説明

皮膚外用剤及び飲食品

【課題】天然由来の有効成分を含有し、皮膚外用剤及び飲食品として応用が可能な保湿剤、抗老化剤、美白剤、抗肥満剤及び抗酸化剤を提供する。
【解決手段】ギョウジャニンニクの抽出物を有効成分とする保湿剤、抗老化剤、美白剤、抗肥満剤及び抗酸化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然由来成分を有効成分とする皮膚外用剤及び飲食品、並びに天然由来成分を有効成分とする保湿剤、抗老化剤、美白剤、抗肥満剤及び抗酸化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、人の皮膚の最外層は角層に覆われていて、そこで水分の蒸散が制御されている。皮膚の水分を適切な範囲に保つことは皮膚の健康の面から見て大変重要なことであり、水分が不足すると肌荒れ等を生じやすくなる。そこで、皮膚外用剤においては、肌荒れの防止、改善等の為に、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール類、ピロリドンカルボン酸塩、ヒアルロン酸等の酸性ムコ多糖類、キチン、キトサン及びそれらの誘導体、蛋白加水分解物、植物抽出物及び尿素等の保湿成分が配合されてきた。しかしながら、これらの保湿成分は皮膚表面においてその物質の物理化学的な保湿の性質を利用しているだけであり、その物質の皮膚細胞におよぼす生理的な機能に基づくものではない。また、皮膚外用剤中の配合量が多い場合は、不快なべたつき感を有し、感触が好まれない場合がある。さらに、これらの保湿成分は皮膚より除去されると効果は消失するため、その効果は一過性であると言わざるを得ない。なお、これらのうち、尿素は高い保湿能だけでなく、角質溶解剥離作用や角質柔軟化作用を有する点で好ましいものであるが、その反面、水と反応して分解し易く、分解するとアンモニアと炭酸ガスを生じることから、臭気や安全性の点で問題を生じ易く、また、尿素を配合した皮膚外用剤は特有の刺激感を有する為、使用部位が限定されるという欠点がある。
【0003】
一方、アルギナーゼはアルギニンをオルニチンと尿素に加水分解する酵素で、通常、肝臓においてアンモニアから尿素を生成する尿素回路を構成する酵素の一つであり、表皮においてもアルギナーゼの存在が認められている。すなわち、表皮中のアルギナーゼは表皮細胞の増殖に関連したポリアミン生合成やコラーゲン新生に必要なプロリン生合成のためのオルニチン供給酵素として知られている。したがって、アルギナーゼ活性促進剤によって尿素を皮膚内で生合成させることは、上記の尿素そのものを配合した皮膚外用剤が有する欠点を解消しながら、尿素が有する保湿成分としての優れた効果を備え、さらに該効果の持続性も期待できるので、非常に有用な手段といえる。すなわち、アルギナーゼ活性促進剤は、皮膚細胞に働きかけ、保湿成分の産出を促す保湿剤として効果的に使用できる。優れたアルギナーゼ活性促進剤、ひいては保湿剤の開発が望まれる。
【0004】
皮膚のシワ形成、弾力性低下、荒れ、クスミ等の老化原因としては、種々の原因が考えられる。すなわち、皮膚の真皮及び表皮は、表皮細胞、線維芽細胞およびこれらの細胞の外にあって皮膚構造を支持するエラスチン、コラーゲン、ヒアルロン酸等の細胞外マトリックスによって構成されており、つやがあってみずみずしい状態の皮膚にあっては、これらの皮膚組織の相互作用が恒常性を保つことにより水分保持、柔軟性、弾力性等が確保される。ところが、紫外線、汚染空気、乾燥、過度の皮膚洗浄等の外的因子、及び加齢により、細胞の損傷等が引き起こされる。その結果、皮膚の保護機能や弾力性が低下し、角質が異常剥離を始め、肌はハリやつやを失い、老化症状を呈するようになる。優れた抗老化剤の開発が望まれている。
【0005】
皮膚の黒化の要因として、メラニンが挙げられる。皮膚においてメラニンは、紫外線から生体を保護する役目を果たしているが、局部的な生成や不均一な蓄積により色素が沈着し、皮膚の黒化やしみ・そばかすの原因となる。なお、一般にメラニンは、色素細胞の中で生合成される酵素チロシナーゼの働きによって、チロシンからドーパ、ドーパからドーパキノンに変化し、ついで5,6−ジヒドロキシインドフェノール等の中間体を経て形成されるものとされている。したがって、色素の沈着を予防、改善又は治療するためには、メラニンの産生に関与するチロシナーゼの活性を阻害することが有用である。優れたチロシナーゼ活性阻害剤、ひいては美白剤の開発が望まれている。
【0006】
近年、過剰な食物の摂取、運動不足、ストレスなどが原因で生じる肥満や高脂血症を始めとする様々な疾患は、社会的に大きな問題となっており、このような肥満や疾患を予防・改善するために、様々な方法が従来から検討されている。例えば、食事制限や運動による方法、食物繊維の摂取、脂肪分解促進剤の利用などが挙げられるが、これらは主に既に体内に蓄積された脂肪を減少させる方法であり、根本的な改善としては不十分であると考えられた。これに対し、生体内での脂肪の蓄積を抑制する方法は、体内での脂肪の蓄積を直接的に抑制するため、肥満や疾患の根本的な改善に優れており、また日常的な予防方法としても効果的である。優れた脂肪蓄積抑制剤、ひいては抗肥満剤の開発が望まれている。
【0007】
近年、特に生体成分を酸化させる要因として、活性酸素が注目されており、その生体への悪影響が問題となっている。活性酸素は食細胞の殺菌機構において必須であり、ウィルスやガン細胞の除去に重要な働きをしている。しかしながら、活性酸素の過剰な生成は生体内の膜や組織を構成する生体内分子を攻撃し、各種疾患を誘発する。例えば、活性酸素は、コラーゲン等の生体組織を分解したり、油脂類を酸化して細胞に障害を与える過酸化脂質を生成したりすると考えられており、活性酸素によって引き起こされるこれらの障害が、皮膚のシワ形成及び弾力性低下等の老化原因にもなるものと考えられている。優れた抗酸化剤の開発が望まれている。
【0008】
特許文献1には、ユリ科ネギ属に属するギョウジャニンニクを含む健康食品が記載されており、ギョウジャニンニクは疲労回復、強壮剤的な役割として広く食されており、全草はネギ類同様に体をあたため、血行をよくし利尿、解毒、防腐、殺菌作用があり食欲増進、消化促進など健胃、整腸、強壮の効果があると記載されている。しかしながら、ギョウジャニンニクの抽出物を配合した、保湿剤、抗老化剤、美白剤、抗肥満剤または抗酸化剤に関する報告はない。
【特許文献1】特開昭64−2553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、表皮細胞におけるアルギナーゼ活性促進により、皮膚を保湿することができると考えられている。また、細胞活性の賦活化により、皮膚のシワの形成や弾力性低下等の皮膚の老化を予防・改善できるものと考えられている。また、チロシナーゼの活性阻害作用により、皮膚に対する美白作用を有すると考えられている。さらに、脂肪細胞の蓄積の抑制が肥満や高脂血症等の疾患に有用であると考えられている。さらに、活性酸素の阻害・抑制が有用であり、例えば皮膚の老化を予防・改善できるものと考えられている。
【0010】
そこで、本発明は、第一に、天然物の中から、表皮細胞におけるアルギナーゼ活性促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とした保湿剤を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、第二に、天然物の中から、細胞賦活作用を有するものを見出し、それを有効成分とした抗老化剤を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、第三に、天然物の中から、チロシナーゼ活性阻害作用を有するものを見出し、それを有効成分とした美白剤を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、第四に、天然物の中から、脂肪蓄積抑制作用を有するものを見出し、それを有効成分とした抗肥満剤を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、第五に、天然物の中から、活性酸素の阻害・抑制作用を有するものを見出し、それを有効成分とした抗酸化剤を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、上述の保湿剤、抗老化剤、美白剤、抗肥満剤または抗酸化剤を含有する皮膚外用剤または飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、皮膚外用剤や飲食品に適用可能な天然由来の種々の成分について検討を行った。その結果、ギョウジャニンニクの抽出物に優れた保湿作用、抗老化作用、美白作用、抗肥満作用及び抗酸化作用を見出し、さらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、ギョウジャニンニクの抽出物を有効成分とする保湿剤、抗老化剤、美白剤、抗肥満剤及び抗酸化剤を提供するものである。また、本発明は前記保湿剤、抗老化剤、美白剤、抗肥満剤及び抗酸化剤の少なくともいずれか一つを含有する皮膚外用剤または飲食品である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、優れた効果を有する保湿剤、抗老化剤、美白剤、抗肥満剤及び抗酸化剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明において、「ギョウジャニンニクの抽出物」としては、ユリ科ネギ属に属するギョウジャニンニク(Allium victorialis ssp. platyphyllum)をそのまま粉砕して使用する場合も含まれるが、ギョウジャニンニクを抽出原料として得られる抽出液、該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、またはこれらの粗精製物もしくは精製物が好ましく用いられる。
【0019】
ギョウジャニンニクの抽出物に用いる構成部位は特に限定されるものではなく、例えば葉、根、種子、茎、花等の構成部位を抽出原料として用いることができる。簡便に利用するには、葉、茎、種子を用いるとよい。抽出の際は、生のまま用いてもよいが、抽出効率を考えると、細切、乾燥、粉砕等の処理を行った後に抽出を行うことが好ましい。抽出は、抽出溶媒に浸漬するか、超臨界流体や亜臨界流体を用いた抽出方法でも行うことができる。抽出効率を上げるため、撹拌や抽出溶媒中でホモジナイズしてもよい。抽出温度としては、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下の範囲の温度とするのが適切である。抽出時間は抽出溶媒の種類や抽出温度によって異なるが、例えば1時間〜14日間程度とすることができる。
【0020】
抽出溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノール等の低級アルコール、1、3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びグリセリン等の多価アルコール、エチルエーテル及びプロピルエーテル等のエーテル類、酢酸ブチル及び酢酸エチル等のエステル類、アセトン及びエチルメチルケトン等のケトン類、水などの溶媒を用いることができ、これらより1種又は2種以上を選択して用いることができる。また、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。さらに、水や二酸化炭素、エチレン、プロピレン、エタノール、メタノール、アンモニアなどの1種又は2種以上の超臨界流体や亜臨界流体を用いてもよい。
【0021】
ギョウジャニンニクの上記溶媒による抽出物は、そのままでも使用することができるが、濃縮し、又は濃縮乾固し、これを水や極性溶媒に再度溶解して使用することもできる。また、生理作用を損なわない範囲で、抽出物を脱色、脱臭、脱塩等の精製処理やカラムクロマトグラフィー等による分画処理を施し用いてもよい。ギョウジャニンニクの前記抽出物、その処理物及びその分画物は、各処理及び分画後に凍結乾燥し、用時に溶媒に溶解して用いることもできる。
【0022】
ギョウジャニンニクの抽出物は、優れた保湿作用、抗老化作用、美白作用、抗肥満作用、または抗酸化作用を有し、保湿剤、抗老化剤、美白剤、抗肥満剤または抗酸化剤として使用することができる。ギョウジャニンニクの抽出物の保湿作用は、例えば表皮角化細胞のアルギナーゼ活性促進作用に基づいて発揮される。したがって、ギョウジャニンニクの抽出物は、アルギナーゼ活性促進剤の有効成分として利用することもでき、特に皮膚の保湿用に利用することができる。
【0023】
ギョウジャニンニクの抽出物の抗老化作用は、例えば、真皮線維芽細胞賦活作用に基づいて発揮される。したがって、ギョウジャニンニクの抽出物は、細胞賦活剤の有効成分として利用することもでき、特に皮膚の抗老化用に利用することができる。
【0024】
ギョウジャニンニクの抽出物の美白作用は、例えば、チロシナーゼ活性阻害作用に基づいて発揮される。したがって、ギョウジャニンニクの抽出物は、チロシナーゼ活性阻害剤の有効成分として利用することもできる。
【0025】
ギョウジャニンニクの抽出物の抗肥満作用は、例えば、中性脂肪蓄積抑制作用に基づいて発揮される。したがって、ギョウジャニンニクの抽出物は、中性脂肪蓄積抑制剤の有効成分として利用することもできる。
【0026】
ギョウジャニンニクの抽出物の抗酸化作用は、例えば、活性酸素消去作用及び/又はラジカル消去作用に基づいて発揮される。ただし、ギョウジャニンニクの抽出物の抗酸化作用は上記作用に基づいて発揮される抗酸化作用に限定されるわけではない。ここで、「活性酸素」には、スーパーオキサイド、過酸化脂質、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、一重項酸素等が含まれる。また、「ラジカル」とは、不対電子を一つまたはそれ以上有する分子または原子を意味し、スーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル、DPPH等が含まれる。なお、ギョウジャニンニクの抽出物は、活性酸素消去作用、ラジカル消去作用を有しているので、活性酸素消去剤またはラジカル消去剤の有効成分として利用することもできる。
【0027】
ギョウジャニンニクの抽出物は、保湿作用を有し、皮膚の老化の防止・改善に有用であり、美白作用、抗酸化作用を有し、脂肪蓄積抑制作用を有するとともに、皮膚に適用した場合の使用感と安全性に優れているため、皮膚外用剤に配合するのに好適である。
【0028】
ギョウジャニンニクの抽出物を配合し得る皮膚外用剤の剤型は特に限定されないが、その具体例としては、ローションなどの可溶化系、クリームや乳液などの乳化系、カラミンローション等の分散系、噴射剤と共に充填したエアゾール、軟膏剤、粉末、顆粒等が挙げられる。皮膚外用剤の具体例としては、ローション、乳液、クリーム、オイル、パックボディーソープまたは浴用剤等が挙げられ、毛髪に適用することも可能であることから、シャンプー、リンス、ヘアートニック、ヘアーリキッド等が挙げられる。
【0029】
ギョウジャニンニクの抽出物を皮膚外用剤に配合する際の配合量は、皮膚外用剤の種類や使用目的等によって調整することができるが、効果や安定性などの点から、全量に対して0.0001〜50.0質量%が好ましく、より好ましくは、0.001〜25.0質量%である。
【0030】
なお、ギョウジャニンニクの抽出物を配合する皮膚外用剤には、前記抽出物の他に、必要に応じて、通常、医薬品、医薬部外品、皮膚化粧料、毛髪用化粧料及び洗浄料に配合される、油性成分、粉体、色素、乳化剤、可溶化剤、洗浄剤、紫外線吸収剤、増粘剤、薬剤、香料、樹脂、防菌防黴剤、アルコール類等を適宜配合することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲において、他の保湿剤、抗老化剤、美白剤、抗肥満剤または抗酸化剤との併用も可能である。
【0031】
また、ギョウジャニンニクの抽出物を有効成分とする保湿剤、抗老化剤、美白剤、抗肥満剤または抗酸化剤は、皮膚や毛髪に外用するだけではなく、経口摂取も可能であることより、任意の飲食品、または医薬品に応用することも可能である。ここでいう飲食品には、機能性食品及び栄養補助食品も含まれる。
【0032】
ギョウジャニンニクの抽出物を配合し得る飲食品は特に限定されないが、その具体例としては、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液および調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂および油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、サラダ、惣菜、漬物などが挙げられる。
【0033】
本発明の飲食品を栄養補助食品あるいは機能性食品として用いる場合、その形態は特に限定されないが、例えば蛋白質(蛋白質源としてはアミノ酸バランスのとれた栄養価の高い乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミン等の蛋白質が最も広く使用されるが、これらの分解物、卵白のオリゴペプチド、大豆加水分解物等の他、アミノ酸単体の混合物も使用される)、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料等が配合された自然流動食、半消化態栄養食および成分栄養食や、ドリンク剤、カプセル剤等の加工形態であってもよい。スポーツドリンクあるいは栄養ドリンクとして提供する場合は、栄養バランスを整え、かつ摂取時の風味を一層よくするため、易消化性の含水炭素、アミノ酸、ビタミン類、ミネラル類等の栄養的添加物や甘味料、香辛料、香料、色素等を配合することもできる。
【0034】
本発明の栄養補助食品あるいは機能性食品の形態は、これらに限定されるものではなく、上記の一般の飲食品の形態であってもよいが、できれば単位服用形態にあることが望ましい。
【0035】
以上説明した本発明の保湿剤、抗老化剤、美白剤、抗肥満剤、または抗酸化剤、ならびに上述の皮膚外用剤、及び飲食品は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例】
【0036】
以下に、ギョウジャニンニクの抽出物の製造例、各作用を評価するための試験についてさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれによってなんら限定されるものではない。
【0037】
[製造例1:エタノール抽出物]
ギョウジャニンニクの葉を乾燥させて粉砕し、かかる粉砕物の質量の20倍量の50質量%エタノール水溶液を加え、室温にて攪拌しながら2時間抽出した後、吸引ろ過を行った。ろ液を、エバポレーターにて減圧濃縮し、凍結乾燥したものを製造例1のギョウジャニンニク抽出物として使用した。
【0038】
[製造例2:熱水抽出物]
ギョウジャニンニクの葉を乾燥させて粉砕し、かかる粉砕物の質量の20倍量の精製水を加えてオートグレーブ用い120℃で20分間抽出した。温度の高い状態を保って吸引ろ過後、凍結乾燥したものを製造例2のギョウジャニンニク抽出物として使用した。
【0039】
[作用評価]
1. 表皮角化細胞アルギナーゼ活性促進作用の評価
表皮角化細胞アルギナーゼ活性促進作用の評価は、以下の手順で行った。試料として、製造例1により製造したギョウジャニンニク抽出物を用いた。
【0040】
ヒト表皮角化細胞HaCaTを1穴当り2.0×10個となるように96穴マイクロプレートに播種した。播種培地には5質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いた。24時間培養後、1.2 mM CaCl2を含む5質量%FBS添加DMEM(分化誘導培地)によって表1に記載の各濃度に調製した試料培養液に交換し、さらに9日間培養した。培地交換は3日に1回のペースで行った。培養上清中に分泌された尿素の定量には、尿素窒素 B-テストワコー(和光純薬)を用いた。アルギナーゼはアルギニンを加水分解し、オルニチン、尿素を生成する。尿素はウレアーゼによってアンモニアに分解され、アンモニアはペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウム二水和物(ニトロプルシッドナトリウム)存在下でサリチル酸、次亜塩素酸と反応し、インドフェノールが生成する。アルカリ性条件下でマイクロプレートリーダーにてインドフェノールに由来する570nmの吸光度を測定し、尿素濃度を求め、アルギナーゼ活性の定量を行った。PIERCE社製BCA Protein Assay Kitにてタンパク質量を測定し、単位タンパク質量当りのアルギナーゼ活性を求めた。評価結果を試料無添加のコントロールにおける単位タンパク質量当りのアルギナーゼ活性を100とした相対値にて表1に示す。かかる評価についてt検定を行った。その結果についても表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1より明らかなように、ギョウジャニンニク抽出物を添加した培地を用いた場合、コントロールと比較して有意な表皮角化細胞アルギナーゼ活性促進作用が認められた。このことから、ギョウジャニンニク抽出物は、優れた表皮角化細胞アルギナーゼ活性促進作用を有すること、ひいては保湿作用を有することが明らかとなった。
【0043】
2.真皮線維芽細胞賦活作用の評価
真皮線維芽細胞賦活作用の評価は、以下の手順で行った。試料として、製造例1により製造したギョウジャニンニク抽出物を用いた。
【0044】
正常ヒト真皮線維芽細胞を1穴当たり2.0×10個となるように96穴マイクロプレートに播種した。播種培地には、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に1質量%のウシ胎児血清を添加したものを用いた。24時間培養後、1質量%FBS添加DMEM培地にてギョウジャニンニク抽出物が表2記載の各濃度となるように調製した試験培地に交換し、さらに48時間培養した。次いで、上清を除き、3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)を400μg/mL含有する培地に交換して2時間培養し、テトラゾリウム環の開環により生じるフォルマザンを2−プロパノールにて抽出し、マイクロプレートリーダーにて550nmの吸光度を測定した。同時に濁度として650nmにおける吸光度を測定し、両測定値の差により細胞賦活作用を評価した。評価結果を、試料無添加のコントロールにおける細胞賦活作用を100とした相対値にて表2に示す。かかる評価についてt検定を行った。その結果についても表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
表2より明らかなように、ギョウジャニンニク抽出物を添加した培地を用いた場合、コントロールと比較して有意な真皮線維芽細胞賦活作用が認められた。このことから、ギョウジャニンニク抽出物は、優れた真皮線維芽細胞賦活作用を有すること、ひいては抗老化作用を有することが明らかとなった。
【0047】
3.ヒト表皮メラニン細胞チロシナーゼ活性阻害作用の評価
ギョウジャニンニク抽出物のヒト表皮メラニン細胞チロシナーゼ活性阻害作用の評価を以下に示す方法にて行った。試料として、製造例2により製造したギョウジャニンニク抽出物を用いた。
【0048】
正常ヒト表皮メラニン細胞(クラボウ社製)を1穴当り3.0×104個となるように96穴マイクロプレートに播種した。播種培地はMedium 154S(クラボウ社製)を用いた。24時間後、表3記載の各濃度で試料を添加したMedium 154Sに交換し、さらに48時間培養した。次に1質量%Triton-Xを含有するリン酸緩衝液75 μlに交換し、細胞を完全に溶解させ、内50 mlを粗酵素液として使用した。粗酵素液に基質となる50 μlの0.05質量%L-ドーパ含有リン酸緩衝液を加え、37℃で2時間静置した。マイクロプレートリーダーにて基質添加直後と反応終了時の405 nmの吸光度を測定し、生成されたドーパメラニン量は両測定値の差を次式に導入して求めた。
【0049】
ドーパメラニン生成量={(反応後405 nm値 − 反応前405 nm値)− 2.166} / 5.238
また、PIERCE社製BCA Protein Assay Kitにてタンパク質量を測定し、単位タンパク質量あたりのメラニン生成量を求めた。評価結果を試料無添加のコントロールにおける単位タンパク質量あたりのメラニン生成量を100とした時の相対値にて表3に示す。かかる評価についてt検定を行った。その結果についても表3に示す
【0050】
【表3】

【0051】
表3に示す結果より、ギョウジャニンニク抽出物を添加した培地を用いた場合、コントロールと比較して濃度依存的にメラニン生成量が抑制されていること、ひいてはチロシナーゼ活性阻害作用を有することがわかった。すなわち、ギョウジャニンニク抽出物は美白成分として有用である。
【0052】
4.正常ヒト前駆脂肪細胞を用いた中性脂肪蓄積抑制作用の評価
中性脂肪蓄積抑制作用の評価は、以下の手順で行った。試料として、製造例2により製造したギョウジャニンニク抽出物を用いた。
【0053】
皮下脂肪由来正常ヒト前駆脂肪細胞Cryo HPRAD-SQ(三光純薬株式会社製)を1穴当り5.0×10個となるように96穴マイクロプレートに播種した。播種培地にはPGM培地(10質量%FBS,2mM L-グルタミン,100単位/mL ペニシリン,100μg/mL ストレプトマイシン含有)を用いた。2日間培養後、表4の濃度となるように試料を添加したPGM-分化用培地(10μg/mL インシュリン,1μM デキサメタゾン,200μM インドメタシン,500μM イソブチル-メチルキサンチン含有)に交換し、脂肪細胞への分化誘導を行った。分化誘導開始後、コントロール群(試料添加せず)が成熟して細胞内に多数の脂肪滴が蓄積されるまで、10日〜14日間培養した。細胞を回収後、10質量%中性緩衝ホルムアルデヒド液を用いて細胞を固定した。PBS(-)にて洗浄の後、0.5w/v%オイルレッドO溶液を添加し、37℃で2時間培養した。PBS(-)にて洗浄の後、メタノールを添加し、色素を抽出した。マイクロプレートリーダーにて550nmの吸光度を測定した。同時に濁度として650nmの吸光度を測定し、両測定値の差を用いて中性脂肪蓄積量を評価した。評価ではコントロール群における蓄積脂肪量を100とした時の相対値を求めて行った。表4にその結果を示す。また、かかる蓄積脂肪量についてt検定を行った結果を表4に示す。
【0054】
【表4】

【0055】
表4より明らかなように、ギョウジャニンニク抽出物によると、有意に中性脂肪の蓄積が抑制されることがわかった。したがって、ギョウジャニンニク抽出物は、抗肥満作用、痩身作用に寄与しうる。
【0056】
5.DPPHラジカル消去能の評価
DPPHラジカル消去能の評価を以下に示す方法にて行った。試料として、製造例1により製造したギョウジャニンニク抽出物を用いた。
【0057】
表5記載の各濃度となるように試料を添加した50質量%エタノール水溶液を、96穴マイクロプレートに100 μlずつ添加した。そこへ、0.2 mMの1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)エタノール溶液を100 μlずつ添加し良く混合した後、室温、暗所にて24時間静置した。最後にDPPHラジカルに由来する516 nmの吸光度を測定した。試料を添加しなかった場合の吸光度を(A)、試料を添加した場合の吸光度を(B)としたとき、DPPHラジカルの消去率は次式に定義される。
【0058】
ラジカル消去率={1 −(B)/(A)}×100
上式によって求めたラジカル消去率を表5に示す。
【0059】
【表5】

【0060】
表5に示す結果より、ギョウジャニンニク抽出物はDPPHラジカル消去作用を有すること、ひいては抗酸化作用を有することがわかった。
【0061】
6.SOD(スーパーオキサイドアニオン)消去能の評価
スーパーオキサイドアニオン消去能の評価を以下に示す方法にて行った。試料として、製造例1により製造したギョウジャニンニク抽出物を用いた。
【0062】
0.25 mM WST-1及び 1 mM ヒポキサンチンを含むHANK’S(+)溶液 75μLに、HANK’S(+)溶液にて表6の各濃度に調製した試料溶液25 μLを添加した。更に、キサンチン酸化酵素25μL(0.0075単位)を添加し、37℃で15分間反応後、450 nmの吸光度を測定した。試料溶液にかえてHANK’S(+)のみを添加した場合の吸光度を(A)、試料溶液を添加した場合の吸光度を(B)としたとき、スーパーオキサイドアニオン消去率は次式によって求められる。
【0063】
消去率(%)={1−(B)/(A)}×100
上式によって求めたスーパーオキサイドアニオン消去率を表6に示す。また、かかる消去率についてt検定を行った結果を表6に示す。
【0064】
【表6】

【0065】
表6より明らかなように、ギョウジャニンニク抽出物は濃度依存的にスーパーオキサイドアニオン消去作用を有すること、ひいては抗酸化作用を有することがわかった。
【0066】
7.表皮角化細胞の過酸化脂質耐性試験
表皮角化細胞の過酸化脂質耐性試験は、以下の手順で行った。試料として、製造例1により製造したギョウジャニンニク抽出物を用いた。
【0067】
ヒト表皮細胞株HaCaTを1穴当り2.0×10個となるように96穴マイクロプレートに播種した。播種培地にはダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に10質量%のウシ胎児血清(FBS)を添加したものを用いた。24時間後、10質量%FBS添加DMEM培地にて試料を表7に記載の各濃度に調製した試験培養液に交換しさらに24時間培養した。任意濃度のt−ブチルヒドロペルオキシドを添加したHanks(+)溶液に交換し2時間培養した。更に、150μg/mlニュートラルレッドを含有するPBS(-) に交換し37℃で2時間培養した。次に1質量%酢酸を含む50質量%エタノール水溶液に交換し、細胞内に取りこまれたニュートラルレッドを抽出し、抽出液の540nmの吸光度を測定した。得られた結果を、t−ブチルヒドロペルオキシドを添加していないコントロールの細胞生存率を100としたときの相対値により表7に示す。また、かかる細胞生存率についてt検定を行った結果を表7に示す。
【0068】
【表7】

【0069】
表7より、ギョウジャニンニク抽出物は、0.25mg/mlで有意に過酸化脂質耐性を示し、高い抗酸化作用が示された。
【0070】
続いて、本発明に係るギョウジャニンニク抽出物を配合した皮膚外用剤の処方例を示す。以下の処方例において、各成分の配合量は質量%で表す。
【0071】
<処方例1:皮膚用ローション>
(1)グリセリン10.0、(2)乳酸ナトリウム0.5、(3)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)0.2、(4)ギョウジャニンニク抽出物(製造例1による抽出物)0.2、(5)精製水 残余
(製法)(1)〜(4)の成分を混合し、均一化した後、(5)を加え均一に撹拌し、皮膚用ローションを得た。
【0072】
<処方例2:皮膚用ローション>
(1)エタノール10.0、(2)1質量%ヒドロキシエチルセルロース水溶液20.0、(3)ギョウジャニンニク抽出物(製造例1による抽出物)0.1、(4)グリセリン7.0、(5)グアイアズレンスルホン酸ナトリウム0.5、(6)精製水 残余
(製法)(1)〜(6)を混合した後、均一とし皮膚用ローションを得た。
【0073】
<処方例3:美容液>
油相成分:(1)スクワラン5.0、(2)白色ワセリン2.0、(3)ミツロウ0.5、(4)ソルビタンセスキオレート0.8、(5)ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.)1.2、
水相成分:(6)プロピレングリコール5.0、(7)精製水 全体を100とした残余、(8)1質量%カルボキシビニルポリマー水溶液20.0、(9)ギョウジャニンニク抽出物(製造例1による抽出物)0.5、(10)10質量%水酸化カリウム水溶液1.0、(11)エタノール5.0、(12)香料0.2
(製法)(1)〜(5)の油相成分を混合し、75℃に加熱して溶解、均一化した。一方、(6)〜(8)の水相成分を混合、溶解して75℃に加熱し、前記油相成分を添加して予備乳化し、(10)を加えてpHを調整した後、ホモミキサーにて乳化した。冷却後40℃にて(11)、(9)及び(12)を添加、混合して美容液を得た。
【0074】
<処方例4:皮膚用乳剤>
油相成分:(1)ステアリン酸0.2、(2)セタノール1.5、(3)ワセリン3.0、(4)流動パラフィン7.0、(5)ポリオキシエチレン(10E.O.)モノオレイン酸エステル1.5、(6)乳酸菌抽出物0.5
水相成分:(7)グリセリン5.0、(8)トリエタノールアミン0.1、(9)ギョウジャニンニク抽出物(製造例1による抽出物)0.3、(10)精製水 残余
(製法)(1)〜(6)の油相成分を混合、加熱して均一に溶解し、70℃に保った。一方、(7)〜(8)、(10)の水相成分を混合、加熱して均一とし、70℃とした。この水相成分に前記油相成分を撹拌しながら徐々に添加して乳化し、冷却後45℃で(9)を加え皮膚用乳液を得た。
【0075】
<処方例5:皮膚用ゲル剤>
(1)1質量%カルボキシビニルポリマー水溶液50.0、(2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.)0.5、(3)ギョウジャニンニク抽出物(製造例2による抽出物)0.5、(4)ジプロピレングリコール8.0、(5)10質量%水酸化カリウム水溶液1.0、(6)精製水 残余
(製法)(1)に(2)〜(4)を均一に溶解したものを加え均一に撹拌した。これに(5)を(6)に溶解した水溶液を添加し、増粘させて皮膚用ゲル剤を得た。
【0076】
<処方例6:皮膚用クリーム>
油相成分:(1)ミツロウ6.0、(2)セタノール1.5、(3)還元ラノリン8.0、(4)スクワラン29.5、(5)親油型モノステアリン酸グリセリド4.0、(6)モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)5.0
水相成分:(7)プロピレングリコール5.0、(8)ギョウジャニンニク抽出物(製造例1による抽出物)0.5、(9)精製水 残余
(製法)(1)〜(6)の油相成分を混合、溶解して75℃に加熱した。一方、(7)、(9)の水相成分を混合、溶解して75℃に加熱した。次いで、上記水相成分に油相成分を添加して予備乳化した後、ホモミキサーにて均一に乳化し冷却後45℃にして(8)を添加し、皮膚用クリームを得た。
【0077】
<処方例7:水中油型乳剤性軟膏>
油相成分:(1)白色ワセリン25.0、(2)ステアリルアルコール25.0、(3)グリセリン10.0、(4)ラウリル硫酸ナトリウム1.0
水相成分:(5)ギョウジャニンニク抽出物(製造例1による抽出物)0.5、(6)精製水 残余
(製法)(1)〜(4)の油相成分を混合、溶解して均一とし、75℃に加熱する。そして、75℃に加熱した(6)に前記油相成分を添加して乳化し、冷却後45℃にして(5)を添加して、水中油型乳剤性軟膏を得た。
【0078】
<処方例8:化粧水>
(1)エタノール10.0、(2)1,3−ブチレングリコール5.0、(3)ギョウジャニンニク抽出物(製造例2による抽出物)10.0、(4)グリチルリチン酸ジカリウム0.5、(5)香料0.1、(6)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)0.2、(7)精製水 残余
(製法)(1)、(2)、(6)、(5)を均一に溶解し、その後(4)を溶解した(7)を加え、(3)を添加して均一に混合、溶解し化粧水を得た。
【0079】
<処方例9:メイクアップベースクリーム>
油相成分:(1)ステアリン酸1.2、(2)セタノール2.0、(3)トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル2.5、(4)自己乳化型モノステアリン酸グリセリド2.0
水相成分:(5)プロピレングリコール10.0、(6)10質量%水酸化カリウム水溶液1.5、(7)ギョウジャニンニク抽出物(製造例1による抽出物)0.3、(8)精製水 全体を100とした残余
顔料成分等:(9)酸化チタン1.0、(10)ベンガラ0.1、(11)黄酸化鉄0.4、(12)香料0.1
(製法)(1)〜(4)の油相成分を混合し、75℃に加熱して均一とした。一方、(5)、(6)、(8)の成分を混合し、75℃に加熱、溶解して均一とし、これに(9)〜(11)の顔料を添加し、ホモミキサーにて均一に分散させて水相成分とした。この水相成分に前記油相成分を添加し、ホモミキサーにて乳化した後冷却し、40℃にて(12)、(7)の成分を添加、混合しメイクアップベースクリームを得た。
【0080】
<処方例10:乳液状ファンデーション>
油相成分:(1)ステアリン酸2.0、(2)スクワラン5.0、(3)ミリスチン酸オクチルドデシル5.0、(4)セタノール1.0、(5)モノステアリン酸グリセリド1.0
水相成分:(6)1,3−ブチレングリコール8.0、(7)10質量%水酸化カリウム水溶液1.0、(8)ギョウジャニンニク抽出物(製造例1による抽出物)0.3、(9)精製水 全体を100とした残余
顔料成分等:(10)酸化チタン9.0、(11)タルク7.4、(12)ベンガラ0.5、(13)黄酸化鉄1.1、(14)黒酸化鉄0.1、(15)香料0.1
(製法)(1)〜(5)の油相成分を混合し、75℃に加熱して均一とした。一方、(6)、(7)、(9)の水相成分を混合し、75℃に加熱、溶解して均一とし、これに(10)〜(14)の顔料を添加し、ホモミキサーにて均一に分散させた後冷却し、40℃にて(15)及び(8)を加え乳液状ファンデーションを得た。
【0081】
<処方例11:ハンドクリーム>
油相成分:セタノール1.5、(2)ワセリン2.0、(3)流動パラフィン10.0、(4)モノステアリン酸グリセリド1.5、(5)イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(60E.O.)2.5、(6)酢酸トコフェロール0.5
水相成分:(7)グリセリン20.0、(8)パラオキシ安息香酸メチル0.1、(9)ギョウジャニンニク抽出物(製造例1による抽出物)0.5、(10)精製水 残余
(製法)(1)〜(6)の油相成分を混合、溶解して75℃に加熱した。一方、(7)、(8)、(10)の水相成分を混合、溶解して75℃に加熱した。ついで、水相成分に油相成分を添加して予備乳化した後、ホモミキサーにて均一に乳化し、その後40℃まで冷却し、(9)を加え、ハンドクリームを得た。
【0082】
<処方例12:ヘアローション>
(1)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.)0.2、(2)ギョウジャニンニク抽出物(製造例1による抽出物)5.0、(3)香料0.1、(4)エタノール50.0、(5)パンテノール0.5、(6)1,3−ブチレングリコール5.0、(7)精製水 残余
(製法)(1)に(2)、(3)を溶解した後、(4)を加え均一に溶解する。これに、(5)〜(7)の成分を均一にしたものを加え、均一になるまで撹拌し、ヘアローションを得た。
【0083】
<処方例13:マッサージゲル>
(1)ジプロピレングリコール7.0、(2)グリセリン8.0、(3)ポリオキシエチレン(15E.O.)オレイルエーテル0.5、(4)1質量%カルボキシビニルポリマー水溶液40.0、(5)1質量%メチルセルロース水溶液20.0、(6)ギョウジャニンニク抽出物(製造例2による抽出物)0.3、(7)10質量%水酸化カリウム水溶液1.0、(8)精製水 残余
(製法)(1)、(2)、(3)、(6)を均一に溶解後、(4)、(5)を加え均一にする。その後、(8)を加え均一化後、(7)を加えて増粘させてマッサージゲルを得た。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の保湿剤、抗老化剤、美白剤、抗肥満剤及び抗酸化剤は、皮膚化粧料、毛髪用化粧料又は洗浄料等の皮膚外用剤、飲食品、医薬品、医薬部外品に配合して用いるのに有用である。また、本発明に係るギョウジャニンニクの抽出物は、天然由来の成分であることもあり、安全性が高いことが予測され、皮膚外用剤及び飲食品の素材としての意義も大きく、したがって本発明は、新たな皮膚外用剤及び飲食品として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギョウジャニンニクの抽出物を有効成分とする保湿剤。
【請求項2】
ギョウジャニンニクの抽出物を有効成分とする抗老化剤。
【請求項3】
ギョウジャニンニクの抽出物を有効成分とする美白剤。
【請求項4】
ギョウジャニンニクの抽出物を有効成分とする抗肥満剤。
【請求項5】
ギョウジャニンニクの抽出物を有効成分とする抗酸化剤。
【請求項6】
請求項1に記載の保湿剤、請求項2に記載の抗老化剤、請求項3に記載の美白剤、請求項4に記載の抗肥満剤、または請求項5に記載の抗酸化剤を含有する皮膚外用剤。
【請求項7】
請求項1に記載の保湿剤、請求項2に記載の抗老化剤、請求項3に記載の美白剤、請求項4に記載の抗肥満剤、または請求項5に記載の抗酸化剤を含有する飲食品。

【公開番号】特開2008−231055(P2008−231055A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75171(P2007−75171)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000135324)株式会社ノエビア (258)
【Fターム(参考)】