説明

真空蒸着装置及び真空蒸着方法

【課題】種々の多数の基板に対して真空蒸着法による成膜を効率良く行う技術を提供する。
【解決手段】本発明は、真空槽2内において、第1及び第2のマスク31、32を介して第1及び第2の基板51、52上に蒸着を行う真空蒸着装置である。本発明は、第1及び第2の基板51、52を保持する保持手段80と、第1及び第2のマスク31、32をそれぞれ支持するマスク支持部17、18と、マスク支持部17、18を非接触の状態でそれぞれ位置合わせを行う第1及び第2のXYθステージ15、16とを有する。第1及び第2のXYθステージ15、16は、コ字形状に形成され、第1及び第2のXYθステージ15、16の端部がそれぞれ対向するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機EL装置を製造する技術に関し、特に大型基板に対してマスクを用いて蒸着を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL装置を作成する方法としては、シャドウマスク(以下「マスク」という。)を用い、真空蒸着法によって基板上に所定のパターンを形成する方法が広く知られている。
近年、有機EL装置の生産効率を向上させるため、成膜対象物である基板の大きさを大きくしようとする要望があり、このため、マスク及びマスクを固定するマスク支持部も大型化している。
【0003】
このようなマスクは、高精細のパターンを基板上に形成するため、熱による延びを極力小さくする必要がある。そのため、マスク及びマスク支持部の材料としては、熱による延びの小さいインバー等が用いられている。
しかしながら、現時点では、幅が最大1000mm程度のマスクを作成することしかできず、大型基板を用いた真空蒸着の妨げとなっている。
また、大型基板のみならず、小型並びに中型基板に対して生産効率を向上させることも望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−237073号公報
【特許文献2】特開2006−37203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、種々の多数の基板に対して真空蒸着法による成膜を効率良く行う技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するためになされた本発明は、真空槽内において、マスクを介して蒸着対象物上に蒸着を行う真空蒸着装置であって、複数の蒸着対象物を保持する保持手段と、複数のマスクをそれぞれ支持する複数のマスク支持部と、前記複数のマスク支持部を非接触の状態でそれぞれ位置合わせを行う複数の位置合わせ手段とを有する真空蒸着装置である。
本発明では、前記位置合わせ手段は、少なくとも三辺を有する形状に形成されている場合にも効果的である。
本発明では、前記位置合わせ手段は、コ字形状に形成されている場合にも効果的である。
本発明では、前記位置合わせ手段を二つ有し、当該二つの位置合わせ手段の端部がそれぞれ対向するように配置されている場合にも効果的である。
本発明では、前記複数のマスクは、異なるパターンを有する複数のマスクを有する場合にも効果的である。
一方、本発明は、真空中において、マスクを介して蒸着対象物上に蒸着を行う真空蒸着方法であって、複数の蒸着対象物に対して複数のマスクを配置し、前記複数の蒸着対象物に対して前記複数のマスクを非接触の状態で位置合わせを行う工程と、当該各マスクを介して蒸発材料の蒸気を前記複数の蒸着対象物に到達させる工程とを有するものである。
本発明では、複数の蒸着対象物に対して前記マスクをそれぞれ配置する場合にも効果的である。
本発明では、前記蒸発材料が、有機EL装置の有機膜用の有機材料からなる場合に特に効果的である。
【0007】
本発明にあっては、複数の蒸着対象物を保持する保持手段と、複数のマスクをそれぞれ支持する複数のマスク支持部と、これら複数のマスク支持部を非接触の状態でそれぞれ位置合わせを行う複数の位置合わせ手段とを有することから、複数の蒸着対象物に対して同時に成膜を行うことができ、これにより種々の多数の蒸着対象物に対する成膜効率を大幅に向上させることができる。
また、本発明によれば、大型基板と同等の大型のマスクを製作する必要がなくなる。
さらに、本発明によれば、大型マスクを位置合わせする場合に比べて小型マスクを位置合わせする方が操作が容易になるため、成膜の際のタクトタイムを短くすることができるので、生産効率を向上させることができる。
本発明において、位置合わせ手段が、例えばコ字形状のように同一平面上において少なくとも三辺を有する場合には、マスク支持部によって支持されたマスク同士を近接して配置することができるとともに、マスク支持部によって蒸発材料の蒸気が遮られる領域をより小さくすることができるので、蒸着対象物上において蒸着されない領域をより小さくすることができる。
この場合、位置合わせ手段を二つ有し、当該二つの位置合わせ手段の端部がそれぞれ対向するように配置されている場合には、マスク支持部によって支持されたマスク同士を容易に近接配置することができるので、マスク支持部によって蒸発材料の蒸気が遮られる領域をより小さくすることができる。
本発明において、複数のマスクが、異なるパターンを有する複数のマスクを有する場合には、複数の蒸着対象物に対して異なるパターンの成膜を同時に行うことができるので、異なるパターンの蒸着を行うプロセスにおいてプロセスの効率を向上させることができる。
一方、本発明において、複数の蒸着対象物に対してマスクをそれぞれ配置するようにすれば、多数の蒸着対象物に対する成膜効率をより向上させることができる。
本発明において、蒸発材料が、有機EL装置の有機膜用の有機材料からなる場合には、成膜の際のタクトタイムを短くすることができるので、有機EL装置の生産効率を大幅に向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
以上述べたように本発明によれば、真空蒸着法による有機EL装置を効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a):本実施の形態におけるXYθステージの要部構成を示す平面図(b):図1(a)のA−A線断面図
【図2】(a):同実施の形態におけるXYθステージ上にマスクを配置した状態を示す平面図(b):図2(a)のB−B線断面図
【図3】(a):同実施の形態におけるXYθステージ、第1及び第2のマスク並びに蒸着対象物である基板との関係を示すもので、基板の平面図(b):第1及び第2のマスクの平面図(c):XYθステージ、第1及び第2のマスク並びに基板の縦断面図
【図4】同実施の形態のXYθステージを適用した真空蒸着装置の内部構成を示す部分断面図
【図5】同真空蒸着装置による真空蒸着方法の例を示す内部構成部分断面図(その1)
【図6】同真空蒸着装置による真空蒸着方法の例を示す内部構成部分断面図(その2)
【図7】同真空蒸着装置による真空蒸着方法の例を示す内部構成部分断面図(その3)
【図8】(a)(b):本発明の他の実施の形態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態におけるXYθステージの要部構成を示すもので、図1(a)は、平面図、図1(b)は、図1(a)のA−A線断面図である。
【0011】
本実施の形態のXYθステージ10は、後述する真空蒸着装置に用いられるもので、例えば、ステンレスや鋼鉄等の金属材料からなるものである。
このXYθステージ10は、第1のステージ部11と、第2のステージ部12とを有している。
【0012】
第1のステージ部11は、例えば矩形平板状の基部13を有し、この基部13の一方の長辺13a側に、例えば矩形形状の切り欠き部13bが蒸気放出手段20と対向するように形成されている。
また、第1のステージ部11の基部13の蒸気放出手段20側の面上には、図示しない駆動機構によって駆動され、それぞれX方向、Y方向及びθ方向に移動可能な第1のXYθステージ(位置合わせ手段)15が設けられている。
この第1のXYθステージ15は、第1のステージ部11の基部13の切り欠き部13bの周囲の位置で、第1のステージ部11の基部13の縁部に設けられ、少なくとも三つの辺を有している。
【0013】
図1(a)に示すように、本実施の形態の場合、第1のXYθステージ15は、連結された直線状の三辺からなり、角部を有する形状、例えば「コ」字形状に形成されている。この場合、「コ」字の両端部が、基部13の一方の長辺13a側に位置するように、第1のXYθステージ15が配置されている。
【0014】
また、第1のステージ部11の蒸気放出手段20と反対側の面には、上述した基部13の切り欠き部13bの縁部に、例えば「コ」字形状のマスク支持部17が設けられている。
一方、本実施の形態では、第2のステージ部12は、第1のステージ部11と対応するように配置構成されている。
すなわち、第2のステージ部12は、例えば矩形平板状の基部14を有し、この基部14の一方の長辺14a側に、例えば矩形形状の切り欠き部14bが形成されている。
【0015】
ここで、第2のステージ部12は、基部14の一方の長辺14aが、第1のステージ部11の基部13の一方の長辺13aと対向するように配置されている。
なお、第1のステージ部11の基部13の長辺13aと、第2のステージ部12の基部14の長辺14aとの間隔は、数mm程度であり、この間隔は、位置合わせに要するマージンを考慮してできるだけ小さくすることが好ましい。
【0016】
また、第2のステージ部12の蒸気放出手段20側の面上には、第2のXYθステージ(位置合わせ手段)16が設けられている。この第2のXYθステージ16は、上記第1のXYθステージ15と独立して図示しない駆動機構によって駆動され、それぞれX方向、Y方向及びθ方向に移動可能に構成されている。
第2のXYθステージ16は、第2のステージ部12の基部14の切り欠き部14bの周囲の位置で、第2のステージ部12の縁部に設けられ、少なくとも三つの辺を有している。
【0017】
本実施の形態の場合、第2のXYθステージ16は、連結された直線状の三辺からなり、角部を有する形状、例えば「コ」字形状に形成されている。この場合、「コ」字の両端部が、基部14の一方の長辺14a側に位置するように、第2のXYθステージ16が配置されている。
【0018】
また、第2のステージ部12の蒸気放出手段20と反対側の面には、上述した切り欠き部14bの縁部に、例えば「コ」字形状のマスク支持部18が設けられている。
なお、本実施の形態の場合、上述した第1及び第2のステージ部11、12は、基準直線Lに対して線対称の形状に形成されている。
【0019】
そして、これら第1及び第2のステージ部11、12は、第1及び第2のXYθステージ15、16によって非接触の状態でそれぞれ位置合わせを行うことができるように構成されている。
さらに、上述したマスク支持部17、18は、蒸着の妨げとならないようにそれぞれ断面がテーパー状に形成されている。
【0020】
図2(a)(b)は、本実施の形態におけるXYθステージ上にマスクを配置した状態を示すもので、図2(a)は、平面図、図2(b)は、図2(a)のB−B線断面図である。
図2(a)(b)に示すように、本実施の形態においては、第1のXYθステージ15上に、第1のマスク31が配置され、第2のXYθステージ16上に、第2のマスク32が配置されるように構成されている。
【0021】
ここで、第1及び第2のマスク31、32は、それぞれ第1及び第2のステージ部11、12のマスク支持部17、18上に位置決めされて支持されるようになっている。
第1のマスク31は、例えば矩形形状の枠体33の内側の領域に複数のパターン35が設けられている。そして、第1のマスク31の枠体33上には、複数(ここでは4個)のアライメントマーク41、42、43、44が、枠体33の各隅部に設けられている。
【0022】
一方、第2のマスク32は、例えば矩形形状の枠体34の内側の領域に複数のパターン36が設けられている。そして、第2のマスク32の枠体34上には、複数(ここでは4個)のアライメントマーク45、46、47、48が、枠体34の各隅部に設けられている。
【0023】
なお、第1及び第2のマスク31、32は、それぞれの枠体33、34が、例えば第1及び第2のステージ部11、12の基部13、14の長辺13a、14aと面一(つらいち)の状態で位置決めされるようになっている。
また、上述した枠体33、34は、蒸着の妨げとならないようにそれぞれ断面がテーパー状に形成されている。
【0024】
図3(a)〜(c)は、本実施の形態におけるXYθステージ、第1及び第2のマスク並びに蒸着対象物である基板との関係を示すもので、図3(a)は、基板の平面図、図3(b)は、第1及び第2のマスクの平面図、図3(c)は、XYθステージ、第1及び第2のマスク並びに基板の縦断面図である。
【0025】
図3(a)〜(c)に示すように、本実施の形態においては、上述した第1及び第2のマスク31、32に対向するように第1及び第2の基板(蒸着対象物)51、52が配置される。すなわち、本実施の形態においては、2枚の基板(第1及び第2の基板)51、52に対して2枚のマスク(第1及び第2のマスク31、32)が適用される。
【0026】
ここで、第1の基板51には、第1のマスク31の複数のパターン31a〜31cにそれぞれ対応する成膜領域51a〜51cが設けられている。
また、第2の基板52には、第2のマスク32の複数のパターン32a〜32cにそれぞれ対応する成膜領域52a〜52cが設けられている。
また、第1の基板51上には、第1のマスク31のアライメントマーク41〜44と対応する位置に、複数(ここでは4個)のアライメントマーク61〜64が、第1の基板51の隅部に設けられている。
【0027】
一方、第2の基板52上には、第2のマスク32のアライメントマーク45〜48と対応する位置に、複数(ここでは4個)のアライメントマーク65〜68が、第2の基板52の隅部に設けられている。
そして、第1及び第2のマスク31、32の幅Dは、最大1000mm程度のものが使用される。したがって、第1及び第2の基板51、52としては、幅が1000mm程度のものを用いることができる。
【0028】
図4は、本実施の形態のXYθステージを適用した真空蒸着装置の内部構成を示す部分断面図である。
また、図5及び図6は、同真空蒸着装置による真空蒸着方法の例を示す内部構成部分断面図である。
【0029】
図4に示すように、本実施の形態の真空蒸着装置1は、図示しない真空排気系に接続された真空槽2を有し、この真空槽2内の下部に蒸気放出手段20が設けられている。
この蒸気放出手段20は、その上部に複数の蒸気放出口21が平面上に設けられている。そして、図示しない蒸発源から供給される、例えばAlq3等の有機EL装置の有機層を形成するための有機材料のガスを蒸気放出口21から上方へ放出するように構成されている。
また、真空槽2内の下部には、昇降機構3、4が設けられ、これら昇降機構3、4の上部に設けられた支持テーブル5、6上に、上記XYθステージ10の第1及び第2のXYθステージ15、16がそれぞれ支持されている。
【0030】
上述したように、第1及び第2のXYθステージ15、16は、「コ」字形状に形成されており、当該「コ」字の両端部が、互いに対向するように配置されているため、これら第1及び第2のXYθステージ15、16によって囲まれる空間に蒸気放出手段20の上部蒸気放出口21の部分を配置することができる。
【0031】
また、第1及び第2のXYθステージ15、16は、それぞれ個別の制御手段7、8に接続され、各制御手段7、8からの命令によって独立して位置合わせを行うように構成されている。
そして、第1及び第2のXYθステージ15、16上には、上述した第1及び第2のマスク31、32が支持されている。
【0032】
一方、真空槽2内の第1及び第2のマスク31、32の上方には、一枚のトレイ59が配置され、このトレイ59の下面に第1及び第2の基板51、52が例えば粘着剤等によって保持されている。
ここで、トレイ59は、その両側の縁部が、それぞれ駆動モータ71、72によって回転駆動される一対の搬送ローラ73、74によって水平に支持されるようになっている。
【0033】
さらに、本実施の形態においては、トレイ59の両側部を把持して支持するための一対の保持部(図示せず)が設けられ、これら一対の保持部は、例えば真空槽2の外部に設けられた駆動機構(図示せず)によってそれぞれ動作するように構成されている。
【0034】
一方、真空槽2外部の上方には、例えばCCDカメラ等を有する第1及び第2の撮像手段75、76が設けられている。
これら第1及び第2の撮像手段75、76は、上述した第1及び第2の基板51、52のアライメントマーク61〜64、65〜68並びに第1及び第2のマスク31、32のアライメントマーク41〜44、45〜48の画像を透明な窓部77、78を介してそれぞれ取り込むように構成されている。
【0035】
第1及び第2の撮像手段75、76は、第1及び第2のXYθステージ15、16の動作を制御するための制御手段7、8にそれぞれ接続され、取り込んだ画像を所定の画像処理を行い、その結果に基づいて第1及び第2のXYθステージ15、16を独立して動作させるように構成されている。
【0036】
なお、本実施の形態においては、成膜の際に上述したトレイ59を保持する保持手段80が設けられている。
この保持手段80は、図示しない昇降機構によって上下方向に駆動される駆動ロッド81及びこの駆動ロッド81の先端部(下端部)取り付けられた例えば平板状の本体部82を有し、この本体部82の下部にマグネット83が取り付けられている。
【0037】
ここで、保持手段80の本体部82及びマグネット83は、第1及び第2の基板51、52の面積を合計した面積と同等の面積を有している。
このような構成を有する本実施の形態において、真空槽2内に搬入された第1及び第2の基板51、52に対して第1及び第2のマスク31、32を位置合わせして蒸着を行う場合には、まず、図4に示すように、トレイ59を搬送ローラ73、74によって支持させた状態で、第1及び第2の撮像手段75、76を動作させ、第1及び第2の基板51、52のアライメントマーク61〜64、65〜68並びに第1及び第2のマスク31、32のアライメントマーク41〜44、45〜48の画像を窓部77、78を介してそれぞれ取り込み、各制御手段7、8において、取り込んだ画像に対して所定の画像処理を行う。
【0038】
そして、この画像処理によって得られた結果に基づいて、図5に示すように、第1及び第2のXYθステージ15、16を独立して動作させ、第1及び第2の基板51、52と第1及び第2のマスク31、32との位置合わせをそれぞれ行う。
【0039】
その後、図6に示すように、昇降機構3、4を駆動して支持テーブル5、6を上昇させるとともに、保持手段80を下降させ、トレイ59及び第1及び第2の基板51、52を、マグネット83と第1及び第2のマスク31、32によって挟むようにする。
【0040】
これにより、マグネット83の磁力によって第1及び第2の基板51、52と第1及び第2のマスク31、32が密着する。
この状態において、図7に示すように、蒸気放出手段20の上部蒸気放出口21から蒸発材料の蒸気90を放出させ、この蒸気90を第1及び第2のマスク31、32を介して第1及び第2の基板51、52に到達させて第1及び第2の基板51、52上に所定パターンの膜を形成する。
【0041】
以上述べた本実施の形態にあっては、複数の第1及び第2の基板51、52を保持する保持手段80と、第1及び第2のマスク31、32をそれぞれ支持するマスク支持部17、18と、これらマスク支持部17、18を非接触の状態でそれぞれ位置合わせを行う第1及び第2のXYθステージ15、16とを有することから、複数の第1及び第2の基板51、52に対して同時に成膜を行うことができ、これにより種々の多数の蒸着対象物に対する成膜効率を大幅に向上させることができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、大型のマスクを製作する必要がなく、大面積に対して一度に成膜することができる。
さらに、本実施の形態によれば、大型マスクを位置合わせする場合に比べて小型マスクを位置合わせする方が操作が容易になるため、成膜の際のタクトタイムを短くすることができるので、生産効率を向上させることができる。
【0043】
特に、本実施の形態においては、コ字形状の第1及び第2のXYθステージ15、16の端部がそれぞれ対向するように配置されていることから、マスク支持部17、18によって支持された第1及び第2のマスク31、32同士を近接配置することができるので、マスク支持部17、18によって蒸発材料の蒸気が遮られる領域をより小さくすることができる。
このように、本実施の形態によれば、有機EL装置用の種々の多数の基板に対し、成膜の際のタクトタイムを短くすることができるので、有機EL装置の生産効率を向上させることができる。
【0044】
図8(a)(b)は、本発明の他の実施の形態を示す平面図である。
図8(a)に示すように、本実施の形態のXYθステージ110は、それぞれ独立して動作が可能な第1のステージ部111と、第2のステージ部112と、第3のステージ部113と、第4のステージ部114とを有し、これら第1〜第4のステージ部111〜114は、それぞれ独立して動作が可能な第1〜第4のXYθステージ111A〜114Aを有している。
【0045】
第1のステージ部111は、例えば矩形平板状の基部115を有し、この基部115の一方の長辺115a側に、例えば矩形形状の切り欠き部115bが形成されている。
また、第1のステージ部111の第1のXYθステージ111Aは、基部115の上記蒸気放出手段20(例えば図1参照)側の面上に設けられている。
【0046】
この第1のXYθステージ111Aは、第1のステージ部111の基部115の切り欠き部115bの周囲の位置で、基部115の縁部に設けられ、少なくとも三つの辺を有している。
本実施の形態の場合、第1のXYθステージ111Aは、連結された直線状の三つの辺111a〜111cからなり、角部を有する例えば「J」字形状に形成されている。
【0047】
この場合、「J」字の両端部が、基部115の一方の長辺115a側に位置するように、第1のXYθステージ111Aが配置されている。なお、第1のXYθステージ111Aを構成する平行な辺111a、111cのうち、成膜する領域の内側の辺111cは、上記蒸気放出手段20からの蒸気の妨げにならないようにするため、成膜する領域の外側の辺111aより短く形成されている。
【0048】
また、第1のステージ部111の上記蒸気放出手段20と反対側の面には、上述した基部115の切り欠き部115bの縁部に、角部を有する形状、例えば「コ」字形状のマスク支持部115dが設けられている。
一方、本実施の形態では、第1のステージ部111の基部115の一方の長辺115a側に、基準直線Lに対して線対称の形状の第2のステージ部112が配置されている。
【0049】
この第2のステージ部112は、矩形平板状の基部116の一方の長辺116a側に、例えば矩形形状の切り欠き部116bが形成され、さらに、この基部116の上記蒸気放出手段20側の面上に、第2のXYθステージ112Aが設けられている。
この第2のXYθステージ112Aは、第2のステージ部112の基部116の切り欠き部116bの周囲の位置で、基部116の縁部に設けられ、少なくとも三つの辺を有している。
【0050】
本実施の形態の場合、第2のXYθステージ112Aは、連結された直線状の三つの辺112a〜112cからなり、角部を有する例えば「J」字形状に形成されている。
この場合、「J」字の両端部が、基部116の一方の長辺116a側に位置するように、第2のXYθステージ112Aが配置されている。なお、第2のXYθステージ112Aを構成する平行な辺112a、112cのうち、成膜する領域の内側の辺112cは、上記蒸気放出手段20からの蒸気の妨げにならないようにするため、成膜する領域の外側の辺112aより短く形成されている。
また、第2のステージ部112の上記蒸気放出手段20と反対側の面には、上述した基部116の切り欠き部116bの縁部に、角部を有する形状、例えば「コ」字形状のマスク支持部116dが設けられている。
【0051】
さらに、本実施の形態においては、第1のステージ部111の成膜する領域の内側の辺111c側並びに第2のステージ部112の成膜する領域の内側の辺112c側に、上記基準直線Lと直交する基準直線Nに対して線対称の形状の第3のステージ部113及び第4のステージ部114が設けられている。
ここで、第3のステージ部113は、矩形平板状の基部117の一方の長辺117a側に、例えば矩形形状の切り欠き部117bが形成され、また、この基部117の上記蒸気放出手段20側の面上に、第3のXYθステージ113Aが設けられている。
【0052】
この第3のXYθステージ113Aは、第3のステージ部113の基部117の切り欠き部117bの周囲の位置で、第3のステージ部113の基部117の縁部に設けられ、少なくとも三つの辺を有している。
本実施の形態の場合、第3のXYθステージ113Aは、連結された直線状の三つの辺113a〜113cからなり、角部を有する例えば「J」字形状に形成されている。
【0053】
この場合、「J」字の一方の端部が、基部117の一方の長辺117a側に位置するように、第3のXYθステージ113Aが配置されている。なお、第3のXYθステージ113Aを構成する平行な辺113a、113cのうち、成膜する領域の内側の辺113cは、上記蒸気放出手段20からの蒸気の妨げにならないようにするため、成膜する領域の外側の辺113aより短く形成されている。
また、第3のステージ部113の上記蒸気放出手段20と反対側の面には、基部117の切り欠き部117bの縁部に、角部を有する形状、例えば「コ」字形状のマスク支持部117dが設けられている。
【0054】
一方、第4のステージ部114は、矩形平板状の基部118の一方の長辺118a側に、例えば矩形形状の切り欠き部118bが形成され、また、この基部118の上記蒸気放出手段20側の面上に、第4のXYθステージ114Aが設けられている。
この第4のXYθステージ114Aは、第4のステージ部114の基部118の切り欠き部118bの周囲の位置で、基部118の縁部に設けられ、少なくとも三つの辺を有している。
本実施の形態の場合、第4のXYθステージ114Aは、連結された直線状の三つの辺114a〜114cからなり、角部を有する例えば「J」字形状に形成されている。
【0055】
この場合、「J」字の一方の端部が、基部118の一方の長辺118a側に位置するように、第4のXYθステージ114Aが配置されている。なお、第4のXYθステージ114Aの平行な辺114a、114cのうち、成膜する領域の内側の辺114cは、上記蒸気放出手段20からの蒸気の妨げにならないようにするため、成膜する領域の外側の辺114aより短く形成されている。
また、第4のステージ部114の上記蒸気放出手段20と反対側の面には、切り欠き部118bの縁部に、角部を有する形状、例えば「コ」字形状のマスク支持部118dが設けられている。
【0056】
図8(b)は、上述した第1〜第4のステージ部111〜114上に第1〜第4のマスク121〜124を配置した状態を示すものである。
図8(b)に示すように、第1〜第4のマスク121〜124は、それぞれ例えば矩形形状に形成されており、それぞれパターン131〜134が複数(ここでは2個)設けられている。
【0057】
また、第1〜第4のマスク121〜124の各隅部には、それぞれアライメントマーク121a〜121d、122a〜122d、123a〜123d、124a〜124dが設けられている。
これら四つの第1〜第4のマスク121〜124は、例えば上述したトレイ59に貼付された4枚の基板(ここでは図示せず)に対応して蒸着を行うように、それぞれその大きさ及びパターン131〜134の大きさが設定され、また、それぞれのアライメントマーク121a〜121d、122a〜122d、123a〜123d、124a〜124dの位置が定められている。
【0058】
このような構成を有する本実施の形態によれば、マスク支持部115d〜118dによって支持された第1〜第4のマスク121〜124同士を近接して配置することができるとともに、4枚の基板に対して同時に成膜をすることができるので、より生産効率を向上させることができる。
【0059】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、上記実施の形態においては、複数の蒸着対象物に対してそれぞれ、即ち一対一にマスクを配置するようにしたが、本発明はこれに限られず、複数のマスクのうち所定のもののみを用いて蒸着対象物に対して成膜を行うこともできる。
【0060】
また、一枚のマスクに対して複数の基板を配置することもできる。この場合、トレイに複数の基板を正確に配置し、トレイにアライメントマークを付してもよい。
また、図8(a)(b)に示す例においては、第1〜第4のステージ部111〜114のうち、例えば、第1及び第3のステージ部111、113と、第2及び第4のステージ部112、114とをそれぞれ使用して2枚の基板に蒸着を行うこともできる。
【0061】
さらに、上記実施の形態においては、それぞれのXYθステージの形状を「コ」字形状としたが、本発明はこれに限られず、例えば、XYθステージを分割して少なくとも三つの辺を有するように構成することもできる。
また、上記実施の形態においては、蒸発源から供給される蒸発材料のガスを複数の蒸気放出口から放出するようにしたが、本発明はこれに限られず、蒸発源自体をマスクに対向するように配置することもでき、また、直線状の蒸発源をその延びる方向と直交する方向へ移動させることもできる。
【0062】
さらに、複数のマスクのパターンは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、種々のパターンを適用することができる。
さらにまた、本発明は有機EL装置の有機層を形成するための真空蒸着装置のみならず、種々の真空蒸着装置に適用することができる。
ただし、本発明は、複数のマスクを用いて蒸着を行う有機EL装置用の真空蒸着装置に適用した場合に最も効果があるものである。
【符号の説明】
【0063】
1…真空蒸着装置、10…XYθステージ、11…第1のステージ部、12…第2のステージ部、15…第1のXYθステージ(位置合わせ手段)、16…第2のXYθステージ(位置合わせ手段)、17,18…マスク支持部、31…第1のマスク、32…第2のマスク、51…第1の基板(蒸着対象物)、52…第2の基板(蒸着対象物)、80…保持手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空槽内において、マスクを介して蒸着対象物上に蒸着を行う真空蒸着装置であって、
複数の蒸着対象物を保持する保持手段と、
複数のマスクをそれぞれ支持する複数のマスク支持部と、
前記複数のマスク支持部を非接触の状態でそれぞれ位置合わせを行う複数の位置合わせ手段とを有する真空蒸着装置。
【請求項2】
前記位置合わせ手段は、少なくとも三辺を有する形状に形成されている請求項1記載の真空蒸着装置。
【請求項3】
前記位置合わせ手段は、コ字形状に形成されている請求項1又は2のいずれか1項記載の真空蒸着装置。
【請求項4】
前記位置合わせ手段を二つ有し、当該二つの位置合わせ手段の端部がそれぞれ対向するように配置されている請求項3記載の真空蒸着装置。
【請求項5】
前記複数のマスクは、異なるパターンを有する複数のマスクを有する請求項1乃至4のいずれか1項記載の真空蒸着装置。
【請求項6】
真空中において、マスクを介して蒸着対象物上に蒸着を行う真空蒸着方法であって、
複数の蒸着対象物に対して複数のマスクを配置し、前記複数の蒸着対象物に対して前記複数のマスクを非接触の状態で位置合わせを行う工程と、
当該各マスクを介して蒸発材料の蒸気を前記複数の蒸着対象物に到達させる工程とを有する真空蒸着方法。
【請求項7】
複数の蒸着対象物に対して前記マスクをそれぞれ配置する請求項6記載の真空蒸着方法。
【請求項8】
前記蒸発材料が、有機EL装置の有機膜用の有機材料からなる請求項6又は7のいずれか1項記載の真空蒸着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−160262(P2012−160262A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17218(P2011−17218)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】