説明

目標追尾装置

【課題】既追尾目標から複数の目標が分離する状況において、高い推定精度を達成する目標追尾装置を得る。
【解決手段】距離情報算出部と、単数複数判定部と、単数角度情報算出部と、複数角度情報算出部と、観測結果出力部とを有する観測情報抽出部と、データ記憶部と、軌跡推定部と、軌跡評価部とを有する追尾処理部とを備える目標追尾装置において、追尾処理部は、単数複数判定部で判定された単複判定結果に基づいて、単数であると判定されたときは、軌跡評価部で生成された航跡の仮説の中から既存の本航跡の更新による航跡の仮説のみを残し、複数であると判定されたときは、軌跡評価部で生成された航跡の仮説の中から既存の本航跡の更新による航跡の仮説を残すとともに、既存の本航跡から分離発生した新目標に相当する航跡の仮説を残す仮説限定部をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダから得られた観測値に基づいて、目標の軌跡を推定する目標追尾に関するものであり、特に不要信号が同時に観測される状況で、1目標の状態から途中で分離し新たな目標が発生する飛行物体の追尾を、正確かつ効率的に処理可能とする目標追尾装置に関する。
【背景技術】
【0002】
センサから得られる観測値を使って目標の軌道である航跡を推定する目標追尾では、観測値が目標からのものであるか、あるいは不要信号であるかを判定する必要がある。観測値が目標からのものであると判定した場合には、さらに、それが既に追尾を行っている目標のものであるのか(既存の目標が複数ある場合はそのうちのどれであるのか)、新たに発生した目標であるのかを判定する。既存目標の速度から該当時刻における位置を予測し、その予測値を中心とする空間領域(ゲート)を設定し、ゲート内に目標があるか否かを判定することとなる。
【0003】
このゲートの大きさは、ゲート内で追尾目標からの観測値を観測することができる確率が、例えば0.9以上といった高い確率となるように設定される。このゲート内に入った観測値は、既存目標からのものである可能性が高く、どのゲートにも入らなかった観測値は不用信号、または新目標である可能性が高いといえる。
【0004】
既存航跡から得られたと判定された観測値については、その観測値の位置情報と既存航跡が持つ予測値とを利用して、カルマンフィルタによる計算に従って、観測値が得られた時刻における目標の真の位置と速度の推定値を計算する。しかし、あるゲート内に複数の観測値がある場合には、追跡すべき目標をどれか一つに決定してしまうと、それが誤りであった場合には、目標の追跡に失敗する危険性が高くなる。
【0005】
そこで、割り当て方(仮説)を複数考えて、観測値と目標との相関を仮説毎に決定し、最終的に最も良い仮説を残せば、より正確な目標追尾が可能となり、このような手法に基づいた目標追尾技術がある(例えば、特許文献1参照)。この手法では、観測値とそれの組み合わせである航跡と、航跡の組み合わせである仮説を互いに観測値を共有しないクラスタ毎に処理を行うことによって、処理の効率化を図っている。
【0006】
一方、レーダによる観測においては、観測値が得られる前段階で受信信号を処理して、目標の位置や速度情報を算出する観測情報抽出処理が必要となる。この段階において、受信信号から角度情報を算出するための手法としては、モノパルス測角法がある。
【0007】
さらに、この測角法において計算される、アンテナ素子毎の信号の和ビーム、差ビームの比の実数部を計算して、信号源が単数目標か複数目標か判定を行いながら、角度算出処理を行うセンサ信号処理システムがある(例えば、非特許文献1参照)。この単複判定結果を用いることにより、追尾に入力する観測値を単数作るか、複数作るかを決定することが可能となる。
【0008】
【特許文献1】特許第3145893号公報(第14頁、図1)
【非特許文献1】文献「車載用レーダのための二段階測角方式」(電子情報通信学会論文誌 研究速報Vol.J86−B No.8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来技術には次のような問題点がある。遠方からセンサに近づく複数目標を観測する場合には、センサの分解能が原因で遠方では1目標として観測されていたものが、ある時点から複数の目標として観測されるという場合が起こり得る。このような目標を追尾維持対象とする場合には、維持対象目標から一つ、またはそれ以上の別目標が分離され、それらを元の既追尾目標と併せて追尾しなければならない。しかし、このような場合、従来の目標追尾技術における追尾維持機能のみでは、分離された目標のどれか一つのみしか追尾できないという問題がある。
【0010】
また、追尾維持、初期化の両機能を備えた追尾方式では、分離された目標のうちの何れか一つを既追尾目標、他を新目標として扱う。新航跡として開始した航跡は、仮航跡から成長して本航跡に昇格する。この方式により、分離後の全てを追尾することが可能にはなるが、追尾初期化方式は、既存の本航跡からの分離を想定していないので、誤った航跡を本航跡に昇格させてしまう可能性が高くなる。
【0011】
一方、従来のセンサ信号処理システムでは、モノパルス測角の際に算出された目標数に関する推定結果を、分離目標を追尾する追尾処理の仮説構成に反映できない。そのため、追尾の誤りや、誤航跡が開始される可能性を起こし易い。さらに、従来のセンサ信号処理システムでは、分離目標を追尾する追尾処理の仮説構成を、モノパルス測角における目標数推定の閾値に反映できない。そのため目標数推定の誤りを起こし易い。
【0012】
本発明は上述のような課題を解決するためになされたもので、既追尾目標から複数の目標が分離する状況において、高い推定精度を達成できる目標追尾装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る目標追尾装置は、複数のアンテナ素子からの追尾目標に対する受信信号から観測値情報を生成する観測情報抽出部と、観測値情報に基づいて目標の航跡を更新する追尾処理部とを備え、特定の目標の追尾を行うものであって、観測情報抽出部は、複数のアンテナ素子からの追尾目標に対する受信信号に基づいて目標の距離情報を抽出する距離情報算出部と、アンテナ素子毎の受信信号の和信号に対する差信号の比があらかじめ決められた閾値以上であるか否かを比較し、近接した観測領域で目標が単数であるか複数であるかを判別する単数複数判定部と、単数複数判定部で単数と判定された目標に対して、目標の角度情報を算出する単数角度情報算出部と、単数複数判定部で複数と判定された目標に対して、近接した複数目標の角度情報を算出する複数角度情報算出部と、距離情報算出部で算出された距離情報と、単数複数判定部で判定された単複判定結果と、単数角度情報算出部及び複数角度情報算出部で算出された角度情報とを含む観測値情報を生成して出力する観測結果出力部とを有し、追尾処理部は、所定のサンプリング周期ごとに更新される目標の航跡に関するデータを蓄積するデータ記憶部と、観測情報抽出部からの観測値情報と、データ記憶部に記憶された前回のサンプリング時刻に更新した目標の航跡に関するデータとに基づいて、今回のサンプリング時刻における目標の航跡に関するデータを生成し、データ記憶部の目標の航跡に関するデータを更新する軌跡推定部と、目標の航跡に関するデータを組み合わせて航跡の仮説を生成し、生成された仮説の信頼度を計算する軌跡評価部と、を有し、追尾処理部は、単数複数判定部で判定された単複判定結果に基づいて、単複判定結果が単数であると判定されたときは単数目標と判断し、軌跡評価部で生成された航跡の仮説の中から既存の本航跡の更新による航跡の仮説のみを残し、単複判定結果が複数であると判定されたときは複数目標と判断し、軌跡評価部で生成された航跡の仮説の中から既存の本航跡の更新による航跡の仮説を残すとともに、既存の本航跡から分離発生した新目標に相当する航跡の仮説を残す仮説限定部をさらに備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、観測情報抽出部において判定された目標数の単複判定結果をもとにして、仮説を限定することが可能となり、追尾の正確さの向上及び演算負荷の軽減を達成できる目標追尾装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
実施の形態1.
以下、本発明における目標追尾装置の好適な実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態1における目標追尾装置の構成図である。
【0016】
本実施の形態1の目標追尾装置は、観測情報抽出部100と追尾処理部200とで構成される。ここで、観測情報抽出部100は、距離情報算出部101、単数複数判定部102、単数角度情報算出部103、複数角度情報算出部104、及び観測結果出力部105で構成される。
【0017】
観測情報抽出部100内の距離情報算出部101は、目標観測装置(図示せず)に設置された複数のアンテナ素子からの受信信号に基づいて、目標の距離情報を算出する算出手段である。単数複数判定部102は、アンテナ素子毎の受信信号の和信号と差信号とに基づいて、観測領域に目標が単数いるか、複数いるかを判定する判定手段である。
【0018】
単数角度情報算出部103は、単数複数判定部102により目標が単数であると判定された場合に、モノパルス法により目標の角度情報を算出する算出手段である。複数角度情報算出部104は、単数複数判定部102により目標が複数であると判定された場合に、複数目標の角度情報を算出する算出手段である。この算出方法としては、例えば、文献「車載用レーダのための二段階測角方式」(電子情報通信学会論文誌 研究速報Vol.J86−B No.8)に記載されている最尤推定法が挙げられる。
【0019】
観測結果出力部105は、所定のサンプリング周期ごとに、距離情報算出部101で算出された観測値の距離と、単数複数判定部102で判定された単複判定結果と、単数角度情報算出部103及び複数角度情報算出部104で算出された観測値の角度情報とを含む観測値情報を生成して、追尾処理部200に出力する出力処理部である。
【0020】
一方、追尾処理部200は、軌跡推定部201、軌跡評価部202、仮説限定部203、及びデータ記憶部204で構成される。追尾処理部200内の軌跡推定部201は、過去の観測値に基づいて生成された目標航跡に関する情報と、今回の観測値の情報とを用いて、目標航跡の更新と、新たな航跡の生成を行う推定手段である。その際、カルマンフィルタを用いて、最新の航跡の運動諸元を計算する。
【0021】
軌跡評価部202は、軌跡推定部201で生成された航跡をもとに、その組み合わせである仮説を生成し、信頼度を計算する評価手段である。仮説限定部203は、軌跡評価部202で生成された仮説群の取捨選択を行い、仮説の絞り込みを行う限定手段である。さらに、データ記憶部204は、追尾処理で必要とされるデータがあらかじめ記憶されているとともに、測定値のサンプリング毎に更新される目標の航跡に関するデータを蓄積する記憶手段である。
【0022】
次に、観測情報抽出部100による観測値の抽出処理、及び追尾処理部200による目標の追尾処理の流れについて、フローチャートを用いて説明する。まず始めに、観測情報抽出部100による観測値の抽出処理について説明する。図2は、本発明の実施の形態1における観測値抽出処理のフローチャートである。単数複数判定部102の単複判定結果を観測値情報として追尾処理部200に出力する点を特徴としている。
【0023】
観測情報抽出部100内の距離情報算出部101は、目標観測装置(図示せず)に設置された複数のアンテナ素子から受信信号を読み取り(ステップS201)、その受信信号に基づいて、目標の距離情報を算出する(ステップS202)。次に、単数複数判定部102は、複数のアンテナ素子で受信された受信信号に基づいて、観測領域に目標が単数いるか、複数いるかを判定する(ステップS203)。単数複数判定部102は、この判定として以下の式を適用する。ここで、Reは実数部を意味している。
【0024】
【数1】

【0025】
上式において、Σ、△は、アンテナ素子毎の信号の和ビーム、差ビームである。また、Nthは、判定のための閾値である。単数複数判定部102は、上記の不等式が成立する場合には、目標が複数存在すると判定し、不等式が成立しない場合には、目標が単数であると判定する。
【0026】
目標が単数であると判定された場合には、単数角度情報算出部103は、モノパルス測角法により、目標の角度情報を算出する(ステップS204)。一方、目標が複数であると判定された場合には、複数角度情報算出部104は、最尤推定法等を用いて複数目標の角度情報を算出する(ステップS205)。
【0027】
そして、観測結果出力部105は、所定のサンプリング周期ごとに、ステップS201で距離情報算出部101によって算出された観測値の距離と、ステップS202で単数複数判定部102によって判定された単複判定結果と、ステップS203で単数角度情報算出部103によって算出された観測値の角度情報またはステップS204で複数角度情報算出部104によって算出された観測値の角度情報とを含む観測値情報を生成し、追尾処理部200に出力する(ステップS206)。
【0028】
このように、ステップS201〜S206の一連の処理により、観測情報抽出部100は、所定のサンプリング周期ごとに、目標観測装置からの受信信号に基づいて、観測値情報を生成し、追尾処理部200に出力することができる。
【0029】
次に、追尾処理部200における目標の追尾処理について説明する。図3は、本発明の実施の形態1における目標追尾処理のフローチャートである。この図3のフローチャートは、あるサンプリング周期において観測情報抽出部100から出力された観測値情報を読み取り、最新の航跡データを生成・更新する一連の処理を示している。観測値情報の一部として受信した単複判定結果を用いて、仮説限定を行う点を特徴としている。
【0030】
追尾処理部200内の軌跡推定部201は、観測情報抽出部100から観測値情報を読み取り、単複判定結果と、観測値の距離及び角度のデータを得る(ステップS301)。次に、軌跡推定部201は、観測値に対してゲート内判定を行い、観測値がどのクラスタに属するかを決定する(ステップS302)。
【0031】
軌跡推定部201は、このゲート内判定において、データ記憶部204に記憶された既存航跡に関するデータに基づいてゲートを算出し、新たに読み取った観測値との相関具合を調べることによりクラスタ分けを行う。この処理について、図4、5を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態1における既存航跡の状態を示す図である。あるクラスタにおいて、時刻t=0からt=2までの3サンプリングで5つの観測値00、10、11、20、21が読み取られた状態を示している。
【0032】
図4に示した5つの観測値の状態から、次のT1〜T6の6種の航跡が観測値の組として表記できる。
T1: 10-20
T2: 10-21
T3: 11-20
T4: 11-21
T5: 20
T6: 21
【0033】
また、航跡を採択する仮説は、航跡T1〜T6の組とその信頼度により「ID:{航跡組}信頼度」として、例えば、次のH1〜H6の6種の仮説として表記できる。ここで、relは、それぞれの仮説の信頼度を表している。
H1:{T1,T4}rel1
H2:{T1,T6}rel2
H3:{T2,T5}rel3
H4:{T2}rel4
H5:{T5}rel5
H6:{T2、T3}rel6
【0034】
次に、図5は、本発明の実施の形態1における既存航跡と最新の観測値との関係を示す図である。先のステップS301におけるサンプリング時刻t=3での観測値として、新たに観測値30、31、32、33が読み込まれた状態を示している。軌跡推定部201は、航跡T1〜T6に基づいて、サンプリング時刻t=2における観測値20に対するゲート及びサンプリング時刻t=2における観測値21に対するゲートを算出する。
【0035】
軌跡推定部201は、算出したゲートと、新たな観測値のそれぞれの位置との相関具合を調べることにより、新たな観測値30〜33のクラスタ分けを行う。図5においては、次のようなクラスタ分けが行われたことを想定している。新たな観測値30、31は、観測値20のゲート、すなわち航跡T1、T3、T5のゲートに入っているとする。また、新たな観測値32は、観測値21のゲート、すなわち航跡T2、T4、T6のゲートに入っているとする。さらに、新たな観測値33は、どの航跡のゲートにも入らなかったものとする。
【0036】
次に、軌跡推定部201は、図5に示したようなゲートと新たな観測値との相関具合をもとに、サンプリング時刻t=3での航跡を作成する(ステップS303)。作成される航跡には、以下の3種がある。
(1)更新航跡:既存航跡に、ゲート内に入った観測値を追加してできる航跡
(2)新航跡:そのサンプリング時刻に入った新たな観測値を起点とする航跡
(3)メモリトラック航跡:既存航跡に対し、該当する時刻には相関する観測値がなかったとする航跡
【0037】
図5の例では、軌跡推定部201は、まず更新航跡として、既存航跡T1〜T6と、新たな観測値30〜33のクラスタ分けの結果とに基づいて、以下の9種の航跡を作成する。
T11: 10-20-30
T12: 10-20-31
T21: 10-21-32
T31: 11-20-30
T32: 11-20-31
T41: 11-21-32
T51: 20-30
T52: 20-31
T61: 21-32
【0038】
また、軌跡推定部201は、新航跡として、次の3種の航跡を作成する。
T71: 30
T72: 31
T73: 32
【0039】
さらに、軌跡推定部201は、メモリトラック航跡として、次の6種の航跡を作成する。
T81: 10-20
T82: 10-21
T83: 11-20
T84: 11-21
T85: 20
T86: 21
【0040】
ここで、航跡は、仮航跡と本航跡の2つに分けることができる。仮航跡は、目標を追跡しているのかどうかの判断が保留されている段階の航跡であり、本航跡は、目標を追跡していると判断された状態の航跡である。新航跡として生成されたばかりの段階では仮航跡であり、その後更新を続け、本航跡として認められるまで仮航跡の状態であり続ける。
【0041】
また、ステップS303では、どのクラスタとも相関がなかった観測値については、その観測値を起点とする新たなクラスタを生成する。図5の例では、観測値33は、どの航跡とも相関がないので、この観測値33を起点とする新クラスタが生成されることとなる。
【0042】
また、ステップS303では、この時刻における観測値により後述する同値関係が複数のクラスタ間で発生した場合、それらのクラスタを統合する処理が行われる。ステップS301〜S303で示したような一連の処理により、軌跡推定部201は、サンプリング時刻毎に読み取った観測値に基づいて、既存航跡の更新、新たな航跡の生成及び新クラスタの作成を行うことができる。すなわち、所定のサンプリング周期ごとに、上述の更新航跡、新航跡、メモリトラック航跡のデータが、データ記憶部24に更新データとして蓄積される。
【0043】
次に、軌跡評価部202における処理を説明する。まず、軌跡評価部202は、軌跡推定部201が作成した種々のデータに基づいて、ゲート内判定行列を生成する(ステップS304)。このゲート内判定行列は、各クラスタに相関した観測値に対する解釈の可能性の一覧を示したものである。
【0044】
図6は、本発明の実施の形態1におけるゲート内判定行列を示した図である。このゲート内判定行列の各行は、該当時刻にクラスタと相関した観測値を示している。図6では、サンプリング時刻t=3における新たな観測値30、31、32が、それぞれ1〜3行目に相当する。また、列に関しては、第1列は、不要信号であることを示し、第2列から第7列までは、既存航跡T1〜T6を示し、終わりの3列は、新航跡であることを示している。
【0045】
全ての観測値は、不要信号である可能性を持っているので、第1列の要素は、全て1となる。また、第2列から第7列までは、既存航跡T1〜T6と新たな観測値30〜32により生成された更新航跡に相当する。第2列から第7列までの中に1が設定されている部分は9ヶ所あり、これらは先に説明した9種の更新航跡T11〜T61のそれぞれと対応している。
【0046】
例えば、第2列については、既存航跡T1と相関する観測値は、30、31であるので、第1、2行が1となり、第3行は0となる。すなわち、この第2列第1行の1は、更新航跡T11に相当し、第2列第2行の1は、更新航跡T12に相当している。さらに、終わりの3列については、先に説明した新航跡T71〜T73に相当し、これら3つの新航跡は、それぞれの起点にしか対応できないことから、単位行列の形となる。
【0047】
次に、軌跡評価部202は、ゲート内判定行列に基づいて航跡相関行列を生成する(ステップS305)。ここで、航跡相関行列とは、次の3条件を満たす全ての行列であり、各観測値の互いに矛盾しない解釈の組み合わせである。
条件1)航跡相関行列において1となる要素と同一の位置に当たるゲート内判定行列の要素は、必ず1となっている。
条件2)航跡相関行列の各行において1となる要素の数は1つのみである。
条件3)航跡相関行列の各列は、高々1つの要素が1となる。ただし、第1列はいくつ1の要素があってもよい。
【0048】
図7は、本発明の実施の形態1における航跡相関行列を示した図である。一例として、上述の3条件を満たす5種の航跡相関行列が示されている。
【0049】
次に、軌跡評価部202は、既存仮説を航跡相関行列によって更新処理する(ステップS306)。各仮説の更新では、その中に含まれている航跡以外の航跡の存在を仮定している航跡相関行列を除いた全ての航跡相関行列を使用する。例えば、先に説明した仮説H1では、航跡T1とT4が参照されている。図7の航跡相関行列(1)〜(5)の中では、(2)と(3)が航跡T2の存在を仮定しているので、仮説H1の更新には用いられないこととなる。
【0050】
H1を図7の航跡相関行列(1)によって更新すると、これは、サンプリング時刻t=3の観測値が全て不要信号であることを示しているので、メモリトラック航跡を用いて次のようなH11となる。
H11:{T81,T84}
【0051】
また、H1を図7の航跡相関行列(4)によって更新すると、更新航跡を用いて次のようなH12となる。
H12:{T11,T41}
さらに、H1を図7の航跡相関行列(5)によって更新すると、更新航跡を用いて次のようなH13となる。
H13:{T81,T72,T41}
【0052】
このようにして、軌跡評価部202は、可能な仮説と航跡相関行列の組み合わせによって既存仮説を更新し、新たな仮説を生成する。サンプリング周期ごとに生成されるこれらの仮説も、データ記憶部24に蓄積されることとなる。
【0053】
次に、軌跡評価部202は、信頼度の低い仮説の削除及び似た仮説の統合によって仮説群を縮小する準最適化処理を実行し、さらに、それに伴うクラスタ分離の処理を実行する(ステップS307)。
【0054】
ここで、準最適化処理には様々な手法があるが、下記の手法が知られている。
手法1)信頼度に閾値を設け、それに満たない信頼度を持つ仮説を全て削除する。
手法2)仮説数の上限を設け、信頼度が高い順に、設定した個数の仮説のみを残し、その他を削除する。
手法3)過去N回の時刻分における観測値の相関内容が同一の仮説を統合する。
【0055】
軌跡評価部202は、クラスタ分離処理の実行に当たっては、以下のように航跡間の観測値の共有具合を検査する。クラスタでは、原則として、航跡を構成する観測値の一部が共通であるそれぞれの航跡は、全て同じクラスタに属していなければならない。例えば、
Ta:11-20-30
Tb:21-32
Tc:20-32
なる3航跡が存在する場合には、観測値20を共有するTaとTc、及び観測値32を共有するTbとTcは、それぞれ同一クラスタを構成することとなる。
【0056】
この状況で、準最適化により航跡Tcが削除された場合を考えると、残りの2航跡Ta及びTbは、観測値を共有していないので、各々独立にクラスタを構成することができる。
【0057】
次に、軌跡評価部202は、仮航跡群の中から、目標を追跡している可能性が極めて高い仮航跡を本航跡に昇格させる本航跡判定処理を行う。(ステップS308)。この「目標を追跡している可能性が極めて高い」ことを判定するための条件として、例えば、次のような条件が挙げられる。
条件)その航跡が残存する全ての仮説に含まれる。
ステップS304〜S308で示したような一連の処理により、軌跡評価部202は、軌跡推定部201で生成された航跡をもとに、仮説を生成するとともに本航跡の判定を行うことができる。
【0058】
次に、仮説限定部203における処理を説明する。仮説限定部203は、軌跡評価部202で生成された仮説群の取捨選択を行う(ステップS309)。ステップS301で取得した単複判定結果に基づいて、目標が単数であると判定された場合には、既存の本航跡の更新による航跡のみからなる仮説を残し、残りは削除する。また、仮説限定部203は、ステップS301で取得した単複判定結果に基づいて、目標が複数であると判定された場合には、既存の本航跡の更新による航跡を残すとともに、分離目標に相当する仮航跡からなる仮説の更新、あるいは新目標からなる仮説の更新を行う。さらに、得られた複数の観測値の一方を不要信号とし、目標数を単数と見なす仮説を削除する。
【0059】
なお、上記のステップS309における仮説限定処理は、現在のサンプリング時刻での単複判定結果を利用した場合を説明したが、過去のサンプリング時刻における単複判定結果をさらに利用して、連続して数サンプルの間、単数目標、あるいは複数目標と判定されることにより、仮説限定処理を行うこともできる。これにより、複数目標とする判断処理の信頼性を向上させることができる。
【0060】
図8は、本発明の実施の形態1における目標追尾装置全体の処理のフローチャートであり、図2と図3のそれぞれのフローチャートをつなげた全体の処理を示している。図8のステップS801〜S806は、観測情報抽出部100の処理を示した図2のステップS201〜S206に相当する。
【0061】
また、図8のステップS807は、軌跡推定部201の処理を示した図3のステップS301〜S303をまとめて示したものである。また、図8のステップS808は、軌跡評価部202の処理を示した図3のステップS304〜S308をまとめて示したものである。さらに、図8のステップS809は、仮説限定部203の処理を示した図3のステップS309に相当する。
【0062】
図8の処理内容は、図2及び図3と同様であり、説明を省略する。図8のステップS801〜S809の一連の操作を所定のサンプリング時刻ごとに繰り返し実行することにより、時々刻々変化する観測値情報に基づく目標の追尾処理を行うこととなる。
【0063】
実施の形態1によれば、観測情報抽出部において判定された目標数の単複判定結果をもとにして、追尾処理部は、仮説の限定処理を実行することにより誤った仮説を作らずに信頼性の高い航跡のみに限定することができ、追尾の正確さの向上及び演算負荷の軽減を達成できる目標追尾装置を得ることができる。
【0064】
実施の形態2.
図9は、本発明の実施の形態2における目標追尾装置の構成図である。実施の形態1における図1の構成と比較すると、実施の形態2における図9の構成は、仮説限定部203の代わりに仮説信頼度修正部205を用いている。この違いを中心に、処理の詳細を説明する。
【0065】
追尾処理部200内の仮説信頼度修正部205は、ノイズ振幅の分布に応じて、仮説の信頼度を修正し、仮説限定を行う機能を有している。この具体的な処理について、図10のフローチャートにしたがって説明する。図10は、本発明の実施の形態2における目標追尾装置全体の処理のフローチャートである。図8のステップS801〜S809と異なる処理を中心に説明する。
【0066】
観測情報抽出部100で実行される処理に相当するステップS1001〜S1006は、実施の形態1のステップS801〜806と同様であり、観測情報抽出部100は、サンプリング周期ごとに読み取った観測信号に基づいて観測値情報を生成し、追尾処理部200に出力する。ただし、観測結果出力部105は、この観測値情報として、単数複数判定部102が単複判定処理に用いた閾値を含めたデータを生成し、追尾処理部200に出力する。
【0067】
次に、実施の形態1のステップS807、808と同様に、追尾処理部200内の軌跡推定部201は、軌跡推定(ステップS1007)を行い、さらに、軌跡評価部202は、軌跡評価(ステップS1008)を行う。次に、仮説信頼度修正部205は、観測情報抽出部100から受け取った観測情報に含まれている単複判定結果及び閾値に基づいて、軌跡評価部202で生成された仮説群の取捨選択を行う(ステップS1009)。
【0068】
実施の形態1と同様に、単数複数判定部102は、以下の判定式を用いて単複判定を行っている。
【0069】
【数2】

【0070】
これに対して、データ記憶部204は、上式において、目標が単数であるにもかかわらず判定式が閾値Nthを超える確率Pfalse(すなわち、閾値Nthを用いて、目標が単数であるにもかかわらず複数と誤判定してしまう確率)を、閾値と関連付けたデータとしてあらかじめ有している。この閾値と関連づけられた確率Pfalseは、閾値と連動して定まる観測信号のノイズ成分の分布から一義的にあらかじめ規定することができる。
【0071】
さらに、データ記憶部204は、閾値Nthにおける目標の探知確率PTARGETを、閾値と関連付けたデータとしてあらかじめ有している。この閾値と関連づけられた確率PTARGETも、閾値と連動して定まる観測信号のノイズ成分の分布から一義的にあらかじめ規定することができる。
【0072】
そして、仮説信頼度修正部205は、観測情報の一部として受け取った閾値に対応する確率Pfalse及び確率PTARGETをデータ記憶部204から取り出して、軌跡評価部202で生成された仮説の信頼度の計算結果に対し、確率Pfalse及び確率PTARGETで重み付けを行う。
【0073】
仮説信頼度修正部205は、単複判定結果として目標が複数と判定された場合には、各仮説について、次の処理を行う。近接する複数の観測値の一方を既追尾目標のものとし、他方の不要信号とみなす仮説については、その信頼度にPfalseを掛け合わせて更新する。また、近接する複数の観測値の一方を既追尾目標のものとし、他方を分離発生した目標の信号と見なす仮説については、その信頼度にPTARGETを掛け合わせて更新する。
【0074】
実施の形態2によれば、仮説生成において、ノイズレベルが高いため誤って目標分離が起こったと判定されてしまう可能性がある場合でも、仮説の信頼度をノイズ振幅のレベルに応じた確率で重み付けするので、仮説を限定することが可能となる。この結果、正確な目標分離判定を行うことができ、追尾の正確さの向上及び演算負荷の軽減を達成できる目標追尾装置を得ることができる。
【0075】
実施の形態3.
図11は、本発明の実施の形態3における目標追尾装置の構成図である。実施の形態2における図9の構成と比較すると、実施の形態3における図11の構成は、さらに仮説評価部300を備えている。さらに、単数複数判定部102は、仮説評価部300で所定のサンプリング時刻ごとに算出される閾値を用いて、次のサンプリング周期における単複判定を行うことを特徴としている。これらの違いを中心に、処理の詳細を説明する。
【0076】
仮説評価部300は、目標数推定部301と閾値決定部302とで構成される。目標数推定部301は、仮説限定部203で算出された仮説をもとに、目標数の期待値を計算する。さらに、閾値決定部302は、目標数推定部301で推定された目標数の期待値に基づいて、単複判定に用いる判定閾値を調整し、新たな閾値を算出する。
【0077】
一方、観測情報抽出部100内の単数複数判定部102は、算出された新たな閾値を採用して、次のサンプリング周期における単複判定処理を行う。この具体的な処理について、図12のフローチャートにしたがって説明する。図12は、本発明の実施の形態3における目標追尾装置全体の処理のフローチャートである。ステップS1201〜ステップS1209までの一連の処理は、基本的には実施の形態1のステップS801〜S809と同一であり、新たな処理としてステップS1210とS1211が追加されている。この異なる処理を中心に説明する。
【0078】
ステップS1201〜ステップS1209までの一連の処理により、現在のサンプリング時刻における仮説郡の取捨選択が行われる。次に、仮説評価部300内の目標数推定部301は、仮説限定部203で算出された仮説をもとに、次の手順により目標数の期待値を計算する。目標数推定部301は、各仮説の信頼度relと、各仮説の航跡数nから、目標数の期待値NTARGETを下式に従って算出する(ステップS1210)。
【0079】
【数3】

【0080】
次に、閾値決定部302は、算出された目標数の期待値NTARGETに基づいて、単数複数判定部102が単複判定処理に用いる判定閾値を調整する(ステップS1211)。具体的には、閾値決定部302は、目標数の期待値NTARGETが前回のサンプリング時刻において算出した目標数の期待値よりも減少した場合には、あらかじめ決められた量だけ閾値を下げることにより、閾値の調整を行う。また、閾値決定部302は、目標数の期待値NTARGETの減少が抑えられたことにより、もとの閾値に戻す調整を行う。
【0081】
観測情報抽出部100内の単数複数判定部102は、閾値決定部302によって新たに算出された閾値を、次回のサンプリング時刻における単複判定処理に採用する。このように閾値をサンプリング周期ごとに調整することにより、複数目標を検出しやすくすることができる。
【0082】
実施の形態3によれば、仮説評価部の働きにより、追尾処理部が推定した目標数に応じて、観測情報抽出部の目標数の単複判定閾値を変えることができ、サンプリング周期ごとに変化する検出結果に基づいて、単複判定をより正確に行うことができる。
【0083】
なお、閾値決定部は、目標数の比較に基づいて閾値を変更する場合を説明したが、目標間距離に基づいて閾値を変更することも可能である。例えば、目標間距離の短い複数の目標が検出できていない場合には、閾値を下げることにより、複数の目標を検出しやすくできる。
【0084】
実施の形態4.
図13は、本発明の実施の形態4における目標追尾装置の構成図である。実施の形態3における図11の構成と比較すると、実施の形態4における図13の構成は、仮説限定部203をなくした構成をなっている。このような構成においても、サンプリング周期ごとに単複判定閾値を変更しながら目標を検出することが可能である。
【0085】
仮説限定部203による仮説限定処理を施さずに、軌跡評価部202で評価した仮説に基づいて、仮説評価部300により新たな閾値の決定を行うことになる。図14は、本発明の実施の形態4における目標追尾装置全体の処理のフローチャートである。図14のステップS1401〜S1410における一連の処理は、図12のステップS1201〜S1211における一連の処理から、ステップS1209の仮説限定処理を除いたものであり、説明は省略する。
【0086】
また、閾値決定部302は、図12のステップS1211あるいは図14のステップS1410における閾値決定の処理ステップにおいて、次のような新たな閾値決定処理を施すこともできる。
【0087】
具体的には、閾値決定部302は、目標数の期待値NTARGETが前回のサンプリング時刻において算出した目標数の期待値よりも減少した場合には、あらかじめ決められた量だけ閾値を下げることにより、閾値の調整を行う。これにより、複数目標を検出し易くする。さらに、追尾処理部200が維持する全ての仮説において分離目標の航跡がある場合には、単数複数判定部102で使用する判定閾値を0とすることにより、無条件で複数目標と判定できるようにする。
【0088】
実施の形態4によれば、仮説限定部をなくした構成でも、仮説評価部の働きにより、追尾処理部が推定した目標数に応じて、観測情報抽出部の目標数の単複判定閾値を変えることにより、サンプリング周期ごとに変化する検出結果に基づいて、単複判定をより正確に行うことができる。さらに、追尾処理部が維持する仮説中で分離目標の存在が認められている場合には、無条件で複数目標と判定することにより、正確な観測値情報を得ることができる。
【0089】
なお、仮説評価部を用いて閾値を可変とする処理は、実施の形態2の構成に対しても同様に適用可能である。
【0090】
実施の形態5.
図15は、本発明の実施の形態5における目標追尾装置の構成図である。実施の形態4における図13の構成と比較すると、実施の形態5における図15の構成は、目標数推定部301をなくすとともに、観測情報抽出部100内には信号強度記憶部106が新たに設けられている。このような構成においても、サンプリング周期ごとに単複判定閾値を変更しながら目標を検出することが可能となる。
【0091】
実施の形態5における閾値決定部302は、追尾処理部200において、本航跡が過去に相関した観測値の情報に基づいて、判定閾値の調整を行う。信号強度の算出自体は、観測情報抽出部100内の単数複数判定部102によって、単複判定処理と同時に受信信号に基づいて行われ、信号強度記憶部106に記憶される。閾値決定部302は、追尾処理部200から本航跡が過去に相関した観測値に関するデータを受け取り、これらの観測値に対応する信号強度を信号強度記憶部106から取り出す。また、これらの観測値に対応しない信号強度は、ノイズ成分として信号強度記憶部106から取り出す。これらの信号強度データをもとに、閾値決定部302は、単数複数判定部102で使用する閾値を、次式を用いて決定する。
【0092】
【数4】

【0093】
ここで、右辺の分子であるnバーは、ノイズの平均値であり、右辺の分子であるΣバーは、航跡が過去に相関した観測値の信号強度の平均値である。この式は、目標の単複判定の判別式について、ノイズを考慮すると、以下が近似的に成立することを根拠としている。
【0094】
【数5】

【0095】
ここで、nΣ、nは、ノイズによって生じる、和ビーム、差ビームの誤差である。
【0096】
図16は、本発明の実施の形態5における目標追尾装置全体の処理のフローチャートである。図16におけるステップS1601〜S1608までの処理は、図14におけるステップS1401〜S1408までの処理と基本的に同一である。ただし、ステップS1603の単複判定処理において、単数複数判定部102は、さらに信号強度を算出し信号強度記憶部106に記憶する点が異なる。閾値決定部302は、ノイズの平均値と、航跡が過去に相関した観測値の信号強度の平均値とを用いて上述した式により、サンプリング周期ごとに新たな閾値を算出する(ステップS1609)。
【0097】
一方、ステップS1603の単数複数判定処理において、単数複数判定部102は、ステップ1609で閾値決定部302によって算出された新たな閾値を用いて、次回のサンプリング時刻における閾値処理を実行することとなる。
【0098】
実施の形態5によれば、目標の単数複数判定のための閾値を、追尾によって相関のある観測値の信号強度より算出するため、より正確に単複判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施の形態1における目標追尾装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における観測値抽出処理のフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態1における目標追尾処理のフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態1における既存航跡の状態を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1における既存航跡と最新の観測値との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1におけるゲート内判定行列を示した図である。
【図7】本発明の実施の形態1における航跡相関行列を示した図である。
【図8】本発明の実施の形態1における目標追尾装置全体の処理のフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態2における目標追尾装置の構成図である。
【図10】本発明の実施の形態2における目標追尾装置全体の処理のフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態3における目標追尾装置の構成図である。
【図12】本発明の実施の形態3における目標追尾装置全体の処理のフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態4における目標追尾装置の構成図である。
【図14】本発明の実施の形態4における目標追尾装置全体の処理のフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態5における目標追尾装置の構成図である。
【図16】本発明の実施の形態5における目標追尾装置全体の処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0100】
100 観測情報抽出部、101 距離情報算出部、102 単数複数判定部、103 単数角度情報算出部、104 複数角度情報算出部、105 観測結果出力部、106 信号強度記憶部、200 追尾処理部、201 軌跡推定部、202 軌跡評価部、203 仮説限定部、204 データ記憶部、205 仮説信頼度修正部、300 仮説評価部、301 目標数推定部、302 閾値決定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子からの追尾目標に対する受信信号から観測値情報を生成する観測情報抽出部と、
前記観測値情報に基づいて目標の航跡を更新する追尾処理部と
を備え、特定の目標の追尾を行う目標追尾装置において、
前記観測情報抽出部は、
複数のアンテナ素子からの追尾目標に対する受信信号に基づいて目標の距離情報を抽出する距離情報算出部と、
前記アンテナ素子毎の受信信号の和信号に対する差信号の比があらかじめ決められた閾値以上であるか否かを比較し、近接した観測領域で目標が単数であるか複数であるかを判別する単数複数判定部と、
前記単数複数判定部で単数と判定された目標に対して、前記目標の角度情報を算出する単数角度情報算出部と、
前記単数複数判定部で複数と判定された目標に対して、近接した複数目標の角度情報を算出する複数角度情報算出部と、
前記距離情報算出部で算出された前記距離情報と、前記単数複数判定部で判定された単複判定結果と、前記単数角度情報算出部及び前記複数角度情報算出部で算出された角度情報とを含む観測値情報を生成して出力する観測結果出力部と
を有し、
前記追尾処理部は、
所定のサンプリング周期ごとに更新される目標の航跡に関するデータを蓄積するデータ記憶部と、
前記観測情報抽出部からの前記観測値情報と、前記データ記憶部に記憶された前回のサンプリング時刻に更新した目標の航跡に関するデータとに基づいて、今回のサンプリング時刻における目標の航跡に関するデータを生成し、前記データ記憶部の前記目標の航跡に関するデータを更新する軌跡推定部と、
前記目標の航跡に関するデータを組み合わせて航跡の仮説を生成し、生成された仮説の信頼度を計算する軌跡評価部と、
を有し、
前記追尾処理部は、前記単数複数判定部で判定された単複判定結果に基づいて、前記単複判定結果が単数であると判定されたときは単数目標と判断し、前記軌跡評価部で生成された前記航跡の仮説の中から既存の本航跡の更新による航跡の仮説のみを残し、前記単複判定結果が複数であると判定されたときは複数目標と判断し、前記軌跡評価部で生成された前記航跡の仮説の中から既存の本航跡の更新による航跡の仮説を残すとともに、前記既存の本航跡から分離発生した新目標に相当する航跡の仮説を残す仮説限定部
をさらに備えたことを特徴とする目標追尾装置。
【請求項2】
請求項1に記載の目標追尾装置において、
前記仮説限定部は、前記単複判定結果が複数であると判定された状態が複数のサンプリング周期で連続して発生したときは複数目標であると判断し、前記軌跡評価部で生成された前記航跡の仮説の中から既存の本航跡の更新による航跡の仮説を残すとともに、前記既存の本航跡から分離発生した新目標に相当する航跡の仮説を残す
ことを特徴とする目標追尾装置。
【請求項3】
複数のアンテナ素子からの追尾目標に対する受信信号から観測値情報を生成する観測情報抽出部と、
前記観測値情報に基づいて目標の航跡を更新する追尾処理部と
を備え、特定の目標の追尾を行う目標追尾装置において、
前記観測情報抽出部は、
複数のアンテナ素子からの追尾目標に対する受信信号に基づいて目標の距離情報を抽出する距離情報算出部と、
前記アンテナ素子毎の受信信号の和信号に対する差信号の比があらかじめ決められた閾値以上であるか否かを比較し、近接した観測領域で目標が単数であるか複数であるかを判別する単数複数判定部と、
前記単数複数判定部で単数と判定された目標に対して、前記目標の角度情報を算出する単数角度情報算出部と、
前記単数複数判定部で複数と判定された目標に対して、近接した複数目標の角度情報を算出する複数角度情報算出部と、
前記距離情報算出部で算出された前記距離情報と、前記単数複数判定部で判定された単複判定結果と、前記単数角度情報算出部及び前記複数角度情報算出部で算出された角度情報とを含む観測値情報を生成して出力する観測結果出力部と
を有し、
前記追尾処理部は、
所定のサンプリング周期ごとに更新される目標の航跡に関するデータを蓄積するデータ記憶部と、
前記観測情報抽出部からの前記観測値情報と、前記データ記憶部に記憶された前回のサンプリング時刻に更新した目標の航跡に関するデータとに基づいて、今回のサンプリング時刻における目標の航跡に関するデータを生成し、前記データ記憶部の前記目標の航跡に関するデータを更新する軌跡推定部と、
前記目標の航跡に関するデータを組み合わせて航跡の仮説を生成し、生成された仮説の信頼度を計算する軌跡評価部と、
を有し、
前記観測結果出力部は、前記単数複数判定部で単複判定に使用される閾値をさらに含む観測値情報を生成して出力し、
前記データ記憶部は、単複判定処理で目標を複数と誤判定する確率と閾値とを関連づけたデータ、及び目標の検知確率と閾値とを関連づけたデータをさらに有し、
前記追尾処理部は、前記単数複数判定部で判定された単複判定結果及び前記単数複数判定部で単複判定に用いられた閾値に基づいて、前記軌跡評価部で生成された前記仮説の信頼度に対して、前記誤判定する確率あるいは前記検知確率を乗算することにより前記信頼度を修正する仮説信頼度修正部
をさらに備えたことを特徴とする目標追尾装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の目標追尾装置において、
所定のサンプリング周期ごとに新たな閾値を算出する仮説評価部をさらに備え、
前記仮説評価部は、
前記追尾処理部で生成された仮説の数及びそれぞれの信頼度に基づいて、目標数の期待値を算出する目標数推定部と、
所定のサンプリング周期毎に算出される前記目標数の期待値の変化に基づいて、前記単数複数判定部で使用する閾値に対して、あらかじめ決められた量だけ変更した新たな閾値を算出する閾値決定部と
を有し、
前記単数複数判定部は、前記閾値決定部によって算出された前記新たな閾値を用いて単複判定処理を行う
ことを特徴とする目標追尾装置。
【請求項5】
請求項4に記載の目標追尾装置において、
前記閾値決定部は、前記追尾処理部が維持する全ての仮説において分離目標の航跡があるときは、新たな閾値を0と設定し、
前記単数複数判定部は、前記閾値決定部によって前記新たな閾値が0と設定されたときは、無条件で複数判定処理を行う
ことを特徴とする目標追尾装置。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の目標追尾装置において、
所定のサンプリング周期ごとに新たな閾値を算出する仮説評価部をさらに備え、
前記観測情報抽出部は、受信信号の信号強度を記憶する信号強度記憶部をさらに備え、
前記仮説評価部は、前記追尾処理部から、本航跡が過去に相関した観測値に関するデータを受け取り、前記観測値に対応する信号強度を前記信号強度記憶部から取り出し、取り出した前記信号強度に基づいて新たな閾値を算出する閾値決定部を有し、
前記単数複数判定部は、所定のサンプリング周期ごとに受信信号の信号強度を算出して前記信号強度記憶部に記憶させるとともに、前記閾値決定部によって算出された前記新たな閾値を用いて単複判定処理を行う
ことを特徴とする目標追尾装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−3256(P2006−3256A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180906(P2004−180906)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】