説明

真空弁の制御装置

【課題】汚水の水面に浮遊するスカムを排出するための分離吸引時間を調整可能とする。
【解決手段】弁体35を開弁位置に移動させる開位置および弁体35を閉弁位置に移動させる閉位置にかけて移動可能な切換弁体69を有する切換部52と、切換弁体69の切換位置を維持する非作動位置および切換弁体69を開位置から閉位置に移動させる作動位置にかけて移動可能な閉作動部125を有する閉弁アクチュエータ97とを備え、切換弁体69または閉作動部125に、閉弁アクチュエータ97の閉作動時に閉作動部125が切換弁体69に当接する作動距離を調節可能な調節部材87を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空下水道システム等の真空送水システムに使用される真空弁の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空吸引を利用して送水を行う真空式送水システムが知られている。この真空送水システムの一例としては、真空式下水道システムがある。この真空式下水道システムは、真空ステーション、真空送水管および真空弁ユニットを備えている。
【0003】
真空ステーションは、真空ポンプ、集水タンクおよび圧送ポンプを備えている。真空送水管は、上流側が真空弁ユニットに接続され、下流側が真空ステーションの集水タンクに接続されている。真空ステーションの真空ポンプは、真空送水管内に負圧を発生させる。この真空送水管内の負圧により、真空弁ユニット内の汚水が真空送水管を通って真空ステーションの集水タンクに排水される。集水タンクに貯留された汚水は、圧送ポンプによってさらに下流側に搬送される。
【0004】
真空弁ユニットは、上流側の宅内下水設備から排出される汚水を一時的に貯留する貯水枡を備えている。この貯水枡には、下端が貯水枡内に位置する吸水管と真空送水管とが配設され、これらの間に真空弁が介設されている。この真空弁は、弁体を収容する弁箱本体を有する弁箱と、弁体を開閉駆動する駆動部とを備えている。そして、閉弁時には吸水管と真空下水管の連通を遮断し、開弁時には吸水管と真空下水管を連通させて貯水枡内の汚水を真空下水管に送水する。なお、駆動部は、2つの圧力室を備えている。そして、これら圧力室内の圧力差によって生じるピストンの押圧力と付勢スプリングの付勢力の釣り合いにより弁体を駆動させている。
【0005】
この真空弁の開閉制御を行う制御装置が特許文献1に記載されている。この制御装置は、真空弁の開弁のみを行うメカニカル型の開弁アクチュエータと、真空弁の閉弁のみを行うニューマチック型の閉弁アクチュエータとを備えている。開弁アクチュエータは、水に浮動するフロートを備え、貯水枡内の水位に連動して動作するものである。閉弁アクチュエータは、真空送水管に接続した受圧室と、大気に連通した大気圧室と、受圧室内に配設したスプリングとを備え、真空送水管の真空度(吸引力)の変化に応じて動作するものである。
【0006】
この制御装置は、貯水枡内に予め設定した高水位(HWL)まで汚水が溜まると、開弁アクチュエータのフロートによって切換弁を動作させ、真空弁を閉弁状態から開弁状態に切り換える。また、排水により貯水枡内の汚水が吸水管の下端より低い低水位(LWL)になると、空気の混入により真空送水管の真空度が低下して受圧室の真空度が低下する。そして、閉弁アクチュエータのスプリングの付勢力が、受圧室と大気圧室の差圧を上回ると、スプリングの付勢力によってピストンを介して切換弁を動作させることにより、真空弁を開弁状態から閉弁状態に切り換える。
【0007】
また、真空弁の駆動部の圧力室内の圧力を切り換えるための切換部を設け、この切換部に開弁アクチュエータおよび閉弁アクチュエータを一体的に配設した制御装置が特許文献2に記載されている。この制御装置は、切換部の内部に1個の切換弁が配設され、この切換弁を特許文献1と同様の開弁アクチュエータおよび閉弁アクチュエータによって動作させる。
【0008】
しかしながら、特許文献1の閉弁アクチュエータは、宅内下水設備から排出された汚水中のスカムの量に応じて、吸水管の下端から空気と一緒に液体を吸引する分離吸引時間を、調整することができない。即ち、真空弁ユニットの貯水枡に貯められる汚水中のスカムの量は家庭毎に異なる。そして、スカムが多く排出される真空弁ユニットでは、分離吸引時間が短い場合には十分にスカムを排出できない。その結果、貯水枡内に残留したスカムが固まって吸水管の入口に詰まるなど、真空弁ユニットの動作不良や排水不良を生じさせる可能性がある。また、スカムが少ない真空弁ユニットでは、分離吸引時間が短くても十分にスカムを排出できるため、分離吸引時間を無駄に長くする必要はない。
【0009】
また、各特許文献の閉弁アクチュエータは、真空弁を閉作動させるタイミングが、真空送水管の真空度とスプリングの付勢力とで決定されるため、真空弁を接続する真空送水管の実際の真空度に応じて、適した付勢力のスプリングを配設する必要がある。言い換えれば、閉弁アクチュエータは、全ての真空弁ユニットに共通のスプリングを使用することができないため、設備構築時の作業性が悪い。
【0010】
具体的には、真空式下水道システムは、1つの真空ステーションに対して複数の真空弁ユニットが接続されている。また、各真空弁ユニットは、真空ステーションからの距離や真空送水管の配管構造(抵抗)などによって、真空ステーションへの吸引力である真空送水管の真空度が異なる。例えば、真空ステーションに近い真空弁ユニットは、遠い真空弁ユニットと比較すると真空送水管内の真空度が高い。
【0011】
高真空度(例えば−70kPa)の真空送水管に接続された真空弁ユニットでは、貯水枡内の水位が低水位に低下しても真空送水管の真空度の低下が不十分である。そのため、閉弁アクチュエータのスプリングの付勢力が小さいと、受圧室と大気圧室の差圧を上回ることがでず、真空弁を閉弁できない。よって、高真空度の真空送水管に接続された真空弁ユニットでは、閉弁アクチュエータのスプリングの付勢力を大きく設定する必要がある。但し、スプリングの付勢力を大きくすると、閉作動させる圧力設定誤差も大きくなる。一方、低真空度(例えば−25kPa)の真空送水管に接続された真空弁ユニットでは、閉弁アクチュエータのスプリングの付勢力が大きいと、貯水枡内の水位が低水位に低下すると、受圧室と大気圧室の差圧を直ぐに上回り、真空弁が閉弁してしまう。よって、低真空度の真空送水管に接続された真空弁ユニットでは、閉弁アクチュエータのスプリングの付勢力を小さく設定する必要がある。そして、この真空送水管の真空度に応じたスプリングの付勢力の調整は、極めて困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第2805127号公報
【特許文献2】PCT出願国際公開第WO2010/113767号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、汚水の水面に浮遊するスカムを排出するための分離吸引時間を調整可能とすることを第1の課題とする。また、真空弁を閉作動させるスプリングの付勢力を、真空送水管の真空度に応じて自動調整可能とすることを第2の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、本発明の真空弁の制御装置は、下端が貯水枡内で開口した吸水管と真空吸引される真空送水管との間に介設され、これらを連通させた開弁位置と連通を遮断した閉弁位置との間を移動可能な弁体と、この弁体を開弁位置または閉弁位置に切り換える駆動部と、を有する真空弁の制御装置において、前記弁体が開弁されることにより前記貯水枡内が前記吸水管の下端から空気と一緒に液体を吸引する低水位まで排水されると、前記真空弁を閉弁させるもので、前記駆動部を介して前記弁体を開弁位置に移動させる開位置、および、前記駆動部を介して前記弁体を閉弁位置に移動させる閉位置にかけて移動可能な切換弁体を有する切換部と、前記切換部の切換弁体の切換位置を維持する非作動位置、および、前記切換部の切換弁体を開位置から閉位置に移動させる作動位置にかけて移動可能な閉作動部を有する閉弁アクチュエータとを備え、前記切換弁体または前記閉作動部に、前記閉弁アクチュエータの閉作動時に前記閉作動部が前記切換弁体に当接する作動距離を調節可能な調節部材を配設した構成としている。
【0015】
この真空弁の制御装置は、切換部の切換弁体に閉弁アクチュエータの閉作動部が当接する作動距離を調節可能な調節部材を配設しているため、切換弁体を開位置から閉位置に切り換える時間を調整できる。その結果、吸水管の下端から空気と一緒に液体を吸引する分離吸引時間を調整できる。即ち、作動距離を長くすることにより分離吸引時間を長くし、作動距離を短くすることにより分離吸引時間を短くすることができる。よって、真空弁ユニット内の実際のスカム量に応じて分離吸引時間を調整することにより、確実に貯水枡内のスカムを排出することができる。
【0016】
この真空弁の制御装置では、前記切換弁体の上端に調節部材配設部を設けるとともに、この調節部材配設部に階段状をなすように調節用段部を設け、所定の調節用段部上に前記調節部材を配置することにより、前記切換弁体の全高を調節することが好ましい。このようにすれば、調節部材によって簡単に切換弁体の全高を調整できる。よって、作業性よく制御装置による分離吸引時間を調整することができる。
【0017】
また、本発明の制御装置は、前記閉弁アクチュエータは、前記真空弁の前記真空送水管側に接続される第1受圧室とこの第1受圧室より真空度が低い第2受圧室とに可撓性部材によって区画した切換用シリンダと、前記可撓性部材に設けられ、前記第1受圧室側に位置する非作動位置、および、前記第2受圧室側に位置する作動位置にかけて移動可能なピストンと、前記第1受圧室内に配設され、前記ピストンを作動位置に向けて付勢する付勢スプリングと、を備え、前記ピストンに前記閉作動部を設けている。
【0018】
この制御装置は、弁体が開弁されることにより貯水枡内が吸水管の下端から空気と一緒に液体を吸引する低水位まで排水されると、真空送水管側に接続した第1受圧室内の真空度が低くなる。そうすると、第1および第2受圧室の差圧によるピストンの押圧力が、付勢スプリングの付勢力より小さくなる。その結果、付勢スプリングが伸長することにより、ピストンを作動位置に移動させ、閉作動部によって切換部を開位置から閉位置に切り換える。これにより、真空弁を確実に閉弁させることができる。
【0019】
この場合、前記切換用シリンダにおける前記第1受圧室の前記第2受圧室と反対側を、前記第1受圧室と定圧状態の定圧室とに第2可撓性部材によって区画し、前記第2可撓性部材に、前記第1のピストンに近づいた近接位置、および、前記第1ピストンから離れた離反位置にかけて移動可能な第2ピストンを設け、前記付勢スプリングを、前記第1および第2ピストンの間に位置するように配設することが好ましい。この制御装置は、第1および第2可撓性部材によって真空送水管側に接続される第1受圧室が区画されている。そのため、第1受圧室は、真空送水管側の吸引力(真空度)が加わることにより、両側に位置する第2受圧室および定圧室との差圧によって生じる第1および第2ピストンの押圧力が加わる。これにより、第1および第2ピストンの間に配設した付勢スプリングは、両側からの押圧力により収縮する。そして、この付勢スプリングの収縮は、真空度が高い場合に大きく、真空度が低い場合に小さい。即ち、第1ピストンを作動位置へ付勢する付勢スプリングの付勢力は、真空送水管の真空度が高い場合に強くなり、真空送水管の真空度が低い場合に弱くなる。その結果、閉作動部が閉作動する第1および第2受圧室の差圧が、接続した真空送水管の真空度が高い場合に高くなり、真空送水管の真空度が低い場合に低くなる。このように、真空弁を閉作動させるための付勢スプリングの付勢力を、真空送水管側の真空度に応じて自動調整することができる。よって、真空度が異なる全ての真空弁ユニットに共通して使用することができるため、設備構築時の作業性を大幅に向上することができる。
【0020】
また、前記定圧室は、非圧縮性流体が充填される流体収容室であり、この流体収容室に連通する連通室を設け、この連通室内を、前記流体収容室と連通する補助流体収容室と大気に連通した大気圧室とに第3可撓性部材によって区画することが好ましい。このようにすれば、第1ピストンを非作動位置から作動位置に移動させる際に、付勢スプリングの付勢力が第2ピストンの側(流体収容室)に逃げることを抑制できる。そのため、適切なタイミングで切換部を介して真空弁を確実に閉作動させることができる。
【0021】
さらに、前記切換部は、前記真空送水管に接続される第1変圧室、および、前記真空弁の駆動部に接続されるとともに大気連通部を有する第2変圧室を有するケーシングを有し、前記切換弁体は、前記ケーシング内に配設され、前記第1および第2変圧室を連通させるとともに前記大気連通部を閉塞した前記開位置、および、前記第1および第2変圧室の連通を遮断するとともに前記大気連通部を開放した前記閉位置にかけて移動可能であることが好ましい。このようにすれば、制御装置によって確実に真空弁を閉弁できる。
【0022】
そして、前記切換部に、前記貯水枡内の水位に応じて昇降するフロートに連結され、前記貯水枡内が前記吸水管の下端より高い予め設定した高水位になると、前記切換弁体を閉位置から開位置に移動させる開弁アクチュエータを配設することが好ましい。このようにすれば、1個の制御装置で真空弁を開閉作動させることができる。しかも、1個の切換弁体を開作動部および閉作動部によって開閉作動させる。よって、制御装置の構成を簡素化でき、小型化およびコストダウンを図ることができる。また、設備構築時の作業性も向上することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の真空弁の制御装置では、切換部の切換弁体に閉弁アクチュエータの閉作動部が当接する作動距離を調節可能な調節部材を配設しているため、吸水管の下端から空気と一緒に液体を吸引する分離吸引時間を調整できる。よって、真空弁ユニット内の実際のスカム量に応じて分離吸引時間を調整することにより、確実に貯水枡内のスカムを排出することができる。
【0024】
また、第1および第2可撓性部材によって真空送水管側に接続される第1受圧室を区画することにより、内部に配設した付勢スプリングの付勢力を真空送水管側の吸引力に応じて自動調整することができる。よって、真空度が異なる全ての真空弁ユニットに共通して使用することができるため、設備構築時の作業性を大幅に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の真空弁の制御装置を用いた真空式下水道システムを示す概略図である。
【図2】真空式下水道システムの真空弁装置の概念図である。
【図3】真空弁装置の構成を示す断面図である。
【図4】真空弁の構成を示す断面図である。
【図5】真空弁の弁箱を示し、(A)は側面図、(B)は(A)の中央横断面図、(C)は弁箱本体の要部端面図、(D)は(A)のV−V線断面図である。
【図6】(A),(B)はコントローラの構成を示す断面図である。
【図7】コントローラの構成を示す分解斜視図である。
【図8】切換弁体の構成を示す分解斜視図である。
【図9】(A),(B)は切換弁体の高さを調節した状態を示す斜視図である。
【図10A】真空弁装置の非作動状態を示す概略図である。
【図10B】切換用弁体が第1アクチュエータにより開作動した状態を示す概略図である。
【図10C】図10Bにより真空弁の弁体が開作動した状態を示す概略図である。
【図10D】排水により空気が混入して真空度が低下した状態を示す概略図である。
【図10E】切換用弁体が第2アクチュエータにより閉作動した状態を示す概略図である。
【図10F】図10Eにより真空弁の弁体が閉作動した状態を示す概略図である。
【図11A】図10より真空送水管の真空度が低い場合の真空弁装置の非作動状態を示す概略図である。
【図11B】切換用弁体が第1アクチュエータにより開作動した状態を示す概略図である。
【図11C】図11Bにより真空弁の弁体が開作動した状態を示す概略図である。
【図11D】排水により空気が混入して真空度が低下した状態を示す概略図である。
【図11E】切換用弁体が第2アクチュエータにより閉作動した状態を示す概略図である。
【図11F】図11Eにより真空弁の弁体が閉作動した状態を示す概略図である。
【図12】真空度が異なる真空送水管に接続した場合の排水時の第1検圧室と第2検圧室の差圧の変移を示すグラフである。
【図13】(A),(B)は切換弁体の高さを調節した状態での作動距離を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0027】
図1は、本発明の真空弁22の制御装置51を適用した真空送水システムの一例である真空式下水道システムの真空弁ユニット1を示す。本発明の制御装置(以下「コントローラ」と称する。)51は、真空弁22を閉弁させる閉弁アクチュエータ97の閉作動距離を調節可能として、空気と一緒に液体を吸引する分離吸引時間を調整可能としたものである。また、接続した真空送水管6の吸引力(真空度)に応じて、閉弁アクチュエータ97の付勢スプリング128の付勢力を自動調整可能としたものである。
【0028】
まず、真空式下水道システムについて説明する。このシステムは、宅内下水設備と真空ステーションとの間に、真空弁ユニット1が配設されている。この真空弁ユニット1は、汚水を一時的に貯留する貯水枡2を備え、この貯水枡2内に真空弁22が配設されている。そして、真空式下水道システムは、この真空弁22を開弁させることにより、貯水枡2内の汚水が真空ステーションによる真空吸引作用で下流側の集水タンクに排水される。
【0029】
貯水枡2は有底筒状をなし、その上端開口が蓋体3により閉塞されている。貯水枡2の底には、汚水を貯留するための汚水溜4が設けられている。また、貯水枡2には、汚水溜4の上方に、上流側が宅内下水設備に連通した大気圧状態の自然流下管5が接続されている。さらに、貯水枡2には、自然流下管5より上方に位置するように、下流側が真空ステーションの集水タンクに接続された負圧(-25〜-70kPa)状態の真空送水管6が接続されている。そして、貯水枡2には、真空送水管6より更に上方に位置するように、大気開放した空気取入管7が接続されている。
【0030】
貯水枡2内には、仕切弁8、継手管9、吸水管10および真空弁装置20が収容されている。具体的には、真空送水管6には、仕切弁8が介設されるとともに、継手管9および真空弁装置20の真空弁22を介して吸水管10が接続されている。吸水管10は、一端の開口が汚水溜4の底から所定間隔(50〜100mm)をもって上方に位置するように配管されている。
【0031】
真空弁装置20は、真空弁22と、この真空弁22を開閉させる本発明のコントローラ51とで構成されている。図2に示すように、真空弁22は、排水時に真空送水管6の真空度Pより低い真空度P1となる第1検圧室31と、この第1検圧室31の真空度P1より更に低い真空度P2となる第2検圧室33とを備えている。コントローラ51は、三方弁構造の切換部52を備えている。この切換部52は、フロート93の昇降に連動する開弁専用メカニカル型の開弁アクチュエータ92により開作動される。また、切換部52は、真空弁22の第1および第2検圧室31,33内の差圧ΔPにより動作する閉弁専用ニューマチック型の閉弁アクチュエータ97により閉作動される。これら真空弁22とコントローラ51とは、図3に示すように、4本の空気チューブ21A〜21Dによって接続される。
【0032】
真空弁22は、図4に示すように、仕切弁8を介して真空送水管6が接続された継手管9と吸水管10との間に介設される弁箱23と、この弁箱23内に配設された止水用弁体35と、この止水用弁体35を開閉駆動させる駆動部である駆動アクチュエータ37とを備えている。
【0033】
弁箱23は、図5(A),(B)に示すように、それぞれ直管状をなす吸水部24と吐出部25とを備えている。吸水部24には、ベント管11を介して吸水管10が接続される。吐出部25には、軸芯が一致するように、継手管9および仕切弁8を介して真空送水管6が接続される。これら吸水部24と吐出部25の内径(呼び口径)は同一である。また、これら吸水部24と吐出部25は、互いの軸芯A1,A2が一致するように設けられている。
【0034】
弁箱23は、吸水部24と吐出部25の間に、止水用弁体35を移動可能に配設する円錐筒状の弁箱本体26が一体的に設けられている。この弁箱本体26は、その軸芯A3が、吸水部24の軸芯A1に対して鋭角に位置し、吐出部25の軸芯A2に対して鈍角に位置するように設けられている。弁箱本体26の内周部には、吸水部24と吐出部25の間に位置するように、止水用弁体35が着座する弁座27が突設されている。この弁座27の内部には、円形状をなす弁口28が形成されている。この弁口28は、中心が弁箱本体26の軸芯A3と一致するとともに、弁箱本体26の軸芯A3に対して直交方向に広がるように設けられている。また、弁口28の内径は、吸水部24および吐出部25と同一の内径である。
【0035】
本実施形態の弁箱本体26には、吸水部24が連続する部分に、吸水部24の側へ膨出する膨出部29が設けられている。この膨出部29は、図5(B),(C)に示すように、弁箱本体26の軸芯A3に沿って見て、吸水部24の側に位置する所定領域の外壁部を膨出させて形成される。膨出部29は、軸芯A3に対する外壁部の傾斜角度(例えば5度)に対して、平行に近い小さな傾斜角度(例えば0.5〜3度)とすることにより形成されている。また、弁箱本体26の弁座27には、吸水部24の側から吐出部25の側に向けて窪む曲面状凹部30が設けられている。この曲面状凹部30は、着座する止水用弁体35の着座代を十分に確保できる範囲で、吐出部25の側に延びるように設けられている。膨出部29を設けることにより、図5(D)に示すように、弁箱本体26の吸水部24が交わる領域の直径を広げて、吸水部24の出口の開口面積を大きくすることができる。しかも、曲面状凹部30を設けることにより、出口に対して異物が干渉する位置を、横幅が広い弁座27の側へ調整することができる。これにより、吸水部24と同一直径の球状異物を確実に通過させ、弁箱本体26内に流入できるようにしている。
【0036】
また、本実施形態の弁箱23には、弁座27の下流側に吐出部25の内部空間と連通した第1検圧室31が形成され、弁座27の上流側に弁箱本体26の内部空間からなる第2検圧室33が形成されている。第1検圧室31は、コントローラ51の閉弁アクチュエータ97に接続されるもので、吐出部25から突出する円筒部32を設けることにより形成される。第2検圧室33は、第1検圧室31と同様にコントローラ51の閉弁アクチュエータ97に接続されるもので、弁箱本体26の上部に位置するように筒状に突出する接続部34が設けられている。このように構成した弁箱23は、排水時には、第1検圧室31内の真空度(負圧)P1が、真空送水管6内の真空度Pより低くなる。また、第2検圧室33内の真空度P2は、第1検圧室31内の真空度P1より低くなる。
【0037】
図4に示すように、止水用弁体35は、駆動アクチュエータ37により弁箱本体26の軸芯A3に沿って進退移動可能に配設されている。止水用弁体35は、弁座27に圧接されるシール部材36を備えている。この止水用弁体35により、真空弁22の開閉が切り換えられる。即ち、駆動アクチュエータ37により止水用弁体35が進出されると、止水用弁体35が弁座27に着座して弁口28を閉塞し、真空弁22は閉状態となる。そして、真空弁22の閉弁により、弁口28を通した吸水部24と吐出部25との連通が遮断される。一方、駆動アクチュエータ37により止水用弁体35が後退されると、止水用弁体35が弁座27から離反されて弁口28を開放し、真空弁22が開状態となる。そして、真空弁22の開弁により、吸水部24と吐出部25とが弁口28を通して連通される。
【0038】
駆動アクチュエータ37は、止水用弁体35を開弁位置と閉弁位置に切り換えるもので、内部を基準圧室46と圧力室47に区画した止水用シリンダ38を備えている。この止水用シリンダ38は、弁箱本体26の上端開口に密閉状態で取り付けられる下側ケース39と、この下側ケース39の上端開口に密閉状態で取り付けられる上側ケース42とを有する。下側ケース39には、弁箱本体26の軸芯A3に位置するように挿通部材40が配設されている。また、下側ケース39の外周部には、大気と連通させるための通気孔41が設けられている。上側ケース42には、コントローラ51の第2変圧室56に接続される第2変圧室接続部43が設けられている。また、上側ケース42には、付勢スプリング49を位置決めする位置決め筒部44が設けられている。
【0039】
下側ケース39と上側ケース42との間には、可撓性材料からなるダイヤフラム45が配設されている。このダイヤフラム45により止水用シリンダ38の内部が、弁箱本体26の側に位置する基準圧室46と、離間した上側に位置する圧力室47とに区画されている。このダイヤフラム45には、圧力室47内に位置するように受皿形状をなすピストンカップ48が配設されている。このピストンカップ48と上側ケース42との間には、ピストンカップ48を下側ケース39へ向けて付勢する付勢スプリング49が配設されている。また、ピストンカップ48には、下側ケース39の挿通部材40を挿通されて、弁箱本体26内を軸芯A3に沿って延びる開閉作動部材50が配設されている。この開閉作動部材50の先端には、止水用弁体35が連結されている。なお、開閉作動部材50は、ピストンカップ48に対して一体に設けてもよく、止水用弁体35と一体に設けてもよい。
【0040】
この駆動アクチュエータ37は、圧力室47内が設定真空度になると、基準圧室46の大気圧との差圧による上向きの押圧力が付勢スプリング49の付勢力を上回り、ピストンカップ48が上向きに移動(後退)する。これにより、開閉作動部材50を介して止水用弁体35が弁座27から離反し、弁口28を開放した開弁位置に移動する。一方、圧力室47内が設定真空度を下回ると、基準圧室46の大気圧との差圧による押圧力が付勢スプリング49の付勢力を下回り、ピストンカップ48が付勢スプリング49の付勢力で下向きに移動(進出)する。これにより、開閉作動部材50を介して止水用弁体35が弁座27に着座し、弁口28を閉塞して閉弁位置に移動する。
【0041】
コントローラ51は、図3に示すように、真空弁22の開閉制御を行うもので、切換部52と、開弁アクチュエータ92と、閉弁アクチュエータ97とを備えている。そして、切換部52は、空気チューブ21Aによって真空送水管6に接続されるとともに、空気チューブ21Bによって真空弁22の圧力室47に接続されている。また、閉弁アクチュエータ97は、空気チューブ21Cによって真空弁22の第1検圧室31に接続され、空気チューブ21Dによって真空弁22の第2検圧室33に接続されている。
【0042】
切換部52は、ケーシング53の内部に切換弁体69を直動可能に配設したものである。そして、切換弁体69が開位置に移動されることにより、真空送水管6と真空弁22の圧力室47とを連通させて、真空弁22を開弁させる。また、切換弁体69が閉位置に移動されることにより、真空送水管6と真空弁22の圧力室47との連通を遮断させて、真空弁22を付勢スプリング49の付勢力で閉弁させるものである。
【0043】
ケーシング53は、図6(A),(B)および図7に示すように、下端に位置する第1変圧室54と、この第1変圧室54の軸方向に沿った上部に位置する第2変圧室56とを備えている。第1変圧室54には、空気チューブ21Aによって第1検圧室31の下流側の継手管9(真空送水管6)に接続される第1接続部55が設けられている。第2変圧室56には、空気チューブ21Bによって真空弁22の圧力室47に接続される第2接続部57が設けられている。これら変圧室54,56の間には、切換弁体69が圧接される逆円錐筒形状の被圧接部58が設けられている。
【0044】
第2変圧室56の上部には、シール部材80を配設するための圧接段部59が形成されている。圧接段部59の上方には、規制部材60を挿通させる規制部材挿通溝61が設けられている。この規制部材挿通溝61は、ケーシング53の内部空間と連通するように設けられ、内部空間に突出した規制部材60がシール部材80の上側を規制する。規制部材挿通溝61の上部には、トグルバネ62を配設するための保持部材配設部63が、外向きに膨出するように設けられている。トグルバネ62は、切換弁体69を開位置および閉位置に所定の保持力で保持するための保持部材である。保持部材配設部63の上部には、切換弁体69を軸方向に沿って移動させるためのガイド溝64が設けられている。
【0045】
また、ケーシング53には、第1および第2接続部55,57の反対側に、一対の固定ブラケット部65,65が設けられている。この固定ブラケット部65には、貯水枡2内に固定するためのホルダー66が配設されている。また、ケーシング53の固定ブラケット部65,65の間には、規制部材挿通溝61の形成位置から軸方向に沿って上向きに延びる開作動部挿通穴67が設けられている。そして、固定ブラケット部65,65およびホルダー66の間に、開弁アクチュエータ92の開作動部材95が配設される。また、ケーシング53の上部には、略受皿状をなす閉弁アクチュエータ配設部68が設けられ、この閉弁アクチュエータ配設部68上に閉弁アクチュエータ97が配設される。
【0046】
切換弁体69は、図7および図8に示すように、ケーシング53に直動可能に配設される弁ロッド70を備えている。この弁ロッド70の下端には、縮径したパッキン取付部71が設けられ、このパッキン取付部71に被圧接部58に圧接される弁パッキン72が配設されている。パッキン取付部71の上方には、拡径したガイド部材取付部73が設けられ、このガイド部材取付部73に弁パッキン72の上部を位置決めするガイド部材74が配設されている。このガイド部材取付部73の上方には、ガイド部材74の上部を位置決めするストッパ部75が設けられている。
【0047】
ストッパ部75の上方には、円錐形状をなす圧接部76が設けられ、この圧接部76の上方に縮径した挿通部77が設けられている。この挿通部77の上方には、保持部材配設部63内に位置し、トグルバネ62の内側端部を位置決めする保持部材位置決め部78が設けられている。この保持部材位置決め部78は、略六角形状に膨出した形状をなし、その側方頂部に位置決め突部79が設けられている。
【0048】
弁ロッド70には、挿通部77の周囲に位置するように、圧接段部59と規制部材60との間に位置決めされるシール部材80が配設されている。このシール部材80は、挿通部77の外径より大きく、圧接部76の外径より僅かに小さい内径の大気連通部81を備えている。組付状態では、大気連通部81内に挿通部77が挿通され、これらの隙間を通して第2変圧室56が大気開放される。弁ロッド70が開弁アクチュエータ92によって開位置に移動されると、弁パッキン72が被圧接部58から離反して第1および第2変圧室54,56を連通させるとともに、圧接部76が大気連通部81内に圧接して第2変圧室56と大気との連通を遮断する。また、弁ロッド70が閉弁アクチュエータ97によって閉位置に移動されると、弁パッキン72が被圧接部58に圧接して第1および第2変圧室54,56の連通を遮断するとともに、圧接部76が大気連通部81から離反して第2変圧室56と大気とを連通させる。
【0049】
弁ロッド70の保持部材位置決め部78の上方には、円環状をなす調節部材配設部82が設けられている。この調節部材配設部82は、所定間隔をもって位置するように設けた一対の側壁部83,83と、これらの上方に設けた円環状の第1受動部84とを有する。この第1受動部84は、開作動部材95が当接することにより弁ロッド70を上向きに移動させる。第1受動部84の外周部には、ケーシング53のガイド溝64に係合される一対のガイド片85,85が設けられている。また、第1受動部84の上面には、ガイド片85,85間にかけて階段状をなすように調節用段部86a〜86eが設けられている。これら調節用段部86a〜86eには、半球状をなす窪みが設けられている。本実施形態では調節用段部86a〜86eを5段としているが、その数は希望に応じて変更が可能である。
【0050】
調節部材配設部82には、閉作動部材125が当接する作動距離を調節するための調節部材87が配設されている。この調節部材87は、閉作動部材125が当接ことにより弁ロッド70を下向きに移動させる円板状の第2受動部88を備えている。この第2受動部88の中心には、第1受動部84の中心孔に挿通される挿通軸89が設けられている。また、第2受動部88の下面には、所定の調節用段部86a〜86e上に配置される一対の配置部90が設けられている。この配置部90には、半球状をなす突部が設けられている。また、第2受動部88には、配置部90上に位置するように、調節操作用の摘み部91が上向きに突設されている。
【0051】
この調節部材87は、挿通軸89を第1受動部84の中心孔に挿通させることにより、閉作動部材125の作動方向である切換弁体69の軸方向に沿って移動可能である。また、この調節部材87を配設した切換弁体69は、図9(A),(B)に示すように、配置部90を所定の調節用段部86a〜86eに配置することにより、切換弁体69の全高を調節することができる。これにより、この切換弁体69の上方に位置する閉作動部材125の下端が当接する作動距離(隙間)を調節することができる。
【0052】
開弁アクチュエータ92は、図1に示すように、貯水枡2内に予め設定した吸水管10の下端より高い高水位HWLまで汚水が貯められると、切換弁体69をトグルバネ62の保持力に抗して閉位置から開位置に移動させるものである。この開弁アクチュエータ92は、貯水枡2内の水位に応じて昇降するフロート93と、このフロート93の昇降に連動して切換弁体69の直動方向に沿って移動する開作動部材95とを備えている。
【0053】
フロート93の浮力は、トグルバネ62の保持力より大きい。このフロート93には、開作動部材95に連結するための連結ロッド94が設けられている。この連結ロッド94は、貯水枡2内に高水位HWLまで汚水が溜まった状態で、開作動部材95を介して切換弁体69を開作動可能な全長に設定されている。また、連結ロッド94は、貯水枡2内の汚水が吸水管10より低い低水位LWLまで低下した状態では、フロート93が汚水の水面より上方に位置し、着水しない全長に設定されている。
【0054】
開作動部材95は、図6(A),(B)に示すように、連結ロッド94の上端に連結され、切換弁体69の直動方向であるケーシング53の軸方向に沿って延びるように装着されている。この開作動部材95には、ケーシング53の開作動部挿通穴67を通して切換部52の内部に突出する開作動部96が設けられている。この開作動部96は、第1受動部84の下面に当接して更に上向きに移動されることにより、切換弁体69を閉位置から開位置に移動させる。
【0055】
閉弁アクチュエータ97は、貯水枡2内の汚水が、吸水管10の下端から空気と一緒に吸引される低水位LWLまで排水されると、切換弁体69をトグルバネ62の保持力に抗して開位置から閉位置に移動させるものである。この閉弁アクチュエータ97は、第1および第2ダイヤフラム102,105によって、第1受圧室103、第2受圧室104、流体収容室106、補助流体収容室109および大気圧室110に区画した切換用シリンダ98を備えている。
【0056】
具体的には、切換用シリンダ98は、切換部52のケーシング53に取り付けられる下側ケース99と、この下ケースに密閉状態で取り付けられる筒状の中間ケース100と、この中間ケース100上に密閉状態で取り付けられる上側ケース101とを有する。そして、下側ケース99と中間ケース100との間には第1可撓性部材である第1ダイヤフラム102が配設され、この第1ダイヤフラム102によって第1受圧室103と第2受圧室104に区画している。また、中間ケース100と上側ケース101との間には、第2可撓性部材である第2ダイヤフラム105が配設され、この第2ダイヤフラム105によって第1受圧室103と流体収容室106に区画している。さらに、第2ダイヤフラム105は、中間ケース100に設けた連通室107内に位置する第3可撓性部材である第3ダイヤフラム部108を備え、この第3ダイヤフラム部108によって連通室107内を補助流体収容室109と大気圧室110に区画している。なお、本実施形態では、第2ダイヤフラム105に第3ダイヤフラム部108を一体に設けたが、これらは別体に設けてもよい。
【0057】
下側ケース99は受皿形状をなし、切換弁体69の軸芯に位置するように挿通部材111が配設されている。また、下側ケース99には、空気チューブ21Dによって真空弁22の第2検圧室33に接続される第2検圧室接続部112が設けられている。
【0058】
中間ケース100は、筒状をなす内壁113を備えている。この内壁113と外壁との間に、有底筒状の環状空間からなる連通室107が形成されている。また、中間ケース100には、内側の第1受圧室103に連通し、空気チューブ21Cによって第1検圧室31に接続される第1検圧室接続部114が設けられている。さらに、中間ケース100の外壁には、連通室107内に連通する空気孔115が設けられている。そして、中間ケース100の内壁113の上端には、後述する第2ピストン126の上向きに移動を規制する規制筒部116が設けられている。
【0059】
上側ケース101は、第1受圧室103上に位置する膨出部117を備えている。この膨出部117の上端には、周知の密閉部材によって密閉される流体注入口118が設けられている。また、上側ケース101には、流体収容室106と連通室107の一部である補助流体収容室109とを連通させるための流体通路119が設けられている。この流体通路119は、上側ケース101の膨出部117にかけた内面に連通溝120を形成し、この連通溝120内に嵌合片121を嵌合させることにより、これらの隙間によって形成される。この流体通路119は、流体が通過可能な直径がφ0.5mm以下、好ましくはφ0.3mm〜φ0.4mmの小孔からなり、全体が流体の流量を制限する絞り部を構成する。但し、流体通路119を流体抵抗が少ない大きな断面積で形成し、その一部の壁面を突出させることにより絞り部を設けた構成としてもよい。
【0060】
第1ダイヤフラム102は、中間ケース100の内壁113内の空間からなる第1受圧室103と、下側ケース99の内部空間からなる第2受圧室104とを区画する。また、第2ダイヤフラム105は、第1受圧室103の第2受圧室104と反対側の端部を密閉するとともに、上側ケース101の膨出部117内の空間からなる流体収容室106とを区画する。さらに、第3ダイヤフラム部108は、連通室107内を上側の補助流体収容室109と下側の大気圧室110とに区画する。なお、補助流体収容室109の上側は、上側ケース101によって密閉される。
【0061】
そして、第1受圧室103は、第1検圧室接続部114を介して真空弁22の第1検圧室31に接続されている。そのため、この第1受圧室103は、真空弁22の弁座27より下流側(真空送水管6側)に位置する第1検圧室31の真空度P1と同一真空度になる。また、第2受圧室104は、第2検圧室接続部112を介して真空弁22の第2検圧室33に接続されている。そのため、この第2受圧室104は、真空弁22の弁座27の上流側に位置し、第1検圧室31の真空度P1より低い第2検圧室33の真空度P2と同一真空度になる。さらに、流体収容室106は、流体通路119を介して補助流体収容室109と連通し、第3ダイヤフラム部108によって大気圧室110と区画された定圧(大気圧)室である。そして、流体収容室106および補助流体収容室109には、閉作動時にダンパー機能をなす非圧縮性流体である水が流体注入口118から充填されている。
【0062】
第1ダイヤフラム102には、第1受圧室103内に位置するように、中間ケース100の内壁113より大径の皿形状をなす第1ピストン122が配設されている。この第1ピストン122は、挟込部材123によって第1ダイヤフラム102を挟み込むことにより配設されている。第1ピストン122は、第1ダイヤフラム102が撓むことにより、第1受圧室103の側に位置する非作動位置と、第2受圧室104の側に位置する作動位置にかけて移動可能である。非作動位置側への移動は、中間ケース100の内壁113に当接することにより停止される。作動位置側への移動は、下側ケース99に当接することにより停止される。また、第1ピストン122には、切換用シリンダ98の軸芯に沿って延びる棒状のガイド部124が設けられている。
【0063】
ガイド部124には、下側ケース99の挿通部材111を挿通し、切換部52内の切換弁体69上に延びる閉作動部材125が貫通するように配設されている。この閉作動部材125は、第1ピストン122が非作動位置に位置する状態では切換弁体69の切換位置を維持する。また、第1ピストン122が作動位置に作動されると、切換弁体69の第2受動部88に当接して下向きに押圧することにより、切換弁体69を開位置から閉位置に切り換えることができる。そして、この閉作動部材125の下端と第2受動部88との間の作動距離は、切換弁体69に対する調節部材87の配置を調節することにより、調整される。
【0064】
第2ダイヤフラム105には、第1受圧室103内に位置するように第2ピストン126が配設されている。この第2ピストン126は、規制筒部116の内径より小さい外径で、かつ、ガイド部124より大きい内径のガイド筒部127を有する受皿状のものである。このガイド筒部127の上端に第2ダイヤフラム105が連結されている。この第2ピストン126は、第2ダイヤフラム105が撓むことにより、第1ピストン122のガイド部124に沿って、第1ピストン122に近づいた近接位置、および、第1ピストン122から離れた離反位置にかけて移動可能である。
【0065】
これら第1および第2ピストン122,126の間には、第1ピストン122を下側ケース99へ向けた作動位置へ付勢する付勢スプリング128が配設されている。この付勢スプリング128による第1ピストン122の付勢力は、真空送水管6の側に接続した第1受圧室103内の真空度によって自動調整される。
【0066】
具体的には、第1受圧室103内に第1検圧室31の真空度P1に相当する吸引力が加わると、第1ピストン122にはその吸引力に相当する上向きの押圧力が作用する。一方、第2受圧室104内に第2検圧室33の真空度P2に相当する吸引力が加わると、第1ピストン122にはその吸引力に相当する下向きの押圧力が作用する(P1>P2)。これにより、これらの間に位置する第1ピストン122には、第1および第2受圧室103,104の差圧ΔP1に相当する上向きの押圧力(F1)が生じる。一方、第1受圧室103と区画された流体収容室106は、水が充填されているが、大気開放された大気圧室110より大気圧P0の状態である。また、第1受圧室103内に第1検圧室31の真空度P1に相当する吸引力が加わると、第2ピストン126にはその吸引力に相当する下向きの押圧力が作用する(P1>P0)。これにより、これらの間に位置する第2ピストン126には、第1受圧室103および流体収容室106の差圧ΔP2に相当する下向きの押圧力(F2)が生じる。
【0067】
そのため、付勢スプリング128は、第1ピストン122の上向きの押圧力(F1)と第2ピストン126の下向きの押圧力(F2)により収縮した状態をなす。この際、第1ピストン122は内壁113と当接して上向きの移動が規制されるため、第2ピストン126の上下動により、付勢スプリング128が収縮される。また、付勢スプリング128の収縮量は、差圧ΔP2に相当する押圧力(F2)によって調整される。その結果、収縮量に対応する付勢スプリング128の付勢力(F)は、第1検圧室31を介して接続した真空送水管6の真空度Pによって異なる。
【0068】
付勢スプリング128は、付勢力(F)が差圧ΔP1によって生じる第1ピストン122の押圧力(F1)を上回る(F1<F)と、伸張した状態をなす。そして、付勢スプリング128の付勢力(F)は、前述のように真空送水管6の真空度Pによって異なり、真空度Pが高い場合に強くなり、真空度Pが低い場合に弱くなる。そのため、差圧ΔP1に対応する閉弁アクチュエータ97の作動タイミングは、接続した真空送水管6の真空度P1が高い場合に早くなり、真空送水管6の真空度P1が低い場合に遅くなる。
【0069】
また、流体収容室106および補助流体収容室109は、流体通路119を介して連通している。そのため、内部の水は、第2ピストン126の移動により流体収容室106の容積が増えると、補助流体収容室109内の水が流体収容室106内に流入する。逆に、流体収容室106の容積が減ると、流体収容室106内の水が補助流体収容室109内に流入する。即ち、各流体収容室106,109内の水は、第1受圧室103の容積変動による流体収容室106の容積変動に応じて、流体通路119を通して流体収容室106,109間を移動する。そして、この水の移動は、最大容積から最小容積(逆も同じ)まで変更するのに2〜3分の時間を要するように、流体通路119(絞り部)の断面積を設定している。
【0070】
次に、本発明のコントローラ51を用いた真空式下水道システムの動作を、図10A〜図10Fおよび図11A〜図11Fを参照して説明する。なお、図10の真空弁ユニット1と図11の真空弁ユニット1は、真空送水管6の真空度Px,Pxiが異なり、図10の真空弁ユニット1の真空度Pxの方が高い(Px>Pxi)場合を示している。また、これらの図には、吸水管10の下端から真空送水管6に至る排水経路において、真空度の高低状態を薄墨の濃淡で表している。
【0071】
図10Aおよび図11Aに示すように、コントローラ51の切換弁体69が閉位置に移動され、貯水枡2の内部の汚水が設定した高水位HWLまで溜められていない状態では、真空弁22は、閉弁状態を維持している。
【0072】
この状態では、真空弁22の第1検圧室31は真空送水管6の吸引力である高真空度Px,Pxiの状態をなし、真空弁22の第2検圧室33を含む吸水部24は大気圧状態をなす。そのため、コントローラ51の閉弁アクチュエータ97は、第1受圧室103が高真空度P1x,P1xiの状態をなし、第2受圧室104が大気圧状態をなす。その結果、第1および第2受圧室103,104の差圧ΔP1x,P1xiによる押圧力F1x,F1xiは、付勢スプリング128の付勢力Fx,Fxiより強く、閉作動部材125が第1ピストン122を介して後退した非作動状態をなす。また、コントローラ51の切換部52は、切換弁体69が閉位置を維持し、第1変圧室54が高真空度P1x,P1xiの状態をなし、第2変圧室56が大気開放状態をなす。そのため、第2変圧室56に連通した真空弁22の圧力室47も大気開放状態となる。その結果、真空弁22は、基準圧室46と圧力室47の差圧による押圧力より、付勢スプリング49の付勢力が上回り、力の釣り合いの関係によって閉弁状態を維持する。
【0073】
一方、図10Aに示す真空弁ユニット1の真空送水管6の真空度Pxは、図11Aに示す真空弁ユニット1の真空送水管6の真空度Pxiより高い。よって、各図に示すように、第1および第2ピストン122,126の距離は、図10Aに示す真空弁ユニット1の方が、図11Aに示す真空弁ユニット1より近接した状態をなす。その結果、付勢スプリング128によって第1ピストン122を閉作動させる付勢力Fx,Fxiは、図10Aに示す真空弁ユニット1の方が、図11Aに示す真空弁ユニット1より強くなっている。
【0074】
貯水枡2内に汚水が溜まり、フロート93が着水して高水位HWLまで上昇すると、図10Bおよび図11Bに示すように、開作動部材95が上向きに移動される。その結果、切換弁体69がトグルバネ62の保持力に抗して開位置まで移動され、この開位置をトグルバネ62の保持力で再び保持する。これにより、コントローラ51の第1変圧室54と第2変圧室56とが連通し、切換弁体69の圧接部76がシール部材80の大気連通部81を閉塞する。
【0075】
この状態では、第2変圧室56に連通した真空弁22の圧力室47が、真空送水管6の吸引力によって吸引され、高真空度Px,Pxiとなる。また、コントローラ51の閉弁アクチュエータ97は、第1受圧室103が高真空度P1x,P1xiの状態を維持し、第2受圧室104が大気圧状態を維持するため、非作動状態を維持する。
【0076】
その結果、図10Cおよび図11Cに示すように、真空弁22の駆動アクチュエータ37は、力の釣り合いによって開作動し、止水用弁体35を弁座27から離反させることにより、弁箱23の吸水部24と吐出部25とを連通させた開弁状態となる。よって、貯水枡2内の汚水は、真空送水管6の吸引作用によって吸水管10、弁箱23、継手管9、仕切弁8および真空送水管6を経て真空ステーションへ排水される。
【0077】
この時の排水経路の真空度は、吸水管10の下端から徐々に上昇する。そして、真空弁22の弁口28に近づくと、通水可能な開口面積が絞られるため高くなる。また、真空弁22の弁口28を通過した側に位置する第1検圧室31の真空度P1x,P1xiは、第2検圧室33の真空度P2x,P2xiより高いが、直線状をなす吸引方向に対して交差する方向に位置するため、真空送水管6の真空度Px,Pxiより低くなる(P2x,P2xi<P1x,P1xi<Px,Pxi)。
【0078】
この排水状態では、真空弁22の駆動アクチュエータ37は、圧力室47内が真空送水管6内の真空度Px,Pxiと同一の高真空度であり、基準圧室46が大気圧状態である。そして、この圧力室47内と基準圧室46の差圧による力は、付勢スプリング49の付勢力より大きい。一方、コントローラ51の閉弁アクチュエータ97は、第1受圧室103が、真空送水管6内の真空度Px,Pxiより低い第1検圧室31内の真空度と同一の真空度P1x,P1xiである。また、第2受圧室104が、第1検圧室31内の真空度P1x,P1xiより更に低い第2検圧室33内の真空度P2x,P2xiと同一の真空度である。そして、この状態でのこれらの差圧ΔP1x,P1xiによる押圧力F1x,F1xiは、付勢スプリング128の付勢力Fx,Fxiより大きい。よって、閉弁アクチュエータ97は、非作動状態を維持する。
【0079】
排水により貯水枡2内の汚水が吸水管10の下端近傍まで低下すると、吸水管10からの吸水に空気が混入した分離吸引状態となる。この状態では、図10Dおよび図11Dに示すように、排水経路の真空度が略一様(同比率)に低下する。即ち、真空弁22の圧力室47内の真空度は、第1および第2変圧室54,56を介して連通した真空送水管6の真空度Px’,Pxi’と同等に低下する。また、コントローラ51の閉弁アクチュエータ97は、第1受圧室103の真空度P1x’,P1xi’が第1検圧室31の真空度と同等に低下し、第2受圧室104の真空度P2x’,P2xi’が第2検圧室33の真空度と同等に低下する。
【0080】
ここで、閉弁アクチュエータ97の第1受圧室103の真空度P1x’,P1xi’が低くなると、第2ピストン122,126による押圧力F2が小さくなるため、付勢スプリング128が伸長するように作用する。その結果、第1受圧室103の容積が増え、流体収容室106の容積が減るように作用する。しかし、本実施形態では、流体収容室106および補助流体収容室109を連通させる流体通路119を断面積が小さい絞り部により構成しているため、その変更は徐々に行われる。
【0081】
そのため、第1受圧室103および流体収容室106の容積が殆ど変更されていない状態で、貯水枡2内の汚水が低水位LWLまで排水されて空気の混入量が増える。そして、第1および第2受圧室103,104の差圧ΔP1x’,P1xi’による押圧力F1x’,F1xi’が付勢スプリング128の付勢力Fx,Fxiより小さくなる。これにより、図10Eおよび図11Eに示すように、閉弁アクチュエータ97が閉作動し、切換弁体69が閉位置に移動される。その結果、切換部52の第1変圧室54と第2変圧室56との連通が遮断され、第2変圧室56が大気連通部81を通して大気開放した状態になる。よって、真空弁22の圧力室47内が大気圧状態となる。
【0082】
その結果、図10Fおよび図11Fに示すように、真空弁22は、付勢スプリング49の付勢力が圧力室47と基準圧室46の差圧による力より大きくなり、付勢スプリング49の付勢力で止水用弁体35が閉位置に移動され、閉弁状態となる。そうすると、真空弁22の吸水部24から吐出部25を経た排水が停止される。また、弁口28の遮断により、第1検圧室31の真空度が高真空度Px,Pxiとなり、第2検圧室33が大気圧状態となる。その結果、閉弁アクチュエータ97は、第1受圧室103が高真空度P1x,P1xiとなり、第2受圧室104が大気圧状態となる。よって、第1および第2受圧室103,104の差圧ΔP1x,P1xiによる押圧力F1x,F1xiが、付勢スプリング128の付勢力Fx,Fxiを上回る。よって、第1ピストン122を介して閉作動部材125が後退位置に移動し、図10Aおよび図11Aに示す状態になる。
【0083】
次に、真空度が異なる真空送水管6に接続した真空弁ユニット1の差圧ΔP1の変移について説明する。
【0084】
図12に示すように、真空弁22が閉弁している場合、真空度が−70kPaの真空送水管6に接続された真空弁装置(以下「第1真空弁装置」と称する。)20Aは、第1および第2受圧室103,104の差圧ΔP1が70kPaである。また、真空度が−50kPaの真空送水管6に接続された真空弁装置(以下「第2真空弁装置」と称する。)20Bは、第1および第2受圧室103,104の差圧ΔP1が50kPaである。さらに、真空度が−25kPaの真空送水管6に接続された真空弁装置(以下「第3真空弁装置」と称する。)20Cは、第1および第2受圧室103,104の差圧ΔP1が25kPaである。
【0085】
そして、真空弁22が開弁アクチュエータ92によって開弁されると、第1および第2受圧室103,104の差圧ΔP1は、例えば、第1真空弁装置20Aが約20kPaまで低下し、第2真空弁装置20Bが約15kPaまで低下し、第3真空弁装置20Cが約10kPaまで低下する。
【0086】
その後、汚水が低水位まで低下して分離吸引状態になると、空気の混入量が増えるに従って差圧ΔP1が徐々に低下する。そして、真空送水管6の真空度に応じて異なる付勢スプリング128の付勢力Fに応じた差圧ΔP1まで低下すると、閉弁アクチュエータ97によって切換部52を介して真空弁22が閉弁される。その結果、差圧ΔP1は、真空送水管6の真空度である70kPa、50kPaまたは25kPaに上昇する。閉弁アクチュエータ97が真空弁22を閉弁作動させる差圧ΔP1は、例えば、第1真空弁装置20Aが約5kPaであり、第2真空弁装置20Bが約3kPaであり、第3真空弁装置20Cが約1kPaである。
【0087】
このように、本発明のコントローラ51は、第1および第2ダイヤフラム102,105によって真空送水管6の側に接続される第1受圧室103を区画し、これらに第1および第2ピストン122,126が配設されている。そのため、この第1受圧室103は、真空送水管6の吸引力(真空度)が加わることにより、両側に位置する空間との差圧によって生じる第1および第2ピストン122,126の押圧力が加わる、その間に配設した付勢スプリング128が収縮する。そして、この付勢スプリング128の収縮は、真空度が高い場合に大きく、真空度が低い場合に小さくなるため、その収縮量に対応する付勢力が、真空送水管6の真空度が高い場合に強くなり、真空送水管6の真空度が低い場合に弱くなる。
【0088】
よって、閉弁アクチュエータ97が閉作動する第1および第2受圧室103,104の差圧ΔP1を、接続した真空送水管6の真空度が高い場合に高くし、真空送水管6の真空度が低い場合に低くすることができる。その結果、接続する真空送水管6の真空度に応じて確実に真空弁22を閉作動させることができる。このように、本発明では、真空弁22を閉作動させるための付勢スプリング128の付勢力を、真空送水管6の真空度に応じて自動調整できるため、全ての真空弁ユニット1に共通して使用することができる。よって、設備構築時の作業性を大幅に向上することができる。
【0089】
また、第1受圧室103に対する第2受圧室104の反対側には、非圧縮性流体である水を充填した流体収容室106を設けているため、第1ピストン122を非作動位置から作動位置に移動させる際に、付勢スプリング128の付勢力が第2ピストン126の側に逃げることを抑制できる。そのため、適切なタイミングで切換部52を介して真空弁22を確実に閉作動させることができる。しかも、流体収容室106は、絞り部を有する流体通路119を通して補助流体収容室109と連通されているため、真空送水管6内の真空度が急激に変化した際に、第2ピストン126をゆっくり移動させることができる。そのため、付勢スプリング128の付勢力が急激に変化することを防止できる。よって、吸水管10に空気が混入し始めた際の分離吸引時間の変動を小さくすることができる。その結果、水面に浮遊するスカムを確実に排出することができる。
【0090】
しかも、本発明では、切換部52の切換弁体69に閉弁アクチュエータ97の閉作動部材125が当接する作動距離を調節可能な調節部材87を配設している。そのため、図13(A),(B)に示すように、切換弁体69を開位置から閉位置に切り換える時間を調整できる。その結果、図13(A)に示すように、作動距離を長くすることにより分離吸引時間を長くし、図13(B)に示すように、作動距離を短くすることにより分離吸引時間を短くすることができる。よって、真空弁ユニット1内の実際のスカム量に応じて分離吸引時間を調整することにより、確実に貯水枡2内のスカムを排出することができる。そのため、貯水枡2内にスカムが残留することに伴う真空弁ユニット1の動作不良や排水不良を防止できる。また、スカムが少ない真空弁ユニットでは、分離吸引時間が無駄に長くなることはない。
【0091】
さらに、本実施形態では、第1受圧室103を真空弁22の第1検圧室31に接続し、第2受圧室104を真空弁22の第2検圧室33に接続しているため、第1および第2受圧室103,104の差圧ΔP1を小さくすることができる。よって、コントローラ51の設定誤差も小さくなるので、確実に目標吸引空気量まで真空吸引させることができる。そして、切換部52に貯水枡2内の水位に応じて開作動する開弁アクチュエータ92を配設しているため、1個のコントローラ51で真空弁22を開閉作動させることができる。しかも、1個の切換弁体69を開作動部材95および閉作動部材125によって開閉作動させるため、コントローラ51の構成を簡素化でき、小型化およびコストダウンを図ることができる。また、設備構築時の作業性も向上することができる。
【0092】
なお、本発明の真空弁の制御装置は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0093】
例えば、前記実施形態では、閉弁アクチュエータ97の作動距離を調整するための調整部材87を切換弁体69に配設したが、閉弁アクチュエータ97の閉作動部材125に配設してもよい。また、前記実施形態では、切換部52に開弁アクチュエータ92を配設したが、この開弁用の制御装置は別に設けてもよい。
【0094】
そして、前記実施形態では、真空弁22の制御装置を真空下水道システム等の真空送水システムに使用した例を挙げて説明したが、その使途は希望に応じて変更可能であり、いずれに適用した場合でも同様の作用および効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0095】
1…真空弁ユニット
20…真空弁装置
22…真空弁
23…弁箱
27…弁座
28…弁口
31…第1検圧室
33…第2検圧室
35…止水用弁体
37…駆動アクチュエータ
46…基準圧室
47…圧力室
48…ピストンカップ
49…付勢スプリング
50…開閉作動部材
51…コントローラ(制御装置)
52…切換部
53…ケーシング
54…第1変圧室
56…第2変圧室
69…切換弁体
72…弁パッキン
80…シール部材
81…大気連通部
82…調節部材配設部
84…第1受動部
86a〜86e…調節用段部
87…調節部材
88…第2受動部
92…開弁アクチュエータ
93…フロート
95…開作動部材
97…閉弁アクチュエータ
98…切換用シリンダ
102…第1ダイヤフラム(第1可撓性部材)
103…第1受圧室
104…第2受圧室
105…第2ダイヤフラム(第2可撓性部材)
106…流体収容室
107…連通室
108…第3ダイヤフラム部(第3可撓性部材)
109…補助流体収容室
110…大気圧室
119…流体通路
122…第1ピストン
125…閉作動部材
126…第2ピストン
128…付勢スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端が貯水枡内で開口した吸水管と真空吸引される真空送水管との間に介設され、これらを連通させた開弁位置と連通を遮断した閉弁位置との間を移動可能な弁体と、この弁体を開弁位置または閉弁位置に切り換える駆動部と、を有する真空弁の制御装置において、
前記弁体が開弁されることにより前記貯水枡内が前記吸水管の下端から空気と一緒に液体を吸引する低水位まで排水されると、前記真空弁を閉弁させるもので、
前記駆動部を介して前記弁体を開弁位置に移動させる開位置、および、前記駆動部を介して前記弁体を閉弁位置に移動させる閉位置にかけて移動可能な切換弁体を有する切換部と、
前記切換部の切換弁体の切換位置を維持する非作動位置、および、前記切換部の切換弁体を開位置から閉位置に移動させる作動位置にかけて移動可能な閉作動部を有する閉弁アクチュエータとを備え、
前記切換弁体または前記閉作動部に、前記閉弁アクチュエータの閉作動時に前記閉作動部が前記切換弁体に当接する作動距離を調節可能な調節部材を配設したことを特徴とする真空弁の制御装置。
【請求項2】
前記切換弁体の上端に調節部材配設部を設けるとともに、この調節部材配設部に階段状をなすように調節用段部を設け、所定の調節用段部上に前記調節部材を配置することにより、前記切換弁体の全高を調節するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の真空弁の制御装置。
【請求項3】
前記閉弁アクチュエータは、
前記真空弁の前記真空送水管側に接続される第1受圧室とこの第1受圧室より真空度が低い第2受圧室とに可撓性部材によって区画した切換用シリンダと、
前記可撓性部材に設けられ、前記第1受圧室側に位置する非作動位置、および、前記第2受圧室側に位置する作動位置にかけて移動可能なピストンと、
前記第1受圧室内に配設され、前記ピストンを作動位置に向けて付勢する付勢スプリングと、
を備え、前記ピストンに前記閉作動部を設けたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空弁の制御装置。
【請求項4】
前記切換用シリンダにおける前記第1受圧室の前記第2受圧室と反対側を、前記第1受圧室と定圧状態の定圧室とに第2可撓性部材によって区画し、
前記第2可撓性部材に、前記第1のピストンに近づいた近接位置、および、前記第1ピストンから離れた離反位置にかけて移動可能な第2ピストンを設け、
前記付勢スプリングを、前記第1および第2ピストンの間に位置するように配設した
ことを特徴とする請求項3に記載の真空弁の制御装置。
【請求項5】
前記定圧室は、非圧縮性流体が充填される流体収容室であり、この流体収容室に連通する連通室を設け、この連通室内を、前記流体収容室と連通する補助流体収容室と大気に連通した大気圧室とに第3可撓性部材によって区画したことを特徴とする請求項4に記載の真空弁の制御装置。
【請求項6】
前記切換部は、前記真空送水管に接続される第1変圧室、および、前記真空弁の駆動部に接続されるとともに大気連通部を有する第2変圧室を有するケーシングを有し、
前記切換弁体は、前記ケーシング内に配設され、前記第1および第2変圧室を連通させるとともに前記大気連通部を閉塞した前記開位置、および、前記第1および第2変圧室の連通を遮断するとともに前記大気連通部を開放した前記閉位置にかけて移動可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の真空弁の制御装置。
【請求項7】
前記切換部に、前記貯水枡内の水位に応じて昇降するフロートに連結され、前記貯水枡内が前記吸水管の下端より高い予め設定した高水位になると、前記切換弁体を閉位置から開位置に移動させる開弁アクチュエータを配設したことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の真空弁の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【公開番号】特開2013−24386(P2013−24386A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162461(P2011−162461)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000152170)株式会社酉島製作所 (89)
【Fターム(参考)】