説明

皮膚洗浄剤

【課題】泡立て初期から泡質が良好な皮膚洗浄剤を提供する。
【解決手段】(A)アニオン界面活性剤、
(B)高級脂肪酸及び/又は高級アルコール、
(C)(c1)一般式(1)
1-O-(CH2CH2O)m-H (1)
(式中、R1は炭素数8〜20の分岐アルキル基を示し、mはエチレンオキシドの平均付加モル数を表す10〜20の数である)
で表わされるポリオキシエチレンアルキルエーテル、及び/又は
(c2)炭素数8〜20の脂肪酸残基を有し、エチレンオキシドの平均付加モル数が1〜30であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
を含有する皮膚洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡質が良好な皮膚洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
洗顔料、全身洗浄料等の皮膚洗浄剤においては、洗浄力が高いことに加えて、使用感をより高めるために、起泡性や泡質等の泡性能に優れることが求められている。このため、種々の界面活性剤等を組合わせた皮膚洗浄剤が検討されている。例えば、特許文献1には、特定のリン酸エステル塩型界面活性剤と、ミリスチン酸又はミリスチルアルコールを組合わせた皮膚洗浄剤組成物が記載されている。この皮膚洗浄剤組成物は、泡立ちが良好であるものの、泡立て初期においては、泡のきめやクリーミィさの点で十分満足できるものではなかった。
【0003】
一方、非石鹸系アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、HLB6〜18のノニオン界面活性剤及びミセルの成長促進剤としての高級アルコールを組合わせた液体洗浄剤組成物が提案されている(特許文献2)。しかして、このような液体洗浄剤組成物は、洗浄力や低温安定性に優れることが示されているものの、泡質については記載されていない。
【特許文献1】特開2006−206443号公報
【特許文献2】特開2004−91522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、泡立ての初期から泡質が良好な皮膚洗浄剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、アニオン界面活性剤と、高級脂肪酸及び/又は高級アルコールに加え、特定の非イオン界面活性剤を組合わせて用いることにより、泡立ての初期から泡のきめが細かくクリーミィで、硬くて弾力のある泡を与える皮膚洗浄剤が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)アニオン界面活性剤、
(B)高級脂肪酸及び/又は高級アルコール、
(C)(c1)一般式(1)
1-O-(CH2CH2O)m-H (1)
(式中、R1は炭素数8〜20の分岐アルキル基を示し、mはエチレンオキシドの平均付加モル数を表す10〜20の数である)
で表わされるポリオキシエチレンアルキルエーテル、及び/又は
(c2)炭素数8〜20の脂肪酸残基を有し、エチレンオキシドの平均付加モル数が1〜30であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
を含有する皮膚洗浄剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の洗浄剤組成物は泡質が良好であり、泡立ての初期から泡のきめが細かくクリーミィであり、硬くて弾力のある泡が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いる成分(A)のアニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルリン酸エステル塩、アルカンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アシル化アミノ酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、アルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩等が挙げられる。これらのうち、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸エステル塩、アシル化アミノ酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩が好ましく、特に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、アシル化アミノ酸塩が好ましい。
ここで用いられる塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム等の金属塩;アンモニウム塩;モノエタノールアンモニウム塩、ジエタノールアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩等の有機アンモニウム塩などが好ましい。
【0009】
成分(A)のアニオン界面活性剤は、1種以上を用いることができ、全組成中に10〜40質量%、特に10〜25質量%含有するのが、泡立ちと泡質をともに満足できる点で好ましい。
【0010】
本発明で用いる成分(B)の高級脂肪酸及び高級アルコールとしては、平均炭素数11〜18のアシル基又はアルキル基を有するものが好ましく、直鎖タイプのものがより好ましい。具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。
【0011】
成分(B)としては、高級脂肪酸及び高級アルコールを組合わせて用いることもできる。成分(B)は、高級脂肪酸と高級アルコールの合計量で、全組成中に0.5〜5質量%、特に1〜3質量%含有するのが、クリーミィな泡を与え、洗浄剤組成物の保存安定性を向上させるので好ましい。
【0012】
次に、成分(C)は、泡立ての初期から泡質を良くし、クリーミィで硬い泡を得ることを意図して用いられる成分であり、そのうち、(c1)のポリオキシエチレンアルキルエーテルは、前記一般式(1)で表わされるもので、R1が炭素数8〜20の分岐アルキル基であり、特に、炭素数12〜14の分岐アルキル基であるのが好ましい。R1が直鎖アルキル基のものでは、泡立ての初期から良好な泡質を得ることはできない。また、mはエチレンオキシドの平均付加モル数を表す10〜20の数であり、特に、12〜20であるのが好ましい。
【0013】
一方、(c2)のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、炭素数8〜20の脂肪酸残基を有し、特に、炭素数14〜18の脂肪酸残基を有するのが好ましい。また、一分子あたりのエチレンオキシドの平均付加モル数は、合計で1〜30、特に15〜25であるのが好ましい。
【0014】
成分(C)としては、特に(c1)のポリオキシエチレン分岐アルキルエーテル(1)が、泡立て初期からの泡質、泡の硬さの点でより好ましい。また、(c1)と(c2)を組合わせて用いることもできる。
成分(C)は、全組成中に1〜5質量%、特に1.5〜3質量%含有するのが、泡立て初期の泡質及び泡の硬さの点で好ましい。
【0015】
本発明の皮膚洗浄剤は、更に、(D)一般式(2)
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、R2は炭素数4〜10の炭化水素基を示す)
で表わされるグリセリルエーテルを含有することができ、泡立ち、泡量の増強により、泡のボリュームが増し、よりクリーミィな感触を得ることができる。
【0018】
3としては、炭素数4〜10のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、例えば、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基等のアルキル基が好ましい。
【0019】
成分(D)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.5〜5質量%、特に0.5〜3質量%含有するのが、泡立ちと泡質をともに満足できる点で好ましい。
【0020】
本発明の皮膚洗浄剤は、前記成分以外に通常の洗浄剤組成物に用いられる成分、例えば、前記以外の界面活性剤、香料、保湿剤、抗ニキビ剤、酸化防止剤、抗フリーラジカル剤、乳白剤、安定剤、エモリエント剤、ヒドロキシ酸、ビタミン類、セラミド類、防腐剤、金属イオン封鎖剤、増粘剤、紫外線吸収剤、紫外線防御剤、無機塩、顔料、その他化粧料に一般的に用いられる薬剤、あるいはエタノール等の有機溶媒物質や揮発性成分などを含有することができる。
【0021】
本発明の皮膚洗浄剤は、水で20倍に希釈した水溶液のpHが5〜7、特にpH5.5〜6.5であるのが、皮膚への刺激が少なく、優れた洗浄力が損なわれることなく洗浄時の泡立ちが良好となるので好ましい。
かかる弱酸性〜中性領域のpHの洗浄剤組成物中において、成分(B)の高級脂肪酸は、脂肪酸と脂肪酸塩の混合した状態として存在していると考えられる。
【0022】
皮膚洗浄剤のpHは、必要に応じて、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;クエン酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、ピロリドンカルボン酸、酒石酸、グリコール酸、アスコルビン酸等の有機酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物;アンモニア又はアンモニア水;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸などのpH調整剤を用いて調整することができる。
なお、pHは、皮膚洗浄剤を精製水にて20倍に希釈し、撹拌して5質量%水溶液を得た後、pHメーター(例えば、堀場製作所製、型番F−22)を用い、20℃で測定した値である。
【0023】
本発明の皮膚洗浄剤は、含有成分を秤量し、水又は水を主体としアルコール等の他の水溶性溶剤を含む水性媒体に、任意の順序で混合及び攪拌することにより製造することができる。混合、溶解の順序は、特に制限されない。
【0024】
本発明の皮膚洗浄剤は、液状又はペースト状の組成物として得られ、30℃における粘度は500〜3000mPa・s、特に1000〜2500mPa・sの範囲であることが、ポンプ等の容器から排出し易く、泡立てが容易である点で好ましい。
粘度は、皮膚洗浄剤を100mL瓶(アズワン 規格瓶PS−No.11)に入れ、30℃の恒温槽で3時間静置したのち、B型粘度計(TOKIMEC INC.製、ローターNo.3、30rpm)で測定する。
【0025】
本発明の皮膚洗浄剤は、洗顔料、全身洗浄料、ハンドソープ、クレンジング剤等とすることができる。
【実施例】
【0026】
実施例1〜7及び比較例1〜4
表1に表す成分を秤量して水中に添加し、50℃で充分攪拌して、皮膚洗浄剤組成物(ボディーシャンプー)を得た。水で20倍に希釈した水溶液のpHを、pHメーター(堀場製作所製、型番F−22)により測定した。また、泡立て初期の泡質、十分泡立てたときの泡質及び泡の硬さを評価した。泡立ては、両手をお湯(約40℃)であらかじめ適度に濡らし、各皮膚洗浄剤約1gを手に取って行い、評価した。結果を表1に併せて示す。
【0027】
(評価方法)
(1)泡立て初期の泡質:
専門評価者10名が、各皮膚洗浄剤について、泡を立て始めたときの泡質(泡のきめ細かさ、クリーミィさ)を官能評価した。「泡質がよい」と評価した評価者の人数を示した。
【0028】
(2)十分泡立てたときの泡質:
専門評価者10名が、各皮膚洗浄剤について、約20秒泡を立てた後の泡質(泡のきめ細かさ、クリーミィさ)を官能評価した。「泡質がよい」と評価した評価者の人数を示した。
【0029】
(3)泡の硬さ:
専門評価者10名が、各皮膚洗浄剤について、約20秒泡を立てた後の泡の弾力を官能評価した。「泡に弾力がある」と評価した評価者の人数を示した。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)アニオン界面活性剤、
(B)高級脂肪酸及び/又は高級アルコール、
(C)(c1)一般式(1)
1-O-(CH2CH2O)m-H (1)
(式中、R1は炭素数8〜20の分岐アルキル基を示し、mはエチレンオキシドの平均付加モル数を表す10〜20の数である)
で表わされるポリオキシエチレンアルキルエーテル、及び/又は
(c2)炭素数8〜20の脂肪酸残基を有し、エチレンオキシドの平均付加モル数が1〜30であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
を含有する皮膚洗浄剤。
【請求項2】
水で20倍に希釈した水溶液のpHが5〜7である請求項1記載の皮膚洗浄剤。
【請求項3】
更に、(D)一般式(2)
【化1】

(式中、R2は炭素数4〜10の炭化水素基を示す)
で表わされるグリセリルエーテルを含有する請求項1又は2記載の皮膚洗浄剤。
【請求項4】
成分(A)のアニオン界面活性剤が、モノアルキルリン酸エステル塩、アシル化アミノ酸塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩から選ばれるものである請求項1〜3のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤。

【公開番号】特開2008−150303(P2008−150303A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338182(P2006−338182)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】