説明

真空処理装置用真空チャンバー

【課題】 真空チャンバーを設置した後においても、ユーザーの要望等によって真空チャンバーの形状や大きさを簡易に変更することができるようにする。
【解決手段】 真空チャンバー1が、長方形状に形成されたチャンバー本体2と、チャンバー本体2の両側面にボルト留めで取り外し自在に密着接合される3角形状の側面枠3a、3bと、チャンバー本体2と側面枠3a、3bのそれぞれの開口している上面に接合される上板6、9a、9bと、チャンバー本体2と側面枠3a、3bのそれぞれの開口している底面に接合される底板7と、に分割自在に構成されているので、ユーザーの要望等によって真空チャンバーの形状や大きさを簡易に変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスパッタ成膜装置などの真空処理装置に使用される真空処理装置用真空チャンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラスなどからなる基板上に配線用金属膜などを成膜するスパッタ装置等の真空処理装置では、成膜技術の向上等によって大型の基板にも高精度の成膜を行うことが可能となってきた。また、近年においては、例えば図8や図9に示すような複数のプロセスを真空中の移動のみにより連続して行うためのマルチチャンバー方式の真空処理装置が主流になっている。
【0003】
図8に示すマルチチャンバー方式の真空処理装置30では、基板搬送ロボット31が設置される中央の搬送室32の周囲に6つの真空処置室33a、33b、33c、33d、33e、33fを備えている。また、図9に示すマルチチャンバー方式の真空処理装置40では、基板搬送ロボット41が設置される中央の搬送室42の周囲に3つの真空処置室43a、43b、43cを備えている。
【0004】
このため、基板の大型化に伴って真空処理装置に用いられる真空チャンバーも大型化(例えば、所謂第6世代の基板では、縦、横の寸法が1800mm×1500mm、第7世代の基板では、縦、横の寸法が2100mm×1850mm)してきた。これにより、真空チャンバーの加工機械が従来よりも大型化するなどして、真空チャンバーの製造コストが高くなる。
【0005】
このため、従来では、枠状のチャンバー本体を複数の構成部材に分割し、分割した複数の構成部材を溶接して接合することにより、加工機械を大型化することなく製造コストを抑えて大型の真空チャンバーを得ることができるようにした製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開平8−64542号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記した特許文献1のような製造方法では、複数に分割した構成部材を溶接して真空チャンバーの側壁部を得ることにより、製作後には再び各構成部材を取り外すことができないので、製作後には真空チャンバーの側壁部の大きさや形状を変えることができなかった。
【0008】
また、上記した特許文献1では、真空チャンバーの側壁部の上下面にそれぞれ取り付けられる上板と底板は分割されていない一体物なので、大きさも大きく、かつ重量も重い。
【0009】
このため、上板と底板の吊り上げ等には大型のクレーン設備が必要となり、製造コストも高くなる。更に、上板と底板の寸法は大きいままなので、真空チャンバーを完成品又は組み立て前の状態で設置場所まで輸送する際には、特殊な大型トレーラ等が必要となる。
【0010】
そこで本発明は、製作後においても真空チャンバーの大きさや形状を容易に変えることができる真空処理装置用真空チャンバーを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、組み立て後の大きさが大きくても、大型のクレーン設備や輸送する際に特殊な大型トレーラ等の必要のない真空処理装置用真空チャンバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、真空処理装置に使用される真空チャンバーにおいて、前記真空チャンバーは、多角形状に形成された枠状のチャンバー本体と、前記チャンバー本体の少なくとも開口した一側面に取り外し自在に密着接合される開口面を有する多角形状の側面枠と、前記チャンバー本体と前記側面枠のそれぞれの開口している上面に接合されるそれぞれの上板と、前記チャンバー本体と前記側面枠のそれぞれの開口している底面に接合されるそれぞれの底板と、に分割自在であることを特徴としている。
【0013】
また、前記チャンバー本体内には、その外側に設けられる複数の真空処理室に対して基板を出し入れするための基板搬送用ロボットが設置されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明に係る真空チャンバーは、多角形状に形成された枠状のチャンバー本体と、チャンバー本体の少なくとも開口した一側面に取り外し自在に密着接合される開口面を有する多角形状の側面枠と、チャンバー本体と側面枠のそれぞれの開口している上面に接合されるそれぞれの上板と、チャンバー本体と側面枠のそれぞれの開口している底面に接合されるそれぞれの底板と、に分割自在なので、真空チャンバーを組み立てて設置後において、ユーザーの要求等に応じて別の多角形状の側面枠に容易に取り替えて真空チャンバーの形状を変更することができるので、ユーザーの要求仕様にフレキシブルに対応することができる。
【0015】
また、本発明によれば、分割されたチャンバー本体、側面枠、上板、底板を組み立てることにより真空チャンバーを得ることができるので、大型の基板を用いる大型の真空チャンバーを製作する場合でも、チャンバー本体、側面枠、上板、底板はそれぞれ分割されていることによって、それぞれの大きさと重さを小さく抑えることが可能となる。よって、特注の大型の加工機械を使用することなく従来の加工機械で容易に製作することができるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0016】
更に、大型の基板を用いる大型の真空チャンバーを製作する場合でも、チャンバー本体、側面枠、上板、底板はそれぞれ分割されていることによって、それぞれの大きさと重さを小さく抑えることが可能となるので、これらの分割された各構成部材を通常のトレーラ等で設置場所まで容易に輸送することが可能となり、且つ、設置場所で容易に組み立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0018】
〈実施の形態1〉
図1は、本発明の実施の形態1に係る真空処理装置用真空チャンバーを示す斜視図、図2は、その分解斜視図である。本実施の形態における真空処理装置用真空チャンバー(以下、真空チャンバーという)は、例えば6つの処理室を有するマルチチャンバー(多室)型枚葉式スパッタ成膜(以下、成膜装置という)の中央部に設けた基板搬送ロボットを有する搬送室として用いることができる。
【0019】
本発明の実施の形態に係る真空チャンバー1は、図1に示すように、分割された断面が長方形状の空間を形成する中央のチャンバー本体2と、チャンバー本体2の両側に断面が3角形状の空間を形成する側面枠3a、3bとを接合して6角形状に形成されている。チャンバー本体2と側面枠3a、3bの各側面(全部で6面)には、基板(不図示)を出し入れするための開口4が形成されている。チャンバー本体2と側面枠3a、3bは、アルミニウムやステンレス等の金属材料で形成されている。
【0020】
長方形状の枠状のチャンバー本体2の上面と下面には、上板5と基板搬送ロボット6が設置される底板7が接合される開口がそれぞれ形成されている。また、チャンバー本体2の側面枠3a、3bが接合される長辺状の両側面にも開口が形成されており、チャンバー本体2の短辺状の両側面には基板(不図示)を出し入れするための開口4が形成されている。
【0021】
また、3角形状の枠状の側面枠3a、3bの上面と下面には、上板8と底板9が接合される開口がそれぞれ形成されている。また、側面枠3a、3bの長辺状の両側面にはチャンバー本体2の側面に接合される開口が形成されており、側面枠3a、3bの短辺状の両側面には基板(不図示)を出し入れするための開口4が形成されている。
【0022】
次に、上記した本実施の形態に係る真空チャンバー1の製造方法について説明する。
【0023】
チャンバー本体2の底部にOリング(不図示)を介して底板7をボルト(不図示)によって接合すると共に、側面枠3a、3bの底部にOリング(不図示)を介して底板9をボルト(不図示)によってそれぞれ接合する。そして、この側面枠3a、3bを、チャンバー本体2の両側面の各開口にOリング10a、10bを介してボルト11a、11bによってそれぞれ接合する。
【0024】
そして、チャンバー本体2に接合した底板7に基板搬送ロボット6を設置し、その後、チャンバー本体2の上部にOリング10cを介して上板5をボルト11cによって接合する。そして、側面枠3a、3bの各上部にOリング10d、10eを介して上板8をボルト11d、11eによってそれぞれ接合することによって、図1に示した6角形状の真空チャンバー1が作製される。
【0025】
上記のように製作された真空チャンバー1は、6つの処理室を有する成膜装置の中央部に基板搬送ロボット6を備えた搬送室として設置され、真空チャンバー1の側面の各開口4の周囲には、不図示の6つの処理室(仕入れ取出し室、予備加熱室、成膜室、基板冷却室など)がゲートバルブ(不図示)を介して設置される。
【0026】
このように本実施の形態では、3つに分割された各構成部分(基板搬送ロボットが設置されるチャンバー本体2と、その両側の側面枠3a、3b)をボルト留めで組み立てて真空チャンバーを製作することにより、製作された真空チャンバー1を設置後において、例えば基板上への成膜プロセスの変更等が生じた場合でも、チャンバー本体2から3角形状の側面枠3a、3bをボルト11a、11bを外して取り外して、処理室の増減に応じて別の形状の側面枠に容易に取り替えて真空チャンバー(搬送室)の形状を変更することができるので、ユーザーの要求仕様にフレキシブルに対応することができる。
【0027】
また、基板搬送ロボット6が設置されるチャンバー本体2を、他の真空チャンバーのチャンバー本体としても使用可能な共通部品として用いることができるので、予め大量に製作することが可能となり、コストダウンを図ることができる。
【0028】
また、本実施の形態では、3つに分割された各構成部分(基板搬送ロボット6が設置されるチャンバー本体2と、その両側の側面枠3a、3b)を組み立てて真空チャンバー1を製作することにより、大型の基板を用いる大型の真空チャンバーを製作する場合でも、分割されているチャンバー本体2と側面枠3a、3bのそれぞれ大きさを小さく抑えることができ、特注の大型の加工機械を使用することなく従来の加工機械で容易に製作することができるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0029】
更に、大型の基板を用いる大型の真空チャンバーを製作する場合でも、分割されているチャンバー本体2に接合する上板5の大きさも抑えることができるので、上板5の軽量化を図ることができ、更に、上板5を一体物の金属で容易に加工することができる。
【0030】
また、本実施の形態では、3つ(基板搬送ロボット6が設置されるチャンバー本体2と、その両側の側面枠3a、3b)に分割して真空チャンバー1を製作することにより、大型の基板を用いる大型の真空チャンバーを製作する場合でも、各構成部材(チャンバー本体2、側面枠3a、3b)の大きさを小さく抑えることができるので、これらの分割された各構成部材を通常のトレーラ等で設置場所まで容易に輸送することが可能となり、且つ、設置場所で容易に組み立てることができる。
【0031】
〈実施の形態2〉
実施の形態1では、長方形状のチャンバー本体2を中心(コア)として、その両側に3角形状の側面枠3a、3bをボルト留めで接合して6角形状の真空チャンバーを組み立てる構造であったが、本実施の形態では、図3に示すように、実施の形態1で使用した長方形状のチャンバー本体2を中心(コア)とし、その両側に長方形状の側面枠12a、12bをボルト留めで接合して、正方形状の真空チャンバー13を組み立てる構造である。長方形状の側面枠12a、12bを使用した以外は実施の形態1と同様であり、重複する説明は省略する。
【0032】
本実施の形態における正方形状の真空チャンバー13は、各側面に開口を有し、それらの周囲に全部で4つの処理室(不図示)が設置される。
【0033】
〈実施の形態3〉
実施の形態2では、長方形状のチャンバー本体2を中心(コア)として、その両側に長方形状の側面枠12a、12bをボルト留めで接合して4角形状の真空チャンバーを組み立てる構造であったが、本実施の形態では、図4に示すように、実施の形態2で得られた正方形状の真空チャンバー13の各側面に3角形状の側面枠14a、14b、14c、14dをボルト留めで接合して、8角形状の真空チャンバー15を組み立てる構造である。
【0034】
本実施の形態における8角形状の真空チャンバー15は、各側面に開口を有し、それらの周囲に全部で8つの処理室(不図示)が設置される。
【0035】
〈実施の形態4〉
上述した各実施の形態では長方形状のチャンバー本体2を中心(コア)とした構成であったが、本実施の形態では、図5に示すように、台形状の4角形のチャンバー本体2aを中心(コア)として、その一つの長辺に3角形状の側面枠16をボルト留めで接合して5角形状の真空チャンバー17を組み立てる構造である。
【0036】
本実施の形態における5角形状の真空チャンバー17は、各側面に開口を有し、それらの周囲に全部で5つの処理室(不図示)が設置される。
【0037】
〈実施の形態5〉
本実施の形態では、図6に示すように、台形状の4角形のチャンバー本体2bを中心(コア)として、一方の長辺に台形状の4角形(チャンバー本体2bよりも小さい形状)の側面枠18をボルト留めで接合し、他方の短辺に3角形状の側面枠19をボルト留めで接合して7角形状の真空チャンバー20を組み立てる構造である。
【0038】
本実施の形態における7角形状の真空チャンバー20は、各側面に開口を有し、それらの周囲に全部で7つの処理室(不図示)が設置される。
【0039】
〈実施の形態6〉
本実施の形態では、図7に示すように、正方形状の4角形のチャンバー本体2cを中心(コア)として、その各側面に3角形状の側面枠21a、21b、21c、21dをボルト留めで接合して8角形状の真空チャンバー22を組み立てる構造である。
【0040】
本実施の形態における8角形状の真空チャンバー22は、各側面に開口を有し、それらの周囲に全部で8つの処理室(不図示)が設置される。
【0041】
図3〜図7に示した実施の形態2〜6のように、真空チャンバーを設置した後においても、基板搬送ロボットが設置される4角形(長方形、正方形、台形等)状のチャンバー本体2、2a、2b、2cを中心(コア)として、ユーザーの要望等によって、その側面にボルト留めで接合する4角形状や3角形状の側面枠を取り替えることができるので、真空チャンバーを容易に任意の多角形状に変更することができる。
【0042】
また、特に図4に示した実施の形態3のように、基板搬送ロボットが設置される4角形(長方形)状のチャンバー本体2の側面に多数の側面枠12a、12b、14a、14b、14c、14dをボルト留めで接合することによって、より大きな真空チャンバーを得ることができ、より大型の基板に対しても容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態1に係る真空チャンバーを示す斜視図。
【図2】本発明の実施の形態1に係る真空チャンバーを示す概略斜視図。
【図3】本発明の実施の形態2に係る真空チャンバーの製作手順を示す図。
【図4】本発明の実施の形態3に係る真空チャンバーの製作手順を示す図。
【図5】本発明の実施の形態4に係る真空チャンバーの形状を示す図。
【図6】本発明の実施の形態5に係る真空チャンバーの形状を示す図。
【図7】本発明の実施の形態6に係る真空チャンバーの形状を示す図。
【図8】従来例におけるマルチチャンバー方式の真空処理装置を示す概略平面図。
【図9】従来例におけるマルチチャンバー方式の真空処理装置を示す概略平面図。
【符号の説明】
【0044】
1、13、15、17、20、22 真空チャンバー
2、2a、2b、2c チャンバー本体
3a、3b、12a、12b、14a、14b、14c、14d、16、18、 19、21a、21b、21c、21d 側面枠
5、8 上板
6 基板搬送ロボット
7、9 底板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空処理装置に使用される真空チャンバーにおいて、
前記真空チャンバーは、多角形状に形成された枠状のチャンバー本体と、前記チャンバー本体の少なくとも開口した一側面に取り外し自在に密着接合される開口面を有する多角形状の側面枠と、前記チャンバー本体と前記側面枠のそれぞれの開口している上面に接合されるそれぞれの上板と、前記チャンバー本体と前記側面枠のそれぞれの開口している底面に接合されるそれぞれの底板と、に分割自在である、
ことを特徴とする真空チャンバー。
【請求項2】
前記チャンバー本体内には、その外側に設けられる複数の真空処理室に対して基板を出し入れするための基板搬送用ロボットが設置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の真空チャンバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−24264(P2009−24264A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242617(P2008−242617)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【分割の表示】特願2003−129754(P2003−129754)の分割
【原出願日】平成15年5月8日(2003.5.8)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】