説明

直射光による温度上昇が起こりにくい自動車(密閉室内)用内装品及びこれらを用いた自動車の室内温度上昇抑制方法

【課題】簡易に一体成形可能な赤外線遮蔽機能を有する自動車用内装品及びこれを用いた自動車室内の温度上昇を抑える方法を提供する。
【解決手段】平均粒子径が0.5〜20μmの赤外線遮蔽能を有する酸化チタンを、樹脂に対し0.7〜70重量%、好ましくは0.2〜10重量%、さらに好ましくは0.3〜3重量%練り込んだ樹脂組成物を主要構成要素とする自動車用内装品、および前記自動車用内装品を装備することを特徴とする自動車の室内温度上昇抑制方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉室内用の内装品や自動車部品及び自動車用内装品、並びにこれを用いた自動車の室内温度上昇抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の車体重量を軽くして、経済性を増す試みが行われている。車体の軽量化は、主に走行時の経済性や性能あるいは安全性を目的としているが、製造時の経済性も同時に満足し、なおかつ、従来の安全性や快適性を損わない手法であることが求められる。
【0003】
たとえば、冷房装置を小型軽量化するためには、小型軽量化しても同一性能を維持する冷房装置を開発するか、あるいは、外部から車体へ進入する熱量を小さくすることにより負荷を小さくし、性能の低い冷房装置を用いても同一の快適性を確保する必要がある。
【0004】
しかし、外部から車体へ進入する熱量を小さくする方法を用いる場合、車体に通常の断熱材を用いたのでは十分な軽量効果は得られないことから、従来と車体の構成を変えずに外部から進入する熱量を小さくできる方法であることが好ましい。
【0005】
また、夏の炎天下では、車の室内は70℃を越える程に温度が上がり、特に、ガラス窓を通じて直射日光が当たるダッシュボード等のインストルメントパネル(インスツルメンツパネル)、(パワー)ステアリング、ドアの内バリ等の内装関係の自動車部品では高い耐熱性を要求され、使用できるその材質等が限定される。もし、これらの自動車用内装品や部品に太陽熱を遮蔽する機能があれば、直射日光が当たっても温度上昇を抑えた自動車を製造することができる。
【0006】
一方、従来の自動車の車体には、専ら錆等を防止したり、美観を付与するという観点から、防錆や対候性に優れ、また光沢や平滑性、色彩等に優れたものが求められており、また、シート、天井内張、キーロックハウジング、インスツルメンツパネル、ステアリング、ドアトリム等の内装関係の自動車部品は、専ら美観の付与の観点からデザインされ、製造されている。
【0007】
このように、特に、従来の自動車部品は専ら美観や耐久性の観点から製造され、太陽熱遮蔽の観点からの配慮はあまりなされてこなかった。
【0008】
そのため、高明度の自動車用内装品や部品については、元来、可視光線の反射率が高く、太陽熱遮蔽の観点からの配慮がなくても、ある程度の遮蔽性は自ずから有しているが、特に低明度色の車体部品は著しく太陽光を吸収し、たとえば真夏の炎天下に放置された自動車のインストルメントパネル(インスツルメンツパネル)やステアリングは90℃を越え、素手で触れることもできない程に温度が上昇する。また、密閉した状態の自動車を真夏の炎天下に駐車しておくと、車室内は70℃を越え、乗車する時極めて不快である。
【0009】
また、このような問題を解決するために、特開平11−302549号公報及び特開2002−60698号公報の中では、樹脂中に含まれる赤外線吸収作用が大きいカーボンブラックの含有量を一定値以下に抑え、かつ特定の顔料を配合することにより、発色可能範囲が広く意匠の自由度が高い赤外線反射組成物又は赤外線反射体からなる赤外線遮蔽層を自動車用内装品や部品の表面に形成させる技術が提案されている。
【0010】
しかしながら、樹脂等からなる自動車内装品の表面上に赤外線遮蔽層を形成させるためには、内装品製造工程が複雑になる。
【0011】
また、赤外線遮蔽のために用いられる顔料には、高い屈折率を有し可視光線を最も散乱し易いとされる平均粒子径0.2μm程度に調整された微粒子を使用しなければならず、このため高価となり、樹脂等との混練性が悪いなどその取扱いも必ずしも容易ではない。
【特許文献1】WO2004−52786
【特許文献2】特開平11−302549
【特許文献3】特開2002−60698
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、主に樹脂組成物からなり、一体成形される自動車部品自体に赤外線遮蔽機能を持たせることで、かかる自動車部品の製造工程の簡略化、作業の容易化を図り、これを用いた自動車の炎天下での直射光によるそれら部品の表面温度や車室内の温度上昇を抑えることにある。
【0013】
この結果、乗車時の不快感を低減し、自動車部品の製造時においては、材料に求められる耐熱性の許容限界を緩和し、使用可能な材料の材質範囲を拡大する。そして、このような使用可能な材料の拡大は、結果として経済性を増すことを可能とする。また、車載冷房装置を小型軽量化させることが可能となるので、製造時や走行時の経済性を増すことができる。
【0014】
さらに、本発明の他の目的は、上記自動車部品だけではなく、密閉系室内の内装品に対しても本発明による内装品を用いることにより、太陽光や直射光による温度上昇が起こりにくい室内を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、太陽光による温度の上昇を防止するため鋭意研究を重ねた結果、自動車部品として用いる樹脂製品に、赤外線を遮蔽する特徴を有する比較的大きな粒子径の酸化チタンを練り込むことにより、優れた太陽熱遮蔽効果を発揮し、自動車部品や自動車密閉室内の温度上昇を抑制できることを見出した。
【0016】
すなわち本発明の第1の構成は、平均粒子径が0.5〜20μmの赤外線遮蔽能を有する酸化チタンを、樹脂に対し0.7〜70重量%、好ましくは0.2〜10重量%、さらに好ましくは0.3〜3重量%練り込んだ樹脂組成物を主要構成要素とする自動車用内装品である。
【0017】
自動車用内装品は、大きく分けると、インストルメントパネル、シート、ドアトリム、パワーステアリング、天井内張り、キーロックハウジング等に分類されるが、本発明品はそれらの内装品において樹脂が使用されている箇所であれば、適用可能である。
【0018】
また、本発明において、使用する酸化チタンの赤外線遮蔽能とは、1500〜2600nmの赤外線波長領域における積分反射率が90%以上であることをいう。
【0019】
本発明の第2の構成は、上記赤外線遮蔽能を有する酸化チタンを含有する自動車用内装品を装備することによる自動車車体の温度上昇低減方法である。
【0020】
そして、本発明の第3の構成は、平均粒子径が0.5〜20μmの赤外線遮蔽能を有する酸化チタンを、樹脂に対し0.1〜70重量%練り込んだ樹脂組成物を主要構成要素とする密閉室内用内装品である。
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明における自動車用内装品あるいは自動車部品とは、自動車運転時において運転者や搭乗者が占める空間、すなわち車室内に設置される内装品や部品をいう。
【0022】
すなわち、ステアリングホイール、ダッシュボード、インスツルメント(ツ)パネル、コンソール、ドアトリム(内バリ)、シート、(パワー)ステアリング、天井内張り、キーロックハウジング等に分類される自動車部品として設置可能な物品をいい、そのような自動車用内装品・部品としては、例えば、次のようなものがある。
【0023】
インストルメントパネル(インパネ)、ドアトリム(トリム)、ピラーガーニッシュ(ピラー)、ハンドル(アシストハンドル)、レバーやノブのグリップ、コンソールボックス、ダッシュボード、スピーカーカバー、窓のモール、肘掛け、ペダルカバー、パッケージトレイ、リアトレイ、グローブボックス、グローブボックス・アッシュ・トレー(灰皿)、カップホルダー、センタークラスター、センターコンソールパネル等における樹脂成型部、カーテン部品、サンシェード、サンルーフシェード、天井材、ヘッドレスト、ルーフライニング、フロアー材、座席シート等などのシート部材。
【0024】
本発明で用いられる自動車用内装品あるいは自動車部品を構成する主要な樹脂組成物としては、一般的に自動車用内装品に適用される、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の樹脂組成物を用いることができるが、赤外線遮蔽材料との混練性を考慮して、少なくとも平均粒子径0.5〜20μmの酸化チタン等の粉体を練り込むことができるような樹脂組成物や配合物である必要がある。
【0025】
上記樹脂組成物として用いられる樹脂としては、具体的には、ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、ポリブタンジエン樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミンフェノール樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリル塩化ビニル共重合樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、変成PPO樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ブタジエンスチレン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリブチレン樹脂、けい素樹脂、ポリ4フッ化エチレン樹脂、ポリフッ化エチレンプロピレン樹脂、ペルフロロアルコキシフッ化プラスチック、ポリフッ化ビニリデン樹脂、MBS樹脂、メタクリル−スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアリルスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が挙げられ、自動車用内装品等に好適に使用可能である。
【0026】
また、樹脂成形の主成分として用いられる樹脂としては、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレンアクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタアクリル酸系樹脂、メタアクリル酸エステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられ、これらの熱可塑性を有する樹脂を用いると、成形品を容易に作成することができる。
【0027】
なお、押出成形を行う場合には、塩化ビニル系樹脂が押出速度などの生産性、強度、加工性に優れているので好適である。好ましいのは、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂であるが、これら成形用樹脂は、単独で使用しても二種以上を併用して使用しても良い。
【0028】
上記内装用樹脂組成物に練り込む、赤外線遮蔽能を有する酸化チタンとしては、平均粒子径が0.5〜20μm以下、好ましくは0.8〜10μm以下であることが望ましい。なお、酸化チタンの平均粒子径の測定方法については、日本電子社製 透過型電子顕微鏡 JEM−1230を用いて酸化チタンの一次粒子径を写真に撮影した後、その画像をマウンテック社製 画像解析式粒度分布測定ソフトウェアMAC−View Ver.3にて統計処理を行い算出した。平均粒子径の算出にあたっては体積基準の円相当径を採用した。また、ここでいう赤外線遮蔽能とは、具体的には、1500〜2600nmの赤外線波長領域において、積分反射率が90%以上である機能を意味する。
【0029】
一般的に顔料として使用されている酸化チタンは、平均粒子径が0.2μm程度の可視光線に対する遮蔽性に優れた酸化チタンをいい、このような酸化チタンは従来、高い屈折率を有するので、塗料・プラスチック等に配合されると優れた隠蔽力(下地を隠す能力)を発揮する白色顔料として知られている。そしてその白色顔料としての機能を発揮するために、可視光線を最も散乱しやすい粒子径にコントロールされているので、本発明で用いる酸化チタンとは本質的に異なる。
【0030】
本発明で使用する酸化チタンは、平均粒子径としては一般的な顔料酸化チタンよりも大きい0.5μm以上なので、太陽光線中で約50%を占め、最も熱エネルギーに変換されやすいといわれている赤外線成分を、物体表面で吸収させず、効率良く散乱させることができる。
【0031】
このため、一般的な顔料酸化チタンが白色顔料として求められている可視光線における散乱効率は逆に下がってしまい、外観上の白さは低減される。
【0032】
このことは、例えば有色顔料等を併用した系、特に濃彩色系で使用する場合には、白色顔料という観点では白ぼけする等の問題から使用量が制限されていた分野についても配合量における許容範囲が広がる。
【0033】
また、粒子径が大きくなることで単位重量あたりの粒子個数が従来の酸化チタンに比べ十数倍程度減少するので、樹脂との親和速度も向上しかつ樹脂練合時に各粒子をばらばらに分散させるエネルギーを低減できるというメリットもある。
【0034】
なお、上記酸化チタンにおいて樹脂組成物に対する分散性向上の目的から、粒子表面に表面処理を行ってもよい。
【0035】
表面処理を行う際に被覆する無機物としては、アルミニウム、ケイ酸、ジルコニウム、亜鉛、チタン、スズ、アンチモン、セリウムの酸化物あるいは含水酸化物などが挙げられ、表面処理に使用する化合物として、例えばアルミン酸ソーダ、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ケイ酸ソーダ、含水ケイ酸、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸チタニル、塩化チタン、硫酸スズ、塩化スズ、塩化アンチモン、塩化セリウム、硫酸セリウムなどを用いることができる。同様に表面処理を行う際に被覆する、有機物としては、例えばアミノシラン、アルキルシラン、ポリエーテルシリコーン、シリコーンオイルなどの有機ケイ素化合物や、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ソーダ、ラウリン酸、アルギン酸、アルギン酸ソーダ、トリエタノールアミン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0036】
酸化チタンに対する表面処理において、処理する物質種の組み合わせや量についての制限はなく、使用する状況や必要となる特性に応じて、適宜適用するとよい。
【0037】
樹脂組成物中に練り込む赤外線遮蔽能を有する酸化チタンの配合量としては、0.1〜70重量%が好ましい。配合量が0.1重量%未満では、内装品樹脂組成物が赤外線遮蔽能を充分に発揮できなくなる。また、配合量が70重量%を越えると樹脂への練合性が悪くなり合成樹脂としての物性を損なう。
【0038】
本発明で用いられる樹脂組成物には、上記赤外線遮蔽能を有する酸化チタンと熱可塑性樹脂とを含有していれば、その他の成分として、充填材、改質剤、熱安定剤、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤等を、本発明の特性を損なわない範囲内で含有していてもよい。
【0039】
また、さらに、同様な赤外線遮蔽能を有する酸化物を配合してもよいし、断熱機能を付与する目的で、ガラスバルーン、シラスバルーン、あるいはポリスチレン等の樹脂を用いた球状中空粒子を配合することも可能である。
【0040】
内装用樹脂組成物には、上記赤外線遮蔽能を有する酸化チタンの他に、必要に応じて、本発明の特性を損なわない範囲内で一般に使用される着色剤を含有させて着色樹脂組成物としてもよい。
【0041】
着色剤として使用できる物質の具体例を挙げると、二酸化チタン顔料、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム等の白色顔料、コバルトブルー、群青、セリアンブルー、フタロシアニンブルー等のシアン系顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガンバイオレット等のマゼンタ系の顔料や染料、キナクリドン系赤味顔料、カーボンブラック、鉄黒などの黒色顔料等が挙げられる。
【0042】
また、着色剤として使用される顔料等は、その顔料等自体が赤外線遮蔽能を有していてもよく、これらは適宜組み合わせて使用することができる。
【0043】
本発明で用いられる樹脂組成物は、二酸化チタン顔料、熱可塑性樹脂を混合した後、混練機を用いて溶融混練後、成形することにより製造される。
【0044】
赤外線遮蔽能を有する酸化チタンを樹脂組成物に配合する場合には、一般的な練込方法が適用できる。その際の混練順序等には制限はなく、全てを直接一度に混合しても、充填材、改質剤、熱安定剤、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤等を分散しながら成形してもよい。
【0045】
混合方法としてはヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の一般的な混合機を用いて混合することが好ましく、混練機としては、例えば二本ロール、三本ロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、単軸または2以上の多軸スクリュー式混練押し出し機やローター式混練機が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0046】
赤外線遮蔽能を有する酸化チタンを配合した樹脂組成物の成形品は、所定の酸化チタン濃度に調整した樹脂組成物を成形する方法や、酸化チタンを樹脂組成物中に高濃度で分散させたマスターバッチを作製した後、これらの熱可塑性樹脂で所定の濃度に希釈し成形する等の方法を用いて作製することができる。また、熱可塑性樹脂等の上記配合成分を溶融混練して樹脂組成物を得て、これを押出機等により成形してもよい。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、自動車部品として用いる樹脂製品に、赤外線を遮蔽する特徴を有する比較的大きな粒子径の酸化チタンを練り込むことにより、安価で、しかも特別な製造工程を必要としない、優れた太陽熱遮蔽効果を発揮する自動車部品を提供することができる。
【0048】
この結果、本発明による自動車用内装品を用いると、例えば、炎天下においてガラス窓を通じて直射日光が当たり続けても、車内部品の表面温度や車室内の温度上昇を抑えることができるようになり、このため、乗車時の不快感を低減し、また、自動車部品の製造時における材料に求められる耐熱性の許容限界を小さくすることで、使用可能材料の材質範囲の拡大、経済性向上などを図ることができる。
【0049】
また、本発明の自動車用内装品や自動車部品で用いる樹脂組成物には、直射日光に対する物品表面温度やそれが設置されている室内の温度に対して、その上昇速度を低減できることから、同様な条件にある比較的密閉性の高い車両や居室などの室内に、本発明の自動車用内装品に相当する室内内装品を設置しても、同様の効果を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明を実施例により説明する。なお、本発明は以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【実施例】
【0051】
酸化チタンの赤外線遮蔽能測定方法
酸化チタン粉体の加圧成形体を作製し、測定範囲240〜2600nmの積分球付き分光光度計を用いて、10°の入射角で試料に照射し、反射率を測定する。測定装置としては、例えば、日立社製U−4100を使用し、1500〜2600nmの波長における積分反射率を算出する。
【0052】
なお、本実施例で用いた平均粒子径1.0μmの酸化チタンにおける可視光反射率は約93%、1500〜2600nmにおける反射率は、約94%であった。また、比較例で用いた平均粒子径0.2μmの酸化チタンにおける可視光反射率は約98%、1500〜2600nmにおける反射率は、約86%であった。
【0053】
赤外線遮蔽能を有する樹脂組成物の作成
遮熱効果を明確に示すため、本発明の主要構成要素である樹脂組成物を試験板の形態とし、それを密閉空間に設置した場合について遮熱試験を行った。
【0054】
表1
実施例1 比較例1 実施例2 比較例2
酸化チタン 1 1 0.5 0.5
LDPE樹脂 100 100 100 100
合計 101 101 100.5 100.5

表1に示す割合で、各実施例、比較例の樹脂組成物を作成した。
・LDPE樹脂:スミカセンF101−1(住友化学工業(株)製LDPE樹脂)
・実施例1、2の酸化チタン:テイカ社製JR−1000(平均粒子径1.0μm)
・比較例1,2の酸化チタン:テイカ社製JR−405(平均粒子径0.2μm)
【0055】
混練条件
φ6×15試験用ロール機(入江鉄工所社製加熱二本ロール練合機)を用いてLDPE樹脂を2分間溶融したのち、酸化チタンをそれぞれ添加し5分間練り合わせた。これらを単動型圧縮成形機F−37型(新藤金属工業所社製加圧プレス機)を用いて試験板を作製した。
・試験板の大きさ:150×200×1(mm)(実施例1、比較例1)
65× 85×0.1(mm)(実施例2、比較例2)
【0056】
遮熱試験方法
上記試験板について、以下に示すように箱状の発泡樹脂製断熱箱上部に設置し、白熱灯を照射することにより、遮熱特性の測定を行った。

・試験容器:発泡樹脂製断熱箱(箱内部体積 8160cm
・照射灯:125W白熱電球
赤外線乾燥用IR100V125WRHE(東芝ライテック社製)
・試験板設置位置:光源直下 15cm
・温度測定用熱電対測定位置:
裏面温度:光源直下15cm試験板の裏面
空間温度:発泡樹脂製断熱箱内の中央空間
(光源より30cmの白熱灯直射光が当たらない箇所)
・照射灯照射時間:20分
【0057】
測定方法
・各実施例、比較例の試験板をそれぞれ用意する。
・発泡樹脂製断熱箱上に試験板同サイズ開放空間を作成し、試験板を水平に設置し、各試験板裏面中央および発泡樹脂製断熱箱内の中央空間に熱電対による温度センサーを固定する。
・上記条件で白熱灯を点灯、照射する。
・照射直後から20分後まで、5分毎に熱電対の温度(裏面温度および空間温度)を測定する。
上記測定を、各実施例、比較例で得た試験板について、それぞれ実施した。
【0058】
以上の測定結果を、表2(裏面温度)および表3(空間温度)に示す。いずれの数値も温度の単位は℃である。
【0059】
表2(裏面温度)
実施例1 比較例1 実施例2 比較例2
照射直後 26.0 25.9 22.6 22.8
5分後 71.8 76.0 45.2 46.3
10分後 81.5 84.8 52.0 53.3
15分後 84.2 87.5 55.1 57.0
20分後 85.4 88.4 55.1 57.0

【0060】
表3(空間温度)
実施例1 比較例1 実施例2 比較例2
照射直後 25.8 25.9 22.5 22.6
5分後 38.9 42.0 45.2 47.5
10分後 45.7 49.6 47.4 50.2
15分後 48.5 52.8 47.7 50.6
20分後 49.7 54.1 48.0 51.0

【0061】
上記の結果から明らかなように、本発明の主要構成要素である樹脂組成物は、一般品と比較して直射光による物品温度上昇や密閉空間温度上昇に対し、その温度上昇を抑制する効果のあることが判った。
【0062】
この結果、上記樹脂組成物を主要構成要素とする本発明による自動車部品は、自動車部品自体に赤外線遮蔽機能を持たせることで、特別に赤外線遮蔽層を形成させる必要なく部品の一体成形を可能とし、また作業の容易化を図り、これを用いた自動車の炎天下での直射光によるそれら部品の表面温度や車室内の温度上昇を抑えることが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が0.5〜20μmの赤外線遮蔽能を有する酸化チタンを、樹脂に対し0.1〜70重量%練り込んだ樹脂組成物を主要構成要素とする密閉室内用内装品。
【請求項2】
前記密閉室内用内装品は、自動車用内装品である請求項1に記載の内装品。
【請求項3】
前記自動車用内装品は、インストルメントパネル、ステアリング、シート、天井内張、ドアトリム又はキーロックハウジングである請求項2に記載の内装品。
【請求項4】
前記酸化チタンは、1500〜2600nmの赤外線波長領域における積分反射率が90%以上である請求項1ないし3に記載の内装品。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の自動車用内装品を装備した自動車。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の自動車用内装品を装備することを特徴とする自動車の室内温度上昇抑制方法。



















【公開番号】特開2006−341628(P2006−341628A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166393(P2005−166393)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000215800)テイカ株式会社 (108)
【Fターム(参考)】