省エネルギー型ロボット関節駆動制御システム
【課題】本発明は、ロボットの準受動制御において、能動期と受動期の切り替えを遅延なく確実に実現することのできるロボット関節駆動制御システムを提供することを目的とする。
【解決手段】準受動制御の受動期において、出力軸にかかる回転アクチュエータの減速機に起因する摩擦トルクを相殺するような回転トルクを、駆動モータによって付与する。この際、駆動モータの回転トルクは、ロボット関節の出力軸に設けられたトルクセンサの測定値を入力としてフィードバック制御により導出する。その結果、出力側リンクは、減速機の存在にもかかわらず、あたかも自由関節に接続されているかのように挙動し、エネルギー効率の高いロボット関節駆動制御システムを実現する。
【解決手段】準受動制御の受動期において、出力軸にかかる回転アクチュエータの減速機に起因する摩擦トルクを相殺するような回転トルクを、駆動モータによって付与する。この際、駆動モータの回転トルクは、ロボット関節の出力軸に設けられたトルクセンサの測定値を入力としてフィードバック制御により導出する。その結果、出力側リンクは、減速機の存在にもかかわらず、あたかも自由関節に接続されているかのように挙動し、エネルギー効率の高いロボット関節駆動制御システムを実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御システムに関し、より詳細には、省エネルギー型ロボット関節駆動制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、二足歩行ロボットに関して、種々の研究開発がなされてきたが、その多くは、各関節に設けられたアクチュエータを予め定められた軌道計画に基づいて、歩行サイクルの全時間にわたり能動的に駆動制御してロボットを歩行させるという、能動制御の思想に基づくものであった。
【0003】
一方、人間が実際に行なっている歩行運動に目をやれば、歩行サイクル中、筋肉に大きな力が入るのは、足を蹴り出す際のほんの僅かな時間だけであり、蹴り出した足を前に振り出した後、これを地面に下ろして着地するまでの間は、もっぱら慣性力や重力を利用している。つまり、人間は、無意識のうちに非常にエネルギー効率の高い歩行運動を実現しているのである。
【0004】
この点、上述した能動制御型の二足歩行ロボットは、歩行サイクルの全時間にわたって駆動力を使用しており、上述した人間の歩行運動と比較するとエネルギー効率の悪い動きをしているということができる。
【0005】
この点につき、T. McGeer, “Passive Dynamic Walking,” The International Journal of Robotics Research, Vol.9, No.2, pp.62-68, 1990.(非特許文献1)は、アクチュエータ等の駆動手段を持たない機構が、それ自身に内在する動特性に基づいて歩行する現象(受動的動歩行)について開示する。近年、このような受動的動歩行に着想を得て、アクチュエータ駆動式の二足歩行ロボットの省エネルギー化を企図した、いわゆる準受動制御と呼ばれる制御手法についての研究が行なわれている。
【0006】
準受動制御とは、歩行サイクルにおいて、アクチュエータの駆動力によって機構を能動的に駆動制御する時間(以下、能動期として参照する)と、機構をアクチュエータの駆動力から切り離し、機構自体に働く慣性力や重力のみを利用してこれを受動的に運動させる時間(以下、受動期として参照する)とを交互に設けることによって、人間の歩行のようにエネルギー効率の良い歩行運動を行なわせる制御をいう。ここで、準受動制御においては、受動期に足が慣性によって自然に振り出されなければならないが、従来の能動制御型ロボットには各関節にアクチュエータが設けられており、これに起因する機械抵抗が足の受動的な動きを妨げる。この点につき、図13を参照して説明する。
【0007】
図13(a)は、従来の能動制御型ロボット500の駆動部を概念的に示す。ロボット500においては、リンク502と回転アクチュエータ504とが軸関節506によって接続されている。また、回転アクチュエータ504は、モータ508と、これに接続される減速機510とから構成されており、モータ508は、モータドライバ512によって駆動制御されている。
【0008】
ここで、仮に、モータドライバ512からモータ508への電力供給を断ったとしても、減速機510が有する機械抵抗によって、それまでの回転方向とは逆向きのトルクτが軸関節506に作用する。その結果、リンク502は、その慣性による動きが妨げられてすぐに停止してしまう。
【0009】
この点につき、M. Okada, T. Shinohara, T. Gotoh, S. Ban, and Y. Nakamura, Double Spherical Joint and Backlash Clutch for Lower Limbs of Humanoids, Proceedings of IEEE International Conference on Robotics and Automation, Taiwan, pp. 491-496, 2003.(非特許文献2)は、能動期と受動期とを機構的な仕掛けで切り替える構成を開示する。図13(b)は、非特許文献2の開示するロボット600の駆動部を概念的に示す。ロボット600においては、リンク502の軸関節506と減速機510とをクラッチ514によって物理的に切り離すことで、能動期と受動期の切り替えを行なっている。
【0010】
図13(b)に示す構成によれば、確かに、受動期におけるリンク502の自由運動は担保されるが、機構自体が複雑になることに加え、バッククラッシュのリスクを負うことになる。そして、なにより、機構的に切り替える方式では、構造的にタイミング遅延が避けられず、予定したタイミングで能動期と受動期の切り替えを行なうことができないという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】T. McGeer, “Passive Dynamic Walking,” The International Journal of Robotics Research, Vol.9, No.2, pp.62-68, 1990.
【非特許文献2】M. Okada, T. Shinohara, T. Gotoh, S. Ban, and Y. Nakamura, Double Spherical Joint and Backlash Clutch for Lower Limbs of Humanoids, Proceedings of IEEE International Conference on Robotics and Automation, Taiwan, pp. 491-496, 2003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、ロボットの準受動制御において、能動期と受動期の切り替えを遅延なく確実に実現することのできるロボット関節駆動制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、ロボットの準受動制御において、能動期と受動期の切り替えを遅延なく確実に実現することのできるロボット関節駆動制御システムにつき鋭意検討した結果、ロボット関節の出力軸にかかる回転アクチュエータの減速機に起因する摩擦トルクを、駆動モータの回転トルクによって相殺する構成を着想した。さらに、駆動モータの当該回転トルクを、出力軸に設けられたトルクセンサの測定値を入力としたフィードバック制御により導出する構成に想到し、本発明に至ったのである。
【0014】
すなわち、本発明によれば、ロボット関節の出力軸を駆動制御するシステムであって、前記出力軸にかかるトルクを測定するためのセンサと、前記出力軸に接続された回転アクチュエータの駆動モータを制御するフィードバック制御手段とを含み、前記フィードバック制御手段は、前記センサの測定トルクを入力とし、所定のトルク低減目標値に基づいて前記駆動モータの回転トルクを出力し、該出力結果に基づいて前記駆動モータの回転を制御するロボット関節駆動制御システムが提供される。
【0015】
本発明においては、前記トルクを測定するためのトルクセンサ機構を以下の構成とすることが好ましい。すなわち、本発明においては、前記ロボット関節に設けられるトルクセンサ機構であって、駆動力発生側の駆動軸および駆動力出力先のリンク側の出力軸それぞれに、軸心から離間した箇所で固定され、該箇所に作用する偶力に応じて弾性的に曲げ歪みを発生する歪み発生部材と、前記歪み発生部材に接して配置され、前記曲げ歪みを検出する歪みセンサと、前記出力軸まわりに発生する負荷トルクを前記歪みセンサの出力値から算出する手段とを含むトルクセンサ機構を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上述したように、本発明によれば、ロボットの準受動制御において、能動期と受動期の切り替えを遅延なく確実に実現することのできるロボット関節駆動制御システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のロボット関節駆動制御システムを説明するための概念図。
【図2】本発明のロボット関節駆動制御システムのトルクセンサ機構の概略図。
【図3】歪み発生部材として十字板バネを採用したトルクセンサ機構を示す図。
【図4】本実施形態の二足歩行ロボットのモデル図。
【図5】本実施形態の二足歩行ロボットの動作フローチャート。
【図6】本実施形態の二足歩行ロボットの姿勢の遷移を時系列的に示した図。
【図7】本実施例の二足歩行ロボットの全体を撮影した写真。
【図8】本実施例の二足歩行ロボットの駆動部を拡大して示す図。
【図9】本実施例の二足歩行ロボットの制御回路図。
【図10】予備実験の結果を示す図。
【図11】本実施例の二足歩行ロボットの側面写真を時系列的に示す図。
【図12】評価関数を用いたエネルギー効率について評価を示す図。
【図13】従来の能動制御型ロボットの駆動部を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図面に示した実施の形態をもって説明するが、本発明は、図面に示した実施の形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜、その説明を省略するものとする。
【0019】
図1は、本発明のロボット関節駆動制御システム100を説明するための概念図である。本発明のロボット関節駆動制御システム100は、機構的には、図13(a)に示した、従来の能動制御型ロボットと同様の構成を採用する。すなわち、ロボット関節駆動制御システム100においては、リンク102と回転アクチュエータ104とが軸関節106によって接続されており、回転アクチュエータ104は、モータ108と、これに接続される減速機110とから構成され、モータ108は、モータドライバ112によって駆動制御されている。
【0020】
さらに、本発明のロボット関節駆動制御システム100においては、出力軸である軸関節106のトルクを測定するためのトルクセンサ114を備える。本発明のロボット関節駆動制御システム100は、受動期において、軸関節106(すなわち、リンク102の回転軸)にかかるトルクを低減するように(好ましくはゼロになるように)モータ108の回転トルクを制御する。その結果、受動期において、リンク102をあたかも自由関節に接続されているかのように挙動させることが可能になる。以下、上述したモータ108の駆動制御の詳細について説明する。
【0021】
本発明における上述したモータ108の駆動制御は、トルクセンサ114の測定トルクを入力とし、モータ108の回転トルクを出力とするフィードバック制御によって実現することができる。本発明においては、このフィードバック制御を下記式(1)に基づくPI制御によって行なうことができる。
【0022】
【数1】
【0023】
上記式(1)において、{Kt}はモータ108のトルク定数を、{Kp}は比例のゲインを、{Ki}は積分ゲインをそれぞれ示す。なお、{Kp} および{Ki}については、シミュレーションや予備実験の結果を使用して適切な値を設定しておく。また、上記式(1)において、{τ}は軸関節106に印加されているトルクを、{τaim}はトルク低減目標値を、{τm}はモータ108への入力トルクをそれぞれ示す。
【0024】
本発明のロボット関節駆動制御システム100においては、下記の手順でモータ108が駆動制御される。まず、トルクセンサ114から出力される信号がマイコンまたはASICなどによって構成されるフィードバック制御装置116に入力される。フィードバック制御装置116は、トルクセンサ114からの出力値から軸関節106に印加されているトルク{τ}を算出し、上記式(1)に基づく演算によって、モータ108への入力トルク{τm}を導出する。
【0025】
フィードバック制御装置116は、導出された入力トルク{τm}に相当するモータ108への印加電圧値を導出し、これをモータドライバ112に指示する。モータドライバ112が指示電圧値に基づいてモータ108へ電圧を印加すると、モータ108は、減速機110の機械抵抗に起因したトルク{τ}の印加方向と逆の方向の回転トルク{τm}を軸関節106に付与する。その結果、軸関節106にかかるトルクが相殺されて低減し(好ましくはゼロになり)、リンク102は、減速機110の存在にもかかわらず、見かけ上、あたかも自由関節に接続されているかのように挙動する。以上、説明した本発明におけるフィードバック制御を「ゼロトルクフィードバック制御」として、以下参照するものとする。
【0026】
次に、本発明のロボット関節駆動制御システム100に使用するトルクセンサ機構について説明する。本発明におけるトルクセンサ機構は、たとえば、出力軸である軸関節に対して直接的に歪みゲージ等を貼付することによって構成することもできるが、ロボット関節の出力軸は一般に短い剛性軸であり、発生するねじり歪みが小さいため、上記構成では、軸関節にかかる微小なトルクを検出できない可能性がある。
【0027】
この点につき、本発明は、上述したロボット関節駆動制御システム100の実装に最適な測定精度の高い新規なトルクセンサ機構を開示する。以下、本発明のトルクセンサ機構について、図2および図3を参照して説明する。
【0028】
図2は、本発明のロボット関節駆動制御システム100の軸関節に設けられるトルクセンサ機構200の概略図を示す。図2に示すトルクセンサ機構200において、リンク202は、回転アクチュエータ204が固定される駆動力入力側リンクであり、リンク206は、回転アクチュエータ204からの駆動力が入力される出力側リンクを示す。出力側リンク206の出力軸208と、回転アクチュエータ204側の駆動軸とは、歪み発生部材210を介して接続される。図2に示す例においては、歪み発生部材210と出力軸208とが出力軸固定部材212により固定され、歪み発生部材210と回転アクチュエータ204の駆動軸とが駆動軸固定部材214により固定されている。
【0029】
歪み発生部材210は、回転アクチュエータ204からの駆動力を出力軸208に伝達するとともに、歪み発生部材210の出力軸側および駆動軸側の間に作用する負荷トルクによって一部で弾性的に曲げ歪みを生じるような構造とされている。駆動力が入力されない場合にも、出力側リンク206に作用する重力および慣性力により、回転軸まわりに負荷トルクが作用する。
【0030】
歪み発生部材210には、金属抵抗、半導体抵抗などの歪みゲージが貼り付けられており、歪みゲージからの出力に基づいて歪み発生部材210の一部に発生した弾性的な曲げ歪みを測定し、この歪み測定値から出力軸208にかかった負荷トルクを間接的に求めることができる。歪みゲージは、アクティブ・ダミー法、2アクティブゲージ、4アクティブゲージ法などのこれまで知られた如何なる方式に従って、弾性的な曲げ歪みが発生する箇所の周辺に貼り付けることができる。
【0031】
本発明における歪み発生部材210としては、十字板バネを用いることができる。図3は、歪み発生部材210として十字板バネ230を採用したトルクセンサ機構を示す図であり、図3(a)は斜視図を示し、図3(b)は側面図を示す。十字板バネ230は、駆動軸および出力軸の軸心Oを中心とする中央部231と、中央部231から離間して設けられる4つの固定部232a〜232dと、各固定部232を中央部231に片持ち梁状に固定する平板部233a〜233dとを含んで構成される。
【0032】
軸心Oを中心に180度ずれて配置される2つの固定部232b,232dの組は、締結穴を介して、駆動軸側の駆動軸固定部材214に固定される。一方、軸心を中心に180度ずれ、かつ固定部232b,232dの組と90度ずれて配置される2つの固定部232a、232cの組は、締結穴を介して、出力軸側の出力軸固定部材212に固定される。
【0033】
ここで、出力軸−駆動軸間に負荷トルクが作用すると、固定部232の組のうちの一方を固定とした場合に、他方の組に軸心から離間した箇所で偶力が作用し、中央部231および固定部232を接続する平板部233は、この偶力により、その大きさに応じた弾性的な曲げ歪みを発生させる。
【0034】
中央部231および固定部232は、このような力に対し剛性が高くなる構造を有しており、一方、平板部233は、一定範囲の大きさの力に応答して弾性的に曲げ歪みを生じさせると共に、想定される最大トルクに対して平板部233に生じる最大応力が降伏応力を越えないような厚みを有している。そして、平板部233の適切な箇所に歪みセンサ240a,240bが貼り付けられ、平板部233に生じる弾性的な曲げ歪みが測定される。
【0035】
上述したトルクセンサ機構を用いることによって、回転アクチュエータの減速機に起因して出力軸に印加される微小な負荷トルクを精度よく検出することができ、本発明のゼロトルクフィードバック制御が実効性の高いものとなる。
【0036】
以上、説明したように、本発明のロボット関節駆動制御システム100は、クラッチなどの機構的な追加構成を付加する必要がないため、既存の能動制御型ロボットに対して簡単に実装することができる。また、本発明のゼロトルクフィードバック制御方式によれば、能動期と受動期を電気的に切替えるため、タイミング遅延のリスクが排除される。その結果、各種ロボット・システムの準受動制御を好適に実現することができ、もって、システム全体の省エネルギー化を図ることができる。
【0037】
以上、本発明のロボット関節駆動制御システムの構成およびその機能作用について説明してきたが、次に、本発明の適用態様について、二足歩行ロボットを例に挙げて説明する。図4は、本発明の実施形態である二足歩行ロボット10のモデル図を示す。二足歩行ロボット10は、股関節20と、股関節20に接続された左足Lおよび右足Rとを備えており、左足Lは、リンク32、リンク34、ならびに、両リンクを接続する膝関節30とから構成され、右足Rは、リンク42、リンク44、ならびに、両リンクを接続する膝関節40とから構成されている。なお、各関節(股関節20、膝関節30,40)は、全て一軸性の関節として構成されており、二足歩行ロボット10は、3つの関節を含む4リンク構造として構成されている。
【0038】
また、股関節20には、リンク32およびリンク42を駆動するための回転アクチュエータ22と、当該関節の回転角ならびに角速度を測定するためのエンコーダ24が設けられており、同様に、膝関節30,40には、それぞれ、リンク34を駆動するための回転アクチュエータ36およびリンク44を駆動するための回転アクチュエータ46が設けられ、さらに、膝関節30,40の回転角ならびに角速度を測定するためのエンコーダ38,48がそれぞれ設けられている。さらに、本実施形態の二足歩行ロボット10においては、各関節(股関節20、膝関節30,40)に対して、トルクセンサ26,39,49がそれぞれ設けられている。なお、リンク34およびリンク44の先端(足先)には、図示しない接地センサが設けられており、当該接地センサからの信号に基づいて各リンクの接地を検知するように構成されている。
【0039】
ここで、本実施形態の二足歩行ロボット10においては、図示しない制御装置によって、上述した各回転アクチュエータに対して、(1)自励駆動制御、(2)ブレーキ制御、(3)追従制御、(4)自由関節化制御、の4種類の制御方式が選択的に適用されるように構成されている。以下、上記各制御方式について説明する。
【0040】
(1)自励駆動制御
股関節20の回転アクチュエータ22に適用される制御であって、自励駆動制御時において、回転アクチュエータ22は、リンク32(すなわち、左足)またはリンク42(すなわち、右足)を前に振り出すように駆動する。
(2)ブレーキ制御
股関節20の回転アクチュエータ22に適用される制御であって、股関節20の回転運動を停止するように制御する。
(3)追従制御
膝関節30,40の回転アクチュエータ36,46に適用される制御であって、リンク32とリンク34がなす角度、または、リンク42とリンク44がなす角度が所定の目標値に維持されるように制御する。
(4)自由関節化制御
全ての関節(股関節20、膝関節30,40)の回転アクチュエータ22,36,46に適用される制御であって、各関節に本発明のゼロトルクフィードバック制御を適用するものである。
【0041】
また、本実施形態の二足歩行ロボット10においては、図示しない制御装置が以下に列挙する4つの情報を適宜参照することによって、上述した(1)〜(4)の制御を切り替える。
(股関節相対角度θw)=リンク32(左足)とリンク42(右足)に挟まれた角の角度
(支持脚膝関節相対角度θst)=支持脚(図4における左足)を構成するリンク32の延長線とリンク34に挟まれた角の角度
(遊脚膝関節相対角度θsw)=遊脚(図4における右足)を構成するリンク42の延長線とリンク44に挟まれた角の角度
(遊脚膝関節の角速度)=リンク42とリンク44の間の相対速度
【0042】
上述した条件を前提として、二足歩行ロボット10が実行する処理を図5に示すフローチャートに基づいて具体的に説明する。なお、以下の説明においては、二足歩行ロボット10の姿勢の遷移を時系列的に示した図6を適宜参照するものとする。
【0043】
二足歩行ロボット10の両足が接地している状態から処理が開始されると、ステップ201において、初期化処理が行なわれた後、左右の足(リンク)について、いずれか一方を遊脚とし、他方を支持脚として設定し、ステップ202に進む。
【0044】
ステップ202においては、支持脚膝関節相対角度パラメータ[θst]に目標角度[θst1]をセットし、支持脚膝関節を追従制御する。これは、支持脚の膝を折り曲げるための制御であり、目標角度[θst1]はゼロよりも大きい適切な値とする。この制御により、二足歩行ロボット10の重心が、歩行に先立って前方に移動するため、歩行速度の増大および歩行エネルギーの軽減が図られる。同時に、ステップ202においては、遊脚膝関節を自由関節化制御とするとともに、股関節を自励駆動制御として遊脚を前に振り出し、ステップ203に進む。
【0045】
ステップ203においては、股関節相対角度θwがゼロより小さいか否か(すなわち、遊脚が支持脚より前に出たか否か)が監視され、股関節相対角度θwがゼロより小さくなった場合には(S203,Yes)、ステップ204に進み、支持脚膝関節相対角度パラメータ[θst]に目標角度[θst2]をセットした上で、引き続き支持脚膝関節を追従制御する。ここで、目標角度[θst2]は、先の目標角度[θst1]はよりも小さい値とすることによって、二足歩行ロボット10の重心をより前方へ移動させることができ、スムーズな歩行が実現される。
【0046】
次にステップ205に進み、遊脚膝関節相対角度θsw が閾値θbrを超えたか否かが監視され、閾値θbrを超えた場合には(S205,Yes)、ステップ206に進む。ステップ206は、股関節にブレーキをかけて遊脚の振り出し駆動を止める制御であり、このように、適切なタイミングで遊脚の運動にブレーキをかけることによって、より少ないオーバーシュートで二足歩行ロボット10を次の段階に移行させることでき、スムーズな歩行が実現される。同時に、ステップ206においては、股関節を自由関節化制御に移行させ、股関節の機械抵抗が各足の運動を妨げないようにして、ステップ207に進む。
【0047】
ステップ207においては、遊脚が停止したか否か(すなわち、遊脚膝関節の角速度がゼロより大きいか否か)を監視する。遊脚が停止した場合(S207,Yes)、遊脚を次の歩行サイクルにおける支持脚とするための準備を行なうためのステップ208に進む。ステップ208においては、遊脚膝関節相対角度パラメータ[θsw]に[θst2]をセットし、遊脚膝関節を自由関節化制御から追従制御に切り替えて、ステップ209に進む。
【0048】
ステップ209においては、遊脚が接地したか否かが監視され、遊脚が接地した場合(S209,Yes)、ステップ210に進み、先のステップ202で支持脚として規定した足(リンク)および遊脚として規定した足(リンク)を、それぞれ、遊脚および支持脚に規定し直し、さらに、パラメータ[θst],[θsw]を初期値にリセットした後、ステップ202に戻り、以降のステップを繰り返す。
【0049】
以上、説明したように、本発明のロボット関節駆動制御システムを採用した二足歩行ロボット10は、受動期において自由関節化制御のためのごくわずかな電力を消費するだけで、自身にかかる重力および慣性力を最大限利用して、効率の良い歩行運動を実現することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明のロボット関節駆動制御システムについて、実施例を用いてより具体的に説明を行なうが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。
【0051】
本発明を適用した二足歩行ロボットを作製した。図7は、本実施例の二足歩行ロボット300の全体を撮影した写真を示す。以下、図8および図9を参照して、本実施例の二足歩行ロボット300について概説する。
【0052】
図8は、二足歩行ロボット300の駆動部を拡大して示す図である。二足歩行ロボット300は、右足を構成するリンク301Rおよびリンク302Rと、左足を構成するリンク301Lおよびリンク302Lと、左足を構成するリンク301Lに一体的に構成された腰部303とを含む4リンク構造として構成した。また、各リンク間を一軸性の関節で連結し、両足の各膝関節ならびに股関節部分(リンク301Rとリンク303の間)に回転アクチュエータを設けた。
【0053】
なお、本実施例においては、膝関節の回転アクチュエータを、モータ304、減速機305、プーリ306,307、およびベルト308から構成し、股関節の回転アクチュエータを、モータ309、および減速機310から構成した。さらに、本実施例においては、各回転アクチュエータの出力軸と入力軸との間に、トルクセンサとして、図3を参照して説明した、歪みゲージを貼付した十字板バネ311を介在させて連結した。さらに、各関節軸にはエンコーダ312を設け、各関節の相対角度ならびに角速度を測定するように構成した。さらに、リンク302L,302Rの先端(足先)には、図示しない接地センサを設けた。
【0054】
図9は、二足歩行ロボット300の制御回路図を示す。二足歩行ロボット300においては、電源320から各エンコーダ312に電力を供給し、各関節に設けた各エンコーダ312の出力信号をA/Dコンバータを介してコンピュータ322に入力するように構成した。また、各関節に設けたトルクセンサの歪みゲージ324からの出力信号は、増幅器325で増幅した後、A/Dコンバータを介してコンピュータ322に入力するように構成した。
【0055】
また、コンピュータ322は、各エンコーダ312ならびに各歪みゲージ324からの入力信号に基づいて、必要な演算等を実行し、モータ304L,304R,309に印加する電圧指令値を導出し、導出された電圧指令値をD/Aコンバータを介してモータドライバ326に入力するように構成し、モータドライバ326は、電源320から各モータ304L,304R,309へ指定された電圧を印加するように構成した。上述した二足歩行ロボット300に対し、図6を参照して説明したフローチャートに基づく処理を実行させた。なお、本実施例においては、エネルギー効率の評価のため、コンピュータ322に各関節の角速度の経時的変化を取得させた。
【0056】
以上、二足歩行ロボット300の概要について説明してきたが、次に、二足歩行ロボット300による歩行実験およびそのエネルギー効率評価について、以下説明する。
【0057】
(予備実験)
歩行実験に先立ち、本発明のゼロトルクフィードバック制御の効果を検証する予備実験を以下の手順で行なった。まず、足を構成する入力側リンクを固定したうえで、出力側のリンクを鉛直方向と60°の角度をなす高さまで持ち上げて静止させ、その後、静かに手を離した(角速度0)。図10は、出力側リンクと鉛直方向のなす角度[rad]と、膝関節軸(出力軸)にかかった負荷トルクτの経時的変化を示す。なお、図10(a)は、単に、膝関節の駆動モータ304への電力供給を止めただけの場合の結果を示し、図10(b)は、駆動モータ304についてゼロトルクフィードバック制御を行なった場合の結果を示す。
【0058】
ゼロトルクフィードバック制御を行なわない場合、図10(a)に示されるように、出力側リンクは、アクチュエータの機械抵抗のために鉛直方向を少しまわったところですぐに止まった。一方、ゼロトルクフィードバック制御を行なった場合は、図10(b)に示されるように、出力側リンクは、持続的な周期運動(10回)を見せ、自由関節のように振る舞うことが確認された。
【0059】
(歩行実験とエネルギー効率評価)
図5のフローチャートに基づいて各関節の駆動制御を行なったところ、二足歩行ロボット300は、スムーズな歩行に成功した。図11は、歩行運動をする二足歩行ロボット300の側面写真を時系列的に示す。さらに、二足歩行ロボット300のエネルギー効率についてSpecific cost、Cmt(Cost of mechanical transport:単位時間当りのアクチュエータの機械的な作業エネルギー)やCet(Cost of energy transport:単位時間・単位質量・単位移動距離当りの消費エネルギー)という評価関数を用いて評価したところ、Cmtは、0.88、Cetは、1.47であった。この値は、図12に示すように、能動制御(ZMP制御)を採用する(株)ホンダの「ASIMO」のスペックに比較して半分以下であり、本発明のロボット関節駆動制御システムのエネルギー効率が非常に高いことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上、説明したように、本発明によれば、ロボットの準受動制御において、能動期と受動期の切り替えを遅延なく確実に実現することのできるロボット関節駆動制御システムが提供される。なお、今後は、上述した二足歩行ロボットに限らず、軸関節を備えるその他の駆動リンク機構についても準受動制御による省エネルギー化が検討されることであろう。それに伴い、本発明のロボット関節駆動制御システムが各種産業用ロボットや多関節マニュピレータや多足移動ロボットなどの幅広い分野に応用展開されることを期待したい。
【符号の説明】
【0061】
100…ロボット関節駆動制御システム、102…リンク、104…回転アクチュエータ、106…軸関節、108…モータ、110…減速機、112…モータドライバ、114…トルクセンサ、116…フィードバック制御装置、200…トルクセンサ機構、202…リンク、204…回転アクチュエータ、206…出力側リンク、208…出力軸、210…歪み発生部材、212…出力軸固定部材、214…駆動軸固定部材、230…十字板バネ、231…中央部、232…固定部、233…平板部、240…歪みセンサ、10…二足歩行ロボット、20…股関節、30…膝関節、32,34…リンク、40…膝関節、42,44…リンク、22,36,46…回転アクチュエータ、24,38,48…エンコーダ、26,39,49…トルクセンサ、300…二足歩行ロボット、301,302…リンク、303…腰部、304,309…モータ、306,307…プーリ、308…ベルト、305,310…減速機、311…十字板バネ、312…エンコーダ、320…電源、322…コンピュータ、324…歪みゲージ、325…増幅器、326…モータドライバ、500…ロボット、502…リンク、504…回転アクチュエータ、506…軸関節、508…モータ、510…減速機、512…モータドライバ、600…ロボット
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御システムに関し、より詳細には、省エネルギー型ロボット関節駆動制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、二足歩行ロボットに関して、種々の研究開発がなされてきたが、その多くは、各関節に設けられたアクチュエータを予め定められた軌道計画に基づいて、歩行サイクルの全時間にわたり能動的に駆動制御してロボットを歩行させるという、能動制御の思想に基づくものであった。
【0003】
一方、人間が実際に行なっている歩行運動に目をやれば、歩行サイクル中、筋肉に大きな力が入るのは、足を蹴り出す際のほんの僅かな時間だけであり、蹴り出した足を前に振り出した後、これを地面に下ろして着地するまでの間は、もっぱら慣性力や重力を利用している。つまり、人間は、無意識のうちに非常にエネルギー効率の高い歩行運動を実現しているのである。
【0004】
この点、上述した能動制御型の二足歩行ロボットは、歩行サイクルの全時間にわたって駆動力を使用しており、上述した人間の歩行運動と比較するとエネルギー効率の悪い動きをしているということができる。
【0005】
この点につき、T. McGeer, “Passive Dynamic Walking,” The International Journal of Robotics Research, Vol.9, No.2, pp.62-68, 1990.(非特許文献1)は、アクチュエータ等の駆動手段を持たない機構が、それ自身に内在する動特性に基づいて歩行する現象(受動的動歩行)について開示する。近年、このような受動的動歩行に着想を得て、アクチュエータ駆動式の二足歩行ロボットの省エネルギー化を企図した、いわゆる準受動制御と呼ばれる制御手法についての研究が行なわれている。
【0006】
準受動制御とは、歩行サイクルにおいて、アクチュエータの駆動力によって機構を能動的に駆動制御する時間(以下、能動期として参照する)と、機構をアクチュエータの駆動力から切り離し、機構自体に働く慣性力や重力のみを利用してこれを受動的に運動させる時間(以下、受動期として参照する)とを交互に設けることによって、人間の歩行のようにエネルギー効率の良い歩行運動を行なわせる制御をいう。ここで、準受動制御においては、受動期に足が慣性によって自然に振り出されなければならないが、従来の能動制御型ロボットには各関節にアクチュエータが設けられており、これに起因する機械抵抗が足の受動的な動きを妨げる。この点につき、図13を参照して説明する。
【0007】
図13(a)は、従来の能動制御型ロボット500の駆動部を概念的に示す。ロボット500においては、リンク502と回転アクチュエータ504とが軸関節506によって接続されている。また、回転アクチュエータ504は、モータ508と、これに接続される減速機510とから構成されており、モータ508は、モータドライバ512によって駆動制御されている。
【0008】
ここで、仮に、モータドライバ512からモータ508への電力供給を断ったとしても、減速機510が有する機械抵抗によって、それまでの回転方向とは逆向きのトルクτが軸関節506に作用する。その結果、リンク502は、その慣性による動きが妨げられてすぐに停止してしまう。
【0009】
この点につき、M. Okada, T. Shinohara, T. Gotoh, S. Ban, and Y. Nakamura, Double Spherical Joint and Backlash Clutch for Lower Limbs of Humanoids, Proceedings of IEEE International Conference on Robotics and Automation, Taiwan, pp. 491-496, 2003.(非特許文献2)は、能動期と受動期とを機構的な仕掛けで切り替える構成を開示する。図13(b)は、非特許文献2の開示するロボット600の駆動部を概念的に示す。ロボット600においては、リンク502の軸関節506と減速機510とをクラッチ514によって物理的に切り離すことで、能動期と受動期の切り替えを行なっている。
【0010】
図13(b)に示す構成によれば、確かに、受動期におけるリンク502の自由運動は担保されるが、機構自体が複雑になることに加え、バッククラッシュのリスクを負うことになる。そして、なにより、機構的に切り替える方式では、構造的にタイミング遅延が避けられず、予定したタイミングで能動期と受動期の切り替えを行なうことができないという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】T. McGeer, “Passive Dynamic Walking,” The International Journal of Robotics Research, Vol.9, No.2, pp.62-68, 1990.
【非特許文献2】M. Okada, T. Shinohara, T. Gotoh, S. Ban, and Y. Nakamura, Double Spherical Joint and Backlash Clutch for Lower Limbs of Humanoids, Proceedings of IEEE International Conference on Robotics and Automation, Taiwan, pp. 491-496, 2003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、ロボットの準受動制御において、能動期と受動期の切り替えを遅延なく確実に実現することのできるロボット関節駆動制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、ロボットの準受動制御において、能動期と受動期の切り替えを遅延なく確実に実現することのできるロボット関節駆動制御システムにつき鋭意検討した結果、ロボット関節の出力軸にかかる回転アクチュエータの減速機に起因する摩擦トルクを、駆動モータの回転トルクによって相殺する構成を着想した。さらに、駆動モータの当該回転トルクを、出力軸に設けられたトルクセンサの測定値を入力としたフィードバック制御により導出する構成に想到し、本発明に至ったのである。
【0014】
すなわち、本発明によれば、ロボット関節の出力軸を駆動制御するシステムであって、前記出力軸にかかるトルクを測定するためのセンサと、前記出力軸に接続された回転アクチュエータの駆動モータを制御するフィードバック制御手段とを含み、前記フィードバック制御手段は、前記センサの測定トルクを入力とし、所定のトルク低減目標値に基づいて前記駆動モータの回転トルクを出力し、該出力結果に基づいて前記駆動モータの回転を制御するロボット関節駆動制御システムが提供される。
【0015】
本発明においては、前記トルクを測定するためのトルクセンサ機構を以下の構成とすることが好ましい。すなわち、本発明においては、前記ロボット関節に設けられるトルクセンサ機構であって、駆動力発生側の駆動軸および駆動力出力先のリンク側の出力軸それぞれに、軸心から離間した箇所で固定され、該箇所に作用する偶力に応じて弾性的に曲げ歪みを発生する歪み発生部材と、前記歪み発生部材に接して配置され、前記曲げ歪みを検出する歪みセンサと、前記出力軸まわりに発生する負荷トルクを前記歪みセンサの出力値から算出する手段とを含むトルクセンサ機構を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上述したように、本発明によれば、ロボットの準受動制御において、能動期と受動期の切り替えを遅延なく確実に実現することのできるロボット関節駆動制御システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のロボット関節駆動制御システムを説明するための概念図。
【図2】本発明のロボット関節駆動制御システムのトルクセンサ機構の概略図。
【図3】歪み発生部材として十字板バネを採用したトルクセンサ機構を示す図。
【図4】本実施形態の二足歩行ロボットのモデル図。
【図5】本実施形態の二足歩行ロボットの動作フローチャート。
【図6】本実施形態の二足歩行ロボットの姿勢の遷移を時系列的に示した図。
【図7】本実施例の二足歩行ロボットの全体を撮影した写真。
【図8】本実施例の二足歩行ロボットの駆動部を拡大して示す図。
【図9】本実施例の二足歩行ロボットの制御回路図。
【図10】予備実験の結果を示す図。
【図11】本実施例の二足歩行ロボットの側面写真を時系列的に示す図。
【図12】評価関数を用いたエネルギー効率について評価を示す図。
【図13】従来の能動制御型ロボットの駆動部を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図面に示した実施の形態をもって説明するが、本発明は、図面に示した実施の形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜、その説明を省略するものとする。
【0019】
図1は、本発明のロボット関節駆動制御システム100を説明するための概念図である。本発明のロボット関節駆動制御システム100は、機構的には、図13(a)に示した、従来の能動制御型ロボットと同様の構成を採用する。すなわち、ロボット関節駆動制御システム100においては、リンク102と回転アクチュエータ104とが軸関節106によって接続されており、回転アクチュエータ104は、モータ108と、これに接続される減速機110とから構成され、モータ108は、モータドライバ112によって駆動制御されている。
【0020】
さらに、本発明のロボット関節駆動制御システム100においては、出力軸である軸関節106のトルクを測定するためのトルクセンサ114を備える。本発明のロボット関節駆動制御システム100は、受動期において、軸関節106(すなわち、リンク102の回転軸)にかかるトルクを低減するように(好ましくはゼロになるように)モータ108の回転トルクを制御する。その結果、受動期において、リンク102をあたかも自由関節に接続されているかのように挙動させることが可能になる。以下、上述したモータ108の駆動制御の詳細について説明する。
【0021】
本発明における上述したモータ108の駆動制御は、トルクセンサ114の測定トルクを入力とし、モータ108の回転トルクを出力とするフィードバック制御によって実現することができる。本発明においては、このフィードバック制御を下記式(1)に基づくPI制御によって行なうことができる。
【0022】
【数1】
【0023】
上記式(1)において、{Kt}はモータ108のトルク定数を、{Kp}は比例のゲインを、{Ki}は積分ゲインをそれぞれ示す。なお、{Kp} および{Ki}については、シミュレーションや予備実験の結果を使用して適切な値を設定しておく。また、上記式(1)において、{τ}は軸関節106に印加されているトルクを、{τaim}はトルク低減目標値を、{τm}はモータ108への入力トルクをそれぞれ示す。
【0024】
本発明のロボット関節駆動制御システム100においては、下記の手順でモータ108が駆動制御される。まず、トルクセンサ114から出力される信号がマイコンまたはASICなどによって構成されるフィードバック制御装置116に入力される。フィードバック制御装置116は、トルクセンサ114からの出力値から軸関節106に印加されているトルク{τ}を算出し、上記式(1)に基づく演算によって、モータ108への入力トルク{τm}を導出する。
【0025】
フィードバック制御装置116は、導出された入力トルク{τm}に相当するモータ108への印加電圧値を導出し、これをモータドライバ112に指示する。モータドライバ112が指示電圧値に基づいてモータ108へ電圧を印加すると、モータ108は、減速機110の機械抵抗に起因したトルク{τ}の印加方向と逆の方向の回転トルク{τm}を軸関節106に付与する。その結果、軸関節106にかかるトルクが相殺されて低減し(好ましくはゼロになり)、リンク102は、減速機110の存在にもかかわらず、見かけ上、あたかも自由関節に接続されているかのように挙動する。以上、説明した本発明におけるフィードバック制御を「ゼロトルクフィードバック制御」として、以下参照するものとする。
【0026】
次に、本発明のロボット関節駆動制御システム100に使用するトルクセンサ機構について説明する。本発明におけるトルクセンサ機構は、たとえば、出力軸である軸関節に対して直接的に歪みゲージ等を貼付することによって構成することもできるが、ロボット関節の出力軸は一般に短い剛性軸であり、発生するねじり歪みが小さいため、上記構成では、軸関節にかかる微小なトルクを検出できない可能性がある。
【0027】
この点につき、本発明は、上述したロボット関節駆動制御システム100の実装に最適な測定精度の高い新規なトルクセンサ機構を開示する。以下、本発明のトルクセンサ機構について、図2および図3を参照して説明する。
【0028】
図2は、本発明のロボット関節駆動制御システム100の軸関節に設けられるトルクセンサ機構200の概略図を示す。図2に示すトルクセンサ機構200において、リンク202は、回転アクチュエータ204が固定される駆動力入力側リンクであり、リンク206は、回転アクチュエータ204からの駆動力が入力される出力側リンクを示す。出力側リンク206の出力軸208と、回転アクチュエータ204側の駆動軸とは、歪み発生部材210を介して接続される。図2に示す例においては、歪み発生部材210と出力軸208とが出力軸固定部材212により固定され、歪み発生部材210と回転アクチュエータ204の駆動軸とが駆動軸固定部材214により固定されている。
【0029】
歪み発生部材210は、回転アクチュエータ204からの駆動力を出力軸208に伝達するとともに、歪み発生部材210の出力軸側および駆動軸側の間に作用する負荷トルクによって一部で弾性的に曲げ歪みを生じるような構造とされている。駆動力が入力されない場合にも、出力側リンク206に作用する重力および慣性力により、回転軸まわりに負荷トルクが作用する。
【0030】
歪み発生部材210には、金属抵抗、半導体抵抗などの歪みゲージが貼り付けられており、歪みゲージからの出力に基づいて歪み発生部材210の一部に発生した弾性的な曲げ歪みを測定し、この歪み測定値から出力軸208にかかった負荷トルクを間接的に求めることができる。歪みゲージは、アクティブ・ダミー法、2アクティブゲージ、4アクティブゲージ法などのこれまで知られた如何なる方式に従って、弾性的な曲げ歪みが発生する箇所の周辺に貼り付けることができる。
【0031】
本発明における歪み発生部材210としては、十字板バネを用いることができる。図3は、歪み発生部材210として十字板バネ230を採用したトルクセンサ機構を示す図であり、図3(a)は斜視図を示し、図3(b)は側面図を示す。十字板バネ230は、駆動軸および出力軸の軸心Oを中心とする中央部231と、中央部231から離間して設けられる4つの固定部232a〜232dと、各固定部232を中央部231に片持ち梁状に固定する平板部233a〜233dとを含んで構成される。
【0032】
軸心Oを中心に180度ずれて配置される2つの固定部232b,232dの組は、締結穴を介して、駆動軸側の駆動軸固定部材214に固定される。一方、軸心を中心に180度ずれ、かつ固定部232b,232dの組と90度ずれて配置される2つの固定部232a、232cの組は、締結穴を介して、出力軸側の出力軸固定部材212に固定される。
【0033】
ここで、出力軸−駆動軸間に負荷トルクが作用すると、固定部232の組のうちの一方を固定とした場合に、他方の組に軸心から離間した箇所で偶力が作用し、中央部231および固定部232を接続する平板部233は、この偶力により、その大きさに応じた弾性的な曲げ歪みを発生させる。
【0034】
中央部231および固定部232は、このような力に対し剛性が高くなる構造を有しており、一方、平板部233は、一定範囲の大きさの力に応答して弾性的に曲げ歪みを生じさせると共に、想定される最大トルクに対して平板部233に生じる最大応力が降伏応力を越えないような厚みを有している。そして、平板部233の適切な箇所に歪みセンサ240a,240bが貼り付けられ、平板部233に生じる弾性的な曲げ歪みが測定される。
【0035】
上述したトルクセンサ機構を用いることによって、回転アクチュエータの減速機に起因して出力軸に印加される微小な負荷トルクを精度よく検出することができ、本発明のゼロトルクフィードバック制御が実効性の高いものとなる。
【0036】
以上、説明したように、本発明のロボット関節駆動制御システム100は、クラッチなどの機構的な追加構成を付加する必要がないため、既存の能動制御型ロボットに対して簡単に実装することができる。また、本発明のゼロトルクフィードバック制御方式によれば、能動期と受動期を電気的に切替えるため、タイミング遅延のリスクが排除される。その結果、各種ロボット・システムの準受動制御を好適に実現することができ、もって、システム全体の省エネルギー化を図ることができる。
【0037】
以上、本発明のロボット関節駆動制御システムの構成およびその機能作用について説明してきたが、次に、本発明の適用態様について、二足歩行ロボットを例に挙げて説明する。図4は、本発明の実施形態である二足歩行ロボット10のモデル図を示す。二足歩行ロボット10は、股関節20と、股関節20に接続された左足Lおよび右足Rとを備えており、左足Lは、リンク32、リンク34、ならびに、両リンクを接続する膝関節30とから構成され、右足Rは、リンク42、リンク44、ならびに、両リンクを接続する膝関節40とから構成されている。なお、各関節(股関節20、膝関節30,40)は、全て一軸性の関節として構成されており、二足歩行ロボット10は、3つの関節を含む4リンク構造として構成されている。
【0038】
また、股関節20には、リンク32およびリンク42を駆動するための回転アクチュエータ22と、当該関節の回転角ならびに角速度を測定するためのエンコーダ24が設けられており、同様に、膝関節30,40には、それぞれ、リンク34を駆動するための回転アクチュエータ36およびリンク44を駆動するための回転アクチュエータ46が設けられ、さらに、膝関節30,40の回転角ならびに角速度を測定するためのエンコーダ38,48がそれぞれ設けられている。さらに、本実施形態の二足歩行ロボット10においては、各関節(股関節20、膝関節30,40)に対して、トルクセンサ26,39,49がそれぞれ設けられている。なお、リンク34およびリンク44の先端(足先)には、図示しない接地センサが設けられており、当該接地センサからの信号に基づいて各リンクの接地を検知するように構成されている。
【0039】
ここで、本実施形態の二足歩行ロボット10においては、図示しない制御装置によって、上述した各回転アクチュエータに対して、(1)自励駆動制御、(2)ブレーキ制御、(3)追従制御、(4)自由関節化制御、の4種類の制御方式が選択的に適用されるように構成されている。以下、上記各制御方式について説明する。
【0040】
(1)自励駆動制御
股関節20の回転アクチュエータ22に適用される制御であって、自励駆動制御時において、回転アクチュエータ22は、リンク32(すなわち、左足)またはリンク42(すなわち、右足)を前に振り出すように駆動する。
(2)ブレーキ制御
股関節20の回転アクチュエータ22に適用される制御であって、股関節20の回転運動を停止するように制御する。
(3)追従制御
膝関節30,40の回転アクチュエータ36,46に適用される制御であって、リンク32とリンク34がなす角度、または、リンク42とリンク44がなす角度が所定の目標値に維持されるように制御する。
(4)自由関節化制御
全ての関節(股関節20、膝関節30,40)の回転アクチュエータ22,36,46に適用される制御であって、各関節に本発明のゼロトルクフィードバック制御を適用するものである。
【0041】
また、本実施形態の二足歩行ロボット10においては、図示しない制御装置が以下に列挙する4つの情報を適宜参照することによって、上述した(1)〜(4)の制御を切り替える。
(股関節相対角度θw)=リンク32(左足)とリンク42(右足)に挟まれた角の角度
(支持脚膝関節相対角度θst)=支持脚(図4における左足)を構成するリンク32の延長線とリンク34に挟まれた角の角度
(遊脚膝関節相対角度θsw)=遊脚(図4における右足)を構成するリンク42の延長線とリンク44に挟まれた角の角度
(遊脚膝関節の角速度)=リンク42とリンク44の間の相対速度
【0042】
上述した条件を前提として、二足歩行ロボット10が実行する処理を図5に示すフローチャートに基づいて具体的に説明する。なお、以下の説明においては、二足歩行ロボット10の姿勢の遷移を時系列的に示した図6を適宜参照するものとする。
【0043】
二足歩行ロボット10の両足が接地している状態から処理が開始されると、ステップ201において、初期化処理が行なわれた後、左右の足(リンク)について、いずれか一方を遊脚とし、他方を支持脚として設定し、ステップ202に進む。
【0044】
ステップ202においては、支持脚膝関節相対角度パラメータ[θst]に目標角度[θst1]をセットし、支持脚膝関節を追従制御する。これは、支持脚の膝を折り曲げるための制御であり、目標角度[θst1]はゼロよりも大きい適切な値とする。この制御により、二足歩行ロボット10の重心が、歩行に先立って前方に移動するため、歩行速度の増大および歩行エネルギーの軽減が図られる。同時に、ステップ202においては、遊脚膝関節を自由関節化制御とするとともに、股関節を自励駆動制御として遊脚を前に振り出し、ステップ203に進む。
【0045】
ステップ203においては、股関節相対角度θwがゼロより小さいか否か(すなわち、遊脚が支持脚より前に出たか否か)が監視され、股関節相対角度θwがゼロより小さくなった場合には(S203,Yes)、ステップ204に進み、支持脚膝関節相対角度パラメータ[θst]に目標角度[θst2]をセットした上で、引き続き支持脚膝関節を追従制御する。ここで、目標角度[θst2]は、先の目標角度[θst1]はよりも小さい値とすることによって、二足歩行ロボット10の重心をより前方へ移動させることができ、スムーズな歩行が実現される。
【0046】
次にステップ205に進み、遊脚膝関節相対角度θsw が閾値θbrを超えたか否かが監視され、閾値θbrを超えた場合には(S205,Yes)、ステップ206に進む。ステップ206は、股関節にブレーキをかけて遊脚の振り出し駆動を止める制御であり、このように、適切なタイミングで遊脚の運動にブレーキをかけることによって、より少ないオーバーシュートで二足歩行ロボット10を次の段階に移行させることでき、スムーズな歩行が実現される。同時に、ステップ206においては、股関節を自由関節化制御に移行させ、股関節の機械抵抗が各足の運動を妨げないようにして、ステップ207に進む。
【0047】
ステップ207においては、遊脚が停止したか否か(すなわち、遊脚膝関節の角速度がゼロより大きいか否か)を監視する。遊脚が停止した場合(S207,Yes)、遊脚を次の歩行サイクルにおける支持脚とするための準備を行なうためのステップ208に進む。ステップ208においては、遊脚膝関節相対角度パラメータ[θsw]に[θst2]をセットし、遊脚膝関節を自由関節化制御から追従制御に切り替えて、ステップ209に進む。
【0048】
ステップ209においては、遊脚が接地したか否かが監視され、遊脚が接地した場合(S209,Yes)、ステップ210に進み、先のステップ202で支持脚として規定した足(リンク)および遊脚として規定した足(リンク)を、それぞれ、遊脚および支持脚に規定し直し、さらに、パラメータ[θst],[θsw]を初期値にリセットした後、ステップ202に戻り、以降のステップを繰り返す。
【0049】
以上、説明したように、本発明のロボット関節駆動制御システムを採用した二足歩行ロボット10は、受動期において自由関節化制御のためのごくわずかな電力を消費するだけで、自身にかかる重力および慣性力を最大限利用して、効率の良い歩行運動を実現することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明のロボット関節駆動制御システムについて、実施例を用いてより具体的に説明を行なうが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。
【0051】
本発明を適用した二足歩行ロボットを作製した。図7は、本実施例の二足歩行ロボット300の全体を撮影した写真を示す。以下、図8および図9を参照して、本実施例の二足歩行ロボット300について概説する。
【0052】
図8は、二足歩行ロボット300の駆動部を拡大して示す図である。二足歩行ロボット300は、右足を構成するリンク301Rおよびリンク302Rと、左足を構成するリンク301Lおよびリンク302Lと、左足を構成するリンク301Lに一体的に構成された腰部303とを含む4リンク構造として構成した。また、各リンク間を一軸性の関節で連結し、両足の各膝関節ならびに股関節部分(リンク301Rとリンク303の間)に回転アクチュエータを設けた。
【0053】
なお、本実施例においては、膝関節の回転アクチュエータを、モータ304、減速機305、プーリ306,307、およびベルト308から構成し、股関節の回転アクチュエータを、モータ309、および減速機310から構成した。さらに、本実施例においては、各回転アクチュエータの出力軸と入力軸との間に、トルクセンサとして、図3を参照して説明した、歪みゲージを貼付した十字板バネ311を介在させて連結した。さらに、各関節軸にはエンコーダ312を設け、各関節の相対角度ならびに角速度を測定するように構成した。さらに、リンク302L,302Rの先端(足先)には、図示しない接地センサを設けた。
【0054】
図9は、二足歩行ロボット300の制御回路図を示す。二足歩行ロボット300においては、電源320から各エンコーダ312に電力を供給し、各関節に設けた各エンコーダ312の出力信号をA/Dコンバータを介してコンピュータ322に入力するように構成した。また、各関節に設けたトルクセンサの歪みゲージ324からの出力信号は、増幅器325で増幅した後、A/Dコンバータを介してコンピュータ322に入力するように構成した。
【0055】
また、コンピュータ322は、各エンコーダ312ならびに各歪みゲージ324からの入力信号に基づいて、必要な演算等を実行し、モータ304L,304R,309に印加する電圧指令値を導出し、導出された電圧指令値をD/Aコンバータを介してモータドライバ326に入力するように構成し、モータドライバ326は、電源320から各モータ304L,304R,309へ指定された電圧を印加するように構成した。上述した二足歩行ロボット300に対し、図6を参照して説明したフローチャートに基づく処理を実行させた。なお、本実施例においては、エネルギー効率の評価のため、コンピュータ322に各関節の角速度の経時的変化を取得させた。
【0056】
以上、二足歩行ロボット300の概要について説明してきたが、次に、二足歩行ロボット300による歩行実験およびそのエネルギー効率評価について、以下説明する。
【0057】
(予備実験)
歩行実験に先立ち、本発明のゼロトルクフィードバック制御の効果を検証する予備実験を以下の手順で行なった。まず、足を構成する入力側リンクを固定したうえで、出力側のリンクを鉛直方向と60°の角度をなす高さまで持ち上げて静止させ、その後、静かに手を離した(角速度0)。図10は、出力側リンクと鉛直方向のなす角度[rad]と、膝関節軸(出力軸)にかかった負荷トルクτの経時的変化を示す。なお、図10(a)は、単に、膝関節の駆動モータ304への電力供給を止めただけの場合の結果を示し、図10(b)は、駆動モータ304についてゼロトルクフィードバック制御を行なった場合の結果を示す。
【0058】
ゼロトルクフィードバック制御を行なわない場合、図10(a)に示されるように、出力側リンクは、アクチュエータの機械抵抗のために鉛直方向を少しまわったところですぐに止まった。一方、ゼロトルクフィードバック制御を行なった場合は、図10(b)に示されるように、出力側リンクは、持続的な周期運動(10回)を見せ、自由関節のように振る舞うことが確認された。
【0059】
(歩行実験とエネルギー効率評価)
図5のフローチャートに基づいて各関節の駆動制御を行なったところ、二足歩行ロボット300は、スムーズな歩行に成功した。図11は、歩行運動をする二足歩行ロボット300の側面写真を時系列的に示す。さらに、二足歩行ロボット300のエネルギー効率についてSpecific cost、Cmt(Cost of mechanical transport:単位時間当りのアクチュエータの機械的な作業エネルギー)やCet(Cost of energy transport:単位時間・単位質量・単位移動距離当りの消費エネルギー)という評価関数を用いて評価したところ、Cmtは、0.88、Cetは、1.47であった。この値は、図12に示すように、能動制御(ZMP制御)を採用する(株)ホンダの「ASIMO」のスペックに比較して半分以下であり、本発明のロボット関節駆動制御システムのエネルギー効率が非常に高いことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上、説明したように、本発明によれば、ロボットの準受動制御において、能動期と受動期の切り替えを遅延なく確実に実現することのできるロボット関節駆動制御システムが提供される。なお、今後は、上述した二足歩行ロボットに限らず、軸関節を備えるその他の駆動リンク機構についても準受動制御による省エネルギー化が検討されることであろう。それに伴い、本発明のロボット関節駆動制御システムが各種産業用ロボットや多関節マニュピレータや多足移動ロボットなどの幅広い分野に応用展開されることを期待したい。
【符号の説明】
【0061】
100…ロボット関節駆動制御システム、102…リンク、104…回転アクチュエータ、106…軸関節、108…モータ、110…減速機、112…モータドライバ、114…トルクセンサ、116…フィードバック制御装置、200…トルクセンサ機構、202…リンク、204…回転アクチュエータ、206…出力側リンク、208…出力軸、210…歪み発生部材、212…出力軸固定部材、214…駆動軸固定部材、230…十字板バネ、231…中央部、232…固定部、233…平板部、240…歪みセンサ、10…二足歩行ロボット、20…股関節、30…膝関節、32,34…リンク、40…膝関節、42,44…リンク、22,36,46…回転アクチュエータ、24,38,48…エンコーダ、26,39,49…トルクセンサ、300…二足歩行ロボット、301,302…リンク、303…腰部、304,309…モータ、306,307…プーリ、308…ベルト、305,310…減速機、311…十字板バネ、312…エンコーダ、320…電源、322…コンピュータ、324…歪みゲージ、325…増幅器、326…モータドライバ、500…ロボット、502…リンク、504…回転アクチュエータ、506…軸関節、508…モータ、510…減速機、512…モータドライバ、600…ロボット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット関節の出力軸を駆動制御するシステムであって、
前記出力軸にかかるトルクを測定するためのセンサと、
前記出力軸に接続された回転アクチュエータの駆動モータを制御するフィードバック制御手段とを含み、
前記フィードバック制御手段は、前記センサの測定トルクを入力とし、所定のトルク低減目標値に基づいて前記駆動モータの回転トルクを出力し、該出力結果に基づいて前記駆動モータの回転を制御する、
ロボット関節駆動制御システム。
【請求項2】
前記フィードバック制御手段は、前記トルク低減目標値をゼロとして設定したPI制御を実行する、請求項1に記載のロボット関節駆動制御システム。
【請求項3】
ロボット関節の出力軸を駆動制御する方法であって、
前記出力軸にかかるトルクを測定するステップと、
所定のトルク低減目標値を設定し、測定した前記トルクを入力値とし、前記出力軸に接続される回転アクチュエータの駆動モータの回転トルクを出力値とする所定のフィードバック制御式に基づいて演算を実行するステップと、
前記出力値に基づいて前記駆動モータの回転を制御するステップと
を含む、ロボット関節の駆動制御方法。
【請求項4】
前記フィードバック制御式は、前記トルク低減目標値をゼロとして設定したPI制御式である、請求項3に記載のロボット関節の駆動制御方法。
【請求項5】
2本の足リンク機構を含む二足歩行ロボットであって、
前記足リンク機構の各関節に設けられた回転アクチュエータを駆動して該足リンク機構を能動的に動かす能動期と、前記足リンク機構自体に作用する重力および慣性力を利用して該足リンク機構を受動的に動かす受動期とを所定のタイミングで切り替える能動/受動切替制御手段と、
前記関節の出力軸にかかるトルクを測定するためのセンサと、
前記出力軸に接続された前記回転アクチュエータの駆動モータを制御するフィードバック制御手段とを
含み、
前記フィードバック制御手段は、前記受動期において、前記センサの測定トルクを入力とし、所定のトルク低減目標値に基づいて前記駆動モータの回転トルクを出力し、該出力結果に基づいて前記駆動モータの回転を制御する、
二足歩行ロボット。
【請求項6】
前記フィードバック制御は、前記トルク低減目標値をゼロとして設定したPI制御である、請求項5に記載の二足歩行ロボット。
【請求項1】
ロボット関節の出力軸を駆動制御するシステムであって、
前記出力軸にかかるトルクを測定するためのセンサと、
前記出力軸に接続された回転アクチュエータの駆動モータを制御するフィードバック制御手段とを含み、
前記フィードバック制御手段は、前記センサの測定トルクを入力とし、所定のトルク低減目標値に基づいて前記駆動モータの回転トルクを出力し、該出力結果に基づいて前記駆動モータの回転を制御する、
ロボット関節駆動制御システム。
【請求項2】
前記フィードバック制御手段は、前記トルク低減目標値をゼロとして設定したPI制御を実行する、請求項1に記載のロボット関節駆動制御システム。
【請求項3】
ロボット関節の出力軸を駆動制御する方法であって、
前記出力軸にかかるトルクを測定するステップと、
所定のトルク低減目標値を設定し、測定した前記トルクを入力値とし、前記出力軸に接続される回転アクチュエータの駆動モータの回転トルクを出力値とする所定のフィードバック制御式に基づいて演算を実行するステップと、
前記出力値に基づいて前記駆動モータの回転を制御するステップと
を含む、ロボット関節の駆動制御方法。
【請求項4】
前記フィードバック制御式は、前記トルク低減目標値をゼロとして設定したPI制御式である、請求項3に記載のロボット関節の駆動制御方法。
【請求項5】
2本の足リンク機構を含む二足歩行ロボットであって、
前記足リンク機構の各関節に設けられた回転アクチュエータを駆動して該足リンク機構を能動的に動かす能動期と、前記足リンク機構自体に作用する重力および慣性力を利用して該足リンク機構を受動的に動かす受動期とを所定のタイミングで切り替える能動/受動切替制御手段と、
前記関節の出力軸にかかるトルクを測定するためのセンサと、
前記出力軸に接続された前記回転アクチュエータの駆動モータを制御するフィードバック制御手段とを
含み、
前記フィードバック制御手段は、前記受動期において、前記センサの測定トルクを入力とし、所定のトルク低減目標値に基づいて前記駆動モータの回転トルクを出力し、該出力結果に基づいて前記駆動モータの回転を制御する、
二足歩行ロボット。
【請求項6】
前記フィードバック制御は、前記トルク低減目標値をゼロとして設定したPI制御である、請求項5に記載の二足歩行ロボット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−62766(P2011−62766A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214481(P2009−214481)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ・平成21年4月1日、東京工業大学生活協同組合発行の、LANDFALL(ランドフォール)第66巻にて発表、該当ページ 26〜27ページ ・平成21年4月10日、以下のホームページのアドレスに掲載 http://www.titech−coop.or.jp/landfall/ http://www.titech−coop.or.jp/landfall/articles/ http://www.titech−coop.or.jp/landfall/pdf/66/5 yamaura.pdf
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ・平成21年4月1日、東京工業大学生活協同組合発行の、LANDFALL(ランドフォール)第66巻にて発表、該当ページ 26〜27ページ ・平成21年4月10日、以下のホームページのアドレスに掲載 http://www.titech−coop.or.jp/landfall/ http://www.titech−coop.or.jp/landfall/articles/ http://www.titech−coop.or.jp/landfall/pdf/66/5 yamaura.pdf
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
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