説明

真空チャンバ

【課題】 内部に設置する供試体の位置に制限を受けず、真空チャンバの外側にセオドライトを置くスペースが不要で、作業者等がセオドライトを不用意に動かすおそれもない真空チャンバを提供する。
【解決手段】 内部に配設された供試体4に対して熱真空試験を行う際に、熱真空試験による供試体4のアライメントの変化を測定するセオドライト2を、外壁に組み込んだ真空チャンバ1。セオドライト2からの照射光の方向を可変とする光路変換機構を、セオドライト2からの照射光を、その光軸に対して直角に反射する第1の反射鏡9Aと、第1の反射鏡9Aで反射された光を、その光軸に対して直角かつ供試体4の方向に反射する、移動可能な第2の反射鏡9Bとで構成することができる。セオドライト2及び設置台6を回転させることにより、セオドライト2の測定範囲を広げ、供試体4の設置位置の自由度がさらに大きくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバに関し、特に、人工衛星に搭載される光学センサ等の熱真空試験に用いられる真空チャンバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工衛星を打ち上げた後に受ける宇宙環境(高真空、低温等)を模擬するため、真空チャンバ内に、人工衛星又は人工衛星に搭載される光学センサ等を設置し、それらの機能や性能を評価する試験(熱真空試験等)が行われている。
【0003】
この熱真空試験においては、真空チャンバ内の光学センサ等が熱歪等によって微小な動きを示し、真空チャンバ内の光学センサ等のアライメントが変化する。そのため、例えば、図3に示すように、真空チャンバ21とセオドライト22を用い、光学センサ等の供試体24におけるアライメントの変化を監視したい部分にキューブミラー(以下、「ミラー」と略称する)5を取り付け、アライメント用ノズル23を介してミラー25をセオドライト22で測定していた。尚、セオドライト(経緯儀)22は、光学的に物体の方位角、仰角を測定する装置である。
【0004】
しかし、上記従来の真空チャンバ21においては、内部に載置された供試体24に取付けられたミラー25からの反射光軸を、外部からセオドライト22で測定する場合、ガラス付きのアライメント用ノズル23から見て真正面に位置するミラー25しか測定できないため、供試体24をアライメント用ノズル23の位置に合わせて設置しなければならず、供試体24の設置位置がアライメント用ノズル23の位置によって限定されるという問題があった。
【0005】
この問題を解決するため、例えば、特許文献1には、セオドライトからの照射光の光軸を、垂直面内で回転可能な光路変換部内において、互いに平行移動可能なリフレクタによって90゜ずつ反射させ、照射光の光路を変更することができる真空チャンバが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−35600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載の真空チャンバにおいても、依然として、供試体のアライメント測定のため、アライメント用ノズルを介してセオドライトの光軸と、供試体に取付けたミラーの光軸とを合わせる必要があるため、アライメント用ノズルの位置によって、真空チャンバ内に設置する供試体の位置が制限されるという問題があった。
【0008】
また、セオドライトを真空チャンバの外部エリアに設置するため、真空チャンバの外側にセオドライトを置くスペースが必要になるという問題があった。
【0009】
さらに、作業者が歩き回る床の上にセオドライトを設置すると、作業者が歩行中にセオドライトに足を引っ掛けたりして、セオドライトを不用意に動かしてしまうおそれもあった。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来の真空チャンバにおける問題点に鑑みてなされたものであって、真空チャンバ内に設置する供試体の位置に制限を受けることがなく、真空チャンバの外側にセオドライトを置くスペースが不要で、作業者等がセオドライトを不用意に動かしてしまうおそれもない真空チャンバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、真空チャンバであって、内部に配設された供試体に対して熱真空試験を行う際に、該熱真空試験による前記供試体のアライメントの変化を測定するセオドライトを、外壁に組み込んだことを特徴とする。
【0012】
そして、本発明によれば、真空チャンバの外壁に、熱真空試験における前記供試体のアライメントの変化を測定するセオドライトを組み込んだため、真空チャンバの外側にセオドライトを置くスペースが不要となり、作業者等がセオドライトを不用意に動かすことを回避することができる。
【0013】
前記真空チャンバにおいて、前記セオドライトからの照射光の方向を可変とする光路変換機構を内部に備えるようにすることができる。これによって、セオドライトの測定範囲を広げることができ、光学センサ等の供試体の設置位置の自由度が大きくなる。
【0014】
前記真空チャンバにおいて、前記光路変換機構は、前記セオドライトからの照射光を、その光軸に対して直角に反射する第1の反射鏡と、該第1の反射鏡で反射された光を、その光軸に対して直角かつ前記供試体の方向に反射する、移動可能な第2の反射鏡とを備えるようにすることができる。これによって、光学センサ等の供試体の設置位置の自由度がさらに大きくなる。
【0015】
前記真空チャンバにおいて、前記第1の反射鏡から前記第2の反射鏡への光路を、前記照射光の光軸を中心として回転させる回転手段を備えるようにすることができる。これによって、光学センサ等の供試体の設置位置の自由度がより一層大きくなる。
【0016】
前記真空チャンバにおいて、前記供試体を載置する設置台を、鉛直軸を中心として回転させる第2の回転手段を備えるようにすることができる。これによって、光学センサ等の供試体の設置位置の自由度がさらに大きくなる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、内部に設置する供試体の位置に制限を受けることがなく、真空チャンバの外側にセオドライトを置くスペースが不要で、作業者等がセオドライトを不用意に動かしてしまうおそれもない真空チャンバを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1及び図2は、本発明にかかる真空チャンバの一実施の形態を示し、この真空チャンバ1は、光学センサ等の供試体4のアライメントの変化を測定するセオドライト2と、セオドライト2からの照射光の方向を可変とする光路変換機構を構成するハーフミラー9A、9Bと、供試体4におけるアライメントの変化を監視したい部分に貼着されるキューブミラー(以下、「ミラー」と略称する)5と、供試体4を載置する設置台6等で構成される。
【0019】
セオドライト2は、熱真空試験の際に供試体4のアライメントの変化を測定するために備えられ、真空チャンバ1のアライメント用ノズル3が配置された部分に組み込まれる。このセオドライト2は、操作盤10を操作することにより、垂直面内を回転可能に構成される。
【0020】
セオドライト2からの照射光の方向を可変とする光路変換機構として、セオドライト2からの照射光を、その光軸に対して直角に反射するハーフミラー(第1の反射鏡)9Aと、ハーフミラー9Aで反射された光を、その光軸に対して直角かつ供試体4の方向に反射する、移動可能なハーフミラー(第2の反射鏡)9Bが配置される。上述のように、セオドライト2が垂直面内を回転可能であるため、ハーフミラー9A、9Bも垂直面内を回転可能であり、これによってハーフミラー9Aから9Bへの光路をセオドライト2からの照射光の光軸を中心として回転させることができる。
【0021】
設置台6は、供試体4を載置するために備えられ、水平面内において回転可能である。ケーブル類7は、真空チャンバ1内の供試体4と、真空チャンバ1の外部とを接続するために備えられる。ケーブル類7は、真空チャンバ1の下部のスリップリング8を挿通するため、供試体4が回転しても、ケーブル類7が設置台6に巻き付いたり、引っ張られることはない。
【0022】
操作盤10は、セオドライト2の回転、ハーフミラー9Bの移動、及び設置台6の回転を行うために設けられる。
【0023】
次に、上記構成を有する真空チャンバ1の動作について図1及び図2を参照しながら説明する。
【0024】
真空チャンバ1の内部に配設された供試体4に対して熱真空試験を行うにあたって、まず、供試体4におけるアライメントの変化を監視したい部分にミラー5を貼着し、設置台6の上に供試体4を載置する。ケーブル類7は、スリップリング8を介して真空チャンバ1の外部に導く。
【0025】
真空チャンバ1のアライメント用ノズル3に組み込まれたセオドライト2からの照射光を発する。この照射光は、ハーフミラー9A、9Bによって反射され、ミラー5に導かれる。このとき、操作盤10を操作し、ハーフミラー9Bを、図1において垂直方向に移動することができるとともに、セオドライト2も垂直面内を回転可能であり、さらに、設置台6も鉛直軸を中心として回転させることができるため、セオドライト2の測定範囲を広げることができる。これによって、供試体4の設置位置の自由度を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にかかる真空チャンバの一実施の形態を示す正面図である。
【図2】図1の真空チャンバのセオドライト及びその近傍を示す詳細図である。
【図3】従来の真空チャンバの一例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 真空チャンバ
2 セオドライト
3 アライメント用ノズル
4 供試体
5 ミラー
6 設置台
7 ケーブル類
8 スリップリング
9(9A、9B) ハーフミラー
10 操作盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に配設された供試体に対して熱真空試験を行う際に、該熱真空試験による前記供試体のアライメントの変化を測定するセオドライトを、外壁に組み込んだことを特徴とする真空チャンバ。
【請求項2】
前記セオドライトからの照射光の方向を可変とする光路変換機構を内部に備えることを特徴とする請求項1に記載の真空チャンバ。
【請求項3】
前記光路変換機構は、前記セオドライトからの照射光を、その光軸に対して直角に反射する第1の反射鏡と、該第1の反射鏡で反射された光を、その光軸に対して直角かつ前記供試体の方向に反射する、移動可能な第2の反射鏡とを備えることを特徴とする請求項2に記載の真空チャンバ。
【請求項4】
前記第1の反射鏡から前記第2の反射鏡への光路を、前記照射光の光軸を中心として回転させる回転手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の真空チャンバ。
【請求項5】
前記供試体を載置する設置台を、鉛直軸を中心として回転させる第2の回転手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の真空チャンバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−168530(P2006−168530A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363762(P2004−363762)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】