説明

皮膚外用剤

【課題】紫外線、活性酸素、加齢等による皮膚組織中の細胞外マトリックス成分の減少を回復させ、皮膚組織の機能を改善し、シワ、肌荒れ等の皮膚トラブルの改善や皮膚損傷の回復に有用な皮膚外用剤の提供。
【解決手段】ツバキ科ツバキ属に属するツバキ(Camellia japonica)の実及び/又は種子の脱脂粕の水性成分を有効成分として含有してなる皮膚外用剤。該皮膚外用剤は、皮膚の繊維芽細胞増殖促進作用、コラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生増強作用、又は、皮膚の老化防止作用を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツバキ科ツバキ属に属するツバキ(Camellia japonica)の実及び/又は種子の脱脂粕の水性成分を有効成分として含有してなる皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、その構成上、表皮、真皮及び皮下組織から成り立っている。表皮は、外界と接し、角質層、顆粒層、有棘層及び基底層から構成され、基底層で産生された角化細胞(ケラチノサイト)が分裂を繰り返しながら有棘細胞、顆粒細胞を経て角質細胞となって皮膚表面を覆い、古くなった角質細胞は垢となって剥離する。角化細胞が基底層から角質層に達するまでの時間(約14日間)及び角質細胞として皮膚表面を保護する期間(約14日間)の合計を、皮膚の新陳代謝としてターンオーバーという。真皮組織は、表皮とは異なり細胞が少なく、主にコラーゲンやエラスチン等の蛋白質、ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸等のムコ多糖類といった細胞外成分で占められており、マトリックス構造を形成して細胞及び皮膚組織の支持、細胞間隙における保水、皮膚の潤滑性と柔軟性の保持、紫外線、乾燥環境、機械的刺激や損傷、微生物感染等の外的因子から皮膚組織を保護する等の役割を担っている。これらの細胞外成分は繊維芽細胞により産生される(非特許文献1)。
【0003】
繊維芽細胞によって産生される前記細胞外マトリックス成分は、日常的に、活性酸素や微生物の影響あるいは紫外線照射を受けて変性し分解されて、肌のシワ、シミ、ソバカス、かさつき、肌荒れ等の皮膚トラブルを誘発する。又、加齢にともない生体の諸機能が低下し、組織は老化し、皮膚組織中のヒアルロン酸等の細胞外成分の含量も減少することが知られている(非特許文献2)。皮膚組織中のヒアルロン酸やコラーゲン等の含量が減少すると、乾燥肌、肌荒れ、弾力性や柔軟性の低下、張りや艶の減少、シワ・たるみ・くすみの増加等の皮膚トラブルや肌の老化症状をひき起こす。したがって、健康な肌を保つためには前記細胞外マトリックス成分を補給することが必要であり、このためには真皮組織中の前記成分産生細胞である繊維芽細胞を活性化させることが望ましい。
【0004】
皮膚繊維芽細胞の活性化物質を探索する試みは従来から検討され、これまでにハイビスカス抽出物(特許文献1)、L−アスコルビン酸及びその誘導体(特許文献2)、アーモンド、セイヨウタンポポ、センブリ、ホップ等の抽出物(特許文献3)、コラーゲン加水分解トリペプチド(特許文献4)、ゲンクワニンを含有するローズマリー抽出物(特許文献5)、α−D−グルコピラノシルグリセロール(特許文献6)、特定アミノ酸配列を有するポリペプチド(特許文献7)等が提案されている。
【0005】
これら成分や抽出物は、例えば、化粧品や飲食品に配合して利用される可能性が開示されているが、化粧品用途に利用する場合は、併用する他の原料や成分との共存安定性に欠けるものが少なくなく、経皮吸収の点で難点を有するものもあるため、前記皮膚トラブルに対する実用的効果が十分に発揮されず、皮膚組織の生理的機能を本質的に改善するものではなかった。又、飲食品用途に利用する場合は、胃腸内で変質や分解を受けるリスクがあり、実用面において有効性を発現し得るものは数少なかった。更には、併用する原料や成分によっては実用製品の色調、風味、物性等に影響を及ぼし、安定性や使用面、コスト面等の点でも必ずしも十分に満足できるものではなかったのが実情である。したがって、前記皮膚トラブルを改善し得る実効性のある素材が求められていた。
【0006】
後述するツバキについては次のようなことが知られている。すなわち、ツバキは古来より観賞用園芸植物として利用されてきた歴史があり、種子から採取した油脂は燃料油、整髪料、高級食用油等に、木部は灰化して日本酒の醸造に、又、実の脱脂粕は農作物の肥料等に利用されてきた。脱脂粕にはサポニンやタンニンが含まれ、これを加工して殺虫防虫剤(特許文献8)、農園芸用線虫防除剤(特許文献9)等となす提案もある。しかしながら、ツバキの実及び/又は種子の脱脂粕に含まれる成分を皮膚改善のために用いる例は見当たらない。
【0007】
【特許文献1】特開平9−295928号公報
【特許文献2】特表平10−509735号公報
【特許文献3】特開平10−36279号公報
【特許文献4】特開2002−255847号公報
【特許文献5】特開2004−137217号公報
【特許文献6】特開2004−331578号公報
【特許文献7】特開2006−265221号公報
【特許文献8】特許第170071号明細書
【特許文献9】特開平9−30916号公報
【非特許文献1】服部道広、「スキンケアの科学」、第6頁〜第14頁及び第15頁〜第83頁、(株)裳華房、1997年2月25日発行
【非特許文献2】Maria O.Longas等、“Evidence for structural change in dermatan sulfate and hyaluronic acid with aging”(オランダ)、1987年、Carbohydr.Res.、第159巻、第127頁〜第136頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
かかる現状に鑑み、本発明者らは、紫外線、活性酸素、加齢等を起因とする代謝機能の低下によってもたらされる皮膚組織中の前記細胞外マトリックス成分含量の低減を回復させ、皮膚組織の機能を改善し、皮膚の前記トラブルを予防及び/又は改善するための、安全かつ安定な素材を開発し、これを利用した皮膚外用剤を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明者らは、皮膚組織中の前記細胞外マトリックス成分の代謝機構とその産生を促進する素材について鋭意検討を重ねた結果、前記皮膚トラブルを改善するためには意外にもツバキが極めて有効であり、ツバキには皮膚繊維芽細胞を活性化し、その増殖を促進し、該細胞による前記細胞外マトリックス成分の産生を増強し、皮膚の老化症状を顕著に改善し得る成分が含まれていること、又、これを皮膚外用剤に有効利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、ツバキ科ツバキ属に属するツバキ(Camellia japonica)の実及び/又は種子の脱脂粕の水性成分を有効成分として含有してなる皮膚外用剤が提供される。
【0011】
この皮膚外用剤は、皮膚の繊維芽細胞増殖促進用皮膚外用剤、皮膚のコラーゲン及び/又はヒアルロン酸産生増強用皮膚外用剤、及び、皮膚の老化防止用皮膚外用剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。ここで、皮膚の老化とは、その症状が皮膚のシワ、シミ、くすみ、ソバカス、たるみ、かさつき及び肌荒れからなる群から選ばれる少なくとも1つの症状を含むものであることが好適である。又、本発明の前記皮膚外用剤において、有効成分である水性成分は、ツバキ科ツバキ属に属するツバキ(Camellia japonica)の実及び/又は種子の脱脂粕を水及び/又は低級アルコールで抽出処理した抽出物であることが望ましい。
【0012】
本発明によれば、更に、ツバキ科ツバキ属に属するツバキ(Camellia japonica)の実及び/又は種子の脱脂粕の水性成分を皮膚に塗布及び/又は接触することを特徴とする、皮膚の繊維芽細胞の増殖を促進するための、皮膚のコラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生を増強するための、及び/又は、皮膚の老化を防止するための方法が提供される。ここで、前記水性成分は、ツバキ科ツバキ属に属するツバキ(Camellia japonica)の実及び/又は種子の脱脂粕を水及び/又は低級アルコールで抽出処理した抽出物であることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るツバキ(Camellia japonica)の実及び/又は種子の脱脂粕から抽出された水性成分は、品質安定性に優れ、皮膚の繊維芽細胞の増殖を促進し、該繊維芽細胞によるコラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生を増強し、皮膚のターンオーバーを促して皮膚のシワ、シミ、くすみ、ソバカス、たるみ、かさつき、肌荒れ等の皮膚トラブルを改善する効果を奏する。又、損傷を受けた皮膚の再生を促進して肌の健康維持に寄与する効果を奏する。かかる効果は、前記水性成分を皮膚に塗布及び/又は接触することによって顕著に発現される。したがって、本発明によれば、前記水性成分を有効成分として含有してなる皮膚外用剤が提供され、とりわけ皮膚の繊維芽細胞増殖促進のための皮膚外用剤、皮膚のコラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生増強のための皮膚外用剤、又は、皮膚の老化防止のための皮膚外用剤として有効利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明を詳細に説明する。まず、本発明の皮膚外用剤は、生体組織とりわけ皮膚の真皮組織中に存在する繊維芽細胞の増殖を促進させる作用を有するものであり、ツバキ科(Theaceae)のツバキ属(Camellia)に属するツバキ(Camellia japonica)の実及び/又は種子の脱脂粕の水性成分を有効成分として含有してなることを特徴とする。
【0015】
ツバキ属に属する植物として、一般に、ツバキ節に属するツバキ(Camellia japonica)等、チャ節に属するチャ(C.sinensis)等、サザンカ節に属するサザンカ(C.sasanqua)等、カワリバツバキ節に属するグランサムツバキ(C.granthamiana)等、ヤナギバサザンカ節に属するヤナギバサザンカ(C.salicifolla)等、ヒメサザンカ節に属するヒメサザンカ(C.lutchuensis)等が知られているが、本発明ではツバキ節に属するものを用いる。この例としてヤブツバキ(C.japonica var.japonica)、ユキツバキ(C.japonica subsp.rusticana)、リンゴツバキ(C.japonica var.macrocarpa)、ホウザンツバキ(C.japonica subsp.hozanensis)、ホンコンツバキ(C.hongkongenesis)、トウツバキ(C.reticulata)、サルウィンツバキ(C.saluenensis)、ピタールツバキのピタルディー種(C.pitardii var.pitardii)及びユンナン種(C.pitardii var.yunnanica)、金花茶(C.nitidissima)、ヤマツバキ(ヤブツバキと同種)、山茶花(ヤブツバキと同種)、ヤクシマツバキ(リンゴツバキと同種)等を挙げることができる。これらのツバキは日本列島、朝鮮半島、中国山東半島等で自生し又は栽培されているものを適宜に利用すればよい。
【0016】
本発明では、前記のツバキの実及び/又は種子を圧搾処理、ヘキサンやヘプタン等の疎水性有機溶媒又は液化二酸化炭素、液化プロパン等の液化ガスを用いた抽出処理に供して、常法により油分を抽出した残渣である脱脂粕を必須の原料とする。ここで、ツバキの実及び/又は種子は早熟実及び成熟実のいずれでもよく、これらの種子を用いてもよいが、脱脂粕及び有効成分の収量の点から成熟実又はその種子を用いることが望ましい。本発明では、成熟実から得られる種子を1〜2週間程度、天日等で乾燥させたものを用いるのが簡便で好ましい。
【0017】
前記脱脂粕の水性成分は任意の方法で製造することができるが、水及び/又は低級アルコールを用いて抽出処理するのが好ましい。低級アルコールは、その炭素数が大きくなると脱脂粕中の油性物質が抽出される傾向が大きくなるため、炭素数が小さいものが望ましく、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール等を例示できる。炭素数が大きい低級アルコールを使用する場合は、脱脂粕中の油性成分の抽出を抑制するために含水率を高めるのがよい。例えば、プロパノールの場合の含水率は約20重量%〜約50重量%とし、プタノールの場合の含水率は約40重量%〜約70重量%とする。望ましい抽出溶媒は水、メタノール及びエタノール、及びこれらの含水アルコール(含水率:0〜100重量%)である。
【0018】
脱脂粕を抽出するには、脱脂粕1重量部に対して前記抽出溶媒を約1重量倍〜約30重量倍加え、常圧下又は1〜5気圧の加圧下、常温ないしは約120℃で、約10分〜約3時間、必要に応じて撹拌して混合後、常温に冷却して濾過し、濾液を減圧乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥等の適当な手段により濃縮、乾燥する。尚、乾燥物は適宜に粉砕処理してもよい。このようにして本発明に係る脱脂粕の水性成分である淡黄色ないし黄色の固体を得ることができる。前記抽出方法は、一旦抽出処理した抽出残渣を繰り返し抽出処理したり、1〜3気圧の加圧下、約100℃〜約130℃で行うことが望ましい。これにより本発明に係る水性成分の収量が増える。この水性成分はサポニン、タンニン、ケンフェロール、その配糖体等を含む。
【0019】
本発明の皮膚外用剤は、その有効成分としての前記水性成分を固体状、ペースト状又は液体状の形態となし、これをそのまま皮膚外用剤としてよいが、必要に応じて通常の皮膚外用剤に利用される公知の添加物を併用して、常法により含有せしめて組成物として調製することもできる。ここで、公知の添加物としては、化粧品、トイレタリー製品等に利用されるものであって且つ本発明の趣旨に反しないものであればよく、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、湿潤剤、流動化剤、保存剤、界面活性剤、安定剤、希釈剤、溶解剤、殺菌剤、防腐剤、着色剤、香料等の各種添加物質を使用できる。又、繊維芽細胞増殖促進作用、コラーゲン及び/又はヒアルロン酸産生増強作用、あるいは老化防止作用が既知の素材を用いることができる。
【0020】
前記の公知添加物のうち、賦形剤の例としてセルロース及びその誘導体、澱粉、化工澱粉、デキストリン、難消化性デキストリン、乳糖、マンニトール、ソルビトール等の糖アルコール類、第二リン酸カルシウム、マイカ、タルク等が挙げられる。
【0021】
結合剤や崩壊剤としては結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルメロースナトリウム等のセルロース系誘導体、小麦、米、トウモロコシ、馬鈴薯等由来の澱粉、これらのα化澱粉、部分α化澱粉、ヒドロキシプロピルスターチ等の化工澱粉、デキストリン、プルラン、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、寒天、ゼラチン、白色セラック、トラガント、マクロゴール等を例示できる。
【0022】
滑沢剤として、例えば、小麦、米、トウモロコシ、馬鈴薯等由来の澱粉、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類、水素添加植物油、ポリエチレングリコール等がある。
【0023】
湿潤剤、保湿剤、エモリエント剤としては、スクワラン、スクワレン、レシチン、リゾレシチン、コレステロール、スフィンゴ脂質、セリン、グルタミン、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、ピロリドンカルボン酸、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、乳酸及びその塩、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、コラーゲン、水溶性コラーゲン、加水分解エラスチン、アルギン酸及びその塩、ムコ多糖類、ポリエチレングリコール、ポリアスパラギン酸塩、水溶性キチン、水溶性キトサン、グルコサミン類及びその誘導体、N−アセチル−D−グルコサミン、長鎖アシルグルタミン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、硬化ヒマシ油、12−ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、ステアリン酸、ロジン酸、ラノリン、ラノリン脂肪酸コレステリルエステル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、シリコン油(メチコン、ジメチコン、シクロメチコン等)、乳ホエー等を例示することができる。
【0024】
流動化剤の例として、微粒二酸化ケイ素、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。
【0025】
酸化防止剤としては、アスコルビン酸、トコトリエノール、dl−α−トコフェロール、α−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール等のトコフェロール類、酢酸トコフェロール、クエン酸イソプロピル、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、フィチン酸、カフェ酸、カテキン、没食子酸、没食子酸プロピル、エリソルビン酸及びそのナトリウム塩、チオジプロピオン酸ジラウリル、L−システイン塩酸塩等を例示できる。
【0026】
保存剤や防腐剤の例として安息香酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、プロピオン酸、亜硫酸ナトリウム、クロロブタノール等がある。
【0027】
界面活性剤の例としては、大豆レシチン、卵黄レシチン、リゾレシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン等のグリセロリン脂質、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル等のポリグリセリン脂肪酸エステル、モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシプロピレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、ポリソルベート80、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン界面活性剤、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等のカチオン界面活性剤、2−ココイル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アミド酢酸ベタイン等の両性界面活性剤、高級アルコール硫酸塩、高級アルコールエーテル硫酸塩、長鎖脂肪酸アルカリ金属塩、長鎖脂肪酸アルカリ土類金属塩、長鎖脂肪酸塩基性アミノ酸塩、N−長鎖アシルアミノ酸、N−長鎖アシルアミノ酸塩等のアニオン界面活性剤がある。
【0028】
安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類、塩化ベンザルコニウム、無水酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。
【0029】
希釈剤、溶解剤、可溶化剤として精製水、エタノール、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、オリーブ油、ヒマシ油、シリコンオイル、流動パラフィン、ジクロデキストリン等がある。
【0030】
等張化剤の例として塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、ホウ酸等がある。
【0031】
pH調整剤としては、乳酸、コハク酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩、グルコノデルタラクトン、アジピン酸、酢酸ナトリウム、アルギニン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素三カリウム等が含まれる。
【0032】
紫外線吸収剤は、例えば、パラアミノ安息香酸、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル等のパラアミノ安息香酸誘導体、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、パラメトキシ桂皮酸エチル、パラメトキシ桂皮酸オクチル等のメトキシ桂皮酸誘導体、サリチル酸オクチル、サリチル酸ホモメンチル等のサリチル酸誘導体、N−ベンゾイル−O−メチル−α−デヒドロチロシン−2−エチルヘキシルエステル等のα−デヒドロアミノ酸誘導体、4−(3,4−ジメトキシフェニル)メチレン−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル等のベンザールヒダントイン誘導体、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、4−ter−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0033】
殺菌剤として、例えば、ヒノキチオール、トリクロサン、クロルヘキシジングルコン酸塩、フェノキシエタノール、レゾルシン、イソプロピルメチルフェノール、アズレン、サリチル酸、ジンクピリチオン等がある。
【0034】
着色剤の例として、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、シリカ、タルク、マイカ、銅クロロフィル、水溶性アナトー、β−カロテン、リボフラビン及びその酪酸エステル、クチナシ黄、青色1号、赤色202号、食用赤色2号、同105号、食用黄色4号、食用緑色3号、食用青色2号等を挙げることができる。
【0035】
その他、各種香料や植物エッセンスも必要に応じて利用でき、又、油脂類としてアボガド油、オリーブ油、ホホバ油等の植物油、オレイン酸、イソステアリン酸等の脂肪酸、ワセリン、ラノリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、カルナバロウ、キャンデリラロウ、椰子油脂肪酸、ラウリン酸、硬化牛脂脂肪酸等の脂肪酸、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸−2−オクチルドデシル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセロール、オレイン酸−2−オクチルドデシル、トリイソステアリン酸グリセロール、2−エチルヘキサン酸ジグリセリド等のエステル油、長鎖アシルグルタミン酸オクチルドデシルエステル等のエステル油、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のシリコン油、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン等の液状炭化水素油等も適宜に使用できる。
【0036】
繊維芽細胞増殖促進作用が既知の素材として、前記の特許文献に記載のもの以外に、クロレラ、アロエベラ、イネ、ナツメ、月桃、マンゴージンジャー、ノブドウ、ホウライシダ、ハス胚芽、ゴマ、トウガラシ、トウキ、ドクダミ、ハスカップ果実、クスノハガシワ、藻類(カウレルパ、ラセモサ)、オニイチゴ、ハトムギ等の植物や藻類の乾燥物又は抽出物、カテキン類、イミノ基含有ペプチド、α−リポ酸及びその塩、エステル、アミド等の誘導体、ジヒドロリポ酸及びその誘導体、キチン加水分解物、N−アセチル−D−グルコサミン及びそのオリゴマー等を例示できる。
【0037】
コラーゲン及び/又はヒアルロン酸産生増強作用が既知の素材として、ブドウ、アロエベラ、イタドリ、ドクダミ、サフラン、マカ、オランダガラシ、イカリソウ、ライチ、カッコン、発芽大豆、ブナ、カバノアナタケ、クスノハガシワ、クロレラや酵母等の抽出物、ゲンクワニン、トコトリエノール、イソフラボン、ジエチレントリアミン五酢酸、N−アセチルグルコサミン、胎盤抽出物、可溶性卵殻膜、セリシン及びその加水分解物、アデノシンリン酸エステル、アンジオジェニン及びその分解物、インターロイキン−1、フィトール、水素添加レチノイド、N−メチル−L−セリン等を例示できる。
【0038】
老化防止作用が既知の素材として、前記の繊維芽細胞増殖促進物質やコラーゲン及び/又はヒアルロン酸産生増強物質のほかレチノイン酸、グリコール酸、α−ヒドロキシ酸、ハイビスカス、ウリ科植物(カボチャ、ヘチマ)種の抽出物、ビタミンA、C、D及びE、N−アシルプロリン等を例示できる。尚、本発明はこれらの各例示によって何ら限定されるものではない。
【0039】
本発明の皮膚外用剤の形態は、特に限定されるものではなく、皮膚や毛髪・頭皮に適用されるもの全般を対象にして、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏等の剤型で提供することができ、例えば、化粧水、乳液、クリーム、ファンデーション、パック、エッセンス、口紅、洗顔料、シャンプー、リンス、ヘアトニック、ヘアトリートメント等を挙げることができる。又、軟膏、パップ剤、浴用剤、洗浄剤、エアゾル剤等の医薬部外品を含めてもよい。
【0040】
本発明の皮膚外用剤を製造するには、前記の公知添加物を適宜選択し、これに本発明に係る前記水性成分を所定量加え、通常の製造法により加工処理すればよい。ここで、本発明に係る前記水性成分の配合量は約0.01重量%〜約90重量%、より望ましくは約0.1重量%〜約70重量%である。約0.01重量%を下回ると本発明の皮膚外用剤が所望効果を発現しない場合があり、約90重量%を超えると皮膚外用剤としての通常の剤型を加工し難くなることがある。本発明の皮膚外用剤は、その用途目的から、肌の前記トラブルを予防及び/又は改善するために皮膚や毛髪・頭皮に塗布したり接触させる方法で使用することができる。
【0041】
本発明の皮膚外用剤は、前述のように、ツバキ科ツバキ属に属するツバキ(Camellia japonica)の実及び/又は種子の脱脂粕の水性成分を有効成分として含有してなるものであるが、特に好適には、皮膚の繊維芽細胞増殖促進用の皮膚外用剤、皮膚のコラーゲン及び/又はヒアルロン酸産生増強用の皮膚外用剤、及び/又は、皮膚の老化防止用の皮膚外用剤である。これらの少なくとも1種の用途に適用できる皮膚外用剤である。
【0042】
前記の繊維芽細胞増殖促進用皮膚外用剤に適用するツバキの種類や部位、脱脂粕、その抽出方法及び条件、水性成分、水性成分の配合量、併用原材料、皮膚外用剤としての形態、利用方法等は、前述の皮膚外用剤の場合と同じである。ここで、繊維芽細胞は、より望ましくは真皮組織中の繊維芽細胞である。なお、この皮膚外用剤においては、本発明に係る水性成分と、繊維芽細胞増殖促進作用が既知の素材とを併用することが望ましい。
【0043】
前記のコラーゲン及び/又はヒアルロン酸産生増強用皮膚外用剤に適用するツバキの種類や部位、脱脂粕、その抽出方法及び条件、水性成分、水性成分の配合量、併用原材料、皮膚外用剤としての形態、利用方法等は、前述の皮膚外用剤の場合と同じである。ここで、コラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生は、より望ましくは真皮組織中の繊維芽細胞によるコラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生である。なお、この皮膚外用剤においては、本発明に係る水性成分と、コラーゲン及び/又はヒアルロン酸産生増強作用が既知の素材とを併用することが望ましい。
【0044】
前記の皮膚老化防止用皮膚外用剤は、前述のような皮膚トラブルや損傷を改善する作用を有するものであり、これに適用するツバキの種類、脱脂粕、その抽出方法及び条件、水性成分、水性成分の配合量、併用原材料、皮膚外用剤としての形態、利用方法等は、前述の皮膚外用剤の場合と同じである。ここで、皮膚老化の症状は皮膚のシワ、シミ、くすみ、ソバカス、たるみ、かさつき及び肌荒れからなる群から選ばれる少なくとも1つの症状を含むものがより望ましい。なお、この皮膚外用剤においては、本発明に係る水性成分と、老化防止作用が既知の素材とを併用することが望ましい。
【実施例】
【0045】
次に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。各例において、%、部及び比率はいずれも重量基準である。
【0046】
製造例1
長崎県五島産ヤブツバキ(C.japonica var.japonica)の乾燥種子を粗粉砕して蒸煮後、圧搾して圧搾油を分離した圧搾粕を得、次いで圧搾粕にノルマルヘキサンを加えて常法により抽出処理し、抽出液を分離して抽出粕を採取した。この抽出粕をノルマルヘキサンで洗浄して油分を取り除き脱脂粕を採取した。この脱脂粕100gに水400mLを加え、常圧下、85℃に加熱して1時間適宜に撹拌した後、室温まで冷却し、濾過して濾液を分離した。この濾過残渣に再度水200mLを加えて同様に加熱し、冷却後、濾過して濾液を採取した。両濾液を合わせて減圧下に濃縮し、凍結乾燥及び粉砕して、本発明に係る水性成分を含む粉末(試料1とする)15.8gを得た。この粉末は、これを加水分解してHPLC分析したところ、サポニンのアグリコンであるサポゲニンを16.1%、フラボノールの一種であるケンフェロールを2.5%含むものであった。
【0047】
製造例2
屋久島産リンゴツバキ(C.japonica var.macrocarpa)の乾燥種子を製造例1に記載の方法で脱脂して脱脂粕を採取した。この脱脂粕100gに水400mLを加え、2気圧の加圧下、120℃で25分間加熱した後、室温まで冷却し、濾過して濾液を分離した。この濾過残渣に再度水200mLを加えて同様に加熱し、冷却後、濾過して濾液を採取した。両濾液を合わせて減圧下に濃縮し、凍結乾燥及び粉砕して、本発明に係る水性成分を含む粉末(試料2とする)16.4gを得た。該粉末を製造例1と同様に加水分解してHPLC分析した結果、サポゲニン含量は14.8%であり、ケンフェロール含量は2.4%であった。
【0048】
製造例3
製造例1に記載の方法で得た脱脂粕100gに含水エタノール(含水率35%)300mLを加え、80℃で1時間加熱還流した後、室温まで冷却し、濾過して濾液を分離した。この濾過残渣に再度含水エタノール(含水率35%)200mLを加えて同様に加熱し、冷却後、濾過して濾液を採取した。両濾液を合わせて減圧下に濃縮し、凍結乾燥及び粉砕して、本発明に係る水性成分を含む粉末(試料3とする)11.3gを得た。該粉末を製造例1と同様に加水分解してHPLC分析した結果、サポゲニン含量は12.8%であり、ケンフェロール含量は2.1%であった。
【0049】
製造例4
製造例2に記載の方法で得た脱脂粕100gにエタノール(純度99.5%)300mLを加え、80℃で1時間加熱還流した後、室温まで冷却し、濾過して濾液を分離した。この濾過残渣に再度エタノール(純度99.5%)200mLを加えて同様に加熱し、冷却後、濾過して濾液を採取した。両濾液を合わせて減圧下に濃縮し、凍結乾燥及び粉砕して、本発明に係る水性成分を含む粉末(試料4とする)4.5gを得た。該粉末を製造例1と同様に加水分解してHPLC分析した結果、サポゲニン含量は14.0%であり、ケンフェロール含量は2.4%であった。
【0050】
製造例5
製造例1において、乾燥種子を未熟実(種子を含む実全体)におきかえること以外は同様に処理して、脱脂粕を得た後、これから水性成分を含む粉末(試料5とする)16.7gを得た。該粉末を製造例1と同様に加水分解してHPLC分析した結果、サポゲニン含量は15.0%であり、ケンフェロール含量は2.2%であった。
【0051】
試験例1:皮膚繊維芽細胞増殖促進作用
本発明に係る水性成分を含む粉末(試料1〜試料5)が皮膚繊維芽細胞の増殖に及ぼす影響を以下の方法で調べた。すなわち、ペトリディッシュ(φ10cm)を用い、正常ヒト成人皮膚繊維芽細胞(クラボウ(株)製、NHDF(AD)。以下、単に細胞という。)を10%ウシ胎児血清(第一化学薬品(株)製)添加D−MEM培地(シグマ社製、低グルコース)に2×10個播き、サブコンフルエント(約80%密度)になるまで4日間培養した。次いで、培地を除去し、細胞をPBS5mLで2回洗浄し、更に0.02%EDTA溶液5mLで洗浄した後、0.25%トリプシン溶液(ナカライテスク(株)製)5mLを用いて細胞を回収し、遠心分離(4℃、1,000rpm、5分)して上清を除き、PBSで2回洗浄して細胞を得た。この細胞を前記条件下で繰り返し培養して継代培養した。
【0052】
96穴細胞培養プレート(0.32cm、旭テクノグラス(株)製)を用いて、前記継代培養細胞をヒト皮膚繊維芽細胞増殖用低血清培地(クラボウ(株)製、LSGS添加106S培地:皮膚繊維芽細胞基礎培地(106S)500mLに低血清増殖添加剤(LSGS)10mLを添加した培地)中に1×10個/ウェル播種し、24時間培養した。次いで、培地を除去し、終濃度が5、10又は20μg/mLとなるように各試料を添加した前記ヒト皮膚繊維芽細胞増殖用低血清培地中で更に48時間培養を続けた。この後、MTT溶液(チアゾリルブルーテトラゾリウムブロマイド(シグマ社製、試薬)を濃度5mg/mLで溶解したPBS)を25μL加えて1時間培養した。培地をデカンテーションで完全に除去した後、ホルマザン溶液(25%(v/v)0.45M酢酸緩衝液(pH4.5)、25%(v/v)N,N−ジメチルホルムアミド、10%(w/v)n−ドデシル硫酸ナトリウムを含む。pH4.5)を100μL加えて撹拌した。室温で1夜放置後、590nmにおける吸光度を測定し、細胞の増殖度合いを評価した。尚、上記方法において、D−MEM培地及びヒト皮膚繊維芽細胞増殖用低血清培地はペニシリン(終濃度100IU/mL)及びストレプトマイシン(終濃度0.1mg/mL)を添加したものとし、細胞培養はすべてCOインキュベーター(37℃、5%CO強化気相下)で行った。
【0053】
この結果を表1に示す。同表において、数値は同時に実施した対照試験(試料を添加しない場合)の値を100としたときの相対値で示した。表1のデータから、本発明に係る脱脂粕の水性成分にはヒト皮膚繊維芽細胞の増殖を促進する作用があること、又、この作用は前記脱脂粕を加熱して常圧下又は加圧下で水抽出した場合、加熱下でエタノール抽出した場合に顕著なものとなることを確認した。
【0054】
【表1】

【0055】
試験例2:ヒアルロン酸産生増強作用
本発明に係る水性成分を含む粉末(試料1〜試料5)が皮膚繊維芽細胞によるヒアルロン酸の産生増強に及ぼす影響を以下の方法で調べた。すなわち、試験例1に記載の方法で継代培養した皮膚繊維芽細胞を、96穴細胞培養プレート(0.32cm、旭テクノグラス(株)製)を用いて、ヒト皮膚繊維芽細胞増殖用低血清培地(クラボウ(株)製、LSGS添加106S培地:皮膚繊維芽細胞基礎培地(106S)500mLに低血清増殖添加剤(LSGS)10mLを添加した培地)に1×10個/ウェル播種し、1日間培養した。次いで、LSGS添加106S培地中に終濃度が5、10又は20μg/mLとなるように各試料を添加して更に48時間培養を続けた。この培養液をすべて回収し、以下のELISA試験によるヒアルロン酸定量用試験液とした。
【0056】
前記細胞培養液中のヒアルロン酸含量は、市販のヒアルロン酸測定キット(生化学工業(株)製)を用いて、ELISA試験法により分析した。すなわち、前記細胞培養液を前記キットの緩衝液で16倍希釈し、ヒアルロン酸固層化マイクロプレートに50μL添加した。次いで、ここにビオチン標識HABP溶液を50μL添加後、1分間混和し、37℃で1時間、一次反応を行わせた。更に、ウェル内の溶液を除いてプレートを洗浄後、HRP標識ストレプトアビジン溶液を100μL添加し、37℃で1時間、二次反応を行わせた。この後、ウェル内の溶液を除いて前記プレートを洗浄し、酵素基質溶液を100μL加え、遮光下、室温にて30分間、酵素反応を行わせた。該反応停止液を100μL加えて混和した後、プレートリーダーで吸光度を測定した(測定波長:490nm、対照波長:620nm)。試験液中のヒアルロン酸含量はヒアルロン酸標準品による検量線から求めた。
【0057】
この結果を表2に示す。同表において、数値は同時に実施した対照試験(試料を添加しない場合)の値を100としたときの相対値で示した。表2のデータから、本発明に係る脱脂粕の水性成分にはヒト皮膚繊維芽細胞によるヒアルロン酸産生を増強する作用があること、又、この作用は前記脱脂粕を加熱及び加圧下で水抽出した場合に顕著なものとなることを確認した。
【0058】
【表2】

【0059】
試験例3:皮膚老化防止作用(その1)
5週齢の雌性ヘアレスマウス(日本エスエルシー(株)から購入)を、基礎飼料(日本クレア(株)製、CE−2)及び飲用水を自由摂取させて1週間予備飼育後、1群3匹として、紫外線非照射群(対照群)、紫外線照射+精製水塗布群(陽性対照群)、紫外線照射+試料1(1%水溶液)塗布群、紫外線照射+試料2(1%水溶液)塗布群、紫外線照射群、紫外線照射+試料3(1%水溶液)塗布群、紫外線照射+試料4(1%水溶液)塗布群、及び、紫外線照射+試料5(1%水溶液)塗布群に分けた。紫外線照射はマウス背部に1回5分間、毎週5回、12週間にわたり、30mJ/cmの強さでUV−Bを照射した。又、各試料溶液は1日1回の頻度で、紫外線照射期間中、皮膚の特定位置(直径:約2.5cm)に0.1mLを塗布した。この条件で試験を行い、各群のマウス皮膚上に形成されるシワ及び肌荒れの程度を目視観察して評価した。
【0060】
この結果、紫外線を照射しなかった対照群ではシワ形成及び肌荒れは認められなかったが、紫外線を照射した陽性対照群では明確なシワ形成及び肌荒れが発生していた。一方、紫外線を照射しながら各試料をそれぞれ塗布した群の場合はいずれも、紫外線照射によるシワ形成及び肌荒れがほぼ半減していた。このことから、本発明に係る前記水性成分は紫外線照射による皮膚トラブルを軽減し得る皮膚老化防止作用を有することが確認された。
【0061】
試験例4:皮膚老化防止作用(その2)
スクワラン:10部、ステアリン酸:5部、セタノール:3部及びステアリン酸モノグリセリド:3部からなる油相成分を80℃にて加熱溶解し、一方、グリセリン:15部、パラオキシ安息香酸メチル:0.1部、カルボキシビニルポリマー(1%水溶液):10部、ポリグリセリン(平均重合度4)モノオレアート:3部、アルギニン(20%水溶液):15部、試料2:1部及び精製水:34.9部からなる水相成分を80℃にて加熱溶解した。この水相成分に前記油相成分を撹拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化して試験用クリームを調製した。又、このクリームにおいて、試料2を配合しない比較用クリーム(精製水で調整)を調製した。ボランティアの成人女性10名(22歳〜54歳、平均年齢:31.0歳)の左手に試験用クリームを、右手に比較用クリームをそれぞれ1日2回、2週間塗布してもらい、各人の皮膚への影響をアンケート調査(3段階評価)した。
【0062】
この結果、(1)肌の乾燥感、かさつき、肌荒れについて、比較用クリームでは強い:5名、普通:4名、弱い:1名であり、試験用クリームでは強い:1名、普通:3名、弱い:6名であった。(2)皮膚の弾力性、柔軟性について、比較用クリームでは多い:2名、普通:3名、少ない:5名であり、試験用クリームでは多い:6名、普通:3名、少ない:1名であった。(3)肌の張り、艶については、比較用クリームでは強い(増加):2名、普通:3名、弱い(少ない):5名であり、試験用クリームでは強い(増加):7名、普通:2名、弱い(少ない):1名であった。(4)皮膚の皺、たるみ、くすみは、比較用クリームでは多い:7名、普通:2名、少ない:1名であり、試験用クリームでは多い:1名、普通:3名、少ない:6名であった。このことから、本発明に係る前記水性成分を継続的に皮膚に塗布することにより、乾燥肌や肌荒れが減少し、皮膚の弾力性や柔軟性が増し、肌の張りや艶が増えるとともに皺やたるみが減少することが確認された。
【0063】
試作例1〜7
以下に示す処方(数値は全て重量%)を用いて各種化粧品を試作した。
(1)ローション
(a)ソルビット 2
(b)1,3−ブチレングリコール 4
(c)ポリエチレングリコール1000 2
(d)エタノール 10
(e)試料1 1
(f)防腐剤(メチルパラベン) 適量
(g)精製水 残量
(a)〜(f)を80℃に加熱した(g)に加え、撹拌して溶解した後、室温まで冷却して容器に充填した。
【0064】
(2)乳液
(a)スクワラン 4
(b)ワセリン 1
(c)ステアリルアルコール 0.5
(d)ソルビタンモノステアラート 1.5
(e)ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレアート 3
(f)1,3−ブチレングリコール 5
(g)試料2 0.1
(h)茶カテキン 0.1
(i)精製水 残量
(a)〜(d)を80℃で加熱溶解して油相成分とし、(e)〜(i)を80℃で加熱溶解して水相成分とした。同温度にて、水相成分に油相成分を撹拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化した後、室温まで冷却、脱気して容器に充填した。この乳液は皮膚繊維芽細胞増殖促進用の皮膚外用剤として利用できる。
【0065】
(3)クリーム
(a)スクワラン 20
(b)ミツロウ 5
(c)ホホバ油 5
(d)ソルビタンモノステアラート 1
(e)グリセリンモノオレアレート 3
(f)ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアラート 3
(g)グリセリン 5
(h)試料3 5
(i)N−アセチルグルコサミン 2
(j)精製水 残量
(a)〜(e)を80℃で加熱溶解して油相成分とし、(f)〜(j)を80℃で加熱溶解して水相成分とした。同温度にて、水相成分に油相成分を撹拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化した後、室温まで冷却、脱気して容器に充填した。このクリームは皮膚のコラーゲン及び/又はヒアルロン酸産生増強用の皮膚外用剤、又は、皮膚のコラーゲン及び/又はヒアルロン酸産生増強用並びに老化防止用の皮膚外用剤として利用できる。
【0066】
(4)ボディーソープ
(a)ラウリン酸カリウム 13
(b)ミリスチン酸カリウム 5
(c)プロピレングリコール 7
(d)試料4 10
(e)ハイビスカス花抽出物 3
(f)pH調整剤(クエン酸) 適量
(g)防腐剤(メチルパラベン) 適量
(h)精製水 残量
(a)及び(b)を予め80℃で加熱溶解した(c)〜(h)の溶液に撹拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に混合した後、室温まで冷却、脱気して容器に充填した。このボディーソープは皮膚老化防止用の皮膚外用剤として利用できる。
【0067】
(5)シャンプー
(a)ラウリン酸ジエタノールアミド 2
(b)ラウリル硫酸トリエタノールアミン 5
(c)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ソーダ 12
(d)1,3−ブチレングリコール 4
(e)エデト酸二ナトリウム 0.1
(f)試料2 0.05
(g)防腐剤及び香料 各適量
(h)精製水 残量
(b)〜(h)を加熱溶解して70℃とし、(a)を添加してホモミキサーにより乳化後、冷却、脱気して容器に充填した。
【0068】
(6)ヘアトニック
(a)オレイン酸エチル 1
(b)エタノール 45
(c)ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 2
(d)試料1 15
(e)精製水 残量
(c)〜(e)を加熱溶解して60℃とし、同温度に加熱した(a)及び(b)の混合物を添加してホモミキサーにより可溶化後、冷却、脱気して容器に充填した。
【0069】
(7)粉末浴用剤
(a)炭酸水素ナトリウム 50
(b)無水硫酸ナトリウム 35
(c)ホウ砂 3
(d)試料3 7
(e)カミツレ抽出末 4
(f)着色料及び香料 各適量
(a)〜(f)を粉体混合機で混合して容器に充填した。
【産業上の利用可能性】
【0070】
ツバキの実及び/又は種子の脱脂物から得られる水性成分は、皮膚の繊維芽細胞増殖促進作用、コラーゲン及び/又はヒアルロン酸産生増強作用、老化防止作用等を有するため、これを皮膚に塗布又は接触させることにより、皮膚の本来の生理機能を回復させ、皮膚トラブルの改善や皮膚損傷の早期回復に役立つ皮膚外用剤として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツバキ科ツバキ属に属するツバキ(Camellia japonica)の実及び/又は種子の脱脂粕の水性成分を有効成分として含有してなる皮膚外用剤。
【請求項2】
ツバキ科ツバキ属に属するツバキ(Camellia japonica)の実及び/又は種子の脱脂粕の水性成分を有効成分として含有してなる、皮膚の繊維芽細胞増殖促進用、コラーゲン及び/又はヒアルロン酸産生増強用、及び/又は、老化防止用の皮膚外用剤。
【請求項3】
水性成分が前記脱脂粕を水及び/又は低級アルコールで処理して得られる抽出物である請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
ツバキ科ツバキ属に属するツバキ(Camellia japonica)の実及び/又は種子の脱脂粕の水性成分を皮膚に塗布及び/又は接触することを特徴とする、皮膚の繊維芽細胞の増殖を促進するための、皮膚のコラーゲン及び/又はヒアルロン酸の産生を増強するための、及び/又は、皮膚の老化を防止するための方法。

【公開番号】特開2008−201773(P2008−201773A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298632(P2007−298632)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(500081990)ビーエイチエヌ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】