説明

真空バルブ用接点材料および製造方法

【課題】遮断特性を所定のレベルに維持した上で、再点弧特性を向上させる真空バルブ用接点材料を得る。
【解決手段】接離自在の一対の接点5、6を有する真空バルブに用いられる接点材料において、Fe成分とC成分とCr成分を有するFeCCr層(A)、FeCCr層(B)、およびFe成分とC成分とCr成分とCu成分を有するFeCCrCu層(C)の少なくとも1つで被覆された改質Cr粒子からなる耐弧性成分と、Cu粒子からなる導電性成分と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空バルブ用接点材料に係り、特に遮断特性を維持した上で、再点弧特性を向上し得る真空バルブ用接点材料および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空バルブの接点は、耐溶着特性、耐電圧特性、遮断特性で代表される基本三要件のほかに、裁断特性、耐消耗特性、接触抵抗特性、温度特性などを向上させるため、種々の材料から構成される。しかしながら、上述の諸特性は互いに相反する材料物性を要求する場合が多いことから、一つの元素で満足させることは困難とされている。そこで、材料の複合化や素材張合わせなどによって、特定用途に合った接点材料が開発されている。
【0003】
大電流遮断用接点材料では、Cu−Bi接点、Cu−Te接点が提案され、遮断特性や耐溶着特性の向上が図られているが、再点弧特性が劣るとされている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
Cu−W接点では、Wの高溶融点性の効果によって優れた耐アーク性を示すものの、電流遮断時の激しい熱電子放出によって遮断特性が阻害されることが指摘されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
高耐電圧、大電流遮断用接点材料では、Cu−Cr接点が提案されている。Cu−Cr接点は、他の接点材料ほどには、構成元素間の蒸気圧差が少ないため均一な性能発揮を期待し得る利点がある(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭41−12131号公報
【特許文献2】特公昭44−23751号公報
【特許文献3】特開平5−311273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、真空遮断器の使用条件の過酷化とともに負荷の多様化が進み、リアクトル回路やコンデンサ回路への適用拡大が進んでいる。これに対し、耐電圧特性や遮断特性の改善が期待できるCu−Cr接点であっても、更なる低再点弧化の要求に対しては充分なものではなかった。
【0008】
即ち、高耐電圧、大電流遮断として優先的に使用されてきたCu−Cr接点でも、より過酷な高電圧領域および突入電流を伴う回路では再点弧現象の発生が観察されるとともに、接点の材質間で再点弧特性にばらつきが観察されている。これは、接点製造時の環境や雰囲気に暴露されたCr粒子に起因する場合が多いとされている。このため、Cr粒子に起因するものを取り除き、遮断特性を所定のレベルに維持した上で、再点弧特性を向上させることのできる接点材料が望まれていた。
【0009】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、遮断特性を所定のレベルに維持した上で、再点弧特性を向上し得る真空バルブ用接点材料および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の真空バルブ用接点材料は、FeCCr層(A)、FeCCr層(B)、FeCCrCu層(C)の少なくとも1つで被覆された改質Cr粒子からなる耐弧性成分と、Cu粒子からなる導電性成分と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原料のCr粒子の表面部にFe成分およびC成分を有するFeCCr層を形成させた改質Cr粒子と、残部をCuマトリックス相とで構成したCu−Cr接点としているので、Crの雰囲気に対する活性度を低く保ち、Feの持つ優れた耐電圧特性から、遮断特性を所定のレベルに維持し、再点弧特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係る真空バルブ用接点材料を使用する真空バルブの構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(接点材料の構成)
原料のCr粒子の表面部に、Fe成分およびC成分、更にはCu成分を有するFeC層、FeCCr層、FeCCrCu層(以下、FeCCr層で代表する)の少なくとも1つを形成し、Cr粒子を改質する。この改質Cr粒子と残部をCuマトリックス相とで構成し、Cu−Cr系の接点材料とする。
【0014】
改質Cr粒子は、10〜60質量%とする。10質量%未満では、遮断特性、接触抵抗特性が確保されるものの、再点弧特性が低下する。60質量%を越えると、再点弧特性は優位となるものの、遮断特性、接触抵抗特性が低下する。また、改質Cr粒子の分散間隔は、1〜80μmとする。80μmを超えると、耐溶着特性や接触抵抗特性が低下する。
【0015】
原料のCr粒子直径は、1〜250μmの範囲から選択する。粒径1μm未満では、焼結後の接点素材中に残存するガス量が多く、再点弧の発生確率が上昇する傾向にある。粒径が250μmを超えても、再点弧の発生確率が上昇し、ばらつきが大きくなる傾向にある。また、原料のCu粒子直径は、1〜250μmの範囲から選択する。
【0016】
(改質Cr粒子の構成)
FeCCr層は、50〜90質量%のFeと、0.0005〜0.05質量%のCと、必要により20質量%以下のCuと、残部がCrからなる。即ち、FeCCr層とは、Cr粒子の周りに、Fe成分、C成分、必要によりCu成分が強固に結合した状態のものである。
【0017】
Fe量が50質量%未満では、再点弧特性が低下する。90質量%を越えると、焼結時などの雰囲気から汚染を受け易く、その上、原料Cr中へのFeの浸入阻止が制御困難となる。C量は、0.05質量%を超えると、再点弧特性が低下する。0.0005質量%未満では、内部のCrとの反応もしくは濡れ性が阻害され、脱落することがある。Cは、FeCCr層中のFeとCrを強固に結合させる作用をする。Cuは、焼結性、溶浸性を改善し、FeCCr層の導電性を改善するが、20質量%を超えると、Feとの混合性が阻害され組織が偏析状態となる。
【0018】
なお、FeCCr層中に、0.1質量%以下のSi(ゼロを含む)、0.1質量%以下のAl(ゼロを含む)を含み、Cuマトリックス中に、0.3質量%以下のCr(ゼロを含む)、0.3質量%以下のFe(ゼロを含む)を含んでもよい。これらは、再点弧特性の改善に寄与する。
【0019】
(改質Cr粒子の作用)
再点弧現象は、同じCu−Cr合金であっても、直接アークを受ける部分の組成、材質、製造条件によって大きく異なる。再点弧の発生確率が大きい接点では、表面の材質的不都合さ(組成と成分の不均一性、量の不均一性、表面吸着ガス、吸着ガスとの反応生成物、内臓ガスの吸着や付着、雰囲気など)が大きく影響している。材質的不都合さの原因の1つに、Crが持つ活性な性質が起因しており、この改善が重要となる。
【0020】
例えばCrなど接点を構成している物質が遮断時の電気的衝撃、機械的衝撃、熱的衝撃などによって、接点面から脱落する現象が観察され、再点弧現象との相関性が見られた。
【0021】
そこで、原料のCr粒子の表面部にFeとCが共存するFeCCr層を形成し、Cによって、Feと原料Cr粒子とFeCCr層とを強固に結合させ、接点面からCr粒子が脱落することを抑止させる。また、FeCCr層中のCrも、Cuマトリックス中から改質Cr粒子が脱落することを阻止する。更に、表面にFeCCr層を形成することで、原料Cr粒子が製造工程中で受ける影響を抑制する。
【0022】
(改質Cr粒子の製造準備)
原料として、粒子直径1〜250μmのCr粉、粒子直径1〜250μmのFe粉、粒子直径0.01〜1μmのC粉、粒子直径1〜250μmのCu粉を準備する。
【0023】
FeCCr混合粉(A)の製造:予めCとFeとを合金化させたFeC粉を準備する。そして例えば、8000grのFeC粉と2000grのCr粉を混合し、80%FeCCr粉を得る。これをFeCCr混合粉(A)とする。
FeCCr混合粉(B)の製造:それぞれ所定量のFe粉とCr粉とC粉を混合し、FeCCr混合粉(B)とする。
FeCCrCu混合粉(C)の製造:それぞれ所定量のFeCCr混合粉(A)とCu粉を混合し、FeCCrCu混合粉(C)とする。
【0024】
(改質Cr粒子を有するCu−Cr接点の製造)
製造例1:FeCCr混合粉(A)を用い、それぞれ所定量のFeC粉、Cr粉、原料Cu粉を混合し、FeC粒子とCr粒子に例えば3トン/cmの所定の外力を与え、互いを接触させながら成型する(第1の製造工程)。そして、Fe粒子とCr粒子の接触を維持させるため、成型体内の残留応力を残した状態を保って、850〜1050℃で固相焼結する(第2の製造工程)。これにより、FeCCr層(A)で被覆された改質Cr粒子が得られるとともに、改質Cr粒子がCuマトリックス相に分散されたCu−Cr接点を得ることができる。製造例1は、後述する実施例1、7、14、15、比較例8に用いる。
【0025】
製造例2:FeCCr混合粉(B)を用い、それぞれ所定量のFeCCr混合粉(B)、原料Cu粉を混合し、Fe粒子、Cr粒子、C粒子に例えば3トン/cmの所定の外力を与え、互いの粒子を接触させながら成型する(第1の製造工程に相当)。そして、残留応力の残った成型体を850〜1050℃で固相焼結する(第2の製造工程に相当)。これにより、FeCCr層(B)で被覆された改質Cr粒子が得られるとともに、改質Cr粒子がCuマトリックス相に分散されたCu−Cr接点を得ることができる。製造例2は、後述する実施例2に用いる。
【0026】
製造例3:FeCCrCu混合粉(B)を用い、それぞれ所定量のFeCCrCu混合粉(C)、原料Cu粉を混合し、Fe粒子、Cr粒子、C粒子、Cu粒子に例えば3トン/cmの所定の外力を与え、互いの粒子を接触させながら成型する(第1の製造工程に相当)。そして、残留応力の残った成型体を850〜1050℃で固相焼結する(第2の製造工程に相当)。これにより、FeCCrCu層(C)で被覆された改質Cr粒子が得られるとともに、改質Cr粒子がCuマトリックス相に分散されたCu−Cr接点を得ることができる。製造例3は、後述する実施例3、8〜10、比較例3、4に用いる。
【0027】
製造例4:製造例1の第1の製造工程後の成型体を、例えば850℃で固相焼結し(第3の製造工程)、この焼結体の空隙内に、1100〜1350℃でCuを溶浸する(第4の製造工程)。これにより、製造例1と同様のFeCCr層(A)で被覆された改質Cr粒子がCuマトリックス相に分散されたCu−Cr接点を得ることができる。製造例4は、後述する実施例4、11〜13、16、17、比較例5〜7、9に用いる。
【0028】
製造例5:製造例2の第1の製造工程後の成型体を、例えば850℃で焼結し(第3の製造工程に相当)、この焼結体の空隙内に、1100〜1350℃でCuを溶浸する(第4の製造工程に相当)。これにより、製造例2と同様のFeCCr層(B)で被覆された改質Cr粒子がCuマトリックス相に分散されたCu−Cr接点を得ることができる。製造例5は、実施例5に用いる。
【0029】
製造例6:製造例3の第1の製造工程後の成型体を、例えば850℃で焼結し(第3の製造工程に相当)、この焼結体の空隙内に、1100〜1350℃でCuを溶浸する(第4の製造工程に相当)。これにより、製造例3と同様のFeCCrCu層(C)で被覆された改質Cr粒子がCuマトリックス相に分散されたCu−Cr接点を得ることができる。製造例6は、実施例6に用いる。
【0030】
上述した製造例4、6は、再点弧特性のみならず、製造が容易であり、経済性や生産性に優れている。
【0031】
(真空バルブの構成)
FeCCr層で被覆された改質Cr粒子がCuマトリックス相に分散されたCu−Cr接点が用いられる真空バルブを図1を参照して説明する。筒状の真空絶縁容器1の両端開口部には、固定側封着金具2と可動側封着金具3が封着されている。固定側封着金具2には、固定側通電軸4が貫通固定され、真空絶縁容器1内の端部に固定側接点5が固着されている。
【0032】
固定側接点5に対向して接離自在の可動側接点6が、可動側封着金具3を移動自在に貫通する可動側通電軸7の端部に固着されている。可動側通電軸7の中間部にはベローズカバー8が固定され、ベローズカバー8と可動側封着金具3間に伸縮自在のベローズ9が封着されている。また、接点5、6を包囲するように筒状のアークシールド10が真空絶縁容器1内面に固定されている。
【0033】
(評価方法)
再点弧特性:試験用真空容器内に一対のCu−Cr接点を装着し、24kV−500Aを2000回開閉したときの、再点弧発生頻度を測定した。判定基準を表1に示す。実施例1の値を基準のBとし、相対値で表示している。なお、各接点のベーキング、電流エージング、開閉速度などは同様である。
【表1】

【0034】
遮断特性:Cu−Cr接点を真空バルブ内に組み込み、電圧エージング後、24kV−50Hz回路に接続し、遮断限界を求めた。遮断限界近くまでは5kAステップで上昇させ、遮断限界になると1kAステップで上昇させた。供試数は3本であり、ばらつきを求めた。判定基準を表2に示す。実施例1の値を基準のbとし、相対値で表示している。
【表2】

【0035】
接触抵抗特性:一部のCu−Cr接点については、遮断試験前と遮断試験後の接触抵抗を測定した。測定電流は10Aである。
【0036】
静耐電圧特性:一部の接点については、遮断試験後に、接点間を所定のギャップに開き、1kVステップで電圧上昇させたときの破壊電圧を、静耐電圧値として求めた。
【0037】
以下、本発明の実施例を、表3に示す接点製造条件、表4に示す評価結果を参照して説明する。
【実施例】
【0038】
(実施例1〜3、比較例1)
実施例1〜3では、それぞれFeCCr層(A)、FeCCr層(B)、FeCCrCu層(C)で被覆された平均粒子直径80μmの改質Cr粒子からなる耐弧性成分と、平均粒子直径5μmの電解Cu粉からなる導電性成分を用いた。それぞれのFeCCr層の成分は、表3に示す通りである。比較例1では、耐弧性成分に原料そのままの平均粒子直径80μmのCr粉を用いた。
【0039】
そして、耐弧性成分50質量%、導電性成分50%質量%とする混合粉を得た後、3トン/cmで成形し、φ52mmの成型体を得た。これを水素雰囲気中で950℃−3時間の焼結をした。
【0040】
その結果、実施例1〜3では、再点弧特性がA〜C2、遮断特性がb〜c2であり、いずれも良好であった。これに対し、比較例1では、再点弧特性がX、遮断特性がc2〜yであり、不良であった。
【0041】
また、実施例1〜3では、遮断試験後の接触抵抗値が、遮断試験前の1.1〜1.5倍であった。これに対し、比較例1では、遮断試験後に、1.7〜3.4倍に上昇した。また、遮断試験前後の静耐電圧値は、実施例1〜3では大きな差がなかったが、比較例1では遮断試験後に大きく低下した。これは、FeCCr層のCの存在効果が現れたものであり、実施例1〜3では表面荒れが少なかったが、比較例1では表面が激しく荒れていた。なお、FeCCr層の厚さは、1〜25μmである。1μm未満では、Crが持つ活性な性質を抑え難くなる。
【0042】
(実施例4〜6、比較例2)
実施例4〜6では、それぞれFeCCr層(A)、FeCCr層(B)、FeCCrCu層(C)で被覆された平均粒子直径80μmの改質Cr粒子からなる耐弧性成分と、平均粒子直径5μmの電解Cu粉からなる導電性成分を用いた。それぞれのFeCCr層の成分は、表3に示す通りである。比較例2では、耐弧性成分に原料そのままの平均粒子直径80μmのCr粉を用いた。
【0043】
そして、耐弧性成分50質量%、導電性成分50%質量%とする混合粉を得た後、2トン/cmで成形し、φ52mmの成型体を得た。これを水素雰囲気中で850℃−1時間の仮焼結をした。次いで、仮焼結体の空隙部にCuを1150℃の真空中で溶浸した。
【0044】
その結果、実施例4〜6では、再点弧特性がS〜C1、遮断特性がa〜c1であり、いずれも良好であった。これに対し、比較例2では、再点弧特性がX、遮断特性がc1〜xであり、不良であった。
【0045】
また、実施例4〜6では、遮断試験後の接触抵抗値が、遮断試験前の1.3〜1.9倍であった。これに対し、比較例1では、遮断試験後に、2.0〜3.8倍に上昇した。これは、実施例1〜3と同様に、FeCCr層のCの存在効果が現れたものである。なお、FeCCr層の厚さは、実施例1〜3と同様に、1〜25μmである。
【0046】
(実施例7〜10、比較例3、4)
実施例7〜10、比較例3、4では、FeCCr層の成分のうち、Fe量を30〜99質量%、Cu量を0〜35質量%と変化させた。Fe量とCu量の制御は、それぞれの混合比率とともに、加熱処理温度、加熱時間で行った。そして、耐弧性成分25質量%、導電性成分75質量%とし、950℃で固相焼結した。
【0047】
その結果、Fe量が50〜99質量%、Cu量が0〜20質量%の実施例7〜10では、再点弧特性がB〜C2、遮断特性がb〜c1であり、いずれも良好であった。これに対し、比較例3のFe量45質量%、Cu量30質量%では、遮断特性が良好なものの、再点弧特性が劣った。比較例4のFe量30質量%、Cu量35質量%も同様であった。
【0048】
(実施例11〜13、比較例5〜7)
実施例11〜13、比較例5〜7では、FeCCr層の成分のうち、C量を0.0005〜0.5質量%と変化させた。Cは、原料のCr粒子からFeCCr層が脱落するのを防止したり、接点表面の平滑化に効果を発揮する。
【0049】
C量の制御は、製造例1ではFe粉とC粉を秤量する際の比率調整、製造例2ではFe粉、Cr粉、C粉を秤量する際の比率調整、製造例3ではFe粉、Cr粉、C粉、Cu粉を秤量する際の比率調整で行うが、Cuマトリックス相からの拡散も加味する。
【0050】
その結果、比較例5、実施例11〜13のC量0.05質量%以下では、再点弧特性がS〜C1、遮断特性がa〜bであり、良好であった。しかしながら、比較例5のC量0.0005未満では、C量を安定的に制御することが困難であるので、製造技術的な観点から除外する。
【0051】
これに対し、比較例6のC量0.07質量%、比較例7の0.5質量%では、再点弧特性、遮断特性とも不良であった。このため、C量は、0.0005〜0.05質量%において、優れた再点弧特性と遮断特性を得ることができる。更に、C量が増加するにつれて、接触抵抗のばらつきが小さくなる傾向にあった。
【0052】
(実施例14〜17、比較例8、9)
実施例14〜17、比較例8、9では、FeCCr層を有する耐弧性成分を5〜70質量%と変化させた。導電性成分は、残部となる。
【0053】
その結果、実施例14〜17の耐弧性成分10〜60質量%では、再点弧特性がB〜C2、遮断特性がa〜c2であり、いずれも良好であった。
【0054】
これに対し、比較例8の耐弧性成分が5質量%では、遮断によって接点消耗が大となるものの遮断特性はc1〜c2と良好であった。しかしながら、再点弧特性がX〜Yであった。比較例9の耐弧性成分70質量%では、再点弧特性が良好なものの、遮断特性が劣り、接触抵抗特性も低下した。
【表3】

【表4】

【符号の説明】
【0055】
1 真空絶縁容器
2 固定側封着金具
3 可動側封着金具
4 固定側通電軸
5 固定側接点
6 可動側接点
7 可動側通電軸
8 ベローズカバー
9 ベローズ
10 アークシールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FeCCr層(A)、FeCCr層(B)、FeCCrCu層(C)の少なくとも1つで被覆された改質Cr粒子からなる耐弧性成分と、
Cu粒子からなる導電性成分と、
を備えたことを特徴とする真空バルブ用接点材料。
【請求項2】
前記FeCCr(A)層および前記FeCCr(B)層は、
50〜99質量%のFeと、
0.0005〜0.05質量%のCと、
残部がCrと、
からなることを特徴とする請求項1に記載の真空バルブ用接点材料。
【請求項3】
前記FeCCrCu(C)層は、
50〜99質量%のFeと、
0.0005〜0.05質量%のCと、
20質量%以下のCuと、
残部がCrと、
からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空バルブ用接点材料。
【請求項4】
前記耐弧性成分は10〜60質量%であり、残部が前記導電性成分で構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の真空バルブ用接点材料。
【請求項5】
それぞれ所定量のFe粉と、C粉と、Cr粉と、必要によりCu粉とを接触させ、所定の圧力で加圧して成型体を得る第1の製造工程と、
前記成型体を850〜1050℃で固相焼結する第2の製造工程と、
を備えたことを特徴とする真空バルブ用接点材料の製造方法。
【請求項6】
それぞれ所定量のFe粉と、C粉と、Cr粉と、必要によりCu粉とを接触させ、所定の圧力で加圧して成型体とした後、固相焼結して焼結体を得る第3の製造工程と、
前記焼結体にCuを溶浸する第4の製造工程と、
を備えたことを特徴とする真空バルブ用接点材料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−198734(P2010−198734A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38640(P2009−38640)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(595019599)芝府エンジニアリング株式会社 (40)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】