配列2136を作り出す。方形ビームへの円形ビームの変換により、真空チャンバの伝搬部材上で重複なしに操作が可能になる。走査ビームの重複防止は、黒味がかった皮膚での過度の色素沈着を防止するのに特に重要である。
【0191】
図44に示す装置2200は、真空チャンバにIPL又はレーザ光源の遠位端を取り外し可能に取り付ける手段を備えている。取り外し可能に取り付ける手段は、真空チャンバ2214のカバー2222に取り付ける1対の垂直の壁部2230又は他の適当な機械的手段でよい。壁部2230は、厚さ2mm、高さ5mmを有し、治療ビーム2217により皮膚ターゲット2215を治療するIPL光源の遠位端2210を、伝搬部材2218上方で真空チャンバ2214の壁部に対しセンタリングするのにも役立つ。IPL光源の遠位端は2つの壁部2230間に迅速に配置できる。装置2200は、また真空チャンバ2214の側部に2つのマーカー2235を備えている。2つのマーカー2235の間隔は、事実上ビーム2217の直径に等しく、これにより、真空チャンバ2214を隙間や重複なしに正確に次の皮膚ターゲットへ置き換えることができる。
【実施例20】
【0192】
図20に示す装置1990は、例えば厚さ10マイクロメートルの薄手のポリカーボネート層1994を含み、この層1994は、伝搬部材1993の遠位面に取り付けられ、皮膚ターゲット1960に向けられた治療光を透過する。真空チャンバ1991は、適当に寸法付けされ、適用される真空レベルは、皮膚ターゲット1960を吸引してポリカーボネート層1994に押し付けるのに十分なレベルである。ポリカーボネート層1994は皮膚ターゲット1960から伝搬部材1993へ熱を伝導するのに十分な薄さであり、皮膚ターゲット1960と伝搬部材1993とが機械的に、かつまた光学的に良好に組み合わせられるように十分な柔軟性を有している。
【0193】
既述のように、真空チャンバに真空を発生させることにより、真空チャンバの選択された構成に応じて皮膚ターゲット内の血液分量を増加又は減少させることができる。したがって、保健専門員は、2つの異なる構成の真空チャンバを採用することができ、その各々が、同じ光源ハンドピースに取り外し可能に取り付けでき、患者に対して最小の治療時間で済む2つの異なるタイプの真空援用光ベース治療を行うことができる。単一の光源と単一の真空ポンプとを皮膚ターゲット内の血管集中度の増大による血管障害の治療と無痛毛除去の双方に使用できる。
要約すると、次の表Iには、除去した皮膚や蒸気になった屑を皮膚ターゲットから排出する先行技術の真空援用光ベース治療方法と、本発明との主な相違が記載されている:
【0194】
【表1】

【実施例21】
【0195】
図26A‐図26Bは本発明の別の実施例を示したものである。この実施例の場合、真空チャンバは1つの皮膚ターゲットから他の皮膚ターゲットへ位置換えする必要がない。図26Aは、この装置の略示平面図、図26Bは断面図である。図示のように、真空チャンバ配列500は、単一の平らなシート505、例えば使い捨て可能な、低価格で透明又は半透明の成形シリコン製シートにより具体化されている。このシートは、皮膚表面520上に載置され、複数真空チャンバ510によって形成されている。各真空チャンバ510の内部は、シート505の底縁515と同一平面上にある底部と、底縁515から近位へ延びる2つの側壁522と、シート505の上面525から遠位へ間隔をおいて位置する頂縁522とにより画成されている。
【0196】
各真空チャンバ510に対応する伝搬部材540は、真空チャンバの頂縁522のすぐ上方でシート505に固定されている。伝搬部材540は、安価な薄手のポリカーボネート板又は散光部材でよい。シート505は、また複数導管530を備えるように構成され、導管の各々が対応真空チャンバ510と連通し、導管を介して空気が対応真空チャンバから排出される。隣接真空チャンバ510間隔は、各真空チャンバ内部からの散光が、対応導管530下に位置する皮膚区域を治療し得るように十分に小さくされている。各導管530は分岐管532,534に分岐し、しかも、すべての分岐管532が真空ポンプ(図示せず)と連通し、すべての分岐管534が圧縮空気源(図示せず)に連通している。
【0197】
真空チャンバ配列500は、広い面積の皮膚表面、例えば腕や下肢の皮膚表面を1光源によって治療できるのが利点である。治療光源は、順次に各真空チャンバ510に向けられる。対応皮膚ターゲットの治療のため、選択された真空チャンバへの光954の伝播に続いて、光源は、迅速に別の皮膚ターゲットへ移動又は滑動でき、しかも、真空チャンバを移動させる必要はなく、かつまた皮膚表面に加わる力を克服する必要もない。真空チャンバが移動しないため、ゲルも同じく移動せず、累積もしない。したがって、真空チャンバ内でのゲルの妨害を防止する手段も備える必要はない。
【0198】
真空チャンバ配列500は、また真空ポンプの起動信号をトリガする少なくとも1接触検出器(図示せず)を備えている。接触検出器が、皮膚表面上に真空チャンバ配列500が載置されたことを検出すると、真空ポンプが起動され、すべての真空チャンバから同時に空気が排出される。保健専門員は、次に光源を各真空チャンバ510に向ける。皮膚表面全部の治療の完了に続いて、光源が非作動化され、次いで真空ポンプが非作動化される。あるいは又、各真空チャンバは、接触検出器と、分岐管532,534それぞれを通る流路を制御する2つの制御弁と、光検出器(すべて図示せず)とを備えている。治療ハンドピースが伝搬部材540上に載置されると、対応接触検出器は、真空ポンプ起動信号を発し、対応分岐管532の流路を調整する制御弁を開き、次いで光源を起動する。光治療が完了すると、光源は、予め定めた時間後に非作動化されるか、手で非作動化される。次いで、光検出器が信号を発し、この信号により対応分岐管532の流路を制御する制御弁が閉じられ、対応分岐管534の流路を制御する制御弁が開かれて、真空が解除される。このサイクルがすべての真空チャンバ510ごとに反復される。
【0199】
真空援用式光力学治療
既述の皮膚平板化処置は、光力学的治療(PDT)及び光による皮膚障害の治療改善に使用でき、光は、その場合、通常は皮膚への浸透深さの浅い光、例えば青色、緑色、黄色の光である。幾種類かの皮膚障害、例えばポルフィリン過多の床擦れや、悪性前がん性病変、例えば光線角化症が、米国のDUSA製薬会社製のレヴラン(Levulan)ALAを適用することで、光力学的治療により治療できる。レヴランALAは、ポルフィリンにより吸収されることで、急速分裂する細胞に選択的に引き付けられる。ポルフィリンは、例えば波長405nmの青色光、例えば514nmの緑色光、例えば585nmの黄色光によって選択的に活性化される。皮膚内のメラニン及び血液のため、平常は、これらの波長の光は、大部分が吸収され皮膚深くには浸透できない。真空チャンバのカバーにより平板化された皮膚の伸張で血液が皮膚から排除されることで、光の浸透率が高められ、治療が改善される。この治療には、出力密度1‐20mW/cmの発光ダイオード配列、例えば米国のフィリップ・ルミレッズ・ライティング社(Philips Lumileds Lighting Co.)製のものが使用できる。
【実施例22】
【0200】
別の実施例では、真空チャンバの伝搬部材が皮膚表面からより離れており、皮膚ターゲットが平板化されないようになっている。真空を作用させることで、床擦れ病変部の皮脂腺を空虚にする。真空を作用させた後、青色、緑色、黄色の治療光を発光させ、その後で、皮膚を平板化して光治療を行うことができる。
【0201】
既述の皮膚平板化処置を用いることによって、レーザ光又はIPL光により、タトゥーの無痛除去が可能である。タトゥーは、しばしば皮膚の大きな面積にわたって、例えば腕の周囲の半分にわたって入れられるが、多数の患者が、数年後にタトゥーの除去を望むようになる。また眉毛や唇のタトゥーは、色があせ、新たにタトゥーを入れる場合には、その前に除去する必要がある。タトゥーの除去は、例えば、エネルギー密度10J/cm、パルス持続時間10nsecのQ‐スイッチ・レーザで最も効果的に行われ、また赤色のタトゥーの場合は、532nmの周波数2倍Nd:YAGレーザで、他の色のタトゥーの場合は、エネルギー密度10J/cm、パルス持続時間10nsecの前記Nd:YAGレーザで、更に青色のタトゥーの場合は、694nm,755nm,1064nmをそれぞれ有するルビー・レーザ又はアレキサンドライト・レーザ又はNd:YAGレーザで極めて効率的に実施できる。これらのレーザによる治療は、皮膚ターゲットが本発明の方法により平板化されない場合には、しばしば極めて苦痛なものとなる。
【0202】
先行技術による広い面積のタトゥー除去は、概して、耐えられる範囲を超えており、EMLA等の局所麻酔クリームの塗布が必要だが、このクリームは比較的広い範囲に塗布するのは危険である。皮膚ターゲット内の痛みレセプタからの痛み伝達を抑制するのに適当な真空レベルで皮膚を平板化する真空チャンバの透明な伝搬部材を介して、タトゥー除去治療光を発光させることによって、極めて広い皮膚面積からのタトゥー除去が、痛みや妨害なしに実施できる。痛み抑制真空チャンバの使用により、痛みのかなりの軽減が認められ、痛みは、例えば極めて苦痛な痛みレベル4から苦痛を覚えない痛みレベル2に減少する。
先行技術の方法により赤色のタトゥーを緑色レーザ光又はIPL光で除去する場合、皮膚内の血管は、赤い血管が緑の光を吸収するため、熱で損傷する。この熱傷は、しばしば、数日続く挫傷を発症させる。これに対し、本発明の方法によるタトゥー除去時には、皮膚ターゲットは挫傷は発症しない。これは、皮膚の平板化の結果として、皮膚ターゲットから血管が排除されるからである。タトゥーの除去は、皮膚表面にゲルを塗布しても塗布しなくても実施できる。
【0203】
タトゥー除去に適した4‐13J/cmの通常のエネルギー密度レベルの光ビームは、概して、皮膚内に、又は平板化された皮膚と接触する伝搬部材内に過剰熱量を発生させない。結果として、安価なガラス又はプラスチックの伝搬部材を使用できる。なぜなら、高い熱伝導性を有するサファイア製伝搬部材は不要だからである。したがって、タトゥー除去用の手ごろな使い捨て真空チャンバを使用できる。タトゥー除去に関連する表面の出血及びその結果の皮膚の汚染のため、使い捨て真空チャンバの使用は全く好都合である。タトゥー除去用の真空チャンバの寸法は、タトゥー面積の寸法や身体上の位置に応じて選択される。例えば、眉毛は、薄手の細長い真空チャンバを必要とする。通常の真空チャンバ寸法は、12×20mm‐25×60mmの範囲だが、他の寸法も同じように選択できる。真空チャンバの通常の高さは、2‐8mmの範囲である。
【0204】
色素沈着病変部の除去は、タトゥーの除去に極めてよく似ている。タトゥー除去レーザユニット及びIPLユニットは色素沈着病変部の除去に好適である。IPLユニットは、望ましくない毛の除去能力があるため、色素沈着病変部の除去に広く使用されている。先行技術の色素沈着病変部の治療は、同じように痛みを伴い、したがって真空チャンバの使用は極めて有用である。色素沈着病変部の治療のための真空チャンバ寸法は、タトゥー除去用の真空チャンバ寸法に類似する。過度に小型の、例えば5×5mmの真空チャンバでは、痛みの伝達を効果的に抑制できない。
【0205】
例1
種々の皮膚部位に真空を作用させてから皮膚紅斑反応が現れる時間を検出する実験を行った。直径5mmの管を、手、眼の周辺、腕、前頭部に順次に当てがい、約100ミリバールの大気圧以下の圧力を作用させた。これらの皮膚部位は治療に適していることに基づいて選択された。すなわち、手と眼の周辺は、しわの除去に、腕はむだ毛除去に、前頭部はポートワイン斑の治療に適している。真空は、1/10秒、1/2秒、1秒、2秒、3秒の異なる時間の間、作用させ、次いで停止させた。次に、紅斑レベルと紅斑の遅れ時間とを測定した。
【0206】
手と眼の周辺の反応時間は1/2秒、腕の反応時間は1秒、前頭部の反応時間は1/2秒だった。したがって、実験成績は、真空発生とレーザ又は高強度パルス光の発光との間の必要な遅れは、好ましくは1秒未満であることを示し、この遅れであれば、全体の治療時間が遅延することはない。なぜなら、大半のレーザ光源又は高強度パルス光源の反復速度は、概して、1パルス/sec未満だからである。
紅斑の遅れ時間は1秒未満であり、したがって、実験成績は、患者が、本発明による治療に続いて明らかな不快を感じることがないことを示している
【0207】
例2
広帯域Xeフラッシュランプと、755nm‐1200nmの光の透過を制限するカットオフ・フィルタとを含む高強度パルス光システムは、美容治療に好適であり、15×45mmの治療面積の毛除去の場合には、このシステムが、長方形光ガイドを介してエネルギー密度20J/cm、パルス持続時間40ミリ秒の光を発するようにする。
小じわの平滑化、つまり光若返りのためのこの種の光システムの効果は、前記波長では血管に光が僅かしか吸収されないため、先行技術の装置では極めて限られていたのに対し、本発明では、皮膚ターゲット組織内での光吸収量が高いため、治療効果は増大するだろう。
【0208】
1mm高さの透明な真空チャンバは、ハンドピースと一体に構成されるのが好ましく、高強度のパルス光はハンドピースを介して皮膚ターゲットに向けられる。小型膜ポンプ、例えば100ミリバールの真空を発生させるリッチリ・トーマス(Richly Tomas)製造のポンプが真空チャンバと連通しており、制御弁が電子式に開閉される。制御弁が開弁されると、真空チャンバ内圧が、10ミリ秒未満で100ミリバールに減圧される。真空作用の結果、皮膚が、1/15‐1/45ラジアン(高さを皮膚ターゲット面積で除した値)程度の角度で僅かに真空チャンバ内へ吸引され、高さ1mmだけ突出する。
【0209】
血液は吸引された皮膚ターゲット内へ吸引され、これによりピンクの色が濃くなり、したがって光吸収量が高まる。皮膚の赤みが増すことで、光吸収量が3倍上昇する。結果として、前記光システムの効率は、しわの除去処置で満足の行く結果が得られることが分かっている60J/cmで作業する先行技術のシステムの効率と類似するものとなる。20J/cmの高さのエネルギー密度レベルでは、火傷を避けるために、表皮を冷却するのが好ましい。表皮の冷却は、熱電令脚器で冷却されるアルミニウム板で行われる。アルミニウム板は皮膚と接触し、処置前にハンドピースが皮膚ターゲットへ移動する直前に、皮膚を冷却する。
本発明は、それにより毛除去用の高強度パルス光装置を、同じように効果的な光若返り装置に変換する。
【0210】
例3
7mmのスポット寸法を有する先行技術の毛除去には、波長1064nm、パルス持続時間40ミリ秒、エネルギー密度70J/cmで作業するND:YAGレーザが適している。先行技術の毛除去では、毛幹のメラニンの光吸収量が制限される。毛除去に役立つ要因は、毛包の球状区域内の血液の光吸収量にある。70J/cmのエネルギー密度レベルは黒味がかった皮膚の表皮には危険なので、40J/cmでレーザを走査するのが好ましいだろう。
真空チャンバは、好ましくはハンドピースと一体に構成され、該ハンドピースを介して高強度パルス光が皮膚ターゲットから1mmの距離のところに向けられる。真空は、皮膚ターゲットに対して2秒間作用させる。各々4mm及び2mmの深さでの毛包の球状部近くと突出部内との血液集中度は、2倍高くなる。結果として、レーザは40J/cmに近いエネルギー密度の場合の効率と等しい効率で作業することになり、しかも、はるかに安全である。
【0211】
例4
波長585nm、スポット寸法5mm、パルス持続時間1ミリ秒の光を発する色素レーザが、先行技術の方法では、末梢血管拡張症等の血管障害やポートワイン斑の治療には、10‐15J/cmの範囲のエネルギー密度で、しわの除去には、3‐4J/cmのエネルギー密度で使用される。先行技術の方法の幾つかの欠点の1つは、しばしば、血管治療時や、しわの除去に要する極めて多くの回数の治療(10回以上)に当たって、皮膚上に生じる紫斑(病)である。
皮膚ターゲットと接触する真空チャンバに制御された真空、すなわち約600ミリバールの中程度の真空レベルか、又はレーザ発光前1秒間に10Hzの頻度に調節される真空を発生させることにより、レーザの効率が高められる。したがって、血管障害を7J/cmの密度で、紫斑を発症させることなく治療することが可能であり、またより少ない回数(5回)でしわの除去が可能である。
【0212】
例5
波長810nmで作業する先行技術のダイオードレーザ、又は色素レーザは、血管に富む乾癬皮膚の治療に適し、その場合、パルスごとに治療される面積は1cmである。これらのレーザのいずれかのハンドピース遠位端に取り付けられた真空チャンバを用いることによって、血液が病変部位に吸引され、治療効果が改善される。真空は、レーザビーム発光前に2秒間作用させる。
例6
深部浸透レーザ、例えば波長940nmでのパルスダイオードレーザ、又はNd:YAGレーザ、又はエネルギー密度30J/cmで作業する高強度パルス光源が、ハンドピース遠位端に真空チャンバが取り付けられている場合、腺を熱損傷させるのに適している。真空は数秒間、例えば1‐10秒間、汗腺等の腺上方に作用させ、腺内へ血液を過剰に吸引する。パルスレーザビームを皮膚へ向けた後、吸引された血液にレーザビームが吸収されることで腺内に熱が発生し、それにより腺が損傷される。したがって、真空を皮膚に作用させた場合、レーザ又は高強度パルス光源による腺の熱損傷が、より効果的に可能になる。
【0213】
例7
高強度パルス光源の発光前に、本発明により皮膚ターゲット上に真空チャンバを載置することにより、種々の種類の治療用のエネルギー密度レベルが、先行技術の装置の場合より有意に低減される。治療エネルギー密度レベルは、この場合、皮膚組織内に所望の変化、例えば血管の凝固、コラーゲン束の変性、腺内細胞の破壊、毛包内細胞の破壊、その他何らかの所望の効果を生じさせる最小エネルギー密度レベルと定義される。
【0214】
以下に記すのは、本発明を使用した場合と、先行技術を使用した場合の種々の治療に要する治療エネルギー密度レベルである:
a)血管の病変、ポートワイン斑、末梢血管拡張、酒さ、クモ状静脈を波長585nmの色素レーザユニットの発光により治療する場合:5‐12J/cm(本発明)、10‐15J/cm(先行技術)。
b)血管障害、ポートワイン斑、末梢血管拡張、酒さ、クモ状静脈を波長940nmのダイオードレーザユニットの発光により治療する場合:10‐30J/cm(本発明)、30‐40J/cm(先行技術)。
c)血管障害を波長570‐900nmの高強度非コヒーレント光ユニットの発光により治療する場合:5‐20J/cm(本発明)、12‐30J/cm(先行技術)。
d)血管障害を米国のレーザスコープ社製の波長532nmのKPPレーザユニットの発光により治療する場合:4‐8J/cm(本発明)、8‐16J/cm(先行技術)。
e)波長585nmの色素レーザユニットの発光による光若返り治療の場合:2‐4J/cm、所要治療回数6回(本発明)、2‐4J/cm、所要治療回数12回(先行技術)。
f)波長570‐900nmの高強度パルス非コヒーレント光ユニットの発光による光若返り治療の場合:5‐20J/cm(本発明)、約30J/cm(先行技術)。
g)波長570‐900nmの高強度パルス非コヒーレント光ユニットの光と、RF源との組み合わせ効果による光若返り治療の場合:高強度パルス非コヒーレント光ユニット、RF光源双方とも10J/cm(本発明)、20J/cm(先行技術)。
h)波長1604nmのNd:YAGレーザ光による毛除去処置の場合:25‐35J/cm(本発明)、50‐70J/cm(先行技術)。
i)青色光(420nm)、オレンジ色光(585nm)、赤色光(630)を発する発光ダイオードによるポルフィリン‐ベースの光力学的治療で、治療持続時間10msec‐10minの場合:5‐20J/cm(本発明)、20‐30J/cm(先行技術)。
【0215】
例8
長さ50mm、幅25mm、高さ3mmのポリカーボネート製真空チャンバと、サファイア製伝搬部材とを、670‐900nmのスペクトル域のエネルギーを発する高強度パルス光システムによる5名の患者の望ましくない毛の処置時に使用した。皮膚ターゲットには室温で0.5mm厚のゲル薄層を塗布した。真空チャンバ壁には伝搬部材下、高さ0.5mmのところに、直径1mmの複数開口を設け、ゲル又は吸引された皮膚によって開口が塞がれないようにした。ゲルトラップとして役立つ小容器を、真空チャンバと真空ポンプとの間の流路中間に配置し、真空ポンプ入口へのゲルの吸入を防止した。500mmHgの真空レベルを真空チャンバ内に発生させ、皮膚ターゲットを吸引し、伝搬部材に接触させた。
【0216】
長さ40mm、幅15mmの治療ビームを有する高強度パルス光システムを、エネルギー密度16‐20J/cm、パルス持続時間30‐40msecで発光させた。1名の患者は背中の毛の除去処置を受けたが、その場合、「対照」として、背中の複数区域を皮膚表面への真空作用なしに処置し、他の複数区域は真空を作用させて処置した。他の患者は下肢、胸部、腹部の毛の除去処置を受けた。真空は幾つかの区域に作用させ、隣接区域には「対照」として作用させなかった。5名の患者すべてに、皮膚冷却は行わなかった。
図21は、患者の中の1人の、毛の除去処置2ヶ月後の背中の2区域1985,1986を示す写真である。真空は、背中の区域1985の皮膚表面には作用させず、区域1986には作用させた。図示のように両区域とも、治療2ヵ月後に無毛のままである。
【0217】
患者たちの痛みの知覚は5段階に分類した。すなわち痛みがまったく感じられないことを示すレベル0、レーザの数ショット後に耐えられない痛みを感じ、痛みで顔をゆがめ、ショット後に制御不能の反応を示すレベル5、治療は知覚するが、痛みはないことを示すレベル1、レベル2,3,4は順次痛みのレベルが増すことを示す。真空を作用させなかった場合、患者のすべてが、一致してレベル3‐5の痛みを感じ、真空を作用させた場合は、痛みが緩和(レベル2)されるか、まったく感じなかった(レベル1又はゼロ)。痛みの緩和は真空の発生と高強度パルス光の発光との間の時間的な遅れに依存することが判明した。痛みの緩和は、高強度パルス光が、皮膚表面への真空の作用の少なくとも1.5秒後に発光した場合に知覚された。
【0218】
例9
毛の除去処置を受ける患者について、痛みの知覚を試験した。波長810nmで作業する高強度パルスダイオードレーザ(ルメニス社のライト・シア)を使用した。また、長さ40mm、幅15mm、高さ3mmのポリカーボネート製真空チャンバと、サファイア製伝搬部材とを使用した。室温で0.5mm厚の薄いゲル層を皮膚ターゲットに塗布した。伝搬部材下には、真空チャンバ壁の高さ0.5mmのところに直径1mmの複数の吸引開口を設けた。真空チャンバと真空ポンプとの間の流路の中間に、ゲルのトラップとして役立つ小容器を配置することで、真空ポンプ入口からのゲルの吸い込みを防止した。
【0219】
真空を皮膚ターゲットに作用させずに、エネルギー密度42J/cm、パルス持続時間30msecで光源を発光させた場合、患者は痛みレベル5を知覚した。真空チャンバ内に真空レベル500mmHgを発生させ、皮膚ターゲットを吸引して伝搬部材に接触させ、エネルギー密度42J/cm、パルス持続時間30msecで光源を発光させた場合、患者が知覚したのは、かなり低い痛みレベル2であった。真空援用処置時に緩和された痛みレベルは、真空を皮膚ターゲットに作用させずに、エネルギー密度26J/cm、パルス持続時間30msecで光源を作業させた場合に知覚される穏やかな痛みに相当することが分かった。
【0220】
例10
光ベースの真空援用平板化皮膚治療の結果生じる痛みレベルの分布を、従来の光ベース皮膚治療による痛みレベル分布と比較した。イスラエルのエムエスキュー社(Msq)製のIPLラヴリィ・ユニットからエネルギー密度18J/cm、640nmを超える波長、パルス持続時間30msecの光を、41の異なる皮膚ターゲットに照射した。また、エネルギー密度25J/cm、パルス持続時間3msecを有するアレキサンドライト・レーザユニットの光を、異なる2皮膚ターゲットに照射した。更に、エネルギー密度42J/cm、パルス持続時間2msecを有するダイオードレーザの光を、異なる2皮膚ターゲットに照射した。これらの皮膚ターゲットのうちの27ターゲットに対し、平面的な20×50mmサファイア製伝搬部材を有する真空チャンバを介して500mmHgの真空を作用させ、皮膚ターゲットを伝搬部材によって平板化させた。残りの18皮膚ターゲットの皮膚処置は真空を作用させずに行った。
【0221】
図46は、45の皮膚治療の各々の場合に患者が受けた痛みを反映する棒グラフである。痛みの知覚は修正マクギル(McGill)質問票にしたがって評価し、偏差pを0.06とし、カイ二乗統計技法に従って分類した。真空を作用させなかった18皮膚ターゲットのうち、4ターゲット(22.2%)が痛みレベル5を知覚し、11ターゲット(61.1%)が痛みレベル4を知覚し、3ターゲット(16.7%)が痛みレベル3を知覚した。真空を作用させ、皮膚の平板化が可能だった27皮膚ターゲットのうち、1ターゲット(3.7%)が痛みレベル5を知覚し、4ターゲット(14.8%)が痛みレベル4を知覚し、7ターゲット(25.9%)が痛みレベル3を知覚し、15ターゲット(55.6%)が痛みレベル2を知覚した。したがって、真空を作用させなかったターゲットの大半が、極めて苦痛な痛みレベル4を感じたのに対し、真空を作用させたターゲットの大半がほとんど痛みのない痛みレベル2を知覚している。真空援用皮膚平板化処置を受ける患者は、したがって劇的な痛みの軽減を期待してよい。
【0222】
例11
知覚される痛みレベルに対する皮膚平板化処置時の真空レベルの影響を試験した。エネルギー密度18J/cm、640nmを超える波長、パルス持続時間30msecを有するエムエスキュー社製IPLラヴリィ・ユニットから発する光を異なる10皮膚ターゲットへ照射した。痛みの知覚は、修正マクギル痛み質問票にしたがって評価した。次の表IIは、10皮膚ターゲットの各々に作用させた異なる真空レベルの場合に知覚された平均痛みレベル軽減を反映している。
約150mmHgの真空レベルでは、知覚された平均痛みレベルは4だった。知覚された痛みレベルは、真空レベル300mmHgを作用させた場合には、更に痛みレベル3に下がった。真空レベル500mmHgを作用させた場合には、痛みレベル2へ有意な痛み軽減が達せられた。
【0223】
【表2】

【0224】
例12
知覚される痛みレベルに対し、伝搬部材の表面積が、皮膚平板化処置時に与える影響を試験した。エネルギー密度18J/cm、640nmを超える波長、パルス持続時間30msecを有するエムエスキュー社製IPLラヴリィ・ユニットが発する光を、異なる10皮膚ターゲットに照射した。また、エネルギー密度42J/cm、パルス持続時間2msecを有するダイオードレーザが発する光を、異なる2皮膚ターゲットに照射した。各皮膚ターゲットに作用させた真空レベルは500mmHgであった。痛みの知覚は、修正マクギル痛み質問票にしたがって評価した。
9×9mmの伝搬部材の場合、知覚された平均痛みレベルは3であった。12×20mmの伝搬部材の場合、知覚された平均痛みレベルは耐えることのできるレベル2‐3だった。20×40mmの伝搬部材の場合、知覚された平均痛みレベルは、ほとんど痛みなしのレベル1‐2であった。
【0225】
例13
本発明により試験されたヴァンケル型真空ポンプのケーシングは、幅50mm、長さ50mm、高さ10mmである。中央面スロット883Aの長さは20mmであった。ポンプロータの回転速度は1500rpm、つまり25回転毎秒であり、この速度は小型のブラシなしモータで達せられた。この回転速度では、真空発生画室の平均容積が0.25cmの場合、排出速度は18cm/secであった。この排出速度は、20mm×40mm×5mm高さの通常の寸法を有する真空チャンバ、又は4cmの通常の容積を有する真空チャンバを約0.2秒以内に排気するのに適している。真空は、光ベース治療パルスの発光前に発生させる必要があるので、治療速度は1Hzの速度を超えることができる。500パルスの治療の場合、また各治療パルス毎に1秒の平均真空発生持続時間の場合、12,500ロータ回転が必要である。例えば0.1の低摩擦係数のプラスチック材料が摩耗するのは、約50,000回転後であり、したがってポンプは500パルスの治療の確実に耐えられる。
【0226】
以上、本発明の幾つかの実施例を図面につき説明したが、本発明は多くの変更態様、変化形、改作が可能であり、また本発明の精神又は特許請求の範囲の枠を逸脱することなしに当業者の領域内で数多くの等価形式又は別の解決策が可能であることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0227】
【図1】先行技術の方法による、ハンドピースからの皮膚ターゲットへの高強度パルスレーザビームの伝播を示す略示図。
【図2】先行技術の方法による、ハンドピースからの皮膚ターゲットへの高強度パルス非コヒーレント光の伝播を示す略示図。
【図3】先行技術の方法を示す略示図。この方法により皮膚ターゲットに圧力が加えられ、皮下に散乱する光の光路内の血管部分から血液が排除される。
【図4】先行技術による真空援用ローリング式セルライトマッサージ装置の略示図。
【図5】先行技術の真空援用毛除去装置の略示図。この装置により形成される皮膚のひだ内の血液集中度が低減され、このひだを両側から照射することでメラニンに富む毛幹が除去される。
【図6】本発明の一実施例による装置の略示図。手で閉じる形式のU字形排出チャンバが採用されている。(実施例1)
【図7】本発明の別の実施例による装置の略示図。電子制御式排出チャンバを採用している。(実施例2)
【図8】本発明による装置の略示図。高強度パルス非コヒーレント光源を採用している。
【図9】皮膚冷却器を備えた、本発明による装置の略示図。
【図10】真空チャンバへ吸引した皮膚の内部血液集中度を高めるため、真空チャンバを気圧以下の圧力にする効果を略示した図。
【図11】真空チャンバを真空に引いた後、皮膚内の複数血管の集中度が高まる結果、皮膚の発赤が増し、光吸収量が高まることを示す略示図。
【図12】小じわの治療前に、本発明により真空を作用させることにより皮膚の淡紅色の度合いが高まることを示す高画質写真。
【図13】本発明の別の実施例の略示図で、透明の、調整された真空チャンバへの外部光源からの高強度パルス光の伝播を示す図。(実施例3)
【図14】血管の凝固を改善するため、高強度パルス光源と無線周波源の双方を採用した本発明の別の実施例の略示図。(実施例4)
【図15】光ガイドを取り付け可能な真空チャンバを示す略示図。図15aは取り付け前の真空チャンバ、図15bは取り付け後の真空チャンバを示す。(実施例5)
【図16】本発明の別の実施例による装置の略示図。この装置は、光ベースの皮膚治療実施例の痛み緩和に適している。(実施例6)
【図17】真空チャンバへのゲルの吸い込みを防止するための典型的なトラップの略示図。
【図18】本発明の別の実施例による装置の略示斜視図で、真空チャンバの取り外し可能な上部を示す図。(実施例7)
【図19】図16の装置に適した典型的な皮膚冷却装置の略示図。
【図20】本発明の更に別の実施例による装置の略示図。(実施例8)
【図21】本発明の毛除去治療の効果を示す、患者の背中の写真。
【図22】皮膚ターゲットから周辺皮膚区域への血液の排除を誘発するように構成された真空チャンバの略示図。
【図23】皮膚ターゲットへ周辺皮膚区域から血液移動を誘発するように構成された真空チャンバの略示図。(実施例9)
【図24】図24Aと図24Bは、真空チャンバが皮膚の1区域から他の区域へ移動した場合のゲルの累積を示す略示図。
【図25】蠕動ポンプにより真空に引かれる真空チャンバの略示図。
【図26】図26Aは、真空チャンバ配列の平面図、図26Bは、図26AのA‐A線に沿って截断した断面図。
【図27】図27A‐図27Cは、カバーを3段階で垂直移動させることにより形成される真空チャンバの略示図。
【図28】皮膚ターゲットへ光及びRFの両方を透過させるのに適したサファイア製伝搬部材の略示斜視図。(実施例10)
【図29】単極RF源と連携して痛み緩和に使用される大型真空チャンバの略示図。(実施例11)
【図30】双極RF源と連携して痛み緩和に使用される大型真空チャンバの略示図。(実施例12)
【図31】本発明の一実施例によるヴァンケル型真空ポンプをカバーを除去して示す平面図。(実施例13)
【図32】図32aと図32bとは、ポンプの吸入‐膨張サイクルから圧縮‐排出サイクルへの回転につれてゲルが移動するさいに生じるポンプロータの変形を示す略示図。
【図33】本発明の一実施例による皮膚治療用ハンドピース・システムの略示図。(実施例14)
【図34】痛み抑制皮膚治療用空気‐ゲル真空ポンプと、反復的なゲル洗浄・溶解能を得るための溶解液ポンプとを含む装置の略示図。
【図35】圧力センサを備えた真空チャンバの略示図。
【図36】本発明の別の実施例の略示図。この場合、滑動装置が、レーザ又はIPLの遠位端を、痛み抑制真空チャンバの大型伝搬部材に沿って移動させるのに使用される。(実施例15)
【図37】図37aと図37bとは滑動装置の2つの実施例を示す略示図。
【図38】大型の痛み抑制真空チャンバと連携して使用される揺動可能なスキャナの略示図。
【図39】レーザビーム・スキャナの作業を、痛み抑制真空チャンバの作業と同期させる方法を示す流れ図。
【図40】真空チャンバの伝搬部材上で重複なしにレーザビームの一様な走査を可能にするカレイドスコープ式方形ビーム・ホモジェナイザの略示図。
【図41】図41aは真空チャンバの伝搬部材の平面図、図41bはその側面図。該伝搬部材は、滑動装置を補助する別の構成の双極RF援用金属導電電極を備えている。
【図42】図42aは、レーザ治療光で治療された組織の治癒速度を改善するための散光レンズ配列の略示側面図、図42bは、下の皮膚表面へ図42aのレンズ配列を透過した治療光エネルギーの分布を示す略示平面図。(実施例16)
【図43】光源と真空チャンバとを有する、一方の手に保持された治療ハンドピースの略示図。
【図44】真空チャンバに対し光源の遠位端をセンタリングするための手段を示す略示図。
【図45】皮膚冷却スプレーを噴霧する皮膚冷却器の略示図。
【図46】光ベース皮膚治療を受けた患者の痛みレベルの分布を示す棒グラフ。真空援用治療の場合の痛みの知覚と、真空を援用しない治療の場合のそれとを比較したもの。
【図47】皮膚ターゲットが適切な真空レベルの作用を受けた後に平板化された場合に、痛み抑制信号を発生することに関わる神経組織の一部を示す略示図。
【符号の説明】
【0228】
100 真空チャンバ
115 伝搬部材
130 皮膚ターゲット
136 皮膚ターゲットの1皮膚区域
138 神経
139 毛包
155 導管
160 光ビーム
180 真空チャンバ
185 ゲル
190 始めの皮膚区域
192 移動した皮膚区域
200 真空チャンバ
205 カバー
210 皮膚ターゲットの隣接皮膚区域
215 伝搬部材
230 皮膚ターゲット
240 環状脚
250 環状支持部材
255 導管
260 光ビーム
282 入口
284 出口
310 真空チャンバ
313 導管
315 伝搬部材
320 レーザ光
340 ブラシなしモータ
345 軸
350 皮膚治療用ハンドピース
360 ポンプ
362 ハンドピース胴部
370 電池
385 操作ボタン
389 排出管
390 制御ユニット
395 センサ
400 別の装置の実施例
405 ゲル
410 皮膚表面
415 皮膚ターゲット
420 真空チャンバ
425 導管
430 蠕動ポンプ
440 真空制御装置
442 ホース
445 信号
446 ハブ
448 シュー及び/又はローラ
449 ホース端部
450 制御弁
452 大気圧の空気
455 信号
456 通路
460 マイクロスイッチ
470 治療パルス
500 真空チャンバ配列
505 単一の平らなシート
510 真空チャンバ
515 シート底縁
522 頂縁
525 シート上面
530 導管
532,534 分岐管
540 伝搬部材
600 垂直移動可能なカバーを有する治療装置の実施例
610 カバー
615 伝搬部材
620 真空チャンバ壁
625 シール部材
630 皮膚表面
635 ゲル層
640 真空チャンバ
650 皮膚ターゲット
652 近位向きの力
654 遠位向きの力
660 ばね組立体
670 ソレノイド
678 1度だけの遠位向き力
700 痛み緩和に適した本発明の装置の実施例
705 真空チャンバ
710 IPL光源
720 電極
725 伝搬部材
730 電極
735 皮膚ターゲット(?)
740 皮膚ターゲット
750 単極RF源を有する装置
755 真空チャンバ
759 吸引された皮膚
761 血液
765 マーカー
772 ダクト
781 カバー
782 伝搬部材
783 RF源
784 単極電界
787 電極対
788 カバー
793 双極RF源
795 真空チャンバ
797 双極電界
799 皮膚ターゲット
802 ゲル
804 膨張した空気
813 導管
860 真空ポンプの1実施例
861 ケーシング
862 外トロコイド形内壁
865 3角形ロータ
867A‐C 湾曲凸面
868A‐C 頂点
869 内歯
871 キャビティ
873A‐C 端面スロット
877 外歯
879 軸
883A‐C 中央面スロット
887 入口
888 出口
889 排出管
891 排出管
910 痛み抑制用真空ポンプを有する治療装置
902 真空チャンバ
903 導管
906 皮膚表面
914 空気‐ゲル真空ポンプ
917,919 ホース
918 ゲル溜め
925 モータ
926 軸
931 溶解液溜め
935 蠕動ポンプ
938 液体ポンプ
950 伝搬部材
951 電極
953 電極最上部
954 IPL又はレーザの光
955 IPL又はレーザユニット
956 RF電極
957 電極最下部
960 真空チャンバ
963 圧力センサ
964 伝搬部材
1001 ハンドピース
1002 伝搬部材
1004 皮膚ターゲット
1005 コラーゲン束
1006 毛包
1007 単色ビーム
1009 血管
1010 ハンドピース
1011 光ガイド
1012 ビーム
1013 ランプ
1014 反射器
1022 光学素子
1031 先行技術のマッサージ装置
1033 皮膚
1037 セルライト層
1040 皮膚のひだ
1044 マッサージ方向
1050 ハンドピース
1051 皮膚との接触面
1054 皮膚の飛騨
1055 光ファイバ
1057 光学素子
1058 皮膚表面
1070 本発明の装置の一実施例
1071 光源
1072 光ファイバ
1073 ハンドピース
1074 ビーム
1075 皮膚表面
1076 伝搬部材
1078,1079 導管
1080 真空ポンプ
1087 皮膚ターゲットの変形部分
1090 排出ユニット
1091 壁部
1093 シール
1101 ハンドピース
1103 光ファイバ
1104 レンズ
1105 単色ビーム
1106 真空チャンバ
1107,1112 導管
1108 制御弁
1109 真空ポンプ
1110 加圧タンク
1111 制御弁
1115 エネルギー密度ディスプレー
1116 レーザシステム
1119 制御ユニット
1120 指示器
1122 パルス構成のディスプレー
1123 遅れ選択用の制御回路
1124 真空レベル制御用セレクタ
1126 真空デューティサイクル制御用制御回路
1140 皮膚ターゲット
1142 皮膚表面
1143 正圧タンクからの流体送出用の制御回路
1170 本発明の別の実施例
1201 Xeフラッシュランプ
1202 反射器
1203 光ガイドの遠位端
1206 真空チャンバ
1207 発せられた光
1208 光ガイド
1242 皮膚表面
1270 非コヒーレント光システムを有する装置
1300 皮膚冷却器
1301 ハンドピース
1306 真空チャンバ
1310 腕
1325 支持部材
1326 真空チャンバ
1329 血管
1340 皮膚ターゲット
1342 皮膚表面
1345 支持部材
1370 本発明の装置
1376 伝搬部材
1390 排出ユニット
1402‐4 治療スポットの色の変化
1501 真空チャンバ
1503 導管
1504 制御弁
1506 伝搬部材
1508 パルスビーム
1509 光源
1530 操作員の手
1531 ハンドル
1540 皮膚ターゲット
1542 皮膚表面
1570 ハンドピースなしで皮膚ターゲット内部の血管集中度を高める装置
1590 排出ユニット
1601 真空チャンバ
1602 光ガイド
1603 皮膚表面
1604 取り付け部材
1605 側口
1606 皮膚ターゲット
1608 壁部
1612 カバー
1620 光ビーム
1625 伝搬部材
1670 本発明の別の実施例
1801 真空チャンバ
1802 皮膚表面
1804 制御弁
1805 真空ポンプ
1806 伝搬部材
1807 交流電圧
1808 ワイヤ
1809 電極
1810 電界
1811 RF源
1813 血管
1820 ビーム
1821 パルス光源
1870 治療装置
1901 真空チャンバ
1908 パルスビーム
1960 皮膚ターゲット
1962 毛包
1901 真空チャンバ
1906 伝搬部材
1908 光ビーム
1917 開口
1920 ゲルトラップ
1924 外壁
1926 垂直部分
1930 通路
1940,1945 導管
1960 皮膚ターゲット
1963,1966,1767 ゲル
1960 皮膚ターゲット
1965 皮膚表面
1969 中心線
1970 治療装置
1975 熱伝導板
1979 熱電冷却器
1980 上部を取り外し可能な真空チャンバを備えた装置
1981 真空チャンバ壁
1982 カバー
1983 上部
1984 伝搬部材
1987 取り付けクリップ
1988 シール部材
1990 薄いポリカーボネート層を有する治療装置
1991 真空チャンバ
1993 伝搬部材
1994 ポリカーボネート層
2010 レーザ遠位端
2015 発光位置
2018 治療レーザパルス
2025 伝搬部材
2030 導管
2042 空気式管
2048 開口
2050 真空チャンバ
2052 球形部材
2059 ばね
2065 ばねモータ
2080 揺動可能な線形スキャナ
2085 レーザビーム、伝搬部材
2087,2087´ 平板化された皮膚ターゲット
2110 ハンドピースを皮膚上に載置する
2115 オプト‐カプラー接触センサが真空ポンプを起動する
2118 0.5sec以内に400mmHgの真空を発生させる
2120 レーザスキャナ制御装置が走査開始命令を発生させる
2122 走査完了
2124 真空ポンプ制御装置への命令:ポンプの逆転と0.5秒以内の真空解除
2128 ゲル溶解ポンプへの命令:ゲルの溶解と洗浄
2131 遠位のファイバ
2132 カレイドスコープ状部材
2133 方形ビーム
2134 走査ミラー
2136 方形ビーム配列
2150 伝搬部材
2155 凹レンズ
2170 治療光
2171 光線
2175 皮膚表面
2177 エネルギー密度のより高い区域
2179 エネルギー密度のより低い区域
2185 ハンドピース
2191 伝搬部材
2194 閉弁かされた皮膚
2195 光源
2200 IPL又はレーザ光源遠位端に取り外し可能に取り付けウィ手段を有する治療装置
2210 IPL源遠位端
2214 真空チャンバ
2215 皮膚ターゲット
2217 治療ビーム
2218 伝搬部材
2222 カバー
2230 壁部
2235 マーカー
2300 治療装置
2310 蒸気圧縮容器
2315 冷却蒸気
2325 伝搬部材
2330 真空チャンバ
2335 皮膚ターゲット
2350 真空チャンバ
2352 導管
2354 皮膚ターゲット
2355 真空ポンプ
2360 伝搬部材
2365 圧力レセプタ
2368 神経
2369 圧力信号
2375 痛みレセプタ
2378 痛み知覚神経
2380 シナプス接続部
G1,G2,H,I 画室


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空援用式光ベース皮膚治療装置において、
a)非切除用高強度パルス単色光又は非コヒーレント光の光源が含まれ、
b)皮膚ターゲット上に載置可能な真空チャンバが含まれ、該真空チャンバが、遠位端に開口を有し、近位端に伝搬部材を備え、該伝搬部材が、前記光源の発する前記皮膚ターゲット向けの光を透過可能又は半透過可能であり、また
c)前記真空チャンバ内に真空を発生させる装置が含まれ、発生する真空レベルが、前記開口を介して前記真空チャンバへ皮膚ターゲットを吸引するのに適しており、更に
d)真空発生モード時に真空チャンバ内への空気の流入を防止する手段が含まれている、真空援用式光ベース皮膚治療装置。
【請求項2】
前記真空を発生させる装置が真空ポンプを含む、請求項1に記載された治療装置。
【請求項3】
前記真空を発生させる装置が、更に少なくとも1制御弁と制御装置とを含み、該制御弁と制御装置とによって、
真空ポンプと、少なくとも1制御弁と、光源の動作が制御され、前記制御装置が、真空ポンプの動作に続いて約0.5秒から約4秒の範囲の予め定めた時間的な第1遅れ後に光源を発光させるのに適しており、また
第2の皮膚ターゲットへの真空チャンバの置き換えを容易にするため、光源の非作動化に続いて真空チャンバ内圧が大気圧に昇圧せしめられ、更に
目標エネルギー密度レベルの光が皮膚ターゲットに向けられていることが確認され、
エネルギー密度レベルが前記目標レベルより有意に大であれば、光源が非作動化され、また前記制御装置が、電子装置、空気式装置、電気式装置、光学装置の中から選択され、光治療用ハンドピースに配置された指で押圧可能なボタンによって起動可能である、請求項2に記載された治療装置。
【請求項4】
真空発生モード時の真空チャンバ内への空気流入が、制御弁と制御回路とによって防止されている、請求項1に記載された治療装置。
【請求項5】
光の波長が400‐1800nmの範囲であり、光のパルス持続時間が10nsec‐900msecの範囲であり、光のエネルギー密度が約2‐約150J/cmの範囲であり、真空チャンバに発生させる真空レベルが約0気圧‐約1気圧の範囲である、請求項1に記載された治療装置。
【請求項6】
前記真空チャンバが近位に配置されたハンドピースに結合されているか、又はハンドピースと一体形成されており、該ハンドピースを介して光が皮膚ターゲットへ伝播され、真空チャンバが、任意に、開口を有するように構成された近位のカバーを有し、該カバーを一体の伝搬部材を有するハンドピースに取り付け可能である、請求項1に記載された治療装置。
【請求項7】
前記光源が、色素レーザ、Nd:YAGレーザ、ダイオード・レーザ、発光ダイオード、アレキサンドライト・レーザ、ルビー・レーザ、Nd:YAG周波数2倍レーザ、Nd:ガラス・レーザ、非コヒーレント高強度パルス光源、RF源と組み合わされた非コヒーレント高強度パルス光源のなかから選択され、その光が、毛の除去、コラーゲンの収縮、光若返り、血管障害の治療、皮脂腺又は汗腺の治療、いぼの治療、色素沈着障害の治療、損傷コラーゲンの治療、床擦れの治療、ケロイドの治療、乾癬の治療に適しており、前記血管障害は、ポートワイン斑、末梢血管拡張、酒さ、クモ状静脈の中から選択される、請求項5に記載された治療装置。
【請求項8】
前記伝搬部材が、隣接皮膚表面から0.5‐50mmの範囲の間隔だけ隔たっており、皮膚ターゲットに隣接する皮膚表面に対し事実上垂直方向に光を伝搬させるのに適している、請求項1に記載された治療装置。
【請求項9】
前記真空チャンバが、少なくとも1吸入口を有し、皮膚ターゲットに隣接する皮膚表面と真空チャンバ壁部との間の周縁部接触区域をシールするリムを備え、真空が前記少なくとも1吸入口を介して真空チャンバ内に発生させられる、請求項1に記載された治療装置。
【請求項10】
前記真空チャンバがU字形である、請求項1に記載された治療装置。
【請求項11】
真空チャンバ内圧の昇圧が光検出器によってトリガされ、該光検出器が、光源から発する光エネルギーの有意の減少を検知した場合に、又は光源の非作動化に続く予め定めた第2の時間的遅れの後に、制御装置に対し信号を発する、請求項3に記載された治療装置。
【請求項12】
光パルス当たりの治療スポット幅が、5mmを超えるか、又は15‐50mmの範囲である、請求項1に記載された治療装置。
【請求項13】
前記真空ポンプが、真空チャンバと連通する導管に接続されたホースを介して真空チャンバ内部から空気及びゲルを吸い出すポンプか、又は空気ポンプである、請求項2に記載された治療装置。
【請求項14】
更に、皮膚ターゲット上への真空チャンバの載置を検出し、かつ皮膚ターゲット上への真空チャンバの載置に続き真空ポンプを起動する第1信号を発生させる皮膚接触検出器を含み、しかも、前記制御弁が、皮膚ターゲットに向けられた光の発光終了を検知するようにされた光検出器による第2信号発信に続いて開弁され、それにより大気圧の空気が真空チャンバ内部へ導入され、前記第2信号が、また真空ポンプの非作動化に適している、請求項3に記載された治療装置。
【請求項15】
更に、皮膚ターゲット上に載置可能な真空チャンバ配列を含み、しかも、前記配列が、光を透過又は半透過する材料製の単一シートで形成され、前記シートが、排気用の複数導管を有するように構成され、該導管の各々が対応真空チャンバに連通するようにされており、また隣接真空チャンバの間隔が、各真空チャンバ内部から拡散した光が、対応導管下に位置する皮膚区域を治療するのに十分な狭さであり、各導管が第1と第2の導管部分に分岐し、分岐した該導管部分が真空ポンプと圧縮空気源とに連通している、請求項2に記載された治療装置。
【請求項16】
各真空チャンバが、真空ポンプを起動する信号をトリガする接触検出器と、対応する第1、第2導管部分を通過する流体をそれぞれ制御する2つの制御弁と、光検出器とを備えており、該光検出器が、皮膚ターゲットへ向けられた光の終了を検知した場合、対応する第2導管部分を介して圧縮空気を導入する信号を発するか、又は第1導管部分が、すべての真空チャンバから空気を、真空ポンプ起動時に同時に排出するように構成されている、請求項15に記載された治療装置。
【請求項17】
前記真空を発生する装置には、
a)伝搬部材を固定取り付けする垂直移動可能なカバーが含まれ、また
b)前記カバーを取り囲み、前記カバーと類似の形状を有するチャンバ壁が含まれ、前記チャンバ壁に対し前記カバーが近位へ移動した場合、真空が、前記カバー・前記チャンバ壁・皮膚ターゲット間の容積によって形成される真空チャンバ内に発生せしめられ、更に
c)真空解除モード時に真空チャンバ内へ大気圧の空気を導入する通気管が含まれ、該通気管が皮膚ターゲット治療完了時に起動される弁と連通しており、
しかも、真空チャンバ内への流入を防止する手段がシール部材であり、該シール部材が、カバーの外周部に固定され、かつチャンバ壁に弾性的に接触しており、
また、近位向きの力又は遠位向きの力が、複数ソレノイド、ばね組立体、空気式装置、これらの組み合わせの群から選択された何らかの手段によって発生させられ、該手段が、カバーの周部を取り囲んで配備され、チャンバ壁に結合されており、更に
前記近位向きの力が、皮膚ターゲットの吸引高さを隣接皮膚表面に対し調節できるように制御可能であり、かつ真空ポンプによって任意に補助される、請求項1に記載された治療装置。
【請求項18】
前記ソレノイドが1.5ボールトの電池によって励起される、請求項17に記載された治療装置。
【請求項19】
更に、前記真空発生装置への皮膚冷却ゲルの浸入を防止する手段が含まれ、該防止手段が、トラップと、真空チャンバから該トラップへ空気とゲルとを吸い込む第1導管と、前記トラップから真空ポンプへ空気を吸い込む第2導管と、前記第1導管と第2導管との入口の任意のフィルタとを含んでおり、また
取り外し可能な真空チャンバ上部が含まれ、該真空チャンバ上部が、開放中央区域と、前記上部に取り付けられた伝搬部材と、真空チャンバ壁部と、前記壁部と直角の、前記上部を支持するように適宜に寸法付けされた真空チャンバ・カバーと、複数取り付けクリップとを有し、該クリップが、対応真空チャンバ壁部に揺動可能に結合されており、これによって前記真空チャンバ・カバーに前記上部を取り外し可能に固定され、前記上部を取り外すことにより、真空チャンバ内部に保留されたゲルを除去することができ、更に
真空チャンバ壁部が疎水性材料で被覆されるか、又は真空チャンバの構成により、少なくとも1つの吸入口が真空チャンバ壁部遠位端上方に真空チャンバの中心線から十分に間隔をおいて位置することで、真空発生時に、少なくとも1つの吸入口がゲル及び吸引される皮膚によってふさがるのが防止されている、請求項1に記載された治療装置。
【請求項20】
前記トラップが、ゲルと結合可能なイオン交換樹脂を導入するのに適している請求項19に記載された治療装置。
【請求項21】
真空発生モード時に、皮膚ターゲットが、ホース端部からゲルが放出されることで光ベースの治療を受けたか、又は真空解除モード時に真空チャンバ壁部の遠位端の形状で皮膚表面にゲルが落下することで光ベースの治療を受けたかを指示する手段が含まれている、請求項19に記載された治療装置。
【請求項22】
更に皮膚を冷却する手段が含まれ、
前記皮膚を冷却する手段が、皮膚ターゲットの表皮の温度上昇速度を減速するようにされており、かつまた伝搬部材と皮膚ターゲットとの間隙に発生し、皮膚冷却時に伝搬部材の表面に凝結する蒸気を排出するのに、発生真空レベルが適しており、
この場合、皮膚を冷却する手段が、金属板、それも皮膚ターゲットに隣接する皮膚表面に配置されて、真空チャンバ外側に当て付けられるか、もしくは伝搬部材と接触させられるかし、更に熱電冷却器により冷却される金属板か、又は
伝搬部材の遠位面に取り付けられた指向性光を透過するポリカーボネート層か、又は
皮膚ターゲットに当てがわれるゲル、低温の液体、ガスのいずれかである、請求項8に記載された治療装置。
【請求項23】
前記治療装置が、ターゲットとされた皮膚組織の非切除式光ベース治療によって発生する痛みを緩和又は防止するのに適しており、
しかも、皮膚ターゲットに隣接する皮膚表面から伝搬部材が隔たる間隔と、発生する真空による近位向き力の大きさとの組み合わせが、真空チャンバ遠位端の開口を介して皮膚ターゲットを真空チャンバに吸引するのに適しており、この吸引により皮膚ターゲットが予め定めた第1遅れ時間に等しい持続時間、又はより長い持続時間にわたり伝搬部材と接触することで、皮膚組織の治療中に神経組織から発せられる痛み信号が緩和又は防止され、また
前記制御装置が、真空発生装置の起動に続いて予め定めた第1遅れ時間後に光源を発光させるのに適し、かつ真空発生装置によって発生する真空レベルを制御するのに適しており、更に
前記制御装置が指で押す複数のボタンを有し、これらボタンの各々が、真空発生装置と光源とを独特の組み合わせの動作条件で設定するようにされており、これによって真空チャンバ内に予め定めた真空レベルを発生させ、かつ真空発生装置の起動に続く予め定めた時間的遅れの後に光源を発光させることができる、請求項8に記載された治療装置。
【請求項24】
更に、事実上非平面的な皮膚表面上に真空チャンバを安定的に載置する手段を含む、請求項1に記載された治療装置。
【請求項25】
前記真空チャンバが、皮膚ターゲットの皮膚表面下の予め定めた深さ以内に血液及び/又は血管の集中度増大を誘発するのに適した少なくとも1つの支持部材を有し、かつまた治療光用ハンドピースに取り外し可能に取り付け可能である、請求項1に記載された治療装置。
【請求項26】
前記真空チャンバが、真空チャンバに結合されたハンドルによって片手で保持可能である、請求項1に記載された治療装置。
【請求項27】
皮膚表面下の血管による光の吸収深さを制御する装置において、該制御装置に、
a)皮膚ターゲット上に載置される真空チャンバが含まれ、該真空チャンバが、その遠位端に開口を有するように構成され、近位端には伝搬部材を備えており、該伝搬部材が、前記皮膚ターゲットへ向けられた高強度パルス単色光又は非コヒーレント光に対し透過性又は半透過性であり、前記皮膚ターゲットに隣接する皮膚表面に対し事実上直角方向に光を透過するのに適しており、また
b)前記真空チャンバに真空を発生させる装置が含まれ、発生させる真空レベルが、前記開口を介して前記真空チャンバへ皮膚ターゲットを吸引するのに適しており、更に
c)前記皮膚ターゲットの皮膚表面下の予め定めた深さ以内に血液及び/又は血管の集中度増大を誘発する手段が含まれ、皮膚ターゲットに向けられた光に関連する光学エネルギーが、前記予め定めた深さで吸収され、前記深さに位置する予め定めた皮膚組織を破壊又は治療するのに適している、皮膚表面下の血管による光の吸収深さを制御する装置。
【請求項28】
前記皮膚ターゲットの皮膚表面下の予め定めた深さ以内で血液及び/又は血管の集中度増大を誘発する前記手段が、発生させた真空を調節する手段である、請求項27に記載された制御装置。
【請求項29】
前記皮膚ターゲットの皮膚表面下の予め定めた深さ以内で血液及び/又は血管の集中度増大を誘発する前記手段が、少なくとも1個の支持部材であり、該支持部材が、皮膚ターゲットに隣接する皮膚区域に載置され、前記予め定めた深さ以内で血液及び/又は血管の集中度増大を誘発するのに適当な厚さを有し、任意に、前記少なくとも1個の支持部材よりかなり薄い厚さの、真空チャンバの周辺に位置する少なくとも1個の脚を含み、前記少なくとも1個の脚が隣接支持部材から隔たっており、前記少なくとも1個の支持部材が、皮膚ターゲットへ向けて前記少なくとも1個の脚によって血液を強制的に移動させるようにされている、請求項27に記載された制御装置。
【請求項30】
隣接皮膚表面から約1mm皮膚ターゲットを吸引するのに適しており、しかも吸引された皮膚の、隣接皮膚表面からの最大突出度が伝搬部材によって制限されている、請求項27に記載された制御装置。
【請求項31】
真空調節頻度が0.2‐100Hzの範囲である、請求項28に記載された制御装置。
【請求項32】
更に、前記制御装置が制御ユニットを含み、該制御ユニットにより、真空発生装置と光源との動作が制御され、また真空チャンバと連通する少なくとも1制御弁の動作が制御され、更に真空発生に続いて約10msec‐約1secの範囲で予め定めた遅れの後に光が発せられ、かつまた真空が電子式に調節される、請求項27に記載された制御装置。
【請求項33】
真空チャンバへの真空発生の持続時間が2秒未満である、請求項27に記載された制御装置。
【請求項34】
光源から発せられる光が400nm‐1800nmの波長帯域を有し、
この場合、色素レーザユニットからの波長585nmの光による、血管障害、ポートワイン斑、末梢血管拡張、酒さ、クモ状静脈に対する治療のエネルギー密度レベルは、5‐12J/cmの範囲であり、
ダイオード・レーザユニットからの波長940nmの光による血管障害、ポートワイン斑、末梢血管拡張、酒さ、クモ状静脈に対する治療のエネルギー密度レベルは、10‐30J/cmの範囲であり、
高強度パルス非コヒーレント光ユニットからの波長570‐900nmの光による血管障害治療のエネルギー密度レベルは、5‐20J/cmの範囲であり、
色素レーザユニットからの波長585nmの光による光若返り治療のエネルギー密度レベルは、1‐4J/cmの範囲であり、
高強度パルス非コヒーレント光ユニットからの波長570‐900nmの光による光若返り治療のエネルギー密度レベルは、5‐20J/cmの範囲であり、
高強度パルス非コヒーレント光ユニットからの波長570‐900nmの光とRF源の光との組み合わせ効果による光若返り治療のエネルギー密度レベルは、高強度パルス非コヒーレント光ユニットとRF源双方とも、約10J/cmであり、
Nd:YAGレーザユニットからの波長1604nmの光による毛除去治療のエネルギー密度レベルは、25‐35J/cmの範囲であり、
発光ダイオードからの420nm,585nm,630nmのいずれかの波長の光によるポルフィリン‐ベースの光力学的治療時のエネルギー密度レベルは、5‐20J/cmの範囲である、請求項27に記載された制御装置。
【請求項35】
更に、0.2‐10MHzの範囲の周波数で適当な電磁波を皮膚ターゲットに向けるためのパルス無線周波(RF)源を含み、
この場合、前記RF源は、電線及び電極を介して皮膚表面に対し印加する交流電圧を発生させる双極RF発生器、又は単極RF発生器であり、また
前記制御ユニットが、少なくとも1制御弁へ第1命令パルスを、光源及びRF源の双方へ第2命令パルスを送るのに適している、請求項27に記載された制御装置。
【請求項36】
更に、真空発生装置によって誘発された皮膚の発赤度を測定する紅斑センサを含み、この場合、前記制御ユニットは、光源の発光前に、光源から発光される光のエネルギー密度を紅斑センサの出力に応じて制御するのに適している、請求項32に記載された制御装置。
【請求項37】
更に、皮膚ターゲットへの真空チャンバ載置を検出する皮膚接触検出器を含み、前記制御ユニットが前記皮膚接触検出器により発せられる信号に応じて真空発生装置を起動するのに適している、請求項32に記載された制御装置。
【請求項38】
更に、皮膚ターゲットに向けた光の発光終了を検知する光検出器を含み、前記制御ユニットが、真空チャンバ内へ大気圧空気が導入されるように、前記光検出器が発する信号に応じて制御弁を調整するのに適している、請求項32に記載された制御装置。
【請求項39】
更に、皮膚表面に載置可能な真空チャンバ配列を含み、しかも、この配列真空チャンバが光透過性又は光半透過性の材料製の単一シートで形成されており、該シートが排気用の複数導管を有するように構成され、該導管の各々が対応真空チャンバと連通するようになっている、請求項27に記載された制御装置。
【請求項40】
更に、皮膚冷却手段を含み、該皮膚冷却手段が、皮膚ターゲットの表皮温度の上昇速度を低減するようにされている、請求項27に記載された制御装置。
【請求項41】
更に、皮膚冷却ゲルが真空発生装置へ浸入するのを防止する手段を含む、請求項27に記載された制御装置。
【請求項42】
前記真空チャンバが、光治療用ハンドピースに取り外し可能に取り付け可能である、請求項27に記載された制御装置。
【請求項43】
前記真空チャンバが、真空チャンバに結合されたハンドルにより片手で保持可能である、請求項27に記載された制御装置。
【請求項44】
更に、事実上非平面的な皮膚表面上で真空チャンバを安定化する手段を含む、
請求項27に記載された制御装置。
【請求項45】
真空チャンバと流体連通した皮膚科用の真空ポンプであって、該真空チャンバが、ゲルを塗布された皮膚区域上に載置可能であり、かつ近位端には光ベース皮膚治療に適したパルス光を透過又は半透過する伝搬部材を、遠位端には開口を備えている形式のものにおいて、前記真空ポンプが、
a)偏心回転ロータを含み、該ロータが、頂点で終わる湾曲凸面を備えた概して正3角形状の外輪郭を有しており、しかも、前記湾曲凸面の各々が、対応面の中心線に隣接する事実上中心線と平行の中央面スロットを有するように構成されており、また
b)外トロコイド形内壁を有するように形成されたケーシングを含み、該内壁が画成するキャビティ内をロータが回転し、かつまた前記ケーシングの構成により、前記ロータの頂点がロータの偏心的な角移動全域にわたって前記内壁と接触するようにされており、
しかも、可変寸法の複数画室が、前記内壁と前記ロータの対応凸面との間の前記キャビティの容積によって形成され、前記真空チャンバから吸出された制御された量のゲル及び空気が、前記ポンプの起動に続いて、前記画室を介してポンプ排出部へ連続的に運ばれ、
前記画室の各々が、吸入‐膨張サイクルで第1容積から第2容積に拡大することで、前記真空チャンバ内に真空を発生させ、圧縮‐排出サイクルで前記第2容積から第3容積へ縮小することで、空気及びゲルを排出し、
中央面スロットに近接する対応ロータ凸面が、圧縮‐排出サイクル時に対応画室内で加圧されるゲルが加える力に応じてたわみ可能である、皮膚科用の真空ポンプ。
【請求項46】
前記ケーシングが導管と連通する入口と出口とを有するように形成されており、該入口を介して空気とゲルとが真空チャンバ内部からポンプキャビティへ吸引され、該出口を介して空気とゲルとが排出管へ排出される、請求項45に記載された真空ポンプ。
【請求項47】
更に、排出管より大きい寸法の排出パイプを含む、請求項46に記載された真空ポンプ。
【請求項48】
更に、真空チャンバ内圧を大気圧に復させる手段を含む、請求項46に記載された真空ポンプ。
【請求項49】
前記真空チャンバ内圧が約0.1秒以内に大気圧に回復可能である、請求項48に記載された真空ポンプ。
【請求項50】
前記真空ポンプの回転方向が、真空チャンバ内へ大気圧の空気を送入するために逆転可能である、請求項48に記載された真空ポンプ。
【請求項51】
前記真空ポンプが、少なくとも500治療サイクルの間、前記真空チャンバから空気及びゲルを排出可能であり、前記治療サイクルが、真空発生段階、治療発光段階、真空解除段階を有することを特徴とし、かつまた
前記真空ポンプが、前記治療サイクル時に、前記開口を介して真空チャンバに前記皮膚区域を吸引するのに適当な真空レベルを、前記真空チャンバ内に発生させることが可能である、請求項48に記載された真空ポンプ。
【請求項52】
真空チャンバ内に発生する前記真空レベルが500mmHgを超える、請求項45に記載された真空ポンプ。
【請求項53】
更に、真空チャンバ内に発生した真空レベルを制限する手段を含む、請求項47に記載された真空ポンプ。
【請求項54】
真空チャンバ内に発生する前記真空レベルが、排気管又は排気パイプから排出されない残留大気圧によって制限され、該残留大気圧の空気が、入口へ移動可能、かつ真空チャンバから吸出された空気と混合可能である、請求項53に記載された真空ポンプ。
【請求項55】
真空チャンバ内に発生した前記真空レベルが約0.05‐0.1気圧に制限されている、請求項53に記載された真空ポンプ。
【請求項56】
前記排出速度が、各治療部位での治療サイクルが3秒以内に完了し得るように十分に高い値である、請求項51に記載された真空ポンプ。
【請求項57】
前記排出速度が、各治療部位での治療サイクルが、1‐3秒、2‐3秒、1秒未満のいずれかで完了し得るように十分に高い値である、請求項54に記載された真空ポンプ。
【請求項58】
更に、前記ロータをケーシングの形状に合致するようにする手段を含む、請求項45に記載された真空ポンプ。
【請求項59】
皮膚科用ハンドピース・システムにおいて、
a)真空チャンバが含まれ、該真空チャンバが、ゲルを塗布した皮膚区域に載置可能であり、かつ光ベース皮膚治療に適したパルス光を透過又は半透過する伝搬部材を遠位端に備え、近位端には開口を備えており、
b)前記真空チャンバに取り付けられたハンドピース胴部が含まれ、また
c)前記ハンドピース胴部に収容された真空ポンプが含まれ、前記真空ポンプが、頂点で終わる湾曲凸面を有する概して等辺3角形状の外輪郭を備えた偏心回転ロータを含み、前記凸面の各々が、対応面の中心線に隣接する事実上中心線と平行の中央面スロットを有するように形成され、前記真空ポンプが、また、外トロコイド形内壁を有するように形成されたケーシングを含み、該内壁が画成するキャビティ内をロータが回転し、かつまた該ケーシングの構成により、前記ロータの頂点がロータの偏心的な角移動全域にわたって前記内壁と接触するようにされており、更に
d)前記真空チャンバと前記キャビティの第1ポートとに流体連通する導管と、
e)前記ポンプキャビティの第2ポートと連通する排気管と、
f)前記ポンプロータを駆動するための双方向モータと、
g)前記モータの制御ユニットと、
h)前記モータと前記制御ユニットとのための出力センサと、
i)前記モータの起動と非作動化用の、前記電源と電気接続された手段とが含まれており、
この場合、可変寸法の複数画室が、前記内壁と前記ロータの対応凸面との間の容積によって形成され、前記導管を介して前記真空チャンバから吸出された空気とゲルとの制御された量を、前記モータの起動に続いて、前記画室を介して前記排出管へ連続的に搬送可能であり、
前記画室の各々が、吸入‐膨張サイクルで第1容積から第2容積に拡大することで、前記真空チャンバ内に真空を発生させ、圧縮‐排出サイクルで前記第2容積から第3容積へ縮小することで、空気及びゲルを排出し、
中央面スロットの近くの対応ロータ凸面が、圧縮‐排出サイクル時に対応画室内で加圧されるゲルが加える力に応じてたわみ可能である、皮膚科用のハンドピース・システム。
【請求項60】
前記制御ユニットが、適当な命令を受けた後、モータの、したがってロータの回転方向を逆転可能であり、これによって、真空チャンバへ大気圧の空気を送入可能である、請求項59に記載されたハンドピース・システム。
【請求項61】
排出管から皮膚区域へ排出されるゲルが、皮膚ターゲットに光ベース治療が施されたことを示す指示手段をなしている、請求項59に記載されたハンドピース・システム。
【請求項62】
モータを起動及び非作動化する手段が、制御ユニットと電気接続された少なくとも1つのセンサである、請求項59に記載されたハンドピース・システム。
【請求項63】
前記ハンドピース胴部が、異なる皮膚区域へ反復的に位置換えされる1時間以上の間、操作員の片方の手に間欠的に保持される場合に操作員の疲れが防止されるように、十分な小寸法、軽量、人間工学的設計を有している、請求項59に記載されたハンドピース・システム。
【請求項64】
前記ハンドピース胴部が、更に光源を収容している、請求項59に記載されたハンドピース・システム。
【請求項65】
前記制御ユニットが、真空ポンプ及び光源の双方の作業を制御するようにされている、請求項64に記載されたハンドピース・システム。
【請求項66】
前記制御ユニットが、真空発生段階、治療発光段階、真空解除段階を、対応皮膚区域の各治療サイクルに順次に同期させるのに適している、請求項65に記載されたハンドピース・システム。
【請求項67】
前記制御ユニットが、真空ポンプの起動と光源の発光との間に約0.5秒‐約4秒の範囲の予め定めた遅れを同期させるのに適しており、それにより、光源発光後、十分に長い神経抑制持続時間の間、真空チャンバの伝搬部材と吸引された皮膚区域との接触が保証される、請求項66に記載されたハンドピース・システム。
【請求項68】
前記制御ユニットが、また光源の非作動化に続き、モータ極性を逆にすることで真空チャンバを大気圧へ昇圧させるのに適している、請求項66に記載されたハンドピース・システム。
【請求項69】
ヴァンケル機構において、
ゲルを塗布した皮膚上に載置された真空チャンバ内に真空を発生させるために使用される、ヴァンケル機構。
【請求項70】
蠕動ポンプにおいて、
ゲルを塗布した皮膚上に載置された真空チャンバ内に真空を発生させるために使用される、蠕動ポンプ。
【請求項71】
前記蠕動ポンプが、光ベース真空援用式皮膚治療に適した光源を収容したハンドピースに取り付けられて、使用される、請求項70に記載された蠕動ポンプ。
【請求項72】
電磁エネルギーによるターゲット皮膚組織の治療により発生する痛みを緩和又は防止する装置において、
a)下で発生する真空にさらされる部材が含まれ、発生する真空のレベルが、前記部材の下に位置する皮膚ターゲットを圧縮しつつ前記部材の方へ吸引するのに十分な高さを有し、それによって、前記皮膚ターゲット内に存在する痛みレセプタが発生させる痛み信号の伝搬が緩和又は防止され、また
b)電磁エネルギーパルス源が含まれ、該パルス源が発生させる電磁波が、前記部材を介して伝搬され、前記皮膚ターゲット内の皮膚障害の治療に適している、電磁エネルギーによるターゲット皮膚組織の治療により発生する痛みを緩和又は防止する装置。
【請求項73】
前記電磁エネルギーがレーザ又はIPL光である、請求項72に記載された痛みを緩和又は防止する装置。
【請求項74】
前記電磁エネルギーがRFエネルギーである、請求項72に記載された痛みを緩和又は防止する装置。
【請求項75】
前記RFエネルギーが単極又は双極RF源により発生せしめられる、請求項74に記載された痛みを緩和又は防止する装置。
【請求項76】
前記部材がRFエネルギーを伝搬するための電極を含む、請求項75に記載された痛みを緩和又は防止する装置。
【請求項77】
前記電磁エネルギーが、高強度パルス非コヒーレント光源、レーザ光源、RF源と組み合わされた発光ダイオード源のいずれかから発せられる光を含む、請求項74に記載された痛みを緩和又は防止する装置。
【請求項78】
発生する真空の前記レベルが150mmHgを超える値である、請求項72に記載された痛みを緩和又は防止する装置。
【請求項79】
前記部材の面積が100mmを超える値である、請求項72に記載された痛みを緩和又は防止する装置。
【請求項80】
ターゲットとした皮膚組織の光ベース治療により発生する痛みを緩和又は防止する装置において、
a)400‐1800nmの波長を有するスペクトル帯域の光を発生させる非切除用高強度パルス単色光源又は非コヒーレント光源が含まれ、また
b)皮膚ターゲット上に載置される真空チャンバが含まれ、該真空チャンバが、その遠位端に開口を有するように構成され、近位端には伝搬部材を備え、該伝搬部材が、前記光源から発せられる光を透過又は半透過し、かつ前記皮膚ターゲットに隣接する皮膚表面に対し事実上直角方向に光を伝搬するのに適し、更に
c)前記真空チャンバに真空を発生させる真空ポンプが含まれ、発生する真空のレベルが、前記開口を介して前記皮膚ターゲットを前記伝搬部材の方へ、伝搬部材に対して圧縮しつつ吸引するのに適しており、これにより、前記皮膚ターゲット内部に存在する痛みレセプタから発せられる痛み信号の伝播が緩和又は防止される、ターゲットとした皮膚組織の光ベース治療により発生する痛みを緩和又は防止する装置。
【請求項81】
更に、前記伝搬部材上を0.3‐40cm/secの範囲の速度で光源遠位端を移動させる滑動装置を含む、請求項80に記載された装置。
【請求項82】
前記伝搬部材の下に位置する皮膚ターゲットの事実上全域を、発生させた前記光によって最大5パルス/secの反復速度で走査するスキャナを含む、請求項80に記載された装置。
【請求項83】
更に、発生した真空レベルが痛み信号を抑制するのに十分かどうかを検出するための、真空チャンバと連通している圧力センサを含む、請求項80に記載された装置。
【請求項84】
更に、皮膚ターゲットへの真空チャンバの載置を検出する皮膚接触検出器を含む、請求項80に記載された装置。
【請求項85】
前記真空ポンプが真空チャンバから空気とゲルとを排出するのに適している、請求項80に記載された装置。
【請求項86】
前記真空ポンプが回転ポンプである、請求項85に記載された装置。
【請求項87】
前記真空ポンプが、頂点で終わる湾曲凸面を有する概して等辺3角形状外輪郭を備えた偏心回転ロータを有しており、前記凸面の各々が、対応面の中心線に隣接する中心線と事実上平行の中心面スロットを有するように構成されている、請求項86に記載された装置。
【請求項88】
前記伝搬部材が冷却される、請求項80に記載された装置。
【請求項89】
更に、真空チャンバ壁部に対し、かつまた真空チャンバ壁部上方に、光源の遠位端をセンタリングするための手段を含む、請求項80に記載された装置。
【請求項90】
更に、空隙又は重複なしに真空チャンバを別の皮膚ターゲットへ位置換えするための手段を含む、請求項80に記載された装置。
【請求項91】
更に、電子制御ユニットを含み、該電子制御ユニットが、次の作業、すなわち
a)皮膚ターゲット上への真空チャンバの載置時に皮膚接触センサから第1信号を受け取る作業、
b)真空ポンプを起動し真空発生モードを開始させる真空ポンプ・アクチュエータへ第2信号を送る作業、
c)発生真空レベルが痛み信号の伝搬を抑止するのに十分なレベルであれば、真空チャンバ内部と連通する圧力センサから第3信号を受け取る作業、
d)光源の動作をトリガするため、又は光源のトリガを可能にするため、光源制御器へ第4信号を伝搬する作業、
e)光源の非作動化を検出するようにされた光学センサから第5信号を受け取る作業、
f)真空解除モードを開始するために、真空ポンプ・アクチュエータへ第6信号を送る作業に適している、請求項84に記載された装置。
【請求項92】
更に、累積ゲルを洗浄かつ溶解するため、溶解液溜めと流体連通し、かつ真空ポンプ排出部に接続された導管と連通している溶解液ポンプを含む、請求項91に記載された装置。
【請求項93】
前記制御ユニットが、更に真空発生モード及び真空解除モードの予め定めたサイクル数に続いて、溶解液ポンプを起動するために、溶解液ポンプ・アクチュエータへ第7信号を送るようにされている、請求項92に記載された装置。
【請求項94】
前記電磁エネルギーが、タトゥー又は色素沈着病変の除去に適したQスイッチレーザから発せられる光である、請求項73に記載された装置。
【請求項95】
皮膚障害の治療装置において、
a)皮膚ターゲット上に載置可能な真空チャンバが含まれ、該真空チャンバが遠位端に開口を有し、近位端に伝搬部材を備えており、
b)前記真空チャンバに真空を発生させる装置が含まれ、発生させた真空レベルが、前記開口を介して前記真空チャンバに前記皮膚ターゲットを吸引するのに適し、かつ前記皮膚ターゲットの皮膚表面下の血液及び/又は血管の集中度の増大を誘発するのに適しており、
c)前記真空チャンバを介して伝搬され、前記皮膚ターゲットを透過して伝播する光を発するのに適し、かつ前記皮膚ターゲットの皮膚障害を治療するのに適した光源が含まれている、皮膚障害の治療装置。
【請求項96】
皮膚障害の治療装置において、
a)皮膚ターゲット上に載置可能な真空チャンバが含まれ、該真空チャンバが遠位端に開口を有し、近位端に伝搬部材を備えており、
b)前記真空チャンバに真空を発生させる装置が含まれ、発生させた真空レベルが、前記開口を介して前記真空チャンバに前記皮膚ターゲットを吸引するのに適し、かつ前記皮膚ターゲットのスペクトル特性の変化を誘発するのに適しており、
c)前記真空チャンバを介して伝搬され、前記皮膚ターゲットを透過して伝播する光を発するのに適し、かつ前記皮膚ターゲットの皮膚障害を治療するのに適した光源が含まれている、皮膚障害の治療装置。
【請求項97】
更に、方形ビーム・ホモジェナイザが含まれることで、皮膚ターゲットの走査区域の重複及び空隙が防止される、請求項93に記載された装置。
【請求項98】
真空発生モードの持続時間が0.1秒‐6秒の範囲である、請求項91に記載された装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図12】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−289098(P2006−289098A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−109907(P2006−109907)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(505063636)イノラーゼ 2002 リミテッド (1)
【Fターム(参考)】